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平成14年(行ケ)第342号 特許取消決定取消請求事件(平成15年9月10
日口頭弁論終結)
          判          決
       原      告   大日本製薬株式会社
       訴訟代理人弁理士   吉   岡   拓   之
       訴訟復代理人弁理士  塚   脇   正   博
被      告   特許庁長官 今井康夫
指定代理人   柿   崎   良   男
同          森   田   ひ と み
同          一   色   由 美 子
同          宮   川   久   成
同          伊   藤   三   男
          主          文
特許庁が平成10年異議第73229号事件について平成14年
5月24日にした決定を取り消す。
      訴訟費用は被告の負担とする。
          事実及び理由
第1 請求
   主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
 原告は,名称を「防汚塗料組成物」とする特許第2696188号発明
(平成4年7月8日特許出願,平成9年9月19日設定登録,以下「本件発明」と
いい,その特許を「本件特許」という。)の特許権者である。本件特許について,
その後,特許異議の申立てがされ,平成10年異議第73229号事件として特許
庁に係属し,原告は,平成12年9月18日,特許請求の範囲の記載について訂正
請求(以下「本件訂正請求」という。)をした。
 特許庁は,同事件について審理した結果,平成14年5月24日,「特
許第2696188号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。」との決定(以
下「本件決定」という。)をし,その謄本は,同年6月12日,原告に送達され
た。
 2 本件発明の要旨
  (1) 本件特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」とい
う。)の特許請求の範囲の記載
   【請求項1】亜酸化銅と化1
【化1】
(式中,nは1又は2である。)で表される2-ピリジンチオール-1
-オキシドの銅塩を有効成分として含有することを特徴とするゲル化せず長期保存
が可能な防汚塗料組成物。
     【請求項2】亜酸化銅5~30重量%と化2
【化2】
(式中,nは1又は2である。)で表される2-ピリジンチオール-1
-オキシドの銅塩2~15重量%を含有し,亜酸化銅と該銅塩の配合比が1:1~
3:1である請求項1記載のゲル化せず長期保存が可能な防汚塗料組成物。
(以下,上記【請求項1】,【請求項2】に係る発明をそれぞれ「本件
発明1」,「本件発明2」という。)
    (2) 本件訂正請求に係る特許請求の範囲の記載
     亜酸化銅と化1
【化1】
(式中,nは1又は2である。)で表される2-ピリジンチオール-1
-オキシドの銅塩を有効成分として含有することを特徴とするゲル化せず長期保存
が可能な防汚塗料組成物。
     (以下,上記発明を「本件訂正発明」という。なお,本件訂正請求は,
本件明細書の特許請求の範囲の記載中【請求項2】の削除を求めるものである。)
 3 本件決定の理由
   本件決定は,別添決定謄本写し記載のとおり,本件訂正発明は,特開昭
53-27630号公報(甲3,以下「引用例」という。)に記載された発明(以
下「引用例発明」という。)であり,特許法29条1項3号により特許出願の際独
立して特許を受けること(以下「独立特許要件」という。)ができないものである
から,本件訂正請求は,平成6年法律第116号による改正後の特許法120条の
4第3項において準用する平成5年法律第26号による改正後の特許法126条3
項に適合しないので,本件訂正請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)は認
められないとした上,本件発明1は,引用例発明であって,特許法29条1項3号
に違反して特許されたものであり,また,本件発明2は,平成2年法律第30号に
よる改正後の特許法36条5項1号を満足しない出願に対して特許されたものであ
って,いずれも拒絶をしなければならない出願に対して特許されたものであるか
ら,平成6年法律第116号附則14条に基づく,平成7年政令第205号4条2
項により取り消すべきものであるとした。
第3 原告主張の審決取消事由
本件決定は,引用例発明の認定を誤り(取消事由1),本件訂正発明と
引用例発明との相違点を看過(取消事由2)した結果,本件訂正発明は引用例発明
であり,特許法29条1項3号に該当するとして,独立特許要件を誤って否定して
本件訂正を認めず,ひいては本件発明1,2の特許性を誤って否定したものである
から,違法として取り消されるべきである。
   1 取消事由1(引用例発明の認定の誤り)
 本件決定は,「引用例には,実施例等の直接的記載はないにしても,ビ
ス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)の銅塩に亜酸化銅を混合して防汚塗料とす
ることは,記載されているに等しい事項といわざるを得ない」(決定謄本5頁下か
ら第2段落)と認定するが,誤りである。
(1) 引用例(甲3)に記載されているのは,2-ピリジルチオ-1-オキ
シドの金属塩を防汚活性成分として含有する水中防汚塗料の発明であり,2-ピリ
ジルチオ-1-オキシドの金属塩と亜酸化銅等他の公知の防汚性化合物の併用につ
いては実施例の記載もない。引用例は,「本発明(注,引用例発明)に係る・・・
ピリジン系化合物は他の公知の無機または有機の防汚性化合物例えば亜酸化
銅・・・等の化合物を加え混合して,通常の塗料原料および塗料製造法に従つて水
中防汚塗料を製造することも可能である」(2頁左上欄第2段落~左下欄第1段
落)との記載(以下「記載A」という。)のとおり,引用例発明に係るピリジン系
化合物以外の,亜酸化銅等の公知の防汚化合物を混合しても製造可能であるとし
て,単にアイデア(観念)としての使用可能性を述べているにとどまり,実際にこ
れらの公知の防汚化合物を混合した防汚塗料を製造したものであると読み取ること
はできない。また,引用例中,「本発明に係る水中防汚塗料の代表的な活性効成分
を例示すれば次の如くである・・・(7)ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)銅
塩・・・」(同頁左下欄第2段落~右下欄第1段落)との記載(以下「記載B」と
いう。)により,防汚活性成分である12種類の2-ピリジルチオ-1-オキシド
の各金属塩の一つとして銅塩の防汚性能は確認されていても,塗料としての貯蔵安
定性までを確認したものではない。したがって,引用例は,公知の防汚化合物との
混合について,防汚性能の観点からの使用可能性を開示しているにすぎない。
(2) 引用例には,実施例3及び比較例2として,それぞれビス(2-ピリ
ジルチオ-1-オキシド)の銅塩及び亜酸化銅を含有する防汚塗料を実際に得たこ
と並びに実施例3及び比較例2の防汚塗料について海水浸漬試験を行ったことが記
載(以下「記載C」という。)されているが,本件訂正発明の構成に係る,両者を
併用した防汚塗料については,実施例の記載がなく,その実体を伴った記載を欠い
ている。比較例2として挙げられている亜酸化銅は,他の列挙化合物と同列の観念
的記載にすぎず,他の防汚化合物と違うものとして特別に記載されているものでは
ない。ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)の銅塩のみならず,他の11種類
の金属塩も同様に実施例として記載されており,銅塩だけが金属塩のうち特別のも
のとして記載されているわけではない。したがって,引用例の記載A~Cは,これ
に接した当業者が,その選択肢の中から,本件訂正発明の構成に係る特定の組合せ
を直ちに想起し得るようなものではない。
(3) 亜酸化銅が,本件特許出願前に,防汚活性を有する代表的化合物とし
て古くから防汚塗料に使用されている物質であり,他の有機系の防汚性物質と併用
して防汚塗料に使用されているものであることを示す刊行物として被告が引用する
乙1~7のうち,最も本件訂正発明の構成に近い乙7(米国特許第5057153
号明細書)でさえ,ピリチオン亜鉛塩と亜酸化銅の併用についてのものであり,亜
酸化銅と2-ピリジンチオール-1-オキシドの銅塩を有効成分とする「ゲル化せ
ず長期保存が可能」な防汚塗料組成物については,何ら示唆するところがない。
   2 取消事由2(本件訂正発明と引用例発明との相違点の看過)
 本件決定は,「本件訂正発明が『ゲル化せず長期保存が可能である』と
規定しているのに対し,引用例ではそのようなことが記載されていない点で一見相
違しているかにみえる。しかし,この『ゲル化せず長期保存が可能である』こと
は,亜酸化銅と2-ピリジンチオール-1-オキシドの銅塩を有効成分として含有
する塗料組成物としたことにより当然に得られる結果に他ならないのであるから,
この点の記載の有無をもって両発明が相違するということにはならない」(決定謄
本6頁第1段落~第2段落)と判断するが,誤りである。
(1) 本件訂正発明は,2-ピリジンチオール-1-オキシドの亜鉛塩と亜
酸化銅の併用系塗料においては,経時的に増粘しゲル化するという欠点を有すると
ころから,問題を解決するための手段を種々検討した結果,2-ピリジンチオール
-1-オキシドの金属塩のうち銅塩のみが,他の金属塩とは異なり,亜酸化銅等の
重金属化合物と併用した場合にも,ゲル化せず,長期保存安定性に優れた防汚塗料
組成物が得られることを見いだし,発明の完成に至った(本件明細書〔甲2〕の段
落【0008】~段落【0010】)ものであるから,その特許請求の範囲の記載
における「ゲル化せず長期保存が可能」との規定は,引用例発明と区別する構成要
件であって,両発明の相違点を成しているのに,本件決定は,この点を看過してい
る。
(2) 本件訂正発明は,「ゲル化せず長期保存が可能」な防汚塗料を提供し
た発明であるのに対し,引用例発明は,防汚活性のみに着目したものであり,この
ことは,2-ピリジンチオール-1-オキシドの亜鉛塩と亜酸化銅とを混合すると
短期間にゲル化して防汚塗料として使用に耐えないことの認識が全くないことから
も明らかである。
  第4 被告の反論
     本件決定の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由
がない。
   1 取消事由1(引用例発明の認定の誤り)について
(1) 亜酸化銅は,昭和38年11月15日共立出版縮刷版第1刷発行「化
学大辞典5」471頁(乙1)及び昭和48年7月30日パワー社発行「塗料と塗
装」202頁~205頁(乙3)に記載されているとおり,本件特許出願前に,防
汚活性を有する代表的化合物として古くから防汚塗料に使用されている物質であ
り,特開昭51-129435号公報(乙4),特開昭64-19010号公報
(乙5),特開昭64-51480号公報(乙6)及び米国特許第5057153
号明細書(乙7)に記載されているとおり,他の有機系の防汚性物質と併用して防
汚塗料に使用されているものである。
(2) 引用例(甲3)には,2-ピリジルチオ-1-オキシドの銅塩につい
て具体的に防汚活性を試験したことが記載されており(記載C),また,亜酸化銅
は,防汚活性化合物の代表的なものであって,単独で,あるいは他の防汚活性化合
物と併用して使用されているものであるから,引用例における記載A,すなわち,
亜酸化銅を筆頭にする他の公知の活性化合物を混合して防汚塗料を製造することも
可能であるとの記載からすれば,これら特定の活性化合物を混合して防汚塗料を製
造することが引用例に記載されているに等しいとした本件決定の認定に誤りはな
い。
(3) 引用例において,防汚塗料が製造され,防汚塗料として使用されたこ
とが事実として開示されているのであり,その貯蔵安定性まで確認されなければ,
防汚塗料が製造されたことにならないわけではない。本件決定は,引用例において
具体的根拠をもって記載されている銅塩を,本件訂正発明と対比させる出発点とし
たものであり,銅塩が特別のものとして記載されていなければ先行技術として対比
し得ないということはない。
   2 取消事由2(本件訂正発明と引用例発明との相違点の看過)について
     本件訂正発明において,「ゲル化せず長期保存が可能」であるために格
別の手段が講じられているというわけではなく,亜酸化銅と2-ピリジルチオ-1
-オキシドの銅塩との併用により必然的に得られる結果を記載したにすぎないか
ら,本件決定には原告主張の相違点の看過はない。
第5 当裁判所の判断
   1 取消事由2(本件訂正発明と引用例発明との相違点の看過)について
    (1) 原告は,本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は「ゲル化せず長期保
存が可能」と規定しているのに対し,引用例ではその記載がないのに,この点の記
載の有無をもって両発明が相違するということにはならないとした本件決定の判断
には,相違点を看過した誤りがある旨主張する。
      そこで,まず,上記構成に係る本件訂正発明の技術的意義について検
討すると,本件訂正発明は,発明の名称を「防汚塗料組成物」とし,特許請求の範
囲として,「亜酸化銅と・・・2-ピリジンチオール-1-オキシドの銅塩を有効
成分として含有することを特徴とするゲル化せず長期保存が可能な防汚塗料組成
物」と記載され,本件明細書(甲2)の発明の詳細な説明中の【従来の技術および
発明が解決しようとする課題】の欄に,「亜酸化銅と2-ピリジンチオール-1-
オキシドの金属塩とは,いずれも防汚効果を有し,低毒性であり,しかも防汚効果
を示す水棲生物の種類がお互いに補完しあうので,両者を併用することで優れた防
汚塗料が得られるものと期待されていた」(段落【0007】),「ところが,代
表的な2-ピリジンチオール-1-オキシドの金属塩である亜鉛塩と亜酸化銅とを
併用した場合,経時的に増粘しゲル化するという欠点を有することがわかった」
(段落【0008】),「防汚成分としての2-ピリジンチオール-1-オキシド
の金属塩としては,種々の化合物が知られているが,本発明者が検討したところ,
亜酸化銅等の重金属化合物と併用した場合には,亜鉛塩のみならず,鉄塩
等でもゲル化することがわかった」(段落【0009】)との記載があり,【問題
を解決するための手段】の欄に,「本発明者は種々検討を繰り返した結果,2-ピ
リジンチオール-1-オキシドの金属塩のうち銅塩のみが,他の金属塩とは異な
り,亜酸化銅等の重金属化合物と併用した場合にもゲル化せず,長期保存安定性に
優れた防汚塗料組成物が得られることを見出し,本発明を完成するに至った」(段
落【0010】),【発明の効果】の欄に,「本発明の防汚塗料組成物は,亜酸化
銅等の重金属化合物と2-ピリジンチオール-1-オキシドの銅塩とを防汚成分と
して含み,防汚性能に優れている上に,低毒性で人体に対して安全で,しかもゲル
化せず,長期保存安定性に優れている」(段落【0017】)との記載がある。 
これらの記載によれば,本件訂正発明は,ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシ
ド)の銅塩と亜酸化銅の組合せを選択することにより,ゲル化せず,長期保存が可
能な防汚塗料組成物としたものであると解釈するのが相当である。
    (2) 一方,引用例発明は,発明の名称を「水中防汚塗料」とし,引用例
(甲3)には,特許請求の範囲として,「下記の一般式
N
S
O
n
M
(式中Mは金属原子または
N
S
O
基を示し,nは1~3の整数を示す)で表わされる化合物を含有するこ
とを特徴とする水中防汚塗料」と記載され,発明の詳細な説明の欄の記載C中に,
実施例3として,ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)銅塩を防汚性化合物と
して含有する防汚塗料が記載される(3頁左上欄最終段落~右上欄第1段落)とと
もに,記載A,すなわち,「本発明(注,引用例発明)に係る・・・ピリジン系化
合物は他の公知の無機または有機の防汚性化合物例えば亜酸化銅・・・等の化合物
を加え混合して,通常の塗料原料および塗料製造法に従って水中防汚塗料を製造す
ることも可能である」(2頁左上欄第2段落~左下欄第1段落)として,ビス(2
-ピリジルチオ-1-オキシド)銅塩に混合して塗料を製造することが可能である
防汚性化合物として亜酸化銅が他の化合物とともに例示され,また,記載C中に
は,比較例2として,亜酸化銅を防汚性化合物として含有する防汚塗料が記載され
ている(3頁左下欄)。
 しかしながら,引用例には,ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシ
ド)の銅塩と亜酸化銅を組み合わせて成る防汚塗料について,実施例等として具体
的に記載するところがなく,引用例発明に係る水中防汚塗料が「ゲル化せず長期保
存が可能」との性質を有するとの点についても何ら記載がなく,また,この性質に
ついて示唆する記載も見いだすことができない。
    (3) 一般に,効果の予測が困難な化学的な組成物に関する技術分野におい
て,先行発明を記載した先行文献に,特定の成分を組み合せた組成物が実施例等と
して具体的に記載されている場合には,これと同一の成分の組合せから成る組成物
発明において特定の性質を構成要件に加えて特許請求の範囲としても,物の発明と
しては先行発明と同一であって,別発明となるわけではないが,先行文献に特定の
成分の組合せが具体的に記載されておらず,これにより当業者に認識されていなか
った顕著な作用効果を奏することとなる場合には,先行発明とは別発明である選択
発明の一種として新規性及び進歩性が認められるというべきである。
      本件において,本件訂正発明は,引用例に具体的に記載されていな
い,ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)の銅塩と亜酸化銅の組合せを選択
し,「ゲル化せず長期保存が可能」な防汚塗料組成物としたものと解釈できること
は上記のとおりであるから,「ゲル化せず長期保存が可能」という性質が,上記組
合せを選択することにより,先行発明である引用例発明では当業者に認識されてい
なかった顕著な作用効果を奏することとなる場合には,本件訂正発明は,引用例発
明とは別発明である選択発明の一種として新規性及び進歩性が認められるのであっ
て,その特許性を否定するためには,上記構成に係る本件訂正発明が,上記のとお
り選択発明として成立するに足りる作用効果を奏するか否かについての検討を経る
ことが必要であるといわなければならない。
 そうすると,「ゲル化せず長期保存が可能」という性質は,本件訂正
発明の構成要件となっているのに対し,引用例には,この性質について何らの記載
も示唆もない以上,少なくとも,この要件の有無を相違点として認定した上で,こ
の性質が選択発明を構成するに足りるものであるか否かについて,実施例及び比較
例や本件特許出願時の技術常識を参酌するなどして判断すべきものである。したが
って,このような判断過程を経ることなく,「ゲル化せず長期保存が可能」という
本件訂正発明の構成要件を切り離して,ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)
の銅塩と亜酸化銅を混合した単なる防汚塗料を,引用例に記載されているに等しい
事項であると認定した上,この認定を前提に,「ゲル化せず長期保存が可能」とい
う性質は成分の組合せにより当然に得られる結果にほかならず,両発明が相違する
ことにはならないとした本件決定の判断手法は,選択発明の成立の余地を否定する
ものであって,誤りといわざるを得ない。
    (4) 被告は,「ゲル化せず長期保存が可能」というために,本件訂正発明
において格別の手段が講じられているというわけではないと主張する。
      しかしながら,その趣旨が,このような性質を得るために必要な手段
が特許請求の範囲の記載において特定されていない,あるいは,特許請求の範囲に
規定された構成のみではこのような性質が得られないというのであれば,それは特
許法36条が定める明細書の記載要件の問題として検討すべき事柄であって,本件
訂正発明の新規性を否定する根拠にはなり得ないから,被告の上記主張は失当であ
る。
    (5) したがって,本件決定には相違点を看過した誤りがあり,この誤りが
本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。
2 以上のとおり,原告の取消事由2の主張は理由があるから,その余の点
について判断するまでもなく,本件決定は違法として取消しを免れない。
  よって,原告の請求は理由があるから認容することとし,主文のとおり
判決する。
     東京高等裁判所第13民事部
         裁判長裁判官 篠原勝美
    裁判官 岡   本       岳
    裁判官 長   沢   幸   男

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