弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 被告は原告に対し、一七〇万一五二七円及びこれに対する平成七年二月二日か
ら支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は三分し、その二を被告の、その余を原告の負担とする。
四 この判決は、原告勝訴の部分につき、仮に執行することができる。ただし、被
告が一三〇万円の担保を供するときは、右仮執行を免れることができる。
       事実及び理由
第一 講求
 被告は原告に対し、二四〇万円及びこれに対する平成六年二月二八日から支払済
みまで年五分の割合による金員(遅延損害金)を支払え。
第二 事案の概要
 本件は、被告の従業員であった原告が、被告との間に退職金支払の合意があった
と主張して、退職後、被告に対し、退職金の支払を求めたものである。
一 争いのない事実
1 被告は、東京弁護士会所属の弁護士である。
2 原告は、昭和六〇年一二月二日、被告経営の法律事務所の事務員として期限の
定めなく被告に雇用されたが、平成六年二月二八日退職した。
二 争点
1 退職金支払の合意の有無
(原告の主張の要旨)
 被告は、平成元年ころ、原告に対し、「当事務所の退職金は退職時の月給の勤続
年数分である。」旨説明し、そのころ、原、被告間に、右説明のとおりの退職金支
払の合意が成立した。
(被告の主張の要旨)
 原、被告間において個別具体的な退職金支給につき合意したことはない。なお、
被告事務所には退職金支給を定めた就業規則はない。
2 退職金の算定額
(原告の主張の要旨)
 退職時の原告の月給は三〇万円(手取り)であったから、原告の退職金額は少な
くとも二四〇万円と算定される。
 したがって、原告は被告に対し、右二四〇万円及びこれに対する退職日である平
成六年二月二八日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払
を求める。
(被告の主張の要旨)
 争う。
第三 当裁判所の判断
一 争点1(退職金支払の合意の有無)について
 証拠(甲九、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、従前から、被告は、自己の
経営する法律事務所の事務員の退職金支払について就業規則を定めていなかったこ
と、原告は、東京都新宿区〈以下略〉所在の建物「四谷弁護士ビル」五階にある被
告経営の法律事務所に勤務していたが、平成元年ころ、同じ階にある複数の法律事
務所に勤務する事務員同士の情報交換によって知った他の法律事
務所の事務員の給料や待遇などを被告に話した際、被告は、原告に対し「うちの事
務所の退職金は二年目から退職時の給料の勤続年数分だ。」と説明したこと、それ
まで退職金のことなど考えたことがなかった原告が驚いて「あっ、退職金はあるん
ですか。」と聞き返すと、被告は退職金はある旨述べて、右説明が真実である旨確
認したこと、右やりとりにおける被告の態度は真摯な様子であって、単に原告の歓
心を買うための行きがかりによる発言であるとか、冗談の積もりであるというよう
な雰囲気はなかったこと、その後、原告は被告に対して何度か退職したい旨の意向
を示したが、そのたびごとに、被告から退職金を支払うからと言って慰留されてき
たこと、平成六年二月二八日原告が退職するに至ったのは、当日被告の妻から、電
話で「あなたの給料が払えない。このままでは、うちは破産するしかない状態だか
ら辞めてもらいたい。」などと強く退職を求められ、被告からも「そういうことだ
から申し訳ない。」などと右退職の求めに応ずるよう懇願されたことによるもので
あること、以上の事実が認められる。
 以上によれば、被告は原告の退職時の月給の勤続年数分の退職金を支払う旨の合
意が、平成元年ころ、原、被告間に成立したことを認めることができる。
二 争点2(退職金の算定額)について
 前記認定の、被告は原告の退職時の月給の勤続年数分の退職金を支払う旨の合意
にいう「退職時の月給」とは、その文言の合理的解釈に徴して、退職時の基本給を
意味するものと考えられるところ、証拠(乙六、被告本人)及び弁論の全趣旨によ
れば、原告の退職時の基本給は月額二〇万六四〇〇円であったことが認められるか
ら、これに原告の勤続年数(昭和六〇年一二月二日から平成六年二月二八日までの
期間に対応するもので、一年未満の期間は日割り計算による。)を乗ずれば、原告
の退職金は一七〇万一五二七円と算定される。
 なお、原告は、退職時である平成六年二月二八日からの遅延損害金の支払を求め
ているが、労働基準法二三条一項の定めるところによれば、被告の退職金債務は、
請求後七日間を経過して遅滞に陥るものと解されるところ、証拠(甲四、乙三、
原、被告各本人)によれば、原告は、平成七年一月二五日被告に対して退職金の支
払を請求したことが認められるから、被告は、同年二月二日遅滞に陥ったものと認
められるので、原告は、被告に対し、同日(原告は、
遅延損害金の起算日として、同日をも予備的に主張しているものと善解することが
できる。)から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求め
ることができる。
三 まとめ
 以上によれば、原告の本訴請求は主文第一項の限度で理由があるから、これを認
容し、その余は棄却すべきである。なお、被告申立ての仮執行免脱宣言について
は、一三〇万円の担保を供することを条件として、これを付することを相当と認め
る。
東京地方裁判所民事第一一部
裁判官 福岡右武

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