弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原告の訴はこれを却下する。
     訴訟費用は原告の負担とする。
         事    実
 原告訴訟代理人は(昭和二十六年四月二十三日施行の熊本県a郡a町々長選挙の
効力に関し原告のなした訴願について被告が昭和二十七年三月五日になした訴願却
下の裁決を取消す。右選挙は無効とする。訴訟費用は被告の負担とする」という判
決を求めその請求原因として、
 一、 原告は昭和二十六年四月二十三日施行の熊本県a郡a町町長選挙における
選挙人であつて、右選挙の効力に関し同年五月六日a町選挙管理委員会に異議の申
立をしたところ、同委員会は同月二十八日異議を棄却する旨の決定をなし、その決
定書は同月三十日原告に交付された。そこで原告は該決定に不服があつたので被告
宛の訴願書を作成したが、その訴願書を被告に提出すべきところを誤つて同年六月
十七日a町選拳管理委員会に提出したところ、同委員会も亦誤つてこれを受理し、
同月二十五日委員会を開いて弁明書を作成しこれを添付して同月二十六日該訴願書
を被告に移転した。
 二、 しかるに被告は右訴願書が被告に移送されたのは法定の訴願提起期間経過
後であつて訴願は不適当だとして訴願の内容について審査することなく昭和二十七
年三月五日訴願を却下する旨の本件裁決をなし、該裁決書は即日原告に送付され
た。
 三、 しかし原告において訴願書の提出先を誤つたとはいえ、a町選挙管理委員
会に訴願書を提出したのは法定の期間内であつて、しかも同委員会が法規の誤解に
よつて委員会を開いて弁明書を作成添付する等の手続をとらず、訴願書を直ちに原
告に差戻すか又は被告に移送すれば、法定の期間内に被告に受理されていた筈であ
るから訴願提起期間の遵守について原告には懈怠がなかつたものといわなければな
らない。又既に訴願書が被告に移送された以上は、公職選挙法第二百十九条によつ
て民事訴訟法第三十条第三十一条の適用があるのみならず、行政事件訴訟特例法第
七条の精神に鑑み且つ公職選挙法の施行後日がなお浅く細密な手続規定が一般に普
及していない実情に照して、被告は原告に期間の懈怠がなかつたものとして訴願の
内容を審査裁決すべきにかかわらず、訴願書の提出先を誤つた点に重大な過失があ
るとして訴願却下の裁決をしたのは違法である。
 四、 そこで訴願の内容について述べると、本件選挙は左記の事由によつて無効
である。
 (1) 第一乃至第四投票所において合計百一名の代理投票が行われているが、
これらの代理投票は公職選挙法第四十八条所定の条件に該当しない選挙人によつて
なされ、且つ同法施行令第三十九条の手続がとられていない。
 (2) 投票中に同一筆蹟と認められるものが多く、字体によつてこれを類別す
ると十数類となり、各類の数は十票乃至四十票で累計三百票の多数に及び、不正投
票が行われたことが明白である。
 (3) 公職選挙法第四十九条の不在者投票について。
 (イ) A外十五名はa町に住所を有しないにかかわらず不在者投票をしたこと
になつている。
 (ロ) 不在者投票をするには公職選挙法施行令第五十条によつてa町選挙管理
委員会の委員長に対し不在者投票事由を証明し投票用紙等の交付請求をすると同時
に、同施行令第五十二条所定の証明書を提出しなければならないにかかわらず、か
ような手続がなされずに不在投票が行われている。
 (ハ) 同施行令第五十六条によると不在者投票について、同条所定の手続をと
らず且立会人を立会わせないで不在者投票が行われている。
 (ニ) 不在者投票の代理投票について、同施行令第五十六条第二項(第三項の
誤記と認められる)の手続がとられていない。
 (ホ) 同施行令第五十八条による不在者投票について、同条所定の手続がとら
れていない。
 (ヘ) 同施行令第六十条所定の投票用封筒等の記載手続及び送致手続がとられ
ていない。
 (ト) 同施行令第六十一条所定の調書の作成及びその送致手続がとられていな
い。
 (チ) 投票管理者が同施行令第六十三条所定の受理又は不受理の決定をなさず
且つ第四投票所の投票箱の上蓋には異つた二個以上の錠が設けられないで、封印を
破棄し合鍵で投票箱を開いた疑がある。
 五 そこで本件裁決を取消して本件選挙を無効とする旨の判決を求める。
 と陳述し、立証として甲第一号証の一、二、第二及び第三号証を提出した。
 被告代表者は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」という判
決を求め、答弁として、原告主張の一の事実はこれを認める。公職選挙法第二百二
条第三項には「その決定に不服がある者は、その決定があつた日から二十一日以内
に文書で当該都道府県の選挙管理委員会に訴願を提起することができる」と規定し
てあつて、この規定は訴願書の提出期間及び提出先を定めたものであるから、原告
が訴願書の提出先を誤り現に被告がその訴願書を受理したのが期間経過後である以
上は、仮に原告主張のように期間内に到達すべかりしものであつたとしても、本件
訴願が適法に提起されたものとはいえない。すなわち公職選挙法第二百十六条は訴
願法の適用について特に条文を指定制限し、処分決定庁の経由、期間経過後の宥恕
弁明書の添付等を認めないのであるから、訴願人は期間内に訴願書提出先たる県選
挙管理委員会に到達するよう訴願書を直接同委員会に提出しなければならない。原
告は公職選挙法第二百十九条の規定が訴願の場合にも適用があるように主張するけ
れども、同条は訴訟に関する規定であつて訴願の場合には適用がない。又公職選挙
法施行後本件訴願までには既に一年以上を経過している以上、法の手続規定が普及
していなかつたという原告の主張は、単に自己の非を蔽わんとする口実に過ぎな
い。要するに本件訴願は法定の期間経過後になされたものであるから、これを却下
した被告の本件裁決は正当であつて、原告の本訴請求は理由がない。
 と陳述し、甲号各証の成立を認めた。
         理    由
 昭和二十六年四月二十三日施行された熊本県a郡a町々長選挙について、原告は
選挙人として同年五月六日a町選挙管理委員会に選挙の効力に関する異議の申立を
なしたところ、同委員会は同月二十八日異議を棄却する旨決定をなし、その決定書
は同月三十日原告に交付されたこと、原告はその決定を不服として同年六月十七日
被告宛の訴願書をa町選挙管理委員会に提出したところ、同委員会はその訴願書に
弁明書を添付して同月二十六日これを被告に送付したので、被告はその訴願を法定
期間経過後になされた不適法の訴願として昭和二十七年三月五日訴願を却下する旨
の本件裁決をなしたことは、いずれも当事者間に争のないところである。
 さて公職選挙法による選挙又は当選の効力に関する訴願については本来ならば訴
願法の各規定が当然適用される筈であるが、公職選挙法第二百二条第三項及び第二
百六条第三項にはそれぞれ、選挙又は当選の効力に関する異議について市町村選挙
管理委員会のなした決定に不服がある者は、その決定があつた日から二十一日以内
に文書で当該都道府県の選挙管理委員会に訴願を提起することができる旨を規定
し、同法第二百十六条には訴願法の規定の一部を掲げてこれを右の訴願に適用する
旨を規定しているのである。それは主として選挙関係の争訟を迅速に解決するため
訴願の提起期間及びその手続等に関し訴願法に対する特例を定め訴願法の適用を制
限する趣旨によるものであつて、同条に掲げていない訴願書の経由及び期間経過後
の訴願の宥恕等に関する訴願法第二条、第八条第三項、第十一条の規定は選挙又は
当選の効力に関する訴願についてはその適用がない<要旨>ものと解するのが相当で
ある。従つて選挙又は当選の効力に関し訴願を提起するには、法定の期間内に訴願
を訴願庁たる当該都道府県の選挙管理委員会に提出しなければならないの
であつて、前審庁たる市町村選挙管理委員会に訴願書を提出しても、その訴願書が
法定の期間内に訴願庁に廻送されなければ適法な訴願の提起があつたとはいえな
い。たとい前審庁がその訴願書を直ちに訴願人に差戻し又は訴願庁に廻送すれば期
間を遵守し得たにしても、もともと前審庁に提出したこと自体が訴願人の過失であ
るのみならず前段説明のとおり訴願法第八条第三項の宥恕に関する規定はこの場合
にその適用がないから、期間の懈怠がないとはいえない。なお原告はこの点に関し
公職選挙法第二百十九条並に民事訴訟法及び行政事件訴訟特例法の規定を援用して
反対の見解を主張するけれども、これらの規定は訴訟に関する規定であつて訴願に
ついてはその適用がないから所論は理由がない。
 さすれば本件において、原告が本件異議決定書の交付を受けたのは昭和二十六年
五月三十日であるから、その決定に対し訴願を提起するには右決定書交付の日から
二十一日以内すなわち同年六月二十日までに訴願書を管轄訴願庁たる被告に提出し
なければならないわけであるが原告は本件訴願書をa町選挙管理委員会に提出した
ため、該訴願書は法定の期間経過後たる同月二十六日同委員会より被告に送付され
たのであるから、本件訴願は不適法である。従つて該訴願を却下した被告の本件裁
決は相当であつて、本訴は結局適法の訴願を経由しなかつたことになるから本訴も
亦不適法といわなければならない。
 そこで本訴は不適法としてこれを却下すべきものと認め、訴訟費用の負担につい
て民事訴訟法第八十九条を適用し主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 森静雄 判事 竹下利之右衛門 判事 中園原一)

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