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平成18年(行ケ)第10078号審決取消請求事件(平成18年11月16
日口頭弁論終結)
判決
原告サムスンエレクトロニクス
カンパニーリミテッド
訴訟代理人弁理士伊東忠彦
同湯原忠男
同大貫進介
同伊東忠重
被告特許庁長官中嶋誠
指定代理人長島孝志
同山本春樹
同小池正彦
同大場義則
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日
と定める。
事実及び理由
第1請求
特許庁が不服2003−6284号事件について平成17年10月4日にし
た審決を取り消す。
第2当事者間に争いがない事実
1特許庁における手続の経緯
原告は,平成10年6月24日,発明の名称を「ホームネットワークのため
のプログラミングツール」とする発明について特許出願(特願平11−504
059号,優先権主張1997年〔平成9年〕6月25日,同年9月22日・
米国)をしたが,平成15年1月14日(送達日)に拒絶査定を受けたので,
不服審判の請求をした。
特許庁は,これを不服2003−6284号事件として審理し,平成17年
10月4日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本
は,同月18日,原告に送達された。
2特許法184条の6第2項の規定により願書に添付した明細書とみなされる
その国際出願に係る明細書の翻訳文(甲1,以下「本件明細書」という。)の
特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)の
要旨
プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連さ
れたマルチメディア物を識別する時,ホームネットワークに対してプログラム
ガイドを発生する方法において,
第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する段階と,
第1家電機器と関連された識別されたマルチメディア物によってHTMLペ
ージを発生する段階と,
第1家電機器の接近可能な領域に前記HTMLページを貯蔵する段階とを含
むことを特徴とする方法。
3審決の理由
()審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本願発明が,特開平7−4441
77号公報(甲2,以下「引用例1」という。)に記載された発明(以下
「引用発明1」という。)及び特開平9−146973号公報(甲3,以下
「引用例2」という。)に記載された発明(以下「引用発明2」という。)
に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許
法29条2項の規定により特許を受けることができないとした。
()審決が認定した,本願発明と引用発明1の一致点及び相違点は,それぞれ2
次のとおりである(審決謄本7頁第5段落)。
ア一致点
プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関
連されたマルチメディア物を識別する時,ホームネットワークに対してプ
ログラムガイドを発生する方法において,
第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する段階と,
第1家電機器と関連された識別されたマルチメディア物によってプログ
ラムガイドを発生する段階を含む方法。
イ相違点
本願発明においては,発生させる「プログラムガイド」が「HTMLペ
ージ」であり,「第1家電機器の接近可能な領域にHTMLページを貯蔵
する」ものであるのに対し,引用例1には,そのようなことについて記載
されていない点。
第3原告主張の審決取消事由
審決は,本願発明と引用発明1の一致点の認定を誤り(取消事由1),相違
点を看過し(取消事由2),相違点についての判断を誤り(取消事由3),相
違点についての判断の遺漏があり(取消事由4),違法であるから,取り消さ
れるべきである。
1取消事由1(一致点の認定の誤り)
(1)審決は,「本願発明と引用例1記載の発明(注,引用発明1)とを対比す
ると,まず,引用例1記載の発明における『デジタルVTR』は,本願発明
における『第1家電機器』に相当する。」(審決謄本6頁第4段落)と認定
したが,誤りである。
ア本願発明の特許請求の範囲には,「第1家電機器の接近可能な領域に前
記HTMLページを貯蔵する」と記載され,本件明細書における要約書に,
「HTML第1」ページは家電機器上のアクセス可能な領域に貯蔵される。
と記載されているように,HTMLページは,第1家電機器の接近可能な
領域に蓄積される。そして,本件明細書の特許請求の範囲の請求項2には,
「ブラウザー基盤の第2家電機器をホームネットワークに連結させる段階
と,第1家電機器からホームネットワークを介して第2家電機器で前記H
TMLページを受信する段階と,第2家電機器が提供されるHTMLペー
ジをディスプレーするための表示ユニットを具備する・・・」と記載され
ているところ,これは,第2家電機器が,ブラウザー基盤の家電機器である
ホームネットワークに接続して,第1家電機器からHTMLページを受信
家電機器によって,生成され,蓄積されするもので,HTMLページが第1
ていることを前提としている。
したがって,本願発明の第1家電機器は,HTMLページを生成して,
蓄積しているものである。
イ一方,引用発明1のデジタルVTR203は,リモートコントロールさ
れる家電機器であり,単なるディジタルVTRであって,本願発明の「第
1家電機器」にように,HTMLページ」を作成「プログラムガイド」である「
・蓄積する役割・機能を有していない。
ウしたがって,引用発明1の「デジタルVTR」は,本願発明の「第1家
電機器」とは,家電機器である点で一致するものの,「ホームネットワー
クに対してプログラムガイドを発生する方法」における役割・機能は全く
異なるものである。
()審決は,「引用例1記載の発明(注,引用発明1)における『LANに接2
続された種々のマルチメディア機器を表示する画面』や『デジタルVTRの
コントロールパネル表示画面』は,画面上のアイコン表示が,利用者に対す
る操作上のガイダンス表示となっているので,本願発明における『プログラ
ムガイド』に相当するということができる。」(審決謄本6頁最終段落∼7
頁第1段落)と認定したが,誤りである。
ア本願発明において,「プログラムガイド」は,ホームネットワークに連
結された家電機器の有するマルチメディア物(いわゆるマルチメディアコ
ンテンツ)を識別するためのプログラムガイドであって,当該ホームネッ
トワークにおける使用者に利用可能なマルチメディア物(いわゆるマルチ
メディアコンテンツ)のリストを提供するものである。
すなわち,本願発明において,「マルチメディア物」とは,本件明細書
の「ホームネットワークプログラムガイド」の項(40頁)に,「使用者
に利用可能なマルチメディア物(例えば,オーディオ及びビデオプログラ
ム,TVプログラム及びCD)」と記載されているように,オーディオプ
ログラム,ビデオプログラム,TVプログラム及びCD等の,いわゆる,
「マルチメディアコンテンツ」である。
そして,本件明細書の「発明の開示」の項(3頁)に,「本発明の他の
ホームネットワークに連結された家電機器と関連されたマルチメディア物目的は
を識別するためにホームネットワークに対するプログラムガイドを発生する方法を
本発明のさらに具体的な目的は,少なくとも機器のう提供することである。
ち1つがマルチメディア機器のホームネットワークに連結された多数の機
器を制御し,ホームネットワークに連結された第2家電機器上にマルチメ
ディア機器により提供された情報に対するプログラムガイドを発生するた
めの方法を提供することである。」と記載されているとおり,本願発明に
おいて,「プログラムガイド」とは,「ホームネットワークプログラムガ
イド」であって,ホームネットワークと関連付けられて作成されて,当該
ホームネットワークにおける使用者に利用可能なマルチメディア物(いわ
ゆるマルチメディアコンテンツ)のリストを提供するものである。
このことは,本件明細書の「ホームネットワークプログラムガイド」の
項(40頁)に,「プログラムガイド」について,「使用者に利用可能な
マルチメディア物(例えば,オーディオ及びビデオプログラム,TVプロ
グラム及びCD)のリストを提供するために,1つ以上のホームネットワ
ークプログラムガイドがホームネットワークと関連付けられる。」と記載
され,また,同項(41頁)に,「ホームネットワークプログラムガイ
ド」は,DBSSから受信されたEPGに加えて,ホームネットワークに
接続されている家電機器で現在利用可能な映画,ゲーム,CD等のいわゆ
るマルチメディアコンテンツアのリストを表示することができる旨の記載
があることからも裏付けられる。
イこれに対し,引用発明1における「LANに接続された種々のマルチメ
ディア機器を表示する画面」は,マルチメディア機器を表示するのみであ
り,マルチメディアコンテンツのリストを提供するものではない。
ウ被告は,本件訴訟において,「マルチメディア物」とは,「マルチメデ
ィア機器により提供されるデータ,すなわち,プログラムである」旨主張
するが,審決においては,「マルチメディア物」は,「マルチメディア機
器に関連するデジタル的なデータ」であるとし,その上で,選択情報を
「マルチメディア物」であると判断したものである。すなわち,審決にお
ける「マルチメディア物」の解釈と,本件訴訟における被告の「マルチメ
ディア物」解釈は異なるものであり,審決と異なった解釈に基づく被告の
主張は,失当である。
また,被告は,審判段階における,審尋に対する平成17年8月17日
付け原告の回答書(乙2,以下「本件回答書」という。)の記載を根拠と
して,「マルチメディア物」について,「オーディオプログラム,ビデオ
プログラム,TVプログラム及びCD等であって,いわゆる,『マルチメ
ディアコンテンツ』である。」との限定的解釈は何らされておらず,「マ
ルチメディア物」には,そのような「マルチメディアコンテンツ」以外に
「制御プログラム」等の制御データをも含むと解すべきである旨主張する
が,失当である。
特許出願に係る発明の解釈の基本は,最高裁平成3年3月8日判決・民
集45巻3号123頁で判示されるとおり,特許請求の範囲の記載であり,
特許請求の範囲の技術的意義が一義的に明確に理解できない場合に,明細
書の記載を参酌して,解釈すべきである。本願発明の特許請求の範囲に記
載された「マルチメディア物」は,本件明細書の記載を参酌したとしても,
「オーディオプログラム,ビデオプログラム,TVプログラム及びCD
等」を意味し,いわゆる「マルチメディアコンテンツ」である。
本件回答書において,「マルチメディア物」に関して,本件明細書で示
された内容を超えて説明した点で,不適切な点があったことは否定しない
が,特許法36条6項1号に「特許を受けようとする発明が発明の詳細な
説明に記載したものであること」と規定されているように,特許出願に係
る発明は,発明の詳細な説明に記載したものでなければならないのである
から,特許請求の範囲に記載された「マルチメディア物」について,本件
明細書で示された内容を超えて解釈するのは相当でない。
なお,被告は,「マルチメディア物」には,「マルチメディアコンテン
ツ」以外に「制御プログラム」等の制御データも含むと解すべきである旨
主張し,その根拠として,後記第4の1(2)イのとおり,本件明細書の1
1頁27行目∼12頁14行目及び12頁20行目∼13頁3行目の記載
を挙げる。しかし,当該箇所は,本件明細書の図1のシステムにおけるD
TV102と家電機器との間の「HTMLツーウェイメカニズム」及び家
電機器が具備する「HTMLファイル」が説明されているものであり,
「マルチメディア物」が説明されている箇所ではなく,「マルチメディア
物」に関する被告の主張を裏付けるものではない。
エ被告は,本件回答書の記載を根拠として,「プログラムガイド」につい
て,「ホームネットワークと関連付けられて作成されて,当該ホームネッ
トワークにおける使用者に利用可能なマルチメディア物いわゆるマルチ(
メディアコンテンツのリストを提供する」という限定的解釈がされてい)
ない旨主張する。
しかし,本願発明の特許請求の範囲に記載された「プログラムガイド」
は,それ自体,明確な概念である。原告は,念のために,明細書を参酌し
て,「『プログラムガイド』は,『ホームネットワークプログラムガイ
ド』であって,この『ホームネットワークプログラムガイド』は,ホーム
ネットワークと関連付けられて作成されて,当該ホームネットワークにお
ける使用者に利用可能なマルチメディア物いわゆるマルチメディアコン(
テンツのリストを提供するために用いられる。」と,「プログラムガイ)
ド」の用いられ方を明示することによって,「ホームネットワークプログ
ラムガイド」の技術的意義を明らかにしたものであって,「プログラムガ
イド」を限定解釈したものではない。
本件回答書は,「プログラムガイド」に関して,本件明細書で示された
内容を超えて説明した点で,不適切な点があったことは否定しないが,出
願に係る発明は,特許請求の範囲の記載に基づいて解釈すべきであり,特
許請求の範囲の技術的意義が一義的に明確に理解できない場合は,明細書
の記載を参酌して,解釈すべきである。
また,被告は,本件明細書において,「1つの機器のHTMLファイル
に含まれた情報が一度DTV202上に図式的にディスプレーされると,
使用者はDTVのスクリーン上にディスプレーされた制御プログラムを,
開始する関連ハイパーリンクを有するアイコンを選択してまたはデータ/
をDTV202に入力することによってDTV202からその家電機器2
04を制御しうる。」(12頁9行目∼14行目)と記載されていること
から,「制御プログラム」を示す「アイコン」は,「プログラムを示す図
表」であり,このようなものも「プログラムガイド」を構成する旨主張す
る。
しかし,上記箇所の文は原文(英文)では,「使用者はDTVのスクリ
ーン上にディスプレーされた(制御プログラムを開始する関連ハイパーリ
ンクを有する)アイコンを選択して・・・DTV202からその家電機器
204を制御しうる。」という構造の文章であり,表示されるのはアイコ
ンであって,制御プログラムではない。ユーザが表示されたアイコンを選
択することによって,アイコンに関連した制御プログラムの処理が開始さ
れるものである。
したがって,「制御プログラム」を示す「アイコン」が「プログラムを
示す図表」であるから,このようなものも「プログラムガイド」を構成す
る旨の主張は,誤りである。
()審決は,「引用例1記載の発明(注,引用発明1)において『LANに接3
続された種々のマルチメディア機器を表示する画面上でデジタルVTRを表
すアイコン表示をダブルクリック』することは,画面に表示された種々のマ
ルチメディア機器のうち,デジタルVTRを選択したことを識別させる,す
なわち,デジタルVTRと関連する選択情報(これはマルチメディア機器に
関連するデジタル的なデータ,すなわち『マルチメディア物』である。)を
識別させることになるから,本願発明において『プログラムガイドがホーム
ネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識
別する』ことに相当する。」(審決謄本7頁第2段落)と認定するが,誤り
である。
ア本願発明において,「プログラムガイドがホームネットワークに連結さ
れた第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する」とは,プロ
グラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連され
たマルチメディア物(いわゆるマルチメディアコンテンツ)を識別すること
をいう。
イ引用例1の図17の画面においては,LANに接続された種々のマルチ
メディア機器がアイコン表示されていて,利用者が,デジタルVTRのア
イコンをダブルクリックすると,デジタルVTRを制御する画面に遷移し
てデジタルVTRを操作するためのボタンが表示される画面(図24)と
なり,TVのアイコンをダブルクリックすれば,TVを制御する画面に遷
移するように,引用発明1において,「LANに接続された種々のマルチ
メディア機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダ
ブルクリック」することは,ユーザが,表示された複数の家電機器の中か
ら,これから使用するデジタルVTRを選択することであって,デジタル
VTRを「選択したことを識別させる」ものではないし,デジタルVTR
と関連する選択情報を識別させることではない。
そして,上記認定に当たり,審決は,選択情報は,マルチメディア機器
に関連するデジタル的なデータであるので,「マルチメディア物」である
としているが,「マルチメディア物」は,いわゆる,「マルチメディアコ
ンテンツ」であるのに対し,選択情報は選択のためのデータであるから,
審決の認定は誤りである。
()審決は,「上記したように,『コントロールパネル表示画面』も本願発明4
における『プログラムガイド』に相当するということができることから,引
用例1記載の発明において『デジタルVTRのコントロールパネル表示画面
を発生する』ことは,本願発明において『ホームネットワークに対してプロ
グラムガイドを発生する』ことに相当する。」(審決謄本第7頁第3段落)
とするが,誤りである。
引用発明1における「コントロールパネル表示画面」は,本願発明におけ
る「プログラムガイド」に相当するものではなく,審決の上記認定は,「コ
ントロールパネル表示画面」が本願発明における「プログラムガイド」に相
当するとの誤った認定を前提としてされたものである。
(5)審決は,「本願発明と引用例1記載の発明(注,引用発明1)とは,とも
に,『プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と
関連されたマルチメディア物を識別する時,ホームネットワークに対してプ
ログラムガイドを発生する方法において,第1家電機器と関連されたマルチ
メディア物を識別する段階と,第1家電機器と関連された識別されたマルチ
メディア物によってプログラムガイドを発生する段階を含む方法。』である
点で一致」(審決謄本7頁第5段落)すると認定するが,誤りである。
①引用発明1における「デジタルVTR」は,本願発明における「第1
家電機器」に相当するものではなく,②引用発明1における「LANに接
続された種々のマルチメディア機器を表示する画面」や「デジタルVTRの
コントロールパネル表示画面」は,本願発明における「プログラムガイド」
に相当するものではなく,③引用発明1において「LANに接続された種
々のマルチメディア機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン
表示をダブルクリック」することは,本願発明のように「プログラムガイド
がホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディ
ア物を識別する」ものではなく,④引用発明1において「デジタルVTR
のコントロールパネル表示画面を発生する」ことは,本願発明において「ホ
ームネットワークに対してプログラムガイドを発生する」ことに相当するも
のではないので,本願発明と引用発明1とは,ほとんどの構成において相違
している。
(6)被告は,引用例1の段落【0107】に,「各装置に挿入されているテー
プの内容一覧」が表示されていることを挙げて,これは,「マルチメディア
コンテンツ」をリスト表示することと実質的に同様のものであり,引用例1
において,「マルチメディアコンテンツ」をリスト表示することも明らかに
されているから,原告が,引用例1において,「マルチメディアコンテン
ツ」の記載がないことを根拠として主張を展開していること自体が失当であ
る旨主張するが,理由がない。
原告は,引用例1において,「マルチメディアコンテンツ」の記載がない
ことを根拠として準備書面で主張を展開したものではない。なお,ディジタ
ルVTRにおいて,VTRテープの内容を表示することは,周知の事項であ
って,引用例1の摘示された箇所には,単に,周知の事項が記載されている
にすぎない。
2取消事由2(相違点の看過)
審決は,「本願発明においては,発生させる『プログラムガイド』が『HT
MLページ』であり,『第1家電機器の接近可能な領域にHTMLページを貯
蔵する』ものであるのに対し,引用例1には,そのようなことについて記載さ
れていない点。」(審決謄本7頁第5段落)を相違点と認定したが,誤りであ
る。
上記1のとおり,本願発明と引用発明1は,ほとんどの構成において相違し
ており,相違点として上記相違点のみを認定したのは誤りであり,審決は,そ
の余の相違点を看過している。
3取消事由3(相違点についての判断の誤り)
審決は,相違点について,「上記引用例2に見られるように,種々のシステ
ムにおいて,HTMLページを発生,貯蔵し,それを利用することは,従来か
ら行われていることである。してみれば,引用例1記載の発明(注,引用発明
1)において,発生される『デジタルVTRのコントロールパネル表示画面』
を『HTMLページ』とすることは,当業者が適宜に設計できる事項であるも
のと認められ,さらにそれをデジタルVTRの接近可能な領域に貯蔵するよう
にすることも,当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。
そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,引用例1,2に記載の
発明(注,引用発明1及び2)から当業者ならば容易に予測することができる
程度のものであって,格別のものとはいえない。」(審決謄本7頁第7段落∼
8頁第1段落)と判断したが,誤りである。
審決の上記判断は,「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面」が,
本願発明における「プログラムガイド」に相当するとするなどの誤った認定を
前提としたされたものであり,誤っている。
また,「HTMLページ」は,「プログラムガイド」であるところ,引用例
2には,「プログラムガイド」を発生,貯蔵し,それを利用することについて,
記載も示唆もされておらず,この点についての審決の判断は,根拠を欠き,理
由がない。
4取消事由4(相違点についての判断の遺漏)
本願発明と引用発明1は,上記のとおり,ほとんどの構成において相違して
いるにもかかわらず,審決は,相違点として摘示した,「本願発明においては,
発生させる『プログラムガイド』が『HTMLページ』であり,『第1家電機
器の接近可能な領域にHTMLページを貯蔵する』ものであるのに対し,引用
例1には,そのようなことについて記載されていない点。」について判断をし
たにとどまり,その余の相違点についての判断をしなかったものであって,相
違点についての判断の遺漏が存在する。
第4被告の反論
審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1取消事由1(一致点の認定の誤り)について
()原告は,引用発明1における「デジタルVTR」は,本願発明における1
「第1家電機器」に相当しない旨主張するが,審決においては,引用発明1
における「デジタルVTR」が,本願発明における「第1家電機器」に「相
当する」構成であると認定しているだけであり,双方が完全に一致している
と認定しているわけではなく,両発明の相違点として,「本願発明において
は,発生させる『プログラムガイド』が『HTMLページ』であり,『第1
家電機器の接近可能な領域にHTMLページを貯蔵する』ものであるのに対
し,引用例1には,そのようなことについて記載されていない点」を認定し
ているのであるから,審決の認定には,誤りはない。
()原告は,本願発明の「プログラムガイド」は,ホームネットワークに連2
結された家電機器の有するマルチメディア物(いわゆるマルチメディアコン
テンツ)を識別するためのプログラムガイドであって,当該ホームネットワ
ークにおける使用者に利用可能なマルチメディア物(いわゆるマルチメディ
アコンテンツ)のリストを提供するものであるのに対し,引用発明1におけ
る「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面」や「デ
ジタルVTRのコントロールパネル表示画面」は,マルチメディア物(いわ
ゆるマルチメディアコンテンツ)のリストを提供するものではないことを根
拠として,引用発明1における「LANに接続された種々のマルチメディア
機器を表示する画面」や「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面」
は,本願発明における「プログラムガイド」に相当しない旨主張するが,失
当である。
ア本願発明においては,特に「マルチメディア物」という用語がどのよう
な意味で用いられているかが明確でなかったところから,「マルチメディ
ア物」及びそれに関連する「プログラムガイド」,「HTMLページ」等
について,審判段階において,その内容を明らかにするため,原告(請求
人)に対する審尋が行われた。その際,原告は,本件回答書において,
「プログラムガイド」とは,マルチメディア機器により提供されるデータ,
すなわち,プログラムを示す図表及びそれを生成するための手段であり,
「マルチメディア物」とは,マルチメディア機器により提供されるデータ,
すなわち,プログラムであり,「プログラムガイドがホームネットワーク
に連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する時,
ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する」とは,ホーム
ネットワークに連結された第1の家電機器に含まれるマルチメディアのデ
ータあるいはプログラムを手段であるプログラムガイドが識別したときに,
ホームネットワークに対して第1の家電機器に含まれるプログラムを含む
図表であるプログラムガイドを生成することであり,「第1家電機器と関
連されたマルチメディア物」とは,第1家電機器に含まれるマルチメディ
アデータ,或いは,プログラムであり,「マルチメディア物によってHT
MLページを発生する」とは,マルチメディアデータ,あるいはプログラ
ムに対応するHTMLページを発生することであると回答した。
本件回答書によれば,原告は,「マルチメディア物」について,「マル
チメディア機器により提供されるデータ,すなわち,プログラムである」
としているのであって,オーディオプログラム,ビデオプログラム,TV
プログラム及びCD等のいわゆる「マルチメディアコンテンツ」であると
の限定的解釈は何らしていない。
イまた,本件明細書には,「図3Aはブラウザー基盤のDTV202(ク
ライアント)がホームネットワークを通して家電機器204(サーバ)の
特徴を提供する典型的な実施例を示す。家電機器204は家電機器204
内の接近可能な領域に貯蔵された1つ以上のHTMLファイルにより表現
される。1つ以上のHTMLファイルは特定の家電機器204に属する具
体的な情報を,ブラウザーがその情報を図式的に表示可能にするデータと
共に含むSCテキストファイルである。・・・1つの機器のHTMAII
Lファイルに含まれた情報が一度DTV202上に図式的にディスプレー
されると,使用者はDTVのスクリーン上にディスプレーされた制御プロ
グラムを,開始する関連ハイパーリンクを有するアイコンを選択して/ま
たはデータをDTV202に入力することによってDTV202からその
家電機器204を制御しうる。」(11頁27行目∼12頁14行目)と
の記載があり,また,「視覚的なディスプレー(即ち,スクリーン)を備
えてブラウザー技術を採用するホームネットワークに連結された機器は,
ホームネットワークに連結された家電機器と関連したHTMLファイルを
受信及び解釈し,GUIを使用して自体のスクリーン上にファイル内に含
まれた情報を図式的にディスプレーする。これが図3Aに示され,ここで
クライアントとサーバの実行可能なものとの間の相互作用が見られる。し
かし,本発明の特徴は2つのサーバまたはクライアントと多数のサーバの
実行可能なものとの間の相互作用により制御を提供するということである。
従って,本発明によれば,制御は一般にサービス制御プログラム(遠隔的
に作動させようとする実行可能なもの等),通信,命令及び(必要なら
ば)GUIを通したサーバ制御プログラムとのヒューマンインターフェー
スにより行われる。」(12頁20行目∼13頁3行目)との記載がある。
「マルチメディア物」を限定的に解釈することは,特許請求の範囲の記
載に基づくものではなく,また,本件回答書の内容は,本件明細書の記載
および技術常識に照らして,常識的な解釈といえるものであり,さらに,
本件明細書の上記記載に照らしても,「マルチメディア機器により提供さ
れるデータ,すなわち,プログラム」である「マルチメディア物」には,
「オーディオプログラム,ビデオプログラム,TVプログラム及びCD
等」のいわゆる「マルチメディアコンテンツ」以外に,「制御プログラ
ム」等の制御データをも含むと解すべきである。
ウなお,仮に,「マルチメディア物」が「マルチメディアコンテンツ」で
あると限定的に解釈したとしても,引用例1には,「図30()において,a
302311はテープ挿入表示部であり各装置内にテープが挿入されて,
いるか否かを表示している。303,312はカウンターであり各装置に
挿入されているテープの走行時間が表示される。304,313は各装置
に挿入されているテープの内容一覧を表示するためのボタンオブジェクト
でありこのボタンオブジェクトをマウスでクリックすることによりテープ
の内容一覧が表示される。305,314ボタンオブジェクトであPlay
りこのボタンオブジェクトをマウスでクリックすることにより各機器は再
生を行う。」(段落【0107】)との記載があり,「各装置に挿入され
ているテープの内容一覧」が表示されている。
この「テープの内容一覧」は,「マルチメディアコンテンツ」をリスト
表示することと実質的に同様のものであり,引用例1には,「マルチメデ
ィアコンテンツ」をリスト表示することも明らかに示されているから,原
告が,引用例1において,「マルチメディアコンテンツ」をリスト表示す
ることの記載がないことを主張の根拠としていることは,失当である。
エ原告は,本件回答書において,「プログラムガイド」について,「マル
チメディア機器により提供されるデータ,すなわち,プログラムを示す図
表及びそれを生成するための手段である」と回答し,「ホームネットワー
クと関連付けられて作成されて,当該ホームネットワークにおける使用者
に利用可能なマルチメディア物(いわゆるマルチメディアコンテンツ)の
リストを提供する」と限定的に解釈していない。
そして,本件明細書における「1つの機器のHTMLファイルに含まれ
た情報が一度DTV202上に図式的にディスプレーされると,使用者は
DTVのスクリーン上にディスプレーされた制御プログラムを,開始する
関連ハイパーリンクを有するアイコンを選択して/またはデータをDTV
202に入力することによってDTV202からその家電機器204を制
御しうる。」(12頁9行目∼14行目)との記載によれば,「制御プロ
グラム」を示す「アイコン」は,「プログラムを示す図表」であって,こ
のようなものも「プログラムガイド」を構成することが明らかである。
すなわち,本願発明における「プログラムガイド」は,いわゆる「マル
チメディアコンテンツ」だけでなく「制御プログラム」のような制御系デ
ータをもガイダンス表示するものであり,引用発明1における「LANに
接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面」や「デジタルVT
Rのコントロールパネル表示画面」は,本願発明における「プログラムガ
イド」に相当するものであり,審決に誤りはない。
()原告は,引用発明1における「LANに接続された種々のマルチメディア3
機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリッ
ク」することが,本願発明における「プログラムガイドがホームネットワー
クに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する」こ
とに相当するとの審決の認定を争うところ,この原告の主張は,「マルチメ
ディア物」が,いわゆるマルチメディアコンテンツであることを前提とする
ものである。
しかし,上記のとおり,「マルチメディア機器により提供されるデータ,
すなわち,プログラム」である「マルチメディア物」には,「オーディオプ
ログラム,ビデオプログラム,TVプログラム及びCD等」のいわゆる「マ
ルチメディアコンテンツ」以外に,「制御プログラム」等の制御データをも
含む。
そして,「1つの機器のHTMLファイルに含まれた情報が一度DTV2
02上に図式的にディスプレーされると,使用者はDTVのスクリーン上に
ディスプレーされた制御プログラムを,開始する関連ハイパーリンクを有す
るアイコンを選択して/またはデータをDTV202に入力することによっ
てDTV202からその家電機器204を制御しうる。」(本件明細書の1
2頁9行目∼14行目)との記載に見られる本願発明の動作は,引用発明1
において,「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面
上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリック」して,表示され
た複数の家電機器の中からデジタルVTRを選択するという動作と同様の動
作であり,この場合,アイコン表示のダブルクリックにより,デジタルVT
Rと関連する選択情報が識別されるからこそ,デジタルVTRを選択して制
御することができるのであって,「デジタルVTRを選択」すれば「デジタ
ルVTRと関連する選択情報が識別される」ということは,当業者にとって
明らかなことである。
したがって,引用発明1において,「LANに接続された種々のマルチメ
ディア機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブル
クリック」することは,画面に表示された種々のマルチメディア機器のうち,
デジタルVTRを選択したことを識別させる,すなわち,デジタルVTRと
関連する選択情報(これはマルチメディア機器に関連するデジタル的なデー
タ,すなわち「マルチメディア物」である。)を識別させることになるから,
本願発明において「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第
1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する」ことに相当し,審決
の認定に誤りはない。
()原告は,引用発明1における「コントロールパネル表示画面」は本願発明4
における「プログラムガイド」に相当するものではないことを根拠として,
引用発明1において「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面を発生
する」ことは,本願発明において「ホームネットワークに対してプログラム
ガイドを発生する」ことに相当するとした審決が誤りである旨主張するが,
上記のとおり,引用発明1における「デジタルVTRのコントロールパネル
表示画面」は本願発明における「プログラムガイド」に相当するものであり,
審決の認定に誤りはない。
()原告は,審決における一致点の認定の誤りを主張するが,上記のとおり,5
引用発明1における「デジタルVTR」は,本願発明における「第1家電機
器」に相当し,引用発明1における「LANに接続された種々のマルチメデ
ィア機器を表示する画面」や「デジタルVTRのコントロールパネル表示画
面」は,本願発明における「プログラムガイド」に相当し,引用発明1にお
ける「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面上でデ
ジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリック」することは,本願発明
における「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機
器と関連されたマルチメディア物を識別する」ことに相当し,引用発明1に
おける「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面を発生する」ことは,
本願発明における「ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生す
る」ことに相当するから,審決の一致点の認定に誤りはない。
2取消事由2(相違点の看過)について
原告は,審決が,「本願発明においては,発生させる『プログラムガイド』
が『HTMLページ』であり,『第1家電機器の接近可能な領域にHTMLペ
ージを貯蔵する』ものであるのに対し,引用例1には,そのようなことについ
て記載されていない点」のみを本願発明と引用発明1との相違点と認定した点
に相違点の看過がある旨主張するが,上記1のとおり,審決における本願発明
と引用発明1の一致点の認定に何らの誤りもなく,相違点の看過もない。
3取消事由3(相違点についての判断の誤り)について
原告は,審決の本願発明と引用発明1との相違点に関する容易想到性判断に
ついて,引用発明1における「デジタルVTRのコントロールパネル表示画
面」が本願発明における「プログラムガイド」に相当するとの誤った認定を前
提としてなされたものであり,また,「HTMLページ」は「プログラムガイ
ド」であるところ,引用例2には「プログラムガイド」を発生,貯蔵し,それ
を利用することについて記載も示唆もなされていないから,誤りである旨主張
するが,失当である。
上記のとおり,引用発明1における「デジタルVTRのコントロールパネル
表示画面」は,本願発明における「プログラムガイド」に相当するから,この
認定を前提とする審決の相違点についての判断に誤りはない。
また,引用例2においては,従来の技術として「HTMLページを発生,貯
蔵し,それを利用するシステム」の発明が記載されており,このように,HT
MLページを発生,貯蔵し,それを利用することは,従来から行われているこ
とであるから,引用発明1において,発生される「デジタルVTRのコントロ
ールパネル表示画面」を「HTMLページ」とすることは,当業者が適宜に設
計できる事項であるものと認められ,それをデジタルVTRの接近可能な領域
に貯蔵するようにすることも,当業者が適宜に設計できる事項にすぎないから,
審決の判断に誤りはない。
4取消事由4(相違点についての判断の遺漏)について
原告は,審決が,相違点を看過していることを前提として,本願発明と引用
発明1の相違点についての判断の遺漏が存在する旨主張するが,上記のとおり,
審決において,本願発明と引用発明1との相違点の認定に誤りはなく,相違点
の看過もないから,原告主張のような相違点についての判断の遺漏は存在しな
い。
第5当裁判所の判断
1取消事由1(一致点の認定の誤り)について
()審決は,引用発明1の「デジタルVTR」は,本願発明の「第1家電機1
器」に相当すると認定したところ,原告はこれを争うので,検討する。
ア本願発明の特許請求の範囲は,前記第2の2のとおり,「プログラムガ
イドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチ
メディア物を識別する時,ホームネットワークに対してプログラムガイド
を発生する方法において,第1家電機器と関連されたマルチメディア物を
識別する段階と,第1家電機器と関連された識別されたマルチメディア物
によってHTMLページを発生する段階と,第1家電機器の接近可能な領
域に前記HTMLページを貯蔵する段階とを含むことを特徴とする方法」
であるから,本願発明における第1家電機器は,「家電」といわれる機器
であって,それと関連付けられるマルチメディア物があり,その接近可能
な領域に,HTMLページを貯蔵するものである。
そして,本件明細書における,「ブラウザー基盤の第2家電機器をホ
ームネットワークに連結させる段階と,・・・」(請求項2),「普通の
家庭では多数個の家電機器を具備している。本明細書において,“家電機
器(homedevice)”とは汎用コンピュータ(即ち,パソコン(PCs),
ラップトップコンピュータ等)を除いた家庭で一般的に発見される全ての
電子機器を含む。」(1頁)との記載によれば,「家電機器」とは,汎用
コンピュータ(パソコン,ラップトップコンピュータ等)を除いた家庭で
一般的に発見されるすべての電子機器を意味するものであり,請求項1に
係る本願発明については,「第1」に格別の意味はないものと認められる。
さらに,「マルチメディア物」は,後記()ウのとおり,マルチメディア2
機器から提供されるデータと解することができるものであり,本件明細書
には,その例としてビデオプログラムが例示されている(40頁)。
イ一方,「VTR」とは,ビデオテープレコーダー()でvideotaperecoder
あるから,引用例1における「デジタルVTR」は,上記意味における家
電であり,また,マルチメディア物として,ビデオプログラムが例示され
ていることに照らし,関連付けられるマルチメディア物があることは明ら
かであって,デジタルVTRに接近可能な領域に,HTMLページを貯蔵
することができることも明らかであるから,引用発明1における「デジタ
ルVTR」は,本願発明1の「第1家電機器」に相当する。
ウ原告は,本願発明の「第1家電機器」は,プログラムガイドであるHT
MLページを作成,蓄積するものであるとして,引用発明1の「デジタル
VTR」が本願発明の「第1家電機器」に相当しない旨主張する。
しかし,特許請求の範囲の記載に照らしても,本願発明1の「第1家電
機器」について,上記アの認定を超えて,「第1家電機器」自体が,プロ
グラムガイドであるHTMLページを作成,蓄積するものであるとの限定
がされるものでないことは明らかであり,原告の主張は,特許請求の範囲
の記載に基づかないものであるから,前提を欠くものである。
()審決は,「引用例1記載の発明(注,引用発明1)における『LANに接2
続された種々のマルチメディア機器を表示する画面』や『デジタルVTRの
コントロールパネル表示画面』は,画面上のアイコン表示が,利用者に対す
る操作上のガイダンス表示となっているので,本願発明における『プログラ
ムガイド』に相当するということができる。」(審決謄本6頁最終段落∼7
頁第1段落)と認定したのに対して,原告は,引用発明1の上記画面等は,
本願発明の「プログラムガイド」に相当しない旨主張する。
ア本願発明の特許請求の範囲の記載によれば,「プログラムガイド」は,
「マルチメディア物」を識別するものであり,そこにいう「マルチメディ
ア物」は,「第1家電機器」と関連付けられ,それによりHTMLページ
を発生することができるものである。
ここで,通常の用語例に従えば,「マルチメディア」(multimedia)
とは,「情報を伝達するメディアが多様になる状態。また,コンピュータ
ーで映像・音声・文字などのメディアを複合し一元的に扱うこと。」(広
辞苑第5版),「デジタル化された映像・音声・文字データなどを組み合
わせて,総合的なメディアとして利用すること。」(大辞林第2版)など
といった意味を有するものとされるが,本願発明において,「第1家電機
器」と関連付けられ,「プログラムガイド」が識別するという,「マルチ
メディア物」の意義は,特許請求の範囲の記載からは,必ずしも明らかで
はない。
また,「プログラム」には,「①番組。予定。計画。②目録。計画表。
また,演劇・音楽会などの内容を解説した小冊子。③コンピューターに対
して,どのような手順で仕事をすべきかを,機械が解読できるような特別
の言語などで指示するもの。」(広辞苑第5版),「①物事の予定。番組。
②映画・演劇・コンサートなど各種の催しの,番組・組み合わせ・順序・
筋などを書いたもの。③コンピューターに,情報処理を行うための動作手
順を指定するもの。また,それを作成すること。」(大辞林第2版)など
といった意味があるが,本願発明の「プログラムガイド」の用語の意義は,
特許請求の範囲の記載からは,必ずしも明らかではない。
そこで,本件明細書の発明の詳細な説明を検討することにする。
イ「マルチメディア物」の意義について,本件明細書には,以下の記載が
ある。
(ア)「1.プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電
機器と関連されたマルチメディア物を識別する時,ホームネットワーク
に対してプログラムガイドを発生する方法において,第1家電機器と関
連されたマルチメディア物を識別する段階と,第1家電機器と関連され
た識別されたマルチメディア物によってHTMLページを発生する段階
と,第1家電機器の接近可能な領域に前記HTMLページを貯蔵する段
階とを含むことを特徴とする方法。
・・・
6.前記HTMLページを発生する段階は,前記第1家電機器と関連
された媒体上に含まれた情報からマルチメディア物を導く段階を含むこ
とを特徴とする請求項1に記載の方法。
7.前記HTMLページを発生する段階は,CD上に入っている情報
からマルチメディア物を導く段階を含むことを特徴とする請求項1に記
載の方法。
8.前記HTMLページを発生する段階は,PCと関連された貯蔵機
器に含まれた情報からマルチメディア物を導く段階を含むことを特徴と
する請求項1に記載の方法。
9.前記HTMLページを発生する段階は,DVDに含まれた情報か
らマルチメディア物を導く段階を含むことを特徴とする請求項1に記載
の方法。
10.前記HTMLページを発生する段階は,DVCRに含まれた情
報からマルチメディア物を導く段階を含むことを特徴とする請求項1に
記載の方法。」(【特許請求の範囲】)
(イ)「背景技術・・・ホームネットワーク上の家電機器を制御するため
に遠隔制御ユニットを使用することに関連した他の短所は,外部のネッ
トワークからデータを受信するマルチメディア機器に対する遠隔制御器
の用途とは違って,ホームネットワークに連結されたマルチメディア機
器から受信されたデータに対するプログラムガイドを発生することが今
まではできなかったことである。従って,少なくとも一つのマルチメデ
ィア機器がホームネットワークに連結されており,それによって提供さ
れたデータがその機器やホームネットワークに連結されたさらに他の機
器から使用者に提供されるホームネットワーク環境に対してプログラム
ガイドを発生する方法に対する必要性が生じることになる。」(1頁9
行目∼2頁26行目)
(ウ)「発明の開示従って,従来の技術の問題点を克服し,ホームネット
ワークに連結された多数の機器を制御するための方法及び装置を提供す
ることが本発明の目的である。本発明の他の目的はホームネットワーク
に連結された家電機器と関連されたマルチメディア物を識別するために
ホームネットワークに対するプログラムガイドを発生する方法を提供す
ることである。本発明のさらに具体的な目的は,少なくとも機器のうち
1つがマルチメディア機器のホームネットワークに連結された多数の機
器を制御し,ホームネットワークに連結された第2家電機器上にマルチ
メディア機器により提供された情報に対するプログラムガイドを発生す
るための方法を提供することである。従って,本発明はホームネットワ
ークに対するプログラムガイドを発生する方法を提供する。本発明の一
態様によれば,プログラムガイドがホームネットワークに連結された第
1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する時,ホームネット
ワークに対するプログラムガイドを発生する方法は,前記第1家電機器
と関連されたマルチメディア物を識別する段階と,前記第1家電機器と
関連された識別されたマルチメディア物によりHTMLページを発生す
る段階と,そのHTMLページを前記第1家電機器の接近可能な領域に
貯蔵する段階とを含む。」(2頁28行目∼3頁19行目)
(エ)「<ホームネットワークプログラムガイド>使用者に利用可能なマ
ルチメディア物(例えば,オーディオ及びビデオプログラム,TVプロ
グラム及びCD)のリストを提供するために,1つ以上のホームネット
ワークプログラムガイドがホームネットワークと関連付けられる。1つ
以上のホームネットワークプログラムガイドは特定の家電機器上で利用
可能なマルチメディア物として分類されたり,接近可能なマルチメディ
ア物の特定のグループを示す様々な方法で結合されうる。」(40頁7
行目∼14行目)
(オ)「通常,テレビプログラミングガイドは特定のチャンネルで見られる
プログラムのリスト及びスケジュールを提供する。大部のデジタル衛星
サービスは電子プログラミングガイド(ElectronicProgrammingGuide
;EPG)を介してプログラム情報を提供する。EPGは利用可能なプ
ログラムのリストとそのプログラムがそのサービスを介して見られる特
定の時間をディスプレーする。EPGは利用可能なプログラムに対する
現在のウィンドウを反映するために更新し続ける。ホームネットワーク
はホームネットワークHTMLプログラムガイドを生成するためにEP
G情報を用いる。・・・また,使用者はディスプレーされる特定のプロ
グラミング情報を個人の希望に合せられる(customize)。例えば,も
し使用者がプログラム内容のために特定のチャンネルに対するスケジュ
ールのディスプレーを希望しない場合,その使用者はHTMLプログラ
ムガイドからそのチャンネルの除去を要求しうる。・・・HTMLプロ
グラムガイドは現在利用可能なプログラムを反映するために周期的に更
新される。前述したように,使用者はその利用可能な情報の特定の集合
のみを示すためにディスプレーされたHTMLプログラムガイドを個人
の希望に合せられる。」(40頁15行目∼41頁11行目)
(カ)「DBSSから受信されたEPGに加えて,ホームネットワークはマ
ルチメディア物を含む他の家電機器と関連付けられる。例えば,DVD
は如何なる映画を含み,PCは特定のファイル(例えば,ゲーム,画
像)を含み,DVCRは特定の映画を含み,CDプレーヤーは特定のC
Dを含むことができる。他の実施例において,各家電機器は該当家電機
器で現在利用可能なマテリアル(material)のリストを含むHTMLプ
ログラムガイドファイルを管理する。ブラウザー基板の家電機器を使用
し,使用者は特定の家電機器のHTMLプログラムガイドファイルを提
供することによって特定の家電機器上に利用可能なマテリアルをディス
プレーしうる。本発明のさらに他の実施例において,マルチメディア識
別プロセスは接近可能な家電機器を検索し,如何なるマテリアルが現在
それらの各々で利用可能なのかを判断できるように作業される。一実施
例において,マルチメディア識別プロセスは特定の家電機器上で利用可
能なマテリアルのリストを含むファイルやディレクトリを得るために各
家電機器にアクセスする。そうすると,家電機器コンテンツプロセスは
現在使用者に利用可能な媒質を示す1つ以上のHTMLプログラムガイ
ドファイルを生成する。使用者は特定のHTMLプログラムガイドファ
イルを提供することによって利用可能なマテリアルをディスプレーしう
る。」(41頁17行目∼42頁7行目)
ウ上記イに認定した,「ホームネットワークに連結されたマルチメディア
機器から受信されたデータに対するプログラムガイドを発生することが今
まではできなかった」(上記(イ))との記載や「本発明のさらに具体的な
目的は,少なくとも機器のうち1つがマルチメディア機器のホームネット
ワークに連結された多数の機器を制御し,ホームネットワークに連結され
た第2家電機器上にマルチメディア機器により提供された情報に対するプ
ログラムガイドを発生するための方法を提供することである。」(同
(ウ))との記載に照らせば,「プログラムガイド」は,「マルチメディア
機器から受信されたデータ」,「マルチメディア機器により提供された情
報」によって発生するものである。
そして,「プログラムガイド」が発生するための「マルチメディア機器
から受信されたデータ」,「マルチメディア機器から提供された情報」に
いう「データ」,「情報」につき,本件明細書には,例として,「オーデ
ィオプログラム」,「ビデオプログラム」,「TVプログラム」及び「C
D」が挙げられ(同(エ))また,映画を含むDVD,CDや,ゲーム及び
画像等のファイル(同(カ))も「マルチメディア物」であると理解するこ
とができる。
しかし,マルチメディア機器から提供される情報には,機器の存在や制
御等に関するデータの情報(以下,これらを「制御データ等」ということ
がある。)も含まれると解されるところ,本件明細書を精査しても,「マ
ルチメディア機器から受信されたデータ」,「マルチメディア機器により
提供された情報」に,マルチメディア機器に関するそれら制御データ等が
含まれていないことを示唆する記載は見当たらない。
かえって,本件明細書においては,「本発明の典型的な実施例において,
ブラウザー基盤のホームネットワークはホームネットワークに連結された
家電機器を制御及び命令するためにインターネット技術を使用する。各家
電機器はホームネットワークを介した家電機器の命令及び制御のためのイ
ンタフェースを提供するインタフェースデータ(例えば,HTML,XM
L,JAVA,JAVASCRIPT,GIP,JPEG,グラフィック
ファイルまたは意図した目的に対して有用な何れか他のフォーマット)を
含む。一実施例において,各家電機器は家電機器の命令及び制御のために
Hypertext提供する1つ以上のハイパーテキストマークアップランゲージ(
;HTML)ページを含む。」(6頁),「<HTMLツMarkupLanguage
ーウェイメカニズム>図3Aはブラウザー基盤のDTV202(クライア
ント)がホームネットワークを通して家電機器204(サーバ)の特徴を提
供する典型的な実施例を示す。家電機器204は家電機器204内の接近
可能な領域に貯蔵された1つ以上のHTMLファイルにより表現される。
1つ以上のHTMLファイルは特定の家電機器204に属する具体的な情
報を,ブラウザーがその情報を図式的に表示可能にするデータと共に含む
ASCテキストファイルである。ブラウザー基盤のDTV202上にII
HTMLファイルを提供するに加えて,形態技術()を採用formstechnology
することによって,ブラウザー基盤のDTV202は情報を家電機器20
4に再び返し,よってツーウェイ通信を提供しうる。ツーウェイ
()通信を提供するための他の一般の技術はまたはコントローtwo-wayJava
ルゲートインタフェース(CGIs)の使用を含むことができる。1つの機
器のHTMLファイルに含まれた情報が一度DTV202上に図式的にデ
ィスプレーされると,使用者はDTVのスクリーン上にディスプレーされ
た制御プログラムを,開始する関連ハイパーリンクを有するアイコンを選
択してまたはデータをDTV202に入力することによってDTV20/
2からその家電機器204を制御しうる。」(11頁∼12頁),「<家
電機器のHTMLファイル>前述したように,ホームネットワークに連
結された各家電機器は1つ以上の関連HTMLファイルを具備する。それ
ぞれの家電機器に対するHTMLファイルはその特定の家電機器に対する
制御及び命令動作を定義する。また,各HTMLファイルは他の関連HT
MLファイルに対する内蔵された参照事項を含む。・・・本発明によれば,
制御は一般にサービス制御プログラム(遠隔的に作動させようとする実行
可能なもの等),通信,命令及び(必要ならば)GUIを通したサーバ制御
プログラムとのヒューマンインタフェースにより行われる。」(12頁∼
13頁)などといった記載がある。
上記記載によれば,本件明細書において,「ホームネットワークに連結
された各家電機器は1つ以上の関連HTMLファイルを具備」しており,
「それぞれの家電機器に対するHTMLファイルはその特定の家電機器に
対する制御及び命令動作を定義する」ことが開示されているのであって,
ここに制御及び命令動作を定義するとは,制御及び命令動作をデータとし
て書き込むことを前提とするから,結局,ホームネットワークに連結され
た家電機器は,制御又は命令動作を受けるために「関連HTMLファイ
ル」を具備しており,この「関連HTMLファイル」には,「その特定の
家電機器に対する制御及び命令動作」が制御データとして書き込まれてい
るものというべきである。
このように,本件明細書においては,明らかに,ホームネットワークに
連結された家電機器に対する制御又は命令動作について開示しているとこ
ろ,特許請求の範囲において,このような明細書の記載にもかかわらず,
マルチメディア機器から提供されたデータのうち,「マルチメディア物」
においては制御データ等を除外するという解釈が成り立つといえるために
は,明示的にその旨が記載されていることが必要というべきである。とこ
ろが,特許請求の範囲にも本件明細書にも,そのような記載は存在しない。
以上を総合すると,「マルチメディア物」とは,マルチメディア機器か
ら提供されるデータをいうものであり,そのデータには,内容データに限
られず,機器に関する制御データ等を含むものというべきである。
エ原告は,本願発明において,「マルチメディア物」とは,本件明細書の
「ホームネットワークプログラムガイド」の項(40頁)に,「使用者に
利用可能なマルチメディア物(例えば,オーディオ及びビデオプログラム,
TVプログラム及びCD)」と記載されているように,オーディオプログ
ラム,ビデオプログラム,TVプログラム及びCD等の,いわゆる「マル
チメディアコンテンツ」であると主張する。
しかし,原告主張の「マルチメディアコンテンツ」という用語は,特許
請求の範囲のみならず,本件明細書にも全く表れていない語であって,そ
もそもこの語の意義を直ちに明らかにすることはできないし,また,本件
明細書には,原告指摘の上記記載はあるが,それらは,本件明細書におい
て「マルチメディア物」の例示として掲げられたものであることは,その
記載から明らかであって,同明細書には「マルチメディア物」がそれらに
限定される旨の記載やそれを示唆する記載はない。
そうすると,本件明細書の記載等を参酌すれば,「マルチメディア物」
とは,上記ウのとおり,マルチメディア機器に含まれる情報から導かれる
もの,すなわち,マルチメディア機器から提供されるデータであると認め
ることができ,「オーディオプログラム」,「ビデオプログラム」,「T
Vプログラム」,「CD」,「映画」及び「ゲーム,画像等のファイル」
を含むものではあるが,それに限定されるものでないというべきである。
オところで,「プログラムガイド」の意義について,本願発明の特許請求
の範囲には,「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1
家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する時,ホームネットワー
クに対してプログラムガイドを発生する方法」との記載があるところ,
「プログラムガイド」は,ホームネットワークに連結された第1家電機器
と関連されたマルチメディア物を識別するものであり,「マルチメディア
物」とは,前示のとおり,マルチメディアに関するデータであって,その
内容データも制御データも含むものであると解されるから,「プログラム
ガイド」は,「マルチメディア物」である内容データ又は制御データを識
別する「ガイド」すなわち「案内」であるということができ,その「ガイ
ド」(案内)には,格別の限定はない。
原告は,「プログラムガイド」とは,「ホームネットワークプログラム
ガイド」であって,ホームネットワークと関連付けられて作成され,当該
ホームネットワークにおける使用者に利用可能なマルチメディア物(いわ
ゆるマルチメディアコンテンツ)のリストを提供するものである旨主張す
る。
しかし,本願発明にいう「マルチメディア物」は,マルチメディア機器
から提供されるデータをいうものであり,マルチメディアコンテンツに限
定されず,マルチメディア機器から提供される内容データも制御データ等
も含むことは,上記のとおりであるから,前提において既に誤りである。
しかも,原告は,審判段階において,審判長から,本願発明の特許請求
の範囲にいう「プログラムガイド」,「マルチメディア物」,「プログラ
ムガイドが・・・マルチメディア物を識別する時,・・・プログラムガイ
ドを発生する」などの用語の具体的な内容について書面審尋(乙1)を受
け,本件回答書(乙2)において,「『プログラムガイド』とは,マルチ
メディア機器により提供されるデータ,すなわち,プログラムを示す図表
及びそれを生成するための手段である。『マルチメディア物』とは,マル
チメディア機器により提供されるデータ,すなわち,プログラムである。
『プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関
連されたマルチメディア物を識別する時,ホームネットワークに対してプ
ログラムガイドを発生する』とは,ホームネットワークに連結された第1
の家電機器に含まれるマルチメディアのデータあるいはプログラムを手段
であるプログラムガイドが識別したときに,ホームネットワークに対して
第1の家電機器に含まれるプログラムを含む図表であるプログラムガイド
を生成することである。」などと回答している。
本件回答書によると,原告は,「マルチメディア物」をマルチメディア
の内容データに限定することなどを全く述べておらず,かえって,マルチ
メディア機器により提供されるデータと限定を付さずに述べ,それを前提
として,「プログラムガイド」等についても説明している。そして,この
ことは,前記のとおり,本件明細書を精査しても,ホームネットワークに
連結された家電機器から,制御データ等を除外したものを「プログラムガ
イド」とすることを示す記載を見いだすことができないこととも合致する
のである。
なお,原告は,本件回答書は,「プログラムガイド」に関して,明細書
で示された内容を超えて説明した点で,不適切な点があったことは否定し
ないが,出願に係る発明は,特許請求の範囲の記載に基づいて解釈すべき
であり,特許請求の範囲の技術的意義が一義的に明確に理解できない場合
は,明細書の記載を参酌して,解釈すべきであると主張するが,上記のと
おり,本件回答書の内容は,本件明細書の記載内容とも合致するものであ
って,原告の主張はそもそも前提を欠くものである。
カ一方,引用例1には,以下の記載がある。
(ア)「まず,デジタルVTR203がLAN4に接続されたときの動作に
ついて説明する。図16はデジタルVTR203をLAN4に接続した
際の動作のフローを示した図である。図17はマルチメディアコントロ
ーラ1の画面を示した図である。図17において228はマルチメディ
アコントローラ1のディスプレー,229はデジタルVTR203が接
続されたことを示すアイコン表示であり,230はマウスなどのポイン
ティングデバイスが指示する位置を示すカーソルである。ポインティン
グデバイスは図示しないが,ポインティングデバイスはボタンを備えて
おり,該ボタンを利用者が押して放す動作を一般的にクリックすると称
し,所定間隔で2回クリックする動作をダブルクリックすると称する。
尚,他の接続機器としては,カメラ(静止画入力),チユーナ,テレビ
ジヨン,各種データベース,CD等,種々の機器との接続が可能であり,
それらの機器の選択,制御も画面228上のアイコン表示にて行うこと
ができる。」(段落【0064】)
(イ)「図23と図29にしたがってデジタルVTR203のコントロール
パネル表示動作と再生動作の指示方法を説明する。図16で説明した動
作においてシステムディレクターオブジェクト205がデジタルVTR
代理オブジェクト220を生成した時点でデジタルVTR代理オブジェ
クト220はアイコン表示229をアイコン画像1426に基づいて表
示するが,利用者がデジタルVTRのアイコン229をカーソル230
で指示してダブルクリックすると(643),デジタルVTR代理オブ
ジェクト220のコントロールパネルオブジェクト221はコントロー
ルパネルオブジェクト221を構成するすべてのオブジェクトにたいし
て描画を指示するメッセージを送出する。該メッセージにしたがって図
21に示したすべてのオブジェクトが描画手段を実行し,コントロール
パネルオブジェクトはその際,第2オブジェクト描画情報に基づいてデ
ジタルVTRのコントロールパネルのフレームを描画する。その結果,
デジタルVTR203を操作するためのデジタルVTRコントロールパ
ネル表示231が図24のように表示され(644),利用者の指示を
待つ(645)。」(段落【0088】)
(ウ)図17には,マルチメディアコントローラ1のディスプレー228に,
「」,「」,「TV」,「」,「CD」,「VTCameraTunerDatabase
R」のアイコンが表示された画面が示されており,図24には,「VT
R」のアイコン表示から制御を選択した際のマルチメディアコントロー
ラを表示する画面が示されている。
これらによれば,引用例1には,審決の認定するとおり(審決謄本5頁
最終段落∼6頁第1段落),「LANに接続された種々のマルチメディア
機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリ
ックした場合に,デジタルVTRのコントロールパネル表示画面を発生す
る方法において,デジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリックし
たことを検出する段階と,上記デジタルVTRを表すアイコン表示のダブ
ルクリックによってデジタルVTRのコントロールパネル表示画面を発生
する段階を含む方法。」である引用発明1が記載されている(当事者間に
争いがない。)。
本願発明の「プログラムガイド」は,「マルチメディア物」を識別し,
発生するものであって,それがホームネットワークと関連付けられること
によって,「マルチメディア物」を表示できるものである。そして,「マ
ルチメディア物」とは,マルチメディア機器から提供されるデータをいう
のであるから,マルチメディア機器から提供されるといえる,マルチメデ
ィア機器の存在に関するデータやマルチメディア機器であるデジタルVT
Rから提供された同機器の内容あるいは制御データも「マルチメディア
物」に含まれるというべきものである。
そうすると,引用発明1における「LANに接続された種々のマルチメ
ディア機器を表示する画面」や「デジタルVTRのコントロールパネル表
示画面」は,本願発明における「プログラムガイド」に相当すると認める
ことができる。
()審決は,引用発明1における「LANに接続された種々のマルチメディア3
機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリッ
ク」することは,本願発明における「プログラムガイドがホームネットワー
クに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する」こ
とに相当すると認定したところ,原告はこれを争うので,検討する。
ア上記()カの引用例1の記載及び図17,24によれば,引用発明1に2
おいては,デジタルVTRがLANに接続されること,LANに接続され
た機器の選択,制御は,画面上のアイコン表示によって行うこと,デジタ
ルVTRを表す上記アイコン表示をダブルクリックすると,デジタルVT
Rを操作するためのボタンが表示されることが記載されている。
そして,引用発明1の「LANに接続された種々のマルチメディア機器
を表示する」ことは,LANに接続され,現在利用可能な種々のマルチメ
ディア機器の制御を行うためのアイコン情報を得ていることを意味するか
ら,アイコンが表示された画面は,本願発明の「プログラムガイド」,す
なわち,「マルチメディア物」である内容データあるいは制御データを識
別するための「ガイド」である。
そうすると,引用発明1は,LANに接続された種々のマルチメディア
機器を表示する画面上において,デジタルVTRを表す表示がされるもの
であるところ,それは,本願発明における「プログラムガイドがホームネ
ットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識
別」した結果であるということができるのであるから,引用発明1におい
て,上記表示がされることは,「プログラムガイドがホームネットワーク
に連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する」こ
とによるものであると認められる。したがって,引用発明1は,「プログ
ラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連された
マルチメディア物を識別する」ものであると認められる。
イ原告は,引用例1の図17の図面においては,LANに接続された種々
のマルチメディア機器がアイコン表示されていて,利用者が,デジタルV
TRのアイコンをダブルクリックすると,デジタルVTRを制御する画面
に遷移してデジタルVTRを操作するためのボタンが表示される画面(図
24)となるように,引用発明1において,「LANに接続された種々の
マルチメディア機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表
示をダブルクリック」することは,ユーザが,表示された複数の家電機器
の中から,これから使用するデジタルVTRを選択することであって,デ
ジタルVTRを「選択したことを識別させる」ものではないし,デジタル
VTRと関連する選択情報を識別させることではなく,また,選択情報は,
選択用の情報であって,「マルチメディア物」ではない旨主張する。
しかし,上記のとおり,引用発明1は,LANに接続された種々のマル
チメディア機器を表示する画面上において,デジタルVTRを表す表示が
されるものであり,これは,本願発明における「プログラムガイドがホー
ムネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物
を識別する」ことがされた結果であるから,引用発明1は,「プログラム
ガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマル
チメディア物を識別する」ものであり,この点に関する審決の一致点の認
定は,結論的には誤りがないというべきである。原告の上記主張は,引用
発明1の構成から,「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表
示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリック」す
るという部分のみを取り出して,審決を論難するものである。
()審決は,引用発明1における「デジタルVTRのコントロールパネル表示4
画面を発生する」ことは,本願発明における「ホームネットワークに対して
プログラムガイドを発生する」ことに相当すると認定し,原告はこれを争う
が,原告の上記主張は,上記()に記載の「マルチメディア物」,「プログ2
ラムガイド」についての原告による解釈を前提とするものであって,その解
釈が採用できないことは,上記のとおりであり,原告の主張は前提を欠くも
のである。
()審決は,「本願発明と引用例1記載の発明(注,引用発明1)とは,とも5
に,『プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と
関連されたマルチメディア物を識別する時,ホームネットワークに対してプ
ログラムガイドを発生する方法において,第1家電機器と関連されたマルチ
メディア物を識別する段階と,第1家電機器と関連された識別されたマルチ
メディア物によってプログラムガイドを発生する段階を含む方法。』である
点で一致」(審決謄本7頁第5段落)すると認定したところ,原告はその一
致点の認定を争うが,原告の上記主張は,上記(2)ないし(4)における主張を
前提とするものであり,それらが採用できないことは,上記のとおりである。
(6)したがって,原告の取消事由1の主張は,採用することができない。
2取消事由2(相違点の看過),取消事由3(相違点についての判断の誤り)
及び取消事由4(相違点についての判断の遺漏)について
(1)原告は,取消事由3に関連し,本願発明の「HTMLページ」は,「プロ
グラムガイド」であるところ,引用例2には,「プログラムガイド」を発生,
貯蔵し,それを利用することについて,記載も示唆もされていないことを根
拠として,「引用例1記載の発明(注,引用発明1)において,発生される
『デジタルVTRのコントロールパネル表示画面』を『HTMLページ』と
することは,当業者が適宜に設計できる事項であるものと認められ,さらに
それをデジタルVTRの接近可能な領域に貯蔵するようにすることも,当業
者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。」(審決謄本7頁
最終段落∼8頁第1段落)とした審決の判断は,根拠を欠く旨主張する。
しかし,審決は,引用例2に,「プログラムガイド」の発生等に関する記
載がされているとしたのではなく,引用例2に記載されているように,従来
からHTMLページを発生,貯蔵,利用することは行われていることを根拠
に,引用発明1の「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面」を「H
TMLページ」とすることは,当業者が適宜に設計できる事項であるものと
認められるとしたものであることが明らかであり,その判断過程において誤
りはなく,原告の主張は,審決を正解しないでこれを論難するものである。
(2)原告の取消事由2ないし4におけるその余の主張は,前記1における主張
を前提とするものであり,その前提が失当であることは,前記1のとおりで
ある。
(3)したがって,原告の取消事由2ないし4の主張は,いずれも理由がない。
3以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を取り
消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決
する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官篠原勝美
裁判官宍戸充
裁判官柴田義明

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