弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
一被告らは原告P1に対し連帯して金三三〇万円及びこれに対する平成八年一二月三、、
一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二被告らは原告P2に対し連帯して金七七万円及びこれに対する平成八年一二月三一、、
日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
四訴訟費用は、原告P1と被告らとの間においては、原告P1に生じた費用の二分の一を
被告らの連帯負担としその余は各自の負担とし原告P2と被告らとの間においては原、、、
告P2に生じた費用の一○分の三を被告らの連帯負担とし、その余は各自の負担とする。
五この判決は、原告ら勝訴部分に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一被告らは原告P1に対し連帯して金六〇〇万円及びこれに対する平成八年一二月三、、
一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二被告らは原告P2に対し連帯して金二四八万円及びこれに対する平成八年一二月三、、
一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は被告Z(以下被告銀行という)の従業員である原告らが原告P1について、「」。、
、、「」。は被告銀行の日本支店の支店長であり日本における代表者(以下在日代表という
)である被告P3の自宅において同人に強姦され原告P2については支店長室において、、、
、被告P3に乳房をもまれる等の強制わいせつ行為を受け(以下、原告らの主張する原告P
1に対する強姦行為等と原告P2に対する強制わいせつ行為を併せて「本件わいせつ行為等
という)さらに原告らが本件わいせつ行為等についての抗議等を行った後職場に」。、、、
おいて嫌がらせをされたとして(以下、後記(第三、三、1)の原告らの主張する職場におけ
る原告らに対する嫌がらせの事実を「職場における嫌がらせの事実」という。)、被告P3
に対しては、民法七〇九条に基づく損害賠償請求として、被告銀行に対しては、同法四一
五条に基づく債務不履行責任又は同法七一五条に基づく使用者責任として、いずれも原告
らの精神的苦痛及び弁護士費用を内容とする損害(原告P1につき金六〇〇万円(内弁護士費
用金一〇〇万円)原告P2につき金二四八万円(内弁護士費用金四八万円))の賠償及びそれ、
らに対する不法行為の日の
後であり、被告らに対する本件訴状送達の日の後である平成八年一二月三一日から支払済
みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
一争いのない事実等(証拠に基づき認定した事実を含む争いのない事実については特に。
その旨は断らないが、認定の根拠を示すため括弧内に証拠を掲げる。)
1当事者等
(一)被告銀行
被告銀行は肩書き地に本店を有し銀行業務を行うインド共和国銀行事業会社(事業の、、
取得と譲渡)法(BankingCompanies(Acquisitionand
TransferofUndertakings)Act)に基づき設立された銀
行であり、日本国内では、東京、大阪に営業所を有する。
(二)被告P3
被告P3は被告銀行の従業員であり平成七年一二月中旬に来日し平成八年一月二六、、、
日被告銀行の在日代表に就任したが、同年一月中は前任者からの引継ぎを受け、同月二九
日から被告銀行東京支店の支店長の個室(以下「支店長室」という。)で執務するようにな
り、現在も同職にある。在日代表の秘書席は支店長室にはなく、通常支店長室で執務して
いるのは被告P3だけである。被告P3の日本における住居は、被告銀行の社宅としてのマ
ンションである東京都港区内のδという名称のマンションの○○号室(以下○○号室とい」
う。)であり、被告P3は赴任当時は、単身赴任であったが、同年五月ころ本国から家族が
来日し同居するようになった被告P3は昭和○○年○○月○○日生まれで平成八年、。、、
二月当時、○○歳であった。
(弁論の全趣旨)
(三)原告P1
、。原告P1は被告銀行に昭和四二年一一月二七日に採用された被告銀行の従業員である
原告P1は昭和○○年○○月○○日生まれで平成八年二月当時○○歳であり夫は昭和、、、
五九年ころに死亡し、長男と同居していた。
(原告P1本人尋問の結果(第一回)(平成一〇年四月一三日の本人調書四項、五項)、弁論の
全趣旨)
(四)原告P2
原告P2は被告銀行に昭和六一年七月一日に採用された被告銀行の従業員である原告、。
P2は、昭和○○年○○月○○日生まれで、平成八年二月当時○○歳であった。
(弁論の全趣旨)
2被告銀行の行った調査
原告らは、平成八年四月ころ、原告らが所属している労働組合の上部団体である外国銀
行従業員組合連合会(以下「外銀連」という。)の役員を通じて、被告
銀行に対し被告P3の原告らに対するセクシャル・ハラスメントの事実の確認関係者に、、
対する誠意ある謝罪と損害賠償被告P3の在日代表職の解任及び以後同様の事態が発生し、
ないようにする旨の誓約を求めた。また、原告ら代理人弁護士橋本佳子は、平成八年四月
一九日書面で被告銀行に対し原告P1及び原告P2が被告P3から本件わいせつ行為等、、、
を受けた事実を報告するとともに、適切かつ断固たる措置を求めた。被告銀行は、被告銀
行本店からジェネラルマネージャーであるP4を事実調査のため派遣し同人は原告ら、、、
からの事情聴取等を含む調査を行い、外銀連の役員に対して「被告P3が、原告らが問題、
にしている行為に及んだ事実は全くない原告らが虚偽の事実を言い立てて被告P3をそ、、
の地位から引きずり降ろすことを狙ってのことであるとの結論を得た」と通告した。。
(甲第一号証の一及び二、第二号証、第三号証の一及び二)
二争点
1被告P3の原告P1に対する強姦行為等の事実の有無
2被告P3の原告P2に対する強制わいせつ行為の事実の有無
3職場における嫌がらせの事実の有無
4被告銀行の責任の有無
5原告らの損害額
第三争点についての当事者の主張
一被告P3の原告P1に対する強姦行為等の事実の有無について
1原告P1の主張
(一)平成八年二月二一日の事実
平成八年二月二一日、午後二時ころ、原告P1は、被告P3から内線電話で「すぐに部屋
に来なさいと支店長室に呼ばれた原告P1が支店長室に入ると被告P3から家族構成。」。、
自宅の住所及び電話番号について尋ねられ原告P1は夫を一二年前に亡くしていること、、
、現在、子供と暮らしていることを話した。
被告P3は原告P1に対して日本語のスクールのクラスが平日の午前中にあるという、、「
が、九時から銀行で仕事をしていて、六時、七時までここにいるのでスクールに行くこと
。、。」。ができない故にもしあなたがよろしければ家で日本語を教えて欲しいと依頼した
原告P1は自分が英語ができないことなどを理由に断ったが被告P3は僕があなたに、、、「
英語を教えるからあなたは僕に日本語を教えて欲しい」と執拗に依頼し、原告P1は何度。
も断ったが、被告P3が在日代表であったことからやむなく承諾したところ、被告P3は「
あなたが僕の部屋に来ることのできる日を言いなさいと言った原告P1は被告P3が。」。、
日本に来て
、日本語ができずに心細いだろうと考え、とにかく日本語学習用のテキストを贈ろうと考
え二月二八日ならばオーケーですと返答したこのとき被告P3は自分の住所部、「。」。、、
屋番号及び電話番号をメモした紙を原告P1に手渡し、さらに、原告P1が部屋を出ようと
した際に原告P1の手を握り手にキスをした原告P1は突然のことに驚きキャー、、。、、「
」っと叫んだ。
被告P3のアリバイの主張に対する反論は後記(第三、二、3)のとおりである。
(二)平成八年二月二二日から同月二六日の間の事実
原告P1は平成八年二月二三日αの三省堂で日本語入門はじめのいっぽという題、、「」
名の日本語学習用のテキストを購入した。
その後被告P3は原告P1に対して一日に何回も内線電話をかけ元気かなどと、、、、「」
言ってすぐに切るということを繰り返した。
(三)平成八年二月二七日の事実
平成八年二月二七日午後二時三〇分ころ、被告P3は、原告P1に対して、内線電話をか
け明日七時一五分に○○号室に来るようにと言ったその際原告P1は被告P、「、。」。、、
3の自宅に行きたくなかったため、断ろうと思ったが、被告P3が赴任して間もない被告銀
行の在日代表であるということもあったため、そのことを言い出しにくく、翌日断ればい
いと考えた。
(四)平成八年二月二八日の事実
平成八年二月二八日原告P1は被告P3から内線電話がかかってきた際今日私は、、、「、
。。」、、行きません英語のできる人に頼んで欲しいと言い何名かの秘書らの名前を挙げて
被告P3の自宅への訪問を断ったが被告P3はそれを聞き入れず原告P1の来訪を再度、、、
要請した原告P1はそれではもし行くときには友達を連れていきますと言った。、「、、。」
ところ、被告P3は「友達は連れてくるな。絶対に一人で」と言い、さらに「私はあなた。
に近づきもしなければタッチもしないといった原告P1はそれ以上被告P3に逆らえ、。」。
ないと思い、二、三日前に購入していた日本語学習用のテキストを届けるためだけに被告
P3の自宅に行こうと思い「それではテキストブックを持って、伺います」と答えた。、。
同日午後七時三五分ころ、原告P1は、被告P3の自宅マンションであるδに行った。原
告P1は、入り口のインターホンで被告P3に連絡し、玄関をまっすぐ進んだところにある
エレベーターに乗ったが、被告P3の部屋に通じているエレベ
ーターは玄関の右奥にあるエレベーターであったため○階で降りたが被告P3の部屋はな、
く、間違いに気づき、マンションの玄関付近に戻って正しいエレベーターが分からずにう
ろうろしていたところ被告P3が降りて来た原告P1と被告P3は一緒にエレベーターに、。
乗り被告P3の部屋の前に行った原告P1は被告P3の自室(○○号室)のドアの前で紙袋、。
から日本語学習用のテキストを取り出し「これをあなたに渡すだけですぐに帰ります」、。
という趣旨のことを何度も言って帰ろうとしたが、被告P3は「ただ話をするだけだから、
、お茶だけでも飲んでいって欲しい」と強く言い、原告P1の肩を押すようにして強引に。
部屋に引き入れた。
部屋に入った後被告P3は原告P1を被告P3の右側に並ぶようにソファーに座らせ、、、
た。原告P1は、テキストを取り出し説明を始めたが、被告P3は「あなたはなぜ再婚しな
いのか」などと約一〇分ほど雑談をした。。
午後八時ころ被告P3は突然右手で原告P1の左手をつかみ被告P3の股間に入れ、、、、
陰茎に触らせたこのとき被告P3はドォティと呼ばれるインドの腰巻き風の民族衣装、。、
(以下ドォティという)をまとっていたがブリーフは履いていなかった原告P1は「」。、。
驚愕して股間から左手を引き被告P3の手を振り払った被告P3は原告P1のブラウス、。、
の襟元からブラジャーの間に右手を入れ、原告P1の乳房をもみ始めた。原告P1は強く抵
、、、抗し被告P3の手を払いのけて逃げようとしたが被告P3は原告P1を両手で抱き上げ
なおも抵抗する原告P1に対して「大声を出すな」と繰り返し恫喝しながら、原告P1を、。
抱えたまま、二つあるベッドルームのうち一つのベッドルームに入ったが、そのままその
部屋を出て廊下を通って別のベッドルームに入り原告P1をベッドに投げ落とし両手、、、
両足をバタバタ動かして抵抗している原告P1の両腕を押さえつけて身体ごとのしかか、、
り、抵抗を抑圧した上で、原告P1の下着をストッキングごとはぎ取り、陰茎を原告P1の
陰部に強引に挿入して、射精した。被告P3は射精後、コンドームの始末をし、原告P1は
茫然自失の状態で居間に戻りソファに座ったままであったが被告P3とは一言も口を、、、
きかず、被告P3の自宅を出た。
被告P3は身長一八○センチメートル以上体重八○キログラム以上の筋肉質のがっち、、
りした体型で
。、、。ある原告P1は身長一五八センチメートル体重五六キログラムの小柄な体型である
原告P1は被告P3から前記の行為を受けたとき被告P3の強い力に対して抵抗すること、、
ができず、何が起こっているのか分からないほど気が動転した。
2被告らの主張
原告P1の主張はすべて否認する。
平成八年二月二一日、午後二時ころ、被告P3が原告P1を内線電話で支店長室に呼び入
れたことはない。右日時に起こったと原告P1が主張する事実はすべて原告P1のねつ造で
ある。
被告P3は、右日時に支店長室にはいなかった。その時、被告P3は、被告銀行東京支店
の会議室において、被告銀行本店から監査チームの長として来日していたジェネラル・マ
ネージャーのP5らとともに菜食主義者用の特注のランチを食べながら懇談していた。
被告P3は、原告P1に、自宅の電話番号、自分の名前、δというマンションの名称、○
○号室という部屋番号及びマンションがεの後ろにあること等を自ら記載したメモ(甲第七
号証)を渡したことはあるものの、それは、被告P3がまだ会議室において執務していた当
時頻繁に出入りしていた原告P1が日本語のチューター(家庭教師)を手配できると言った、
ので、そのチューターのために作成し原告P1に手渡したものである。右メモ(甲第七号証
)にはDR○○○○○○○と記載されており仮に原告P1に手渡すためのもの「.,..」、
であればそのような記載は不要であるのでこれが原告P1に手渡すために作成されたも、、
のではないことは明らかである。
その後も被告P3は原告P1に内線電話をかけたことはない。
同年二月二七日及び同日以後に起こったと原告P1が主張する事実もすべて原告P1のね
つ造である同日被告P3は原告P1に内線電話をかけたこともないし原告P1が同。、、、、
年二月二八日被告P3の自宅に来たこともなく原告らが主張する被告P3の原告P1に対す、
る姦淫の事実はない。
原告P1がδ○○号室を訪れたのは平成二年三月二四日以前であって、被告P3がδ○○
号室に居住するようになって以降、原告P1は同室に入ったことはない。
原告P1は、本人尋問(第一回)において、同人の陳述書(甲第八号証)添付の図面(δ○○
号室のリビングルームの図面)を示された上でリビングルームとベッドルームの位置関係、
を示すように求められたのに対して、記憶になく、抱きかかえられてし
まったので位置関係を示すことができない旨を答えており強姦された後被告P3がベッ、、
、、、「ドルームから出たあと一人で歩いてリビングルームに戻りお茶ないしコーラを飲み
子供が待っているので食事をつくらなくちゃいけないからと言って帰った旨供述して。」、
いる原告P1は検証の際リビングルームから見てベッドルームがどちらの方向にある。、、
か確答できず、被告P3が一同をベッドルームに案内したのであって、原告P1は、検証後
に行われた原告本人尋問(第二回)においては強姦後の同人の行動について真っ直ぐ行、、「
ったらもうそこがいすがありましたので迷うことなくお部屋(二番目のベッドルーム、、、
)の入口を出て、あの廊下を通って、すぐ、いすに座りました「行って一番左側のベッ。」、
ド、そこから出てきたときに、いとも簡単にリビングルームの赤いソファに出てこれた、
あこの部屋だということがまず分かったと供述していることからすると仮に原、、、。」、
告P1がリビングルームからベッドルームまで抱きかかえられていたために両室の位置関、
係が分からなかったとしても、逆にベッドルームからリビングルームヘは一人で歩いて戻
ったというのであるから、右リビングルームの図面においてベッドルームが上下左右のい
ずれに位置していたかについて答えられないということはあり得ないこれは原告P1が。、
、本件日時以前にδ○○号室に行ったことがあるが、その際には、ベッドルームには行か
なかったためにそのような供述内容になるのであって原告P1本人のこの点に関する供述、
。内容は平成八年二月二八日に原告P1がδ○○号室に行ったことを裏付けるものではない
原告P1本人は検証以前にはリビングルームからベッドルームまでの移動の経路につ、、
いて、一つ目のベッドルームを通り抜けて二つ目のベッドルームに至った旨供述していた
が、これは客観的事実と一致せず、また、検証後、リビングルームからベッドルームに至
る経路について、一つ目のベッドルームに一、二歩入って直ぐ引き返して二つ目のベッド
ルームに入ったと供述内容を変えているが、これは検証においてベッドルームの間取りを
、。、確認した後強引に客観的事実とのつじつまを合わせようとしたものである原告P1は
検証の前の本人尋問(第二回)において、一つ目のベッドルーム内のベッドの数及び二つの
ベッドの位置関係について、二つ目のベッドルー
ムのベッドの数及び二つのベッドの位置関係と同様に克明に供述しており、事件後は一人
で歩いて二番目のベッドルームからリビングルームに戻ったと述べているのであるから、
原告P1本人の検証前の供述が勘違いに基づくものであるとすることはできない。
原告P1本人は平成八年二月二八日当時にはδ○○号室にはソファーが一組しかなか、、
ったと供述し、甲第八号証添付の図面(δ○○号室のリビングルームの図面)には、その一
組のソファーのことしか記載されていないが、検証時には同室には二組のソファーがあり
、右図面に記載されていない方のソファーは、平成八年二月二八日の約二か月前である平
成七年一二月一五日に台東区の株式会社多慶屋から被告銀行が購入し、δ○○号室に搬入
されたものであって平成八年二月二八日当時も同室に存在したものであり原告P1本人、、
の供述内容は客観的事実と食い違う。
また原告P1は検証後の本人尋問(第二回)において検証時にリビングルーム内に存、、、
在したダイニングボードについて、平成八年二月二八日当時にはなかった旨供述している
が、右ダイニングボードは、平成四年三月二一日、当時の被告銀行の東京支店のマネージ
ャーであったP6が居住していたζが同人の大阪支店への異動を理由に明け渡されたこと、
に伴い、同アパートからδ○○号室に移転されていたものであり、それは、本件事件当時
も同室のリビングルームに置かれていたこれに反する原告P1本人の供述は事件当時に。、
同室に入っていないことを示すものであり、むしろ、右ダイニングボードが同室に運び込
まれる前である平成四年三月二一日以前に同室に入ったときの記憶で供述していることを
示すものである。
一般的に、余程特徴的な色でもない限り、一、二度何の気なしに目にしたカーペットの
色など覚えていないのが通常であるが原告P1本人は検証以前にはδ○○号室のリビン、、
グルームのカーペットの色が赤かったと供述しており、同人作成の陳述書添付の図面にも
その旨記載されている。しかしながら、同室のリビングルームのカーペットの色は、平成
二年三月二四日以前は赤色であったが、同日以降現在に至るまで薄いべージュ色であり、
、このことは原告P1がその主張の日時にδ○○号室には行っていないことを示すとともに
原告P1本人の供述が平成二年三月二四日以前に同室に入った時の記憶に基づくものである
ことを示すもので
ある。
原告P1は、被告P3に抱きかかえられてリビングルームからベッドルームヘ連れて行か
れる間及びベッドに投げ出されてから姦淫される時に、翌日、肩や腕が筋肉痛のように痛
むほど手足をばたばたさせて抵抗していたというのであり、そうだとすると、リビングル
ームからベッドルームに運び込む際の体力の消耗が激しいこと、激しく抵抗する女性に対
して陰茎を挿入するためには、脅迫や暴行によって被害者である女性に抵抗をあきらめさ
せることが必要であることからして原告P1の主張する態様によって被告P3が原告P1を、
強姦することは不可能である。
原告P1本人はコンドームの始末をしている被告P3の後ろ姿を目撃した旨供述するが、
一方原告P1本人の供述によれば原告P1と被告P3がリビングルームのソファーに隣り、、
合わせに座っていた際に原告P1が被告P3の陰茎を握らされたときには被告P3の陰茎、、
にはコンドームが装着されていなかったというのであるから原告P1の強硬な抵抗の中で、
強姦する前に被告P3がコンドームを装着したということになるがそれは不可能であり、、
、このことからして、原告P1本人の供述は虚偽である。
、、、、「原告P1本人は強姦後被告P3とソフトドリンクを飲み玄関まで見送られた上で
さよならと言って別れたと供述するがこのような原告P1の行動は常識的に考える限」、、
り強姦事件の被害者としてあり得ないことであり原告P1本人の供述の信用性には重大、、
な疑義がある。
常識的に考えて数日前に被告P3からセクシャル・ハラスメントを受けかつ同僚から、、
被告P3にセクシャル・ハラスメントを受けたと知らされた女性がセクシャル・ハラスメ、
ントをしたとされる独り暮らしの男性の自宅に、夜、一人で訪問するなどということは、
よほど特別な事情がない限り考えることは困難であるが原告P1はこの特別な事情に、、、
ついて何の説明もしていない。
原告P1本人は被告P3に日本語学習用のテキストを渡そうと思って被告P3の自宅に、、
行った旨を供述するが、それは職場で手渡せば足りるし、職場で手渡せない事情があれば
被告P3の自宅に送付すれば足りるし何らかの事情で送付することができないのであれば、
、δの玄関付近で被告P3に出会った時に渡せば足りたのであり、被告P3の部屋へ行く必
要はない。
原告P1は、δに行ったと主張するが、本人尋問において、δヘ
行く際に、どこの駅で降りたのかとの質問に答えられなかった。
被告P3の身長は一八○センチメートル以下で、体重は七〇キログラム未満である。
被告P3は過去にも現在もドォティを一枚も所持しておらずドォティを身につけるこ、、
とはない。すべてのインド人男性がドオティを身につけるわけではなく、ドオティを身に
つける慣習があるのは多民族・多言語国家インドの南西部においてのみであり被告P3の、
出身地である北部ではそのような慣習はない。
原告P1本人は平成八年二月二八日当時の自分の服装について本人尋問において尋ね、、
られた際に「あんまりちょっと覚えていないです」と供述しているが、自ら服をはぎと、。
られたと主張していながら、その服がどのような服装であったか覚えていないと言うのは
不可解であり、同人の供述に信用性は認められない。
平成八年二月二八日後の職場における態度について、原告P1本人は、被告P3から再び
内線電話があるのではないかと恐怖におののきながら仕事をしていた供述しているが、そ
の後の原告P1の職場における様子は何ら変わったことはなく右供述は虚偽である本件、。
強姦事件の翌日である同月二九日に行われた被告銀行従業員のP7の送別会において・原告
P1はMinatoMonthly(港マンスリー)と題する英文の広報誌(乙第一号、「」
証)に掲載された外国人対象の日本語のレッスンに関する記事を見て「この日本語レッス、
ンの広報をP3さんに見せあげなさいよ、P3さんは日本語のレッスンに非常に興味を持っ
ていらっしゃるので、見せたらきっと喜ばれるわよ」と被告P3に好意的な発言をしてお。
、、。り本件強姦事件後恐怖におののいていた旨の原告P1本人の前記供述は不自然である
原告P1は、本人尋問において、被告P3との会話に実際に使用された英語で再現するよ
うに求められたのに、それを拒んでおり、その理由として英語が間違えていたら困るとい
うことを挙げるのみであって不自然でありこれは原告P1が実際には供述するような会、、
話を被告P3としていないことを示すものである。
原告P1が、このように虚偽の主張をするのは、原告P1の被告銀行における処遇上の不
満が主たる動機であると推測される。
また、原告P1が、被告P3に対して、刑事告訴をすることなく本件のみを提訴したのは
、厳格な刑事手続によって、原告P1の主張の虚構性が明白とな
り、虚偽告訴罪での処罰を恐れたからであると推測される。
二被告P3の原告P2に対する強制わいせつ行為の事実の有無について
1原告P2の主張
平成八年二月二六日午後二時ころ被告P3は原告P2に対して内線電話をかけち、、、、「
ょっと来なさい」と言って支店長室に呼び出した。原告P2が、支店長室に入ると、被告。
P3は机を挟んで被告P3の正面に立った原告P2に対して今度家に来なさいと言、、「、。」
った。被告P2は、それを儀礼的な言葉ととらえて「行きます」と言ったが、被告P3が、。
特定の日時に言及したので、不審に思い「行く気はありません」と答えたところ、被告、。
P3は原告P2に対してだれか他の女性を紹介しなさいと言い自分の電話番号を知、「。」、
っているかどうか尋ね原告P2が知りませんが必要なときはP8さん(被告P3の秘書、、「、
であるP8)に聞きますと言うと被告P3はP8さんには聞いてはいけないP8さん。」、、「。
には何もしゃべるな」と言い、電話番号を書いた水色のメモを渡した。その後、被告P。
3は、当時、妊娠後の経過が悪く、実家で療養中であった被告銀行の従業員であるP9につ
いて原告P2に尋ね、原告P2が「彼女は流産してしまい、手術をして、今は実家にいます
」と答えると「それではあとで電話番号を教えてくれ」と言った。さらに被告P3は、。、。
原告P2に対しあなたは妊娠の予定はないかと尋ね原告P2は分かりませんと、「。」、「。」
答えた。被告P3は、右会話が終わるころ、原告P2に対して、机を隔てて、右手を差し出
した。原告P2は、握手を求められたと思い、机を左回りに回り込み被告P3に近づき、右
手を差し出したところ被告P3は突然原告P2の右手を引っ張り原告P2の身体を引、、、、
、、、き寄せて頬にキスをしさらに右手で原告P2の黒いTシャツの上から胸を触りその後
スカートをめくり上げ、腹部をなで回し、Tシャツの襟からブラジャーの中に手を入れ、
乳房に触り二回ぎゅっとつかみ、もみ上げた。
被告P3は同日午後三時ころ再び原告P2に内線電話をかけP9の電話番号を早く持、、、
ってくるように要求した原告P2は支店長室に行くことに抵抗があったが上司の命令な。、
ので逆らうことができず支店長室に行くと被告P3は原告P2に対しさっきのことを、、、「
怒っているのか」と尋ね、原告P2が強い口調で怒っていると答えたにもかか
わらず二月二九日の午後五時に仕事が終わったらすぐ自宅に来いと命じそのころ、「。」、「
、。」。は本店からの監査が終わって監査に来ていた者は大阪に行ってしまうからと言った
原告P2がそれを拒むと、被告P3は、他の女性を紹介することを要求し、更に「このこと
は誰にも言ってはいけないと脅した原告P2はそれ以上被告P3と会話をしたくなかっ。」。
たので、P9の電話番後を書いたメモを渡して支店長室から出ようとしたが、被告P3は、
その場でP9に電話するように命じ、原告P2はP9の実家に電話をかけ、電話に出たP9の
母親に対して「インド銀行のP2ですけれども、P9さんお願いします」と言い、P9が電。
話に出た後私は今P3さんの部屋にいますP3さんがあなたと話をしたいと言って、「、、。
いますので、電話を代わります」と言って、被告P3に受話器を渡して、支店長室を出た。

2被告らの主張
原告P2の主張はすべて否認する。
平成八年二月二六日午後二時ころ、被告P3は支店長室におらず、その時、被告P3は、
当時来日していた被告銀行の監査チームと午後一時四〇分から午後二時三〇分ころまで会
議室で昼食をとっていた。
右主張を裏付ける証人P8の証言は極めて詳細かつ具体的であり極めて信用性の高いも、
のである一方被告P3と監査チームとの昼食時間を午後○時三〇分ころからとする原告。、
P2本人の供述は、あいまいなものであり、信用性がない。
被告P3が電話でP9と話をしたのは、原告P2が自席からP9にかけた電話を転送したか
らであって、原告P2が支店長室からP9に電話をかけたことはない。
3原告らの反論
被告らが主張する被告P3と監査チームとの会議室における午後一時四〇分から午後二時
三〇分という昼食時間は、昼食時間としてはあまりにも遅すぎ、昼食をとるための時間と
しては五〇分しかなく外国人の通常の食事時間としてはあまりにも短すぎる証人P8は、。
、地下の食堂へ菜食主義者用サンドイッチを注文したのは午後一時一五分以降と証言して
いるが、地下の食堂への注文は午前一一時以前にもでき、午後一時一五分以降に注文した
理由が明確でなく、むしろ午前一一時三〇分以前に注文し、午後〇時までの間にピックア
ップして午後〇時から午後一時三〇分くらいの間に昼食が終わるというのが、最も自然で
あって、右証人P8の証言は信用性がない。
また、被告らが、右アリバイ
を主張したのは、本件訴訟の提起から、五か月以上過ぎたあとであり、不自然である。
三職場における嫌がらせの事実の有無について
1原告らの主張
原告らは、本件わいせつ行為等以降、被告銀行において、以下に述べるような、上司等
からの嫌がらせを受け、職場で事実上村八分の扱いを受けた。
(一)パーティー等について
平成八年一〇月四日、被告銀行において、元支店長代理のインド人の送別会が行われた
通常であれば全員出席する会であるにもかかわらず原告らは幹事から来ないで欲。、、、「
しいと出席を拒絶された原告P1は幹事に対してせめてプレゼントをさせて欲し。」。、、「
い」と言ったが、それも断られた。。
その後、被告銀行における忘年会、新年会、その他のパーティーについても、原告らに
は一切声がかけられなかった。
(二)P10の言動について
平成八年一〇月二八日被告銀行のアシスタントマネージャーであるP10は原告P1に、、
対して「五時五分前に、その日やった仕事を提出しなさい」ときつい調子で命じた。そ、。
れ以前には、そのようなことは全くなかった。その後も、他の従業員の前で、ささいな間
違いを一大事のように責め立てるという対応が続き、原告P1は精神的に追い込まれた。
(三)被告P3の秘書の言動について
平成九年一月ころ被告P3の秘書は原告P1に対して今に銀行にいられなくなる、、、「、
わよ。結局退職することになる。やられたあなたも悪いのよ」と言った。。
(四)P11の言動について
平成九年四月七日原告P1が被告銀行のアシスタントマネージャーであるP11の机の上、
に輸出の書類を置いたところ、同人は、原告P1に対して「許可なく書類を机の上に置く、
な「のさばっているんじゃない。人間性を疑うよ」と強い口調で言った。。」、。
その後、職場にコンピューターが導入され、他の者が上司からその使用方法を教えても
らっているのに、P11は、原告P1に対して「P1さんは、コンピューターに触るな」と、。
言った。
(五)原告P2の休暇について
平成九年四月七日、原告P2は、子供の学校の関係で、何日も前に半日休暇願い(有給休
暇)を出していたが上司から当日になって休暇を許可しないと言われた同日同じ、、、。、
セクションの者も休暇願を出している事実はあったが、これまではこのような場合は他の
セクションから手配をするのが通常で、右のような対応を
受けたことはなかった。原告P2は、何とか頼み込んでようやく休むことができた。
(六)その他、被告銀行の行員の原告らに対する言動について
被告銀行の従業員全員が原告らを明らかに避けている。従来は、同僚から食事に誘われ
たり、飲みに誘われたりすることが日常的にあったが、本件わいせつ行為等以降、そのよ
うなことはなくなり、昼食時も原告らと同じテーブルにつかないという状況が続いている

2被告らの主張
(一)パーティー等について
平成八年一〇月四日、被告銀行の元支店長代理のP12の送別会が行われたことは認める
が、原告P1がプレゼントをしようとしたことは不知、その余は否認する。
この送別会は被告銀行主催のものではなく、日本人スタッフ有志の発案で会費制で行わ
れた私的なものである。被告らはこの送別会が行われたことさえ知らなかった。幹事が有
、、志で送別会を行う旨の通知を出欠確認とともに全行員に回覧したところ原告P2は欠席
原告P1は出席ということであった幹事がこの結果をP12に示したところ同人は原告P。、
1の出席について「この人も出るんですか」と言って、原告P1の出席に対して拒否反応、。
を示したそこで幹事の一人が原告P1に対しP12の意向を伝え出席を思いとどまる。、、、
ように説得した。いずれにしても、この送別会は、私的なものであるので、被告らが干渉
する余地はない。
原告P1のプレゼントの件は不明であるが、原告P1がP12に個人的にプレゼントをした
いのであれば、勝手にすればよいというだけのことであり、P12がそれを受け取るかどう
かは別問題である。
右P12の送別会以降、被告銀行の職場で行われた忘年会、新年会等のパーティーは以下
のとおりである。
①平成八年一一月二三日及び二四日、被告銀行主催の鬼怒川温泉方面への行員旅行
②同年一二月三〇日、事務所での打ち上げスナックパーティー
③平成九年五月一六日、P13の自宅での同人主催の夕食会
④同年六月六日、事務所でのP13のスナック送別会
⑤同年九月二二日、被告銀行のチェアマンを囲んでの東京アメリカンクラブでの夕食会
このうち、原告両名は、①ないし④のすべてに出席しており、⑤については、原告両名
を含む全行員に対して招待通知が出されたが、原告両名は、出席の意思表示をしたものの
、後に、なぜか自由意思で欠席した。
(二)P10の言動について
原告P1の上司で
あるP10が原告P1に対して退社前にその日に行った仕事の内容を報告するように業務、、
命令を出したことは認めるが、その余は否認する。上司が、部下に対して、業務報告を求
めることは当然のことである。
(三)被告P3の秘書の言動について
この点に関する原告らの主張は否認する原告らの主張する被告P3の秘書がP14を指す。
のかP8を指すのか明らかではないがいずれにしても原告ら主張の発言を行った事実はな、
い。
P14は平成八年一一月中旬に入行した後、平成一〇年四月ころまで本件紛争の存在を知
らなかったのであるし、P8が原告P1に対して本件の紛争について心配している旨を伝え
たのは、本件訴訟が提起される以前の平成八年六月の一回だけである。
(四)P11の言動について
、、「。」。P11が原告P1に対して人間性を疑うよという趣旨の発言をしたことは認める
P11が右発言をしたのはP11が原告P1の頻繁な私用電話等について注意をすると常に、、
原告P1が当該注意と直接関係のないことを堰を切ったように話し続けるという状態であっ
たからであり、原告主張のような状況での発言ではない。
また、P11が、原告P1に対して「P1さんは、コンピューターに触るな」との趣旨の、。
注意を行ったことは認める。P11が右注意をしたのは、ローカル・エリア・ネットワーク
のセッティングの当日原告P1が休暇を取得していたため同人のユーザー登録が未了で、、
あり、しかも、同人がコンピューターを使用する必要性がその時点ではなかったからであ
る。
(五)原告P2の休暇について
、、、原告P2が平成九年四月七日の半日休暇願い(有給休暇)を出していた事実もその日
実際に半日休暇をとった事実もない。
原告P2が同月一五日の半日休暇願い(有給休暇)を出しその日実際に半日休暇をと、、、
った事実はある。その際、同じセクションの者も休暇願を出しており、しかも同セクショ
ンは二人のみのスタッフで構成されているため上司は原告P2に対して同日の休暇取得を、
再考するように促したが、それは組織の責任者として当然の対応であり、それを嫌がらせ
ととるのは原告P2の職業人としての意識の欠如を示すものである。
(六)その他、被告銀行の行員の原告らに対する言動について
この点に関する原告らの主張は否認する。
被告銀行の従業員の中には、原告らがありもしない事実をねつ造し、ねつ造し
た事実をもとに金銭給付の請求を行って本件訴訟を提起したという常軌を逸した行動につ
いてあきれ果てている者もいるであろうし、彼らが原告らを真っ当な人間として扱わない
ということがあったとしても彼らを責めることはできない。
四被告銀行の責任の有無について
1原告らの主張
(一)民法四一五条に基づく責任
使用者は、その従業員が職場で性的嫌がらせ、セクシャル・ハラスメントを受けないよ
うな環境を整備する義務がある。
、、、被告P3は原告らが本件わいせつ行為等を受ける以前にも他の女性従業員に対して
わいせつ行為を行っており、その女性従業員は、上司に報告をしたが、被告銀行は、適切
な対応措置を執らなかった、その時に、適切な対応措置を執っていれば、原告らに対する
本件わいせつ行為等は発生しなかったのであって、被告銀行の右債務不履行は原告らの本
件わいせつ行為等による損害と因果関係があるものである。
すなわち被告P3の秘書的業務をしていた被告銀行の従業員であるP15は平成八年二、、
月一四日、被告P3から支店長室に呼ばれ、臀部等を触られ、被告P3の自宅に一人で来る
ように言われ、さらにそのことは絶対誰にも言ってはいけないと言われた。P15は、同日
、被告銀行のスーパーバイザーのP16にこのことを告げ、P16はそのことをスーパーバイ
ザーのP17及びインド人マネージヤーであるP12に報告した。さらにP15は、同年二月一
八日、スーパーバイザーであるP18に右のことを相談したところ、同人から「自分を守る
ために一人では部屋に行かないように」と言われた。
被告銀行は、P15から被告P3のわいせつ行為の事実の報告を受けながら、被告P3に対
して何らの処置もせず放置しその結果被告P3は原告P1及び原告P2に対して本、、、、、
件わいせつ行為等を行ったものである。
被告銀行の右対応は使用者の前記義務の不履行であり、被告銀行は民法四一五条に基づ
き、原告らに対して、本件わいせつ行為等によって生じた損害を賠償する責任がある。
(二)民法七一五条に基づく責任
本件わいせつ行為等は被告P3が在日代表としての職務上の地位を利用した悪質なセク、
シャル・ハラスメントであり原告らに対する不法行為である被告P3は被告銀行の在、。、
日代表でありながら、自ら、職務上の右地位を利用して原告らに対する本件わいせつ行為
等を行ったのであるから、被告銀行は
、民法七一五条により、原告らに対して、本件わいせつ行為等によって生じた損害を賠償
する義務がある。
2被告銀行の主張
被告銀行が被告P3に対して何らの処置もしていないのは事実であるがそれは同人、、、
が人格及び品行において模範的であり、同人に対して何らかの処置をする理由も必要もな
かったからである。
被告銀行が、原告らのねつ造による原告ら主張の事実(第三、一、1及び同二、1)を知ら
されたのは平成八年四月一日である。
五原告らの損害について
1原告らの主張
原告P1は、被告P3に対する善意を踏みにじられ、強姦という女性として最も大きな恥
辱を受けまたその後も被告P3から再び内線電話があるのではないかと恐怖におのの、、、
きながら仕事をしなければならず、非常に大きな精神的苦痛を受けた。
原告P2は、勤務時間中にわいせつ行為を受け、大きな精神的苦痛を受けた。
また前記(第二一2)の被告銀行の調査後の通告は原告らにとって更に精神的な、、、、、
打撃を与えるものであった。
また、本件わいせつ行為等以降の被告銀行における、原告らに対する上司や同僚の対応
によっても、原告らは精神的苦痛を受け、体調を崩すという状況に至っている。
以上のことから、原告らの受けた多大な精神的苦痛は金銭に見積もることはできないが
これを慰藉するためにあえて金銭に見積もれば原告P1については金五〇〇万円原告、、、
P2については金二〇〇万円を下回ることはない。
原告らは、本件訴訟を提起するにあたり、原告ら訴訟代理人弁護士らに対して弁護士費
用として、原告P1について金一〇〇万円、原告P2について金四八万円の支払をそれぞれ
約した。
2被告らの主張
原告らの主張は争う。
第四争点に対する判断
一被告P3の原告P1に対する強姦行為等の事実の有無について
1甲第四号証の一から同号証の五まで第五号一証の一二第七号証第八号証乙第、、、、、
二号証の一、同号証の三、原告P1本人尋問の結果(第一回)(平成一〇年四月一三日の本人
調書二三項から一一六項まで、(一四三項以下は反対尋問)二〇四項から二四五項、二五一
項から三〇六項、三〇九項から三四〇項)、(第二回)(平成一一年五月一九日の本人調書一
項から二七項五七項から九五項)被告P3本人尋問の結果(平成一〇年一二月七日の本人、、
調書六六項、六七項)、検証の結果によれば、以下の事実を認めることができる

平成八年二月二一日、午後二時過ぎころ、被告P3は原告P1に対し、内線電話で支店長
室に来るように命じたので、原告P1が支店長室に入ると、そこにいたのは被告P3だけで
あった被告P3は原告P1に対して家族構成等について尋ね被告P3の自宅に来て日本語。、
を教えて欲しいと依頼した。原告P1はそれを断ったが、被告P3は執拗に依頼し、原告P
1が被告P3の自宅に来ることができる日を尋ねたので原告P1は断りきれなくなりま、、、
た被告P3の態度に日本語を学びたいという意欲を感じ日本語学習用のテキストを渡、、、
すことならできると考え同月二八日なら行くことができると答えた被告P3は水色の、。、
メモ用紙(甲第七号証)に自宅の電話番号、自分の名前、自宅マンションの名称、部屋番号
、それがεの後ろにあることを自ら記載し、原告P1に対してこれを手渡した。原告P1は
同月二三日ηの三省堂書店で日本語入門はじめのいっぽと題する日本語学習用の、、、「」
テキストを二冊購入した。その後被告P3は、原告P1に対し、同月二六日及び同月二七日
にはそれぞれ午前九時四五分ころ及び午後三時一〇分ころの各二回、同月二八日には午前
一○時四〇分ころ、午後三時一〇分ころ、午後四時ころ及び午後四時五〇分ころの四回に
わたっていずれも内線電話をかけてきた原告P1は同日日本語学習用のテキストを、。、、
持参していたが何とか被告P3の自宅へ行くことを断りテキストを職場で渡そうとした、、
が被告P3はテキストを職場で受け取ることを拒み自宅に来るように要求したそこ、、、。
、、、、、で原告P1は同日午後五時に業務が終了した後お茶を飲んで時間を調整した上で
テキストを持って、午後七時三五分ころ、δ○○号室に赴いた。
δは、二つの棟(AタワーとBタワー)から構成されており、被告P3の居室がある棟(A
タワー)に二つのエレベータがあり、被告P3の居室である○○号室へは、その一方のエレ
ベータを使用しないと行くことができない構造となっていた。
原告P1はδのAタワーの二階ロビー(二階に建物の入り口がある)に行きそこで、、。、
インターホンで被告P3を呼び出しドアが開いたので中に入ったが○○号室に通じ、、、、
ていないエレベーターに誤って乗り込み、○階まで上がったが、そこに○○号室がなかっ
たことから、自らの間違いに気づき、エレベーターで二階まで降りて戻り、○○号室に
通じているエレベータを捜していたところ、被告P3が二階に降りてきて、原告P1と出会
ったその時被告P3は上半身は長袖の白い綿の洋服を着ており下半身は白い腰巻き。、、、
風の民族衣装を着けていた。原告P1と被告P3は、○○号室に通じているエレベーターで
○階に上がった○○号室のドアの前で原告P1は紙袋から持参してき日本語学習用テ。、、
キストを取り出しそれを被告P3に渡して帰る旨被告P3に伝えたが被告P3はそれを、、、
聞き入れず、部屋に入るように強力に勧め、断りきれなかった原告P1は、被告P3の部屋
に入った。
○○号室に入ってから原告P1と被告P3は居間にあったソファに被告P3が原告P、、、
1の左側に並ぶようにして座った。原告P1は、日本語学習用テキストを取り出して説明を
しようとしたが、被告P3は、原告P1に対して、再婚しない理由や、日本では再婚するこ
とは許されているかどうかを尋ねるなどした。その様な会話が約一〇分程度なされている
中で、被告P3は、突然、右手で、原告P1の左手をつかみ、原告P1の左手を被告P3の股
間に持っていき、被告P3の陰茎を触らせた。その際、被告P3は、前記のとおり腰巻き風
の民族衣装を下半身に着けていたが下着を履いていなかったので原告P1の左手は直接、、
被告P3の陰茎に触れ、それを握ることになった。原告P1は、とっさに左手を引き抜き、
被告P3の手を振り払った被告P3は原告P1のブラウスの襟元からブラジャーの間に。、、
右手を差し入れ、乳房をもみ始めた。原告P1は、激しく抵抗し、被告P3の手から逃れよ
うとしたが被告P3は両手で原告P1を抱き上げた被告P3の自宅には寝室が二つあ、、。、
り、それぞれ二つのベッドがおいてあった。被告P3は、原告P1を抱きかかえながら、二
つの寝室のうち大きい方の寝室に二、三歩入ったが、すぐにそこから出て、小さい方の寝
室に入り、原告P1をベッドの上に投げ落とした。その間、原告P1は手足をバタバタさせ
て抵抗していたが被告P3は大声を出さないようにと強い口調で言い続けていた被告、、。
P3は、原告P1をベッドに投げ落とした直後、原告P1に身体ごとのしかかり、原告P1の
下着をストッキングごとはぎ取り、陰茎を原告P1の陰部に強引に挿入し、射精した。
右行為のあと原告P1は居間に戻り茫然自失の中でいったんソファーに座り被、、、、、
告P3が出した飲み
物を飲んだ後子供が待っているので食事を作らなければならないと言って被告P3の自、、
宅を出て、エレベーターの下まで被告P3に見送られ、帰宅した。
2被告P3は、右1の事実を全面的に否認し、原告P1が、平成八年二月二八日夜、被告P
3の自宅であるδ○○号室に来たことはなく被告P3が原告P1に対して強姦行為等をした、
ことはない旨主張し、乙第四号証の記載及び被告P3本人の供述中には右主張に沿う部分(
平成一〇年一二月七日の本人調書三四項から三九項)がある。
しかしながら被告P3がメモ用紙(甲第七号証)に自宅の電話番号自分の名前δと、、、、
いうマンションの名称、○○号室という部屋番号及びそのマンションがεの後ろにあるこ
と等を自ら記載してこれを原告P1に手渡したことは被告P3が自認する事実である(被告、
P3本人尋問の結果(平成一○年一二月七日の本人調書四〇項から四二項、一七三項))。
被告P3は右メモについて原告P1に手渡したことはあるもののそれは被告P3が、、、、
まだ会議室において執務していた当時頻繁に出入りしていた原告P1が日本語のチュータ、
ー(家庭教師)を手配できると言ったのでそのチューターのために作成し原告P1に手渡し、
たものである旨供述し(平成一○年一二月七日の本人調書四二項から四四項まで一七四項、
)、被告P3作成の陳述書(乙第四号証)にもそれに沿う記載がある。
しかし、乙第四号証及び証人P8の証言(平成一〇年一二月二一日の証人調書三一頁から
三二頁)によれば、被告P3が会議室で執務をしていたのは、平成七年一二月一七日に来日
してから前任者からの引継ぎが終わった平成八年一月二六日までであったが被告P3は、、
来日した平成七年一二月一七日から平成八年二月三日まではγにあるウィークリーマンシ
ョンに滞在していたのであるから被告P3が会議室で執務していたときにはδ○○号室、、
には被告P3は居住しておらず前任者が居住していたことが認められるしたがって被、。、
告P3が居住もしていないのにその時期に居住開始の見込まれる時期も書かずにδ○○、、
号室の記載のあるメモを渡したというのは不自然であるまた被告P3本人尋問の結果に。、
よれば、被告P3は原告P1をはじめとして誰からも日本語のチューター(家庭教師)を紹介
されていない事実を認めることができるのでありチューターが被告P3の居宅を訪問する、
日時の
打ち合わせがされる前に前記メモを原告P1に託したというのも不自然である結局被、。、
告P3本人の前記メモを原告P1に手渡した時期及び目的についての供述は信用することが
できない(なお、被告らは、甲第七号証に「DR.○○○○○,○.○」と記載されてい.
るが仮に原告P1に手渡すためのものであればそのような記載は不要であるということ、、
から、これは原告P1に手渡すために作成されたものではないと主張するが、原告P1に渡
すメモに被告P3の名前が書かれていたとしてもそれは不自然なこととは言えず右認定を、
左右するものではない。)。
右のように被告P3本人のこの点に関する供述は前記メモを手渡した時期及び目的の点、
では信用できないが、被告P3が、原告P1に対して自分が日本語を教わりたいことを述べ
、(それが誰であるかはさておき)日本語を教えてくれる人のために自分の居宅の所在地及
び電話番号をメモに記載し、このメモを原告P1に手渡したという点においては、原告P1
本人尋問の結果(第一回)と一致しているのであり原告P1本人尋問の結果(第一回)の信用、
性の裏付けとなっているといわなければならない前記のとおり原告P1は平成八年二月。、
二三日に被告P3のために日本語学習用のテキストを二冊購入しているのでありこの事実、
と右の事実とを併せて考えれば、原告P1こそが、被告P3が日本語を教わりたいと依頼し
た相手であることを認めることができるそして原告P1が右の時期に日本語学習用テキ。、
ストを購入していることからすれば原告P1本人(第一回)が供述しているとおり同月二、、
一日に被告P3に支店長室に呼び出され、被告P3の自宅に来て日本語を教えて欲しいと執
拗に頼まれ、同月二八日なら行くことができると答えたので、被告P3が原告P1に対して
前記メモを手渡した事実を認めることができる。
被告らは被告P3が平成八年二月二一日午後一時半から午後二時三〇分ないし午後三、、
時近くまで監査チームのメンバーと共に会議室で昼食を取りながらミーティングを行って
いた旨主張し、証人P8及び被告P3の各供述中には右主張に沿う部分があるが、前記認定
事実に照らし、到底採用することができない。
このように、被告P3は、原告P1に前記メモを手渡したという動かし難い事実がありな
がら、手渡した時期及びその目的を偽っているというほかはなく、このよう被告P3の態
度は平成八年二月二一日に原告P1に前記メモを手渡した事実を否定しないとその後に、、
起きた事実を否定できなくなるからであると考えるのが合理的であって、このことを併せ
て考えれば、甲第八号証及び原告P1本人(第一、二回)の尋問の結果どおり、原告P1が、
平成八年二月二八日夜被告P3の自宅を訪れ被告P3が原告P1を強姦した事実を認める、、
ことができる、
被告P3は平成八年二月二八日夜の自らの行動について午後六時ころ帰宅しβ周辺、、、
にある「ラージマハール」というインド料理のレストランへ行き、夕食を食べた後、午後
九時三〇分ころ帰宅した旨供述しているが(被告P3本人尋問の結果(平成一〇年二月七日の
本人調書(一一五項から反対尋問)一一九項から一二四項))、到底採用することができない

3被告らは、被告P3の自宅のベッドルームの位置、移動の経路、カーペットの色、家具
等に関する原告P1本人(第一、二回)の供述内容に不備があること等、原告P1の供述内容
に不合理な点があることを主張し、反証として、乙第一一号証、第一三号証等を提出して
いるが、原告P1は被告P3によってその意に反してベッドルームまで抱きかかえられて行
き、強姦されたのであって、その供述内容の細部に誤りがあったとしても右状況を考えれ
ば不自然なこととはいえないし検証の結果に照らせば甲第八号証の記載及び原告P1本、、
人(第一回)の供述内容は全体として被告P3の自宅の室内の状況等と合致するものとなっ、
ており、証明力に欠ける点はないというべきである。以下、この点に関して詳述する。
(一)原告P1がエレベーターを間違えたことについて
原告P1は検証を実施する前から誤ってδ○○号室に通じていないエレベーターに乗、、
ってしまったことを主張し甲第八号証においても原告P1本人尋問(第一回)においても同、
旨を一貫して述べていた。このような事実は、実際にその事実を体験していない者が想像
でねつ造することは困難であるし、殊更にそのような事実を付加するのは無用のことでも
ある。検証の結果によれば、δの出入り口付近の構造は、あらかじめよく分かっていなけ
れば○○号室に通じていない方のエレベーターに向かう通路へ入って行きやすい構造とな
っていることが認められる。このことは、甲第八号証の記載及び原告P1本人(第一、二回
)の供述の信用性を裏付ける根拠となる事実である。
(二
)δ○○号室内部の状況についての原告P1本人の供述等の信用性について
(1)原告P1がδ○○号室に入室した経験について
被告らは原告P1がδ○○号室を訪れたのは平成二年三月二四日以前であって被告P、、
3がδ○○号室に居住するようになって以降、原告P1は同室に入ったことがない旨主張す
る原告P1本人尋問の結果(第一回)(平成一〇年四月一三日の本人調書三九項(一四三項。、
以降は反対尋問)二四六項から二五〇項三九八項)によれば確かに原告P1は被告P、、、、
3が同室に居住するようになる前に会社のパーティー等が同室で開催された際に多人数の、
同僚とともに同室のリビングルームに入ったことが一回か二回あること、その際にはリビ
ングルームに入っただけであり被告P3が同室に居住するようになってから平成八年二、、
月二八日以前には、入室したことがないことが認められる。
しかしながら次に述べるとおり原告P1は右の経験からでは容易に知ることができ、、、
ないような室内の状況について供述しており、その供述内容は客観的状況と一致している
から原告P1が強姦されるという特異な経験をしたという供述の信用性を裏付ける根拠と、
なっているというべきである。
(2)ベッドルームの数及びベッドの数について
原告P1の陳述書(甲第八号証)にはリビングルームから強姦が行われたベッドルームま、
での移動状況についてその後の記憶はあまりはっきりしていませんが確か一つ目のベ、「、
ッドルームを通り抜け二つ目のベッドルームまで抱きかかえられていったように思います
と記載されている右陳述書は平成一○年四月六日付けで作成され第九回口頭弁論。」。、、
期日(平成一〇年四月一三日)に提出されたものである。
また原告P1は第九回口頭弁論期日(平成一○年四月一三日)に行われた原告本人尋問、、
において、δ○○号室にはベッドルームが二つあり、それぞれのベッドルームにはベッド
が二つずつあったことを供述している(原告P1本人尋問の結果(第一回)(平成一〇年四月一
三日の本人調書三〇九項から三一四項))。
被告らが、δ○○号室の間取りの図面である乙第二号証の二及び三を提出したのは、右
本人尋問終了後の第一二回口頭弁論期日(平成一〇年一二月七日)においてであり、δ○○
号室において検証が行われたのは平成一一年五月一九日である。
右のとおり、原告P1は、被告からδ○○
号室の間取り図を示される前に、同室にベッドルームが二つあり、それぞれベッドが二つ
ずつあったことを記憶していたのであるが、この記憶は、乙第二号証の二及び三並びに検
証の結果により、客観的事実と一致することが明らかである。
前記のとおり原告P1は本件強姦事件が発生した日よりも前にδ○○号室に一回か二、、
回行ったことがあるが、その際にはリビングルームにしか入っていないのであり、同室の
ベッドルームまでは入室していないのであるから原告P1が同室のベッドルームの数及び、
そこに置かれているベッドの数を知っているということはそれ以外の機会に原告P1が、、
δ○○号室に入室し、ベッドルームを目撃していることを裏付けるものであるといえる。
これに対して被告らは原告P1が本人尋問において同人の陳述書(甲第八号証)添、、、、
付の図面(δ○○号室のリビングルームの図面)を示された上で、リビングルームとベッド
ルームの位置関係を示すように求められたのに対して、記憶になく、抱きかかえられてし
まったので位置関係を示すことができない旨供述していること原告P1は強姦された後、、
被告P3がベッドルームから出たあと一人で歩いてリビングルームに戻りお茶ないし、、、
コーラを飲み「子供が待っているので食事をつくらなくちゃいけないから」と言って、、。
帰った旨供述していること原告P1は検証の際リビングルームから見てベッドルーム、、、
がどちらの方向にあるか確答できず被告P3が一同をベッドルームに案内したこと原告、、
P1は、検証後に行われた原告本人尋問においては、強姦後の同人の行動について「真っ、
直ぐ行ったらもうそこがいすがありましたので迷うことなくお部屋(二番目のベッド、、、
ルーム)の入口を出てあの廊下を通ってすぐいすに座りました行って一番左側の、、、。」「
ベッド、そこから出てきたときに、いとも簡単にリビングルームの赤いソファに出てこれ
たあこの部屋だということがまず分かったと供述していること(原告P1本人尋、、、、。」
問の結果(第一回)(平成一〇年四月一三日の本人調書三二〇項三二一項三三〇項から三、、
四〇項)、(第二回)(平成一一年五月一九日の本人調書一一七項、一五四項、一五五項))に
、、基づき仮に原告P1がリビングルームからベッドルームまで抱きかかえられていたから
両室の位置関係が分からなかったとしても、逆にベッドルームか
らリビングルームヘは一人で歩いて戻ったというのであるから、右リビングルームの図面
においてベッドルームが上下左右のいずれに位置していたかについて答えられないという
ことはあり得ないと指摘し、本件日時以前に、δ○○号室に行ったことがあるが、その際
には、ベッドルームには行かなかったためにそのような供述内容になるのであって、原告
P1本人(第一、二回)のこの点に関する供述内容は平成八年二月二八日に原告P1がδ○○
号室に行ったことを裏付けるものではないと主張する。
、、、被告らの右主張は原告P1本人(第一二回)の供述内容自体が不自然であると指摘し
その信用性を否定しようとするものであるが原告P1本人(第一回)の供述どおり原告P、、
1が強姦される直前にリビングルームからベッドルームに移動した際には抱きかかえられ、
ており、原告P1は手足をバタバタさせて抵抗していたとすれば、原告P1がリビングルー
ムとベッドルームの位置関係についてまで正確に記憶していないとしても、何ら不自然な
ことではなく、また、強姦後、リビングルームにすんなり戻れたとしても、その際には、
茫然自失の状況であるから、部屋の位置関係について正確に記憶していなかったとしても
不自然とは言えず原告P1本人(第一二回)の供述内容が不自然で信用できないとはい、、、
えない。
(3)ベッドルームへの移動の経路についての原告P1の供述内容について
前記のとおり原告P1の陳述書(甲第八号証)にはリビングルームから強姦が行われた、、
、「、ベッドルームまでの移動状況についてその後の記憶はあまりはっきりしていませんが
確か一つ目のベッドルームを通り抜け二つ目のベッドルームまで抱きかかえられていった
ように思いますと記載されておりまた原告P1は第九回口頭弁論期日(平成一〇年。」、、、
四月一三日)に行われた原告本人尋問(第一回)において被告ら代理人のP3は一つ目、、「、
のベッドルームを通り抜けて二つ目のベッドルームまで抱きかかえていったと言う主張を
されているんですけどね、それで間違いありませんか」との質問に対して「ええ、記憶。、
に残っていることだけですけれども、確かに二つ目のベッドルームまで通らせられたこと
は確かです」と供述している。。
原告P1は検証後に行われた原告本人尋問(第二回)において大きい方のベッドルーム、、
に一、二歩入り、すぐ引き返して、廊下を通
り、小さい方のベッドルームに入ったと述べて前記の点を修正し、いずれにしても、一つ
のベッドルームに入ってから、そのまま違うベッドルームに連れて行かれたという印象で
あるかとの原告ら代理人の質問を肯定する供述をしている(原告P1本人尋問の結果(第二回
)(平成一一年五月一九日の本人調書七〇項から八五項))。
、、、、被告らは原告P1が検証後リビングルームからベッドルームに至る経路について
一つ目のベッドルームに一、二歩入って直ぐ引き返して二つ目のベッドルームに入ったと
供述内容を変えたことを、検証においてベッドルームの間取りを確認した後、強引に客観
的事実とのつじつまを合わせようとしたものであると指摘する。
また、被告らは、この点につき、原告P1本人が、前記のとおり、検証の前の本人尋問(
第一回)において一つ目のベッドルーム内のベッドの数及び二つのベッドの位置関係につ、
いて、二つ目のベッドルームのベッドの数及び二つのベッドの位置関係と同様に克明に供
述していること、事件後は一人で歩いて二番目のベッドルームからリビングルームに戻っ
たと述べていることから原告P1の検証前の供述が勘違いに基づくものであるとすること、
はできないと主張する。
確かに被告らの指摘するとおり原告P1の検証前の供述はδ○○号室の間取りの構、、、
、、、、造とは符合しないが原告P1本人の供述どおり原告P1が被告P3に抱きかかえられ
抵抗をしながら移動したのであれば、いったん停止し、あるいはしばらくいた場所の記憶
とは異なり、そのような誤った認識を持つことも十分あり得ることである。
この点に関する、原告P1の陳述書の記載は、前記のとおり「その後の記憶はあまりは、
っきりしていませんが・・・というものであり原告P1の検証前の供述も記憶に残っ」、「
ていることだけですけれども、確かに二つ目のベッドルームまで通らせられたことは確か
ですというものでありいずれも一つ目のベッドルームを通り抜けたことを断言して。」、、
いるものではない。
原告P1が、被告P3が居住するようになる以前に訪れたときの記憶に基づいて、ベッド
ルームが二つあって、そこを通り抜けた等という事実をねつ造していると考えることは困
難であるなぜならば原告P1は以前に当該○○号室を訪れた際にはリビングルーム。、、、
にしか入ったことがなく、ベッドルームが二つ以上あるということは分からず
、もし、そのような体験をしていないならば、あえて、ベッドルームが二つあり、その一
つ目を通り抜けたなどと言う供述をすることはないと考えるべきだからである。
したがってこの点に関する被告らの主張は原告P1本人の供述の信用性を否定する根、、
拠となるものとはいえない。
(4)リビングルーム内の家具及び窓について
原告P1の陳述書(甲第八号証)は前記のとおり被告らからδ○○号室の間取りの図、、、
面が提出される前に作成されたものであるその添付の図面(δ○○号室のリビングルーム。
の図面)には、原告P1が記憶に基づいて作成したという同室のリビングルームの状況が図
示されているが、そのうち、部屋の一つの側面のほぼ全体が窓であること、湾曲した形の
ソファーがあること及び窓と入り口との位置関係については、検証の結果により確認され
た客観的事実と一致する。
ただし、検証の結果によれば、検証時、δ○○号室のリビングルームには、ソファーが
二組置かれていたことが認められる。そのうちの一組については、甲第八号証添付の図面
(δ○○号室のリビングルームの図面)に記載されているソファーと、その形状及び置かれ
ている場所等の類似性が認められるものであり甲第八号証添付の図面(δ○○号室のリビ、
ングルームの図面)に記載されているソファーはそのソファーのことであると認めることが
できる。
原告P1は検証後の本人尋問において検証時にリビングルーム内にあった甲第八号、、、
証添付の図面(δ○○号室のリビングルームの図面)に記載されていないソファーは、平成
八年二月二八日にはなかったこと、リビングルーム内にあったダイニングボードが同日あ
ったという記憶はないことを供述している(原告P1本人尋問の結果(第一回)(平成一〇年四
月一三日の本人調書四四項から五二項))。
被告らは、原告P1が、本件当時にはなかったと供述している甲第八号証添付の図面(δ
○○号室のリビングルームの図面)に記載されていないソファーは平成八年二月二八日の、
約二か月前である平成七年一二月一五日に台東区の株式会社多慶屋から被告銀行が購入し
、δ○○号室に搬入されたものであると主張する。
被告らが、右事実を裏付けるものとして提出した乙第一一号証は、右ソファーの売り主
であると被告らが主張する株式会社多慶屋が発行した平成七年一二月八日付けの「お買上
明細書」と題する書面であり、住
所欄にはδ○○号室の住所が記載され、商品名欄には「ク‐1セルシオ3ワンアームミギ
#1013「ク‐1セルシオ3ワンアームヒダリ#1013「ク‐1セルシオ3アームレ」、」、
ス#1013」と商品がソファーであることをうかがわせる記載があり、同じく乙第一二号
証は、株式会社多慶屋が発行した平成七年一二月一五日付けのインド銀行宛の領収書であ
り、そこには、乙第一一号証に記載されている代金額と同額の金額が記載されている。被
告らは乙第一一号証に記載された商品は甲第八号証添付の図面(δ○○号室のリビングル、
ームの図面)に記載されていない方のソファーであると主張するがここに記載された商品、
がソファーだとしてもそれが甲第八号証添付の図面(δ○○号室のリビングルームの図、、
面)に記載されていないソファーであることを認めるに足りる証拠はなくむしろこれが、、
甲第八号証添付の図面(δ○○号室のリビングルームの図面)に記載されているソファーで
ある可能性もある。したがって、被告らの右主張する事実を認めることはできず、右主張
は、原告P1本人の供述の信用性を否定するものとはいえない。
被告らは原告P1本人が平成八年二月二八日当時にはなかったと供述したリビングル、、
ーム内のダイニングボードは、平成四年三月二一日、当時の被告銀行の東京支店のマネー
ジャーであったP6が居住していたζが同人の大阪支店への異動を理由に明け渡されたこ、
とに伴い、同アパートからδ○○号室に移転されていたものであり、それは、本件事件当
時も同室のリビングルームに置かれていたことこれに反する原告P1本人の供述は事件、、
当時に同室に入っていないことを示すものであり、むしろ、右ダイニングボードが同室に
運び込まれる前である平成四年三月二一日以前に、同室に入ったときの記憶で供述してい
ることを示すものであると主張する。
被告らが右事実を裏付けるものとして提出した乙第一三号証にはBANKOFI、「
NDIATOKYOBRANCH(Z東京支店)「ListofFurnit」、
ure,etc.attheManager’sResidenceat
,.MitaTokyuApartment602AoccupiedbyMr
○.○.○○○○○,Manager(P6(マネージャー)が居住するζのマネー
ジャーの居宅における家具等のリスト)一Side‐BoardKeptat○」、「
○○○○○○○○○○(1サイド・ボードδでキープする)との記載があるがここ」、
に記載されたサイドボードが検証当日原告P1が事件当時にはリビングルームにはなか、、
ったと説明したダイニングボードであることを認めるに足りる証拠はなく、また、被吉ら
の主張するとおり、これが平成四年三月二一日にδ○○号室に移転されたとしても、事件
当時までそれがそこで保持されたということを認めるに足りる証拠もない。また、原告P
1本人は検証後の本人尋問において原告P1が被告P3から強姦されたというベッドル、、、
ームに、平成八年二月二八日当時は、サイドボードがあったが、検証時にはそれがなかっ
た旨供述している(原告P1本人尋問の結果(第二回)(平成一一年五月一九日の本人調書九六
項から九八項))。前記のとおり、被告らの主張するサイドボードがどのサイドボードのこ
とか特定されていない状況を前提とすると原告P1本人が右供述の中で言及しているサイ、
ドボードが、被告らの主張するサイドボードである可能性も否定できない。
以上によりこの点に関する被告らの主張も原告P1本人の供述の信用性を減殺するも、、
のとはいえない。
(5)カーペットの色について
甲第八号証(原告P1の陳述書)にはδ○○号室のリビングルームのカーペットが赤色で、
あったとの記載があり、同号証添付の図面(δ○○号室のリビングルームの図面)には「赤
いカーペット」との記載がある。
原告P1本人は右図面には記憶に確かに残っているものだけを記載したことリビン、、、
グルームのカーペットの色は「ぼたん色」又はくすんだ赤色であったことを供述している
(原告P1本人尋問の結果(第一回)(平成一〇年四月一三日の本人調書九七項三二二項三、、
二四項))。
しかしながら、検証の結果によれば、検証時、δ○○号室のリビングルームのカーペッ
トの色は薄いべージュ色であったことが認められ、乙第三号証によれば、平成二年三月二
四日に、δ○○号室のカーペット敷の部分全体が薄べージュ色の新しいカーペットに取り
替えられたこと、平成九年七月二八日に、同室のカーペット敷の部分全体が薄べージュ色
の新しいカーペットに取り替えられたことが認められ、そのことからすると、平成八年二
月二八日当時のδ○○号室のリビングルームのカ
ーペットの色は薄いべージュ色であったことが認められる。
右事実を前提とすると、右検証前の原告P1本人の供述内容及び陳述書添付図面(δ○○
号室のリビングルームの図面)の記載は、客観的事実と食い違うものである。
原告P1本人は、前記のとおり、被告P3がδ○○号室を使用するようになる前に同室に
訪れたことがある旨供述しているが証人P8は以前同室のカーペットの色は赤色で、、、、
あった旨証言している(証人P8の証言(平成一〇年一二月七日の証人調書五七項から六五項
))。
被告らは、この点について、δ○○号室のリビングルームのカーペットの色は平成二年
三月二四日以前は赤色であったが、同日以降現在に至るまで薄いべージュ色であり、一般
的に、余程特徴的な色でもない限り、一、二度何の気なしに目にしたカーペットの色など
覚えていないのが通常であり原告P1本人(第一回)が検証以前には同室のリビングルーム、
のカーペットの色が赤かったと供述し、同人作成の陳述書添付の図面にもその旨記載され
ていることは、原告P1主張の日時に原告P1がδ○○号室には行っていないことを示すと
ともにそれが原告P1本人の供述が平成二年三月二四日以前に同室に入った時の記憶に基、
づくものであることを示すものであると主張する。
原告P1は検証後の原告本人尋間においてはこの点について検証前には赤色ぼ、、、、、
たん色と供述したが、自信がないこと、それはソファーの色が赤色であり、その印象が強
かったことを供述している(原告P1本人尋問の結果(第二回)(平成一一年五月一九日の本人
調書二八項から三〇項))。検証の結果によれば、ソファーの色は、ぼたん色とも言える赤
色であったことが認められる。
これらを総合すると原告P1本人のこの点に関する供述は客観的事実と食い違い原、、、
告P1本人の供述の信用性を裏付けるものとはいえないが、前記(2)、(3)、(4)に説示した
各事実において原告P1の供述が客観的事実に符合していることソファーの色がぼたん、、
色ともいえる赤色であり、その印象が強く残り、カーペットの色と混同したという可能性
もあながち否定できないことも考え併せるとこの点についての食い違いは原告P1本人、、
の供述の信用性を減殺するものとまではいえないというべきである。
4その他の原告P1本人の供述の信用性に関する被告らの主張等について
(一)監査チームの行
動との関係について
乙第四号証(被告P3の陳述書)によれば監査チームのメンバーのうちそのチーフであ、、
るP5は平成八年二月一四日から同月二八日まで、被告P3の自宅であるδ○○号室に宿泊
していたことが認められる一方、監査チームは、同月二八日の午後二時四〇分に大阪に向
けて出発したことも認められるのであって、前記(第二、一、1、(二))のとおり、被告P3
は赴任当時は、単身赴任であって、本国から家族が来たのは同年五月ころであることも勘
案すると同年二月二八日の夜にはδ○○号室には被告P3が一人でいたことが認められ、、
る。
右によれば、同日、δ○○号室で、被告P3が、原告P1と二人きりになることは可能で
あり、原告P1の供述内容は不可能を内容とするものではなかったといえる。
(二)抵抗する原告P1を姦淫することが不可能であるとの被告らの主張について
被告らは、原告P1が、被告P3に抱きかかえられてリビングルームからベッドルームへ
連れて行かれる間及びベッドに投げ出されてから姦淫される時に、翌日、肩や腕が筋肉痛
のように痛むほど手足をばたばたさせて抵抗していたという点について、リビングルーム
からベッドルームに運び込む際の体力の消耗が激しいこと、激しく抵抗する女性に対して
陰茎を挿入するためには、脅迫や暴行によって被害者である女性に抵抗をあきらめさせる
ことが必要であることを指摘しこれらからすれば原告P1の主張する態様によって被告、、
P3が原告P1を強姦することは不可能であったと主張する。
しかしながら、被告P3が原告P1を抱きかかえて、リビングルームからベッドルームに
運ぶ際に体力を消耗するとしても、その程度は、それほど大きなものとは考えられず、ま
た原告P1が翌日筋肉痛が残るほど激しく抵抗していたというのはそれだけ強く被告、、、
P3に押さえ付けられたということを推認させるものであり(単に、手足をばたばた動かし
ただけではそれほどの筋肉痛になることは考えられない)被告P3が原告P1を強力に、。、
押さえつけた場合にはそれ自体が強度の暴行であり原告P1はそれに対して抵抗するこ、、
とが著しく困難な状況となることは十分に首肯できるものであって原告P1が主張する態、
様による強姦行為が不可能であるとはいえない。
(三)コンドームに関する被告らの主張について
原告P1の陳述書(甲第八号証)には、原告P1が被告
P3に姦淫された後原告P1はコンドームの始末をしている被告P3の後ろ姿を目撃した旨、
の記載がある。
被告らは、右記載に関し、原告P1本人の供述(原告P1本人尋問の結果(第一回)(平成一
〇年四月一三日の本人調書二九五項から三〇一項))によれば、原告P1と被告P3がリビン
グルームのソファーに隣り合わせに座っていた際に、原告P1が被告P3の陰茎を握らされ
たときには、被告P3の陰茎にはコンドームが装着されていなかったのに、原告P1の強硬
な抵抗の中で強姦する前に被告P3がコンドームを装着することは不可能でありこのこ、、
とからして、原告P1本人の供述は虚偽である旨主張する。
確かに、被告らの主張するように、原告P1の陳述書の記載内容及び同人の供述(第二回
)(平成一一年五月一九日の本人調書一二三項一二四項)からすると被告P3が原告P1を、、
強姦する際にコンドームを装着したのがいつであるかについては不明であり、また、原告
P1本人の供述等による被告P3の原告P1に対する強姦の態様からすると、被告P3がコン
ドームを装着するのは容易ではないようにも思われるが、ここで問われているのは、原告
P1の供述内容に信用性が認められないか否かであるところ原告P1の被告P3にベッド、、
に放り投げられ押えつけられて強姦されている際の状況に関する陳述書の記載及び供述は
この間私はただ手足をありったけ力でばたつかせて抵抗していましたので本当言って、「、
何がおこっているのかはっきりは分かりませんでした」(甲第八号証)「本当に恐怖でい。、
っぱいで、何が起こっているのかさっぱり分からないほど動転していました。それで大き
な声を出すな、大きな声を出すなと言ってねじ伏せられ、それでぱっと服を脱ぎはがれた
というかはがれたという感じですね何かあっという間の出来事でした(原告P1本人、。。」
尋問の結果(第一回)(平成一〇年四月一三日の本人調書一一五項))というものであり原告、
P1が被告P3においてコンドームを装着したことを記憶していないことも右供述に照らせ
ば不自然なことではなく、また、原告P1が抵抗をしていたからといって、被告P3が姦淫
前にコンドームを装着することが全く不可能だとも言い切れない。
したがってこの点に関する被告らの主張は採用の限りではなく原告P1の供述の信、、、
用性が減殺されるものではない。
(四)原告P1が強姦後
、被告P3と別れる際の態度等に関する被告らの主張について
被告らは、強姦後、原告P1が被告P3とソフトドリンクを飲み、玄関まで見送られた上
で「さよなら」と言って別れたとの原告P1本人の供述(原告P1本人尋問の結果(第一回、
)(平成一〇年四月一三日の本人調書三三〇項から三四〇項)、(第二回)(平成一一年五月一
九日の本人調書九五項))についてこのような原告P1の行動は常識的に考える限り強、、、
姦後の被害者としてあり得ないことであり原告P1本人の供述の信用性には重大な疑義が、
あると主張する。
しかし原告P1は強姦後の状態について茫然自失であった旨供述している(原告P1本、、
人尋問の結果(第一回)(平成一○年四月一三日の本人調書三三二項))のであってそのよう、
な場合、出されたソフトドリンクを飲むことが強姦後の被害者の行動として全くあり得な
いことと言うことはできないまたさよならしたというのは単に別れの挨拶をした。、「」、
ということを表現したものと解するべきものであるが被告P3の被告銀行における立場と、
原告P1の立場とを勘案するとそこで別れの挨拶をしたことが強姦後の被害者の行動と、、
して全くあり得ないことであるとも言い切れない。
したがってこの点に関する被告らの主張は原告P1本人の供述の信用性を否定する根、、
拠とはならない。
(五)原告P1が被告P3の自宅に行ったことが不自然であるとの被告らの主張について
被告らは常識的に考えて数日前に被告P3からセクシャル・ハラスメントを受けかつ、、
同僚から被告P3にセクシャル・ハラスメントを受けたと知らされた女性がセクシャル、、
・ハラスメントをしたとされる独り暮らしの男性の自宅に、夜、一人で訪問するなどとい
うことはよほど特別な事情がない限り考えることは困難であり原告P1は特別な事、、、、
情について何の説明もしていないと主張する。
また、被告らは、原告P1が、被告P3に日本語学習用のテキストを渡そうと思って、被
告P3の自宅に行った旨を供述することについて被告らは職場で手渡せば足りるし職、、、
場で手渡せない事情があれば被告P3の自宅に送付すれば足りるし何らかの事情で送付す、
、、ることができないのであればδの二階で被告P3に出会った時に渡せば足りたのであり
被告P3の部屋へ行く必要はないと主張する。
これら被告らの指摘は、強姦の加害者と被害者とが、
まったく人的関係のない場合、または、対等な関係である場合等については当てはまるも
のともいえるが、被告P3と原告P1の関係は、勤務先の最高責任者に等しい者と一従業員
との関係であり、被告P3の求めを原告P1が事実上容易に断りきれないことについては想
像に難くないそうだとすると右被告らの指摘は本件において原告P1本人の供述の。、、、
信用性を減殺するものとはいえない。
(六)原告P1が降りた駅を答えられなかったことに関する被告らの主張について
被告らは原告P1が本人尋問においてδヘ行く際にどこの駅で降りたのかとの質、、、、
問に答えられなかったこと(原告P1本人尋問の結果(第一回)(平成一〇年四月一三日の本人
調書二二三項、二二四項、四一九項、四二〇項))を指摘する。
原告P1がδに行った回数は、被告P3が居住し始めてからは、平成八年二月二八日の一
回だけであるということになり、右供述がなされたのは、それから二年以上経過した後の
こととなる。そのような状況で、最寄り駅を答えられなかったからといっても、それは取
り立てて不自然なこととは言えず原告P1本人の供述の信用性を減殺するものとはいえな、
い。
(七)ドオティに関する被告らの主張について
被告らは被告P3がドオティを持っていないこと今までにドオティを身につけたこ、、、
とが全くないこと、すべてのインド人男性がドオティを身につけるわけではないこと、ド
オティを身につける慣習があるのは多民族・多言語国家インドの南西部においてのみであ
り、被告P3の出身地である北部ではそのような慣習はないことを主張する。
被告P3本人の供述中には、右主張に沿う部分もあるが(被告P3本人尋問の結果(平成一
〇年一二月七日の本人調書五二項から六〇項))、他にこれを裏付けるに足りる証拠はなく
右主張のうち特に被告P3がドオティを持っていないこと及び今までにドオティを身、、、
につけたことが全くないことについては原告P1本人(第一回)が前記のとおり平成八、、、
年二月二八日に被告P3がインドの民族衣装風の腰巻きを下半身に身につけていたと供述し
ていることに照らすと、たやすくそれを認めることはできない。したがって、被告らの主
張する右事実は認められず原告P1本人の供述の信用性が減殺されるということもできな、
い。
(八)原告P1の当時の服装についての原告P1本人の供述に関する被告らの主
張について
被告らは、原告P1が、当時の服装について本人尋問において尋ねられた際に「あんま、
りちょっと覚えていないです」と供述している(原告P1本人尋問の結果(第一回)(平成一。
〇年四月一三日の本人調書三九九項))ことから、自ら服をはぎとられたと主張していなが
ら、その服がどのような服装であったか覚えていないと言うのは不可解であるとし、原告
P1本人の供述の信用性を否定する。
しかし、原告P1が、当時の自分の服装を覚えていないことは、前記のとおり、原告P1
本人が右供述をしたのが原告P1に対する強姦行為当時から二年以上経過した後であるこ、
とを勘案するとあながち不自然であるとは言えず原告P1本人の供述の信用性を減殺す、、
るものとはいえない。
(九)原告P1が被告P3とのやりとりを英語で供述できないとしていることについて
被告らは、原告P1が、本人尋問において、被告P3との会話を実際に使用された英語で
再現するように求められたのに、それを拒んだこと及びその理由として英語が間違えてい
たら困るということを挙げるのみであること(原告P1本人尋問の結果(第一回)(平成一〇年
四月一三日の本人調書二六五項から二七三項二八八項から二八九項))から原告P1の供、、
述の信用性を否定する。
しかしながら原告P1が英語でなんと言ったかを供述することを拒否したことは直ち、、
に、原告P1と被告P3との会話の存在を否定するものとはいえず、前記認定を覆すに足り
るものとは言えない。
(一〇)原告P1に対する強姦行為後の職場における原告P1の態度について
被告らは、強姦の被害にあった後、職場において、原告P1は、被告P3から再び内線電
話があるのではないかと恐怖におののきながら仕事をしていたとの原告P1本人の供述を虚
偽であると主張する。
証人P8は原告P1に対する強姦行為の翌日の原告P1の様子について何ら変わったこ、、
とはなくいつものとおりであった旨証言する(証人P8の証言(平成一〇年一二月七日の証、
人調書四一項))が原告P1の恐怖感は内心のものであり当然に外からうかがえるもので、、
はなく、職場の上司から強姦された被害者が、その事実を周囲の人間に悟られないように
しようとすることは、その事実の重大性及び女性の羞恥心に照らして、十分考えられるこ
とであって、周囲が奇異に思うような態度を示さないからと言って、内心に恐怖感
を持っていたことが否定されるものではない。
また被告らは原告P1に対する強姦行為の翌日である平成八年二月二九日に行われた、、
被告銀行従業員のP7の送別会において、原告P1が「MinatoMonthly(港、
マンスリー)と題する英文の広報誌(乙第一号証)に掲載された外国人対象の日本語のレッ」
スンに関する記事を見て「この日本語レッスンの広報をP3さんに見せてあげなさいよ、、
P3さんは日本語のレッスンに非常に興味を持っていらっしゃるので見せたらきっと喜ば、
れるわよと被告P3に好意的な発言をしたことから原告P1に対する強姦行為の後恐。」、、
怖におののいていた旨の前記原告P1本人の供述が不自然である旨主張する。
原告P1本人は右事実について記憶していない旨供述している(原告P1本人尋問の結、、
果(第一回)(平成一〇年四月一三日の本人調書三五〇項から三五二項))が右事実に沿う証、
人P8の証言(平成一〇年一二月七日の証人調書四二項から四六項)は具体的でありその、、
内容に符合する乙第一号証があることも勘案すると原告P1の右発言を含む右事実を認め、
ることができる。
原告P1の右発言は、被告らの主張するとおり被告P3に好意的なものと見る余地もない
ではないが、前記のとおり、原告P1は被告P3に強姦されたという事実を極力職場におい
て隠そうとしていたと考えられるのであってそのことからすると原告P1が右のような、、
発言をしたからといって、内心恐怖におびえていたという事実と必ずしも矛盾するもので
はなく、かえって、原告P1が被告P3からそのころ日本語を教えて欲しい旨の要請を受け
ていたことをうかがわせるという意味で原告P1本人の供述の信用性を基礎付けるものとな
ることはあっても、原告P1本人の供述の信用性を減殺するものになるとはいえない。
(一一)被告ら主張の本件訴訟提起の動機等について
被告らは、原告らが本件わいせつ行為等の事実を主張して本件訴訟を提起した動機につ
いて原告ら特に原告P1の被告銀行における処遇上の不満が主たる動機であると推測さ、、
れる旨主張しさらに原告らが被告P3に対して刑事告訴をすることなく本件のみを提、、、
訴したのは厳格な刑事手続によって原告P1の主張の虚構性が明白となり虚偽告訴罪、、、
での処罰を恐れたからであると推測される旨主張する。
被告P3の陳述書(乙第四号証)には、この点
について、原告らが加盟している組合と、被告銀行との間には、給与の交渉に関して、絶
え間ない紛争があったこと組合員は被告P3が赴任してきた平成七年一二月ころスト、、、
ライキやサボタージュを行っていたこと、組合員は平成八年五月一一日に決着した平成七
年の賃金改定について、組合の要求する条件で改定されることを望んでいたこと、平成八
年の賃金改定の要求項目のうちの一つは四八歳又は四九歳になった被用者に対する賃金の
、、、、、増額であったがそれに該当し恩恵を受けるのは原告P1のみであったこと組合は
平成六年及び平成七年に行われたスーパーバイザーへの昇格人事に対する抗議を行ってい
たこと、平成八年一月二九日から同年二月二九日までの一か月間に三六通の争議通告書が
組合から提出されたこと、原告P1は、被告P3が支店長室を使用するようになった後、組
合のメンバーからの花束を受領したかどうかを尋ねるために支店長室に来たが、その際、
被告P3の前任者が原告P1に対して、スーパーバイザーへの昇格を約束したことを前提に
自らのスーパーバイザーへの昇格を検討することを被告P3に要求したがその際被告、、、
P3は機会が来たときにその機会に応じて真価に基づいた適切な決定がなされるであろ、、
うと告げたこと、その際、原告P1は不満の体であったこと等が記載されている。
右記載内容のうち、組合が被告銀行に対して、賃金改定等について要求を行っていたこ
とに関連する組合活動を行っていたことは、原告らのみが組合に所属していたわけではな
いことからして、特に本件わいせつ行為等と関連づけて、原告らの提訴の動機とすること
は困難である。
また、甲第一二号証によれば、平成八年に四八歳から四九歳の定期昇給幅増額の要求が
組合から被告銀行に対して行われたことが認められるが、甲第一三号証及び証人P19の証
言(平成一〇年一二月二一日の証人調書一七頁から一八頁))によれば組合の基本給体系に、
おける四八歳から四九歳の定期昇給幅増額の要求は、平成八年に初めてなされたものでは
なく平成四年ころにも行われていた項目であることが認められこれを原告P1の特別な、、
事情ととらえることはできない平成八年当時定期昇給幅増額の対象者が原告P1のみであ。
りスーパーパイザーへの昇格に関し原告P1が不満を持っていたとしてもこれらはいず、、
れも原告P2とは関係のないことであり、それにもか
かわらず両原告がそろって提訴している事実に照らすと、原告らが被告らの主張するよう
な動機のもとに本件提訴をしたということはできない。
右記載内容のうち、組合から、一か月間に三六通の争議通告書が出されたことについて
は甲第一五号証の一から一五第一六号証の一から一三及び証人P19の証言(平成一〇年、、
一二月二一日の証人調書二一頁から二二頁)によればそれらは組合員が一斉に昼食を取、、
るという争議行為の戦術である、いわゆる「一斉ランチ」の通告書であり、三六通の通告
書は、被告銀行に存在するインド銀行東京支店従業員組合と外国銀行外国商社労働組合東
京支部第三部会という二つの組合が、それぞれ一八通ずつ出したものであって、原告ら所
属の組合が三六通もの通告書を出したわけではないことが認められ、原告ら所属の組合の
ために原告らが本件わいせつ行為等をねつ造してまで提訴に及んだというには根拠が不十
分である。
さらに、原告らが刑事告訴をしなかったことについては、一般的にそれをもって原告ら
の主張が虚偽であると直ちに推認することはできないのみならず、従業員が勤務先の最高
責任者の処罰まで望むことが当然のことであるということはできないから、原告らの供述
の信用性を否定するものではないというべきである。
この点に関する被告らの主張を採用することはできない。
(一二)原告P1が原告P1に対する強姦行為について何らかの訴えをしたか否かについて
被告P3の陳述書(乙第四号証)には、被告P3よりも上位の職位に位置する、被告銀行の
ジェネラル・マネージャーのP5に平成八年二月一四日から同月二八日間の間同年三月、、
七日、同月八日(同日、同人は被告銀行東京支店の全従業員と会った。)には、容易に接触
し、抗議の申立てをすることができたにもかかわらず、原告らがそれをしていないことは
、原告らの主張するセクシャル・ハラスメントの事実がないことを裏付けるものであると
いう趣旨の記載がある。
これに対して原告らはP5は監査目的のために一時来日したにすぎずそのよ、、、、、、
うな人物に対して、本件についての抗議を申し立てるのは筋違いであるため、原告らはP
5に対して抗議を申し立てることはしなかったことを主張する。
また、原告らは、P19が、平成八年三月八日、被告銀行の当時の東京支店長であったP
12に対して、本件わいせつ行為等についての善処を求めてい
ることを指摘する。
原告ら又は組合がP5に平成八年二月一四日から同月二八日の間同年三月七日同、、、、
月八日に、抗議の申立てをしなかったことに関する原告らの右説明は、不合理なものとは
いえずこの点について被告P3が陳述書に記載するように原告らの本件わいせつ行為、、、
等の主張が虚偽であることの理由とすることはできない。
また、原告らが、被告銀行に対して、本件わいせつ行為等について、抗議等を行った経
過については、後記(第四、二、3、(四)、(2)、ア)認定のとおりであって、被告らの右主
張は採用の限りではない。
二被告P3の原告P2に対する強制わいせつ行為の事実の有無について
1原告P2に対する強制わいせつ行為の事実
原告P2本人尋問の結果(平成一〇年七月六日の本人調書八項から四二項六三項)甲第、、
六号証、第九号証及び乙第六号証によれば、以下の事実が認められる。
平成八年二月二六日午後二時ころ被告P3は原告P2に対して内線電話をかけちょ、、、「
っと来なさい」と言って支店長室に呼び出した。原告P2が、支店長室に入り、机を挟ん。
で被告P3の正面に立つと、被告P3は原告P2に対して「今度、家に来なさい」と言った。
。被告P2は、それを儀礼的な言葉ととらえて「行きます」と言ったが、被告P3が特定、。
の日時に言及したので、不審に思い「行く気はありません」と答えた。すると、被告P、。
3は原告P2に対してだれか他の女性を紹介しなさいと言い自分の電話番号を知っ、「。」、
ているかどうか尋ね、原告P2が「知りませんが必要なときは、P8さんに聞きます」と、。
言うと被告P3はP8さんには聞いてはいけないP8さんには何もしゃべるなと言、、「。。」
い鉛筆で電話番号を書いた水色のメモ(甲第一〇号証)を渡したその後被告P3は被、。、、
告銀行の従業員で当時妊娠後の経過が悪く実家で療養中であったP9について原告P、、、
2に尋ね原告P2が彼女は流産してしまい手術をして今は実家にいますと答える、「、、。」
と「それではあとで電話番号を教えてくれ」と言った。さらに被告P3は、原告P2に対、。
し「あなたは妊娠の予定はないか」と尋ね、原告P2は「分かりません」と答えた。被、。。
告P3は、右会話が終わるころ、原告P2に対して、机を隔てて、右手を差し出した。原告
P2は、握手を求められたと思い、机を左回りに回り込んで被告P3に近づ
き右手を差し出したところ被告P3は突然原告P2の右手を引っ張り原告P2の身、、、、、
体を引き寄せて頬にキスをしさらに右手で原告P2の黒いTシャツの上から胸を触りそ、、
の後、スカートをめくり上げ、腹部をなで回し、Tシヤツの襟からブラジャーの中に手を
入れ、乳房に触り二回ぎゅっとつかみ、もみ上げた。
2メモ(甲第一〇号証)について
被告P3本人は甲第一〇号証について自分が鉛筆で自宅の電話番号を書いたことを認、、
めながらも、それは、平成八年一月ころ、被告銀行の会議室において、このようなメモを
数枚常に準備しておりそれを顧客や訪問客に渡していたところこれは原告P2が勝手、、、
に持っていったものか他の者が持っていって原告P2に手渡したものかもしれないと供、、
述している(被告P3本人尋問の結果(平成一〇年一二月七日の本人調書四五項から四八項)
)。
しかしながら、被告P3が原告P1に対して手渡したメモ(甲第七号証)について既に述べ
たとおり被告P3は平成八年一月ころにはδ○○号室に入居しておらずγにあるウィー、、
クリーマンションに滞在しており、δ○○号室は前任者が占有していたのであるから、被
告P3が顧客や訪問客に対して自分への連絡のために同室の電話番号を右メモに記入したと
考えることは困難であるし被告P3のような地位にあるものが顧客や訪問客にこのような、
形のメモを手渡すことは通常考えにくく、それは、原告らの指摘するとおり、通常、名刺
に書き込むことによって目的を達成するものであることからすると被告P3本人の右供述、
部分を採用することはできない。
そうすると原告P2が原告本人尋問において供述しているとおり(原告P2本人尋問、、、
の結果(平成一〇年七月六日の本人調書二六項から二八項))平成八年二月二六日に被告、、
P3が、支店長室において、原告P2に手渡したことを認めることができる。
被告らは甲第一〇号証のメモについて他の女性を紹介しなさいと言ってその後程、、「」
なくしてわいせつ行為に及ぶ者が、そのような証拠を「被害者」に手渡す必要も理由も全
くなく口述筆記させれば足りることであること他の女性を紹介しなさいと言われた、、「」
「被害者」がこれを受け取るとともに、廃棄することなくその後もこれを保持するという
のはいかにも不自然であるとするが、そのような推論自体、やや無理があり、被告らの右
主張は採用の限り
ではない。
3原告P2が支店長室に呼ばれたことについて
平成八年二月二六日午後二時ころ原告P2が支店長室に入ったことについて被告らは、、
、、、、原告P2が支店長室に入ったこと自体を否認し被告P3本人もその時には被告P3は
会議室で監査チームと昼食をとっていた旨供述し(被告P3本人尋問の結果(平成一〇年一二
月七日の本人調書一九項から二三項))、証人P8も同旨を供述している。
しかしながら、前記のとおり、被告P3が、同日右時刻に支店長室において、原告P2に
対して前記メモを手渡した事実を認めることができるのであり被告P3本人の右供述部分、
及び証人P8の右供述部分は到底採用できない。
なお、補足して述べれば次のとおりである。
(一)監査チームの来日の事実及び昼食の時間について
まず、被告らが主張するように平成八年二月一四日から同月二八日までの間に被告銀行
の本社からP5を長とする三名の監査チームが来日して被告銀行東京支店で監査を行って、
いたとの事実については原告らも特に争っていない。
問題となるのは監査チームと被告P3とが会議室において昼食をとっていた時間であり、
、その点に関し、被告らは、同月一四日から同月二七日の間の昼食時間は、午後一時三〇
分ころから午後二時三〇分ないし午後三時ころまででありその間被告P3は支店長室に、、
はいなかったと主張する。
(二)各主張を裏付ける証拠の内容
(1)証人P8の証言内容
この点に関する被告主張を裏付ける証人P8の証言内容はおおむね以下のようなものとな
る(証人P8の証言(平成一○年一二月七日の証人調書二項から一六項平成一〇年一二月二、
一日の証人調書一頁から五頁))。
監査チームのリーダーが、在日代表よりも地位の高い者である場合には、監査の期間中
、在日代表は監査チームと共に昼食をとるのが通常であり、その時の監査チームのリーダ
ーであるP5は被告P3よりも地位が高かった。
P8は、監査チームのP5と被告P3は菜食主義者であったので、P8は、二人のための菜
食主義者用サンドイッチを被告銀行東京支店のあるビルの地下にある三菱電機の従業員食
堂(以下「地下の食堂」という。)に特別に注文し、その余の二人分の昼食については外部
に注文した。
地下の食堂は三菱電機の従業員のための食事時間が午後○時から午後一時までであった
こととの関係で、P8が菜食主義者用サンドイッチを
注文するのは、午前一一時三〇分以前か午後一時一五分以降でなければならなかった。
監査チームが被告銀行東京支店の監査を行っていた期間中、平成八年二月二八日以外に
ついて、次のように昼食の準備及び片づけを行った。
P8は午後一時前(主尋問に対しては午後一時前と証言した(平成一〇年一二月七日の、、
、、、、証人調書一三項)が反対尋問に対してはいったん午後○時三〇分ころと証言した後
午後○時三〇分に買ったものを会議室に持ち込む午後一時三〇分まで一時間も放置してお
くのかとの質問をされた後、午後○時三〇分といっても午後一時に近かった、午後○時三
〇分に大体外に出かけた一時前であったと言い直している(平成一〇年一二月二一日の証、
人調書二頁から四頁)。)に既に菜食主義者ではない二名のための食事を外部から購入し、
午後一時一五分以降に地下の食堂に菜食主義者用サンドイッチを注文し、毎日、日替わり
の果物、ヨーグルト、ジュース類、スナックを付け、それらをアレンジして、午後一時三
〇分過ぎにそれらを会議室に持ち込んだP5は全員がそろうまで食事を始めず全員、。、、
そろうのは通常午後一時四〇分ころであったのでそのころ食事が始まったP8は監査、。、
、、チームのメンバーと被告P3との食事が始まったことを確認した上自分の事務所に戻り
中二階の食堂で食事をとり、午後二時から午後二時五分ころ、会議室に行って食事の進行
。具合や監査チームのメンバーと被告P3が紅茶やコーヒーを要求するかどうかを確認した
そのころにはほとんどの者がサンドイッチや弁当は食べ終わっており、デザートなどを食
べながらP5と話をしていたP5が一番食べるのが遅かったP8はすぐに戻り紅茶やコ。。、
ーヒーを準備し、午後二時二〇分ころ、再度、それを給仕し、その時、空いている皿等を
下げ、最終的に午後二時三○分にはすべての皿を下げるように時間を決めていた。監査チ
ームのメンバーは会議室で執務をしなければならないので、何があっても午後二時三〇分
には全部の食器を下げるようにしていた午後二時三〇分ころになっても被告P3はP。、、
5と会議を続けていた。右昼食の準備はP8一人で行い、食器を下げたり、洗ったりするの
は他の派遣社員にも依頼していた。
監査チームが被告銀行東京支店にいた最後の日である平成八年二月二八日は、地下の食
堂への菜食主義者用サンドイッチの注文を午前一一時三〇分に
行い、午前一一時四五分ころそれを取りに行き、午後○時四五分ころから食事が開始され
た。
P8は午後一時一五分過ぎでないと注文できないと思っていたが同月二六日に同月、、、
二八日は監査チームが大阪に向けて出発する日なので、午後〇時三〇分から食事の準備を
するように命じられ被告P3に菜食主義者用サンドイッチができない旨伝えたが被告P、、
3から何とかするように言われたので地下の食堂に相談したところ午前一一時三〇分な、、
らばよい旨の返答を得たP8は被告P3に午前一一時三〇分にトーストサンド(菜食主義。、
者用サンドイッチのことだと思われる)を作ると午後〇時四〇分ころまで置いておくこ。、
とになり冷えてしまうがそれでも良いかと尋ねたところ被告P3はノーオルタナティブ、「
」と答えたので、そのようにした。
(2)被告P3本人の供述内容
この点に関する、被告P3本人の供述を要約すると、以下のようなものとなり(平成一〇
年一二月七日の本人調書一二項から一八項(一一五項以降は反対尋問)一三六項)証人P、、
8の証言内容と符合する。
平成八年二月二一日、同月二七日及び同月二六日を含む監査チームが東京支店にいた間
常に昼食は監査チームと一緒に会議室でとっていた昼食のために被告P3が会議室に、、。
入ったのは大体午後一時三〇分ころであった。被告銀行の東京支店と同じビルのキャンテ
ィーンというか、どこかカフェテリアみたいなところから秘書が菜食主義者用のランチ又
はサンドイッチを持ってきた。そのカフェテリアは通常の昼食時間が終わらないとそうい
うことができないということで、午後一時三〇分か午後二時以降に昼食を持ってきてもら
っていた(ただし、平成八年二月二八日は少し早めに昼食をとった。)。昼食後、支店長室
に戻ったのは午後二時三〇分から午後三時ころ、どちらかというと午後三時に近い時間で
あった。それまで、会議室において、監査チームと監査関連の事柄について話をしていた

(3)原告P2本人の供述内容
これに対して原告P2本人はこの点について原告本人尋問において当時本店から監、「、
査が来ておりまして、お昼は会議室でとっていました。時間は一二時半ころと記億してお
りますので二時に昼食をとっているとは考えられませんと供述している(原告P2本人、。」
尋問の結果(平成一〇年七月六日の本人調書六三項))。
(三)証人P8の証言について
(1)
証人P8の証言内容についての疑問点
証人P8の証言は被告らの指摘するように具体的で詳細なものであるがその内容自、、、
体には以下のような疑問点がある。
まず、菜食主義者ではない二名の監査チームのメンバーのための食事を購入する時間に
ついての証言が、前記のとおり、反対尋問の際に、やや動揺している。
また、監査チームが被告銀行東京支店にいた最後の日である平成八年二月二八日につい
ては、地下の食堂への菜食主義者用サンドイッチの注文を午前一一時三〇分に行い、午前
一一時四五分ころそれを取りに行ったと、注文時とそれを取りに行った時のことを分けて
述べているのに対して、それ以外の日については、午後一時一五分以降に地下の食堂に菜
食主義者用サンドイッチを注文し、毎日、日替わりの果物、ヨーグルト、ジュース類、ス
ナックを付け、それらをアレンジして、午後一時三〇分過ぎに、それらを会議室に持ち込
んだと述べ、取りに行ったことについて述べられておらず、同年二月二八日の場合の証言
に照らしてみると、菜食主義者用サンドイッチは注文してからできあがるまでに一五分程
度かかることがうかがわれるので、午後一時一五分以降に注文したとすれば、それができ
あがるのは、午後一時三〇分以降ということになり、そのころ、取りに行って、それから
日替わりの果物、ヨーグルト、ジュース類、スナックを付け、それらをアレンジして午後
一時三〇分過ぎに会議室に持ち込むというのは不可能ではないにしてもやや時間的に無理
がある。
また、実際には午前一一時三〇分以前に昼食を注文することもでき、その時間に注文す
れば昼食時間が遅くなることはなかったところ、地下の食堂が他社の従業員食堂であり、
その昼食時間帯は注文に応じられなかったことが昼食時間のずれた理由だとすればP8が、
午前一一時三〇分以前に注文できることを同年二月二八日まで知らなかったというのは不
自然であって、同年二月二八日以外の日も早い時間帯に昼食をとっていた可能性も否定で
きない。
証人P8の証言及び被告P3の供述によれば、このように昼食が遅い時間になった原因は
、すべて菜食主義者用の食事を地下の食堂から入手するようになっていたことにあること
になる地下の食堂に部外者である証人P8が注文することができる時間が午前一一時三〇。
分以前又は午後一時一五分以降であるということについては、それが他社の社員食堂であ
り、
その社員のための昼食時間には外部からの注文を受け付けないという一見合理的な理由を
もって説明されてはいるものの、そのこと自体を裏付ける客観的な証拠はない。また、そ
のように不便を強いられるのであれば、他から入手することも十分考えられるところ、特
に地下の食堂から入手しなければならない特別な事情については何ら説明されていない。
(2)証人P8の立場について
原告らは、証人P8の証言の信用性について、P8は被告銀行をいったん退職したが、平
成八年八月一日、被告P3の依頼により、再度、契約社員として採用され、被告P3の秘書
という立場の者であること、本件訴訟の審理を業務として傍聴し、被告らの裁判資料の作
成を行い証拠調べ期日には何度も被告P3の妻に付き添うような形で傍聴していることか、
ら客観的な第三者とは言えないことを指摘した上被告P3をかばうような証言をしたと、、
主張する。
この点について証人P8の証言(平成一〇年一二月二一日の証人調書五頁から一八頁)に、
よれば、以下の事実が認められる。
P8は、被告P3の前任の在日代表の秘書であったが、その当時、平成八年六月三〇日に
定年退職を予定していたこともあり、秘書の後任者が決まり、秘書の仕事のうち書類関係
の仕事は後任者に引き継ぎ、秘書席から離れたが、それについて、P8が被告P3の前任の
在日代表から冷遇されて、秘書から外され、それについての不服を持っていたと見る者も
いた。被告P3が在日代表として赴任した後、P8は元の秘書席に戻り、秘書の業務を継続
することになった。平成八年六月三〇日、P8は五八歳で定年退職をしたが、被告P3から
依頼され同年八月一日から契約社員として再び被告銀行に雇用され被告P3の秘、、、、、
書としての仕事の一部を行うようになった。P8は、本件訴訟に提出された乙第六号証(支
店長室の図面)を被告代理人の依頼に基づき作成し証人として出廷した時以外にも被告、、
銀行の業務の一部としてほぼ毎回傍聴に来ており、その際被告ら関係者と行動をともにし
ていたP8は被告P3の妻とも親交があり複数回被告P3の自宅に招かれ食事をともにし。、
ている。
以上のように証人P8は被告P3との人的関係があり証人P8の証言の信用性には疑、、、
問を差し挟む余地がないとは言い難い。
(四)被告P3のアリバイ主張の時期等について
(1)本件訴訟上、被告P3のアリバイ主張が
された時期について
本件訴えが提起されたのは平成八年一二月一〇日であり訴状副本が被告P3に送達され、
たのは同月二九日であり、第一回口頭弁論期日が開かれたのは平成九年二月二一日であり
、その後、同年四月一六日に第二回口頭弁論が、同年五月一六日に第三回口頭弁論が、同
年六月二〇日に第四回口頭弁論が(このときは延期された)、同年九月五日に第五回口頭弁
論が、同年一〇月一七日に第六回口頭弁論が、同年一一月一七日に第七回口頭弁論が開か
れその間原告らは訴状(平成八年一二月一〇日付け)(第一回口頭弁論期日において陳述、、
)平成九年四月一八日付け準備書面(第二回口頭弁論期日において陳述)平成九年九月五、、
日付け準備書面(第五回口頭弁論期日において陳述)の各書面において、本件わいせつ行為
等の事実について具体的に主張していたのに対して被告らは答弁書(平成九年二月二一、、
日付け)(第一回口頭弁論期日において陳述)、平成九年五月一六日付け準備書面(第三回口
頭弁論期日において陳述)、平成九年一〇月一七日付け準備書面(第二回)(第六回口頭弁論
期日において陳述)の各書面によって原告らの主張に対する認否及び反論を行い特に答、、
弁書及び平成九年五月一六日付け準備書面においては、平成八年二月二一日午後二時過ぎ
被告P3は支店長室にいなかったこと、同月二六日午後二時に被告P3は支店長室にはいな
かったことを主張しながらも、平成九年五月一六日付け準備書面には「被告P3が右日時、
にどこで何をしていたかについては今は明らかにしないと記載して具体的にその時、。」、
被告P3がどこで何をしていたかについて主張をせず前記第七回口頭弁論期日において、、
は、裁判所から、被告P3のアリバイを主張するのであれば早期(出来るだけ次回期日まで
)にその主張内容を記載した書面を提出するように勧告されたが結局被告らが被告P、、、
3のアリバイを具体的に主張したのはその後平成一〇年五月一四日に裁判所に提出され、、
た同月一五日付けの準備書面(第三回)(同準備書面は平成一一年五月一九日に開かれた第一
五回口頭弁論期日において陳述された)上においてであるこのように被告らの被告。。、、
P3のアリバイについての具体的主張が出された時期が遅くなった理由について被告らは、
、「、右平成一〇年五月一五日付け準備書面(第三回)の中でそれを明らかにすることにより
原告らが本
件日時に関する主張を変更し又は殊更に暖昧化し、もってその主張の虚構性を糊塗しよう
とすることを防止せんとしたために他ならないと説明し併せて原告らが平成八年。」、、、
二月二一日に原告P1が被告P3から内線電話で支店長室に呼ばれた時間及び原告P2に対す
る強制わいせつ行為の日時に関する主張を変更したり、殊更に暖昧化することは信義則上
許されない旨指摘している。
被告らが主張するように、被告らが、平成八年二月二一日午後二時過ぎ及び同月二六日
午後二時の被告P3の具体的な行動を明らかにすることによって原告らが平成八年二月二、
一日に原告P1が被告P3から内線電話で支店長室に呼ばれた時間及び原告P2に対する強制
わいせつ行為の日時に関する主張を変更したり、殊更に暖昧にしたりすることがまったく
ないとは言い切れないが、前記のとおり、被告らが特に答弁書及び平成九年五月一六日付
け準備書面においては平成八年二月二一日午後二時過ぎ被告P3は支店長室にいなかった、
こと同月二六日午後二時に被告P3は支店長室にはいなかったことを既に主張しているの、
であるから、その具体的内容を秘することが原告らの主張内容の変更及び曖昧化を防止す
るうえでそれほど効果的であるとは考えられないこと、前記のとおり裁判所から、被告P
3のアリバイを主張するのであれば早期(出来るだけ次回期日まで)にその主張内容を記載し
た書面を提出するように勧告された第七回口頭弁論期日までには、原告らのこの点に関す
る主張は、既に、以後変更したり、殊更に暖昧化したりしたならば、むしろ不自然である
と思われるほど、確定したものとなっていたのであるから、その次の期日である平成九年
一二月五日第八回口頭弁論期日までに被告P3のアリバイに関する具体的な主張をしても、
被告らが懸念するような問題が生じ、被告らが不利となるおそれはほとんどなかったもの
というべきであるのにそれをしていないことからすると被告らの被告P3のアリバイに、、
関する具体的な主張が出されたのが、これだけ遅くなったことは不自然であると言わざる
を得ない。
(2)本件訴訟以前に被告P3のアリバイの主張がなされていないことについて
ア原告らの被告銀行に対する抗議及び被告銀行の内部調査の事実について
前記(第一一2)争いのない事実等甲第一号証の一及び二第二号証第三号証の一、、、、、
及び二、第一八号証、第一九号証の一
及び二乙第五号証の一並びに証人P19の証言(平成一〇年一二月二一日の証人調書七頁か、
ら一六頁)によれば、以下の事実が認められる。
原告らが加盟しているインド銀行東京支店従業員組合の委員長であったP19は、平成八
年三月五日、原告らから本件わいせつ行為等について相談を受けた。右組合の上部団体で
ある外銀連は中央執行委員長P20名義の書面(甲第一号証の一)で同年四月一日ころ(甲、、
第一号証の一には、作成月日が記載されていないが、被告らが「被告銀行が、原告らのね
つ造による原告ら主張の事実(第三、一、1及び同二、1)を知らされたのは平成八年四月一
日である」と主張していること(前記第三、四、2)から、このころであったと認められる。
。)、被告銀行の頭取であるP21に対して、被告P3の原告らに対するセクシャル・ハラス
メントの事実の確認関係者に対する誠意ある謝罪と損害賠償被告P3の在日代表職の解、、
任及び以後同様の事態が発生しないようにする旨の誓約を求めた。
被告銀行は、それを受け、そのころ、P20に対して、書面(乙第五号証の一)をもって本
件わいせつ行為等の事実を裏付ける証拠等の提出及び関係する従業員との面談を要求した

原告ら代理人弁護士橋本佳子は、平成八年四月一九日、書面(甲第二号証)で、被告銀行
に対して原告P1及び原告P2が被告P3からセクシャルハラスメントを受けた事実を報告、
するとともに、適切かつ断固たる措置を求めた。
被告銀行は被告銀行本店からP4を事実調査のため派遣した同人は平成八年五月、、。、
三〇日、原告ら代理人弁護士橋本佳子及びP19の立会いの下での原告P1及び原告P2から
の事情聴取を含む調査を行った。
その後、被告銀行は平成八年八月ころまで、原告らや外銀連等に対して、何らの通知も
行わなかったので、P20は、同月一五日付けで、そのころ、被告銀行に対して、調査結果
等についての報告を求める書面(甲第一九号証の一)を送った。
被告銀行は、平成八年八月二三日付けの書面(甲第三号証の一)にて、そのころ、P20に
対してP4は被告銀行の頭取に対して既に本件わいせつ行為等についての調査報告書、、、
を提出していること、そこには本件わいせつ行為等の申し立ては事実無根であり、被告P
3を非難中傷し、かつ、被告P3の現職を解任する意図をもってねつ造されたものであるこ
とは明らかであり、その目的とす
るところは併せて金銭賠償を得ようとするものである旨の記載がなされていたことP4の、
報告は被告銀行に受理されたことを通知した。
イ内部調査時にアリバイ主張がなされた事実がうかがわれないことについて
前記のとおり被告銀行は本件わいせつ行為等について調査を行っている被告P3は、、。
、本件訴訟において、本件わいせつ行為等の事実及び平成八年二月二一日午後二時ころに
原告P1に支店長室から内線電話をかけた事実同月二六日午後二時ころ支店長室で原告P、
2にわいせつ行為をした事実及び同月二七日午後二時三〇分ころ支店長室から原告P1に内
線電話をかけた事実をいずれも否認し、右それぞれの日時に支店長室にいなかったことを
主張しているが、そのような主張は、事件直後の被告銀行による内部調査の時点において
もなされていたと考えるべきであり被告P3が右のような主張をしていることを前提とす、
ると被告銀行の内部調査では原告らが主張する本件わいせつ行為等の日時(平成八年二、、
月二一日午後二時ころ、同月二六日午後二時ころ及び同月二八日午後七時三〇分から午後
八時ころ)にどこで何をしていたかが調査されたと考えるのが合理的であるけだし被、。、
告P3としては右調査において自らの潔白を証明するために一番効果的な主張であるアリ、
バイの主張をしたものと考えるのが合理的であり、被告P3が、右内部調査を担当したP4
に対して、アリバイについて質問をされたか否かにかかわらず、自ら、アリバイの主張を
しなかったとは考え難いからである。
しかしながら被告銀行から原告らに対してなされた説明の中には被告P3が本件わい、、
せつ行為等を行っていないことの根拠として本件訴訟で被告らが主張している被告P3の、
アリバイについて一言も触れられていない前記のとおり被告銀行にはP4が作成し、。、、
た本件わいせつ行為等の調査報告書があるはずであるが、それは証拠として提出されては
、、、、、おらず被告らの主張上も被告P3本人の供述陳述書上も被告銀行の調査に対して
アリバイを主張したとの事実は出てこないが、それは極めて不自然なことであるといわざ
るを得ない。
(五)この点に関する原告P2本人の供述内容の信用性について
被告らは原告P2本人のこの点に関する供述について曖昧なものであり信用性がな、、、
いと指摘するが、原告P2本人の供述は、前記のとおり、監査チームと被告P3と
の昼食の開始時刻は午後○時三〇分ころであったと記憶しているというものであり、具体
的で詳細なものと言えないまでも、曖昧なものとは言えない。
(六)被告P3のアリバイ主張の合理性及びそれを裏付ける証拠の信用性等について
以上のことを前提とすると被告らの被告P3のアリバイ(監査チームとの昼食)の主張に、
ついては、その内容及びその主張がなされた経緯に疑問があるものといわざるを得ず、右
主張に沿う内容の証人P8の証言及び被告P3本人の供述の信用性には、問題があるといわ
ざるを得ない。
また、前説示のとおり、被告らの本件における主張・立証の内容及びその姿勢は、本来
なされるべき主張・立証が行われていないという意味において、全体として、かえって、
原告P2本人の供述の信用性の根拠となる一つの事情となるものと言わざるを得ない。
以上により被告P3が平成八年二月一四日から同月二七日までの毎日監査チームと会、、
議室において昼食をとっていた時間が午前一時三〇分ころから午後二時三〇分ないし午後
三時ころであったとの被告らの主張する事実を認めることはできない。
4その他の原告P2本人の供述の信用性に関する被告らの主張等について
(一)平成八年二月二六日に原告P2が被告P3から支店長室に呼び出された時間について
の原告P2本人の供述が変遷しているとの被告らの主張について
被告らは、平成八年二月二六日に原告P2が被告P3からわいせつ行為を受けたと主張す
る時間についての原告らの主張原告P2本人の陳述書の記載及び供述並びに原告側申請証、
人の証言が変遷していることを指摘し、原告らの主張は虚偽であると主張する。
被告らの右主張は、同日、原告P2が被告P3から内線電話で呼ばれ、支店長室に入った
時間について、原告らが訴状において主張した時刻は午後二時と主張していたことを前提
に原告ら平成九年四月一八日付け準備書面に同日原告P2が支店長室に入っていったこ、「
とは同僚のP19をはじめとして同僚が目撃しているところであると記載してありそ、。」、
こに午後二時との記載がないこと及び証人P19の証言において、同日、一斉ランチが終わ
った後すぐに自分の席に戻り、その後、少なくとも数分後ではない時間がたってから、被
告銀行の従業員であるP22から、被告P3の部屋に原告P2が入っていったので、後で事情
を聞いて欲しい旨の内線電話があったことが証
言されていること(証人P19の証言(平成一〇年一二月二一日の証人調書二頁から五頁))を
もって、変遷と称するものであるが、右原告ら平成九年四月一八日付け準備書面の記載は
、原告らがあえて、時刻に関する記載をしなかったものと見るのは困難であり、また、証
人P19の右証書は、原告らが、この点に関する時刻を午後二時ころとすることと矛盾する
ものではなく、変遷というべきものではない。したがって、この点に関する被告らの主張
は当たらないというべきである。
(二)目撃者について
証人P19の証言(平成一〇年一二月二一日の証人調書二頁から五頁)によれば、平成八年
二月二六日の午後、P19が一斉ランチを終え、席についた後、P19は、P22から内線電話
で「P3さんの部屋に彼女が入っていったので、あとで事情を聞いて欲しい」と言われた。
こと、原告ら職員が支店長室に呼ばれることは業務上、通常あり得ないことであること、
同月二七日の労働組合の集まりにおいてP19が原告P2に同月二六日に支店長室で何が行、
われたかを尋ねたことが認められる。
証人P19の右証言は、その内容において具体的であり、特に不自然なところも見られな
い。
被告らは証人P19の右証言の信用性を争うがその根拠とするところは被告P3のア、、、
リバイと証人P19の証言内容が、被告らの訴状の主張との関係で時間的に変遷していると
いうことであるところ、それらの主張は根拠とならないことは前説示のとおりである。
(三)原告P2のカレンダーの「被害」との記載について
甲第六号証によれば平成八年のカレンダーの二月二六日の欄に丸印がされており被、、「
害」と手書きで書き込まれていることが認められる。
この事実のみでは、原告P2の供述の信用性を裏付けるものとはなり得ないが、前記(第
四二3内)のとおり被告らの主張する被告P3のアリバイを内容とする主張を認めるこ、、、
とができないことを前提とし他の事実を併せて考えるとこの事実も原告P2の供述の、、、
信用性の裏付けとなるものといえる。
(四)支店長室でそのような行為をすることが不合理であるとの被告らの主張について
被告らは、原告P2が被告P3からわいせつ行為を受けたとする被告銀行の支店長室は、
個室形式になっているとはいえ被告銀行の行員が机を並べているフロアの一角であり、し
かも就業時間中であれば行員が出入りする場所でもあり、
そのような場所で原告P2が主張するような行為に及べば被害者たる女性が声を上げ直、、
ちに悪行が露見するであろうことは容易に予見できることであり、しかも、その時期には
被告銀行の監査チームが来ており、その責任者であるP5は、被告P3の上席であり、同人
にそのような悪行が知れれば被告P3が約三〇年間にわたる勤続により築いた被告銀行に、
おける地位を失うことにもなりかねないことも容易に予見できることであることから、そ
のようなことは不自然なことであるとして、原告P2本人の供述の信用性を否定する。
甲第八号証(原告P1の陳述書)添付の図面(インド銀行東京支店事務所)によれば支「」、
店長室が、個室形式になっているとはいえ被告銀行の行員が机を並べているフロアの一角
であることは認められるが、ドアを閉めてしまえば、一般行員からは見えなくなることを
勘案すれば、そこで行われたセクシャル・ハラスメントのすべてが直ちに明らかになるわ
けではなく、被告ら主張のように、それを行うはずがないとは言い切れないのであって、
原告P2本人の供述の信用性を否定するものではない。
(五)平成八年二月二六日午後三時ころ、P2が支店長室に再び呼ばれたことについて
原告P2本人尋問の結果(平成一〇年七月六日の本人調書四三項から六二項)及び第九号証
によれば、平成八年二月二六日の午後三時ころ、被告P3は、原告P2に対して、内線電話
で「P9さんの電話番号を早く持って来い」と原告P2を支店長室に呼び出したこと、原、。
告P2が、その電話番号を紙に写して、再度支店長室に持っていったところ、被告P3は「
。」、「。さっきのこと怒っているのかと原告P2に尋ね原告P2が強い口調で怒っています
」、、「。」と答えると被告P3は二月二九日の午後五時に仕事が終わったらすぐ自宅に来い
と言いその際そのころは本店からの監査が終わって監査に来ていた人たちは大阪へ、、「、
行ってしまうからと言っていたこと原告P2は右被告P3の発言から二月二九日という。」、
月日が鮮明に記憶に残ったこと、原告P2が、右P3の命令に対して「行きません」と答、。
えると、被告P3は「誰か女性を紹介しろ」と言い、また「そのことは誰にも言っては、。、
いけない」と言ったこと、原告P2はそれを断ったこと、原告P2は、それ以上、被告P。
3と話をしたくなかったので、P9の電話番号を書いたメモを渡して帰
ろうとすると被告P3は原告P2に対して支店長室からP9の自宅に電話するように命、、、
じ、原告P2は、その場でP9に電話したこと、原告P2は、電話に出たP9の母親に対して
インド銀行のP2ですけれどもP9さんお願いしますと言いP9が電話口にでたと、「、。」、
ころで私は今P3さんの部屋にいますP3さんがあなたと話をしたいと言ってい、「、、。、
ますので、電話を代わります」と言ってから、被告P3に受話器を渡して、すぐに部屋を。
出たことが認められる。
(1)右認定の事実についての被告らの主張
被告らは右認定事実を否認しそれに沿う供述を原告P2本人がしていることをもって、、
原告P2本人の供述の信用性を否定するので以下その信用性を基礎づける事実及び被、、、
告らの主張等について検討する。
(2)目撃者について
証人P19は平成八年二月二六日原告P2が支店長室に入っていくのを目撃した旨証言、、
している(証人P19の証言(平成一〇年一二月二一日の証人調書四頁)。
証人P19の証言によれば、右目撃を行ったのは、同日午後、一斉ランチが終了し、自席
に戻ってからしばらくして、P22から内線電話があり、その後、しばらくして、たまたま
、支店長室のある方の事務所に行った時であるということであるので(証人P19の証言(平
成一〇年一二月二一日の証人調書二頁から四頁)、これは、原告P2本人の供述との関係で
言うと原告P2が午後三時ころ再び会議室に呼ばれたときのことであるというべきで、、、
、、、。ありこのことはその点に関する原告P2本人の供述の信用性を裏付けるものである
(3)前回わいせつ行為を受けていながら再び支店長室に入ること等が不自然であるとの、
被告らの主張について
被告らは原告P2がP9の電話番号を書いたメモを持って再び被告P3の部屋に行った、、
、、、ことについて仮にその一時間前に被告P3からわいせつ行為を受けていたのであれば
内線で電話番号を教えれば足りることであり、再度危険な場に自ら足を踏み入れることな
どしないのが通常であるところこの点について原告P2は納得できる説明をしていない、、
として、原告P2本人の供述の信用性を否定する。
また被告らは原告P2が同日二度目に支店長室に入った際入室後自らドアを閉めた、、、
と供述している(原告P2本人尋問の結果(平成一〇年七月六日の本人調書二六二項二六三、
項))こと
について、自ら再度のわいせつ行為を受けることを望んでいたとでも言わない限り説明で
きないことであるとして、原告P2本人の供述の信用性を否定する。
原告P2と被告P3との被告銀行における地位の差を勘案すれば、原告P2が、被告P3か
らわいせつな行為を受けていても再度被告P3から呼ばれればそれを拒むことに困難、、、
が伴うものであること及び被告P3からドアを閉めろと言われればそれに従わざるを得ない
ことは容易に推認することができ、それをも勘案すると、被告らの右主張は、採用の限り
ではない。
(4)P9への電話について
被告P3本人は平成八年二月二六日にP9と電話で話したことはあることP9からかか、、
ってきた電話を誰か(女性)が内線電話で伝えてきたことその時P9は休暇を延長しな、、、
ければならないことを被告P3に謝罪し、近々には復帰できる旨を被告P3に伝えたこと、
被告P3はそれに対してじっくり休んで体を気をつけて一日も早く回復するようにと、、、
伝えたことを供述しそういう趣旨の電話はP9の直近の上司に伝えるべき内容ではない、、
かとの原告ら代理人の質問に対して、休暇を取る前にP9が被告P3に会ったことがあった
ので善意で電話をかけてきたのではないかと供述している(被告P3の供述(第一二回本人、
調書一六三項から一六五項))。
右供述は、被告P3は、右日において、P9と電話で話したことを認めるものであり、そ
れも電話を女性が転送してきたというものであって、原告P2本人の供述内容と、原告P2
が、支店長室からP9に電話し、それを被告P3に引き継いだ点以外は、矛盾しない内容で
ある。
右のことに、一従業員であるP9が、在日代表である被告P3に直接電話をかけてくるこ
とは通常では考えられないことを考え併せると右矛盾部分についての被告P3本人の供、、
述は信用できずこの点についての原告P2本人の供述は信用するに足るものというべきで、
ある。
(六)被告P3が赴任してまもなくP2を含む従業員数名にインタビューしたときのことに
ついて
被告らは被告P3が赴任してまもなく当時執務室としていた会議室において原告P、、、
2を含む数名の従業員にインタビューをした際の原告P2の行動について原告P2が本人尋、
問で認めないことから、原告P2が、右会議室での出来事をヒントに頭の中で原告P2に対
する強制わいせつ行為を作り上げたが故に、
右出来事について認めることを殊更に回避したのであろうと推測し原告P2本人の供述の、
信用性を否定する。
証人P8の証言(平成一〇年一二月七日の証人調書四八項から五四項)に、原告P2本人尋
問の結果(平成一〇年七月六日の本人調書二七三項から二七八項)証人P19の証言(平成一、
一年二月一七日の証人調書七頁)を併せてみると、被告らの右主張のうち、原告P2が他の
女性従業員とともに平成一〇年一月二〇日ころまだ会議室で執務していた被告P3の、、、
もとに呼ばれたことは認められるがそこでの会話の内容については証人P8の証言と原、、
告P2本人の供述の内容が食い違っており、その点について、証人P8の証言どおりの事実
を裏付ける他の客観的証拠又は事情等はなく、認定することはできない。
したがって、被告らの右主張は採用の限りではない。
(七)原告P2の抗議について
被告らは、原告P2が、被告P3からわいせつ行為を受けたと主張する時期は、被告銀行
の監査チームが来ていた時期であるにもかかわらず、原告P2が、P5に訴えなかったこと
、また、直ちに日本人の人事担当者や組合の責任者に訴えなかったことを不可解として、
原告P2本人の供述の信用性を否定するが前記認定(第四二3(四)(2)ア)のとお、、、、、、
り原告らは本件わいせつ行為等の事実を訴えており被告らの右主張は原告P2本人の、、、
供述の信用性を減殺するものとは言えない。
三本件わいせつ行為等後の事情について
本件わいせつ行為等以降、被告銀行における、原告らを取り巻く事情について、以下の
事実が認められる。
1パーティー等について
平成八年一〇月四日、被告銀行において、元支店長代理であったP12の送別会が行われ
たことについては争いがない。
原告P1本人尋問の結果(第二回)(平成一一年五月一九日の本人調書一二四項から一二七
項三六八項から三七一項)原告P2本人尋問の結果(平成一○年七月六日の本人調書一〇、、
、、、、五項)甲第八号証及び第九号証によれば原告P1及び原告P2は右送別会の幹事から
原告P1と原告P2は右送別会に出席しないで欲しい旨を言われたこと原告P1は幹事に、、
対してせめてプレゼントをさせて欲しい旨申し出たが幹事は原告P1からのプレゼン、、、
トならば、P12も受け取らないだろうと言ったことが認められる。
被告らは、この点について、平成八年一〇月四日の元
支店長代理のインド人の送別会について、サーキュラー(回覧)が回った際に、出席しない
と言ったとの原告P2の供述(原告P2本人尋問の結果(平成一〇年七月六日の本人調書二九
、、、二項から二九三項))を指摘するが右原告P2の供述は幹事から前記のとおり言われて
欠席の意思表示をしたという趣旨に解するのが、むしろ自然であり、この点に関する前記
認定事実と矛盾するものではない。
原告らは、その余の被告銀行における忘年会、新年会、その他のパーティーについても
、原告らには一切声がかけられなかった旨主張する。
しかしながら、原告P1本人尋問の結果(第一回)(平成一〇年四月一三日の本人調書三七
二項から三七八項)によれば右P12の送別会以降被告銀行の職場で行われたパーティー、、
等のうち原告P1は①平成八年一一月二三日及び二四日被告銀行主催の鬼怒川温泉方、、、
面への行員旅行、②同年一二月三〇日、午前九時から午後五時までの仕事時間中の事務所
での打ち上げスナックパーティー、③平成九年五月一六日、P13の自宅での同人主催の夕
食会、④同年六月六日、午前九時から午後五時までの仕事時間中の事務所でのP13のスナ
ック送別会に出席したことが認められる。
右のうち、①は社員旅行であり、②及び④は仕事時間中に催されたものであることも勘
案すると、それらについてはその性質上、原告らに欠席することを働きかけにくいもので
あるといえるが、それを勘案しても、原告らの主張するように、被告銀行における忘年会
、新年会、その他のパーティーについても、原告らには一切声がかけられなかったと認め
ることはできない。
2P10の言動について
原告P1の上司であるP10が、原告P1に対して、退社前にその日に行った仕事の内容を
報告するように業務命令を出したことについては争いがない。
右事実、原告P1本人尋問の結果(第一回)(平成一〇年四月一三日の本人調書一二〇項か
ら一二三項)及び甲第八号証によれば平成八年一〇月二八日被告銀行のアシスタントマ、、
ネージャーであるP10が、原告P1に対して「五時五分前に、その日やった仕事を提出し、
なさいときつい調子で命じたこと原告らが本件わいせつ行為等について主張する以前。」、
には、そのようなことは全くなかったこと、その後も、他の従業員の前で、些細な間違い
を一大事のように責め立てるという対応が続いたことが認められる。
被告らは、この点について、上司が、部下に対して、業務報告を求めることは当然のこと
であると主張するが、右認定のとおり、原告らが本件わいせつ行為について主張する以前
には、そのようなことは全くなかったのであるから、きつい調子で、右業務命令をするこ
とは、通常の上司の部下に対する指示の域を超えているものというべきである。
3被告P3の秘書の言動について
原告らは平成九年一月ころ被告P3の秘書は原告P1に対して今に銀行にいら、、、、「、
れなくなるわよ結局退職することになるやられたあなたも悪いのよと言ったと主張。。。」
するが、原告P1本人尋問の結果(第一回)(平成一〇年四月一三日の本人調書四〇〇項から
四〇三項)によっても右事実を認めるに足りず他に右事実を認めるに足りる証拠はない、、

4P11の言動について
P11が、原告P1に対して「人間性を疑うよ」という趣旨の発言及び「P1さんは、コ、。
ンピューターに触るな」との趣旨の注意を行ったことは争いがない。。
右事実、原告P1本人尋問の結果(第一回)(平成一〇年四月一三日の本人調書一三三項か
ら一三四項)及び甲第八号証によれば、平成九年四月七日、原告P1が被告銀行のアシスタ
ントマネージャーであるP11の机の上に輸出の書類を置いたところ同人は原告P1に対、、
して「許可無く書類を机の上に置くな「のさばっているんじゃない。人間性を疑うよ、。」、
と強い口調で言ったことその後職場にコンピューターが導入され他の者が上司か。」、、、
らその使用方法を教えてもらっているのにP11は原告P1に対してP1さんはコン、、、「、
ピューターに触るな」と言ったことが認められる。。
被告らは、P11の「人間性を疑うよ」という趣旨の発言について、P11が原告P1の頻。
繁な私用電話等について注意をすると常に原告P1が当該注意と直接関係のないことを堰、
を切ったように話し続けるという状態であったからであり、原告ら主張のような状況での
発言ではない旨主張するが、それを認めるに足りる証拠はない。
また、被告らは、P11の「P1さんは、コンピューターに触るな」との趣旨の注意をし。
たのはローカル・エリア・ネットワークのセッティングの当日原告P1が休暇を取得し、、
ていたため、同人のユーザー登録が未了であり、しかも、同人がコンピューターを使用す
る必要性がその時点ではなかったからである旨主張
するが、それを認めるに足りる証拠はない。
5原告P2の休暇について
、、、、被告らは原告P2が平成九年四月一五日の半日休暇願い(有給休暇)を出しその日
実際に半日休暇をとった事実はあると主張している。原告らの主張上は、この点に関する
日が、四月七日とされており(平成九年九月五日付け原告ら準備書面、四丁裏)、甲第九号
「」、証には同年四月一六日(同年というのは平成八年を受けるような記載となっているが
その点は単なる誤記と思われる。)と記載されているが、原告らが主張する、原告P2の休
暇願い(有給休暇)に関する事実は、平成九年四月一五日の出来事であったとしても特に差
し支えはなく、以下同日を前提に判断する。
それを前提とすると原告P2が平成九年四月一五日の半日休暇願い(有給休暇)を出し、、
、その日、実際に半日休暇をとったこと、その際、同じセクションの者も休暇願を出して
いたこと上司は原告P2に対して同日の休暇取得を再考するように促したことは争いがな、
いということができる。
原告P2本人尋問の結果(平成一○年七月六日の本人調書一〇六項から一〇七項)甲第九、
号証及び弁論の全趣旨によれば右事実に加えて原告P2が右半日休暇願い(有給休暇)を、、
提出したのは、子供の学校の関係であること、何日も前にそれを提出していたこと、同セ
クションは二人のみのスタッフで構成されていたこと、上司が再考を促したのは、当日に
なってからであること、それまではそのような場合は他のセクションから人を手配するの
が通常で右のような対応を受けたことはなかったこと原告P2は何とか頼み込んでよ、、、
うやく休むことができたことを認めることができる。
被告らは、上司の右対応について、それは組織の責任者として当然の対応であり、それ
を嫌がらせととるのは原告P2の職業人としての意識の欠如を示すものである旨主張するが
、右認定のとおり、それまではそのような場合は他のセクションから手配をするのが通常
で、右のような対応を受けたことはなかったことも勘案すると、上司の右措置は、原告P
2に対する通常の何ら問題のない措置とは言い切れず嫌がらせ的意味合いを含むものと、、
、原告P2に受け取られても仕方のないものというべきである。
6その他、被告銀行の行員の原告らに対する言動について
原告らは、被告銀行の従業員全員が原告らを明らかに避けていること、従来は、同僚か
ら食事に誘われたり、飲みに誘われたりすることが日常的にあったが、本件わいせつ行為
等以降、そのようなことはなくなり、昼食時も原告らと同じテーブルにつかないという状
況が続いていることを主張し、原告P1本人の供述、原告P2本人の供述、甲第八号証、第
九号証にはそれに沿う供述及び記載もあるが、右主張は具体性、特定性に欠けており、い
わば漠然とした事実であるので、被告らが、原告らの右主張を否認していることを前提と
すると、その証明があったということはできない。
7原告らの本件わいせつ行為等の主張との関連性について
右1から6のうち1の平成八年一〇月四日被告銀行において元支店長代理であったP、、、
12の送別会に原告らが出席を事実上断られたことに関連する事実、2の原告P1の上司であ
るP10が原告P1に対して退社前にその日に行った仕事の内容を報告するように業務命、、
令を出したことに関連する事実4のP11の原告P1に対する言動に関する事実及び5の原告、
P2の平成九年四月一五日の半日休暇願い(有給休暇)に関連する事実は原告らが本件わい、
せつ行為等を主張し、提訴したことと関連するものであるか否かについて検討する。
原告らの被告銀行に対する本件わいせつ行為等に関する抗議及び被告銀行の調査等の経
過は前記(第四、二、3、(四)、(2)、ア)認定のとおりであり、当初、原告らが第三者に本
件わいせつ行為等の事実を話したのは、平成八年三月五日である。
証人P8の証言(平成一〇年一二月二一日の証人調書二一頁)によれば平成八年三月当時、
には、被告銀行の行員の間で、本件わいせつ行為等についての噂がどんどん大きくなって
いたことが認められる。
本件訴えが提起されたのは平成八年一二月一〇日(訴状副本が被告に送達されたのは同月
三〇日)であり、それ以降、本件訴訟が係属している。
原告らの職場における右状況に関する事実は、時期的に、本件わいせつ行為等について
原告らが被告銀行に抗議を行い、提訴を行ったことと符合していないとはいえない。
右1の平成八年一〇月四日被告銀行において元支店長代理であったP12の送別会に原、、
告らが出席を事実上断られたことに関連する事実の行為者は右送別会の幹事である(原告、
P1本人尋問の結果(第一回)(平成一〇年四月一三日の本人調書三六八項)によれば右幹事、
はP22であったことが認められるが、同人が被告
銀行において、一般行員であったのか、何らかの役職に就く人物であったのかについては
不明である。)。
右2の原告P1の上司であるP10が原告P1に対して退社前にその日に行った仕事の内、、
容を報告するように業務命令を出したことに関する事実の行為者は、P10であり、同人は
被告銀行のアシスタントマネージャーであって、原告P1の上司である。
右4のP11の原告P1に対する言動に関する事実の行為者は、P11であり、同人は被告銀
行のアシスタントマネージャーである。
右5の原告P2の平成九年四月一五日の半日休暇願い(有給休暇)に関する事実の行為者は
、原告P2の上司である。
これらの事実に原告P1本人は原告らが主張するような職場における状況は提訴後、、、
、その状況について記載した準備書面(原告らの平成九年九月五日付け準備書面)を提出し
て以来なくなった旨供述している(原告P1本人尋問の結果(第一回)(平成一〇年四月一三日
の本人調書一三六項から一三八項)、甲第八号証)こと、右2の原告P1の上司であるP10が
原告P1に対して退社前にその日に行った仕事の内容を報告するように業務命令を出し、、
たことに関連する事実及び右5の原告P2の平成九年四月一五日の半日休暇願い(有給休暇)
に関連する事実は、原告らが本件わいせつ行為等について主張する以前にはなかったと認
められることも勘案すると、右各事実の行為者による、各行為は、本件わいせつ行為等に
ついて原告らが被告銀行に抗議を行い、提訴を行ったこととの関連で行われたものである
と推認することができる。
四被告P3の責任の有無について
被告P3は前記(第四一1)認定のとおり原告P1に対してその意思に反してわいせ、、、、
つな行為をした上暴行をもって原告P1を姦淫したものであるから民法七〇九条に基づ、、
き、右行為によって原告P1に生じた損害を賠償する責任がある。
また被告P3は前記(第四二1)認定のとおり原告P2に対してわいせつな行為、、、、、、
をしたものであるから民法七〇九条に基づき右行為によって原告P2に生じた損害を賠、、
償する責任がある。
五被告銀行の責任の有無について
原告P1に対する強姦行為等自体は勤務時間外に被告P3の自宅において行われたもので
あるが、前記(第一、一、1、(二))争いのない事実等及び前記(第四、一、1)認定のとおり
、被告P3は、被告銀行の日
本における代表者であり従業員である原告P1に対し業務時間中に内線電話を用いて支、、
店長室へ呼び出して日本語を教わりたいことを口実に自宅への来訪を要請したものであっ
て被告P3の右地位に照らせば従業員に日本語を教えるよう求める行為は被告銀行の事、、
業の執行行為と密接な関連を有する行為と認められる。
また、原告P2に対する強制わいせつ行為については、被告P3が内線電話を用いて呼び
出した上、職務時間中に支店長室において強制わいせつ行為に及んでおり、被告銀行の業
務の執行行為と密接な関連がある行為というべきである。
したがって被告P3の使用者である被告銀行は民法七一五条一項により原告らに対、、、
して、原告らが被告P3の行為によって受けた損害を賠償する義務がある。
七被告P3の責任と被告銀行の責任との関係
被告P3の民法七〇九条に基づく責任と被告銀行の民法七一五条に基づく責任との関係は
いわゆる不真正連帯と解するべきである(最高裁判所昭和四五年四月二一日判決・判例時、
報五九五号五四頁、最高裁判所昭和四六年九月三〇日判決・判例時報六四六号四七頁)。
八原告らの損害について
1原告P1の精神的損害について
原告P1本人尋問の結果(第一回)(平成一〇年四月一三日の本人調書二七項から三七項)及
び甲第八号証によれば、原告P1は、日本語を習得したいという被告P3に日本語学習用の
テキストを渡してあげようという善意をもって被告P3の要求に応じδ○○号室に赴い、、
たものである、被告P3の原告P1に対する強姦行為等によって、右善意と自身の性的自由
とを踏みにじられその当時非常な恐怖に陥れられその翌日以降も再び被告P3から内、、、
線電話で呼出しがかかるのではないかと恐怖のうちに過ごすことになり、多大なる精神的
苦痛を受けたこと右事実に加えて前記(第四三124)認定の事実によって精神、、、、、、、
的に非常に落ち込み、体調を崩してしまい、その点でも精神的苦痛を受けたことが認めら
れる。
右損害のうち、前記(第四、三、1、2、4)認定の事実に起因する損害は、被告P3の原告
P1に対する強姦行為等に関連して引き起こされたことは前説示(第四、三、7)のとおりで
あってそれらによって生じた精神的損害は被告P3の不法行為と相当因果関係のある損、、
害というべきものである。
原告P1が受けた右各精神的苦痛を慰籍するには、金三〇〇万
円の慰謝料をもって賠償するのが相当である。
2原告P2の精神的損害について
原告P2本人尋問の結果(平成一〇年七月六日の本人調書一〇八項)及び甲第九号証によれ
ば原告P2は被告P3の原告P2に対する強制わいせつ行為によって相当の精神的苦痛、、、
を受けたこと、右事実に加えて、前記(第四、三、1、5)認定の事実によって、精神的苦痛
を受けたことが認められる。
右損害のうち、前記(第四、三、1、5)認定の事実に起因する損害は、被告P3の原告P2
に対する強制わいせつ行為に関連して引き起こされたことは前説示(第四三7)のとおり、、
であってそれらによって生じた精神的損害は被告P3の不法行為と相当因果関係のある、、
損害というべきものである。
原告P2が受けた右各精神的苦痛を慰籍するには金七〇万円の慰謝料をもって賠償する、
のが相当である。
3弁護士費用
被告らの不法行為による損害として相当因果関係の範囲内と認められる弁護士費用の金
額は、原告P1については金三〇万円、原告P2については金七万円とするのが相当である

第五結論
以上のとおりであるから原告らの被告らに対する損害賠償請求は原告P1については、、
金三三〇万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成八年一二月三一日から民法所
定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり原告P2については、
金七七万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成八年一二月三一日から民法所定
の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので、これらを認容し
、原告らのその余の請求については理由がないのでいずれも棄却することとし、訴訟費用
の負担について民事訴訟法六一条、六四条及び六五条一項を適用し、仮執行の宣言につい
て同法二五九条一項を適用して、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第一九部
裁判長裁判官高世三郎
裁判官松井千鶴子
裁判官植田智彦

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛