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裁判例


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○主文
1原告Aの相続税に係る昭和五五年五月二二日付け再更正の取消しを求める訴え、及び
原告Bの相続税に係る同日付け更正をすべき理由がない旨の通知の取消しを求める訴えを
いずれも却下する。
2原告C、同Dの各請求、同A、同Bのその余の各請求を棄却する。
3訴訟費用は原告らの負担とする。
○事実
第一当事者の求める判決
一請求の趣旨
1第一〇二号事件原告C
被告が第一〇二号事件原告Cに対してなした昭和五二年一一月二六日付け相続税更正(但
し、昭和五五年五月二二日付け再更正により減額された後の部分)のうち課税価格三億八
〇六六万九〇〇〇円(納付すべき相続税額一億七九九三万四八〇〇円)を超える部分及び
同日付け重加算税賦課決定(但し、昭和五五年五月二二日付け減額再賦課決定により減額
された後の部分)をいずれも取り消す。
2第一〇二号事件原告D
被告が第一〇二号事件原告Dに対してなした昭和五五年五月二二日付相続税再更正のうち
課税価格一三一九万〇二四四円(納付すべき相続税額五九九万七八〇〇円)を超える部分
及び昭和五二年一一月二六日付け過少申告加算税賦課決定をいずれも取り消す。
3第一〇二号事件原告A
被告が第一〇二号事件原告Aに対してなした昭和五五年五月二二日付け相続税再更正のう
ち課税価格一七五八万六九九二円(納付すべき相続税額七九九万七一〇〇円)を超える部
分及び昭和五二年一一月二六日付け過少申告加算税賦課決定をいずれも取り消す。
(右再更正取消請求についての選択的請求)
被告が原告Aに対してなした昭和五二年一一月二六日付け相続税更正のうち課税価格一七
五八万六九九二円(相続税額七九九万七一〇〇円)を超える部分を取り消す。
4第一〇六号事件原告B
被告が第一〇六号事件原告Bに対してなした昭和五五年五月二二日付け相続税再更正のう
ち課税価格一三一九万〇二四四円(納付すべき相続税額五九九万七八〇〇円)を超える部
分及び昭和五二年一一月二六日付け過少申告加算税賦課決定並びに昭和五五年五月二二日
付け相続税の更正をすべき理由がない旨の通知をいずれも取り消す。
5各原告
訴訟費用は被告の負担とする。
二請求の趣旨に対する答弁
1本案前の申立て
原告Bの訴えのうち更正をすべき理由がない旨の通知の取消しを求める部分を却下する。
訴訟費用は原告Bの負担とする。
2本案の申立て
原告らの請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
第二当事者の主張
一請求原因(各原告)
1更正、再更正及び加算税
(一)更正、重加算税、過少申告加算税
被告は昭和五二年一一月二六日付けで、原告ら四名に対し、被相続人Eに係る相続税につ
き、別表1の各更正欄記載のとおり更正したうえ、原告Cに対し重加算税を、その余の原
告ら三名に対し過少申告加算税をそれぞれ賦課した(以下、各原告ごとにそれぞれ「本件
更正「本件重加算税賦課決定「本件過少申告加算税賦課決定」といい、両加算税を」、」、

括して「本件加算税」という。。)
(二)増減額再更正、重加算税減額
被告は昭和五五年五月二二日付けで、別表1の各再更正欄記載のとおり、原告Cに対して
は減額再更正及び重加算税の減額再賦課をし、その余の原告ら三名に対しては増額再更正
(但し、原告Aについては課税価格及び納付すべき相続税額は本件更正と同一であり、た
だ「相続人に係る相続税額」の端数が異つたもの)をした(以下、減額再更正、増額再更
正とも「本件再更正」という。。)
2更正をすべき理由がない旨の通知
(一)修正申告
原告Bは昭和五一年七月二一日、被告に対し、被相続人Eに係る相続税につき、別表1の
同原告の修正申告欄記載のとおり、取得した財産の価額及び課税価格を一三一九万〇二四
四円として修正申告(以下「本件修正申告」という)したが、右価額及び価格の中には。

価額三六四万一六一六円の別表2番号1の土地(以下「本件申告土地」という)を含め。

いた。
(二)過誤の存在
本件申告土地は別表2番号2、3の各土地(以下「申告外土地」といい、これと本件申告
土地とを一括して「本件越谷の土地」という)と共に、かつて亡Eが所有していたが、。

告Bはこれらを一括して同人の生前、同人から相当代金額で買い受けた。
従つて同原告の本件修正申告は本件申告土地を受遺贈財産に含めた点に過誤があり、その
結果、納付すべき税額が過大となつた。
(三)更正の請求
、、、原告Bは昭和五四年九月八日被告に対し別表1の同原告の更正の請求欄記載のとおり
前記一の課税価格を九五四万八六二八円として相続税を算定すべき旨の更正の請求以()(
下「本件更正の請求」という)をした。。
(四)更正をすべき理由がない旨の通知
被告は昭和五五年五月二二日付けで、原告に対し、本件更正の請求について更正をすべき
理由がない旨の通知(以下「本件通知処分」という)をした。。
(五)本件更正の請求の適法性
国税通則法二三条一項に基づく更正の請求は法定申告期限から一年以内に限ると定められ
ている。
しかし、被告は本件更正の請求及び本件通知処分に係る異議申立てについて実体判断を下
し、国税不服審判所も右の審査請求について同様に実体判断を下した。
このような扱いが不服審理手続でなされたときは、本訴において被告が更正の請求の期限
徒過を主張することは、信義則に照らし許されない。
3前置手続
(一)本件更正及び本件加算税について
原告ら四名は昭和五二年一二月一三日、被告に対し、本件更正及び本件加算税賦課決定に
ついて異議申立てをしたが、被告は昭和五三年四月七日これを棄却した。
原告ら四名は同年五月八日、右の対し審査請求をしたが、国税不服審判所は昭和五五年四
月三〇日これを棄却した。
(二)本件通知処分及び本件再更正について
原告Bは昭和五五年六月一二日、被告に対し、本件通知処分及び同原告に係る本件再更正
について異議申立てをしたが、被告は同年九月一〇日これを棄却した。
原告Bは同年一〇月三日右に対し審査請求をしたが、国税不服審判所は昭和五六年七月七
日これを棄却した。
4要約
よつて、被告に対し、
(一)原告Cは、本件更正(但し、本件再更正により減額された後の部分)のうち同原
告の修正申告に係る課税価格三億八〇六六万九〇〇〇円(相続税額一億七九九三万四八〇
〇円)を超える部分及び本件重加算税賦課決定(但し、再賦課決定により減額された後の
部分、)
(二)原告Dは、本件再更正のうち同原告の修正申告に係る課税価格一三一九万〇二四
四円(相続税額五九九万七八〇〇円)を超える部分及び本件過少申告加算税賦課決定(修
正申告に係る同税六万七九〇〇円以外の過少申告加算税、)
(三)原告Aは、
本件再更正のうち同原告の修正申告に係る課税価格一七五八万六九九二円(相続税額七九
九万七一〇〇円)を超える部分及び本件過少申告加算税賦課決定(修正申告に係る同税九
万〇五〇〇円以外の過少申告加算税、なお、右再更正に関しては、選択的に本件更正の)

ち同原告の修正申告に係る右課税価格(相続税額)を超える部分、
(四)原告Bは、本件再更正のうち同原告の修正申告に係る課税価格一三一九万〇二四
四円(相続税額五九九万七八〇〇円)を超える部分及び本件過少申告加算税賦課決定(修
正申告に係る同税六万七九〇〇円以外の過少申告加算税)並びに本件通知処分、
の取消しをそれぞれ求める。
二請求原因に対する認否並びに主張
1請求原因1の事実は認める。
2同2は(一)の事実(二)のうち、Eがかつて本件越谷の土地を所有していたこ、、
と、
(三(四)の各事実(五)のうち各不服申立について実体判断をした事実は認め、そ)、、

余の各事実は否認する(五)のうち法規の内容は除く。(。)
原告Bの本件更正の請求は、更正の請求をすることができる期限を徒過した不適法なもの
であるから、本件通知処分の取消しを求める訴えは不適法である。
右について、本件越谷の土地が明らかに相続財産に属していることを理由に本件通知処分
が実体的判断を示し、あえて期限の徒過を指摘しなかつたからといつて、本訴でこれを指
摘することはなんらの信義則に反するものではない。
3同3の事実は認める。
三抗弁
1包括遺贈
一萬太郎は自己の財産を原告C(長男)に一〇〇分の九〇、同A(養女)に一〇〇分の
、()、()、四同D二男同B三男に各一〇〇分の三宛包括遺贈する旨遺言していたところ
昭和四九年一一月二四日死亡した。
なお、Eは昭和四五年五月六日、Fと婚姻している。
2遺産の価額(総額)
原告ら四名が包括遺贈により取得した遺産の価額(総額)は次のとおりである。
(一)修正申告された遺産の価額(総額)
四億三九六七万四八一九円(別表1合計・修正申告欄(1))
(二)加算すべき遺産の価額(総額)
一億一七四一万〇二九八円
右の内訳は次のとおりである。
(1)富士銀行江戸川支店における定期預金(別表3番号1ないし11)
合計四七〇一万七九九五円
ア右番号1ないし3の仮名定期預金三口合計九二八万五七六六円は、昭和四九年一月一
四日に三菱銀行江戸川支店のE名義の普通預金口座から払い出して得た四〇〇万円及び同
年二月二日、同口座から払い出して得た五〇〇万円により設定された額面合計九〇〇万円
に相続開始日までの中途解約利率による既経過利息二八万五七六六円(別表3の額面金額
と評価額の差額である。同趣旨のものを以下「既経過利息」という)を加算したもので。

る。
イ右番号4ないし8の仮名定期預金五口合計二〇六〇万五六七四円は、同年二月一四日
に富士銀行江戸川支店のE名義の普通預金口座から払い出して得た五〇〇万円、同年同月
一五日に同口座から払い出して得た五〇〇万円及び同年同月一六日に三菱銀行江戸川支店
のE名義の定期預金を解約して得た一〇二七万〇七一九円の合計二〇二七万〇七一九円に
より設定された額面合計二〇〇〇万円に既経過利息(計算方法はアと同一。以下同様であ
る)六〇万五六七四円を加算したものである。。
ウ右番号9及び11の無記名定期預金二口合計一二一二万五三二二円は、昭和四九年六
月七日に富士銀行江戸川支店のE名義の普通預金口座から払い出した一二〇〇万円により
設定された額面合計一二〇〇万円に既経過利息一二万五三二二円を加算したものである。
エ右番号10の無記名定期預金五〇〇万一二三三円は、昭和四九年一一月一九日に富士
銀行江戸川支店のE名義の定期預金二口、額面合計三〇〇〇万円を解約して得た三一六八
万八七九二円により設定された額面金額五〇〇万円に既経過利息一二三三円を加算したも
のである。
(2)富士銀行江戸川支店における通知預金(別表3番号12ないし14)
合計二五〇〇万〇〇〇〇円
右仮名通知預金三口合計二五〇〇万円は、別表3番号10の無記名定期預金と同一の資金
三一六八万八七九二円(前記(1)エ)により設定された額面金額である。
(3)三菱銀行江戸川支店における定期預金(別表3番号15ないし28)
合計四五三九万二三〇三円
ア右番号15及び16の無記名定期預金二口合計五〇四万九三一五円は、
昭和四九年六月一七日に三菱銀行江戸川支店のE名義の定期預金を解約して得た一四六〇
万八九二八円により設定された額面合計五〇〇万円に既経過利息四万九三一五円を加算し
たものである。
イ右番号17ないし19の無記名定期預金三口合計九〇八万二九七三円は、右番号15
及び16の無記名定期預金を設定した資金(右ア)の残額九六〇万八九二八円(三菱銀行
江戸川支店のE名義の普通預金口座に入金し、昭和四九年六月二六日払い出したもの)に
より設定された額面合計九〇〇万円に既経過利息八万二九七三円を加算したものである。
ウ右番号20ないし28の無記名定期預金九口合計三一二六万〇〇一五円は、昭和四九
年七月八日に三菱銀行江戸川支店のE名義の定期預金を解約して得た三一三四万三六八二
円により設定された額面合計三一〇〇万円に既経過利息二六万〇〇一五円を加算したもの
である。
(三)債務控除額(総額)一五〇三万七五〇六円(別表1合計・更正欄(2))
原告らが修正申告の際に控除した債務の額である。
(四)課税価格(総額)五億三六七一万四〇〇〇円(別表1合計・更正欄(3))
本件更正における本来の課税価格(総額)は、右(一)と(二)の合計額から(三)の額
を控除した五億四二〇四万七〇〇〇円(千円未満切捨て)であるが、本件更正及びこれに
伴う本件加算税賦課決定に当たつては、そのうち標記金額によつて税額を算定した。
3本件更正における各受遺者の課税価格
各原告が遺贈により取得した財産の価額及びその課税価格は次のとおりであり、本件更正
はこれに基づいたものである。
(一)原告C
(1)修正申告に係る取得財産の価額
三億九五七〇万七三三七円(別表1原告C・修正申告欄(1))
(2)加算すべき取得財産の価額
一億〇〇八七万〇八〇三円
前記2の(二)の加算すべき遺産の価額合計一億一七四一万〇二九八円のうち包括遺贈割
合(一〇〇分の九〇)に相当する一億〇五六六万九二六八円が同原告に加算すべき取得財
産の価額であるが、本件更正及び本件重加算税賦課決定に当たつては、そのうち標記金額
を加算した。
(3)債務控除額一五〇三万七五〇六円(同・更正欄(2))
修正申告どおりの債務控除額である。
(4)課税価格四億八一五四万円(同・更正欄(3))
右(1)と(2)の合計額から(3)の額を控除した額(千円未満切捨て)である。
(二)原告A
(1)修正申告に係る取得財産の価額
一七五八万六九九二円(別表1原告A・修正申告欄(1))
(2)加算すべき取得財産の価額四四八万三一四六円前記2の(二)の加算すべき遺
産の価額合計一億一七四一万〇二九八円のうち同原告の包括遺贈割合(一〇〇分の四)に
相当する四六九万六四一一円が同原告に加算すべき取得財産の価額であるが、本件更正及
び本件過少申告加算税賦課決定に当たつては、そのうち標記金額を加算した。
(3)課税価格二二〇七万〇〇〇〇円(同・更正欄(3))
右(1)と(2)の合計額(千円未満切捨て)である。
(三)原告D、同B
(1)修正申告に係る取得財産の価額
各一三一九万〇二四四円(別表1原告D、同B・各修正申告欄(1))
(2)加算すべき取得財産の価額各三三六万二三六〇円
前記2の(二)の加算すべき遺産の価額合計一億一七四一万〇二九八円のうち同原告らの
包括遺贈割合(各一〇〇分の三)に相当する各三五二万二三〇八円が同原告らに加算すべ
き取得財産の価額であるが、本件更正及び本件過少申告加算税賦課決定に当たつては、そ
のうち標記金額を加算した。
(3)課税価格各一六五五万二〇〇〇円(同・各更正欄(3))
右(1)と(2)の合計額(千円未満切捨て)である。
4遺産分割調停の成立とこれによる更正の請求
本件更正の後である昭和五四年五月二四日、遺留分権者Fが原告らを相手方として東京家
庭裁判所に申立てをしていた遺産分割事件の調停が成立し、その結果、原告CがEから遺
贈により取得したとしてその旨の申告をしていたE所有財産のうち、別表2番号2及び3
の各土地(申告外土地)を原告Bが、同表番号4の土地を原告Dが、同表番号5の土地を
FがそれぞれEから遺贈もしくは相続により取得した。
同年九月八日、原告ら四名は右調停成立を理由に、別表1該当欄のとおり相続税法三二条
三号に基づく更正の請求をした(但し、原告Bの更正の請求の事由は請求原因2(三)の
とおりで、右調停を理由としていない。。)
5本件再更正における原告らの課税価格
右の遺産分割の結果、原告らそれぞれの取得財産の課税価格は次のとおりとなり、
本件再更正はこれに基づいたものである(別表1合計欄(3)の課税価格が本件更正と本
、。)。件再更正とで差異を生じたのは分割により取得した価額ごとの端数処理の違いである
(一)原告C四億五二一一万八〇〇〇円(別表1原告C・再更正欄(3))
本件更正に係る取得財産の価額(前記3(一(1)及び(2)標記金額の合計)から別)

2番号2ないし5の土地の評価額合計二九四二万二五七二円及び本件更正と同一の債務控
除額(前記3(一(3)を差に引いた額である。但し、前記3(一(2)の本来の加)))

額一億〇五六六万九二六八円によるときは、四億五六九一万六〇〇〇円である(いずれ。

千円未満切捨て)
(二)原告D一九六八万三〇〇〇円(別表1原告D。再更正欄(3))
本件更正に係る取得財産の価額(前記3(三(1)及び(2)標記金額)に別表2番号)

の土地の評価額三一三万〇五三三円を加算した額である。
但し、前記3(三(2)の本来の加算額三五二万二三〇八円によるときは、一九八四万)

〇〇〇円である(いずれも、千円未満切捨て)。
(三)原告B二三七五万三〇〇〇円(別表1原告B。再更正欄(3))
本件更正に係る取得財産の価額(前記3(三(1)及び(2)標記金額)に別表2番号)

及び3の土地の評価額合計七二〇万〇四六八円を加算した額である。但し、前記3(三)
(2)の本来の加算額三五二万二三〇八円によるときは、二三九一万三〇〇〇円である。
(いずれも千円未満切捨て)
(四)原告A分本件更正に係る課税価格と同一(別表1原告A・再更正欄(3))
6相続税額の計算
本件更正及び再更正によつて原告の納付すべき相続税額は、別表1の更正欄及び再更正欄
()「」、、10納付すべき相続税額のとおりでありその計算要領は本件更正につき別表4
本件再更正につき別表5のとおりである。
なお、原告ら及びFは、当初の申告(Fについては期限後申告)において、相続税額の総
額を各人に按分する方法として、各課税価格がその総額に占める割合を、その合計が一と
なるように小数点二位までにとどめることで合意していたので、被告は右合意された方法
に従つて本件更正及び再更正を行つた(相続税基本通達一七−一。)
7本件加算税
(一)原告Cに対する本件重加算税
(1)Eは、その遺産に係る相続税を免れさせる意図で、
架空名義の定期預金及び通知預金並びに架空名義の届出印を用いた無記名定期預金(以下
一括して「本件預金」という)を設定し、通常の調査では同人に帰属する財産と確知で。

難い状態において、これを管理していた。
(2)原告Cは、本件預金の存在及びそれが右(1)の状態で設定、管理されているこ
とを明確に認識していたにもかかわらず、Eの右所為を奇貨として、自らも本件相続税を
免れる意図のもとに、故意に本件預金を受遺財産として申告しないで、相続税の課税価格
の基礎となるべき事実を隠ぺいした。
(3)原告Cに対する本件重加算税は、別表3の本件預金(評価額)のうち一億一二〇
七万八六六九円(前記3(一)ないし(三)の各(2)標記金額の合計額相当)を基礎事
実としたが、そのうち同原告が取得した価額を前記3(一(2)標記金額にとどめて、)

れについて計算した結果は、別表6のとおりである。
(二)その余の原告らに対する本件過少申告加算税
原告D、同A、同Bはそれぞれ別表1の修正申告欄のとおり納付すべき相続税額を申告し
たが、同原告らには前記3(三)及び(三)の各(2)のとおり右に加算すべき取得財産
の価額があり、これを加算した本件更正に係る同原告らの納付すべき相続税額は、それぞ
れ別表1の各更正欄(10)記載のとおり(その計算要領は別表4のとおり)である。
右納付すべき相続税額の増差額千円未満切捨てに一〇〇分の五を乗じて得られる額百()(
円未満切捨て)が右原告らに対する過少申告加算税であり、それぞれ別表1の更正欄(1
2)記載の額となる。
四抗弁に対する認否
1抗弁1の事実は認める。
2同2は(一)の事実(二)の(1)及び(3)の事実のうち別表3の各定期預金、、

ついて相続開始日までの中途解約利率による既経過利息を加算した額が被告主張の評価額
となること、並びに(三)の事実は認め(二)のその余の事実は不知(四)は争う。、、
なお(二)の(1)のうち、別表3番号11の無記名定期預金の存在は、本来、更正と、

う方法によつてのみ考慮可能なものであり、しかも本訴においては既に更正期限を徒過し
ているから、本訴で右定期預金の存在を処分の根拠に加えることは許されない。
3同3は(一)ないし(三)の各(1)の事実は認め、同各(2)の事実は否認し、、
(一)
の(3)の事実は認め(一)の(4、、)
(三)及び(三)の各(3)はいずれも争う。
4(一)認否
抗弁4は認める。
(二)主張
申告外土地を含む本件越谷の土地は、請求原因2のとおり原告BがEから、その生前一括
して買い受けている。
したがつて、右上地は原告Bの固有財産であり、調停の便宜上、遺産分割により取得する
形式をとつたものに過ぎない。
5同5は(一)ないし(三)のうち別表2番号2ないし4の土地の評価額が被告主張、

とおりであることは認め、その余は争う。
、、、。6同6の前段はそのうち計算方法自体は認めその余を争い同後段の事実は認める
7同7の(一)のうち(1)の事実は不知(2)は、受遺贈財産として申告してい、、

いことを認め、その余を否認(3)の計算関係は認める。、
仮に原告Cが本件預金の存在を認識していたとしても、単なる不申告行為のみでは「隠ぺ
い」又は「仮装」に当たらないから、本件重加算税賦課決定は違法である。
同(三)は、原告Dら三名の修正申告に係る相続税額が被告主張のとおりであることは認
め、その余は争う。
第三証拠(省略)
○理由
一各処分の存在及び出訴期間
請求原因1(更正、再更正及び加算税、同2の(一(修正申告(三(更正の請求))))、)

び(四(更正をすべき理由がない旨の通知、同3(前置手続)の各事実は当事者間に))

いがない。
本件第一〇二号事件訴訟は昭和五五年八月七日に原告ら四名によつて、本件更正及び本件
加算税の取消し請求として先ず提起され、原告Dは昭和五七年六月一日右更正の取消請求
を本件再更正の取消請求に訴えを変更したものである。右の両請求はいずれも原告Dの修
正申告額を超える処分の取消しを求めるものであるから、実質的に同一であり、当初の請
求に係る訴えが前置手続及び出訴期間を遵守している(同原告には国税通則法一一五条一
項二号が適用される)以上、右変更後の訴えも出訴期間の点では適法なものと解すべき。

ある。
二原告Aの本件再更正の取消しを求める訴えの適法性
原告Aは、本件更正の取消しと本件再更正の取消しとを選択的に請求するが、同原告に関
するかぎり、別表1の該当欄記載のとおり、両者の間には納付すべき相続税額等又は課税
標準等において差異がない(別表1原告A。更正欄、再更正欄各(10(3。)、))
そうであれば、右再更正は国税通則法二九条に定める効力を生じないから、
本件更正を吸収する処分としての性質を持たず、原告Aには右再更正の取消しによつて回
復すべき法律上の利益というものも存在しない。すなわち、右再更正は、本件更正によつ
て生じた法的効果である同原告の納税義務が、他の共同相続人に対する再更正によつても
変動を来さないことを通知もしくは確認する趣旨を出るものではない。
そうすると、同原告に対する右再更正は、抗告訴訟の対象となる処分ではないから、その
取消しを求める訴えは不適法である(なお、右再更正に右更正を取消す処分が随伴してい
た旨の主張はない。。)
三原告Bの本件通知処分取消請求の適法性
請求原因2(五)のうち本件更正請求が国税通則法所定の期間の経過後であること及びこ
れに係る不服申立手続においていずれも実体判断がされたことは当事者間に争いがない。
しかし被告が本件更正の請求及び異議申立てに対し、また、国税不服審判所が右に係る審
査請求に対しそれぞれ実体判断を示したからといつて、更正の請求の期間徒過によつて本
来不適法であつた本件更正の請求が適法となるいわれはない(現行法上は、被告もしくは
国税不服審判所長に右期間の徒過を宥恕する権限は与えられていない。従つて本件通。)

、、処分を取消したとしても処分庁としては本件更正の請求を却下するほかないのであつて
同原告には右取消しにより回復される法律上の利益がなく、右訴えは不適法である。
同原告は、被告が右期間徒過を主張することは信義則に反し許されないと主張するが、被
告の主張をまつまでもなく訴えの適法性に関しては裁判所が職権で調査すべき事項である
し、被告が実体判断をした一事で、右のような主張をすることが信義則違反となるもので
もなく、右主張は失当である。
四包括遺贈及び遺産の価額
1包括遺贈及び修正申告の内容
抗弁1(包括遺贈、同2のうち(一(修正申告に係る遺産の価額)及び(三(債務控)))

額)の各事実は当事者間に争いがない。
2富士銀行におけるEの預金
、、、証人Gの証言及びこれにより真正に成立したと認められる乙第二号証第三号証の一二
同証人の証言により原本の存在と成立が認められる乙第七号証の一ないし三、四四ないし
四六、四九、五三、
右乙第三号証の二及び証人Hの証言並びに弁論の全趣旨により原本の存在と成立が認めら
、、、、、、、、、、れる乙第七号証の四ないし九一二一四一六一七一九二一二三二五二七
二九、三〇、三二、三四ないし三七、三九、四二、第八号証の三、五、六、成立に争いの
ない乙第八号証の一の二、第一三号証によれば、次の事実が認められ、右認定に反する原
告Cの供述は措信できず、他に右認定を左右する証拠はない。
(一)富士銀行江戸川支店において、別表3の番号1ないし8の各仮名定期預金、同番
号9ないし11の各無記名定期預金及び同番号12ないし14の各仮名通知預金が各預入
日に設定されたが、同支店でこれら仮名、無記名の預金の取扱いの便宜のために作成して
いた期日帳では、右1ないし9の定期預金を「宇津木E」と題して一括し(乙第七号証の
四四、右番号10の定期預金は「C」と題する期日帳(同号証の四五)にそれぞれ記入)

ていた。
、、なお右期日帳の表題の氏名は現実に預金設定の手続に当たつた者を表わすものであつて
預金債権の帰属者と認定した趣旨ではない。
(二)右番号1ないし3の各仮名定期預金(合計九〇〇万円)の設定日に近接して、E
は三菱銀行江戸川支店の同人名義の普通預金口座から同年一月一四日に四〇〇万円、同年
二月二日に五〇〇万円(合計九〇〇万円)の払戻しを受け、当時、右設定額に見合う資金
を所有していた。
そして、富士銀行江戸川支店においても、右各仮名預金をEのものと認識して管理に当た
つていた。
したがつて、同人死亡後の昭和五〇年二月六日になされた原告Cの同預金の解約申込に対
しても、各預金の名義(仮名)との不合致は問題とせず、解約に応じている。
(三)前記番号4ないし8の各仮名定期預金(合計二〇〇〇万円)もEの申込を受け、
富士銀行江戸川支店の得意先課長代理G及びI課長がEから予約預りとして現金を受け取
り、同人の指定日に合わせて順次設定手続をとつたものである。
これに先立つて、Eは、右支店の同人名義の普通預金口座から右設定日に接着する同年二
月一四日と同月一五日に各五〇〇万円(合計一〇〇〇万円)の払戻しを受け、
さらに同月一六日に三菱銀行江戸川支店の同人名義の定期預金(番号八四三四三六八〇〇
七)元利合計一〇二七万〇七一九円(税引き後)を「他行(富士)借入金返済」との理由
で解約し、右設定額をまかなえる資金を当時確保していた。
(四)前記番号9及び11の各無記名定期預金(合計一二〇〇万円)も、Eの申込を受
けたGがEから現金を予約預りとして受取り、順次設定に当たつたものである。
一方、Eは、右設定日に接着する同月七日、右支店の同人の前記普通預金口座から一二〇
〇万円の払戻を受け、右設定額に見合う資金を当時確保していた。
(五)前記番号10の無記名定期預金及び同12ないし14の各仮名通知預金(合計三
〇〇〇万円)は、原告CがGに現金を予約預りとして交付し、その設定手続を指示したも
のであるが、右交付された現金は、右設定日の前日に原告CがEに代わつてE名義の定期
預金二口(預金番号一〇〇−二七三三及び九八−一七八九、額面合計三〇〇〇万円)を解
約し、払戻を受けた元利合計三一六八万八七九二円のうちの三〇〇〇万円であつた。
なお、Eは右解約の前日である一八日午後六時三〇分、急性心筋梗塞により国立病院多摩
センターに入院し、同月二四日午前七時一一分死亡したものである。
(六)原告Cは、E死亡後の同年一二月二日に右番号14の仮名通知預金を、同月二五
日に同12及び13の各仮名通知預金をそれぞれ解約した。
(七)国が原告らに対する相続税債権を徴収するため、富士銀行に対して提起した当庁
昭和五五年(ワ)第七八七五号差押債権取立請求事件において、同行は、前記番号9及び
11の各無記名定期預金が前記(四)の払戻金を原資とするEのものであること並びに同
番号10の無記名定期預金及び同番号12ないし14の各仮名通知預金が前記(五)の解
約払戻金を原資とするEのものであることをいずれも自白した。
以上の事実によれば、富士銀行江戸川支店における前記(一)の各預金はすべてEの遺産
と認められる。
そして、右番号1ないし11の各定期預金の相続開始日までの中途解約利率による既経過
利息を加算した額が四七〇一万七九九五円(別表3の評価額)であることは当事者間に争
いがなく、
これに同12ないし14の各通知預金合計二五〇〇万円を加算した七二〇一万七九九五円
は同人の遺産の価額に加算されるべきものである。
3三菱銀行におけるEの預金
証人Jの証言により真正に成立したと認められる乙第四、第五号証、証人Hの証言により
真正に成立したと認められる乙第六号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められ
る乙第二四号証の一、二、第二五号証、右乙第二五号証により原本の存在及び成立が認め
られる乙第八号証の四、七、八、一〇、証人Hの証言及び弁論の全趣旨により原本の存在
及び成立が認められる乙第八号証の九、一一ないし五一、前記乙第八号証の三並びに弁論
の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められ、他に右認定を左右する証拠はない。
(一)三菱銀行江戸川支店において、別表3の番号15ないし28の各無記名定期預金
が各預入日に設定されている。
(二)Eは昭和四九年六月ころ、右の支店長Kに対し、相続対策ならびに相続税対策の
ため既存の記名式定期預金二口、額面合計四四〇〇万円を解約したいと申し入れたが、同
支店長及び貸付係長Lから無記名定期の形ででも同支店内に右預金を留めるよう懇願さ
れ、
無記名定期預金に預け替えることで右懇願を応諾した。
(三)そこでEは同月一七日、右支店の実名の定期預金(額面一四〇〇万円、番号八四
三四五六八〇〇五)を解約し、その元利合計一四六〇万八九二八円(税引き後)のうち五
〇〇万円をLに交付して前記番号15及び16の各無記名定期預金を設定し、残余の九六
〇万八九二八円を同月一九日、同支店にある同人の前記普通預金口座に一旦預け入れた。
(四)Eは同月二六日、右普通預金口座から右九六〇万八九二八円の払戻しを受け、そ
のうち九〇〇万円をもつて、前記番号17ないし19の各無記名定期預金を設定した。
(五)ついでEは同年七月八日、同支店における同人名義の定期預金(額面三〇〇〇万
円、番号八四三四三六八〇〇四)を解約し、その元利合計三一三四万三六八二円(税引き
後)のうち一一〇〇万円をLに交付して、前記番号20及び21の各仮名定期預金を設定
し、残余の二〇三四万三六八二円は一旦受け取つた。
(六)前記(二)の懇願と応諾の席に立ち会つた同支店長及びLには、
Eがこの約束を違えなかつたことの記憶があるところ、同支店において同年七月九日(右
二〇〇〇万円余受領の翌日)から同月一五日までに設定された無記名定期預金は一〇口あ
るが、その中で前記番号22ないし28の各無記名定期預金(額面合計二〇〇〇万円)の
みが預金番号の上三桁を共通(八五〇)にしており、他の三口とは異つている。
また、東京国税局が昭和五三年八月二五日付けで右番号15ないし17、19ないし28
の各無記名定期預金(番号18の預金は当時既に解約されていた)を差し押えた際、原。

Cは相続人代表として、同年九月一九日付け文書をもつて、右支店に対し右被差押債権の
預金証書の再発行を求めた。
同支店でも、預け入れ当時の扱者などの記憶及び保存されていたメモ書などから、これら
の預金がEに帰属すると推定はできていたが、既発行の証書による二重払いの危険が解消
されていないこと及び右預金が相続財産として未分割であること等を理由に、証書の再発
行には応じなかつたが、右再発行の要求書を正式な証書紛失届と扱うことにした。
その後、右差押えに係る無記名定期預金については、原告Cの右申入れ以外に、権利者と
名のり出た者はいない。
以上の事実によれば、三菱銀行江戸川支店における前記番号15ないし28の各預金はす
べてEの遺産と認められる。
そして、右の15ないし28の各定期預金にその相続開始日までの中途解約利率による既
経過利息を加算した額が四五三九万二三〇三円であることは当事者間に争いがない。
原告らは、右番号11の無記名定期預金を被告が本訴でEの遺産と主張することは、更正
の期間徒過後であるから許されないと争うけれども、失当である。課税処分において示さ
れた課税標準または税額が右処分時において客観的にみて正当な数額であつたことを根拠
づける事実を主張することは、訴訟上の防禦方法の提出に過ぎず、右主張によつて新たな
課税処分が成立するものではない。したがつて、右事実主張は更正の期間による制約を受
けず、口頭弁論において随時提出できるものである。
4遺産の課税価格(総額)
以上により、Eの遺産の課税価格は、前記争いのない修正申告額四億三九六七万四八一九
円に別表1掲記の1ないし28の各預金の評価額合計一億一七四一万〇二九八円を加算
し、
債務控除額として争いのない一五〇三万七五〇六円を減算した五億四二〇四万七〇〇〇円
(千円未満切捨て)となるから、同表(3)の本件更正及び再更正に係る課税価格がこれ
を下回つていることは明らかである。
五本件更正に係る原告らの課税価格
1原告C
抗弁3(一(1(修正申告に係る取得財産の価額)及び(3(債務控除額)の各事実)))

当事者間に争いがない。しかし、同原告については、右のほか前記四4判示の各評価額合
計一億一七四一万〇二九八円の遺産のうち同原告の包括遺贈割合一〇〇分の九〇に当たる
一億〇五六六万九二六八円の受遺贈財産があるから、右取得財産の合計額から右債務控除
額を差し引いた四億八六三三万九〇九九円のうち千円未満を切り捨てた額(国税通則法一
一八条)が同原告の本来の課税価格であつて、右の範囲内である本件更正に係る課税価格
(別表1原告C・更正欄(3)は適法である。)
2原告A
抗弁3(二(1(修正申告に係る取得財産の価額)の事実は当事者間に争いがなく、))

れに前同様の理由及び方法(但し、同原告の包括遺贈割合は一〇〇分の四)で受遺贈財産
となる四六九万六四一一円を加えた二二二八万三四〇三円のうち千円未満を切り捨てた額
が同原告の本来の課税価格であるから、右の範囲内である本件更正に係る課税価格(別表
1原告A・更正欄(3)は適法である。)
3原告D、同B
抗弁3(三(1(修正申告に係る取得財産の価額)の事実は当事者間に争いがなく、))

れに前同様の理由及び方法(但し、同原告らの包括遺贈割合は各一〇〇分の三)で受遺贈
財産となる三五二万二三〇八円を加算した各一六七一万二五五二円のうち千円未満を切り
捨てた額が同原告らの本来の課税価格であるから、右の範囲内である本件更正に係る課税
価格(別表1同原告ら・更正欄(3)は適法である。)
六遺産分割調停の成立等
抗弁4(遺産分割調停の成立とこれによる更正の請求)の事実は、Eかもと申告外土地を
所有していたこと(請求原因2(二)同旨)を含めて当事者間に争いがない。そこで、請
求原因2(二)のうち本件越谷の土地の売買の点について判断する。
嘆願書と題する甲第四号証及び原告Bの本人尋問における供述には、同原告が本件越谷の
土地をEから昭和四七年五月一〇日、代金六六〇万円で買い受け、同月三一日六〇万円、
昭和四八年一〇月三〇日六〇〇万円を代金として支払つたが、右土地は区画整理中であつ
たため所有権移転登記ができなかつたとの趣旨の部分があり、これに副う「売買契約書」
と題した甲第五号証、代金授受の「証」と題した甲第六号証の一、二、昭和四七年五月三
一日六〇万円、昭和四八年一〇月三〇日六〇〇万円の各払戻しの記載がある原告B名義の
普通預金通帳(甲第一一号証)も存在し、成立に争いのない甲第一〇号証の一ないし三に
よれば、本件越谷の土地につき昭和四七年五月一三日受付をもつて、同月一二日売買予約
を原因と表示する原告B名義の所有権移転請求権仮登記が経由されている事実も認められ
る。これらによれば、一見、原告ら主張の売買が認められるかの如くである。
しかし、原告B本人尋問の結果によれば、右売買契約書と題する甲第五号証及び右預金通
帳はE死亡の一、二年後に同人の金庫から見付かつたというのであつて、買主であるはず
の原告Bが所持していたものではない。また、前記預金通帳の右六〇〇万円の払戻しの資
金となる昭和四八年九月二五日預け入れの五六六万四五〇〇円の調達方法についての同原
告本人の供述はあいまいなところ、同原告は昭和四六年に大学を卒業して信用金庫に就職
した(この事実は同原告本人尋問の結果により認められる)身であつて、右買受資金を。

していた旨の同原告の供述はたやすく信じられない。
そして、成立に争いのない乙第一一号証、第一二号証の一、二、第二六号証、証人Mの証
言、原告B本人尋問の結果(但し後記の採用しない部分を除く)並びに弁論の全趣旨によ
れば、
1昭和四五年ころ、原告B名義で本件越谷の土地上に木造瓦葺二階建の建物四棟が建築
され、他に賃貸されたことに関して、Eと原告Bは連名で昭和四七年一一月一日、春日部
税務署長に対し「土地の無償使用に関する申出書(乙第一二号証の一)を提出したが、」

名は右申出書の中で、本件越谷の土地はEが現に所有中であり、これを原告Bに同年一月
一〇日から無償で使用させることにしたが、このことにより特別の利益を与えまたは受け
るものでないこと、したがつて、Eについて相続の開始があつた場合等には、相続税等の
課税上は、この土地について原告Bは何らの権利も有しないものとして取り扱われても異
議がないことを確認している。
2Eは死亡に至るまで本件越谷の土地の固定資産税等を自ら負担していたし、原告Bも
含めて、原告らは相続税の申告及び修正申告の時点までは、本件越谷の土地がEの遺産に
含まれるものとして、右各書類を提出したし、その作成に関与した税理士Mに対しても、
原告らが右土地が遺産でない旨を告げたことはなかつた。
との事実が認められる。
右1ないし3の各認定事実に前記四3(二)で認定したようにEは相続税を脱れようと画
策していた事実を合わせて考えれば、右の甲第四、第五号証、第六号証の一、二、第一一
号証並びに前記仮登記の事実をもつてしても、原告ら主張の売買契約の成立を認めるには
足りず、他に右主張事実を認めるに足りる証拠はない。
以上のとおり、原告Bによる本件越谷の土地買受の事実は認められないから、本件申告土
地及び申告外土地はいずれもEの遺産であつたことになる。
七本件再更正における原告らの課税価格
1原告C
前記五1のとおり、遺贈により同原告の取得した財産の価額から債務控除額を差し引いた
額は四億八六三三万九〇九九円であるから、右金額から前記六の遺産分割調停により他に
帰属することとなつた別表2番号2ないし5の各土地の評価額(この額は当事者間に争い
がない)合計二九四二万二五七二円を差引いた四億五六九一万六五二七円のうち千円未。

を切り捨てた額が本件再更正における本来の課税価格である。
、(())したがつて右の範囲内である本件再更正に係る課税価格別表1原告C・再更正欄3
は適法である。
2原告D
前記五3のとおり、遺贈により同原告の取得した財産の価額は一六七一万二五五二円であ
るから、右金額に前記六の遺産分割調停により同原告に帰属することとなつた別表2番号
4の評価額三一三万〇五三三円を加えた一九六八万三一三七円のうち千円未満を切り捨て
た額が本件再更正における同原告の本来の課税価格である。
、(())したがつて右の範囲内である本件再更正に係る課税価格別表1原告D・再更正欄3
は適法である。
3原告B
前記五3のとおり、遺贈により同原告の取得した財産の価額は一六七一万二五五二円であ
るから、右金額に前記六の遺産分割調停により遺産として同原告に帰属することになつた
申告外土地の評価額合計七二〇万〇四六八円を加えた二三九一万三〇二〇円のうち千円未
満を切り捨てた額が、
本件再更正における同原告の本来の課税価格である。
したがつて、右の範囲内である本件再更正に係る課税価格は適法である。
4原告A
前記六の遺産分割調停は同原告の取得財産、あるいは課税価格(二二〇七万円)に変動を
生じさせなかつたから、同原告についての本件再更正が処分に当たらないことは前記二で
述べたとおりである。
八相続税額の計算
()()抗弁6相続税額の計算の後段相続税の総額を按分する際の小数点第二位未満の処理
の事実は当事者間に争いがない。
すでに判断したとおり、本件更正に係る課税価格(別表1各原告・更正欄(3)あるい)

本件再更正に係る課税価格(同・再更正欄(3)は適法であるから、これについて右の)

いない按分割合を用い、所定の方法で算定した各原告の納付すべき税額は同表同・更正欄
及び再更正欄各(10)の金額となる。したがつて、本件更正及び本件再更正は納付すべ
き税額においても適法である。
九本件加算税
1原告Cに対する本件重加算税
(一)前記四2及び3の認定事実、とくに本件各仮名及び無記名の預金の設定が、もつ
ぱらEの実名預金の払戻しもしくは解約による実名預金の解消という形で約一〇箇月の間
に集中的になされており、同人自身も三菱銀行江戸川支店長に対し右は相続税対策のため
であることを明言しているところからみて、Eは原告Cらが本件相続税を免れ易くする目
的で本件預金を設定したものと推認することができる。
右のような意図で設定された本件預金は、その仮名あるいは無記名性のゆえに、これがE
の遺産を構成するものであることを相続人あるいは受遺予定者に了知させる手だてが必要
であり、Eもこれについて当然配慮していたものとみるのが合理的である。
(二)前記乙第二四号証の一、証人Gの証言及びこれと弁論の全趣旨により真正に成立
したと認められる乙第七号証の四七によると、Eは富士銀行及び三菱銀行の各江戸川支店
に大口の預金を有し、その管理のために単身で右各支店に出向いていたが、昭和四九年春
ごろからは原告Cを同道して訪れるようになり、預金等の銀行取引に同原告を関与させる
態度に変つたことが、前記(四2(三)Gの注意を惹いている。)
(三)そして、前記四2(一(二)のとおり、)、
別表3の番号1ないし3の各仮名定期預金はEの資金によつてEが設定し、銀行側でも期
日帳によつてそのように管理していたものであるところ、原告CはEの死後にこれを解約
して、同金員を入手している。また、同(五(六)のとおり、同番号10及び12な)、

し14の無記名あるいは仮名の預金については原告Cが設定手続に関与し、そのうち番号
12ないし14の預金をEの死後に解約し、同金員を入手している。
また、前記四3(六)のとおり、原告Cは差し押えられた同番号15ないし17、19な
いし28の各無記名定期預金について、Eの相続人代表として預金証書の再発行を要求し
ている。
(四)Eは生前、株式会社桝屋宇津木商店(通称宇津木商店)の社長であり、原告Cは
その長男であつて、当時右商店の副社長として、Eの後継者の地位にあつたことは、原告
C本人尋問の結果及び前記乙第五号証によつて明らかである。
(五)右(一)ないし(四)の事実を合わせて考察すれば、原告Cは本件相続税申告の
際、本件預金がEの遺産として存在することを認識していたが、Eの「相続税対策」の意
図及びこれに基づく行為によつて、本件預金が仮名又は無記名で預け入れられていて、こ
れがEの遺産であることを通常の手段では確認し難い状態にあることをも認識し、この隠
ぺいされた状態を利用して、自ら本件預金に係る相続税を免れる意思で、これを受遺贈財
産から除外し、右相続税の申告に及んだものと推認することができる。
同原告の右所為は単なる不申告ではなく、自ら意図的に本件預金を隠ぺいして申告をした
のとなんら異るところはないから、右所為について重加算税を課する処分は正当である。
(六)同原告に対する重加算税の額を計算すれば、別表6のとおりであり、この計算は
同原告も争わないところである。
右によれば、本件再更正に伴う減額後の本件重加算税賦課の決定部分は適法である。
2その余の原告らに対する本件過少申告加算税
その余の原告ら三名の修正申告に係る納付すべき相続税額が別表1の各該当欄記載のとお
りであることは当事者間に争いがないところ、当該原告に対する本件更正に係る納付すべ
き相続税額は別表1当該原告・更正欄(10)のとおりであるから、これを右修正申告に
係る納付すべき相続税額との差額(千円未満切捨て。
())(。、別表1当該原告・更正欄11の五パーセントに当たる額国税通則法六五条但し
同法一一九条一項により百円未満切捨て)が本件過少申告加算税の額(同表1当該原告・
更正欄(12)である。)
したがつて、本件過少申告加算税賦課決定も適法である。
一〇結論
以上のとおり、原告Aの本件再更正の取消しを求める訴え及び原告Bの本件通知処分の取
消しを求める訴えはいずれも不適法であるから却下することとし、原告らのその余の請求
はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三
条一項本文を適用のうえ、主文のとおり判決する。
(裁判官山本和敏太田幸夫滝澤雄次)

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