弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴はこれを棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は「原判決を取消す被控訴人の請求はこれを棄却する訴訟費用は第
一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決並びに担保を条件とする仮執行免除
の宣言を求め被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の陳述は控訴代理人において控訴人は訴外Aを介して被控訴
人に対し本件物件を担保として金三十万円の借用方を申入れたところ被控訴人の都
合で取り敢えず金十六万円(但し費用等の名目で約三万円余を差引かれ金十二万八
千円を受取つた)を借受けたがその際残額金十四万円は一ヶ月内に貸与を受くるこ
とを約しそれまでは手形を入れて置くこととなり控訴人振出の被控訴人宛金額十六
万円支払期日昭和二十四年四月三日支払場所伏見某銀行なる約束手形を差入れたが
被控訴人の方では既に同年三月三日附契約証(甲第一号証)を作つておりこれは仮
契約であるからいずれ残額金を貸せば金十六万円のところを金三十万円に四月二日
の期日を五月二日とそれぞれ訂正すればよいなお期日になつて約束手形の書換えを
すれば貸して置くと言うことであつたから四月に入つて残金十四万円を借受けてか
ら本契約をすればよいと思つて右甲第一号証の契約証に調印したものである従つて
同号証は仮契約であつて残金十四万円の貸与を受けその金額が三十万円に達して初
めて本契約の効力を生ずるものであるから本件担保物件は借用元金三十万円の担保
に提供したものであつて残金十四万円の貸与がないかぎり未だ当初の借用金十六万
円だけでは被控訴人は右担保物件に対する請求権はないのである。
 また昭二十四年七月二十二日附誓約書(甲第二号証)は被控訴人の強迫によつて
作成したものであるから本訴においてこれが取消の意思表示をすると述べ被控訴代
理人は右主張事実を否認すると述べた以外は原判決事実摘示と同一であるからこと
にこれを引用する。
 証拠として被控訴代理人は甲第一、二号証同第三、四号証の各一、二を提出し原
審証人A同Bの各証言並びに原審鑑定人Cの鑑定の結果を援用し、控訴代理人は原
審鑑定人Cの鑑定の結果を援用し証人Aの訊問を求め甲号各証の成立を認めた。
         理    由
 先ず職権を以て本件控訴の適否について調査するに本件控訴状及び本件記録編綴
の控訴人の弁護士Dに対する委任状によれば昭和二十六年二月二十三日弁護士Dに
対し本件訴訟行為を為すに必要なる権限を授与してこれが訴訟代理を委任し同Dは
同日右控訴状を提出したものであることが明らかである。ところが被控訴代理人提
出にかかる本件記録編綴の昭和二十六年七月十六日附弁護士前田外茂雄作成の証明
願と題する書面の記載事項に対する京都弁護士会長中坊忠治の証明書と当裁判所に
顕著である昭和二十六年八月八日附官報第七三七四号(一六五頁)の掲載事項とを
照合するときは右Dは京都弁護士会所属会員(弁護士)であつたが同人は家宅侵入
罪により懲役四月(但し一年間刑の執行猶予)に処せられ(判決裁判所不詳)該判
決に対し上告中のところ昭和二十五年六月十三日上告棄却の判決があり確定したこ
と及びその後一ケ年余を経た昭和二十六年七月七日日本弁護士連合会においてDが
弁護士法第六条第一号(禁こ以上の刑に処せられた者)に該当する事由ありとして
弁護士名簿の登録を取消されたことが認められる。
 <要旨>そこで現に弁護士の職に在る者が弁護士法第六条所定の所謂欠格事由に該
当するに至つた場合において同法はその失職の時期について公証人法第十六
条国家公務員法第七十六条のような明確な規定を設けていないけれども、裁判官
(日本国憲法第七十八条裁判所法第四十八条)検察官(検察庁法第二十五条)若く
ほ人事官(国家公務員法第八条)のような特別の身分保障がありその罷免について
は単に欠格事由の発生のみに留らず更に他の特定の機関の審判を要する官職と異り
弁護士についてはこのような身分保障がないばかりでなく弁護士法第一条乃至第三
条に規定するようにその職務の公共性と社会性とに鑑み寧ろ公証人及び一般国家公
務員と同じく欠格事由の発生と同時に当然その職を失うものと解するを相当とす
る。勿論弁護士法第八条によれば弁護士となるには日本弁護士連合会に備えた弁護
士名簿に登録されなければならないのであつて登録によつてその職を得ると同じよ
うに一見して登録の取消によつてその職を失うようにも見えるけれども同法第十七
条によれば弁護士が同条所定の欠格事由の一に該当するに至つた場合において日本
弁護士連合会は本人又は所属弁護士会の請求をまのまでもなく当然直ちにその者の
弁護士名簿の登録を取消さなければならないのであつてその間日本弁護士連合会は
何等考慮の余地なく又は他の審査機関の判定をも要しないのであつて当然機械的に
登録を取消さなければならないのである。従つて此の規定の趣旨は登録の取消を以
て失職の要件とし登録の取消に至るまでその職を保たしめようとしたものではなく
単に失職の公示方法としたものであると解するを相当とする。
 そうすると本件控訴人の訴訟代理人である弁護士Dは前示のように有罪の確定判
決により昭和二十五年六月十三日弁護士たるの資格を失うと同時に弁護士の職を失
うに至つたものといわなければならない。而して民事訴訟法第七十九条の規定によ
れば法令により裁判上の行為を為し得る代理人の外は弁護士でなければ訴訟代理人
となることができない(但し簡易裁判所の許可ある場合を除く)ので弁護士の職を
失つたDが控訴人の代理人として提起した本件控訴は不適法であつて本来なればこ
れを却下すべきであるが控訴人はその後昭和二十六年七月十七日弁護士藤野慶三を
訴訟代理人に選任し(本件記録編綴の委任状参照)同弁護士は控訴人の訴訟代理人
として昭和二十六年九月十三日の本件口頭弁論期日に出頭し控訴状に基き控訴の趣
旨及び原判決事実摘示の通り原審における口頭弁論の結果を陳述し次いで同年十二
月十八日の口頭弁論期日において従前の口頭弁論の結果を陳述しているので控訴人
及びその訴訟代理人たる弁護士藤野慶三は前記Dによりなされた瑕疵ある訴訟行為
を追認したものということができるから結局本件控訴は適法にして有効であるとい
わなければならない。
 次に本案について判断するに本件当事者間に昭和二十四年三月三日消費貸借が成
立したことは争いのないところである被控訴人は金十六万円を貸与したと主張し控
訴人は現実に授受されたのは金十二万八千円であつてその後金四万円を元金の内払
として弁済したと主張するが控訴人の主張自体によつてもなお金八万八千円の元金
債務が残存することは明らかである殊に成立に争いのない甲第一、二号証並びに原
審及び当審証人Aの証言を綜合するときは控訴人は当初約した昭和二十四年四月二
日の弁済期に右借用金の返済をしないで被控訴人は対しこれが支払の猶予を求め延
期さした同年八月四日の期日を経過してもなお債務の弁済をしていない事実を認め
ることができる。
 そうすると本件係争不動産が右消費貸借上の債務の担保として控訴人より被控訴
人に売渡されたことは当事者間に争いのないところであるから右債務の残存するか
ぎりは売渡担保の目的において控訴人は被控訴人に対し本件物件の所有権を移転し
且つその移転登記をする義務がある只被控訴人は単純に所有権の移転を受けるので
ないから担保の目的の範囲内でこれを処分し得るに過ぎないのであつてその担保権
の実行方法等は当事者間に定められた約定によつてこれを行うの外はない。
 なお前示成立に争のない甲第一、二号証並びに原審及び当審証人Aの証言を綜合
すると控訴人は前記消費貸借による債務不履行の場合は直ちに被控訴人に本件家屋
を明渡すことを特約した事実を認めることができるから履行期に債務全部の履行が
なくその後も債務が残存している本件においては控訴人は右約定に基き被控訴人に
対し右家屋明渡義務あることもまた当然である。
 控訴人は本件物件は被控訴人より金三十万円を借受けるためその担保に供したも
のであつて被控訴人の都合で取り敢えず金十六万円(実際受取金十二万八千円)を
借受けたが残額十四万円は一ケ月内に貸与を受けることを約しその際甲第一号証に
調印したがそれは単なる仮契約であつて残金十四万円の貸与がないかぎり右金十六
万円だけでは被控訴人は右甲第一号証による担保物件に対する請求権を有しない旨
また甲第二号証の誓約書は被控訴人の強迫によつて作成したものであるから本訴に
おいてこれが取消の意思表示をすると主張するけれども控訴人の立証を以てしては
右主張事実を認めることができないからこれを採用しない。
 然らば被控訴人の本訴請求はすべて正当であつてこれを認容した原判決は相当で
あり本件控訴は理由がないからこれを棄却すべく尚本件については仮執行免除をな
すを相当とせないので此の点に関する控訴人の申立はこれを却下するよつて民事訴
訟法第三百八十四条第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 田中正雄 判事 神戸敬太郎 判事 藤井政治)

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