弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人谷口義弘の上告理由第一点について。
 被上告人から上告人に対する本訴請求の原因は、被上告人と上告人間の賃貸借終
了による本件家屋の明渡と右原状回復義務の不履行による賃料相当損害金の支払請
求であり、しかも本件訴訟において本件家屋について被上告人と上告人との間に、
結局、賃貸借の成立していたことを上告人において認めていることは原判決および
その引用する第一審判決の事実摘示および理由の記載により明らかである。それゆ
え、被上告人が、賃貸借の成立当時はもちろん、本件賃貸借の解除の時に本件家屋
の所有者であることを必要としないから、所論は、この点ですでに失当である。の
みならず、原判決挙示の証拠によれば、被上告人が本件家屋の所有者であることを
認めるに十分であり、この点の所論は、いずれにしても、採用しがたい。
 また、所論は、原判決が被上告人が昭和三〇年五月一三日到達の内容証明郵便を
もつて無断転貸を理由として本件賃貸借契約を解除する旨意思表示をしたことは当
事者間に争いがない旨判示したのは不当である旨主張するが、原判決の引用する第
一審判決の事実摘示によると、被上告人は第一審において、「原告(被上告人)は
被告A(上告人)に対して昭和三〇年五月一三日到達の内容証明郵便をもつて転貸
を理由に本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした」旨主張したのに対し、上
告人において、「昭和三〇年五月一三日原告(被上告人)主張の内容証明による意
思表示を受けたことは認める」旨答弁していることが明らかであるから、原判決の
記載には、所論のような違法はない。
 さらに、上告人は、右内容証明による意思表示が不明であつて解除の意思表示は
無効である旨主張するけれども、前記内容証明による解除の通知書には転貸により
解除する旨の意思表示がなされていることは、前記のとおり、当事者間に争いがな
いのであり、このような解除の意思表示を不特定と解することはできず、所論は、
独自の見解として、採用しがたい。
 所論は、いずれも、採用しがたい。
 同第二点について。
 原判決挙示の証拠によれば、原判決の認定した事実を容認することができ、右認
定事実のもとにおいては、上告人と訴外Dの間の旅館共同経営契約にもとづき、上
告人は右Dをして本件家屋を自己と対等の立場において右営業に使用せしめて旅館
営業上独立に占有させたものとの原判決の判断は十分肯認することができ、したが
つて、これをもつて民法第六一二条第二項の解除の原因となる旨の原判決の判断は、
当審も正当としてこれを是認できる(第二小法廷判決昭和二八年一一月二〇日民集
七巻一一号一二一一頁参照)。
 所論は、結局、原審の専権に属する証拠の取捨選択、事実の認定を非難するに帰
し採用しがたい。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    田   中   二   郎

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