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平成11年(ミ)第13号 会社更生手続開始申立事件(平成11年(モ)第1496
8号,平成13(モ)第98号) 
          主       文
 1 本件会社更生手続開始の申立てを棄却する。
 2 本件保全処分の申立て及び同保全管理命令の申立てをいずれも却下する。
 3 申立費用は,申立人らの負担とする。
          理       由
第1 事案の概要
   本件申立ては,会員制ゴルフクラブを経営する会社に対して,会員らが会社
更生手続の開始決定を求めて申立てをした事案である。
   調査委員A作成の調査報告書(補充報告書(3通)及び調査報告書添付の公
認会計士B作成の平成12年3月21日付け調査報告書を含む。)及び記録によれ
ば,次の事実が認められる。
 1 当事者
  (1) 被申立人は,昭和36年12月5日に設立された資本金10億円の株式会
社であり,ゴルフ場の経営及びその付帯事業を主な事業目的とし,千葉県市原市内
に会員制ゴルフクラブである浜野ゴルフクラブを開設して運営している。
  (2) 申立人らは,いずれも被申立人に入会保証金を預託して浜野ゴルフクラブ
に入会したゴルフ会員であって,合計すると被申立人の資本金の10分の1以上に
当たる預託金返還請求権を有する債権者である。
 2 親会社についての和議手続の開始
   被申立人は,国内最大のゴルフ場運営会社である日東興業株式会社(以下
「日東興業」という。)の100パーセント子会社であるが,親会社である日東興業
が,バブル期に行った金融機関からの借入について,バブル崩壊による地価の暴落
で担保不足が生じ,メインバンクである株式会社あさひ銀行(以下「あさひ銀行」
という。)から追加担保を求められたことから,平成5年1月27日,あさひ銀行
を債権者,日東興業を債務者として,浜野ゴルフクラブのゴルフコース敷地及びク
ラブハウスに対し,極度額200億円の共同根抵当権を設定し,その旨の登記を経
由した。日東興業は,ゴルフ場の入場者数の減少による事業収益の悪化や預託金の
償還期が一斉に到来したことなどから,急速に経営が悪化し,平成9年12月25
日,東京地方裁判所
に和議手続開始の申立てを行い,平成10年7月3日,和議開始決定を受けた。そ
の後,あさひ銀行から和議条件の同意を取り付けるために,平成11年2月2日,
被申立人,日東興業及びあさひ銀行の3者間において,日東興業のあさひ銀行に対
する借入金債務235億8800万円余のうち,59億6459万4000円を被
申立人が自己の債務として負担し,あさひ銀行に対し,平成13年から平成25年
までの間に分割して弁済する旨の債務弁済協定が締結された(以下「本件債務弁済
協定」という。)。
   申立人らは,平成11年8月4日,前記の極度額200億円の根抵当権の設定及
び本件債務弁済協定の締結の各行為が詐害行為に当たるとして,日東興業及びあさ
ひ銀行を被告として,東京地方裁判所に詐害行為取消訴訟を提起し,現在も係属中
である。
 3 被申立人の財産状況
   被申立人の申立日現在(平成11年11月9日)の財産の状況は,修正貸借
対照表(基準日精算表)上は,資産総額約129億円,負債総額約184億円とな
っている。資産のほとんどは,浜野ゴルフクラブの敷地及びクラブハウス等の施設
であり,前記貸借対照表上は,これらの資産は取得原価で計上されていることか
ら,これらについての評価替えを行うと,総資産額は前記の半分程度になることが
見込まれる。他方で,負債は,会員預託金の合計約112億円と本件債務弁済協定
に基づく約59億円の支払債務に大別される。したがって,仮に本件債務弁済協定
が詐害行為として取り消されたとしても,被申立人は債務超過の状態にあり,この
ことは現在においても妥当する。
 4 浜野ゴルフクラブの収益状況等
   浜野ゴルフクラブの会員数は,1600名弱であるが,会員預託金債務につ
いては,本件申立時に10年の据置期限が経過し,すべての弁済期が到来してい
る。被申立人は,平成11年7月以降,名義書換に応じる際には預託金を入会後1
0年間据え置くことを条件としており,現在,約400名について期限の延長がな
されている。浜野ゴルフクラブの経営は順調に利益を上げており,平成12年度の
売上げは約10億円,営業利益は約1億7000万円となっている。浜野ゴルフク
ラブの会員権の市場価格は,現在,約270万円であり,被申立人に対して預託金
の返還請求をしている者は数十名程度にとどまっている。
 5 和議手続の履行及びスポンサー契約の締結
   日東興業の営業も順調であり,平成13年度の営業利益は約4億円で,日東
興業グループ(被申立人を含む。以下同じ。)全体での営業利益は約10億円とな
っており,和議計画に基づく平成13年9月の第1回の弁済も全額履行している。
   さらに,日東興業及びその関連会社(ただし,被申立人は契約当事者ではな
い。)とゴールドマン・サックス証券会社及びその関連会社(以下,あわせて「ゴ
ールドマン・サックス」という。)との間で,平成13年11月14日,ゴールド
マン・サックスが日東興業グループを再建することを目的とした契約(以下「スポ
ンサー契約」という。)を締結し,ゴールドマン・サックスは,日東興業及び関連
会社の支配的株式(日東興業については100パーセント)を取得した。
   スポンサー契約は,和議条件を基本として日東興業グループ全体を一体のも
のとして早期再建を図ることを目的としており,その基本方針は以下のとおりであ
る。
   ① 金融機関債権者の日東興業グループに対する債権の買取その他の手段に
より,同グループの弁済義務を軽減し,同グループをして,その事業活動に基づく
キャッシュフローで無理なく債務弁済ができる会社とする。
   ② 金融機関その他の債権者から譲り受けた日東興業グループに対する債権
は,日東興業グループ再建の目的に基づき処理する。
   ③ 日東興業グループに資金不足等のおそれがあるときは,融資その他の方
法による資金投入等あらゆる合理的手段により,同グループの経営の安定的・健全
な発展を図る。
   ④ 日東興業グループの株式は,日東興業グループの再建が完了するまでは
原則としてゴールドマン・サックスが保有するものとする。
   ⑤ 日東興業グループの国内の全ゴルフ場(浜野ゴルフクラブを含む。)の
一体性を維持して経営を行い,その趣旨に外れるゴルフ場の個別売却をしない。
   ⑥ ゴールドマン・サックスは,浜野ゴルフクラブを含む日東興業グループ
のゴルフ場の会員のプレー権を以下の方法により確保する。すなわち, ア 会員
に対し追加出資金等不当な資金の拠出を義務づけない。
     イ 合理的な年会費の改訂を除き,年会費を不当に値上げしない。
     ウ ゴルフ場の各理事会の承認を得ずに不当な会員募集を行わない。
     エ 正当な理由なくして又は規約によらずして,会員のプレー権を剥奪
しない。
     オ 和議条件に基づき設置された監督機関の権能と権限を尊重する。
    ゴールドマン・サックスは,前記の再建の基本方針について,全会員に対
して通知を発出して説明を行うとともに,日東興業グループに対する金融機関の債
権の買取交渉を鋭意進めており,平成14年3月6日,日東興業グループの最大の
債権者であるあさひ銀行から,同銀行の日東興業グループに対する全ての債権を取
得し,この中には前記の極度額200億円の根抵当権及び本件債務弁済協定に基づ
く債務も含まれている。これらの債権の買取交渉が今後さらに進展して日東興業グ
ループに対する金融機関からの債権回収の圧力が緩和することにより,日東興業グ
ループの経営の健全化が図られていくことが見込まれる。
    なお,ゴールドマン・サックスからは,浜野ゴルフクラブは,日東興業グ
ループにおける看板ゴルフコースであり,日東興業グループ全体の再建のために必
要不可欠であり,仮に被申立人について会社更生手続が開始され,日東興業グルー
プ全体の再建計画から外れるようなことがあれば,日東興業グループ全体の再建計
画にも大きな影響が生じるとの懸念が示されている。
第2 当裁判所の判断   
 1 被申立人は,前記のとおり,債務超過の状態にあると認められる(なお,支
払不能については,前記のとおり,ゴールドマン・サックスが本件債務弁済協定に
基づく債権を取得したこと及び預託金返還債務は会社の経営が存続し,会員が継続
的にプレーする権利が維持され続ける限り顕在化することのない潜在的な債務であ
ることにかんがみると,被申立人が支払不能の状態にあるとは認められない。)。
 2 ところで,会社更生法による更生手続は,企業の解体換価による社会経済的
損失を防止するという公益上の理由から,窮境にあるが再建の見込みのある株式会
社について,租税債権や担保権をも手続に取り込み,商法の規定を待たずに資本の
減少や新株の発行を可能とするなど,会社をめぐる関係人の権利を大幅に制限し,
それらの犠牲の下で多大な費用と時間,労力をかけてその事業の維持更生を図る強
力な再建手続であり,このような会社更生手続の特質に照らせば,同手続は,これ
によって再建を図る必要性のある場合にのみ開始されるべきである。しかるとこ
ろ,既に認定したとおり,被申立人の親会社である日東興業について和議手続が進
められてきたところ,今般,和議条件を基本として,ゴールドマン・サックスがス
ポンサーとなって被申
立人を含む日東興業グループ全体の再建を支援する枠組みが作られたこと,日東興
業及び被申立人の営業はこれまでのところ順調に推移してきており,ゴールドマ
ン・サックスが既に最大の債権者であるあさひ銀行の日東興業グループに対する債
権の買取りを了しており(この中には本件債務弁済協定に基づく債権も含まれ
る。),さらに金融機関の債権の買取交渉が進展することにより,金融機関からの
回収圧力が緩和され,再建に弾みがつくものと考えられること,特に浜野ゴルフク
ラブは日東興業グループの看板となるゴルフクラブであり,グループ全体の再建に
おいて重要な位置を占めるものであるから,スポンサーとしてもその再建に最大限
の力を注ぐものと見込まれること,ゴールドマン・サックスは再建に当たっては会
員のプレー権を確保するこ
とを基本方針として明言しており,スポンサーの支援の下に強固な再建の枠組みが
作られていることから,今後,浜野ゴルフクラブの多数の会員が一度に退会届出を
し,預託金の返還請求をすることは考え難いなどの事情が認められるところであ
る。
   他方で,会社更生手続が開始された場合には,ゴールドマン・サックスが進
める再建の前提が崩れるために、その再建の枠組みは大きく影響を受け,いたずら
に混乱を招くのみならず,状況によっては新たなスポンサーを選定することが必要
となり,また,会員の権利について現状よりも不利益な取扱いを余儀無くされるに
至ることも予想されるところである。
 3 してみると,被申立人は,日東興業の100パーセント子会社として,現
在,和議手続による再建途上の同社と共に自主再建の途を歩んでおり,今般,有力
企業がスポンサーとなることが決まり,具体的に再建の目処が立っているのであっ
て,被申立人の再建は,日東興業グループの和議手続による再建の一環として再建
されることが債権者の一般の利益に適合するというべきである。
   したがって,既に述べた会社更生法の制度趣旨に照らすと,本件会社更生手
続開始の申立ては,会社更生手続開始の条件を満たさないものというべきであっ
て,会社更生法38条4号に準じて,棄却すべきである。また,同手続の開始を前
提とする本件保全処分の申立て及び本件保全管理命令の申立ても必要性がないもの
として却下すべきである。
 4 よって,本件会社更生手続開始の申立ては理由のないものとして,これを棄
却し,本件保全処分及び本件保全管理命令の各申立てはいずれも却下することと
し,主文のとおり決定する。
   平成14年3月18日
      東京地方裁判所民事第8部
           裁判長裁判官   大 谷 禎 男
              裁判官   永 野 厚 郎
              裁判官   中 山 誠 一

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