弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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            主       文
    被告人を懲役2年6月に処する。
    未決勾留日数中220日をその刑に算入する。
    押収してあるライター1個(平成13年押第49号の1)を没収する。
            理       由
(罪となるべき事実)
 被告人は,かねて定職に就けないことなどに不満を抱いていたが,その不満を
はらすべく,
1 平成13年4月16日午後1時45分ころ,Aほか22名共有にかかる岐阜県大
野郡a村大字b番の山林において,枯れ草に所携のライター(平成13年押第4
9号の1)で点火して火を放ち,同山林及びB所有にかかる同村大字c番dの山
林のうち合計約4200平方メートルを焼燬し,
2 同日午後1時48分ころ,Cほか17名共有にかかる同村大字e番の山林にお
いて,枯れ草に前記ライターで点火して火を放ち,同山林のうち約3800平方
メートルを焼燬し,
もって,他人の森林に放火したものである。
(証拠の標目)
省略
(補足説明)
1 弁護人は,「被告人が,判示日時,場所において枯れ草に点火した事実は認
めるが,判示1及び2のいずれの放火現場も,道路と森林の間にある法面であ
り,森林法に規定する森林には該当しないし,被告人は,放った火が各法面の
周囲の森林に燃え移ることは予測していなかったので,森林放火の故意がな
かった」旨主張するので,以下検討する。
2 写真撮影報告書(甲2),実況見分調書(甲3,4)等関係証拠によると,以下
の事実が認められる。
 (1) 判示1及び2の各放火現場(以下,順に「第1現場」,「第2現場」という)は,
いずれも広大な山林の中を通るアスファルト舗装された林道に沿った傾斜
地で,林道を引く際に人工的な切取りによって林道の上方向に造られた法
面である。
 (2) 第1現場の法面は,標高900メートル付近に位置し,その斜度は約48度
であり,その範囲は台形に近い形を呈していて,その下辺部分は林道に沿
っており,同法面の上辺,左辺,右辺より外の部分及び下辺の林道を挟ん
だ向かい側の部分には,いずれも杉,松等が密集して生育する雑木林が極
めて広範囲にわたって広がっているが,上記法面自体には樹木は生育して
おらず,長さ30センチメートルくらいまでの枯れ草等に一面に覆われてい
た。上記法面の下辺の長さは六,七十メートル,上辺の長さは四,五十メー
トルで,同法面の高さすなわち林道から上方の雑木林までの距離は最大で
も約17.2メートルであった。
 (3)第2現場の法面は,標高およそ800メートル付近に位置しており,その斜
度は約50度であり,林道沿いに相当長い距離にわたって続いている。同法
面の上辺より上の部分及び下辺の林道を挟んだ向かい側の部分には,い
ずれも杉,松等が密集して生育する雑木林が極めて広範囲にわたって広が
っているが,上記法面は,概ね長さ30センチメートルくらいまでの枯れ草に
一面覆われていた。もっとも,上記法面自体にも一部点々と松とみられる樹
木の若木が生育している部分がある。第2現場付近において,林道から上
方の雑木林までの距離は,最大でも約10.6メートルであった。
3 前項の認定事実を総合すると,第1現場,第2現場の法面は,いずれもかなり
の標高を有する山中に位置し,枯れ草等に一面に覆われ,その上方及び下方
等を極めて広範囲にわたり広がる雑木林に囲まれており,いずれの法面にお
いても,上方の雑木林と下方の雑木林の距離は,十数メートルにすぎず,各法
面の面積は,周囲の雑木林の面積に比べると,わずかな割合を占めるにすぎ
ないと認められ,このような各法面自体の状況,周囲の土地の状況,周囲の土
地と各法面との面積比ないし位置関係等の諸事情に照らすと,各法面に放火
することと,周囲の雑木林の樹木に直接に放火することは,その危険度におい
てなんら差がないというべきであるから,各法面は,その周囲に極めて広範囲
にわたり広がる雑木林の一部とみるべきであり,各法面のみを隣接部分から
切り離して森林に該当しないということはできず,全体として,森林法に規定す
る森林に該当すると解するのが相当である。
4 そして,被告人は,森林の一部である第1現場及び第2現場の法面に,昼間,
それらの状況を認識して火を放ったものであるから,被告人の行為が森林放
火に該当することはもちろん,故意に欠けるところはない。
(法令の適用)
1 罰条
  包括して森林法202条1項
2 未決勾留日数の本刑算入
  刑法21条
3 没収─押収してあるライター1個(平成13年押第49号の1)について
  刑法19条1項2号,2項本文(判示の森林放火の用に供した物で被告人以外
の者に属しない)
3 訴訟費用の不負担
  刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
 被告人は,仕事が見つからない鬱憤を晴らそうと考え,空気の乾いた日の昼過
ぎころ,山林の中に引かれた林道を自動車で移動しながら,数分間のうちに,森
林の一部である法面2か所において,林道沿いに一面に生えている枯れ草に放
火したものであり,その後,各法面が見渡せる場所に移動して火が燃え広がる様
子を眺めるなどしたというのであって,犯行動機に酌量の余地はなく,犯行態様
は非常に危険で,執拗,悪質なものである。いずれの放火現場においても,最大
約20名の人員による消火活動により約1時間かけてようやく鎮火したものの,焼
燬面積は合計約8000平方メートルと相当の広さに及んだものであって,付近に
は重要文化財を有する寺もあり,周辺社会に与えた不安は大きく,また,焼燬し
た樹木も各数十本に上り,経済的損害も軽視できないが,各森林所有者らに対し
てなんらの慰藉の措置もとられていない。これらによると,被告人の刑事責任は
重い。
 他方,本件犯行は計画的とまではみられないこと,被告人がそれなりの反省の
態度を示していること,被告人の母が被告人を指導,監督する旨誓っていること,
被告人にはこれまで10年間以上前科がないことなど,被告人のために酌むべき
事実も認められるので,これら一切の事実を総合考慮して,主文の刑を科すこと
とする。
 よって,主文のとおり判決する
(求刑 懲役3年6月,没収)
  平成14年2月21日
    岐阜地方裁判所刑事部
           裁判長裁判官   河   村   潤   治
               裁判官 古   閑   美 津 惠
              裁判官宮   崎   朋   紀

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