弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
原判決を取消す。
被控訴人が昭和五二年八月二七日付で控訴人に対してなした原判決添付別表(一)
の更正額欄記載の物品税の更正処分中同表の申告額欄記載の金額を超える部分並び
に同表の加算税額欄記載の各加算税の賦課決定処分はいずれもこれを取消す。
訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文同旨。
第二 主張
当事者双方の主張は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示のとおり(但し、
原判決五枚目裏)行目「二重加税」を「二重課税」と改め、九枚目表五行目「別表
1」及び一〇枚目裏九行目「別表一」をそれぞれ「別表第一」と改める)であるか
ら、その記載を引用する。
一 控訴人
1 憲法八四条は、「あらたに租税を課し又は現行の租税を変更するには、法律又
は法律の定める条件によることを必要とする。」と規定する。ところが、物品税法
には、古物商が古物を販売したことに課税を認める規定はない。同法三条一項は、
物品税の性質及び沿革からして、右課税の根拠規定となるものではない。したがつ
て、本件処分は、違憲であり、無効であるか又は取消されなければならない。
2 また、憲法八四条の定める租税法律主義は、単に形式的に租税を課しあるいは
これを変更するについて法律又は法律の定める条件によることを必要とするという
だけでなく、課税方式、課税率、納税義務者などの点で公平・公正であることをも
当然内容としているものである。ところが、物品税法の、第一種の物品に対する課
税上の取扱いと第二種の物品に対するそれとの間には、次のような重大な不合理が
存し、その不合理は著しく課税における公平・公正の原則に反し、結局憲法八四条
の定める租税法律主義に反する。すなわち、物品税法によれば、同じく貴石、貴金
属、べつこう等を用いたものであつても、それが身辺用細貨類である場合は第一種
の物品とされるのに対し、時計類である場合は第二種の物品とされるが、第一種の
物品に対しては小売課税方式がとられるのに対し、第二種の物品に対しては製造場
移出課税方式がとられるから、同じように貴石等を用いた製品でありながら、時計
類の場合には製造場移出の際に一度課税されるだけであるのに対し、身辺用細貨類
の場合には小売のたびごとに課税されることになるのである。しかし、一般に、消
費者は、貴石等を用いた製品については、その美的・経済的価値に着目して購入し
あるいは売却するのであつて、それが身辺用細貨であるか時計であるかといつた製
品の種類は問題としないから、右のように製品の種類によつて課税方式を異にする
ことにはなんら合理性がない。したがつて、このような不合理な物品税法の規定に
則つてなされた本件処分は違憲であり、無効であるか又は取消されなければならな
い。
二 被控訴人
右一の1、2の主張はいずれも争う。
第三 証拠(省略)
○ 理由
一 当裁判所も、控訴人の本訴請求を失当として棄却すべきものと判断する。その
理由は、控訴人の当審での主張に鑑み次のとおり説示を付加するほか、原判決の理
由のとおり(但し、原判決一五枚目表六行目「小数」を「少数」と、同裏九、一〇
行目「消費のごとに」を「消費のたびごとに」と、一六枚目裏一一行目「現行二五
六条」を「現行一五六条」とそれぞれ改める)であるから、その記載を引用する。
1 控訴人は、物品税法には古物商が古物を販売したことに課税を認める規定はな
い旨主張する。
しかし、物品税法三条一項の「第一種の物品の販売業者」の中には古物商も含ま
れ、同条同項の「小売」の中には古物を消費者に販売する場合も含まれるものと解
すべきであるから、古物商は、消費者に対し古物たる第一種の物品を販売した場合
には、他の課税要件をみたすかぎり、右規定により、物品税の課税を免れることは
できない(最高裁判所昭和四七年一二月一九日第三小法廷判決・訟務月報一九巻四
号一五七頁参照)。控訴人は、右規定は右の場合の物品税課税の根拠規定たりえな
いと主張するが、独自の見解であつて採用に値しない。
したがつて、控訴人の前記主張は理由がない。
2 控訴人は、また、物品税が同じ貴石等を用いた製品を製品の種類によつて第一
種の物品と第二種の物品に分け、前者に対しては小売課税方式、後者に対にては製
造場移出課税方式というふうに課税方式を異にしているのは不合理である旨主張す
る。
しかし、物品税法別表「課税物品表」は、貴石、貴金属等を用いた製品を、控訴人
が主張するように製品の種類によつて第一種の物品と第二種の物品とに分けている
のではなくして、当該製品中の貴石、貴金属等の占める割合が極めて高いもの(物
品税法基本通達別表課税物品の取扱い、第一種の物品共通事項2によれば、当該物
品に使用されている貴石、貴金属等の価格又は数量が当該物品の総価格又は総数量
の全部又は大部分(おおむね五〇パーセントを超えるもの)であるもの)を第一種
の物品たる「貴石製品」、「貴金属製品」等としており、物品税法別表「課税物品
表の適用に関する通則」三イは、同一物品が第一種の物品に該当すると同時に第二
種の物品にも該当する場合にはこれを第一種の物品とすることとしているのであ
る。したがつて、貴石、貴金属等を用いた身辺用細貨類は、通常第一種の物品に該
当することが多いであろうが、それは身辺用細貨類であるがゆえに第一種の物品と
されるのではなくして、右の「貴石製品」、「貴金属製品」等に該当するから第一
種の物品とされるのであり、また、貴石、貴金属等を用いた時計類も、それが右の
「貴石製品」、「貴金属製品」等に該当する場合には第一種の物品とされるのであ
る。そして、第一種の物品がその素材的価値に重きを置いて購入され、鑑賞・蓄財
の対象となることが多く、それゆえに使用による減価は少なく、流通の対象となる
ことが多いものであるのに対し、第二種の物品はその使用価値にも或る程度重きを
置いて購入され、それだけに日常使用されることも多く、それゆえに使用による減
価は大きく、転々流通することは少ないものであるところから、物品税法はこの両
者を区別し、前者に対しては小売課税方式、後者に対しては製造場移出課税方式と
いう相異なる課税方式を採用しているのであつて、これには十分な合理性が存す
る。なお、この点は、原判決も詳細に説示するところである。
したがつて、控訴人の前記主張も理由がない。
二 よつて、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却する
こととし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のと
おり判決する。
(裁判官 今中道信 露木靖郎 下司正明)

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