弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
本件仮処分の申立てを却下する。
申立て費用は債権者の負担とする。
       理   由
第一 当事者の求めた裁判とそれぞれの主張
一 債権者は、「債務者は、別紙目録記載の包装容器を販売、譲渡、引渡しをして
はならない。」との裁判を求め、債務者は、主文同旨の裁判を求めた。
二 債権者の主張は、「仮処分命令申請書」、平成六年一一月一六日付主張書面、
平成六年一一月二四日付主張書面に記載のとおりであり、債務者の主張は、答弁
書、平成六年一一月一六日付準備書面、平成六年一一月二五日付準備書面、平成六
年一一月二九日付準備書面に記載のとおりであるから、いずれもこれを引用する。
第二 当裁判所の判断
一 債権者は、債務者の販売するイ号製品(別紙目録記載の包装容器)が、債権者
の販売にかかる本件製品の形態の模倣であり、不正競争防止法二条一項三号にいう
「他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡」している場合に当たるものと主張す
る。
二1 ところで、不正競争防止法二条一項三号によって保護を受けることができる
のは、他人の商品が「最初に販売された日から起算して三年を経過したものを除
く」ものであるところ、債務者は、債権者の本件製品は、最初に販売された日から
起算して三年を経過した製品であるから、不正競争防止法による保護の対象になら
ないと主張し、債権者は、右債務者の主張を争うので、以下検討する。
2 右不正競争防止法二条一項三号の「最初に販売された日」にいう「販売」と
は、利益を得る目的をもってする有償譲渡をいうものであるが、必ずしも一般の取
引市場を通じての販売に限るものではなく、本格的出荷の前のサンプル出荷なども
含むものであり、卸問屋への出荷などが右にいう販売に該当することはいうまでも
ない。すなわち、「最初に販売された日」というのは、商品の形態が確認できる状
態での販売のための広告活動や営業活動を開始した日をいうものと解するのが相当
である。
3 これを本件についてみるに、記録によれば、
 債権者は、かねてより培養土と種を入れた三四〇ccの容量のハートカップMと
いう鉢を販売していたが、平成三年三月ころ、取引先から鉢ではなくバレンタイン
デーのバラチョコの容器としてハートカップMを改良できないかとの話があり、約
一九〇ccの容器として本件製品を開発することになったこと(甲九)、
 債権者は、平成三年九月、本件製品の製造のために必要な金型の見積もりの依頼
をなしていること(甲五)、
 債権者は、平成三年一一月一二日、商品名ハートカップS、商品コード0550
000の本件製品三一万五〇〇〇個を、名古屋マッチ株式会社に、希望納期を一月
一〇日として発注していること(甲一一)、
の各事実が一応認められる。
 このように、債権者が平成三年一一月一二日に三一万五〇〇〇個もの大量の本件
製品の製造を名古屋マッチ株式会社に発注していることは、それに先立ち、すでに
取引先から本件製品の受注があったことにほかならない。すなわち債権者は、平成
三年一一月一二日の本件製品の発注以前に、取引先に本件製品の形態を図面により
提示し、取引先からの注文を受けていたものと推認することができる。
4 してみれば、債権者は、平成三年一一月一二日には、既に不正競争防止法二条
一項三号にいう「最初に販売された日」が過ぎていたものであり、債権者の本件製
品は、最初に販売された日から起算して三年を経過した製品であるから、不正競争
防止法による保護の対象にならないというべきである。
三 したがって、債権者の本件仮処分の申立ては、その余の点について判断するま
でもなく、被保全権利について疎明がないことに帰着するから、これを却下すべき
である。
 よって、申立て費用の負担について、民事保全法七条、民事訴訟法八九条に従
い、主文のとおり決定する。
(裁判官 亀岡幹雄)
目録
 容器本体と蓋体とからなり、容器本体は口部、底部ともにハート型をなし、口部
の縦横比を一対一・一一、底部の縦横比を〇・七四対〇・八八、高さ〇・九六と
し、本体胴部は口部から底部にかけてテーパー状をなし、蓋部は、縦横比は容器本
体の口部の縦横比に一致する一・〇五対一・一六、高さ〇・一一のハート型で、上
面中央には容器本体の底部の座と係合する、外側は縦横比〇・七〇対〇・八四、内
側は縦横比〇・三八対〇・三八とする各ハート型に囲まれた凹部を設けた、別紙図
面記載の包装容器。
<28672-001>
仮処分命令申請書
申請の趣旨
一 債務者は、別紙記載の包装用容器を販売、譲渡、引渡してはならない。
との仮処分を求める。
申請の理由
一、債権者は、平成四年一月以来本件製品を販売しているところ、別紙記載の包装
用容器(以下「イ号製品」という)は、本件製品の形態のまったくの模倣であり、
これは不正競争防止法二条三号の商品形態の模倣に該る。
二、本件製品の形態
 本件製品の形態は以下のとおりである。
1、容器本体。口部及び底部の形状をハート型とするもので、口部の縦横比一対
一・一一(七三mm対八一mm)、底部の縦横比〇・七四対〇・八五(五四mm対
六二mm)、高さ〇・九七(七一mm)として、本体胴部は口部から底部にかけて
テーパー状とし、底部外周のやや内側の位置にハート型突状による座(縦横比〇・
六八対〇・八一、高さ〇・〇一《五〇mm対五九mm対一mm》)を設けている。
材質はスチロール樹脂等合成樹脂と思われ、無色透明で光沢感がある。
2、蓋体。容器本体の口部外周に合致する縦横比一・〇四対一・一五、高さ〇・〇
八(七六mm対八四mm対六mm)のハート型で、上面中央には、容器本体の底部
のハート型の座と係合できる縦横比〇・六八対〇・八二(五〇mm対六〇mm)の
ハート型凹部を設けている。材質はスチロール樹脂等合成樹脂と思われ、無色透明
で光沢感がある。
3、右容器本体と蓋体とを組み合わせた形態を有する。
三、イ号製品の形態
イ号製品の形態は以下のとおりである。
1、容器本体。口部及び底部の形状をハート型とするもので、口部の縦横比一対
一・一一(七三mm対八一mm)、底部の縦横比〇・七四対〇・八八(五四mm対
六四mm)、高さ〇・九六(七〇mm)として、本体胴部は口部から底部にかけて
テーパー状とし、底部外周のやや内側の位置にハート型突状による座(縦横比〇・
七〇対〇・八四、高さ〇・〇五《五一mm対六一mm対四mm》)を設けている。
材質はスチロール樹脂等合成樹脂と思われ、無色透明で光沢感が若干劣る。
2、蓋体。容器本体の口部外周に合致する縦横比一・〇五対一・一六、高さ〇・一
一(七七mm対八五mm対八mm)のハート型で、上面中央には、容器本体の底部
のハート型の座と係合できる外側の縦横比を〇・七〇対〇・八四(五一mm対六一
mm)とするハート型と内側の縦横比〇・三八対〇・三八(二八mm対二八mm)
とするハート型に囲まれた凹部を設けている。材質はスチロール樹脂等合成樹脂と
思われ、無色透明で光沢感が若干劣る。
3、右容器本体と蓋体とを組み合わせた形態を有する。
四、本件製品とイ号製品の同一性
 両者は互いに違えても嵌合することができるので互換性を有し、また、基本的な
大きさ、口部外周のハート型、テーパー状の胴部が全く同一であって、かかる特徴
的な点において同一であり、その余は何れも微差であり、形態上両者は実質的に同
一である。
 以上、本件製品とイ号製品は全く同一であって、イ号製品は本件製品の形態模倣
である。
五、保全の必要性
 イ号製品は本年九月一日から三日間東京国際展示場で行われた東京ギフトショウ
で展示され、その後販売されるに至っていることが判明した。
 債務者が債権者の商品形態を模倣する意図に基づいてイ号製品を販売しているこ
とは明らかである。一方本件製品は季節商品であって、来年二月のバレンタインデ
ーに向けて、現在は引き合いのある時期で、一月に出荷時期となるべきものである
が、債権者は現時点において既に引き合いの減少という影響を受けており、さらに
今後も営業上の不利益が拡大するおそれが多大である。かくては本案勝訴判決を得
てもその間の営業上の損害等の発生は甚大であり、後日を待ってはその損害等を回
復するのは困難となるので本申立に及んだ次第である。
(別紙)
目録
 容器本体と蓋体とからなり、容器本体は口部、底部ともにハート型をなし、口部
の縦横比を一対一・一一、底部の縦横比を〇・七四対〇・八八、高さ〇・九六と
し、本体胴部はテーパー状をなし、蓋部は高さ〇・一一のハート型で、その縦横比
は容器本体の口部の縦横比に一致し、上面中央には容器本体の底部の座と係合す
る、外側は縦横比〇・七〇対〇・八四、内側は縦横比〇・三八対〇・三八とする各
ハート型に囲まれた凹部を設けた包装容器。

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