弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上訴権回復の請求を棄却する。
         理    由
 本件申立理由の要旨は、申立人は昭和二十七年十一月二十七日福岡高等裁判所に
おいて恐喝被告事件について、控訴棄却の判決の言渡を受け、同年十二月十一日、
時の経過とともに上訴期間を徒過するに至つた。しかし申立人が同裁判所より受取
つたところの、昭和二十七年十一月二十七日の公判を開廷する旨の召喚状には、判
決の宣告のみをする公判期日であるにも拘らず、その公判期日に判決を宣告する旨
の記載がなされていなかつたのである。ところで申立人は、本件控訴を申立てるに
当りては控訴趣意が認容されない場合には更に上訴すべく予定していたものであ
り、上訴期間経過によつても上訴の意向に変更はなく若し控訴審において実刑の言
渡があれば、同時に保釈は失効するので、上告して保釈願を為し、且つ事件の本質
を明かにして貰いたいと念願していたので、判決言渡の公判期日の召喚状の来るの
を待ち望んでいたのに、叙上のごとく判決宣告の公判期日であることの記載がなか
つたことにより、判決の宣告があつたことを知り得ず、ついに上訴期間を徒過した
ものであり、従つて同裁判所の職務執行上の欠陥が申立人の上訴権を消滅させる大
きな原因をなしているのであつて、申立人又は弁護人の不注意乃至手落ちによつ
て、上訴期間内に上訴することができなかつたものではないから、何卒上訴権回復
の請求を許容されたく本件請求に及ぶというにある。
 よつて按ずるに前記被告事件の記録並に申立人の疏明に徴すると、福岡高等裁判
所において、昭和二十七年十一月十八日該事件の控訴審の第一回公判が開廷され、
該期日に被告人である申立人は出頭せず、弁護人のみ出頭して弁論は終結され、判
決宣告期日を同年十一月二十七日午前九時と指定されて、被告人に対し該期日の召
喚状が書留郵便に付して送達されたところ、右期日に被告人は不出頭で、弁護人の
み出頭して、判決の宣告がなされたことが明かであり、前記第二回公判期日の被告
人に対する召喚状に、判決の宣告をする公判であることの記載が漏れていたことが
窺われないでもない。
 ところで、刑事訴訟法は判決の宣告のみをする公判期日に関して特段の規定をし
ていないとはいえ、刑事訴訟規則において、その第二百十六条で、判決の宣告のみ
をする公判期日の召喚状には、その公判期日に判決を宣告する旨をも記載しなけれ
ばならないことを規定し、該規定は同規則第二百五十条により控訴審に準用されて
いるので、被告人に対し判決の言渡期日を明確に了知せしめ、その利益を図ろうと
する右規定は、刑事訴訟法第三百九十条に規定するように、控訴審では被告人は公
判期日に出頭することを要しないので、被告人の不出頭のまゝ弁論を終結すること
が第一審におけるより多いことからして、被告人にとつてその実益は一層大である
ということができる。それで前記第一回公判期日に弁護人は出頭しており、第二回
公判期日の召喚状は被告人に送達され、弁護人出頭のもとに判決の宣告がなされて
いること前説示のとおりであるから、右第二回公判期日の召喚状に判決宣告の期日
であることの記載を欠いたことは、同裁判所に、被告人に対し判決宣告の期日を明
確に了知せしめることについて手続上の瑕疵があつたことを認めないわけにはゆか
ない。
 しかしながら控訴審において、前示のごとく被告人は公判期日に出頭することを
要しないこととしたのは、控訴裁判所が被告人の住所より遠隔の地にあることを通
例とするばかりでなく、被告人のためにする弁論は控訴趣意書に基いて弁護人でな
ければこれをすることができないことからして、公判期日の出頭を被告人の自由な
選択に委ねた趣旨であつて、もとよりこれにより自己に関する訴訟の進行、経過に
ついて、被告人が無関心であることを是認したものではなく、従つて無関心である
ことによつて生じた不利益は被告人において当然これを甘受しなければならないも
のと解すべきである。しかも前記記録によれば、同裁判所は被告人に対し弁護人選
任に関する通知書を出して、被告人から裁判所で選任して貰いたいとの回答に接し
たので弁護士作元勝胤を被告人に対する該事件の弁護人に選任し、控訴趣意書を差
出すべき最終日を指定し被告人に其の旨を通知するとともに右弁護人を選任したこ
とを通知しておることは明かであるから、被告人は自己が第一回並びに第二回公判
期日に出頭しないのであれば、なおさらのこと、前示裁判所に照会し、またその国
選弁護人に連絡し、公判の経過についてこれを知るべく努力すべきであり、さらに
被告人不出頭のまゝ判決の宣告をした場合にも、弁護人が出頭しておれば、裁判所
からは被告人に対し判決の宣告があつたこと及び判決主文を通知されないことは、
刑事訴訟規則第二百二十二条によつて明瞭であり、且つ申立人の弁護人が出頭して
第一回並びに第二回公判が開廷されており、被告人に対し第二回公判期日の召喚状
が送達されておること前に説示のとおりであるから、申立人主張のごとく、控訴審
の判決如何によつては上訴する意思があり、判決宣告の公判期日の召喚状の送達を
待ち望んでいた程であるならば、その旨を弁護人に通知し、申立人の意のあるとこ
ろを徹底せしめる等、判決の宣告を速かに了知し得べきあらゆる手段方法を講ずべ
き責務があつたものといわねばならない。
 <要旨>してみると、申立人が前記被告事件について上訴期間を徒過した所以は、
専ら被告人の便宜のために設けられた前示刑事訴訟法第三百九十条の規定の
趣旨を誤解したか、または訴訟の経過に対し被告人として当然持つべき注意義務を
欠き、その国選弁護人と緊密た連絡をとること等自ら判決の宣告のあつたことを知
るべき手段、方法を講ずることに万全でなかつたため、判決の宣告のあつたことを
知らなかつたことに由るものと認めざるを得ないのである。そして被告人自身に判
決の宣告があつたことを知るべかりし責務は、前説示の如く、裁判所が判決宣告期
日の召喚状にその旨の記載を遺脱した手落ちがあつたことにより何等の消長を来た
すものではないから本件は上訴権者である申立人自身の責に帰すべき事由によつ
て、上訴期間内に上訴をすることができなかつたものと云うに妨げなく、刑事訴訟
法第三百六十二条に該当しないから、本件上訴権回復の請求は理由がない。
 よつて主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 筒井義彦 裁判官 柳原幸雄 裁判官 岡林次郎)

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