弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審の未決勾留日数中一二〇日を原判決の本刑に算入する。
         理    由
 弁護人江川甚一郎の控訴趣意は前弁護人溝淵亀澄と被告人が各提出した控訴趣意
書に記載したとおりであるからいずれもこれを引用する。
 被告人の論旨について、
 所論前段の論旨は原判示二のうち背広上下二着については窃盗の意思はなかつ
た、原判示三の自転車は単に無断借用したにすぎない、原判示七、一〇の盗んだ金
額はいずれも二千円程度である(判示金額は各金三千円)、原判示一二の盗んだ金
額は九万円程度である(判示金額は金十万六千九百円)といい、従つて原判決は事
実を誤認したものであるというが所論の原判示事実は何れも原判決に示した証拠に
より認めることができるから原判決には所論の点について事実の誤認はない。
 所論中段は被告人は昼間は土工として働いて居り窃盗を常習としているものでは
ないというのであるが被告人は昭和三二年七月七日以降同年一〇月二八日迄の間に
前後十三回に亘り盗みをしておりかような短期間に反覆して窃盗を為していること
からその常習性は認め得られるのであつて所論のように正業に従事しているとして
も常習性を認める妨となるものではなく、また被告人に単純窃盗の前歴がないとし
ても常習性を認めても差し支えはないと解せられるので、論旨は採用することはで
きない。
 弁護人の論旨前段について
 所論は原判決は被告人の原判示所為について常習夜間侵入窃盗の事実を認めたが
原判決に挙示した証拠(被害届、盗難事実申立書等)によつては被告人が被害場所
に侵入したか否かは必ずしも明らかではない。それで原判決は更に証拠調を為し侵
入の事実が存したか否かを明らかにした上判断すべきであつたのにその措置をとら
なかつたことは審理不尽の外理由不備、事実誤認の違法があるというのであるが原
判示一、三、四の事実を除きその余の判示事実につき挙示の証拠と対照して検討す
ると被害金品は或は店舗内又は座敷タンス内等に置いてあつたもので侵入して盗ら
なければ盗れない状況に在つたものであることは容易に認められるので原審が<要
旨>この点につき更に証拠調の手続をとることなく侵入窃盗の事実を認定したことに
違法の点はない。ただここで問題となるのは原判決は原判示一、三、四の事
実について侵入の事実を認めていないので、これらの事実とその余の夜間侵入窃盗
の事実を一括して盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律第二条(以下法第二条と略称す
る)を適用できるかどうかという点である。この点について(一)本条の常習とは
単に窃盗、強盗の常習たるに止まらずその方法においても常習でなければならな
い。従つて(A)法第二条各号に該当しない窃盗、強盗の常習者が同条各号に該当
する窃盗罪を犯しても同条に該当しないと共に(B)同条各号に該当する常習者が
同条各号に該当しない単純窃盗を犯した場合も右単純窃盗については同条を適用す
ることはできないという考え方について考察するとこれを肯定する立場からすれば
右はいずれも併合罪として処断することとなる。その場合(A)については問題は
ないけれども本件と同一のケースに相当する(B)については次の疑問がある。即
ち法第二条の一罪として処断するときは三年以上(窃盗を以つて論ずるとき)又は
七年以上(強盗を以つて論ずるとき)十五年以下の有期懲役刑であるのに反して併
合罪として処断すれば長期が二十年以下となり法第二条により特定せられた方法に
よる常習者が偶々単純な窃盗行為をしたが為めに却つて重い法定刑を以つて臨まな
ければならないような不合理な結果となる。次に法第二条の常習特殊窃盗の内に単
純窃盗が介在する場合右の単純窃盗は常習特殊窃盗の常習性の一貫を為すものとし
て常習特殊窃盗に吸収せられ常習特殊窃盗の一部として認められないかという点で
ある。法第二条が特に刑法の窃盗罪に比して法定刑を重くした理由は犯人の常習的
な犯罪性癖と悪性な方法による行為とを具有することを重視したが為めであつて右
の悪性の方法による窃盗行為が常習的に為され、しかもその間に介在する単純窃盗
行為もその常習的性癖の発露として為された場合にはその単純窃盗行為は常習特殊
窃盗行為に吸収せられて一罪として律することが相当ではないかと考えられる。そ
うであれば特殊窃盗(法第二条所定各号の場合)だけでは常習性を認めることはで
きず単純窃盗をも含めなければ窃盗の常習性が認められない場合、単純窃盗の常習
性はあるがこれに常習性のない特殊窃盗が一連の関係を為す場合等には勿論本条の
適用はないと解すべきである。以上の見地からすると原判決の認定した前後一三回
の窃盗行為の内前掲一、三、四(四の窃盗については証拠上夜間侵入の事実が認め
られないことはないが)の事実を除くその余の事実についても夜間侵入窃盗につい
ての常習性は容易に認め得られるから原判決が右一、三、四の事実を含めて法第二
条第四号を適用したことについて違法の点はない。結局論旨は理由がない。
 被告人の論旨並に弁護人の論旨の各後段について、
 共に原判決の量刑不当を論ずるに在る。記録によると被告人は昭和一九年九月一
二日東京地方裁判所で戦時強盗殺人罪により無期懲役に処せられ昭和三二年五月二
三日仮釈放により出所したものであり右前刑と本件との間には犯罪の常習性等につ
いての関係はないが、本件は右仮釈放後間もなく行われたものであり本件犯罪の動
機もさして生活に窮乏した揚句為されたものでもなく殊に本件の被害額、盗んだ金
銭の使途、犯罪の手段方法その他記録上認められる諸般の情状を綜合すると原審の
被告人に対する科刑が必ずしも不当に重きに失するとは認められないから、論旨は
理由がない。
 それで、刑事訴訟法第三九六条により本件控訴を棄却し、刑法第二一条により当
審の未決勾留日数中一二〇日を原判決の本刑に算入し、刑事訴訟法第一八一条第一
項但書により当審の訴訟費用は被告人に負担させないこととし、主文のとおり判決
する。
 (裁判長裁判官 二見虎雄 裁判官 後藤寛治 裁判官 矢頭直哉)

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