弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 控訴人と被控訴人間の東京地方裁判所平成二年(ヨ)第二五五〇号著作権仮処
分申立事件について、同裁判所が平成三年九月二四日にした仮処分決定を取り消
す。
3 被控訴人の本件仮処分申立てを却下する。
4 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文と同旨
第二 当事者の主張
一 被控訴人
〔申請の理由〕
1 被控訴人は、日刊新聞の発行を主な業務とするアメリカ合衆国デラウエア州法
上の法人であり、日刊新聞「THE WALL STREET JOURNAL」
(以下「被控訴人新聞」という。)の発行者である。
2 被控訴人がこれまで発行してきた被控訴人新聞及び将来発行する被控訴人新聞
は、いずれも編集著作物である。
(一) 被控訴人新聞は、世界中で生起するさまざまな出来事(素材)の中から、
経済ニュースを中心に、報道する価値を認め得るものが選択され、更にその内容及
び重要度の分析に基づき、速報性の高い経済ニュース、速報性の低い経済ニュー
ス、特集記事、国際ニュース、政治ニュース、レジャー関連記事、社説、投資情
報、相場表などのカテゴリーに分類され、その分類に従って、紙面に割り付けられ
るものであるから、特定の日付けの紙面全体が素材の選択及び配列に創作性のある
編集著作物に該当することは明らかである。
(二) 被控訴人は、一八八九年以来、組織を拡充整備し、世界的規模でニュース
ソースを収集し、これを的確に伝達できるための体制を構築しつつ、継続して被控
訴人新聞を発行してきたものであり、将来もこれを継続するものである。したがっ
て、被控訴人新聞が将来においても反復継続して発行される蓋然性は極めて高い。
そして、被控訴人が、これまで確立してきた記事の収集、選択及び配列の手法に依
拠し、被控訴人新聞を発行する限り(現在のところ、これらに関する大幅な変更の
予定はない。)、
素材の選択及び配列に創作性のない紙面ができることなどあり得ないから、将来発
行される被控訴人新聞も全体について編集著作物性を有するものである。
3 これまで発行してきた、また将来発行する被控訴人新聞の編集著作権は、被控
訴人の発意に基づき、その従業員が職務上作成し、被控訴人の名義のもとに公表す
るものであるから、被控訴人に帰属するものである。
4 控訴人は、被控訴人が編集著作権を有する被控訴人新聞を勝手に翻案し、その
編集著作権を侵害している。
(一) 控訴人は、特定の日付けの被控訴人新聞のほとんどすべての文章記事につ
いて、その一部(短い記事であれば全部)を翻訳し又は日本語で要約したものを作
成し、これを被控訴人新聞の紙面における記事の割付順序とほとんど一致するよう
に配列し、当該日付けの記事が一覧することができる文書(以下、控訴人が被控訴
人新聞に対応して作成している文書を「控訴人文書」という。)を作成・頒布して
いる。
 かかる控訴人の行為は、被控訴人新聞の文章記事を利用して文書を作成している
点において、被控訴人新聞における素材の選択の創作性を利用するものであり、ま
た被控訴人新聞の記事の分類に従って記事の分類のための表題まで付して配列して
いる点において、被控訴人新聞における素材の配列の創作性を利用するものである
から、編集著作権の侵害に該当することは明らかである。
 なお、控訴人文書は確かに被控訴人新聞のすべてを網羅している訳ではなく、広
告、図表及びいくつかの記事(疎甲第八号証においては一七四項目中一〇項目)は
控訴人文書に掲載されていないが、被控訴人新聞は、広告及び図表を除いた文章記
事のみについても、選択及び配列の創作性が認められるのであるから、かかる文章
記事のほとんどを利用して抄訳文章を作成し、これが被控訴人新聞の記事の順序と
ほぼ一致する形で配列されている控訴人文書は、被控訴人新聞における素材の選択
及び配列の創作性を利用するものであり、編集著作権の侵害に当たる。
(二) かかる控訴人の編集著作権侵害行為は、将来も継続して行われる蓋然性が
極めて高い。控訴人はこれまで、被控訴人新聞の発行日毎に、その素材の選択及び
配列の創作性を利用する行為を反復継続してきており、今後も継続する意向を表明
しているから、被控訴人が将来発行する被控訴人新聞についても同様に編集著作権
侵害行為をする蓋然性が極めて高いというべきである。
5 保全の必要性は次のとおりである。
(一) 控訴人は、被控訴人の従業員である記者及び編集担当者の汗の結晶として
集大成された被控訴人新聞の記事を、翻訳家を雇って抄訳等させ、これをワードプ
ロセッサで打ち込んでファクシミリで会員に送付するという、極めて安易な方法に
よって前記侵害行為を行っているものであり、かかる行為が放置されるならば、新
聞業界全体に大きな影響を与えることになる。
(二) 控訴人は、被控訴人からの昭和六三年四月頃からの再三の中止の申入れに
もかかわらず、侵害行為を止めない。
(三) また将来発行される被控訴人新聞についても控訴人により同様の侵害行為
がなされる蓋然性は極めて高く、この侵害行為に対する差止めが認められないと、
被控訴人はすでに発行された分についてのみ日々差止請求訴訟を提起せざるを得な
いという不合理な事態に陥るから、将来成立する高度の蓋然性を有する編集著作権
に基づいて、これに対する将来の侵害行為の差止めが認められる必要がある。
〔控訴人の主張に対する反論〕
1 控訴人は、著作権法一〇条二項について、憲法の規定する表現の自由に由来す
る重大な要請のために、著作権は一定程度道を譲るべきことを著作権法自体が宣言
しているものである旨主張するが、同条項は、著作物に該当しない性格のものを念
のために確認的に規定したものにすぎず、右主張は独自の見解にすぎない。
2 控訴人は、編集著作権の侵害が認められるのは、原素材の複製物又は翻案物を
利用した場合で、かつ、同じ選択・配列をした場合に限られるとするもののようで
ある。
 しかし、編集著作物の素材はそもそも著作物に限られないのであるから、編集著
作権の侵害の成否を限界づけるために、原素材の複製物とか翻案物という概念を持
ち込むことは誤りである。原素材との間に一定の利用関係は必要であるにせよ、
編集著作権は選択・配列における創作性を保護するもので、原素材の著作権を保護
するものではないから、原素材の複製物や翻案物に限定される理由はない。
 また、新聞の場合、素材は個々の記事を意味するとしても、素材の選択の本質
は、素材である個々の記事に具現された情報の選択にある。すなわち、個々の記事
の選択・配列は、編集者が収集したさまざまな情報の中から一定の編集方針に基づ
いて報道する価値のあるものを選択し、その重要性に応じて配列することにこそ実
質的な意味が存するのであり、それが新聞について選択・配列の創作性の認められ
る所以である。
 したがって、新聞の編集著作物性は、一定の編集方針に基づいて報道する価値の
あるものを選択し、その重要性に応じて配列するという新聞における選択・配列の
創作性にあり、その本質が複製、翻案されることによって侵害されるというべきで
ある。
 かかる観点で控訴人文書を評価すると、まさに編集著作物である被控訴人新聞の
翻案に該当することは明らかである。
 また控訴人は、控訴人文書の文章は、被控訴人新聞の記事の目次ないし索引にす
ぎず、原文との代替性が完全に失われていて、複製や翻案という著作権侵害関係に
たたない旨主張するが、控訴人文書における各抄訳文章のほとんどは、単なる目次
ないし索引にとどまらず、被控訴人新聞の各記事の内容を伝達するものであり、控
訴人文書を読めば、一日分の被控訴人新聞の記事の概要が分かる仕組みになってい
るから、控訴人の右主張は理由がない。
3 控訴人は、原判決が控訴人文書の発行事前差止めを認めたことについて、憲法
二一条に違反する旨主張するが失当である。
 著作権侵害に当たる行為は、そもそも表現の自由による保護の対象とはなり得な
い行為である。著作権侵害行為は、単なる他人の精神活動の所産の模倣、盗用にす
ぎず、およそ表現の自由によって保護されるべき「人の内心における精神活動」と
は無関係である。著作権法一一二条が事前差止請求権を明定しているのも、著作権
侵害行為が表現の自由によって保護されるべきものでないことを前提にしているも
のである。
4 控訴人は、控訴人文書は公正利用として許容されるものである旨主張するが失
当である。
 著作権法は、三〇条ないし五〇条において著作権が制限される場合を個別的に定
めており、一般条項としての公正利用の規定は存しない。公正利用の抗弁をわが国
著作権法のもとでも認めるべきか否かの議論は始まったばかりであり、何をもって
公正利用とするかの解釈論はおよそ固まっていない段階である。したがって、右個
別の制限の規定の範囲で、例えば引用(同法三二条)等により、著作物を利用する
ことが可能である以上、安易に「公正利用」といった曖昧な概念を導入し、著作権
者の権利を不当に狭めることがあってはならない。
 そして、控訴人は、被控訴人新聞の世界的名声を奇貨とし、同新聞がある日の紙
面においていかなる出来事を取り上げているか、同新聞がいかなる出来事を重要と
扱っているかということを一覧できる控訴人文書を作成・頒布し、もって利益を得
ることを目的としているのである。
 したがって、控訴人文書が公正利用に該当するとは到底いえないことは明らかで
ある。
二 控訴人
1 憲法二一条の定める表現の自由は、今日の高度情報化社会においては、単に情
報の発信者の自由であるだけでなく、情報の受け手の知る権利をも保障するもので
あり、特に時事に関する情報の流通は民主制にとって不可欠である。
 情報の自由な流通に関する制約の一つとして著作権制度があり、著作権法は著作
者に対し創作への報償として一定の権利を付与するが、情報の過度の独占は文化の
発展を阻害するものであるから、同法の目的は、創作への報償と情報の自由流通の
間に適切なバランスを取り、もってトータルな制度として文化の発展(殊に時事情
報については民主主義の保全、発展)をとることをめざすことにある。
 また、事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は言語の著作物に該当しない旨
を規定した著作権法一〇条二項は、情報、殊に時事に関する情報は民主性の基盤と
して最も重要なものであることから、表現の自由に由来する重大な要請のために著
作権は一定程度道を譲るべきことを宣言した規定であると解すべきである。
 したがって、控訴人文書のように、ニュース又は時事の事実(又はそれ以下)を
提供するものであって、被控訴人新聞の記事に代替するものではなく、むしろアク
セスを容易にするだけの情報を提供するにすぎないものが著作権法の名の下に禁止
されることは、時事情報の流通を過度に制限するものであって許されないものとい
うべきである。
2 編集著作物は、与えられた素材を選択・配列するという、それ自体では創作性
の発揮しにくい行為を根拠とするから、その保護も弱くならざるを得ない。
 本件において、一日分の新聞の編集著作権を考えるについては、個々の記事を既
存の所与の素材として考えなければならないし(取材から記事原稿作成に至るまで
の一切の労力、行為は、編集著作権の成立や保護範囲の判断から排除されなければ
ならない。)、素材の選択・配列行為があっただけでは足りず、これに創作性がな
ければならないものである。素材の選択・配列行為は、元来従属的で創作性を発揮
しにくいものであるから、安易に著作物性が認められてはならないし、仮に編集著
作物性が認められる場合であっても強い保護を与えるべきではない。そして、新聞
においては、素材の特性から、事実自体の独占につながらないように格別の配慮が
必要である。
3 編集著作権は特定レベルの素材を前提に、その選択・配列の創作性によってか
ろうじて成立する微妙な権利である。素材の表現が異なれば、素材に依存する編集
著作物の表現も異ならざるを得ない。そして、新聞は時事に関する編集著作物であ
るから、その編集著作物性が保護されるのは、対象とされる文書の素材=要素が、
編集の対象である記事等と同一又は少なくとも翻案物に当たる場合に限られる。素
材の表現レベルを無視し抽象的な選択・配列だけを取り上げて、編集著作物の表現
を問擬することは誤りである。被控訴人が素材=出来事とするのは、素材の表現レ
ベルを全く無視する議論である。
 本件においては、言語表現としての素材のレベルが全く異なっており、被控訴人
新聞の各記事とこれに対応する控訴人文書の文章とは、複製や翻案という著作権侵
害関係にたたない。すなわち、控訴人文書の文章は、被控訴人新聞の記事の抄訳で
も要約でもなく、極めて簡略な要旨あるいは目次ないし索引程度のものであって、
原文との間の代替性は完全に失われている。また、控訴人文書には被控訴人新聞の
記事のすべてが要旨化されて記載されているわけでもない。
 更に、控訴人文書には、新聞という紙面の編集において最も重要な記事原稿自体
のカットや修正の結果である配列は維持されておらず、記事等以外の部分すなわち
紙面全体のレイアウトの一貫性、新聞紙としての表題の置き方、各記事の位置など
のまとめ方、政治、経済、国際記事、国内記事等のそれぞれの配置―紙面の左右・
縦横、上下、記事と一体化している図表や統計表、広告デザインの規律等、総合的
な意味での配列において被控訴人新聞とは全く異なっており、要旨的な意味はもと
より、いかなる意味でも翻案関係にたたない。
4 ECのデータベースの保護に関する指令案によっても明らかなとおり、データ
ベースのために作成される抄録や要旨のような原著作物自体を代替しないものは、
許諾なしで、データベースに編入できるものとされているところ、この考え方は、
電子的手段によらない編集物についても当然適用できるものである。そして、この
データベース又は非電子的編集物に編入される著作物は、個別の著作物に限られ
ず、編集著作物も含まれるのであり、またこの編入される編集著作物の素材が要旨
で代替し得ない以上、編集著作物自体も代替し得ないと考えるべきである。
 本件において、被控訴人新聞の各記事に対応する控訴人文書の各記述は、利用者
に原情報の検索手段を提供する書誌的情報であって、最小限の要旨以外の何もので
もないものであり、控訴人文書によって被控訴人新聞を代替し得るものではない。
これにより被控訴人新聞の個々の記事についても、全体についても代替し得るもの
でないから、これらを非電子的編集物である控訴人文書に編入することは当然許容
されるものである。
5 被控訴人は、将来にわたり発行される被控訴人新聞についての編集著作権に基
づく差止めを求めている。しかし、著作権は著作物の創作という事実によって発生
するのであって、著作物の存在しない、その内容さえ分からない段階で著作物とし
ての保護が与えられるなどということは、著作権法上考えられないことである。具
体的著作物が作成されていない段階で、将来著作物が作成されたら、その著作権侵
害の排除を求めるということは、著作権法の定める規範の確認を求めているに等し
く、具体的法律関係に関する争訟とはいえない。
 したがって、将来発行される被控訴人新聞についての編集著作権に基づく差止請
求は全く理由がないというべきである。
6 本件仮処分によって控訴人が受ける不利益は、控訴人の営業利益にとどまら
ず、その表現の自由という基本的人権の制限をもたらすものであり、更には高度情
報化社会における控訴人を含めた国民全体にとってのメタ情報の制限という極めて
重大な結果を生ずるものである。一方、控訴人文書の発行継続により、日本におけ
る被控訴人新聞の売上げが減少し、被控訴人が著しい損害を被るなどということは
全くあり得ない。
 したがって、保全の必要性はないものというべきである。
7 原判決は、控訴人文書に対する発行事前差止めの仮処分を認めているが、明ら
かに憲法違反である。
 控訴人の発行した(また将来発行する可能性のある)ウォール・ストリート・ジ
ャーナル紙の翻訳・抄訳物は、憲法二一条一項によって原則として発行が自由に認
められるところの表現物(出版物)であり、これを出版する行為は、表現の自由と
して保障された基本的人権の具体的実現行為である。
 ところで、著作権法一一二条の適用については、憲法二一条を頂点とし、著作権
法を下位法とする法構造に矛盾してはならないのであり、差し止められる表現が特
に保障の必要性の高いものである場合には、一層、事前差止の可否は慎重に決せら
れるべきである。
 結果的に著作権を侵害することになる表現といえども、憲法二一条で保障される
表現であることに変わりはなく、ただ、表現が第三者の著作権を侵害することか
ら、侵害される著作権者の利益を保護するために一定の制約が認められることにな
るのである。そして、その制約が認められるとされる場合であっても、より制限的
でない他のとり得る手段がないかどうか、事実抑制禁止の法理・検閲禁止に違反し
ていないかどうかを、規制される表現の内容、表現によって侵害される著作権の侵
害の程度・明白性、著作権の保護回復の可能性の有無などを総合的に衡量して、い
かなる方法・程度の規制が適当であるかを判断しなければならないのである。
 本件における控訴人の表現行為は、その対象が時事に関するものであること、被
控訴人新聞の英文のままではほとんど内容を理解することが不可能な大多数の日本
国民に対し、情報受領能力を付与し、特にわが国の国民の知る権利を充足するもの
であること、控訴人の表現行為は、英文を和訳した上に、被控訴人新聞の各々の長
文の記事を、抄訳してわが国国民に提供するものであって、わが国内における情報
の、より広範かつ迅速な流通に寄与するものであることからして、特にわが国の民
主制にとって重要なものであること、これに対し、被控訴人が裁判所に求めている
ことは、自己の利潤追求という経済的利益のために、控訴人の表現の自由を事前に
差し止めよというものであること、控訴人の表現物の発行による被控訴人の不利益
の発生そのものが明白であるか否かは極めて疑わしいこと、仮に被控訴人に不利益
が発生したとしても、金銭的な損害填補によって必要かつ十分な不利益回復が可能
であること、によれば、原判決が控訴人に対して、表現物発行事前差止仮処分を命
じたことは明らかに憲法二一条一項に内包された「事前抑制禁止の原則」又は同条
二項に規定された「検閲の禁止」に違反するものである。
8 仮に、控訴人文書が被控訴人新聞の編集著作権の保護範囲に属するものである
としても、控訴人文書は公正利用として許容されるものである。
 著作権法三〇条以下において、著作権の制限の条項が設けられているが、これら
の規定は、個別的な状況のもとで著作権が制限されるという形をとっており、教育
目的その他異なる文化、社会的な価値がある場合に、一定の条件下で定型的に著作
権が制限されることになっている。しかし、これらの規定に内在する法理は、公正
な利用は許されるということである。また、同法一条は、「これらの文化的所産の
公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与
することを目的とする。」と定めており、かかる一般目的と前述の個別規定に内在
する法理を併せ考えれば、わが国においても公正利用の法理が認められるべきであ
る。
 本件において、具体的に分析検討すると、次の点が認められる。
(一) 控訴人文書が被控訴人新聞を利用する目的は、日本人読者が被控訴人の報
道するニュースへのアクセスを可能にするため、要旨又はそれ以下の情報を記載す
ることにあるから、商業性はあるけれども、公共的意義も存する。
(二) 被控訴人新聞は、ニュース報道を主目的とした新聞であるから、民主社会
においては、公共的使命を帯びたものであり、情報の自由流通という重大な要請を
有している。
(三) 被控訴人新聞と控訴人文書を比較すると、一九八九年九月二八日付け被控
訴人新聞A2(IBM関連記事)で訳文が八三行であるのに対し、控訴人文書にお
いては一行にみたない。同じくA3(ソニー関連記事)では一二七行対一・五行で
ある。
 このように、控訴人文書は被控訴人新聞の僅か一・二パーセントしか使用してお
らず、量的に僅少である。
(四) 被控訴人新聞は、日本人読者にとっては、よほど語学力と時間がなければ
読みこなすことは不可能といってよいが、控訴人文書により、被控訴人新聞の記事
の検索が短時間で可能となり、これがより身近なものとなるから、購入者はむしろ
増えると考えられ、市場へのマイナス影響もない。
 以上、控訴人文書が被控訴人新聞を使用する目的及び性格(使用が商業性を有す
るかどうか又は非営利の教育を目的とするかどうか)、被控訴人新聞の性質、被控
訴人新聞全体との関連における使用された部分の量及び実質性、被控訴人新聞の潜
在的市場又は価格に対する使用の影響等を考慮すると、控訴人文書は公正利用に当
たるものというべきである。
第三 疎明関係(略)
       理   由
一 「疎甲第一ないし第一四号証、第二〇ないし第二八号証、第三〇号証、第三三
号証、第四六ないし第四八号証、疎乙第一〇一号証並びに弁論の全趣旨」によれ
ば、次の事実が認められる。
1 被控訴人は、米国ニューヨーク州に本社を有し、ビジネス専門紙や二〇紙を超
える地方新聞を発行し、また各種メディアを使用した情報の提供サービス等を行っ
ている会社であって、一九八七年度には、年間売上高一三億ドル、従業員数九〇〇
〇名に及び、米国のビジネス誌「フォーチュン」の選ぶ五〇〇社ランキング中の二
六四位にランクされている。
 被控訴人の発行する被控訴人新聞は、一八八九年に創刊されて以来継続して発行
され、一日の発行部数が二〇〇万部を超える米国最大の日刊紙であって、媒体のク
オリティのみならず、これを支える読者の質の高さに定評があり、米国のみならず
多くの国で頒布され、大きな影響力を保っている。
 被控訴人新聞は、従来から、経済記事を中心とするものであって、スポーツ記事
や犯罪記事のような一般社会記事を掲載しないこと、情報の背後にある数字や事実
を分析し、トレンドを的確に読み取り、適切な解説をすることを重視すること、で
きるだけ多くの情報を提供するために写真を使用しないこと、大字化はしないこと
などの伝統的な一定の編集方針を堅持している。
2 被控訴人の従業員である記者は、電話及び面接取材、記者会見、資料調査等に
よって情報を収集した上、記事原稿を作成し、担当局長や地方支局長による見直
し、添削等のチェックを経て、この記事はニューヨークにある被控訴人のウォー
ル・ストリート・ジャーナル・ニュース室に送付される。同室には、これらの記事
が収集されるほか、APやロイター等の通信社からも電信記事が入ってくる。被控
訴人の従業員である編集者は、これらの多数の記事の中から、被控訴人新聞の編集
方針に従い、またニュース性等を考慮して採否を決定するとともに、掲載すべきも
のとして選択した記事については、その重要性や性格・内容等に従って配列の工夫
をしている。
3 一日分の被控訴人新聞は、A2判数十頁で構成され、その中には経済ニュー
ス、国際ニュース、社説・論評、株式相場や先物取引相場等の各種相場表、広告等
が掲載されているが、報道記事、社説・論評が主要な部分を占めている。
 被控訴人新聞の一九八九年九月二八日版(疎甲第八号証)についてみると、同版
は六二頁からなるが、第一頁は縦六列に区分され、左から二列目と三列目には、
「What’s News-」という表題のもとに、「Business and
 Finance」という表題の欄と「World-Wide」という表題の欄が
あり、「Business and Finance」欄には別紙(1)の番号1
ないし14記載の経済ニュースと市況が、「World-Wide」欄には別紙
(1)の番号15ないし26記載の国際ニュース等がそれぞれ掲載され、左から五
列目には、「Business Bulletin」という表題で七項目のニュー
スが掲載され、左から一列目、四列目、六列目には、長文の特集記事が掲載されて
いる。そして、第二項から第二六頁までは、別紙(1)記載の右経済ニュースや国
際ニュース等に関する詳細な記事(例えば、別紙(1)の番号①、②の詳細記事
は、それぞれ別紙(2)の①、②のとおりである。)と共に、それ以外の特集記
事、重要性・速報性の高いとみられる経済ニュース、国際ニュース及び政治記事、
レジャー関連記事、社説・論評、広告等が掲載されている(但し、第三二、三三、
三五頁にも、右のうちの三項目の記事が掲載されている。)。第二七頁から第三三
頁までは、「MARKETPLACE」という表題のもとにやや速報性が低いとみ
られる経済ニュースが中心に掲載されている。第三五頁から第六二頁までは、「M
ONEY & INVESTING」という表題のもとに株式、債券、商品、外国
為替その他の投資情報に関する記事を中心に各種相場表や広告が掲載されている。
 右のとおり、被控訴人新聞は、主として経済ニュースや国際ニュース等に関する
記事や社説・論評からなる部分、「市場」(MARKETPLACE)に関する記
事からなる部分、「金融及び投資」(MONEY &INVESTING)に関す
る記事からなる部分の、内容的に三部構成となっており、右同日版に掲載されてい
る記事等(記事及び社説・論評)は一七〇程度である。
 右同日版の記事等のうち、最も短いもので六行(一行の字数は約四〇字)という
ものもあるが、三〇〇行を超える長文のものもある。
4 控訴人は、昭和六一年九月から、「アメリカを読む研究会」という名称で、被
控訴人新聞やニューヨークタイムズ(平日版、日曜版)等につき「ヘッドラインサ
ービス」(抄訳サービス)を受ける会員を募り(会費は一紙当たり月額三万円)、
これらの新聞が発行される毎に、被控訴人新聞については、例えば別紙(3)のよ
うな控訴人文書(別紙(3)は控訴人文書の一部である。)を作成して、これを郵
便又はファクシミリにより会員に送付している。控訴人が、右サービスについて、
雑誌・新聞に掲載している宣伝広告には、「全記事完全抄訳サービス」、「取捨選
択することなく全記事を細大もらさず取りあげています」、「5分で読むアメリカ
の一日」、「情報を『ヘッドライン』で読むメリット ①煩わしさを解消 和訳抄
訳でその日の記事が一目瞭然。②スピード情報 他に先んずる情報収集が可能。③
全記事完全網羅 必要な情報を選択できる。④ビジネス・ヒント 一行の見出しに
ひそむビジネス・ヒント。⑤希少価値としての情報 日本で報道されない情報も。
⑥索引として コンパクトなヘッドラインのためファイルの資料となる。」などと
記載されている。同研究会の会員数は、昭和六三年一一月八日現在で二〇名以上に
及んでいる。
5(一) 控訴人文書は、別紙(3)のような形式のもので、第一頁の最上段に
「ウォールストリート・ジャーナル 89年9月28日木曜日」というように、被
控訴人新聞の名称、日付け及び曜日が記載され、特定日付けの被控訴人新聞に関す
るものであることが明らかにされている。
(二) 一九八九年九月二八日付けの控訴人文書(疎甲第一号証)についてみる
と、同文書は一一頁からなるが、同文書には、〔1面〕という表題のもとに、同日
付けの被控訴人新聞(疎甲第八号証)の第一頁から第二六頁までの掲載記事に対応
する分がA1からA78までの番号が付されて記載され(但し、三項目は欠番)、
〔マーケットプレース〕という表題のもとに、右被控訴人新聞の第二七頁から第三
三頁までの掲載記事に対応する分がB1からB27までの番号が付されて記載さ
れ、〔マネー&インベスティング〕という表題のもとに、右被控訴人新聞の第三五
頁から第六二頁までの掲載記事等に対応する分がC1からC42までの番号が付さ
れて記載されている。
 右A1ないしA78、B1ないしB27、C1ないしC42の各記述は、被控訴
人新聞における記事等の割付順序と原則としてほぼ同様の順序で配列されている
(頁順により、同一頁内の複数の記事等については左上、左下、右上、右下の順に
よる。)。
 右控訴人文書において、〔一面〕中の〈主要経済ニュース〉という表題のもとに
記載されているA1ないしA13は、右被控訴人新聞の「Business an
d Finance」欄に記載されている経済ニュース(別紙(1)の番号1ない
し13)及びその詳細記事にそれぞれ対応するものであり、〈主要国際ニュース〉
という表題の下に記載されているA14ないしA26(A15は欠番)は、右被控
訴人新聞の「World-Wide」欄に記載されている国際ニュース等(別紙
(1)の番号15ないし26)及びその詳細記事にそれぞれ対応するものである。
 右被控訴人新聞に掲載されている記事等は一七〇程度であるが、このうち控訴人
文書において対象とされていないものは一〇項目程度であり、被控訴人新聞に掲載
されていない記事等が控訴人文書の対象とされていることはない。
(三) 被控訴人新聞において用いられている、前記「What’s News
-」「Business and Finance」「World-Wide」
「MARKETPLACE」「MONEY &INVESTING」という表題の
他に、被控訴人新聞において記事の分類のために用いられている、「LEISUR
E & ARTS」「REVIEW & OUTLOOK」といった表題について
も、控訴人文書においては「レジャー&アート」「社説&論評」と訳して使用され
ている。
 なお、控訴人文書には、被控訴人新聞に掲載されている広告や相場表は記載され
ていない。
(四) 控訴人文書は、一項目につき一行(一行当たり約三四字)ないし三行程度
の文章からなっていて、被控訴人新聞の記事等と比べると相当短いものであり、項
目毎にみるならば、同記事等におけるような詳細な情報を提供するものではない
が、控訴人文書の各記述はほとんど、それぞれ対応する被控訴人新聞の記事等の核
心的事項を抄訳したもの、あるいは抄訳したものを若干言い換えたものや、記事全
体の趣旨を要約的に表現したものであって、被控訴人新聞の記事等に具現されてい
る情報の核心的事項はおおよそ把握し得る内容のものとなっており(このことは、
例えば、別紙(1)、(2)の各①、②の記載と、別紙(3)のA1、A2の記載
との対比によっても認め得るところである。)、控訴人文書においては被控訴人新
聞の掲載記事のほとんどがその対象となっていることと相まって、控訴人文書によ
れば、特定の日付けの被控訴人新聞がどのような客観的な出来事を取り上げ、それ
にどのような重要性を与えているかの概要を知ることができるものとなっている。
6 控訴人は、昭和六三年四月頃から被控訴人より再三著作権侵害を理由とする中
止の要請を受けながら、控訴人文書の作成・頒布行為を中止せず、殊に平成元年五
月には警告書と題する内容証明郵便で中止を求められながら、同年一一月二〇日付
けで、会員に対し、「著作権上の問題が生じたので、記事の原文コピーサービス及
び全訳サービスを中心するが、これに代わるものとして日本語要約サービス(控訴
人文書の作成・頒布)については引き続き行う」旨を記載した文書を送付してい
る。
二 前記認定事実によれば、被控訴人新聞の紙面は、報道記事、社説・論評が主要
な部分を占め、その他に各種相場表、広告等によって構成されているところ、被控
訴人の従業員である編集担当者は、そのもとに集められた多数の記事等の中から、
被控訴人新聞の一定の編集方針に従い、またニュース性を考慮して、情報として提
供すべきものを取捨選択し、その上で各記事等の重要度や性格・内容等を分析し、
分類して紙面に配列しているものであって、被控訴人新聞のこのような紙面構成
は、編集担当者の精神的活動の成果の所産であり、また被控訴人新聞の個性を形成
するものであるから、特定の日付けの紙面全体は、素材の選択及び配列に創作性の
ある編集著作物と認めるのが相当であり、その編集著作権は、被控訴人新聞を発行
する被控訴人に帰属するものというべきである。
三 そこでまず、既に発行された被控訴人新聞の編集著作権に基づく控訴人文書の
作成等に対する差止めの可否について検討する。
 新聞は、社会において日々生起するさまざまな出来事を迅速に、かつ幅広く伝達
するための刊行物であるから、素材の選択によって編集著作物としての創作性を有
するものと評価し得ることの最も重要な要素は、まず、収集された素材である多数
の記事に具現された情報の中から、一定の編集方針なり、ニュース性等に基づき、
伝達すべき価値のあるものとして、どのような出来事に関する情報を選択して表現
しているかという点に存するものと解される。また、配列についていえば、選択さ
れた情報(記事)がその重要度や性格・内容等に応じてどのように配列されている
かという点にあるものと解される。
 被控訴人新聞が編集著作物性を有するものと認められるのも右の趣旨によるもの
であるから、控訴人文書の作成・頒布が被控訴人新聞の編集著作権を侵害するもの
であるか否か、すなわち、控訴人文書が被控訴人新聞の翻案であるか否かは、控訴
人文書が被控訴人新聞に依拠して作成されたものであるか否か、その内容におい
て、当該記事の核心的事項である被控訴人新聞が伝達すべき価値のあるものとして
選択し、当該記事に具現化された客観的な出来事に関する表現と共通しているか否
か、また、配列において、被控訴人新聞における記事等の配列と同一又は類似して
いるか否かなどを考慮して決すべきものと解するのが相当である。
 ところで、控訴人文書は、特定の日付けの被控訴人新聞に関するものであること
が明らかにされていること、被控訴人新聞に掲載されている記事等のうち控訴人文
書において対象とされていないものは僅かであり、被控訴人新聞に掲載されていな
い記事等が控訴人文書の対象となっていることはないこと、控訴人文書の各記述は
ほとんど、それぞれ対応する被控訴人新聞の記事等に具現されている情報の前記核
心的事項をおおよそ把握し得る内容のものとなっており、控訴人文書によれば、特
定の日付けの被控訴人新聞がどのような出来事を取り上げているかの概要を知るこ
とができること、控訴人文書においては、被控訴人新聞の掲載順序にそれぞれ対応
する分が、被控訴人新聞において用いられている表題と同様の表題のもとにそれぞ
れ区分されて、被控訴人新聞における割付順序とほぼ同様の順序で配列されている
ことなど前記一項5に認定の事実によれば、控訴人文書は被控訴人新聞に依拠して
作成されたものであり、内容において、当該記事の核心的事項である被控訴人新聞
が伝達すべき価値のあるものとして選択し、記事に具現化された客観的な出来事に
関する表現と共通している上、被控訴人新聞における記事等の配列と類似している
ことが認められるから、控訴人文書は対応する特定の日付けの被控訴人新聞の翻案
に当たり、控訴人文書の作成・頒布は被控訴人新聞の編集著作権を侵害するものと
認めるのが相当である。
四 次に、将来の控訴人文書の作成・頒布行為に対する差止めの可否について検討
する。
1 著作権法一一二条は、著作権を侵害するおそれがある者に対し、その侵害の予
防を請求することができる旨規定しているから、既に著作権が発生している場合に
は、たとえ侵害行為自体はいまだなされていない段階においても、予測される侵害
に対する予防を請求することができることはいうまでもない。
 問題は、請求の根拠となる著作物が口頭弁論終結時に存在しておらず、将来発生
することとなる場合にも将来の給付の訴えとして差止請求を求めることができるか
という点にある。
 民事訴訟法二二六条は、将来の給付の訴えについて、予めその請求をする必要が
ある場合にはこれを認めているが、この訴えが認められるためには、その前提とし
て、権利発生の基礎をなす事実上及び法律上の関係(請求の基礎たる関係)が存在
していることが必要であり、したがって、将来発生する著作権に基づく差止請求を
無条件に認めることはできない。
 しかし、新聞の場合について考えてみると、当該新聞が将来も継続して、これま
でと同様の一定の編集方針に基づく素材の選択・配列を行い、これにより創作性を
有する編集著作物として発行される蓋然性が高く、他方、これまで当該新聞の発行
毎に編集著作権侵害行為が継続的に行われてきており、将来発行される新聞につい
てもこれまでと同様の編集著作権侵害行為が行われることが予測されるといった事
情が存する場合には、著作権法一一二条、民事訴訟法二二六条の各規定の趣旨、並
びに新聞は短い間隔で定期的に継続反復して発行されるものであり、発行による著
作権の発生をまってその侵害責任を問うのでは、実質的に権利者の救済が図れない
こと、新聞においては、取り上げられる具体的な素材自体が異なっても、一定の編
集方針が将来的に変更されないことが確実であれば、編集著作物性を有するものと
扱うことによって法律関係の錯雑を招いたり、当事者間の衡平が害されたりするお
それがあるとは認め難いことに鑑み、将来の給付請求として、当該新聞が発行され
ることを条件として、予測される侵害行為に対する予防を請求することができるも
のと解するのが相当である。
2 本件についてみるに、①被控訴人は、年間の売上高が一三億ドルで、「フォー
チュン」誌の選ぶ五〇〇社ランキングにおいて二六四位にランクされるなどの有力
メディア企業であること、及び被控訴人新聞は、一八八九年に創刊され、以来継続
して発行されている米国最大の日刊新聞であって、従前から一定の編集方針を有
し、これを堅持していることからすれば、被控訴人新聞は、今後も従前からの一定
の編集方針を堅持し、素材の選択・配列について創作性のある新聞として、継続し
て発行される蓋然性が極めて高いものと認められ、したがって、被控訴人が将来発
行する被控訴人新聞も、これまでと同様の編集著作権を取得するものと認めるのが
相当であること、②控訴人は、昭和六一年九月から、被控訴人新聞が発行される毎
に継続して控訴人文書を作成・頒布してきたものであって、これが被控訴人新聞の
編集著作権の侵害に当たることは前記認定、説示したところであるが、更に、
控訴人は被控訴人からの中止要請に対し、記事原文コピーサービス等は中止したも
のの、控訴人文書の作成・頒布は中止せず、かえって顧客である会員に対し、今後
もこれを継続する旨を記載した文書を送付していることを併せ考えれば、控訴人
は、将来被控訴人新聞が発行される毎に、これに依拠してこれまでと同様の控訴人
文書を作成・頒布して編集著作権侵害行為を行うであろうことも確実であると認め
られること、③控訴人文書は、被控訴人新聞の発行後直ちに作成・頒布されるもの
であるから、被控訴人において、被控訴人新聞を発行する都度、対応する控訴人文
書の作成・頒布の予防ないし停止を請求すること、そしてその目的を達成すること
は、事実上極めて困難であるといわざるを得ないことを総合すると、被控訴人は、
将来の給付請求として、被控訴人新聞が発行されることを条件に、これに対応する
控訴人文書の作成・頒布行為の予防を求めることができるものというべきである。
3 控訴人は、著作権は著作物の創作という事実によって発生するものであって、
著作物の存在しない、その内容さえ分からない段階で著作物としての保護が与えら
れるなどということは、著作権法上考えられないことであり、また、具体的著作物
が作成されていない段階で将来著作物が作成されたら、その著作権侵害の排除を求
めるということは具体的法律関係に関する争訟とはいえず、将来発行される被控訴
人新聞についての編集著作権に基づく差止請求は理由がない旨主張する(控訴人の
主張5)。
 しかし、前記2に述べた理由により、被控訴人が将来発行する被控訴人新聞も、
これまでと同様の編集著作権を取得するものと認めるのが相当であることを前提と
し、かつ、将来の給付の必要性がある場合に当たるとして、被控訴人新聞が発行さ
れることを条件に、発行により生じる編集著作権に基づく予防請求を認めたもので
あり、もとより具体的法律関係に関する争訟性も充足しているものであって、控訴
人の右主張は理由がない。
五 保全の必要性の存否について検討する。
 前記一項に認定の事実によれば、控訴人は、今後も引き続き控訴人文書を作成・
頒布するものと認められるところ、右行為により、被控訴人新聞の購読者が控訴人
文書の講読に切り替えたり、あるいは、被控訴人新聞の潜在的講読予定者が控訴人
文書を講読したりすることも十分考えられるところであり、これによって、被控訴
人が著しい損害を被るおそれがあると認められるから、保全の必要性があるものと
いうべきである。
 控訴人は、保全の必要性がない旨反論するが(控訴人の主張6)、採用できな
い。
六 控訴人の各主張(同5、6は除く。)について検討する。
1 控訴人は、憲法二一条が定める表現の自由は情報の受け手の知る権利をも保障
するものであり、特に時事に関する情報の流通は民主制にとって不可欠であるとこ
ろ、著作権法は著作者に対し創作への報償として一定の権利を付与するものの、情
報の過度の独占は文化の発展を阻害することから、同法は、創作への報償と情報の
自由流通の間に適切なバランスをとることを目的とするものであり、また同法一〇
条二項は、表現の自由に由来する重大な要請のために著作権は一定程度道を譲るべ
きことを宣言した規定と解すべきであるとして、控訴人文書のように、ニュース又
は時事の事実を提供するものであって、被控訴人新聞の記事に代替するものではな
く、むしろアクセスを容易にするだけの情報を提供するにすぎないものが著作権法
の名の下に禁止されることは時事情報の流通を過度に制限するものであって許され
ない旨主張する(控訴人の主張1)。
 憲法二一条が定める表現の自由が、情報の受け手の知る権利をも保障するもので
あり、特に時事に関する情報の流通が民主制にとって不可欠であることは、控訴人
主張のとおりであり、また、著作権法は、著作物等の公正な利用に留意しつつ、著
作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とするもので
ある(同法一条)。
 ところで、事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は言語の著作物に該当しな
い旨を定めた著作権法一〇条二項は、事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は
同法二条一項一号にいう「思想又は感情を創作的に表現したもの」に該当しないこ
とから、保護の対象にならない旨を確認的に規定したものであると解され、時事に
関する情報が民主性にとって重要であるという観点から権利制限をしたものとは解
し難く、したがって、控訴人主張のように、同法一〇条二項が、表現の自由に由来
する重大な要請のために著作権は一定程度道を譲るべきことを宣言した規定である
と解することはできない。
 そして、そもそも控訴人文書は、前記認定のとおり、被控訴人新聞の翻案に当た
るものであって、単に被控訴人新聞へのアクセスを容易にするだけの情報を提供す
るにすぎないというものではなく、控訴人文書の作成・頒布を差止めることが時事
情報の流通を過度に制限するものとは認め難いから、控訴人の右主張は理由がな
い。
2 控訴人は、編集著作物は与えられた素材を選択・配列するという、それ自体で
は創作性の発揮しにくい行為を根拠とするから、その保護も弱くならざるを得ない
し、新聞においては、素材の特性から、事実自体の独占につながらないように格別
の配慮が必要である旨主張する(控訴人の主張2)。
 しかしながら、素材を選択・配列することが創作性を発揮しにくい行為であり、
その保護も弱くならざるを得ない旨の一般論自体採用することができない。そし
て、新聞の場合、素材である多数の記事の中から、伝達すべき情報として何を取り
上げ、これをどのような形で取り扱うかは、当該新聞の個性を形成するものであ
り、新聞としての創作性を発揮し得るものであるところ、被控訴人新聞は、一定の
編集方針に基づいた伝達すべき情報の選択、及びその配列に創作性を認め得るもの
であるから、これに対して所定の保護が与えられるのは当然であり、このことが事
実自体の独占につながるということにはならないのであって、この点に関する控訴
人の主張も理由がない。
3 控訴人は、素材の表現が異なれば、素材に依存する編集著作物の表現も異なら
ざるを得ず、また、新聞は時事に関する編集著作物であって、その編集著作物性が
保護されるのは、対象とされる文書の素材=要素が、編集の対象である記事等と同
一又は少なくとも翻案物に当たる場合に限られるところ、本件においては、言語表
現としての素材のレベルが全く異なっており、控訴人文書の文章は、被控訴人新聞
の記事の抄訳でも要約でもなく、極めて簡略な要旨あるいは目次ないし索引程度の
ものであって、原文との間の代替性は完全に失われていること、控訴人文書には被
控訴人新聞の記事のすべてが要旨化されて記載されているわけでもないこと、控訴
人文書は、総合的な意味での配列において被控訴人新聞とは全く異なっていること
を理由として、控訴人文書は被控訴人新聞と翻案関係にたたない旨主張する(控訴
人の主張3)。
 新聞記事は、客観的な出来事を素材とするものであっても、一定の観点ないし価
値基準の下に、収集した客観的事実のみならず、その背景事実や第三者の発言等の
情報を評価、確認して当該記事に盛り込む事項を選択し、これを構成して表現する
ものであるところ、新聞が、素材の選択によって創作性を有するものと評価し得る
ことの最も重要な要素は、収集された素材である多数の記事に具現された情報の中
から、一定の編集方針なり、ニュース性等に基づき、伝達すべき価値のあるものと
して、どのような客観的な出来事に関する情報を選択して表現しているかという点
に存するものというべく、したがって、新聞の編集著作権に対する翻案権の侵害が
成立するためには、対象となる文書が、当該新聞に依拠して、そこで取り上げら
れ、記事に具現化されている情報の核心的事項である客観的な出来事の表現と共通
するものを同様に要素としていれば足り、両者の個々の素材(要素)自体の具体的
な表現や詳細な内容が相当程度において一致していることまでは必要ないものと解
するのが相当である。また、選択された情報(記事)がその重要度や性格・内容等
に応じてどのように配列されているかという点に当該新聞の配列上の特徴が存する
のであるから、対象となる文書が、当該新聞における特徴的な配列と一致又は類似
していれば翻案関係にあるものというべきである。
 しかして、前記三項に認定のとおり、控訴人文書は被控訴人新聞に依拠して作成
され、同新聞で取り上げている情報のほとんどをその要素として取り込んでいるこ
と、控訴人文書の文章は一項目につき一行ないし三行程度の短文であるが、被控訴
人新聞の個々の記事の前記核心的事項をおおよそ把握し得る内容のものであって、
極めて簡略な要旨あるいは目次ないし索引程度のものとはいえず、また原文との間
の代替性が完全に失われているとまではいえないこと、控訴人文書の体裁は、被控
訴人新聞の紙面全体のレイアウトとは異なっているが、被控訴人新聞の掲載記事に
それぞれ対応する文章が、同新聞において使用されている表題と同様の表題のもと
にそれぞれ区分され、ほぼ同様の割付順序で配列されていることに照らして、控訴
人の右主張は理由がないものというべきである。
4 控訴人は、データベースのために作成される抄録や要旨のような原著作物自体
を代替しないものは、許諾なしで、データベースに編入できるものとされていると
ころ、この考え方は、電子的手段によらない編集物についても当然適用できるもの
であるなどとして、被控訴人新聞の各記事に対応する控訴人文書の各記述は、利用
者に原情報の検索手段を提供する書誌的情報であって、最小限の要旨以外の何もの
でもなく、これにより被控訴人新聞の個々の記事についても、全体についても代替
し得るものではないから、これらを非電子的編集物である控訴人文書に編入するこ
とは当然許容されるものである旨主張する(控訴人の主張4)。
 しかし、前記3において説示したとおり、新聞においては、素材である多数の記
事に具現された情報の中から、伝達すべきものとして、どのような客観的な出来事
に関する情報を選択しているかという点に素材の選択による創作性の最も重要な要
素が認められるのであるから、新聞の編集著作権に対する翻案権の侵害が成立する
ためには、前記のとおり、当該新聞及び対象となる文書における個々の素材(要
素)自体の具体的な表現や詳細な内容が相当程度において一致するものであること
までは必要でなく、当該記事の核心的事項である客観的な出来事の表現をおおよそ
把握し得るものであれば足りるものと解するのが相当であって、編入につき完全な
代替性を基準とするデータベースの場合と同一に論ずることはできない。のみなら
ず、被控訴人新聞の各記事に対応する控訴人文書の各記述が、利用者に原情報の検
索手段を提供する書誌的情報にすぎないものとは認め難い。
 したがって、控訴人の右主張は理由がない。
5 控訴人は、控訴人の主張7記載の理由により、原判決が控訴人文書の発行事前
差止仮処分を認めたことは憲法違反である旨主張する。
 出版物の頒布等の事前差止め、すなわち表現行為に対する事前抑制は、当該出版
物がその自由市場に出る前に抑止して、その内容を読者の側に到達させる途を閉ざ
し、又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、公の批判の機会を減少させるもの
であり、また、事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざるを得ない
ことなどから、事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、実
際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられ、したがって、表現行為
に対する事前抑制は、表現の自由を保障し、検閲を禁止する憲法二一条の趣旨に照
らし、厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容され得るものと解される(最高
裁昭和六一年六月一一日判決・民集四〇巻四号八七二頁参照)。
 ところで、著作権侵害行為については、著作権法一一二条により事前差止めが認
められているし、表現行為に対する事前抑制が許容されるために右のような要件が
必要であるとされる前記理由に鑑みれば、事前差止めであっても、前記のような弊
害が生じる危険性がほとんど存しない場合には、当該事前差止めは、実質的には、
事前抑制に当たらないものと解するのが相当である。
 本件において、控訴人は、昭和六一年九月から、被控訴人新聞が発行される毎に
継続的に控訴人文書を作成・頒布してきたものであり、すでに作成・頒布された控
訴人文書は被控訴人新聞の編集著作権を侵害するものであること、原判決が発行事
前差止めの対象とした原判決別紙文書目録(一)、(二)の文書は、すでに発行・
頒布された控訴人文書の構成と同一であって、具体的な要素(素材)の点は別とし
て、その他の内容はすでに公のものとされているとみてよいこと、右文書目録
(一)、(二)の記載は、侵害文書を構成するものとしての特定として明確である
こと、及び、原判決は口頭弁論を経てなされたものであることを総合すると、原判
決が、控訴人文書に対する発行事前差止めの仮処分を認めたことによって、前記の
ような弊害が生じる危険性があるとは認め難く、実質的には事前抑制に当たらない
ものと認めるのが相当である。
 また、憲法二一条二項前段にいう検閲とは、行政権が主体となって、思想内容等
の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる
一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査したうえ、不適当と
認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指すと解すべき
であるところ、仮処分による事前差止めは、表現物の内容の網羅的一般的な審査に
基づく事前規制が行政機関によりそれ自体を目的として行われる場合と異なり、個
別的な私人間の紛争について、司法裁判所により、当事者の申請に基づき差止請求
権等の私法上の被保全権利の存否、保全の必要性の有無を審理判断して発せられる
ものであって検閲には当たらないものというべきであるから(前記最高裁判決、及
び最高裁昭和五九年一二月一二日判決・民集三八巻一二号一三〇八頁参照)、原判
決が控訴人文書に対する発行事前差止めの仮処分を認めたことが、憲法二一条二項
前段が規定する検閲の禁止に違反するものということはできない。
 控訴人は、著作権を侵害する表現は、侵害される著作権者の利益を保護するため
に一定の制約が認められるが、著作権を侵害する表現といえども憲法二一条の保障
する表現である以上、より制限的でない他のとり得る手段がないかどうか、事前抑
制禁止の法理・検閲禁止に違反していないかどうかを、規制される表現の内容、表
現によって侵害される著作権の侵害の程度・明白性、著作権の保護回復の可能性の
有無などを総合的に衡量して、いかなる方法・程度の規制が適当であるかを判断し
なければならない旨主張して、考慮されるべき事情を挙示する。
 しかし、控訴人文書の作成・頒布による被控訴人新聞の編集著作権に対する侵害
行為は明白であり、しかも昭和六一年九月以降継続的に、侵害行為が行われてきた
ものであること、被控訴人新聞の編集著作権を保護するためには控訴人文書の発行
差止めが有効かつ適切であること、その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、
原判決が控訴人に対して、控訴人文書の発行事前差止仮処分を命じたことが、事前
抑制又は検閲に当たるとは到底認められない。
 したがって、控訴人の主張7は理由がない。
6 控訴人は、控訴人の主張8記載の理由により、控訴人文書は公正利用に当たる
旨主張する。
 著作権法一条は、著作権法の目的につき、「これらの文化的所産の公正な利用に
留意しつつ、著作権者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを
目的とする。」と定め、同法三〇条以下には、それぞれの立法趣旨に基づく、著作
権の制限に関する規定が設けられているところ、これらの規定から直ちに、わが国
においても、一般的に公正利用(フェアユース)の法理が認められるとするのは相
当でなく、著作権に対する公正利用の制限は、著作権者の利益と公共の必要性とい
う、対立する利害の調整の上に成立するものであるから、これが適用されるために
は、その要件が明確に規定されていることが必要であると解するのが相当であっ
て、かかる規定の存しないわが国の法制下においては、一般的な公正利用の法理を
認めることはできない。
 なお、念のため付言するに、フェアユースに基づく著作権の制限を規定している
アメリカ合衆国著作権法一〇七条は、著作物の使用がフェアユースとなるかどうか
を判断するについて、(1)使用の目的及び性格(使用が商業性を有するか非営利
の教育的な目的であるかという点を含む)、(2)著作権のある著作物の性質、
(3)著作物全体の関係における使用された部分の量及び重要性、(4)著作物の
潜在的市場又は価値に対する使用の及ぼす影響、という要素を考慮すべきであると
規定しているところ(疎乙第一二八号証の一)、控訴人は、右のような判断指針の
適用を前提として、本件につき公正利用の法理が認められるべきであるとするので
あるが、右のような指針に基づいて判断したとしても、控訴人文書の被控訴人新聞
の利用が営利を目的とするものであることは否定できないこと、控訴人文書は被控
訴人新聞に比べると量的には非常に少ないものとなっているが、控訴人文書の各記
述は被控訴人新聞の記事等により伝達しようとしている情報の核心的事項を表現し
ているものであって、単に被控訴人新聞の報道するニュースへのアクセスを可能に
するといった程度のものではなく、控訴人文書によれば、特定の日付けの被控訴人
新聞がどのような出来事を取り上げているかの概要を知ることができること、控訴
人は、前記一項に認定のとおり、控訴人文書を講読すれば、わざわざ被控訴人新聞
を講読しなくとも同新聞の掲載記事の内容が把握できるとも受け取れる宣伝広告を
していること、控訴人が、今後も引き続き控訴人文書を作成・頒布することによ
り、被控訴人新聞の購読者が控訴人文書の講読に切り替えたり、あるいは、被控訴
人新聞の潜在的講読予定者が控訴人文書を講読したりすることが考えられることな
どからすると、被控訴人新聞がニュース報道を主目的とした新聞であること、控訴
人文書にもそれなりの有用性があることを考慮しても、控訴人文書が公正利用に当
たるものということはできない。
 したがって、控訴人の主張8は理由がない。
七 以上のとおりであるから、控訴人に対し、原判決別紙文書目録(一)の文書の
作成・頒布、及び、特定日付けの被控訴人新聞が発行されることを条件とする、同
目録(二)の文書の作成・頒布の各差止めを命じた原判決は正当であり、本件控訴
は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九五条、八
九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 伊藤博 濱崎浩一 押切瞳)
別紙(1)
主要ニュース(What’ News)
(ビジネス・ファイナンス)
① IBM社、第3四半期及び通年の収益は、アナリストの予測をかなり下回る見
込みであることを発表。新型のディスク駆動装置導入の遅れ、機器のリースの広ま
り、ドル高を理由としてあげる。アナリストの中の多くは、IBM社が高望みをし
たためと指摘。影響は1990年以降も続くとのこと。
② ソニー、コロンビア・ピクチャーズ社の最終買収契約を調印した。買収金額
は、1株27ドル、総額34億ドルとなった。映画・芸能会社の役員【P1】氏と
【P2】氏をコロンビア社の役員職に任命することが検討されている。
③ ブラニフ航空は、昨日、そのルートの多くで欠航を出し、大財政難であるとの
憶測を呼んでいる。昨晩、役員会議が行われたとのことである。
④ オペック会議は、石油市場における価格上昇のための割当制度についての新方
式が合意されぬまま閉会した。その代り、現行の制度を前提として、産出高規制が
緩和された。メンバーの中には、決定には従わない意向を表明する国もある。
⑤ 【P3】は、企業買収に関する9つの重罪訴因により、4年間の懲役に処せら
れるとともに150万ドルの罰金が課せられた。
⑥ 下院は、企業に対し幹部と従業員に同様の付加給与支給を強制していた第八九
章税条項の撤廃案を可決した。
⑦ 四大証券会社、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、シェアソ
ン・リーマン・ハットン、ソロモン・ブラザーズは、証券価格情報提供サービスの
ための合併企業設立に動いている。
⑧ クラフト・ジェネラル・フーズ社は現在社長の【P4】氏が昇格し、次期会長
兼最高経営者に就任すると発表している。マーケッティングの専門家である【P
4】氏は、【P5】氏の後任となる。同氏は当初年末に辞任すると予想されてい
た。
⑨ トヨタは、最も人気のある車種につき、1990年に2.5%以内の値上げを
する予定だ。米国市場におけるシェア拡大策の一環とみられる。
⑩ 各中央銀行が米国ドルを売り続ける中、ドル価値は急落した。株価は上昇した
が、長期債券価格が落ち込みをみせた。
⑪ ペプシ・コーラ社は、来月から中西部で、代表商品である清涼飲料水のカフェ
イン増量商品、ペプシA.M.を試験販売する。
⑫ アップル・コンピュータ社はU.S.メモリーズ・インクへの投資を行わない
ことを決定した。U.S.メモリーズ・インクは、コンピュータ用半導体で、日本
からのシェアを奪回するため6月に設立された合同企業体である。
⑬ サッフス・フィフス・アベニューの会長は、専門小売り店のレバレッジド・バ
イ・アウトを進める意向である。サックスの親会社B.A.Tインダストリーズ
は、今週火曜日、所有の小売店グループを売り出す計画であることを表明した。
⑭ 市況
(株式)売買高158,400,000株、ダウ平均・工業2673.06、9.
12
上昇/運輸1427.63、2.67上昇/公益215.17、0.31下落
(債券)シェアソン・リーマン・ハットン・トレジュリー・インデックス328
7.17、3.02下落
(商品)ダウ・ジョーンズ先物インデックス129.94、0.23下落
現物インデックス129.46、0.51下落
(ドル)140.15円、2.25安、1.8794マルク0.0144安(国際
ニュース)
⑮ 【P6】大統領は、ポーランド経済の復興を援助する「革新的な」対策案を明
示した。
 国際通貨基金(IMF)と世界銀行に対する演説の中で、大統領は、東欧圏内に
芽生えている民主主義を支援するのは「今しかない」と説得するとともにワルシャ
ワの新脱共産主義政府を「至急」援助すべきだと呼びかけた。一方、ポーランドの
財務長官は、必要物資を輸入するのに5,000ドルの融資を求めると同時に、同
国でも「破綻をきたしてもおかしくない状態」にあると警告する。
 来年に予定されている【P7】書記長との会談までに、長距離核兵器削減条約が
締結される可能性は十分にあると【P6】大統領は述べる。
 かかる表明は、戦略軍備交渉上の合意に関し以前表明した展望と比べ、より楽観
的な響きが感じられる。
 【P8】国防長官は、ペンタゴンによるソ連軍備力の査定結果を発表し、「西側
の推測は、あまりにも突飛すぎる」と結論した。
⑯ 上院は、総予算費用31億八8万ドルの麻薬・犯罪問題対策案を可決し、19
90年予算に組み込まれることになる。そのため、国内及び国防費が削減されるこ
とになる。この議案は97対2で可決され、運輸局及び高速道路・空港トラスト・
ファンドに総額264億ドルを充当することになる法案とともに包括案を構成する
ことになる。
⑰ バージニア州シャーロットヴイルで【P6】大統領は、全米の州知事と会談
し、米国の教育問題について討論をした。【P6】氏は、授業における「凡庸性」
を追放すべきだと主張した。州知事全員を迎えた2日間にわたるサミット会議の幕
開けとして、【P6】氏は、教育レベルの向上、文盲率・退学率の削減を実現する
には、「新方向」を模索することが必要と宣言した。
⑱ スロベニア共和国は、ユーゴスラビア連合政府の支配に抵抗を示し、連合政府
より脱退する権利を有すると宣言した。スロバニア立法府による立憲上の変化は、
ユーゴスラビア国内の政治的混乱を助長している。このようなスロベニア共和国の
動きは、連邦政府による共和国内の軍事配備を違法化するとともに、同政府が戒厳
令を指令する際、スロベニア国政府の承諾を得なければならなくなる。
⑲ ケープ州のイースト・ロンドンの町内で、数千名の南ア人が集まり、平和的な
反アパルトヘイト・デモが行われた。警察の大部隊がこの行進を監視した。ある情
報筋によると、多様な人種から成る4万人の人々が参加したとのことだ。プレトリ
アの人種差別に対する抗議運動として、この2カ月間中最大のものとなった。
⑳ マニラ市でクェイルとフィリピン内の米軍基地に反対する2,000人のフィ
リピン人デモ隊が警察官と衝突した。150人以上のデモ参加者が逮捕された。1
991年9月で満了となる6つの基地に対するリース契約の延長について話し合い
たいという米国からの要請に対し、【P9】大統領は応じる旨を表明した。話し合
いは今年12月に開催される。
(21) コロンビアの【P10】大統領は、M―19ゲリラ・グループに平和的
解決を取り付けたと発表した。協定によると、ゲリラ・グループが武器を放棄する
ことと引き換えに、政府から農民に土地、貧困者に住居が供給されるとのことだ。
今日、【P6】大統領と会する【P10】氏は麻薬撲滅運動は、終わる見込みがな
いと伝えた。
(22) 観光用飛行機がグランド・キャニオン空港の滑走路より、半マイル離れ
た地点で墜落した。アリゾナ州当局によると、少なくとも10名の死者が出たとの
ことだ。当該双発飛行機に同乗していた他の11名も重体であるとのこと。
(23) 先週、ハリケーン・ヒューゴにより甚大な被害を受けたサウス・カロラ
イナ州で救援団体が衣服・合板を配付した。およそ30万の住居・建物には、未だ
電力等が供給されておらず、チャールストンの住民6万5千人のうちの約5万人は
ホームレスとなっている。
(24) 住宅都市開発省の前高官補佐役は、下院小委員会による同省内の汚職取
り調べに対し、自己負罪拒否の憲法上の権利を主張し、質問に対する答弁を拒否し
た。前同省長官を努めていた【P11】氏の補佐役であった【P12】氏は、あら
かじめ嫌疑をもって取り調べに挑もうとする同省委員会の姿勢を非難した。
(25) 連邦政府役人によると、【P13】国務長官は、2月に予定されている
ニカラグワの選挙で、【P14】大統領の勝利を阻止するための民間の外国向け資
金を求めているとのことだ。ニューヨークで欧州の外務大臣一同と会した【P1
3】氏は、会談で「全般的に支持を受けた」ものの、ニカラグワの選挙に際し、具
体的な支援を取りつけることはできなかったということだ。
(26) 【P15】上院院内総務は、【P6】大統領の対応策は、「あまりにも
臆病」と非難し、ソ連政府が国外移住を自由化することを承諾したのと引換えに、
貿易制裁を一時的に停止するよう促した。それに対し、【P6】氏は、ソ連政府が
法制化するまで待ちたいと返答した。
別紙(2)
① IBM社、第三四半期以降、及び年収益はアナリストの収益見込みを大きく下
回ると予想
 インターナショナル・ビジネス・マシーンズ社(IBM)は、同社の第三四半期
及び年収益は、株式アナリストの予想を大きく下回るだろうと発表した。発表後、
IBM株価は6ドル減の111ドル50セントに転落し、他のコンピューター関連
社株にも影響を及ぼした。
 アナリストの多くは、IBM社が現状を無視し、公算を大きく持ち続けたためと
指摘すると同時に、最終四半期の収益は同社の見込みを下回り、来年度への影響も
考えられると予想する。
 ニューヨーク州アーモンクに本社を置くIBM社は、主要な原因は、ハイ・エン
ド・ディスク駆動装置の導入の遅れにあるとしている。導入の遅れは、今四半期始
めに気づかれたものの、これほど収益に打撃を与える、とは予想もしなかったとの
ことだ。また、同社はコンピューター機器を導入するよりも賃貸する消費者の傾向
を指摘し、こうした流れが長期的には安定した収益につながるものの、短期的には
一時的な収益への打撃としてあらわれるだけだと分析した。その上、ドル高のため
外国支社からの莫大な収益をドルに換算すると価値が減じてしまうことも忘れず指
摘する。
 コンピューター業界では、最大手のIBM社は第三四半期の同社収益は、アナリ
ストにより元の1株2ドル10セントから2ドル30セントの予測範囲から1ドル
40セントから1ドル80セントに引き落とされるだろうとみている。即ち、昨年
よりも年収益が12億5千万ドル、1株価になおすと2ドル10セント価値を感じ
ることになる、昨年の1株価はMCI・コミュニケーションズ社株の売却により、
1株15セント水増しされている。
 今年の年収益については以前の予想価格、1株10ドルから10ドル50セント
の範囲から9ドル50セントから10ドルの範囲にとどまるであろうとIBM社は
予測を立てている。1988年の総年収額58億1千万ドル、1株価9ドル80セ
ントと比較すると、今年度収益は、ほぼ停滞を示している。ここ5年間のうち、1
989年度は景気停滞4年目となる。今回の予測破りは、一時期一株価12ドルと
いう好ましい予想が立てられる傾向に終止符を打つことになるであろう。
 アナリストの多くは、IBM社が表明した見込み数値が、第三四半期の予想数値
の範囲よりも下回って発表して以来、今年度の見込み収益に疑いを持ち出してい
た。
このような動きは、見込みを低く提示することにより、最終四半期には躍進の動き
を見せたかのような印象を与えようとする同社の策略でしかないと鋭く指摘する。
 「(ディスク駆動装置導入の遅れによる)打撃は、最終四半期に到来するだろう
と予想してました。」とサウンドビュー・フィナンシャル・グループ社のアナリス
ト、【P16】氏。「それが第三四半期に訪れるようでは…。」と言葉を濁す。
 ゴールドマン・サックス社のアナリスト、【P17】氏は今年度IBM社株価
は、同社が予想する数値範囲を割り、9ドルに落ち着くのではないかと予測を立て
る。
 ディスク駆動装置導入の遅れは予期せぬ結果をもたらした。このような技術面に
おける問題は、早期解決することもあれば、長期に渡って波紋を残すこともある。
報告によると消費者間の試用テストは上手く行ったものの、いざ商品として生産す
る段階で、滞りをみせているとのことである。コンピューターの専門家たちが「妖
術」と称するほど最近の先進技術は複雑難解のため、つい最近の例として、生産段
階での滞りが長期間に渡り悪影響を及ぼした例は多い。600億ドルの年収益のう
ち、60億ドルは駆動装置の売上にたよるIBM社は決断が望まれる。
 他社は、既にIBMに追いつき、同種の商品を売り出しているため、問題の駆動
装置の売出しにどうにかこぎつけても遅く、他社との値下げ交渉に敗れてしまうだ
ろう。それを避けるには、更にもう一歩前進して新商品を開発するしかない。IB
M社は当初既存商品でも十分にやっていけるとアナリストたちにふれ回っていた。
が、アナリストたちは、既存商品も大幅に値下げをしない限り、売上につながらな
いだろうと言っている。それに加えて、数ヶ月後には時代遅れとなってしまう商品
を購入するよりも、短期間のリースで使用したほうがよいとする消費者の思惑も売
上の上昇を阻んでいる。
 このようなリースの広まりは、購買を促進する一策としてIBM社自体が推進
し、最終に導いたものとアナリストたちは鋭くつく。
 「リース制度は、値下げに相当する手段だとみています。」と【P16】氏。
「IBMは、基本的に資本を競争の武器にしています。同時に、他社も値下げ競争
から退こうとしません。結果的に競争は続くばかりです。」
 今年は、倍の収益を上げたIBMのリース事業は、長期的には収益につながるか
もしれない。が、メリル・リンチ社の【P18】氏はこの賃貸制度によりIBMは
今年度10億ドルもの利益を逃す。
 制度の変化により、通貨換算により生じる問題は解消されるであろう。同時に、
一九八八年度の最終四半期は、ドル安であったため、第三四半期よりも注目される
であろう。
 IBM社は、収益問題のもう一つの理由として生産工程の改善をあげている。主
要枠組等にある集積回路の製造方法を改良する上で出費がかさんでいるとのこと
だ。通過換算については、一時的な問題として終わるだろう。
 同社の報告書は、IBMの製品・サービスの需要は上昇し続ける傾向をみせてい
るとしており、諸外国のあらゆる市場でも好成長を遂げるだろうという予想をして
いる。
 確かに、ワークステーション以外の生産工程自体には大きな欠陥はなさそうであ
る。ワークステーションについては来年早々に改良される予定だ。が、「投資者は
いらいらしている。うん、怒っているな。」とメリル・リンチ社の【P18】氏は
厳しくとがめる。
 昨日の株式取引では締め切りの時点で同社株価は2年前の株価の暴落以来、最低
の110ドルを示した。数年前の最高値、170ドル代よりも大きく下回る。
② コロンビア買収のため、ソニー、コカコーラと提携
 合意買収総額34億ドルに
 米国芸能業界において日本企業による最大買収計画に
 ソニーは、コロンビア・ピクチャーズ・エンターテイメント社を買収する最終的
契約を締結した。日本企業による米国芸能業界への最大の進出となった。2日間に
わたり、買収計画に関して詳細な話合いが行われた後、契約により、ソニーは1株
27ドル、総額34億ドルをベースとした公開買付を開始する。
 ソニーは、コロンビア社株を49%所有するコカ・コーラ社とオプション契約を
締結することにより、同所有株を買収しようとしている。同契約は、来週月曜日
に、コカ・コーラ社の役員会で可決される予定だ。ソニーはまたコロンビア社株の
3%を所有するアレン・アンド・カンパニーともオプション契約を締結している。
 昨日、コロンビア社株は、ニューヨーク株式取引市場における複合取引で、約4
90万株取り引きされ、株価は、締切り時点で、1株25セント上昇の26ドル5
0セントにおちついた。ウォール・ストリートのアナリストの中には、コカ・コー
ラ社がオプション契約を認可するまでに、ソニーよりも高い買呼値を提示するライ
バル社が出現する可能性はあると指摘するものもいる。「先3日間、強力な入札者
がでてきてもおかしくない。」とコロンビア社株の有力な株主の一人がいう。が、
コカ・コーラ社とソニー両社関係者たちは、そのような予想を否定する。
 ソニー関係者によると、公開買い付けは、来週火曜日に開始され、以後20日間
予定されているとのことだ。
 コカ・コーラ社株は、ニューヨーク株式取引市場で1株50セント上昇し、64
ドル62.5セントとなった。
 その間、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカの副会長【P19】氏によ
ると、グーバー・ピーターズ・エンターテインメント社の共同経営者である【P
1】氏と【P2】氏をコロンビア社の新規役員に任命することを検討中とのことで
ある。【P1】氏は、現在コロンビア社の会長と取締役を兼任している【P20】
氏の後を継ぐこととなる。【P2】氏も役員ポストに任命されるとのことである。
 ソニーはまた、つい最近までバリス・インダストリーズという名称であった、グ
ーバー・ピーターズ社を買収する計画をも検討中とのことだ。最新の国内店頭売買
株価によると、グーバー・ピーターズ社株は12ドル75セントであり、これに基
づいて算定すると同社は、総額約3900万ドルの価値を有することになる。【P
1】、【P2】両氏は、同社株の28%を所有する。昨日の時点では、この買収計
画は、まだ具体的な動きをみせていない。
 大きな難問といえば、グーバー・ピーターズ社がコロンビアのライバル社と提携
を結んでいることであろう。同社は、ワーナーとの提携により、大ヒット作「バッ
トマン」等の映画を製作している。つい先日、グーバー・ピーターズ社は、ワーナ
ーと新規にむこう五年間有効となる映画製作・配給の独占契約を締結したばかりで
ある。これにより、同社は、ワーナー社と「ボンファイア・オブ・ザ・ヴァニティ
ーズ」等を含めた数社の映画製作を実施していく予定だ。
 ワーナー社幹部は、昨日、コメントを避けるとともに、【P1】、【P2】両氏
もインタビューの問合せに対し、返答を返してこなかった。が、【P1】、【P
2】両氏とワーナーの会長、【P21】氏と社長の【P22】氏との親密な交友関
係を考えると、グーバー・ピーターズ社とソニーとの取引計画の噂は、大きな驚き
であったにちがいない。
 ワーナー社が、両氏との契約を破棄したとしても、数種の映画製作が進行してい
る今、実際にスタジオから手をひくのは難しい状況にある。
 ソニーの【P19】氏は、昨日、ワーナー社とグーバー・ピーターズ社間のやり
とりについて口を挟むのは、「不適当」であり、両社間で解決していくしかないと
述べた。
 ソニーの世界戦略
 ソニーのハリウッド産業への進出は、同社が目標とする「エンターテインメント
性を兼ね備えたソフトウェアとハードウェアの融合産業」を実現する上で、重大な
足がかりとなるだろう。2年前、CBSレコーズ・インコーポレーションを20億
ドルで買収し、レコード業界では最大手として踊り出た。すでに、同社は、コンパ
クト・ディスク・プレイヤーやステレオなどのオーディオ製造分野では、先頭にた
っている。
 ソニーは、以前から、同社のビデオ機械やテレビの販売と連結させて、映画等の
ソフト製品の供給経路を獲得したいと考えていた。映画の供給源を確保することに
より、レーザー・ディスクや8ミリビデオなど、最近のビデオ技術分野における売
上げを促進したい意向だ。
 昨今、コロンビア社の興業成績は冴えず、幹部の入れ替わりが相次ぐなど、不安
定な様相を示していたが、テレビ製作・映画配給事業による利益では、ハリウッド
屈指に入る。そのうえ、豊富に映画を所蔵する。ソニーは継続的に、一年以上かけ
て、コカ・コーラ、コロンビア両社と買収計画について、交渉を行ってきた。ソニ
ー側が、一株当たりの申込価格を数ドル高い価格に譲歩し、コカ・コーラが弾力的
な姿勢に転換したことにより、漸く合意に達することができた次第だ。
 ソニーの【P19】氏と彼のアドバイザーのブラックストーン・グループはこの
数か月間、コカ・コーラ社とその投資銀行側代表のアレン・アンド・カンパニーと
積極的に話を詰め、先週末最終的に契約締結に踏み切った。昨日、【P19】氏は
買収会社について語った。「映画作品を豊富に所有していると同時に、将来、大変
有望な企業と常々注目していたんですよ。」
 質的には、大変充実
 「最近、映画産業はあまり営業成績がよくないのは知ってますが、コロンビア社
の素地はしっかりしたものであると思っています。根本的な問題は何もないと考え
ています。」と【P19】氏は付け加える。映画製作については、「2、3本ヒッ
ト作品をだせば、業績はすぐ好転しますよ。」
 一方、コロンビア社の社長兼取締役を務める【P20】氏と専務取締役の【P2
3】氏は、辞職の意向を示し、今後も、芸能産業で活躍していきたいと表明してい
る。「私達は、あくまでもエンタテインメント産業にとどまるつもりだよ。」とイ
ンタビューで答えた。また、コロンビア社を辞めるのは、「なかなか苦しい決断だ
った。だけど、二人とも方向転換をするのには、良い時期なのではないかと感じた
んだ。」買収により【P20】氏は、約3千万ドルの手当を受ける見込みだ。
 その他、【P1】氏が親会社の首座に就任した際、コロンビア・ピクチャーズの
撮影スタジオの主任の、【P24】さんがとどまるのか否か行方が注目されてい
る。【P24】さんは、約2年前に抜擢されたばかりである。【P24】さんと
【P1】氏は、映画「フラッシュ・ダンス」の製作に共に携わり、関係も上手くい
っているとのことだ。【P24】氏は、このことに関してコメントを避けた。他
方、【P19】氏は、コロンビア社の幹部とは、直接には話はしていないものの、
「他の管理者層同様、彼女にはとどまってほしいものです。」と述べた。
 「管理者層は全員とどまり、私達は、良き親会社として迎えられました。」とC
BSレコーズ社との経験を振り返りながら【P19】氏は語る。CBSレコーズ社
が、業界占有率回復を目指し奮闘している間は、ソニーは、日々の業務については
全く介入しなかったとのことだ。
 コロンビア社についても、独自の役員会をもつ独立系列企業体として運営してい
く意向を【P19】氏は表明している。両社は、米国内で「接点」をもつものの、
同氏との直接的な指示のやりとりはしないとのことだ。「大規模な系列会社には、
独立して意志決定をしてもらいます。私達の役割は、単に助言を与える程度で
す。」
別紙(3)■■ウォールストリート・ジャーナル 89年9月28日木曜日■■
アメリカを読む研究会
〔1面〕
〈主要経済ニュース〉
A1.IBMの第3四半期及び通年の収益、予想をかなり下回る見込み
A2.ソニー、コロンビア・ピクチャーズ社の買収契約に最終的に合意――買収金
額は日本企業では市場最高の34億ドル
A3.ブラニフ航空がほとんどのルートで航空便を削減――財政逼迫のためとの憶
測を呼ぶ
A4.OPEC石油輸出国機構、生産上限拡大決定――石油価格引き上げの為の国
別割当枠の見直しには合意出来ず
A5.企業買収家の【P3】氏に4年間の懲役と150万ドルの罰金判決――不正
証券取引等の罪で
A6.米下院、企業の重役に対する特別手当を奨励する税制条項第89条の廃止を
決定
A7.ゴールドマンサックス証券等証券大手4社、証券価格統計販売の為の合弁企
業体設立を計画
A8.クラフト・ジェネラル・フーズ社、現社長の【P4】氏を会長兼最高経営責
任者に指名
A9.トヨタ自動車が来年販売の大衆車の価格を最高2.5%引き上げ――米市場
のシェア拡大をねらう
A10.各国中央銀行の協調介入のなかドル急落――証券価格はしっかり、債券は
不調
A11.ペプシ・コーラ社がカフェイン抜きの清涼飲料水「ペプシAM」を中西部
で実験販売
A12.アップル・コンピューター社、日本の半導体企業に対抗するために6月に
設立された合弁企業体USメモリーズへ資本参加はせず
A13.サックス・フィフス・アベニュー社の【P25】会長、同社レバレッジ
ド・バイアウトを計画
〈主要国際ニュース〉
A14.【P6】大統領、国際通貨基金及び世界銀行の総会でポーランド経済復興
援助に各国の協力を呼掛け
A15.=欠番=
A16.31億8千万ドル麻薬犯罪取締り予算が上院を通過――内政及び防衛予算
はカット
A17.【P6】大統領、州知事らと会談、各州の教育水準改善に努力するよう促

A18.スロベニア共和国、ユーゴスラビア連邦からの脱退を要求――国内の政情
不安に拍車
A19.東ロンドンのケープ・プロビンスで行われた南アの反アパルトヘイトデモ
に数千人が参加
A20.マニラで米軍の駐留に反対する2千人のデモ隊と警察が衝突、150人以
上が逮捕される
A21.コロンビア政府、ゲリラ軍との平和条約に合意――政府の農民、貧困者救
済策と引き換えにゲリラ側の武器放棄を要求
A22.グランド・キャニオンで観光機が墜落、少なくとも10人が死亡、11人
が重傷
A23.先週、ハリケーン「ヒューゴ」で被害を受けたサウスカロライナ州で衣
服、ベニヤ板等が救援隊から配布される
A24.住宅都市開発省の元高官が同省の賄賂工作事件を調査している下院の小委
員会での答弁を拒否
A25.【P13】国務長官、国内の金融機関に対して来年2月に行われるニカラ
グアの大統領選挙で【P26】を支援する為の資金協力を求め
A26.【P15】上院議員、政府に対して対ソビエト貿易規制停止を求め――
【P6】大統領の慎重過多の対ソ政策を批判
〈フィーチャー〉
A27.東欧諸国の政治的変化のなかで改革を目指すコメコン(経済相互援助会
議)――経済力でEC(ヨーロッパ共同体)に大きく水を開けられたまま、改革の
前途は多難

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激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
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「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
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答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
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◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
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◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
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