弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
 被告会社は、昭和四三年三月八日から同四五年五月二〇日までの間の原告らに関
する賃金台帳を、同四七年一二月七日までに当裁判所に提出せよ。
       理   由
第一、原告らの申立およびその理由、ならびに、これに対する被告の意見は別紙の
とおりである。
第二、当裁判所の判断
1 賃金台帳は労働基準法一〇八条により使用者が記入、保存を義務づけられてい
るものであり、同法施行規則五四条によりこれには賃金計算期間、労働日数、労働
時間数、延長、休日、深夜労働時間数、基本給、手当その他賃金の種類ごとにその
額などを記入すべきものと定められており、被告の所持する賃金台帳にもその記載
があるものと推認される。
 本件では原店らと被告との間には雇傭関係の存することに争がなく、原告らの賃
金請求権の限度額に争があるところ、その請求の基礎となる労働時間、手当額など
は法の要求するところにより賃金台帳に記載のあるところであるから、賃金台帳は
原被告間の賃金請求権の「法律関係二付キ作成セラレタル」文書に該ると言うべき
である。被告は賃金台帳は原被告間の法律関係について作成されたものではないと
主張するが、民訴法三一二条三号後段の「法律関係ニ付キ作成セラレタ」文書と
は、その文書により直接その法律関係を立証できる契約書などの文書に限られず、
その法律関係の要件たる事実に関して作成された文書をも含むものと解ざれる。も
っとも、そのような文書であっても作成者自身のみの便宜のために作成せられた文
書、例えば日記など、は含まれないと解されるが、賃金台帳は後述のように労働者
の利益や行政上の監督のためにも作成されるものと認められるから、賃金台帳は被
告のみの便宜のために作成された文書とはいえない。
2 更に、賃金台帳が法により作成、保管を義務づけられているのは、労働賃金関
係に関する証拠を明らかにして賃金関係の紛争を予防することにより労働関係当事
者の利益を護ろうとする目的を有していると解されるし、かつ、これら賃金台帳は
労働基準監督官の求めに応じて提出せねばならない(労働基準法一〇一条一項)と
されているのも同法の目的とする労働者の保護を達するためであると解せられるこ
とを考慮すると、賃金台帳は民訴法三一二条三号前段の労働者たる「挙証者ノ利益
ノ為二作成セラ」れた文書にも該当するというべきである。
3 よつて原告らの本件文書提出命令申立は理由あるものと認め、民訴法三一二条
三号前後段により主文のとおり決定する。
別紙
一、原告ら
1 申立
 主文同旨(提出期限の点を除く)の決定を求める。
2 文書の表示、趣旨
 主文記載の賃金台帳で、原告らに対する賃金、時間単価が記載されているもの。
3 文書の所持者
被告
4 証すべき事実
 昭和四三年三月八日から同四五年五月八日までの間、各原告が水揚に関係なく支
給されていた所定時間内単位労働時間当りの賃金額。
5 文書提出の義務の原因
 民訴法三一二条二号、三号
 賃金台帳は、基本給や賃金計算の基礎となる事項、賃金額等を記載するもので、
内容的に原告らと被告との問の法律関係につき作成され、少なくとも「法律関係に
関係ある事項を記載した文書」であることは明らかである。
 のみならず、そもそも労働基準法一〇八条、一〇九条が使用者に対しその作成保
管を義務づけたのは、行政監督(これは結局労働者の利益のためであるから、民訴
法三一二条二号の要件をも充たすものであるが)上の必要もさることながら、「労
働関係の紛争の処理に証拠となるから」であり、「労使関係に関する紛争を処理す
るための証拠保全の必要に基づくもの」であるから、正に民訴法三一二条三号に該
る文書なのである。合目的的に考えてもタクシー労働者の複雑な賃金関係を明らか
にするには、賃金台帳が不可欠であり、かかる文書について提出義務なしとすれ
ば、本件被告の如く自ら知り得ている事実について、悪意の求釈明をなしたり、解
雇関係の真実を隠蔽することを放任することになってしまうし、賃金台帳がひつき
よう労働者の利益保護の観点から使用者に対し作成保存が義務づけられている趣旨
は没却されるであろう。
 なお、行政監督上の必要を第一義として作成保存が義務づけられていることは、
当該文書が、労使間の法律関係につき作成されたものであることと矛盾しない。
 行政庁が労使関係の総合的把握のため、前記文書の作成、保存を義務づけている
場合には、その内容は、正に労使間の法律関係のものについて作成されたものでな
ければならないからである。
 なお、労働基準法は幾多の条文において、賃金に関する規定をおいている。例え
ば、労基法三七条は、時間外・休日、深夜等の割増賃金について規定しているが、
右割増賃金請求をなすについて、会社側の資料なしに、労働者側の資料のみによっ
て立証すべきものとすれば、これらの規定の実効性は殆んど失われるであろう。労
働者に出退勤の時間等を三六五日間に亘って自ら刻明に記載することを求めるのは
非現実的だからである。
 してみると、賃金台帳は、労基法上の権利(本訴請求も正にそのような権利の実
現を求めるものである)の実現に不可欠であり、労働法が使用者に対し右文書の作
成保存を義務づけたのも、行政監督(何のためにということを離れて行政監督はあ
り得ない)上の必要のみでなく、むしろ行政監督そのものの必要を裏づける、労働
者保護の観点からであるから、前記文書は、民訴法三一二条二号にも該当する。
二、被告
1 申立
原告の本件文書提出命令申立を却下する。
との決定を求める。
2 文書提出義務の原因について
 原告らの指示する賃金台帳は基本給や賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額を
記録するものである。
 従って右の文書は被告と原告らとの問の雇傭契約に関して作成される文書でもな
ければ又原被告間の法律関係につき作成されたものと謂うことは出来ない。

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