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令和2年6月5日判決言渡
平成30年(行ウ)第415号障害年金不支給決定取消請求事件
主文
1処分行政庁が平成28年12月6日付けで原告に対してした障害基
礎年金及び障害厚生年金を支給しない旨の決定を取り消す。5
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文第1項と同旨
第2事案の概要10
本件は,原告が,平成28年4月19日,処分行政庁に対し,線維筋痛症に
より障害の状態にあるとして,障害基礎年金及び障害厚生年金(以下,総称し
て「障害給付」という。)の支給を求める裁定請求をした(以下「本件裁定請
求」といい,同日を「本件裁定請求日」という。)ところ,処分行政庁から,
同年12月6日付けで障害給付を支給しない旨の決定(以下「本件処分」とい15
う。)を受けたことから,線維筋痛症による原告の障害の状態は,厚生年金保
険法(以下「厚年法」という。)47条1項にいう障害認定日及び本件裁定請
求日において,同条2項に規定する障害等級3級に該当するものであったなど
と主張して,本件処分の取消しを求める事案である。
1関係法令等の定め20
本件に関係する法令等の定めは,別紙「関係法令等の定め」(以下「別紙関
係法令等」という。)記載のとおりである(別紙関係法令等において定義した
略語等は,以下においても用いることとする。)。
2前提事実(いずれも当事者の間に争いがないか,当事者が争うことを明らか
にしないか又は当裁判所に顕著な事実である。)
(1)原告
原告は,昭和54年▲月▲日生まれの女性であり,以下の期間において厚
生年金保険の被保険者であった。
ア平成13年4月1日から平成15年5月29日まで(同月30日に被保5
険者資格喪失)
イ平成23年7月1日から平成26年1月31日まで(同年2月1日に被
保険者資格喪失)
(2)本件処分に至る経緯
原告は,平成28年4月19日,処分行政庁に対し,線維筋痛症により障10
害の状態にあるとして,本件傷病の初診日を平成25年8月29日とし,障
害認定日による請求(予備的に事後重症による請求)として,障害給付の裁
定請求(本件裁定請求)をした。
処分行政庁は,平成28年12月6日付けで,原告に対し,原告がり患し
た線維筋痛症(以下「本件傷病」ということがある。)の初診日が平成2615
年9月3日であり,原告が当該初診日において厚生年金保険の被保険者であ
った者に該当しないとして,障害給付を支給しない旨の決定(本件処分)を
した。
(3)不服申立手続(以下の不服申立手続を総称して「本件不服申立手続」とい
う。)20
原告は,平成29年2月22日,本件処分を不服として,関東信越厚生局
社会保険審査官に対し,審査請求をしたが,同社会保険審査官は,同年6月
23日,同審査請求を棄却する旨の決定をした。
原告は,平成29年7月27日,上記の決定を不服として,社会保険審査
会に対し,再審査請求をしたが,社会保険審査会は,平成30年3月30日,25
同再審査請求を棄却する旨の裁決をした。
(4)本件訴えの提起
原告は,平成30年9月28日,本件訴えを提起した。
3争点
本件の争点は,本件処分の違法性であるが,具体的には,以下の2点が争わ
れている(なお,前提事実(2)のとおり,本件処分は,本件傷病の初診日が平成5
26年9月3日であり,原告が当該初診日において厚生年金保険の被保険者で
あった者に該当しないとして,障害給付を支給しない旨決定しているが,本件
訴訟においては,本件傷病の初診日が,原告が厚生年金保険の被保険者であっ
た平成25年8月24日であることは,当事者の間に争いがない。)。
(1)被告が,本件処分及び本件不服申立手続において判断が示されていない10
原告の障害の状態に関する事由をもって,本件処分が適法である旨主張する
ことができるか否か(争点①)
(2)平成27年2月24日(本件傷病の初診日とされる平成25年8月24
日から起算して1年6月を経過した日。以下「本件障害認定日」という。)
又は本件裁定請求日における原告の障害の状態が,障害等級3級に該当する15
程度のものであったか否か(争点②)
4争点に関する当事者の主張の要旨
(1)争点①(被告が,本件処分及び本件不服申立手続において判断が示されて
いない原告の障害の状態に関する事由をもって,本件処分が適法である旨主
張することができるか否か)について20
(原告の主張)
本件処分は,原告が本件傷病の初診日において厚生年金保険の被保険者で
あった者に該当しないことのみを理由とし,本件不服申立手続でも,専らこ
の点のみが判断されており,これらにおいて,本件障害認定日又は本件裁定
請求日における原告の障害の状態が障害等級3級に該当する程度のものであ25
ったか否かに関する判断が示されたことはない。
このように全く審査対象とされてこなかった要件について司法機関に対し
て第一次的判断を求めることは,裁定請求及び不服申立手続を前置し,第一
次的判断権を厚生労働大臣等に委ね,司法機関は処分の適否について事後審
査を行うものとした国年法及び厚年法の建前に反する上,被保険者の裁定請
求及び不服申立てに関する手続的利益を奪うものであるから,許されない。5
したがって,被告が,原告の障害の状態に関する事由をもって,本件処分
が適法である旨主張することは許されないから,争点②(後記(2))の点につ
いて判断されるまでもなく,本件処分は取り消されるべきである。
(被告の主張)
争う。10
(2)争点②(本件障害認定日又は本件裁定請求日における原告の障害の状態
が,障害等級3級に該当する程度のものであったか否か)について
(原告の主張)
ア本件障害認定日における原告の障害の状態について
障害認定基準のうち,本件傷病に適用すべき第3第1章第18節(別紙15
関係法令等第3・3。その他の疾患による障害)における認定基準におい
て,障害等級3級は,労働に関する制約の程度に着目し,「労働が制限を
受けるか,又は労働に制限を加えることを必要とする程度」のものとされ
ているところ,以下のとおり,本件障害認定日における原告の障害の状態
は,障害等級3級に該当する程度のものであった。20
(ア)本件障害認定日当時,原告は,線維筋痛症の臨床的重症度分類(厚
生労働省線維筋痛症研究班により,公的社会保障制度運用のための行政
的重症度基準として作成された試案によるもの。以下「重症度分類」と
いう。)においてステージⅡ(「広範囲な筋緊張が続き腱付着部炎を併
発する一方,不眠,不安感,うつ状態が続く。通常の日常生活がやや困25
難」とされるもの)と診断されている。「日常生活が困難」である状態
は,当然に,労働に制限をもたらす状態である。
(イ)平成28年3月28日付けA医師作成の診断書(原告の平成27年
3月11日現症の障害の状態に係るもの。乙1・6~7頁。以下「平成
27年3月現症診断書」といい,同日を「平成27年3月現症時」とい
う。)の「日常生活における動作の障害の程度」欄を見ると,原告は,5
10mほどの距離を「多少転倒しそうになったりよろめいたりするがど
うにか歩き通す」状態とされ,階段の上り下りは,手すりがあっても「非
常に不自由」,座席からの立ち上がりも,支持してもらっても「非常に
不自由」な状態とされている。
上記のような状態の者が,一般の職場に出勤して労務を支障なく提供10
できるとはいえない。平成27年3月現症診断書では,原告は,「座位
では正常人と変わりなく作業できる(1日6時間週4日程度)」とされ
ているものの,座位のみの労務は一般的ではなく,立位,歩行等を要し
ない労務を見出すことは容易ではないし,1日6時間週4日程度の労働
しかできない者が,正規労働者として勤務できる分野は皆無といえる。15
また,上記のような状態は,障害認定基準第3第1章第18節2⑺の
一般状態区分表のイ(「軽度の症状があり,肉体労働は制限を受けるが,
歩行,軽労働や座業はできるもの例えば,軽い家事,事務など」)に
該当し,かつ,歩行が困難である点でこれよりもやや重い状態とみるこ
とができ,「障害等級3級におおむね相当する」とされている。20
(ウ)原告は,平成25年12月上旬頃から休職を開始した後,退職を余
儀なくされ,本件障害認定日においても就職できていなかった。これら
の期間については,原告の平成25年12月分ないし平成27年3月分
の各傷病手当金支給申請書(以下,総称して「本件各傷病手当金支給申
請書」という。)中の診療担当医師の意見書欄(甲20の1~16)に25
おいて,いずれもB病院の医師であるC医師又はD医師が,原告を就労
不能と認めた所見等を記載している。
イ本件裁定請求日における原告の障害の状態について
本件裁定請求日における原告の障害の状態について,本件障害認定日か
ら変化したのは,①支持を受けての立ち上がりと手すりを使った階段の上
りについて,「非常に不自由」であった状態が「やや不自由」な状態にな5
ったこと,及び②両膝痛があった状態が,下肢痛が軽減した状態になった
こと(ただし,筋力低下があった。)にとどまり,重症度分類がステージ
Ⅱであったとする医学的評価は変更されていない(平成28年3月28日
付けA医師作成の診断書(原告の同日現症の障害の状態に係るもの。甲4,
乙1・8~9頁。以下「平成28年3月現症診断書」といい,同日を「平10
成28年3月現症時」という。)参照)。
したがって,本件障害認定日と同様,本件裁定請求日においても,原告
の障害の状態は,障害等級3級に該当する程度のものであった。
(被告の主張)
ア線維筋痛症に係る障害等級の認定の方法について15
線維筋痛症に係る障害等級の認定については,主要症状である疼痛によ
って身体にどの程度の不自由があるのかを障害認定基準第3第1章第7
節第4(別紙関係法令等第3・2(2)。肢体の機能の障害)の2(認定要領)
を用いて確認し,その上で,疼痛による身体機能の不自由さの程度及び重
症度分類のステージ評価を参考に,障害による日常生活の支障を総合的に20
判断し,認定することになる(障害認定基準第3第1章第18節2(5))。
イ本件障害認定日における原告の障害の状態について
(ア)a原告の本件傷病による疼痛の症状は,その存在が確認された平成
25年9月4日以降,A医師により線維筋痛症の診断がされた平成2
6年9月頃までの間,同様の症状を示していたと考えられ,圧迫時や25
動作時に痛みを感じることがある程度の,軽度なものであり,体の動
きに支障を生ずる程度のものではなかったと考えられる。そして,線
維筋痛症の多くが発症日から同様の症状を示すことに照らせば,本件
障害認定日においても,発症の頃と同様に,疼痛の程度は軽度であっ
たとみることができる。
b原告は,B病院神経精神科を受診していた平成25年12月から平5
成27年4月までの間,「疲労感」や「足が動かない」等の症状は常
時訴えていたものの,「痛み」について自ら訴えることはほとんどな
かったから,原告は,本件障害認定日において,疼痛による身体の不
自由さを強く実感することはなかったといえる。
c①重症筋無力症等の神経筋疾患が否定されていること,②平成2510
年9月に行われたE病院やF病院での徒手筋力検査では,下肢の筋力
評価が「3~5」(自力で動かせる程度の筋力が保たれている程度)
とされ,「状況により筋力も変化がある」等と評価されていること,
③原告は,「つま先立ち」や「しゃがみ立ち」が可能であったとされ
ていること,④線維筋痛症が,症状の消長を繰り返しつつ,その多く15
が発症時から同様の症状を示しながら長期に経過すること等を踏まえ
れば,原告につき,本件障害認定日時点で筋力低下が認められたとし
ても,その程度は,平成25年9月頃と変わらず比較的軽いものと考
えられ,痛みの程度も強くはない状態であったと推認される。このよ
うな状態であれば,両下肢に脱力感や疲れを感じることがあったとし20
ても,自力で下肢を動かすことができないほどの筋力低下があったと
は認められず,歩行や昇降運動も十分に可能であったと考えられる。
(イ)前記(ア)を踏まえ,平成27年3月現症診断書を見ると,平成27
年3月現症時の原告の日常生活動作の程度については,歩行につき「一
人でできてもやや不自由」と,立ち上がりや階段の上り下りにつき「支25
持(又は手すり)があればできるが非常に不自由」と評価されているが,
上肢の動作はおおむね行うことができており,日常生活活動能力や労働
能力に関しては,歩行に不安定さはあるが,座位であれば特段の支障な
くできると評価されている。また,本件傷病による病勢は改善傾向であ
るとされている。
そして,原告の疼痛の程度は,激しい触痛や自発痛が持続して,自力5
で体を動かすことができないような状態にはなく,せいぜい歩行時に両
膝痛を訴える程度にとどまっていたこと,原告の両下肢には,自力で歩
行ができないほどの筋力低下や神経症状があるとは認められないこと,
本件傷病の重症度分類がステージⅡ(「痛みはあるが普通の生活ができ
る」とされる状態である。)と評価されていることなどを勘案し,本件10
障害認定日における原告の本件傷病による日常生活の支障を総合的に判
断すると,「労働が制限を受けるか,又は労働に制限を加えることを必
要とする」程度のものには及ばず,本件障害認定日における原告の障害
の状態は,障害等級3級に該当する程度のものではない。
ウ本件裁定請求日における原告の障害の状態について15
平成28年3月現症診断書を見ると,平成28年3月現症時の原告の日
常生活動作の程度については,歩行につき「一人でできてもやや不自由」
と,立ち上がりや階段の上りにつき「支持(又は手すり)があればできる
がやや不自由」と,階段の下りが「手すりがあればできるが非常に不自由」
と評価されている。しかし,上肢の動作については,ほぼ不自由なく行う20
ことができており,日常生活活動能力や労働能力に関しては,歩行に不安
定さはあるが,座位であれば特段の支障なくできると評価されている。歩
行に関しては,長時間の歩行の際には杖を補助具として使用しているとさ
れているものの,平成27年3月現症診断書の内容と比較して,「立ち上
がる」や「階段を上る」などの運動機能が改善されている。疼痛に関して25
も,下肢痛が軽減しているとされている。これらによれば,本件裁定請求
日における原告の日常生活活動能力等は,全体的には,本件障害認定日の
時点よりも軽快傾向にあると考えられ,他に疼痛による身体又は精神の障
害が生じているとの所見も見受けられない。
以上を踏まえ,平成28年3月現症時の本件傷病の重症度分類が平成2
7年3月現症時と変わらずステージⅡと評価されていることも勘案し,本5
件裁定請求日における原告の本件傷病による日常生活の支障を総合的に
判断すると,「労働が制限を受けるか,又は労働に制限を加えることを必
要とする」程度のものには及ばず,本件裁定請求日における原告の障害の
状態は,障害等級3級に該当する程度のものではない。
第3当裁判所の判断10
1争点①(被告が,本件処分及び本件不服申立手続において判断が示されてい
ない原告の障害の状態に関する事由をもって,本件処分が適法である旨主張す
ることができるか否か)について
(1)前提事実(1),証拠(甲3ないし7,9,13,18ないし21(枝番を
含む),乙1,5ないし7,10ないし16)及び弁論の全趣旨によれば,15
原告は,平成25年8月24日までに本件傷病にり患し,厚生年金保険の被
保険者であった同日,本件傷病について初めて医師の診療を受けたと認めら
れる(この点については,当事者の間に争いがない。)。
(2)被告は,前記(1)の初診日から起算して1年6月を経過した日である本件
障害認定日及び本件裁定請求日において,原告の障害の状態は,厚年法4720
条2項に規定する障害等級に該当しないものである旨主張して,本件処分が
適法である旨主張している(争点②参照)ところ,原告は,本件障害認定日
又は本件裁定請求日における原告の障害の状態は,本件処分及び本件不服申
立手続において判断が示されていない以上,被告が本件訴訟において当該主
張をすることは許されない旨主張する。25
(3)ア取消訴訟の訴訟物は,処分の違法一般であると解されるところ,一般に,
取消訴訟においては,別異に解すべき特別の理由のない限り,被告は当該
処分の効力を維持するための一切の法律上及び事実上の根拠を主張するこ
とが許されるものと解すべきである(最高裁昭和51年(行ツ)第113
号同53年9月19日第三小法廷判決・裁判集民事125号69頁)。
また,本件処分においては理由が示されているが,申請拒否処分におい5
て理由を示すべきものとされている(行政手続法8条)のは,行政庁の判
断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を
名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解され,
その趣旨は,処分の理由を具体的に示して処分の名宛人に通知すること自
体をもって,ひとまず実現され,この趣旨を超えて,一たび通知書におい10
て理由を示した以上,行政庁が当該理由以外の理由を取消訴訟において主
張することを許さないものとする趣旨を含むとは解されない(最高裁平成
8年(行ツ)第236号同11年11月19日第二小法廷判決・民集53
巻8号1862頁参照)。
よって,被告が,本件障害認定日及び本件裁定請求日における原告の障15
害の状態が障害等級3級に該当しない旨主張して,本件処分が適法である
旨主張することは許されるというべきである。
イこれに対し,原告は,処分や不服申立手続において審査対象とされてこ
なかった要件について司法機関に対して第一次的判断を求めることは,裁
定請求及び不服申立手続を前置し,第一次的判断権を厚生労働大臣等に委20
ね,司法機関は処分の適否について事後審査を行うものとした国年法及び
厚年法の建前に反する上,被保険者の裁定請求及び不服申立てに関する手
続的利益を奪うものであるから,許されない旨主張する。
しかし,行政手続法,国年法及び厚年法をみても,前記アに説示した行
政手続法の理由提示制度の趣旨を超えて,通知書において提示された理由25
以外の理由を取消訴訟において主張することを許さないとする趣旨を含む
ものとは解されないから,原告の上記主張を採用することはできない。
なお,原告は,上記主張の中で,最高裁平成2年(行ツ)第45号同5
年2月16日第三小法廷判決・民集47巻2号473頁の判示を挙げてい
るが,同判決の事案は,労働者が,労働者災害補償保険法に基づく業務災
害に関する保険給付を請求したところ,行政庁から,同請求に係る疾病が,5
同法施行前に従事した業務に起因したものであり,業務起因性の有無につ
いて判断する前提を欠くとして,保険給付不支給処分を受けたため,同処
分の取消しを求めたというものであり,同判決は,同処分の実体的要件の
存否に関する行政庁の第一次的判断権の行使がおよそされていないことを
前提として,原判決が業務起因性の有無に関する行政庁の主張についての10
認定及び判断を留保した上で同処分を取り消したことに違法はないとした
ものである。そうすると,本件のように,実体的要件(初診日に係る要件)
の存否の判断を経ていて行政庁の第一次的判断権が行使されたものとは事
案が異なるし,本件訴えにおける訴訟物は,飽くまで本件処分の違法一般
であって,実体要件の一つである被保険者の障害の状態(障害等級該当性)15
に係る要件に関する主張を追加することが訴訟物の範囲を超えることにも
ならないから,同判決の判示は,前記アの判断を左右するものではない。
2争点②(本件障害認定日又は本件裁定請求日における原告の障害の状態が,
障害等級3級に該当する程度のものであったか否か)について
(1)認定事実20
掲記の証拠等によれば,本件障害認定日及び本件裁定請求日における原告
の障害の状態の評価に関連して,以下の事実を認めることができる。
ア線維筋痛症について
(ア)線維筋痛症は,身体の広範な部位の筋骨格系における慢性の疼痛及
びこわばりを主症状とし,解剖学的に明確な部位に圧痛を認める以外に,25
他覚的及び一般的臨床検査所見に異常がなく(明らかな検査異常を認め
る場合は,線維筋痛症の診断は否定的である。),治療抵抗性であり,
随伴症状として疲労感,睡眠障害,抑鬱気分等の多彩な身体症状又は精
神・神経症状を伴い,中年以降の女性に好発する原因不明のリウマチ性
疾患である。(乙5・本文10~13,83~84,103~104頁)
線維筋痛症に対する特異的原因療法又は根治療法はなく,線維筋痛症5
にり患すると,長期に経過し,ADL(日常生活動作能力。以下同じ。)
及びQOL(生活の質。以下同じ。)の低下が著しく,機能的予後が問
題となるとされている。本邦における線維筋痛症の患者につき,発症か
ら1年経過時点で,①治癒した者が1.5%,何らかの症状の改善がみ
られた者が51.9%,病状に変化なく経過した者が37.2%,症状10
が悪化した者が2.6%であった旨,②自立ができている程度のADL
であった者が約半数であったが,その余の者に何らかのADLの低下が
認められ,うち27.2%の者が著しくADLが低下し,34.0%の
者が休職又は休学の状況にあった(その期間は平均3.2(標準偏差4.
8)年)旨の報告がある。この点,発症から1,2年経過以後の経過が15
不良であるとの指摘もある。(甲9・本文21頁。乙5・本文15~1
6,89~90頁)
また,本邦における線維筋痛症の患者のADLを,強い疲労を主症状
とする慢性疲労症候群の診断に用いられるPerformancestatus(疲労・
倦怠の程度を示す指標であり,「倦怠感がなく平常の生活ができ,制限20
を受けることなく行動できる。」(スコア0)から「身の回りのことは
できず,常に介助がいり,終日就床を必要としている。」(スコア9)
までの10段階で評価するもの。以下「PSスコア」という。慢性疲労
症候群と診断されるためには,「全身倦怠の為,月に数日は社会生活や
労働ができず,自宅にて休息が必要である。」とされるPSスコア3以25
上とされることを要するものとされている。)を用いて評価した報告に
おいて,日常生活にほとんど影響がないとされるPSスコア0~2とさ
れた者が13.1%,通常の日常生活が不可能とされるPSスコア≧7
とされた者が54.5%であり,平均のPSスコアが6.0(標準偏差
2.4)であった旨の報告がある。(甲9・本文17頁。甲23。乙5・
本文89~90頁)5
(イ)厚生労働省線維筋痛症研究班により,公的社会保障制度運用のため
の行政的重症度基準として,ステージⅠないしステージⅤに分類された
線維筋痛症の臨床的重症度分類の試案(重症度分類)並びに各重症度と
QOL,疼痛部位及び圧痛の程度との間の対応関係が発表されており,
その内容は以下のとおりである。(甲9・10~11頁。乙5・本文110
13,115頁。乙7・本文13~14頁)
重症度分類QOL疼痛部位圧痛の
程度
ステージ

ACR(米国リウマチ学会)分類基
準の18箇所の圧縮点のうち11
箇所以上で痛みがあるが,日常生活
に重大な影響を及ぼさない
痛みはあ
るが普通
の生活が
できる
体幹部圧痛
(4kg/㎠)
ステージ

広範囲な筋緊張が続き腱付着部炎
を併発する一方,不眠,不安感,鬱
状態が続く。通常の日常生活がやや
困難
ステージ

痛みが持続し,爪や髪への刺激,温
度・湿度変化など軽微な刺激で激し
い痛みが増強する。自力での生活は
痛みのた
め普通の
生活が困
体幹部か
ら末梢部

軽度の圧

困難難
ステージ

痛みのため自力で体を動かせず,ほ
とんど寝たきり状態に陥る。自分の
体重による痛みで,長時間同じ姿勢
で寝たり座ったりできない
寝たきり
であるが
眠れない
全身痛触痛・自
発痛
ステージ

激しい全身の痛みとともに,膀胱や
直腸の障害,口の渇き,目の乾燥,
膀胱症状など全身に症状が出る。通
常の日常生活は不可能
イ原告の本件傷病り患後の経過等について
(ア)原告は,平成25年8月24日までに本件傷病にり患し,同日,右
手第2指から肘にかけてのしびれを訴えて,G医院において,本件傷病
について医師の診察を受けた。その後,原告は,H病院で診察を受けた5
ほか,本件傷病に起因する四肢のしびれ感,脱力,疲労感等を訴えて,
E病院,F病院及びB病院に順次通院又は入院し,検査を受けるなどし
たが,本件傷病につき線維筋痛症との確定診断を受けることはなかった。
(前記1(1)に認定した事実,甲3,5,乙1,11ないし14)
(イ)原告は,前記(ア)の間の平成25年12月6日頃から,本件傷病に10
起因する疲労感等を訴えて,当時の職場を休職し,平成26年1月31
日付けで退職した。(甲16,20の1,弁論の全趣旨)
(ウ)原告は,平成26年9月3日,J医院において初めてA医師の診察
を受け,同月29日,本件傷病(線維筋痛症)の診断を受けた。(甲4。
乙1・本文6~9頁。乙15・2~3頁)15
(エ)C医師又はD医師は,本件各傷病手当金支給申請書中の診療担当医
師の意見書欄(甲20の1~16)において,平成25年12月6日か
ら平成27年3月13日までの期間を通して,原告を就労不能と認めた
旨の意見を記載した。平成25年12月6日から同月31日までについ
てはC医師が記載しており,原告を就労不能と認めた所見につき,四肢
筋力低下及び息苦しさを挙げている(甲20の1)。その余の期間につ
いてはD医師が記載しており,原告を就労不能と認めた所見につき,め5
まい感,胸部苦悶感等を挙げている(甲20の2~16)。
ウ平成27年3月現症診断書について
平成27年3月現症診断書には,要旨,以下の記載がある。
(ア)「障害の原因となった傷病名」欄
線維筋痛症10
(イ)「診断書作成医療機関における初診時所見(初診年月日平成26年
9月3日)」欄
両上下肢の脱力感及び両手関節,両膝関節,両足関節に自発痛を認め
た。また,線維筋痛症の圧痛点に一致して圧痛があった。(ステージⅡ)
(ウ)「現在までの治療の内容,期間,経過,その他参考となる事項」欄15
26年9月29日よりジェイゾロフト1T/1×朝の内服を開始した。
その後,疼痛は改善傾向にあり,27年3月の時点では歩行時に両膝痛
を訴える程度であった。(ステージⅡ)
(エ)「障害の状態(平成27年3月11日現症)」
a「日常生活における動作の障害の程度」欄20
(a)「日常生活における動作」欄
つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)右左共に,一人でできてもやや不自由
握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程
度)
右左共に,一人でできてもやや不自由
タオルを絞る(水をきれる程度)両手で,一人でできてもやや不自由
ひもを結ぶ両手で,一人でうまくできる
さじで食事をする右左共に,一人でうまくできる
顔を洗う(顔に手のひらをつける)右左共に,一人でうまくできる
用便の処置をする(ズボンの前のところ
に手をやる)
右左共に,一人でうまくできる
用便の処置をする(尻のところに手をや
る)
右左共に,一人でうまくできる
上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)両手で,一人でうまくできる
上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンを
とめる)
両手で,一人でうまくできる
ズボンの着脱(どのような姿勢でもよ
い)
両手で,一人でうまくできる
靴下を履く(どのような姿勢でもよい)両手で,一人でうまくできる
片足で立つ右左共に,一人でできるが非常に不自由
座る〔正座,横すわり,あぐら,脚なげ
だし〕(このような姿勢を持続する)
一人でうまくできる
深くおじぎ(最敬礼)をする一人でできてもやや不自由
歩く(屋内)一人でできてもやや不自由
歩く(屋外)一人でできてもやや不自由
立ち上がる支持があればできるが非常に不自由
階段を上る手すりがあればできるが非常に不自由
階段を下りる手すりがあればできるが非常に不自由
(b)「平衡機能」欄
閉眼での起立・立位保持の状態:不安定である。
開眼での直線の10m歩行の状態:多少転倒しそうになったりよ
ろめいたりするがどうにか歩き通す。
b「補助用具使用状況」欄
杖を常時ではないが使用5
c「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」欄
歩行に不安定性があるが,座位では正常人と変わりなく作業できる。
(1日6時間週4日程度)
d「予後」欄
治療により改善が期待できる。10
エ平成28年3月現症診断書について
平成28年3月現症診断書には,以下に挙げる部分を除き,平成27年
3月現症診断書の前記ウに認定した記載と同じ記載がある。
(ア)「現在までの治療の内容,期間,経過,その他参考となる事項」欄
26年9月29日よりジェイゾロフト1T/1×朝の内服を開始した。15
平成28年3月時点では長時間の歩行の際には杖を補助具として使用し
ているが,下肢痛は軽減している。筋力低下は認められる。18ケ所あ
る圧痛点のうち16ケ所で圧痛がある。(stageⅡ)
(イ)「障害の状態(平成28年3月28日現症)」「日常生活における
動作の障害の程度」「日常生活における動作」欄(一部)20
深くおじぎ(最敬礼)をする一人でうまくできる
立ち上がる支持があればできるがやや不自由
階段を上る手すりがあればできるがやや不自由
(2)検討
ア本件傷病(線維筋痛症)に係る障害の程度の認定方法について
(ア)線維筋痛症は,身体の広範な部位の筋骨格系における慢性の疼痛及
びこわばりを主症状とするほか,疲労感,睡眠障害,抑鬱気分等の多彩
な身体症状又は精神・神経症状を伴う,特異的原因療法又は根治療法が5
ないとされる原因不明の疾患である(認定事実ア(ア))から,いわゆる
難病に該当すると認められる。障害認定基準は,このような難病による
障害について,「客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を十分考
慮して総合的に認定するもの」とし,「厚生労働省研究班や関係学会で
定めた診断基準,治療基準があり,それに該当するものは,病状の経過,10
治療効果等を参考とし,認定時の具体的な日常生活状況等を把握して,
総合的に認定する」旨の定めを置いている(第3第1章第18節(その
他の疾患による障害)2(5))。
障害認定基準が,医学的知見を総合して定められた上で最新の知見を
踏まえた改訂がされたものであり(公知の事実),一般に,その内容は15
合理的なものといえる(なお,障害認定基準第2・1(3)の規定(障害等
級3級に関するもの)の内容も,厚年令別表第1の規定に照らし,合理
性を有するものと認められる。)ことにも照らせば,上記にみた障害認
定基準第3第1章第18節2(5)の定めは,認定される障害の程度が,障
害認定基準第2・1(別紙関係法令等第3・1)に規定されている「障20
害の程度」に適合し,ひいて国年令別表及び厚年令別表第1に規定され
ている障害の状態と合致する限りにおいて,審査基準として合理性を有
するものと解される(障害認定基準第3第1章第18節2(5)の定めは,
必ずしも具体的なものではないものの,臨床症状が複雑多岐にわたり,
原因が必ずしも明らかではない難病に起因する障害の程度を判定するに25
当たっては,その基準がある程度抽象的な定めとなることはやむを得な
いといえる。)。
そして,線維筋痛症は,身体の広範な部位にわたる慢性の疼痛等の症
状により,患者のADL及びQOLを著しく低下させるものである一方,
一般的臨床検査所見に異常は見られない(むしろ,明らかな検査異常を
認める場合,線維筋痛症の診断は否定的とされる。)というものである5
(認定事実ア(ア))から,このような傷病の特性を踏まえれば,その患
者について,「客観的所見」に基づいて日常生活能力等の程度を考慮す
るため,疼痛等に起因した日常生活動作の支障の有無,程度等を,診断
書等の資料に基づいて把握し,肢体の障害の程度を吟味することが,障
害認定基準の定める趣旨に沿い(なお,障害認定基準第3第1章第1810
節2(8)は,同じ趣旨に基づく規定であると解される。),かつ,合理的
であるといえる。
(イ)以上のほか,処分行政庁による障害の程度の認定が障害認定基準に
従って行われており(公知の事実),障害給付の公平を確保するために
は,障害の程度の認定が,医学的知見を踏まえた一定の合理的基準に従15
って運用される必要があることも踏まえると,本件傷病による本件障害
認定日又は本件裁定請求日における原告の障害の状態は,障害認定基準
の定めるところに沿い,本件傷病(線維筋痛症)の性質,進行状況等を
踏まえ,肢体の障害の認定の手法を用いて把握することのできる原告の
日常生活能力等の程度を十分考慮した上で,厚生労働省線維筋痛症研究20
班により作成された重症度分類による評価も参考としつつ,原告の具体
的な日常生活状況等を把握及び考慮し,総合的に認定すべきものといえ
る。
イ本件障害認定日における原告の障害の状態について
(ア)肢体の障害の観点からの検討25
平成27年3月現症診断書によれば,平成27年3月現症時の原告の
本件傷病に起因する疼痛は,主に歩行時に両膝に生じるものにとどまっ
ており,障害認定基準第3第1章第7節第4・2(4)イにて上肢の機能に
おおむね関連するとされている「さじで食事をする」ないし「上衣の着
脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)」の動作について,原告は,い
ずれも「一人でうまくできる」とされている一方,同ウにて下肢の機能5
におおむね関連するとされる「片足で立つ」ないし「階段を下りる」の
動作については,原告は,「一人でできてもやや不自由」(屋内及び屋
外共に「歩く」動作),「一人でできるが非常に不自由」(「片足で立
つ」動作)又は「支持又は手すりがあればできるが非常に不自由」(「立
ち上がる」,「階段を上る」及び「階段を下りる」動作)とされている。10
これらのとおり,平成27年3月現症時の本件傷病による原告の日常
生活能力等に対する影響は,下肢に対するものが主であったと認められ
るから,原告の日常生活能力等の程度を考慮するに当たっては,下肢の
障害の認定の手法によることが相当である(障害認定基準第3第1章第
7節第4・2(3)の注意書き参照)。15
そこで,改めて下肢の機能についてみると,上記のとおり,原告は,
平成27年3月現症時において,下肢の機能におおむね関連するとされ
る「片足で立つ」ないし「階段を下りる」の動作について,「一人でで
きてもやや不自由」,「一人でできるが非常に不自由」又は「支持又は
手すりがあればできるが非常に不自由」とされていたものであるが,障20
害認定基準において,日常生活における動作の一部が「一人で全くでき
ない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」には,
当該動作に係る身体機能につき「機能障害を残すもの」とされるべき旨
が示されていること(第3第1章第7節第4・2(5)ウ)に照らせば,上
記にみた原告の下肢の機能は,少なくとも,両下肢にわたって「機能障25
害を残すもの」と評価されるべきものということができる。そして,障
害認定基準において,両下肢に機能障害を残すものは,「身体の機能に,
労働が著しい制限を受けるか,又は労働に著しい制限を加えることを必
要とする程度の障害を残すもの」に該当するものとされている(第3第
1章第7節第2・2(1)キ。なお,一下肢に機能障害を残すものが,「身
体の機能に,労働が制限を受けるか,又は労働に制限を加えることを必5
要とする程度の障害を残すもの」に該当するものとされている(同ケ)。)。
(イ)重症度分類による評価の観点からの検討
平成27年3月現症診断書によれば,平成27年3月現症時の原告の
本件傷病は,重症度分類におけるステージⅡに該当するものとされてい
る(認定事実ウ(ウ))。10
重症度分類におけるステージⅡは,QOLにつきステージⅠと共通し
て「痛みはあるが普通の生活ができる」とされる一方で,「広範囲な筋
緊張が続き腱付着部炎を併発する一方,不眠,不安感,鬱状態が続く。
通常の日常生活がやや困難」とされており,通常の日常生活にやや困難
を生じさせる状態との評価は,労働能力にも相応の影響があることを前15
提とした評価であるといえる。
(ウ)総合的な検討
以上のとおり,本件障害認定日に比較的近接した平成27年3月現症
時における本件傷病による原告の下肢の機能の障害は,日常生活能力の
点からみて,少なくとも,両下肢にわたって「機能障害を残すもの」と20
評価されるべきものであって,「身体の機能に,労働が著しい制限を受
けるか,又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を
残すもの」に該当するものといえる上,本件傷病に対する重症度分類に
よる評価(ステージⅡ)も,原告の労働能力に相応の影響があることを
前提とした評価であったといえる。25
そして,①本件傷病(線維筋痛症)が,一般的に,(a)発症から1年経
過時点で,病状に変化がないか又は悪化した患者が約4割に上るほか,
34.0%の患者が休職又は休学するに至り,かつ,その期間が平均3.
2年に及ぶ旨や,(b)患者のうち,慢性疲労症候群の診断基準に満たず,
日常生活にほとんど影響がないとされるPSスコア0~2とされた者が
13.1%にとどまり,患者のPSスコアの平均が診断基準である3を5
大幅に超える6.0であった旨の報告があるほどに,長期にわたり,患
者のADLを低下させる旨指摘されている病気である(認定事実ア(ア))
ところ,②原告は,本件傷病に起因する症状を訴えて本件傷病の初診日
から3か月余り経過した後に当時の職場を休職し,その約2か月後には
退職するに至っており(認定事実イ(イ)),③上記②の休職の頃から本10
件障害認定日の後に至るまでの期間について,原告を就労不能と認めた
医師の意見も存在すること(認定事実イ(エ))によれば,本件障害日に
おける原告のADLは,著しく低下していたと推認される。
以上を総合すると,本件障害認定日における原告の障害の状態は,身
体の機能に,労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要15
とする程度のものであったと認められ,障害等級3級に該当する程度の
ものであったというべきである(障害認定基準第3第1章第18節1参
照)。
(エ)被告の主張等について
被告は,本件障害認定日における原告の本件傷病による日常生活の支20
障が「労働が制限を受けるか,又は労働に制限を加えることを必要とす
る」程度のものには及ばない(障害等級3級に該当する程度のものとい
えない)旨主張する根拠として,以下に挙げる点を指摘するが,以下に
説示するとおり,いずれもこれまでの認定及び説示を覆すものではない。
a被告は,①本件障害認定日における原告の本件傷病による疼痛の程25
度は軽度であり,原告は疼痛による身体の不自由さを強く実感するこ
とはなかった旨や,②本件障害認定日時点で原告に下肢の筋力低下が
認められたとしても,自力で下肢を動かすことができないほどのもの
とは認められず,原告は歩行や昇降運動が十分に可能であると考えら
れる旨を指摘する。
しかし,これまでに認定及び説示したとおり,本件傷病による原告5
の障害の状態は,主要症状である身体の広範な部位の筋骨格系におけ
る慢性の疼痛及びこわばりのみならず,随伴症状に位置付けられる疲
労感等の多彩な症状によっても患者のADL等を著しく毀損するもの
であるという本件傷病(線維筋痛症)の性質をも踏まえ,原告の日常
生活能力等の程度や具体的な日常生活状況等を考慮して認定すべきも10
のである点を踏まえれば,仮に,被告が上記①及び②に指摘する事実
又は評価を前提としたとしても,これらが前記(ア)ないし(ウ)の判断
を直ちに覆すものとはいい難い(なお,被告の上記①及び②の指摘が,
例えば,A医師が平成27年3月現症診断書においてした原告の日常
生活における動作の状況に係る認定の合理性を争う趣旨を含むものか15
否かは判然としないが,念のためこの点を検討するとしても,証拠(甲
19,乙1・6~7頁)によれば,A医師は,平成27年3月現症診
断書において,平成27年3月現症時における原告の日常生活におけ
る動作の状況を,原告が,両膝の疼痛のみならず,易疲労感,胸部の
圧迫感等も訴えていたことをも勘案して認定したものと認められ,上20
記認定に合理性を欠く点は見当たらない。)。
b被告は,平成27年3月現症診断書において,原告の疼痛が改善傾
向にあるとされている点を指摘する。
確かに,平成27年3月現症診断書に上記の記載がある(認定事実
ウ(ウ))ほか,本件障害認定日の約1年後である平成28年3月現症25
時に関する平成28年3月現症診断書を見ると,平成27年3月現症
診断書の内容と比較して,下肢の機能におおむね関連するとされる動
作の一部(「立ち上がる」及び「階段を上る」)に若干の改善がみら
れる(認定事実エ(イ))。しかし,平成28年現症診断書における「日
常生活における動作の障害の程度」欄のその他の項目の評価は,平成
27年3月現症診断書のものと同じであった上,上記の改善がみられ5
た動作についても,なお「支持又は手すりがあればできるがやや不自
由」にとどまっていたのである(認定事実エ)。
したがって,本件障害認定日における原告の下肢の機能の障害は,
本件障害認定日の約1年後にあっても,両下肢にわたって「機能障害
を残すもの」と評価されるべき状況に変化はなかったのであるから,10
本件障害認定日において原告の疼痛が改善傾向にあったと評価される
ことを,殊更重視することはできない。
c被告は,平成27年3月現症診断書において,原告が,座位では,
1日6時間週4日程度,正常人と変わりなく作業できるとされている
点を指摘する。15
しかし,障害認定基準第3第1章第18節2(7)に示されているとお
り,事務等の座業ができることをもって,障害等級3級への該当性が
直ちに否定されるものとはいえない(同一般状態区分表のイ参照)。
d被告は,原告が,平成28年4月19日付けで作成した「病歴・就
労状況等申立書」(甲5,乙1・10~11頁。以下「本件病歴等申20
立書」という。)において,平成27年2月28日頃の原告の状況と
して,「仕事をしていなかった(休職していた)理由」につき,「ア
体力に自信がなかったから」の選択肢に丸を付したにとどまっていた
点を指摘する。
しかし,本件病歴等申立書には,平成27年2月28日頃の原告の25
状況として,被告が上記指摘する記載の他に,「掃除」,「散歩」及
び「買物」について「自発的にできたが援助が必要だった」とする記
載や,「杖を使うか,壁づたいで歩かないと不安定になってしまう。
階段の使用にかなり不安がある。通常の人とくらべるとかなり体力が
なくなっている。重い物を持ったり移動させたりすると痛みが出る。
通常の人とくらべて動きが遅い。」との記載もあり,これらの記載を5
総合すると,被告が上記指摘する記載が,これまでの認定及び説示に
矛盾するものとはいえない。
e前記aないしdの他に被告が指摘する点や,被告の主張に沿う記載
があるK医師の意見書(乙16)は,いずれも,これまでの認定及び
説示を覆すものではない。10
3まとめ
以上のとおり,本件処分は,原告が本件傷病の初診日において厚生年金保険
の被保険者であった者に該当しないとした点において誤りがあるとともに,被
告が本件処分が適法である根拠として主張する本件障害認定日及び本件裁定請
求日における原告の障害の状態の点をみても,本件障害認定日における原告の15
障害の状態は,障害等級3級に該当する程度のものであったといえる。
4結論
よって,本件処分は違法であり,原告の請求は理由があるからこれを認容す
ることとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第38部20
裁判長裁判官鎌野真敬
裁判官福渡裕貴
裁判官獅子野裕介は,差支えのため,署名押印をすることができない。
裁判長裁判官鎌野真敬
(別紙(指定代理人目録)省略)
(別紙)
関係法令等の定め
第1障害給付の支給要件
1障害認定日による障害給付
疾病にかかり,又は負傷し,かつ,その疾病又は負傷及びこれらに起因する5
疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受け
た日(以下「初診日」という。)において厚生年金保険の被保険者(国民年金
の被保険者でもある(国民年金法(以下「国年法」という。)7条1項2号)。)
であった者が,当該初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内に
その傷病が治った場合においては,その治った日(その症状が固定し治療の効10
果が期待できない状態に至った日を含む。)とし,以下「障害認定日」という。)
において,その傷病により障害等級(後記第2参照)に該当する程度の障害の
状態にあるときは,その者は,障害給付の受給権を有する(国年法30条1項,
厚年法47条1項)。
2事後重症による障害給付15
疾病にかかり,又は負傷し,かつ,その傷病に係る初診日において厚生年金
保険の被保険者であった者であって,障害認定日において障害等級に該当する
程度の障害の状態になかったものが,同日後65歳に達する日の前日までの間
において,その傷病により障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに
至ったときは,その者は,障害給付の受給権を有する(国年法30条の2第120
項,厚年法47条の2第1項)。
第2障害等級
障害等級は,障害の程度に応じて重度のものから,障害基礎年金については
1級及び2級,障害厚生年金については1級,2級及び3級とされ,各級の障
害の状態は政令で定めることとされているところ(国年法30条2項,厚年法25
47条2項),いずれも,1級及び2級については国民年金法施行令(以下「国
年令」という。)別表に定める障害の状態,3級については厚生年金保険法施
行令(以下「厚年令」という。)別表第1に定める障害の状態とされている(国
年令4条の6,厚年令3条の8)。
そして,厚年令別表第1は,3級の障害の状態として,12号において「前
各号に掲げるもののほか,身体の機能に,労働が著しい制限を受けるか,又は5
労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」を,14
号において「傷病が治らないで,身体の機能又は精神若しくは神経系統に,労
働が制限を受けるか,又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を
有するものであって,厚生労働大臣が定めるもの」をそれぞれ定めており,「厚
生年金保険法施行令別表第1の規定による障害厚生年金を支給すべき程度の障10
害の状態」(昭和61年厚生省告示第66号)は,厚年令別表第1の14号の
規定による障害厚生年金を支給すべき程度の障害の状態について,結核性疾患
及びけい肺以外の傷病で,傷病が治らないで,労働が制限を受けるか,又は労
働に制限を加えることを必要とする状態にあるものを掲げている。
第3障害等級の認定の基準15
国年令別表及び厚年令別表第1に規定する障害の程度については,「国民年
金・厚生年金保険障害認定基準」(昭和61年3月31日付け庁保発第15号
社会保険庁年金保険部長通知)が定められているところ,本件裁定請求日当時
のもの(乙2。以下「障害認定基準」という(なお,本件裁定請求日当時のも
のに限らない文脈で用いることもある。)。)のうち,本件に関係する部分は,20
以下のとおりである。
1「第2障害認定に当たっての基本的事項」
「1障害の程度
障害の程度を認定する場合の基準となるものは,国年令別表,厚年令別
表第1及び厚年令別表第2に規定されているところであるが,その障害の25
状態の基本は,次のとおりである。
(中略)
(3)3級
労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必
要とする程度のものとする。
また,「傷病が治らないもの」にあっては,労働が制限を受けるか又5
は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。(「傷病が
治らないもの」については,第3の第1章に定める障害手当金に該当す
る程度の障害の状態がある場合であっても3級に該当する。)
(以下略)」
2「第3障害認定に当たっての基準」「第1章障害等級認定基準」「第710
節肢体の障害」
(1)「第2下肢の障害」
「1認定基準
下肢の障害については,次のとおりである。
令別表障害の程

障害の状態
国年令別表1級(略)
2級(略)



別表第13級(略)
身体の機能に,労働が著しい制限を受ける
か,又は労働に著しい制限を加えることを
必要とする程度の障害を残すもの
別表第2障害手当

(略)
身体の機能に,労働が制限を受けるか,又
は労働に制限を加えることを必要とする程
度の障害を残すもの
2認定要領
下肢の障害は,機能障害,欠損障害,変形障害及び短縮障害に区分す
る。
(1)機能障害5
(中略)
キ「身体の機能に,労働が著しい制限を受けるか,又は労働に著し
い制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは,一
下肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば,一下肢の3大関
節中1関節が不良肢位で強直しているもの)又は両下肢に機能障害10
を残すもの(例えば,両下肢の3大関節中それぞれ1関節の筋力が
半減しているもの)をいう。
なお,両下肢に障害がある場合の認定に当たっては,一下肢のみ
に障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わるこ
とから,その動作を考慮して総合的に認定する。15
(中略)
ケ「身体の機能に,労働が制限を受けるか,又は労働に制限を加え
ることを必要とする程度の障害を残すもの」とは,一下肢に機能障
害を残すもの(例えば,一下肢の3大関節中1関節の筋力が半減し
ているもの)をいう。20
コ日常生活における動作は,おおむね次のとおりである。
(ア)片足で立つ
(イ)歩く(屋内)
(ウ)歩く(屋外)
(エ)立ち上がる
(オ)階段を上る
(カ)階段を下りる
(以下略)」
(2)「第4肢体の機能の障害」5
「1認定基準
肢体の機能の障害については,次のとおりである。
令別表障害の程

障害の状態
国年令別表1級(略)
2級(略)



別表第13級身体の機能に,労働が著しい制限を受ける
か,又は労働に著しい制限を加えることを
必要とする程度の障害を残すもの
2認定要領10
(1)肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる障害(脳血管障害,
脊髄損傷等の脊髄の器質障害,進行性筋ジストロフィー等)の場合に
は,本節「第1上肢の障害」,「第2下肢の障害」及び「第3体
幹・脊柱の機能の障害」に示したそれぞれの認定基準と認定要領によ
らず,「第4肢体の機能の障害」として認定する。15
(2)肢体の機能の障害の程度は,関節可動域,筋力,巧緻性,速さ,耐
久性を考慮し,日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に
認定する。
なお,他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば,末梢神
経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっている
もの)については,筋力,巧緻性,速さ,耐久性を考慮し,日常生活
における動作の状態から身体機能を総合的に認定する。
(3)各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおり
である。5
障害の程度障害の状態
1級(略)
2級(略)
3級一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの
(注)肢体の機能の障害が両下肢,一上肢,両下肢,一下肢,体幹及び脊
柱の範囲内に限られている場合には,それぞれの認定基準と認定要領
によって認定すること。10
なお,肢体の機能の障害が上肢及び下肢の広範囲にわたる場合であ
って,上肢と下肢の障害の状態が相違する場合には,障害の重い肢で
障害の程度を判断し,認定すること。
(4)日常生活における動作と身体機能との関連は,厳密に区別すること
ができないが,おおむね次のとおりである。15
(中略)
イ上肢の機能
(ア)さじで食事をする
(イ)顔を洗う(顔に手のひらをつける)
(ウ)用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)20
(エ)用便の処置をする(尻のところに手をやる)
(オ)上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)
(カ)上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)
ウ下肢の機能
(ア)片足で立つ
(イ)歩く(屋内)
(ウ)歩く(屋外)5
(エ)立ち上がる
(オ)階段を上る
(カ)階段を下りる
(中略)
(5)身体機能の障害の程度と日常生活における動作の障害との関係を10
参考として示すと,次のとおりである。
(中略)
イ「機能に相当程度の障害を残すもの」とは,日常生活における動
作の多くが「一人で全くできない場合」又は日常生活における動作
のほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」をいう。15
ウ「機能障害を残すもの」とは,日常生活における動作の一部が「一
人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自
由な場合」をいう。」
3「第3障害認定に当たっての基準」「第1章障害等級認定基準」「第1
8節その他の疾患による障害」20
「1認定基準
その他の疾患による障害については,次のとおりである。
令別表障害の程

障害の状態
国年令別表1級(略)
2級(略)
厚年令別表第13級身体の機能に,労働が制限を受けるか,又
は労働に制限を加えることを必要とする程
度の障害を残すもの
その他の疾患による障害の程度は,全身状態,栄養状態,年齢,術後の
経過,予後,原疾患の性質,進行状況等,具体的な日常生活状況等を考慮
し,総合的に認定するものとし,身体の機能の障害又は長期にわたる安静
を必要とする病状があり,(中略)労働が制限を受けるか又は労働に制限5
を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。
2認定要領
(1)その他の疾患による障害は,本章「第1節眼の障害」から「第17
節高血圧症による障害」において取り扱われていない疾患を指すもの
であるが,本節においては,(中略)いわゆる難病(中略)の取扱いを10
定める。
(中略)
(5)いわゆる難病については,その発病の時期が不定,不詳であり,かつ,
発病は緩徐であり,ほとんどの疾患は,臨床症状が複雑多岐にわたって
いるため,その認定に当たっては,客観的所見に基づいた日常生活能力15
等の程度を十分考慮して総合的に認定するものとする。
なお,厚生労働省研究班や関係学会で定めた診断基準,治療基準があ
り,それに該当するものは,病状の経過,治療効果等を参考とし,認定
時の具体的な日常生活状況等を把握して,総合的に認定する。
(中略)20
(7)障害の程度は,一般状態が次表の一般状態区分表の(中略)ウ又はイ
に該当するものは3級におおむね相当するので,認定に当たっては,参
考とする。
一般状態区分表
区分一般状態
ア無症状で社会活動ができ,制限を受けることなく,発病前と同等にふる
まえるもの
イ軽度の症状があり,肉体労働は制限を受けるが,歩行,軽労働や座業は
できるもの例えば,軽い家事,事務など
ウ歩行や身のまわりのことはできるが,時に少し介助が必要なこともあり,
軽労働はできないが,日中の50%以上は起居しているもの
エ(略)
オ(略)
(8)本章「第1節眼の障害」から「第17節高血圧症による障害」及
び本節に示されていない障害及び障害の程度については,その障害によ
って生じる障害の程度を医学的に判断し,最も近似している認定基準の
障害の程度に準じて認定する。」
以上10

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