弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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平成12年合(わ)309号等強盗致傷,国外移送略取等
主    文
    被告人を懲役一二年に処する。
未決勾留日数中四五〇日を右刑に算入する。
理    由
(被告人の身上経歴等)
 被告人は青森県上北郡大三沢町(現在の三沢市)で出生し、地元の小学校に入学
したが、小学二年生の時に父親が亡くなり、小学六年生の時に親戚を頼って母親ら
家族とともに熊本市に移り住んだ。同地の中学校を経て、県立高校に入学したが、
高校二年生のころから学校の授業に興味をなくし、ベトナム反戦問題、大学問題、
中国の文化大革命などに関心を持つようになって、授業にはほとんど出なくなり、
昭和四二年三月に高校を卒業した。その後、上京して土木作業員として働いていた
が、いわゆる一〇・八羽田闘争の報道に接して刺激を受け、大学に入り学生になっ
て学生運動に参加しようと決意し、昭和四三年四月、明治大学二部政治経済学部政
治学科に入学した。以後、大学の講義に出席することはあまりなく、反権力の立場
から学生運動に身を投じて、共産主義者同盟傘下の社会主義学生同盟系の学生とし
て活動し、昭和四四年九月ころに共産主義者同盟赤軍派(以下、「赤軍派」とい
う。)が結成された後は、赤軍派の組織に加わり、その構成員として活動するよう
になった。
(罪となるべき事実)
第一 本富士警察署事件
   被告人は、多数の学生らと共に警視庁本富士警察署に火炎びんを投げつけて
襲撃しようと企て、
 一 昭和四四年九月三〇日午後七時ころ、Aらと共謀の上、東京都文京区ab丁目
c番d号所在の東京大学医学部付属病院外来診療棟研修医室及び同所から同区ab丁目
c番d号所在の警視庁本富士警察署付近に至る間の路上において、右学生ら二〇数名
に火炎びん(ガラスびんにガソリンと灯油の混合液を入れ、これに点火装置の布栓
をしたもの)二〇数本を携行して集合させ、もって、他人の身体、財産に対して共
同して害を加える目的で兇器を準備して人を集合させ、
 二 前同日時ころ、Aら及び右学生ら二〇数名と共謀の上、前記本富士警察署付
近において、焼燬の目的をもって、前記火炎びん二〇数本の布栓に点火し、これら
を人の現在する同警察署庁舎の一階署長室、二階刑事課室及び同警察署に隣接し現
に人の住居に使用する同区ab丁目c番d号所在の文京区立第四中学校の一階保健室、
階段踊り場に投げつけて炎上させたが、同警察署警察官及び同中学校警備員に消火
されたため、同警察署署長室の天井、床の一部及び同中学校保健室の床の一部等を
燻焼したにとどまり、同警察署庁舎等の焼燬の目的を遂げなかった
 ものである。
第二 一〇・二一兇器準備結集事件
   被告人は、昭和四四年一〇月二一日午後一〇時三〇分ころ、多数の学生らと
共に、警察官及び警備車両に火炎びんを投げつけて害を加えることを企て、Bほか
数名と共謀の上、東京都新宿区ab丁目c番地(当時)付近において、火炎びん(ガラ
スびんにガソリン、灯油、濃硫酸の混合液を入れて栓をしたもの)約二〇本を準備
して学生ら約八〇名を集結させ、もって他人の身体、財産に対して共同して害を加
える目的で兇器を準備して人を集合させた。
第三 よど号乗っ取り事件
   被告人は、昭和四五年三月三一日、C、D、E、F、G、H、I、J、Kら
十数名と共謀の上、赤軍派の国際根拠地設定のため、航空機を乗っ取り、朝鮮民主
主義人民共和国に渡ることを企て、被告人、D、E、F、G、H、I、J、Kの九
名において、東京都大田区羽田空港二丁目(当時)所在の東京国際空港から、日本
航空株式会社が運行する同日午前七時一〇分同空港発福岡空港行の定期旅客機第三
五一便(ボーイング七二七型機、機体番号JA八三一五号、通称よど号、同社代表
取締役L管理)に乗客を装って搭乗し、客室の前部、中央部及び後部付近にそれぞ
れ分散して着席した。
   被告人らは、同機が離陸して約一〇分後である同日午前七時三〇分過ぎこ
ろ、富士山上空付近を航行中の同機内において、座席ベルト着用の電光表示が消え
るや、客席の最前列にいたEにおいて、大声で「共産同赤軍派だ。」と叫んで、短
刀様のものを隣の乗客の胸元に突きつけたのを合図に一斉に立ち上がり、スチュワ
ーデスM(当時二二歳)、同N(当時二一歳)及び同O(当時二三歳)並びに乗客ら一二
二名に対し、各自所携の日本刀様のものや短刀様のものを振りかざし、あるいはけ
ん銃様のものを構えるなどしながら、こもごも「静かにしろ。」、「手を上げ
ろ。」などと怒号して脅迫し、引き続き、被告人、E及びDにおいて、操縦室内に
入り込み、機長P(当時四七歳)、副操縦士Q(当時三二歳)、航空機関士R(当時三
一歳)及びスチュワーデス訓練生S(当時一九歳)に対し、日本刀様のものや短刀
様のものを突きつけ、「静かにしろ」、「抵抗するな」、「客室の方は制圧したか
ら、いうことを聞け」などと申し向けて脅迫し、R機関士の両手をロープで縛り上
げて、S訓練生とともに操縦室から客室内へ連行し、P機長及びQ副操縦士に対
し、背後から日本刀様のもの及び短刀様のものを突きつけながら、「赤軍派の
ものだ。進路を北朝鮮のピョンヤンに向けろ」と迫り、Dにおいて、機内放送によ
り、「我々は共産同赤軍派だ。この飛行機を乗っ取って北朝鮮に行く。乗客の皆さ
んには気の毒だが人質になってもらう。おとなしくすればよし、さもなければ我々
は爆弾を持っているから自爆する。我々は死を覚悟して決行した。抵抗さえしなけ
れば命には別状はない」などと申し向けて脅迫し、また、被告人及びFらにおい
て、スチュワーデス、乗客らの両手を順次ロープで縛り上げる暴行を加えて、乗務
員及び乗客全員の反抗を抑圧して機内を制圧し、P機長及びQ副操縦士をして、
D、E、被告人らの命ずるままに同機を航行するのやむなきに至らしめ、もって、
右旅客機を強取し、その際、右暴行により、別紙受傷者一覧表記載のとおり、R機
関士ほか四名に対し、それぞれ全治又は加療約四日間ないし約二週間を要する左前
腕橈骨部圧挫・擦過傷、右前腕内外側擦過傷等の傷害を負わせるとともに、P機長
ら乗務員、乗客全員を日本国外である朝鮮民主主義人民共和国に移送する目的で自
己らの実力支配下に置いて略取した。
   引き続き、Dにおいて、乗務員、乗客に対し前同様の機内放送を繰り返して
威嚇し、被告人、J、K、I、G、H、Fらにおいて、日本刀様のもの、短刀様の
もの、手製爆弾様のものを携えて、乗客らの動静を監視し、また、被告人及びEら
において、操縦室内のP機長らの監視を続けた上、同日午前九時ころ、同機を福岡
市大字上臼井三四八番地(当時)所在の福岡空港に燃料補給のため着陸させ、その
後も、被告人らにおいて、乗務員、乗客に対し前同様の暴行、脅迫を繰り返しつ
つ、同機の出入口に見張りを立てるなどして、乗務員及び乗客の同機からの脱出を
阻止し、同日午後一時四〇分ころ、乗客のうち、Tら老齢者、幼児など二三名を解
放したが、引き続き、残りの乗務員、乗客合計一〇六名を前同様の支配下においた
まま、同日午後二時ころ、同機を同空港から朝鮮民主主義人民共和国に向けて離
陸、航行させ、まもなく日本国の領空外に出させた上、同日午後三時一五分ころ、
朝鮮民主主義人民共和国の首都ピョンヤンと誤信して大韓民国の首都ソウル特別市
近郊の金浦国際空港に着陸させた。まもなく、誤信に気づいたD、被告人らは、以
後、同空港に駐機中の同機内において、乗務員、乗客に対し、前同様の暴
行、脅迫を繰り返してその抵抗を抑圧し続け、そして、三日後の四月三日午後二時
三〇分ころないし午後三時すぎころまでの間に、Mスチュワーデスら乗務員四名及
び乗客九九名の合計一〇三名を金浦国際空港で解放した後、同日午後六時すぎこ
ろ、P機長、Q副操縦士、R機関士を乗せたまま、同機を金浦国際空港から朝鮮民
主主義人民共和国に向けて離陸、航行させ、同日午後七時二〇分ころ、同機を同国
の首都ピョンヤン市郊外の美林飛行場に着陸させた。もって、いずれも、同年三月
三一日午前七時三〇分すぎころから、同日午後一時四〇分ころまでの間Tら乗客二
三名を、同年四月三日午後二時三〇分ころないし午後三時ころまでの間Mらスチュ
ワーデス、乗客合計一〇三名を、同日午後七時二〇分ころまでの間P機長ら乗務員
三名を、それぞれ旅客機「よど」号機内に不法に監禁し、かつ、P機長ら乗務員、
乗客合計一〇六名の被拐取者を日本国外に移送した。
(弁護人の主張に対する判断)
 弁護人の主張は、多岐にわたるが、その主なものについて、検討する。
第一 判示第一の本富士警察署事件について
 一 判示第一の一の兇器準備結集の事実について
   弁護人は、被告人が警視庁本富士警察署に火炎びんを投てきする目的で本件
現場に赴いた事実は認めるものの、被告人は、本件犯行当時、赤軍派の構成員では
あったが、幹部ではなく、中央軍にも属していなかったのであり、「雇われ指揮
官」として行動したが、「実質的な指揮者」として、学生らに指示を出して集合さ
せる立場にはいなかったのであるから、被告人には兇器準備集合罪が成立するにと
どまり、兇器準備結集罪は成立しない旨主張する。
   a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k、l、m、nの各検察官調書
謄本等の関係各証拠を総合すれば、次の事実が認められる。
  1 (犯行計画状況)赤軍派は、昭和四四年九月二五日ころ(以下、月日のみ
を記す場合は昭和四四年のことである。)、九・三〇日大奪還闘争への参加を幹部
の集会で決定し、赤軍派中央軍の構成員らに日大奪還闘争の際に派出所などを襲っ
てけん銃を奪取する計画などが伝えられ、襲撃場所の下見などの準備が行われた。
    九月二九日、京成線町屋駅付近の旅館に赤軍派中央軍に所属する者らが集
合し、同日午後一〇時過ぎころから、D、B、o、p、被告人、b及びcら一二、
三名が旅館の一室に集まり、赤軍派軍事組織委員会委員長のDが、「九・三〇日大
闘争に呼応して中央軍は目黒方面の交番を火炎びんで襲い、けん銃を取る。地方軍
は本富士署を火炎びんで襲う。」旨の翌三〇日の行動方針を説明し、その際、被告
人、c及びbに対し、「本富士署を襲撃する地方軍の指導をしてくれ。昼前に東大
青医連ルームに行ってほしい。」旨指示した。
    また、同日の夕方ころ、東京大学工学部七号館の一室において開かれた赤
軍派の学習会で、赤軍派中央人民組織委員会委員のEから、集まった二〇名前後の
赤軍派構成員らに対し、翌三〇日に赤軍派は独自の闘争を展開するが、そのために
地方軍として学校ごとの班を編成する旨が告げられ、東洋大、東大、北高校などに
ついて班長が決められ、また、各班の翌日の集合場所などが決められた。
  2 (本件当日の赤軍派の会合)九月三〇日午前一〇時ころから足立区内の勤
労福祉会館において、地方軍の班長らを集めて班長会議が開催されたが、会議の開
始に先立ち、赤軍派中央人民組織委員会委員長のA、それにd、q、a、r及び被
告人らが集まり、Aが、自らは今日の闘争の意義や展望、大まかな戦術等について
話すが、戦術の細かい事は被告人の方から言うようにという趣旨のことを話すなど
して会議の進行を打ち合わせた。そして、会議においては、Aが、まず当日の行動
の意義等について説明し、それに続いて、被告人が、「検討の結果、地方軍の一隊
は本富士署を火炎びんで襲撃する事になった。・・・本富士署襲撃に使う火炎びん
は、もっか準備中である。今日の部隊編成や行動を決めるので、午後三時迄に東大
の黒いカーテンの部屋(青医連ルーム)に集まってくれ。本富士署襲撃には、中央
軍から三人来て指導に当る。」などと述べ、その後、E又はqが、集まった班長か
ら人員の状況等の報告を受けるなどし、一班約五名の班編成をした上、各班を本富
士署襲撃を行うA隊と神田周辺でゲリラ戦を行うB隊に振り分け、東洋大班、東大
班、北高校班、早稲田高校班並びに明治大学及び法政大学の学生など
で構成される中部班がA隊とされた。
  3 (被告人の当日の言動)被告人は、九月三〇日午後二時ころまでに青医連
ルームに到着し、既に同所に来ていた中央軍のbとcに対し、部隊の指揮をとるよ
うに指示し、更に、cには、「地区のレポ二、三人出しているから、その指揮をと
ってくれ。」などと命じ、指揮内容として、お茶の水周辺及び本郷一帯の機動隊の
動向を調査し、本富士警察署襲撃後に御徒町方面へ逃走するための地図の作製に当
たるように指示した。地方軍の赤軍派構成員らは、同日の夕方ころには、各班長か
ら連絡を受けるなどして青医連ルームに集合した。
    被告人は、同日午後五時すぎころ、一回目の班長会議を開き、各班長に各
校からの参加者を報告させてこれを大学ノートに書き留めるなどし、「今夜これか
らレポの報告を待って本富士署を火炎びんで攻撃する。」旨を伝えた。また、前も
って、集合してきた隊員から徴収していた所持金を逃走資金として各自に三〇〇円
ずつ分配した。また、そのころ、被告人の指示により、火炎びん作りが行われ、b
の指導を受けるなどして、赤軍派構成員らはビール瓶等の空き瓶にガソリンと灯油
を二対一の割合で入れ、布で栓をして、火炎びん約三〇本を作った。その後、被告
人は、二回目の班長会議を開き、班長らに対し、「今晩本富士署を火炎びんで襲撃
する。この総指揮は俺がとる。部隊は二つに分けて先発隊と後の部隊にする。先発
隊はb君が指揮をとり、後の部隊はs君(cの組織名)が指揮をとる。ここを出る
ときは、二組に分かれて出て、竜岡門の前で合流する。竜岡門を出て少し行ったと
ころで、俺が合図したら、止まって火をつけろ、投げろといったら投げてくれ。投
げ終わったら上野の方に逃げてくれ。逃げてから集まる場所は、各班で決めてく
れ。やった後皆無事だったかどうか確認するために電話番号を教えるか
ら、明日の朝一〇時から二時までの間に各自がここに電話するようにさせてく
れ。」などと指示した。
    被告人は、班長会議終了後、集合してきた全隊員に対し、自分が襲撃の総
指揮をとる旨述べて自己紹介した上、集合してきた者の名前を呼び上げた。そし
て、攻撃は二隊に分けて行い、東洋大班、中部班及び早稲田高校班は一隊、東大班
及び北高校班は二隊にそれぞれ属すること、一隊の隊長がb、二隊の隊長がcであ
ることを話し、さらに、cから、警察署の一階にはロッカーが窓のところに置いて
ある旨の報告を受けて、一隊は二階に火炎びんを投げ、二隊は一階のロッカーの上
を狙って投げるよう指示した。そして、その場の構成員から、火炎びんの投げ方が
分からないと聞いたので、bに火炎びんの投げ方を教示させ、また、自分の合図に
従って、火炎びんに火をつけ、投げるように指示した。また、青医連ルームを出る
には、一隊が先に出、二隊が少し遅れて出て、竜岡門の前で合流することなどを指
示し、逃げる際の注意なども与えた。そして、被告人は、各赤軍派構成員に向かっ
て、「レポが調べたところによると、お茶の水付近では大分やっているようだ。我
々は今日本富士警察署に攻撃をかけ、これをやることによって警察の機能を麻痺さ
せなければならない。諸君は最後までこの任務を果たしてくれ。」など
とアジ演説し、続いて各班長に決意表明をさせた。
    被告人は、同日午後七時ころ、待機していた各隊員に対し、「今レポから
報告があった。これから出かけるから火炎びんを一本宛持って行け。外に出たら黙
って行け。俺の言った注意をよく守れ。」と指示して、各自に一本ずつの火炎びん
を持たせた。そして、一隊の先頭に立って青医連ルームを出発し、その後二隊が出
て、竜岡門で合流した上、本富士警察署前付近路上に至った。
  4 (被告人の供述状況)被告人自身は、検察官調書において、「私には、本
富士署襲撃事件の指揮を執ったという点についても明確な記憶がないのですが、共
犯者らはほとんど一致して私が総指揮を執ったと供述しているそうですし、私は中
央軍に属しており、その時襲撃に参加した地方軍の者達より上の立場にありました
し、中央軍から派遣された三人のうちでは唯一東京の者ですから、本富士署襲撃事
件の総指揮を執るべき立場にいたと思うので、私が総指揮を執ったことは間違いな
いと思います。」と供述している。
   以上によれば、被告人は、赤軍派中枢の決定に基づき、最高幹部の一人であ
るDから、日大奪還闘争の際、赤軍派中央軍は武器奪取を目的として派出所を襲撃
し、地方軍には本富士警察署を襲撃させる旨の説明を直接受けるとともに、中央軍
の一員として地方軍を指揮するように命ぜられ、その後、部隊を構成する班長らに
赤軍派構成員らを青医連ルームに集合させるように指示し、総指揮者として、中央
軍から派遣されたb及びcに対し、二隊に分けた部隊をそれぞれ指揮するように命
じ、赤軍派構成員らに火炎びんを作製させて兇器を準備し、青医連ルームに集合し
た学生らの氏名等を把握し、班長会議等を行って赤軍派構成員らを統率するととも
に、本富士警察署襲撃の方法等を具体的に指示し、自ら指揮して青医連ルームから
竜岡門を経て同警察署に至る路上に火炎びんを所持した赤軍派構成員らを集合させ
るなどしていることが認められ、右事実によれば、被告人は、火炎びんを準備した
赤軍派構成員を集合させるにつき、現場での総括指揮者として主導的役割を果たし
たものであり、被告人に兇器準備結集罪が成立するものと認めるのが相当である。
弁護人の主張は失当である。
   ちなみに、弁護人は、被告人が中央軍に属していないというが、l及びa
は、それぞれの検察官調書謄本において、九月二二日ころ、都内新宿の喫茶店「ナ
ポリ」において、被告人が、赤軍派政治局議長Cから直接、中央軍へ異動するよう
命じられ、被告人が担当していた中部地区の後任にはaがなった旨を一致して供述
しており、また、本富士警察署襲撃事件に加わったgも、検察官調書謄本におい
て、青医連ルームで、被告人が、「俺は中央軍の藤田(被告人の組織名)だ。」と
自己紹介した旨述べており、そして、前記認定のとおり、被告人は、中央軍所属の
bらを二隊の各隊長に任じ、自らは本富士警察署襲撃の総指揮を執り、そしてま
た、被告人自身も、検察官調書においては、中央軍に属していたことを認める供述
をしていること、その他関係各証拠を対比検討すると、被告人が本件犯行当時赤軍
派中央軍に属していたものと認めるのが相当である。
 二 判示第一の二の現住建造物等放火未遂の事実について
  1 本富士警察署に対する現住建造物等放火未遂の事実について
    弁護人は、本富士警察署庁舎に対し点火した火炎びんが投てきされた事実
は認めるが、本件当時、本富士警察署には多数の警察職員が勤務中で、火炎びんは
すぐ消火されることは明らかであり、被告人らも十分これを予見していたことか
ら、被告人に焼燬の目的は存せず、放火の故意がなかった旨主張する。
    しかしながら、関係各証拠によれば、本件で準備された火炎びんは、ビー
ル瓶の空き瓶等に、ガソリン二、灯油一の割合による混合液を入れたものであると
ころ、被告人は二〇名余りの学生らにこれを一本ずつ持たせ、本富士警察署庁舎の
一階に投げる隊と二階に投げる隊に分けて、合図により一斉に点火させ、その後、
隊員らにそれぞれ火炎びんを投てきさせたことが認められ、その行為態様自体から
して建物を焼燬させる危険性の高いものであることは明らかである。そしてまた、
関係各証拠によれば、投てきされた火炎びんは、本富士警察署庁舎一階事務室の窓
ガラスを割ってブラインドに跳ね返されたほか、一階署長室に三本ほど、二階刑事
課室に一本ほど、窓ガラスを割って入って、火炎びんの内容液に着火して燃え上が
り、庁舎内にいた警察官らが、消火栓のホースを引っ張ってきたり消火器を用いた
りするなどして消火活動を行った結果、刑事課室の火はおおよそ三分くらい後に消
火し、署長室の方もまもなく消火したものの、その間に署長室では木製戸棚の敷居
の一部を炭化させたり、カーテンや回転椅子の布覆いを燃焼させたほか、天井ベニ
ヤ板の壁紙、戸棚の引き戸及び床のピータイルを燻焼させるなどし、
また刑事課室では書類やテープレコーダーを燻焼させるなどしたこと、その際、本
富士警察署に隣接する文京区立第四中学校校舎にも火炎びんが投てきされ、一階保
健室に一本ほど、二階階段踊り場から四本ほど、窓ガラスを割って校舎内に入り、
校舎内に宿直していた警備員一名と、駆けつけた警察官一〇名くらいが消火器で消
火に当たり、おおよそ一二、三分くらいで消火したが、保健室の床の合成樹脂タイ
ル約一五枚が燻焼したほか、階段踊り場の床板も直径約〇・五メートルにわたり燻
焼して床板の縁が炭化したことが認められるのであって、本件火炎びんの投てきは
建物を焼燬する危険性が高く、かつ、被告人がその旨の認識を有していたものと認
めるのが相当であり、被告人に放火の故意を認めることができるというべきであ
る。そして、焼燬の目的の有無は故意の成立を左右しないものであり、弁護人の主
張は失当である。
  2 文京区立第四中学校校舎に対する現住建造物等放火未遂の事実について
    弁護人は、被告人が共犯者らと事前に共謀したのは本富士警察署に対する
火炎びんの投てきであり、被告人自身は文京区立第四中学校校舎に向けて火炎びん
を投てきしたことはなく、また、同中学校校舎に対する火炎びんの投てきは、現場
で混乱した共犯者が近くの建物に向かって火炎びんを投てきしたのであって、事前
共謀あるいは現場共謀によるものではないから、被告人は罪責を負わない旨主張す
る。
    c、k、i、j、n、tの各検察官調書謄本等の関係各証拠によれば、被
告人と本富士警察署に対する火炎びんの投てきによる放火を共謀していた赤軍派構
成員らが、犯行に赴き、東大竜岡門を出て本富士警察署に隣接する文京区立第四中
学校前の路上に差しかかり、被告人の合図で火炎びんに点火した際、赤軍派構成員
の一人が点火した火炎びんを落として、歩道上で炎が上がり、その弾みで、赤軍派
構成員らの何人かが文京区立第四中学校校舎に向けて火炎びんを投げ込んだこと、
それらの者の中には、文京区立第四中学校校舎を本富士警察署庁舎と誤信して火炎
びんを投げ込んだ者(i、j、n)のほか、その建物が本富士警察署庁舎でないこ
とを知りながらも、共犯者の行為につられて同中学校校舎に向けて火炎びんを投げ
込んだ者(k、t)がいることが認められるところ、これら共犯者の行為は、被告
人と事前に謀議していた本件本富士警察署への火炎びん投てきによる放火の共謀と
因果関係があり、また、被告人の認識していた犯罪事実と現に発生した犯罪事実と
は法定的に符合しているのであるから、被告人は文京区立第四中学校校舎に対する
現住建造物等放火未遂の罪責も負うというべきである。弁護人の主張
は失当である。
第二 判示第二の一〇・二一兇器準備結集事件について
   弁護人は、被告人が本件当日犯行場所付近に赴いたことは認めるものの、被
告人自身は火炎びんの準備はしておらず、また、被告人の赤軍派内の地位からして
も、他の学生らをして犯行場所に集合せしめる立場にはなかったものであり、被告
人の行為は兇器準備集合罪に該当しても、兇器準備結集罪には該当しない旨主張す
る。
   d、h、u、v、l、w、p、x、yの各検察官調書謄本等の関係各証拠を
総合すれば、次の事実が認められる。
  1 (中隊長の指名、中隊の編成等)一〇月一八日ころ、小田急電鉄千歳船橋
駅付近の事務所二階において、C、D、z、U、V、E、d及びaら赤軍派幹部が
集まり、その席上でCから政治局の会議で決まった方針について説明があり、国際
反戦デーの一〇月二一日は中央軍と地方軍を一緒にした攻撃隊を編成し、新宿周辺
に集まって火炎びんや爆弾で機動隊をせん滅するという趣旨の話がされて、部隊編
成が行われ、攻撃隊の第一中隊長にB、第二中隊長に被告人、第三中隊長にWが就
くこととなった。
    被告人は、一〇月一九日、品川区五反田の喫茶店において、赤軍派千葉県
委員長であるe及びxに対し、「千葉地区は一〇・二一には第二中隊第三小隊にな
った。中隊長は俺だ。第三小隊長はe君にやってもらう。x君は副中隊長をやっ
て、中隊長を補佐してもらいたい。外に中部の小隊と西部の小隊がある。三小隊は
全体を二つの分隊に分けておいてくれ。明日電話で連絡してほしい。」などと指示
した。そして、翌二〇日には、被告人に電話をかけてきたxに対し、xを第二中隊
の第一副中隊長、hを第二副中隊長としたことを告げた上、xに電話をかけてくる
他の隊員らに、翌二一日は、所定の時刻までに部隊を東京に配置し、その部隊の居
場所を明確にして、直接被告人に連絡するように伝達するよう指示した。その後、
xは、電話をかけてきたh、eらに対し、被告人の右指示を伝達した。
  2 (一〇月二一日の状況)被告人は、一〇月二一日午前一〇時ころ、xに連
絡し、eに第三小隊の赤軍派構成員らを中央線周辺に置くようにと伝えるよう指示
してその旨伝達させ、更に、午後一時か二時ころ、杉並区阿佐ヶ谷の喫茶店におい
て、xに対し、東京薬科大学の所在場所と同大学に武器が用意してあることを教
え、その付近の喫茶店で待つように指示し、その後も、「薬大と中央線との間の路
地をうろつけ。」などと指示した。また、被告人は、阿佐ヶ谷の喫茶店において、
第二副中隊長のhらに対し、午後五時ころに新宿と中野の中間付近に集合するよう
に指示し、行動計画について、「集合場所には、トラック三台を用意する。武器は
そのトラックの中に入れておく。トラック乗車後、明治通りに出てそこで下車し、
突撃隊を先頭にして新宿の機動隊に突っ込む。そこで機動隊を制圧し、大衆と結合
して赤軍が先頭になって霞が関に向かう。途中で機動隊に阻止された時はその場で
交戦する。武器は突撃隊が爆弾を持つ。その後ゲバ部隊が続く。」などと説明し
た。
    赤軍派構成員らは、右指示を伝達されるなどして徐々に東京薬科大学周辺
に集まり、付近を徘徊していたが、午後五時ころ、hらのグループは、被告人か
ら、「ガサが入ったので最初の場所に集まれなくなった。中央線と薬大の間の路地
の辺りで待っていてくれ。」などと集合場所の変更を指示され、更に、午後一〇時
ころには、被告人と出会って、その先導で集合場所である東京薬科大学裏に行っ
た。そして、午後一〇時三〇分ころ、同所に約八○名の赤軍派構成員らが集結する
に至った。被告人は、そのころ、同所において、集合した赤軍派構成員らに対し、
「まだ新宿には大衆が残っている。各セクトも待機している。我々は人数こそ少な
いが、皆死ぬ覚悟でやってくれ。これからトラックが来るから、それで新宿に向い
機動隊を粉砕して大衆を結合する。我々の武器は火炎びんの他に爆弾も用意してあ
る。これで機動隊を粉砕するんだ。」などとアジ演説を行い、それに引き続いて赤
軍派構成員らを整列させた。そして、同所にトラック一台が到着すると、その荷台
に乗るように命じ、これに応じて二〇名程度の赤軍派構成員らが乗車し、各隊員に
火炎びんが一本ずつ配られた。被告人は、右トラックに乗車できなかった
赤軍派構成員らを率いて、「蜂起貫徹、戦争勝利」などと叫びながら発進した同車
の後を追って走っていったが、やがて同車から引き離されてしまい、赤軍派構成員
らを解散させた。
  3 (被告人の供述状況)被告人自身は、検察官調書において、兇器準備結集
につき、明確は記憶はないものの、「私がその場に集まった者のうち一部の者に、
当日のいわゆる国際反戦デーにおける赤軍派の行動として、火炎びんなどを使って
機動隊を襲撃するため、その場に集まるように指示したり、その場に集まった者に
対し、士気を高めるためのアジ演説をしたりしたことは間違いないと思います。」
と供述している。
   以上の認定事実によれば、被告人は、火炎びんなどを使って機動隊を攻撃し
てそのせん滅を図るという赤軍派幹部が決定した闘争方針に従い、幹部から中隊長
という役割を命じられ、自らは自己の中隊の小隊長や副中隊長を指名して、戦術を
説明し、B、Wの中隊長らとともに、本件現場に兇器である火炎びんが用意されて
いることを知りながら、自己の中隊の副中隊長や小隊長らに指示し、同人らを介し
て、多数の赤軍派構成員らを本件現場に集結させ、現場での指揮者として、火炎び
んなどで機動隊を粉砕する旨のアジ演説を行い、引き続いて赤軍派構成員らを整列
させ、トラックの荷台に乗るように命じたことが認められ、右事実によれば、被告
人は、火炎びんを準備した赤軍派構成員の集合につき、現場での指揮者として主導
的役割を果たしたものであり、被告人に兇器準備結集罪が成立するものと認めるの
が相当である。
   もっとも、弁護人は、被告人が中隊長のような地位に就くことは考えられ
ず、集合場所においてアジ演説を行った事実もないなどというが、d、h、xは、
被告人が第二中隊長に就任し、また、被告人の指示を受けて赤軍派構成員らを集め
て本件現場に集合した状況などを具体的かつ明確に供述していて、それらの供述内
容はほぼ符合しており、また、集合場所で被告人がアジ演説をした点についても、
d、h、u、v、wら、その場にいた者らが演説内容を含め被告人がアジ演説をし
たことを一致して供述している上、被告人自身も結集の指示やアジ演説したことを
否定はしない旨の供述をしていることなどにかんがみれば、これら供述は信用する
ことができ、前記のとおり認定できるというべきである。弁護人の主張は失当であ
る。
第三 判示第三のよど号乗っ取り事件について
   弁護人は、被告人らはよど号の機体の強取を目的としていたわけではなく、
その運行を支配して朝鮮民主主義人民共和国に一時的に政治的な逃避をしようと試
みたにすぎないのであって、機体を返還する意思を明確に持っていたのであるか
ら、不法領得の意思はなく、被告人らに強盗致傷罪は成立せず、逮捕監禁致傷罪、
国外移送略取罪、国外移送罪の限度で犯罪が成立する旨主張する。
   しかしながら、被告人ら犯人の要求したよど号の渡航先は国交のない朝鮮民
主主義人民共和国であり、同国の同意のないままその領域内に不法侵犯をして行く
のであり、また、犯人の一人は、「北鮮にはまだボーイング七二七はないはずだか
ら、この飛行機をみやげに持っていくんだ。」と述べており、これは犯人らの抱い
ていた認識の一端を示すものであって、これら事情にかんがみると、被告人らが朝
鮮民主主義人民共和国への渡航の目的を達した後に機体を返還する意思を持ってい
たことはないと認めるのが相当である上、そもそも、被告人らは、就航中のよど号
を正規の航路から外れて朝鮮民主主義人民共和国まで航行させる目的の下に、乗務
員及び乗客に判示の暴行脅迫を加えて機内を完全に制圧し、運航に責任を負ってい
る機長らを意のままに従わせて、同機全体を被告人らの実力支配下に置いてその占
有を取得した上、正規の航路を外れた航行を余儀なくさせたものであるから、被告
人らに不法領得の意思があったことは明らかであるといわなければならず、被告人
に強盗致傷罪が成立すると認めるのが相当である。
(法令の適用)
 被告人の判示第一の一の所為は平成七年法律第九一号による改正前の刑法六〇
条、二〇八条の二第二項に、判示第一の二の所為は同法六〇条、一一二条、一〇八
条に、判示第二の所為は同法六〇条、二〇八条の二第二項に、判示第三の所為中、
航空機を強取して別紙受傷者一覧表記載のRほか四名に対し傷害を負わせた点は、
いずれも同法六〇条、二四〇条前段に、日本国外に移送する目的で乗務員七名及び
乗客一二二名を略取した点は、いずれも同法六〇条、二二六条一項に、右乗務員及
び乗客ら一二九名を監禁した点は、いずれも同法六〇条、二二〇条一項に、乗務員
七名及び福岡空港で解放されなかった乗客九九名を国外に移送した点は、いずれも
同法六〇条、二二六条二項後段、一項にそれぞれ該当するところ、判示第三につ
き、国外移送略取、監禁、国外移送の各罪は、いずれもそれぞれ一個の行為で数個
の同一罪名に触れる場合であり、また、強盗致傷と国外移送略取、国外移送及び監
禁の各罪は、いずれもそれぞれ一個の行為で数個の異なる罪名に触れる場合であ
り、かつ、国外移送略取と監禁の各罪との間、国外移送略取と国外移送の各罪との
間には、いずれもそれぞれ手段結果の関係があるので、同法五四条一項前段
、後段、一〇条により、結局、以上を一罪として刑及び犯情の最も重いRに対する
強盗致傷罪の刑で処断し、所定刑中、判示第一の二及び第三の各罪についていずれ
も有期懲役刑を選択し、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本
文、一〇条により最も重い判示第三の罪の刑に同法一四条の制限内で法定の加重を
した刑期の範囲内で被告人を懲役一二年に処し、同法二一条を適用して未決勾留日
数中四五〇日を右刑に算入することとする。
(量刑の事情)
 本件は、赤軍派に属する被告人が、他の赤軍派構成員らと共謀して、本富士警察
署を襲撃するため火炎びんを準備して赤軍派構成員らを集合させ、この者らを指揮
して本富士警察署等に火炎びんを投てきして放火しようとしたが、その目的を遂げ
なかったという兇器準備結集、現住建造物等放火未遂(判示第一の一、二)、ま
た、警察官や警備車両などを襲撃するため火炎びんを準備して赤軍派構成員らを集
合させたという兇器準備結集(判示第二)、そして、飛行中のよど号を強奪すると
ともに、乗務員、乗客を国外移送の目的で略取し、その際に乗務員、乗客に傷害を
負わせ、また、人質として航空機内で監禁して国外に移送したという強盗致傷、国
外移送略取、同移送、監禁(判示第三)の事案である。
 赤軍派は、世界同時革命を実行するために前段階武装蜂起を唱え、それを実現す
るために、中央軍と地方軍とからなる革命軍を組織し、武器で武装して暴力革命を
行うとし、昭和四四年九月下旬ころから大阪市内で銃器の奪取を目的として派出所
等を襲撃するなどのいわゆる大阪戦争を敢行し、また、東京戦争の一環として、い
わゆる日大奪還闘争に際し、都内の派出所を襲い銃器を奪取する計画を立て、奪取
を成功させるために、陽動作戦として、判示第一のとおり、赤軍派構成員らを結集
して本富士警察署等を襲撃放火し、次いで、判示第二のとおり、いわゆる一〇・二
一国際反戦デーにおいて、新宿周辺に配置された機動隊をせん滅するなどの目的
で、火炎びんを準備して多数の赤軍派構成員らを結集し、闘争を展開したものであ
る。その後、首相官邸襲撃、占拠を企てて軍事訓練を実施していたいわゆる大菩薩
峠事件において大量の検挙者を出し、これら一連の闘争の失敗から、国外に革命の
拠点を作るため、非合法手段を用いて海外に渡ろうとして、いわゆるハイジャック
を計画し、判示第三の犯行に至ったものであり、本件各犯行はいずれも社会秩序の
破壊と混乱を目的とし、法秩序を根底から無視した反社会的で危険性の
高い悪質極まりない犯行である。
 被告人は、判示第一及び第二の各犯行では、現場部隊を指揮する地位にあり、判
示第一の本富士警察署襲撃事件においては、集合した赤軍派構成員らを把握して部
隊を編成し、火炎びんを作製させ、襲撃方法を指示し、士気を鼓舞するため自らア
ジ演説をした上で、赤軍派構成員らに火炎びんを持たせて本富士警察署付近に集合
させ、自らの合図により火炎びんに点火させており、また、判示第二の一〇・二一
兇器準備結集事件においても、中隊長の一人として、赤軍派構成員らを指示して現
場に集合させ、アジ演説を行った上、被告人の指示でトラックに乗車させて新宿方
面に送り出すなどの指揮をとっているのであり、いずれの犯行においても重要な役
割を果たしている。本富士警察署襲撃事件では、同警察署のみならず隣接の中学校
校舎にも火炎びんが投げ入れられて発火しており、適切に消火活動がなされたこと
により、放火は未遂には終わっているが、建物を燻焼させ、室内の備品等にも損害
を与えており、学校関係者や一般住民にも不安を与えたものである。
 また、判示第三のよど号乗っ取り事件は、赤軍派内において周到な謀議と準備を
重ねて計画し、そのうち被告人を含む九名の赤軍派構成員が実行したものであり、
被告人ら実行犯は、その役割分担に従い、多数の乗客、乗務員の手首をロープで縛
り、日本刀様のもの、短刀様のもの、手製爆弾様のものを示し、「ハイジャックに
失敗したら飛行機と一緒に自爆する。」などと、執拗かつ強度の暴行脅迫を加え、
機内を完全に制圧し、多数の乗客、乗務員を人質にして、不法な要求を繰り返し、
長時間にわたって狭い機内でその自由を拘束し、自爆をほのめかす犯人らの脅迫等
により、乗客らは強い不安感に苛まれ続けたのであり、中には、体調を崩したり、
事件に遭遇して親の死に目に会えなかった乗客もいて、乗客らが受けた身体的、精
神的苦痛は甚だ大きく、安否を気づかう家族らにも計り知れない不安を与えたもの
であり、被告人ら実行犯に対する乗客及び乗務員らの被害感情には犯行当時は勿論
のこと現在もなお厳しいものがある。そして、本件は、わが国最初のハイジャック
事犯として社会的に大きな衝撃を与え、犯行に伴い航空業務に広く混乱が生じたほ
か、安全第一を旨とする航空運送業務に対する脅威として受け止めら
れ、また、関係諸国との間で解決策をめぐり国際的緊張をもたらし、更には、事件
への対応のため航空会社、空港関係者、関係機関等に多大の人的、物的負担を生じ
させたのであって、その影響は広範囲に及んでおり、極めて重大な事件であったと
いうべきである。そして、被告人は、Eと共に真っ先に操縦室に飛び込んで日本刀
様のものを機長らに突き付けて操縦室内を制圧し、客室では、日本刀様のものを持
って機内全体を威圧して監視し、福岡空港における乗客の一部解放の際には、出入
り口付近で手製爆弾様のものや、抜き身の日本刀様のものを持って、周囲にいる者
に対し威圧的な態度を示して、積極的で目立った言動をしており、犯行の遂行上、
重要な役割を果たしたものである。
 以上の諸点にかんがみれば、被告人は厳しく非難されなければならず、その刑事
責任は重大であると言わなければならない。
 したがって、被告人が、本件各犯行につき、一部争う点はあるものの、事実は概
ね認めており、本富士警察署等に対する放火は幸いにして関係者の消火活動により
未遂に終わっており、また、被告人は、事件から約三〇年余りが経過した現在は、
当時の過激な行動の誤りを認め、判示第三のよど号乗っ取り事件については、乗務
員、乗客らを人質にしたことは弁明の余地がないとして、被害者やその家族らに対
する謝罪の気持ちを披瀝して反省の情を示していること、その他被告人のために酌
むべき諸事情を考慮しても、主文掲記の刑に処するのを相当とする。
 よって、主文のとおり判決する。
平成一四年三月一四日
東京地方裁判所刑事第一二部
 裁判長裁判官  小   倉   正   三
   裁判官  多 和 田   隆   史
   裁判官  野   澤   晃   一

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