弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人鈴木義広の控訴趣意は別紙記載のとおりである。
 本件においては道路交通取締法第二十二条第一項にいわゆる「右折」の語の解釈
が問題になつているのである。そこで考えてみるのに、同項(昭和二七年法律第二
〇三号によつて改められる前のもの)が「車馬の操縦者は、発進、左折、右折、徐
行、停止若しくは後退をしようとするとき……は、手、方向指示器その他の方法で
合図をしなければならない。」と規定しているのは、要するにこれらの発進、左
折、右折、徐行、停止、後退等の行為は車馬がそれまでの自然の状態を変更する行
為であるため、これをするについてなんらかの合図をするのでなければ歩行者又は
他の車馬の交通に不測の混乱と危険を生ずる虞があるからにほかならない。従つて
同項にいう「左折」又は「右折」の意義もこの趣旨によつて解釈せらるべきことは
明らかである。ところで、本件においては、被告人が幡ケ谷方面から渋谷南平台方
面に通ずる道路を南平台方面に向つて自動車を操縦して進行中、渋谷区a町b番地
先のロータリーに沿つて廻る際右折の信号をしなかつたというのであつてこのこと
は事実として争がない。原判決はこの場合を法にいう「右折」であるとして被告人
に合図の義務ありと判断したのであるが、これに対し論旨は、「左折」「右折」と
は方向変換の意であつて本件の場合のごとく道路にロータリーがあつたりあるいは
道路に物件が放置してあつたりしてそれを避けるために自然に迂回して進行するに
すぎない場合はこれに該らないと主張するのである。よつて原審における検証調書
の記載及び当審においてさらに検証したところを綜合して本件現場の地形を見るの
に、前記道路は現場附近において約十米前後の車道の幅員を有し、ロータリーの在
る部分からほぼ北方初台方面に向つて大体同様の幅員の道路が分岐しているため三
叉路をなしているのであるが、被告人が進行して幡ケ谷方面から南平台方面に至る
道路は、ロータリーの在る附近において心持ち右に緩いカーヴをなしてはいるもの
の、大体において直線をなしているとが認められる。従つて、もしこの道路の分岐
點にロータリーが設けられてなく、自動車が道路の中心線と併行して進行するので
あつたならばそれはもちろん「右折」には該らないであろう。またロータリーがあ
つてもそれが一般の交叉點におけるがごとく右の道路の中央に設けられていて、直
進しようする車馬が単に若干これに沿つて迂廻するにすぎない場合はやはり「左
折」「右折」の問題は生じないといつてよいであろう(けだし、かような場合はそ
の車馬が直進することは一般に自然の状態として予想されるところであつて、あえ
て合図をしなくとも別段混乱を生ずる危険はないからである。)。しかしながら、
前記各検証の結果によると、本件のロータリーは幡ケ谷方面から見て道路の中心よ
り左寄りにしかも相当大きな円周をもつて設けられており、その結果幡ケ谷方面か
ら南平台方面に向つて進行する車馬はこのロータリーをほとんど直角に近い角度で
廻ることになつているのである。いいかえれば、この附近は、道路そのものの形状
からいえば丁字状の三叉路であつて被告人の進行した道路はほぼ直線をなしている
と見ても差支ないのであるが、その分岐點に前記のようなロータリーが設けられた
ため、現実に車馬の進行すべき線を標準として考えれば、むしろ一點から三本の道
路が同じ角度に分れているのに近い状態となつているのである(当審証人Aの証言
によれば、このロータリーは交通を円滑ならしめる目的でことさらに車馬の進路を
右のように作為するため設けられたもの<要旨>であることが窺われる。)。そし
て、最初に述べたような法の趣旨と「左折」「右折」という文言の用例とから 旨>考えれば、ここに「左折」「右折」とは、道路が直線をなしているかどうかとい
うこととは一応関係なく車馬そのものの進路についていわれるものであるから(従
つて直線道路においても車馬が左折又は右折することはいくらもありうることであ
る。)、この場合被告人の操縦する自動車が前記ロータリーに沿つて廻つたこと
は、明らかに前記法条にいう「右折」に該当するといわなければならない。また、
当裁判所が現場を検証した結果によつても、本件の場合被告人がなんらかの合図を
しなければ、他の二方向から来る車馬としては被告人の進行方向を知りえないため
その行動に円滑を欠き、延いては交通の混乱を来す虞があると判断されるのであ
る。
 弁護人はこの「左折」「右折」を「方向変換」と同義だとするのであるがその
「方向変換」という語の意義自体必ずしも明白でないものの、本件の場合のごとく
車馬の進路が右するか左するか予測されないような場合もまた一種の方向変換と解
してよいであろう。これを要するに、原判決が被告人の所為を道路交通取締法第二
十二条第一項に違反すると判断したのは正当であつて、所論のような法令の適用の
誤は存しないから、論旨は理由がないといわなければならない。
 よつて刑事訴訟法第三百九十六条に従い本件控訴を棄却することとし、訴訟費用
の負担につき同法第百八十一条を適用して主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 大塚今比古 判事 山田要治 判事 中野次雄)

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