弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を取消す。
     被控訴人の請求を棄却する。
     被控訴人は控訴人に対し、金五三、九〇〇円及びこれに対する昭和二七
年一一月九日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
     控訴人のその余の請求を棄却する。
     訴訟費用は第一、二審を通じ、本訴について生じた分は被控訴人の負担
とし、反訴について生じた分はこれを十分し、その九を控訴人、その余を被控訴人
の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。被控訴人は控訴
人に対し金四九万円及びこれに対する昭和二七年一一月九日以降完済に至るまで年
五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする」
との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の陳述は、被控訴代理人において、「本件両地上の松立木に
ついては立木に関する法律による登記はしていない。そして被控訴人が昭和二三年
一月訴外Aに対し、伐採期間向後二年と定めて売渡した松立木のうちには本訴松喰
虫駆除木も含まれていたが、同二六年中訴外Bに売つた松立木はこれを除外した右
両地及び他の一筆地上の松立木である」と述べ、控訴代理人において、「係争の松
立木について登記がなされていないことは被控訴人主張のとおりであるが、被控訴
人と訴外Aとの間の松立木の売買においてその契約内容を明確にしえ書面は作成さ
れていないし、また該立木生立の場所が五、六ケ月の短期間に到底伐採搬出するこ
との不可能な不便極まるところであるのに、同訴外人は更にこれを控訴人に売渡す
際期限が切迫しているから急いで伐採するようにとの一言の注意すら与えなかつた
ことからみると、被控訴人主張のような効果を伴う伐採期限の約定はなかつえこと
を窺知するに足りる、仮りにそのような約定があつたとしても、それは同訴外人が
期限内に松立木を伐採すべき義務を果さないことによる売買契約の解除を意味する
ものであるから、民法第五四五条第一項但書の規定するところにより、既に伐採終
期の到来前同訴外人から適法に該立木を買受けた控訴人の所有権は、右終期の到来
による被控訴人と同訴外人間の契約の解除によつて侵害されるものではない。そう
すると全六筆地上の伐採された松立木の総石数一五八二石のうち控訴人において伐
採したものは僅々一五〇石を出でず、残り一四三二石はすべて被控訴人において控
訴人の所有権を侵害して不法に伐採したものであるから控訴人は右不法行為によつ
て石当り単価三五〇円の割合による損害を被つたものである」と述べ、相互に「従
前の自己の主張に反する相手方の主張部分を否認する」と述べたほかは、すべて原
判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
 証拠として、被控訴代理人は甲第一、第二号証を提出し、原審及び当審における
証人C(当審は一、二回)、D、当審証人E、Fの各証言、原審及び当審における
被控訴本人訊問の結果、原審における検証並びに鑑定人Gの鑑定(一、二回)の各
結果を援用し、乙第一、二号証は不知、同第三号証はその成立を認め、控訴代理人
において乙第一乃至第三号証を提出し、原審及び当審における証人H、I(当審は
一、二回)、J(原審及び当審共一、二回)、原審証人F、B、K(一、二回)、
L、M(一、二回)、N、当審証人O、Gの各証言、原審における検証並びに鑑定
人Gの鑑定(一、二回)の各結果を援用し、甲号各証の成立を認めた。
         理    由
 鹿児島県囎唹郡a町b字cd番地のe山林一町四反五畝及び同所f番g号原野二
反歩(以下両地と略称する)が被控訴人の所有であること及び被控訴人が昭和二七
年三月二二日右両地上の松立木を伐採して三個所の土場に搬出していたのをその頃
控訴人が自宅に持去つたことは、その数量の点を除き当事者間に争がなく、原審に
おける証人Fの証言と鑑定人Gの鑑定(第一回)結果を綜合すると、控訴人が自宅
に持去つた右松伐木の数量は一三〇石であることが認められる。そこで右松伐木の
所有権の帰属について考究するに、被控訴人がこれよりさき日時及びその生立個所
はともかくとして自己所有地上の松立木を訴外Aに売却したことがあるのは当事者
間に争はなく、成立に争のない甲第二号証の記載に原審及び当審における証人C
(当審第二回はその一部)、Dの各証言並びに被控訴本人訊問の結果を綜すると、
その松立木は右両地上に生立するものであつて、これを被控訴人は昭和二三年一月
頃Cの仲介によつて右訴外Aに対し、代金は三万円、向後二年以内に伐採しなけれ
ば契約は当然無効となりその所有権は売主たる被控訴人に復帰することと定めて売
却したものであることが認められる。これに反し同訴外人が買受けた松立木は、そ
のほか同様被控訴人の所有に係る同所h番のi同番のj、k番l号、m番n号のo
の地上に生立するものをも含むという控訴人の主張に副うが如き乙第一号証は、そ
の後における同訴外人と控訴人間の売買契約に関するものであるに過ぎず、しかも
山林計八筆地上の松立木の所有者として被控訴人のほか七名の氏名を掲げてはいる
が、その山林の地番等を明確にしておらみいので乙第三号証同様これらを以ては右
認定を左右し得るいし、そのほか前記伐採期限の約定がなかつたという控訴人援用
の原審証人K、M、原審及び当審証人H、I、J、当審証人Oの各証言は、直接契
約の衝にあつた前記証人Cの証言に比照して信用できず、他に右認定を覆えすに足
る証拠はない。そうすると右約定により遅くとも昭和二五年一月中までに同訴外人
がその伐採を完了しないときは、右両<要旨>地上の松立木の所有権は被控訴人に復
帰するわけであるが、もともとこのような約定は立木の売買当事者間におい
てそのままその効力を認めることは敢て妨げないが、買主から更に該立木を譲受け
た第三者に対しても該約定を対抗し、伐採終期の到来と同時に所有権復帰の効力を
生ぜしむるためには、該約定について何等かの公示方法を施こしておかなければ宏
らないと解するのが相当である。そうでなければ第三者に不測の損害を被らしめ著
しく立木取引の安全を害するに至ることが明白であるからである。そこでこれを本
件について看るに、右伐採期間中たる同二四年八月二日控訴人か同訴外人がら少く
とも右両地上の松立木を買受けたことは、原審証人H及び当審証人Oの各証言によ
つてその成立を認むべき乙第一号証の記載に右各証言を綜合してこれを認め得ると
ころ、右松立木について立木に関する法律による登記が施こされていないことは当
事者間に争がなく、その他何等かの公示方法を施こした事迹を認めるに足る証拠は
全く存しないし、被控訴人と同訴外人間の前記売買において該約定を附記した売渡
証が同訴外人に交付されたという原審及び当審証人Cの証言すらも、前後不一致矛
盾を包蔵するのみならず当審証人Hの証言にてらし信用できないのにひきかえて、
前記控訴人援用の各証言によると、控訴人は同訴外人からこれを買受ける際はもと
より、昭和二七年三月本件紛議が発生した後においてもなお、かかる約定の存在す
ることを知るに由なく、これなきものと確信していたことが認められ、これを覆え
すに足る証拠は全くない。してみると右約定は控訴人に対抗する効力はなく、右両
地上の松立木に対する控訴人の所有権は、伐採終期たる昭和二五年一月の経過によ
つて毫も影響を受けず、依然それは控訴人の所有に帰属するものといわなければな
らない。そうなると被控訴人には右両地上の松立木を伐採搬出する権利はなく、そ
れは不法行為として許されないものであり、却つて控訴人において被控訴人が伐採
した右両地上の松立木中前記一三〇石を自宅に持去つたことは、侵害せられた自己
の権利の回復たるに等しいものであるから、被控訴人の控訴人に対する本訴損害賠
償の請求は全く失当であつて棄却を免れない。ところで前顕乙第一号証の記載、原
審証人B、原審及び当審証人F、J、当審証人G、E、Iの各証言と原審における
検証並びに鑑定人Gの鑑定(一、二回)の各結果を彼是綜合考察すると、右両地上
の松伐木は前記一三〇石のほかに三八四石あり、そのうち控訴人において伐採した
と自認する一五〇石、右訴外人において伐採期間中に伐採したと認められる八〇石
を除く一五四石は、不法にも被控訴人において訴外Bに、更に同人から訴外Eに順
次処分させて伐採されるに至つたものであることが認められ、これを覆えすに足る
証拠はなく、またその石当り単価が三五〇円であることは当事者間に争がないの
で、結局控訴人の被控訴人に対する反訴損害賠預の請求は、金五三九〇〇円及びこ
れに対する反訴状送達の翌日なること記録上明かな昭和二七年一一月九日以降完済
に至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度におい
てこれを相当として認容すべく、その余は失当として棄却しなければならない。よ
つて民事訴訟法第三八六条第九六条第九二条第八九条を適用して、主文のとおり判
決する。
 (裁判長裁判官 桑原国朝 裁判官 淵上寿 裁判官 後藤寛治)

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