弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人弁護士原田武彦の上告理由について。
 被上告人(原告)が昭和二五年三月二五日その所有にかかる本件建物を上告人(
被告)に対し代金五〇万円で売渡す旨の売買契約を締結し、手附金として金一〇万
円を受取つたこと、残代金は同年九月三〇日までに支払い同時に被上告人は右建物
の引渡及び所有権移転登記手続をなすことを約定したこと、上告人は右建物の一部
階下一一坪八合の引渡を受けたが、いまだ残代金二五万円を支払つていないこと、
以上の各事実について当事者間に争のないことは本件記録上明らかであり、そして
右当事者間に争のない事実を基そとして原判決の判示するところは次のとおりであ
る。すなわち原判決は本件建物の敷地は訴外D寺の所有に属し、被上告人は右寺か
ら右敷地を賃借していたのであるが、被上告人は本件売買契約にあたり、上告人が
D寺から右敷地を賃借又は転借の承諾を得ることをうけ合つた事実が認められるか
ら被上告人はその責任において、右敷地を上告人がD寺から直接賃借することを斡
旋するか、あるいは被上告人が上告人に転貸するにつき承諾を得らるるよう取り計
つて上告人が現状のまま買受家屋を使用し建物買取の目的を達せしめる義務があり、
この義務は自己の所有権移転登記義務と同様、上告人の代金支払義務と対価的関係
に立ち被上告人において右義務の履行についてなすべき一切の準備行為をなしたと
きは上告人において代金不払につき遅滞の責を免れないものであるとの見解の下に、
挙示の証拠によつて、被上告人は上告人に対し昭和二六年二月九日残代金二五万円
の支払を催告し、もし二週間内に支払なきときは売買契約を解除する旨、通告を発
したところ、上告人は同月一七日前示敷地をD寺から借受けられるようにして貰い
たいと申入れてきたので、同日D寺の世話人E某と共に上告人被上告人両名はD寺
に赴き住職F某に対し賃借方を申入れた、これに対し右住職は被上告人において従
前の延滞賃料を支払うこと、上告人は右E某を保証人として公正証書を作成するこ
とを条件として上告人に賃貸することを承諾し、E某も上告人の保証人となること
を承諾した。そこで被上告人は即日延滞賃料を完済し、翌一八日被上告人は上告人
に対し右延滞賃料を完済したこと、上告人の新な賃借地は建物の敷地並びに建物使
用に必要な限度において約一二坪として分割すべきこと及び残代金は三日の猶予期
間を附すべきにつき同月二一日限り支払うべき旨催告し、もしその支払なきときは
本件売買契約はこれを解除する旨通告した。然るに上告人は遂に右の支払をしなか
つたものであるとの事実を確定した上、以上の事実関係である以上、被上告人とし
ては売主としてなすべき義務は全部完了したのであり右催告は上告人を遅滞に附す
るに十分であるから、本件売買契約は右解除の意思表示により有効に解除されたも
のであると判断しているものであることは原判文上明らかである。思うに、本件の
ような建物の売買契約においては、売主たる被上告人の建物の引渡並びに所有権移
転登記手続をなすべき義務と買主たる上告人の代金支払義務とは特段な約束のない
限り(このような特約のないことは前示当事者間に争のない契約の趣旨に徴し明ら
かである)同時履行の関係にあるものであるから被上告人において前示のような猶
予期間を附した履行の催告をなした場合においてはおそくもその最終期日までに建
物の引渡並びに所有権移転登記手続をなすについて準備を完了し(但し建物の一部
の引渡は済んでいた)、上告人から代金の提供あらば直ちに自己の債務の提供をな
し得るよう一切の準備を完了しおくことが肝要であり、かくして、前示催告は上告
人を遅滞に陥らしむる効力を有するものと解すべきところ(最高裁昭和二九年七月
二七日第三小法廷判決集八巻七号一四五五頁参照)、原判決は上告人被上告人の前
示各債務が同時履行の関係にあるものと判示しながら前示賃借権の承継あるいは転
借の承諾の点にのみ審理を集中し、被上告人のなすべき履行の準備並びに提供につ
いては何ら釈明をなすこともなく漫然と前示催告が前叙の理由だけで附遅滞の効力
あるものとしたのは審理不尽であり、延いて理由不備の誤謬に陥つたものと云わざ
るを得ないのであつて、論旨は結局理由あるに帰し、原判決はこの点において到底
破棄を免れないものと認める。
 よつて、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    高   木   常   七

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛