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平成23年12月16日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成21年(ワ)第24207号不当利得返還請求事件(第1事件)
平成21年(ワ)第24210号損害賠償等請求事件(第2事件)
口頭弁論終結日平成23年10月19日
判決
東京都新宿区<以下略>
原告株式会社ブルーアンドピンク
同訴訟代理人弁護士中道武美
東京都渋谷区<以下略>
被告株式会社アーツブレインズ
同訴訟代理人弁護士髙橋順一
兼松由理子
向宣明
大江耕治
太田貴裕
長島弘幸
主文
1被告は,原告に対し,899万2270円及びこれに対する平成21年
7月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用はこれを100分し,その99を原告の負担とし,その余を被
告の負担とする。
4この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
(第1事件)
主文第1項と同旨
(第2事件)
被告は,原告に対し,8億8126万8618円及びこれに対する平成21
年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1(1)第1事件は,化粧品等の商品を被告から仕入れ販売していた原告が,販売
先から商品が返品された場合には,被告に支払済みの当該商品の仕入代金を
原告に返還する旨の合意があるにもかかわらず,被告が返品分の仕入代金を
支払わないとして,被告に対し,不当利得金の返還合意に基づき,899万
2270円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成21年7月23日
から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める
事案である。
(2)第2事件は,①化粧品等の販売等を業とする原告が,被告との間で被告が
製造する商品については原告を通して販売する旨の合意をしていたにもかか
わらず,正当な理由なく原告を通さずに商品を直接販売する被告の行為は原
告に対する債務不履行に当たるとして,被告に対し,債務不履行による損害
賠償請求権に基づき,5億1166万8618円,②後記2(7)の商標権(以
下「本件商標権」という。)の商標権者である原告が,被告が化粧品,化粧
雑貨等の商品に別紙被告標章目録記載の標章(以下「被告標章」という。)
を付して販売する行為は本件商標権を侵害するとして,被告に対し,商標権
侵害による不当利得金返還請求権に基づき,3億6960万円,及び①,②
の各金員に対する訴状送達日の翌日である平成21年9月10日から支払済
みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2前提となる事実(証拠等を掲記した事実を除き,当事者間に争いがない。)
(1)当事者
ア原告は,化粧品,化粧雑貨の販売等を目的とする株式会社である。
イ被告は,化粧品の研究開発,製造,輸入,販売等を目的とする株式会社
である。
(2)業務提携契約の締結等
ア被告と株式会社ディアローラ(旧商号は株式会社ピィ・ジィ・アイ。以
下「ディアローラ」という。)は,平成15年11月30日付けで,両社
の製品の円滑かつ効率的な販売及び安定した物流を目的として以下の内容
の業務提携契約(以下「本件基本覚書」という。)を締結した。(甲1)
(ア)ディアローラの関連会社である株式会社D・L・Cを平成15年12
月1日付けで株式会社ブルーアンドピンク(原告)に商号変更し,同社
の発行済株式総数200株を,被告とディアローラが100株ずつ保有
する。
(イ)ディアローラの販売に係る営業の全てを,平成17年4月1日付けで
原告に譲渡する。
上記の営業譲渡は,原告とディアローラとの平成17年3月1日付けの
営業譲渡契約(甲2)により実行された。
イ本件基本覚書に基づき,被告とディアローラは,原告の株式(発行済株
式総数200株)をそれぞれ100株ずつ保有している。原告の代表取締
役はA(以下「A」という。)及びB(以下「B」という。)の2人であ
るが,Aは被告の代表取締役を,Bはディアローラの代表取締役をそれぞ
れ兼任している。また,原告の代表権のない取締役はC(以下「C」とい
う。)及びD〔通称は「D」〕(以下「D」という。)の2人であるが,
Cは被告の取締役を,Dはディアローラの取締役をそれぞれ兼任している。
〔第1事件について〕
(3)本件返還合意
原告,被告及びディアローラ間で締結された平成17年3月31日付けの
覚書(甲3。以下「本件覚書」という。)の第3条1項では,原告は,被告
及びディアローラから仕入れた商品の問屋等の取引先への販売価格の14%
相当額(以下「販売手数料」という。)を控除した金額を仕入価格として被
告及びディアローラに支払う旨定められている。
また,本件覚書第8条1項及び2項では,原告が納品した商品が問屋等の
取引先から返品された場合には,原告は当該商品を被告又はディアローラへ
返送するとともに,原告が本件覚書第3条1項により被告又はディアローラ
に支払った商品の仕入代金について,原則として,被告又はディアローラは,
その商品の仕入価格に相当する金額(問屋等の取引先への販売価格から当該
価格の14%相当額を控除した残額)と同額で精算し,当該金額を原告に返
還する旨定められている(以下「本件返還合意」という。)。
(甲3)
(4)被告の返還債務
原告は,本件覚書第3条に基づき被告の商品の仕入代金を被告へ支払って
きたが,平成20年11月から平成21年6月までの間に既に仕入代金を支
払った被告の商品が問屋等の取引先から原告へ返品されたため,本件返還合
意に基づき,被告は,別紙返品金額一覧表に記載された当該返品商品の仕入
価格に相当する金額である899万2270円を原告へ返還する債務を負っ
ているが,被告は,原告にこれを返還していない。
(5)被告の相殺の意思表示
被告は,第1事件の第1回口頭弁論期日(平成21年9月11日)におい
て,原告の被告に対する上記(4)の不当利得金返還債権(899万2270円)
と,後記4(1)〔被告の主張〕の被告の原告に対する貸金債権(合計488万
8500円)を対当額で相殺する旨の意思表示をした。
〔第2事件について〕
(6)被告商品の販売についての合意
本件覚書の第1条は,3者の役割として,被告及びディアローラはメーカ
ーとしての機能を果たし,自社商品の販売は原則として原告を通して行うこ
と,原告は販売会社としての機能を果たし,原則として被告及びディアロー
ラから仕入れた商品を,問屋等の取引先に販売することを定めており,被告
は,同条により,被告の商品を原則として原告を通して販売する義務を負う。
(甲3)
被告は,平成20年11月1日以降,原告への商品供給を停止し,原告を
通さずに被告の商品を直接販売している。
(7)原告の商標権
原告は,下記商標権(本件商標権)の商標権者である。(甲4,7,8)

登録番号第4894059号
登録年月日平成17年9月9日
商品及び役務の区分第3類
指定商品つけまつ毛用接着剤,つけづめ用接着剤,せっけ
ん類,歯磨き,化粧品,つけづめ,つけまつ毛
商品及び役務の区分第8類
指定商品ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛
カール器,マニキュアセット
商品及び役務の区分第21類
指定商品化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)
登録商標ナーナニーナ(標準文字)(以下「本件商標」と
いう。)
(8)被告の行為
被告は,平成20年11月1日以降,別紙被告商品目録記載の各商品(以
下,同目録記載1の商品を「被告商品1」などといい,各商品を併せて「被
告商品」という。)に被告標章を付し,販売していた(被告商品1について
は平成21年10月まで,被告商品2ないし4については同年9月まで被告
標章を付して販売していた。)。
(9)被告標章の商標登録について
被告は,被告標章について,平成21年6月17日,第3類「つけまつ毛
用接着剤,つけづめ用接着剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,つけづめ,つ
けまつ毛」,第8類「ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カー
ル器,マニキュアセット」及び第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を
除く。)」を指定商品として商標登録出願したところ,特許庁は,平成22
年2月12日,被告標章は本件商標に類似するものであって商標法4条1項
11号に該当するとして,その登録を拒絶する旨の査定をした。
被告は,平成22年5月12日,拒絶査定不服審判(不服2010-11
503)を請求し,特許庁は,同年12月21日,被告標章と本件商標とは
外観,称呼及び観念のいずれの点からみても類似しないとして原査定を取り
消し,被告標章を登録すべきものとする審決をし(乙73),平成23年2
月25日,被告標章は登録第5392787号商標(以下「被告商標」とい
う。)として登録された。
原告は,平成23年4月22日,被告商標の登録を無効とする旨の審判(無
効2011-890029)を請求し,特許庁は,同年10月4日,被告商
標は,本件商標に類似する商標であって,その指定商品は本件商標の指定商
品と同一の商品と認めることができ,商標法4条1項11号に該当するとし
て,被告商標の登録(登録第5392787号)を無効とする審決をした(甲
57)。
3争点
〔第1事件について〕
(1)相殺の可否(争点1)
〔第2事件について〕
(2)本件覚書の解除の可否(争点2)
(3)本件覚書の債務不履行による損害額(争点3)
(4)商標権侵害の成否(争点4)
(5)商標権侵害による不当利得額(争点5)
4争点に関する当事者の主張
(1)争点1(相殺の可否)について
〔被告の主張〕
ア原告の従業員E(以下「E」という。)及びF(以下「F」という。)
は平成20年12月9日に,原告の従業員G(以下「G」という。)は平
成21年1月23日に,それぞれ原告からの退職希望を申し出た。
被告は,平成21年2月26日,Eに対する特別退職金(乙4の雇用問
題解決案3項)に充当するため,原告に対し,142万8000円を送金
し(以下「本件送金1」という。),弁済期の定めなく貸し付けた。
被告は,同年3月25日,F及びGに対する特別退職金(乙4の雇用問
題解決案3項)に充当するため,原告に対し,284万1000円を送金
し(以下「本件送金2」という。),弁済期の定めなく貸し付けた。
被告が原告に本件送金1,2をするに当たっては,被告の取締役である
C(原告の経理担当取締役を兼務)と原告の代表取締役であるAとの間で,
被告が提案した雇用問題解決案(乙4)についてディアローラとの間で最
終的な合意ができていなかったため,最終的な取扱いを確定する際にその
処理を決することとして,送金した特別退職金相当額の金員の最終的な取
扱いが確定するまでは被告から原告に期限の定めなく貸し付けるものとし
て処理することが合意されたものであり,被告は決算において本件送金1,
2を「短期貸付金」と処理した(乙26の2,63の1,2)。
イ原告の従業員で組織されたブルーアンドピンク労働組合(以下「原告労
組」という。)は,原告を被申立人として,平成21年4月1日,大阪府
労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた(以下「本件労働事件」と
いう。)。原告の代表取締役であるAは,同月17日,本件労働事件の被
申立人代理人として弁護士髙橋順一及び同太田貴裕(以下「髙橋弁護士ら」
という。)を選任した。
髙橋弁護士らは,平成21年5月14日,原告に対し,本件労働事件の
着手金等として59万円(消費税別。以下「本件弁護士費用」という。)
を請求した。
被告は,本件弁護士費用に充当するため,平成21年5月29日,原告
に対し,本件弁護士費用に相当する61万9500円を送金し(以下「本
件送金3」という。),弁済期の定めなく貸し付けた。
被告が原告に本件送金3をするに当たっては,被告の取締役であるC(原
告の経理担当取締役を兼務)と原告の代表取締役であるAとの間で,被告
が提案した雇用問題解決案(乙4)についてディアローラとの間で最終的
な合意ができておらず,雇用問題の派生的問題である本件労働事件に関す
る本件弁護士費用の負担につき協議できる状況ではなかったことから,雇
用問題に関する最終的な取扱いが確定するまでは,被告から原告に期限の
定めなく貸し付けるものとして処理することが合意されたものであり,被
告は決算において本件送金3を「短期貸付金」と処理した(乙26の2,
63の1,2)。
原告の経理担当取締役であるCが当時把握し得た原告の銀行預金口座に
おける毎月の自動引落し等で引き落とされる金員を考慮すると,本件弁護
士費用相当額程度を借り入れないと同口座の資金がショートする現実的危
険性が高く,本件送金3に係る借入を実行する必要性が高かった。
ウCは,原告の担当者に対し,本件送金1~3は被告から原告に対する貸
付金であると説明しており,原告は,役員及び税理士事務所に相談した上
で,本件送金1~3を短期借入金として経理処理をした(甲26)。
株式譲渡等契約書(乙10の2)は,原告被告間にとどまらず,ディア
ローラも含めた3者間の包括的な紛争解決案として提示したものであり,
同契約書に記載のない債権はもともと存在していないというわけではない。
本件送金1,2に係る貸金債権は同契約書第4条の清算条項によりすべて
清算することで紛争全体を解決しようとしたものであるから,同契約書に
本件送金1及び2に係る貸金に関する記載がないことをもって返還合意が
なかったということはできない。
〔原告の主張〕
ア被告が主張する各金員が被告から原告へ送金されたこと(本件送金1~
3)は認めるが,原告被告間に返還の合意はなく,いずれも貸金ではない。
本件送金1~3は,被告がその原資を負担するものとし,後日,原告被
告間で話し合いを行い,仮に原告においていくぶんかを負担することにな
った場合には精算するものとして被告から原告に送金されたものであり,
返還の合意はなかった。
イ本件送金1,2は,被告が原告への商品供給を停止したことにより生じ
た原告の従業員の雇用問題(E,F及びG〔以下「Eら3名」という。〕
の退職)につき,被告が責任を負うとしてその退職金を被告が負担するこ
ととしたが,Eら3名は被告の従業員ではなく,被告が退職金を直接支払
うことができなかったため,被告が原告を経由してEら3名の退職金を支
払うために原告に振り込んだ金員であって,本件送金1,2について返還
の合意はない。
平成21年2月から3月の間,原告は,出金時期に配慮して資金繰りす
れば,Eら3名に特別退職金を独力で支払うことが可能であり,被告から
融資を受ける必要はなかった。
また,本件送金1,2の後に本件紛争の解決案として被告が提示した株
式譲渡等契約書(乙10の2)において,被告が主張する貸金は全く触れ
られていないことからも,本件送金1,2につき返還の合意がなかったこ
とは明らかである。
ウ髙橋弁護士らは,従前から被告の代理人として行動してきた実質的には
被告の代理人であるから,被告は,本件労働事件に係る本件弁護士費用を
髙橋弁護士らに支払う必要があったが,本件労働事件において髙橋弁護士
らは原告の代理人であったため,被告から弁護士費用を直接支払うことが
できなかった。そのため,被告は,原告の銀行口座を把握していたCにお
いて,原告の銀行口座を借用して原告に対して本件送金3を行い,原告を
経由して髙橋弁護士らに本件弁護士費用を支払ったのであって,本件送金
3について返還の合意はない。
本件送金3の当時,原告の銀行口座には本件弁護士費用を支払うに足り
る相応の資金余力があったのであるから,被告から融資を受ける必要はな
かった。
エ本件送金1~3については返還時期や金利が定められておらず,また,
本訴に至るまで被告が返還の催告をしていなかったことからも,返還合意
がなかったことは明らかである。
被告は,原告の代表取締役であるAと被告の取締役であるCが返還の合
意をしたと主張するが,Aは原告の代表取締役であると同時に被告の代表
取締役でもあり,Cも被告の取締役であると同時に原告の取締役でもある
から,被告主張の合意は同じ立場のものが仲間内で話し合ったにすぎない。
また,当時,AとCは原告の経営から実質的に撤退して形式的な取締役で
あったにすぎず,原告を実質的に経営していた代表取締役であるBは,被
告が主張する貸付けの合意には全く関与していない。
原告において本件送金1~3は短期借入金として経理処理されているが
(甲26),これは,既に原告の経営から離脱していたにもかかわらず,
原告の経理担当取締役(経理部長)であったCが原告の銀行通帳や銀行印
を原告に返還しなかったため,原告の経理担当社員がやむを得ずCの指示
に従って経理処理をした結果であって,真実の法律関係を現すものではな
い。
(2)争点2(本件覚書の解除の可否)について
〔被告の主張〕
被告は,原告に対する平成20年8月29日付けの通知書(乙3)をもっ
て本件覚書を解除したが(以下「本件解除」ということがある。),本件解
除には以下のとおり正当な解除事由(やむを得ない事由)があり,適法な解
除である。
ア本件覚書は,単なる販売(基本)契約というにとどまらず,被告とディ
アローラがそれぞれ折半して出資をした原告を間に挟み,原告を介した被
告及びディアローラの各商品の販売を中核とする包括的業務提携の一環を
担う契約である。すなわち,この業務提携は,原告の商号を変更し,Bの
保有していた原告株式の半分を被告に譲渡して,原告を被告とディアロー
ラの合弁会社にした上で,ディアローラの販売にかかる事業を原告に譲渡
して,原告を被告とディアローラの共通の販売会社とし,それに伴い,統
一的なブランド戦略を策定し,受注業務・出荷発送業務・返品対応業務等
の統一化を図り,電算システムの構築,物流センターの選定・建築,従業
員の移籍・移行,原告の販売手数料の設定,販売促進戦略・商品開発戦略,
財務体質の改善・強化等,様々な部面にわたって調整・統一化を進める包
括的な業務提携であった。
したがって,本件覚書の成否・消長は,単に原告と被告との関係のみな
らず,ディアローラと被告あるいは原告とディアローラとの関係,さらに
は,3者全体の関係も考慮して判断されなくてはならない。
イしかしながら,統一的なブランド戦略は,ディアローラが全くその構想
に乗ってこなかったために早々に破綻し,また,それまでディアローラの
財務体質の改善に向けて協力してきた被告の立場(原告に対する売掛代金
をディアローラが優先的に回収できるようにし,原告の販売手数料を販売
価格の14%相当額として実質的にディアローラの経費の相当部分を被告
において負担したこと等)を顧みずに,ディアローラが自社ビル取得や自
社工場の取得というおよそ上記業務提携の精神に反する方針を一方的に表
明したことにより,被告とディアローラとの事業展開の考え方の相違が決
定的となったことから,上記業務提携の見直しが必至となった。
そのため,被告は,原告及びディアローラに対して提案書(乙1)を提
出し,上記業務提携の見直し,再編を巡る議論が行われたが,収束する方
向性が全く見いだせない状況であった。
このような状況において,下記(ア)~(ウ)の上記業務提携の根幹をなすグ
ループ会社間の信頼関係を破壊する出来事が起き,遅くとも平成20年6
月末頃までには,上記業務提携の基礎となる信頼関係は破壊された。
(ア)D物流部長の突然の辞任
平成20年4月25日,Bは原告の役員用電子掲示板に,ディアロー
ラは上記業務提携からの離脱を決意した旨を記載し,これと呼応するか
のように,同日,Dは,原告の取締役であるA,B及びCに対して,突
然,同日付けで原告の物流部部長を辞任する旨の電子メールを送信した。
そして,Dは,原告の取締役会の承認もないまま,同年5月2日,一身
上の都合により4月末日付けで原告の物流部部長を辞任したという内容
の電子メールを原告の全従業員へ送信した。
この突然の辞任は,上記業務提携の方向性,すなわちグループ全体の
方向性を話し合っている最中に,グループとしての了承も,原告の取締
役会の承認もない状態で一方的に宣言されたものである。
(イ)原告の役員用電子掲示板の内容の流出
Bは,平成20年5月ころから,原告の役員用電子掲示板の記載内容
を部分的に原告従業員の一部に電子メールで送信し始めた。原告の経営
判断に関わる重要情報が,しかも,いまだ結論の出ていない中途のやり
取りが意図的に役員以外の者に流出したことで,社内が混乱し,原告の
従業員に大きな不安を招くことになった。本来,役員用電子掲示板は公
開目的のものではなく,役員間の伝達手段として,また非公開であるが
故の本音での議論の場として機能することを予定したものであった。し
かし,Bは,独断で一方的な意見を添えてその内容を従業員の一部に流
出させ,原告の従業員を意図的に分断しようとしたものといわざるを得
ず,その結果,原告社内は大いに混乱し,従業員の不安を掻き立てた。
また,これに気付いた被告出身の原告の役員は,以後,本音での議論を
投稿することができなくなり,グループ再編を巡る議論の膠着状態に拍
車を掛けることとなった。
このようなBによる独断的な役員用電子掲示板の記載内容の流出行為
は,上記業務提携の根幹をなす信頼関係を根本的に破壊するものであっ
た。
(ウ)従業員の選別,引き抜き策動
平成20年5月30日から6月2日まで,ブルーアンドピンク・グル
ープの慰安旅行が実施され,ディアローラと原告の従業員及び被告の営
業部長で当時原告に出向中であったH(以下「H」という。)が参加し
た。旅行中の同年5月31日の夕食時,Bは,旅行参加者に対し,原告
の再編問題について,営業部社員は母親(ディアローラ)の連れ子だか
らディアローラに戻す,管理部・物流部の社員は原告に残ることになる,
原告の養育費は被告から取るなどと一方的な説明をした。このように,
Bは,いまだ結論の出ていなかったグループ再編問題について,従業員
の振り分けにまで踏み込んだ一方的な発言をし,従業員の不安をより一
層掻き立てた。また,Bは,この慰安旅行中に,Hに対して,ディアロ
ーラに来ないかと引き抜き工作を行い,日本に戻ってからも引き抜き工
作を続けた。
このような一方的な従業員の選別,引き抜き策動は,上記業務提携の
根幹をなす信頼関係を破壊するものであった。
ウ以上のように,遅くとも平成20年6月末頃までには上記業務提携の基
礎となる原告,被告及びディアローラ間の信頼関係が破壊されたため,被
告は,原告に対する同年8月29日付けの通知書(乙3)をもって,業務
提携に係る本件覚書を解除した。
本件覚書の解除により,原告を介して被告商品を販売する旨の合意は効
力を失うことになるが,被告は,平成20年4月16日から原告に対する
商品供給を停止する旨を申し出ている。そして,被告は,グループ再編の
ための交渉を同年3月から7月末まで根気強く継続してきたものの,話し
合いによる再編は困難であるとの判断に至ったことから,やむなく同年7
月25日に申入書(乙2)を送付し,さらに同年8月29日に通知書(乙
3)をもって本件覚書を解除し,同年11月1日以降,被告商品の供給を
停止する旨を原告に通告したものであって,ディアローラ及び原告には十
分な予告期間が与えられていた。
また,被告のグループ再編の申入れに対して,ディアローラは,人道的・
道義的見地から,原告への支援を求めてきたが,これに対しても,被告は
雇用問題解決案(乙4)を提示し相応の補償の申出をしており,十分なも
のといえる。
したがって,被告による本件覚書の解除には,やむを得ない事由(正当
な解除事由)があり,有効な解除である。この有効な解除により,本件覚
書に基づく契約関係は消滅したため,本件覚書の存続を前提とする契約上
の債務の不履行に基づく損害賠償請求は理由がない。
〔原告の主張〕
ア被告が,平成20年8月29日付けの通知書(乙3)により本件覚書に
つき解除の意思表示をしたことは認めるが,やむを得ない事由(正当な解
除事由)がなく,本件解除は無効である。
イ上記業務提携の内容として,被告が主張する統一的ブランド戦略などは
存在しなかった。すなわち,被告はもともとブランドを持たなかったが,
ディアローラは独自のブランドを持っていたため,統一的ブランド戦略な
どそもそも必要がなかった。
被告は自ら営業部門を持たず,営業を卸業者に任せきりであったため,
卸業者による安売りやネット販売などで被告商品の価値やイメージが壊さ
れかかっており,ディアローラの営業力を利用することによって被告商品
の価値やイメージを維持することが,被告にとっての上記業務提携の最大
の目的であった。また,強力な営業部門を有するディアローラの人件費や
販売促進費の割合は高かったものの,費用対効果からすれば有効な投資で
あって,ディアローラは高い利益を維持しており,財務的に不安視する点
など全くなかった。
被告は,ディアローラとの業務展開の考え方の相違が決定的となったこ
とから業務提携の見直しが必要になったと主張するが,被告は,自らの考
え方に固執し,業務提携の継続に向けた努力をすることなく,被告の考え
方にディアローラが同化しなければ上記業務提携は解消すると決めつけ,
それを強行してきたのである。被告が本件業務提携から離脱した最大の原
因は,ディアローラが金融機関から借入れをして自社工場を建設すること
が「持たざる経営」という被告の社是に反することにあったが,上記業務
提携はそれぞれの会社の経営の独自性を認めないものではなく,ディアロ
ーラが安定的かつ等質的な商品を継続的に製造,販売するために自社工場
を建設することは,会社経営上,十分な合理性と必要性があったのである
から,ディアローラの自社工場建設が上記業務提携の解除事由とならない
ことは明らかである。
ディアローラは何度も話し合いによって解決をしようと試みたが,被告
は一方的に上記業務提携からの離脱の時期を設定し,業務提携の解消を目
指して行動していたのであって,本件解除の正当性を基礎づける事情は認
められない。
ウ被告は,平成20年3月17日の役員会の当時から,上記業務提携を一
方的に破棄して原告不要論を展開する兆しをみせていた。そのため,Dは,
被告の本心を確認するために原告の物流部長を辞任すると申し出たもので
ある。もし,被告において原告に対する契約上の責任を果たすつもりがあ
ったならば,直ちに物流部長を補充するなどの対策を採ったはずであるが,
被告は何の行動も起こさなかった。こうした被告の態度を確認したDは,
その後も原告の物流部長としての職責を全うしたのである。
被告は,このD物流部長の辞任を信頼関係破綻の原因の一つに挙げてい
るが,実際には辞任しておらず,本件解除の正当性を基礎づける事情とは
なり得ない。
エ一般論としては役員用電子掲示板の内容については秘密が守られてしか
るべきであるが,その記載内容が会社の継続と従業員の地位を危うくし,
従業員を路頭に迷わせるほどの重大な背信的事項である場合には,従業員
に対して情報を開示して,適正,妥当な判断を求めるべきであって,その
記載内容を従業員に開示することは何ら違法なことではない。
被告出身の原告役員の考え方や行動に関する情報を正確に従業員に開示
し,それに基づいて従業員が自ら行動することは企業統制として認められ
ており,これを本件解除の正当性を基礎づける事情とすることはできない。
オ被告は,原告の慰安旅行においてBが被告の営業部長であるHを引き抜
こうとしたと主張し,信頼関係破綻の原因の一つと挙げている。しかし,
Hは,もともと被告に対する不満を募らせており,慰安旅行中も被告に対
する不満を口にしたため真意を問いただしたところ,被告とは決別したい
とのことだったため,Bが受け皿を用意しようとしたものであって,引き
抜き工作などではなく,Hの希望に応じようとしたにすぎない。
したがって,被告が主張する慰安旅行での社員の引き抜きの事実はなく,
本件解除の正当性を基礎づける事情とはなり得ない。
カ以上より,被告による本件覚書の解除には正当な解除事由(やむを得な
い事由)は認められず,被告が主張する解除は無効であり,被告は,本件
覚書第1条により,原則として原告を通して被告商品を販売する契約上の
義務を負っている。したがって,平成20年11月1日以降,原告を通さ
ずに被告商品を自ら直接販売している被告の行為は,原告に対する債務不
履行を構成する。
(3)争点3(本件覚書の債務不履行による損害額)について
〔原告の主張〕
被告の上記債務不履行により,原告は以下の損害を受け,その損害額は5
億1166万8618円である。
ア逸失利益
被告は,本件覚書第3条に基づき,原告を通して問屋等の取引先に販売
した被告商品の販売価格の14%相当額を販売手数料として原告に支払う
義務を負担している。
原告を通して販売した被告商品の販売手数料(販売価格の14%)控除
後の売上額は,平成19年11月から平成20年10月までの1年間で,
合計10億1385万7112円であったため,この1年間の売上総合計
は11億7890万3618円(10億1385万7112円÷0.86)
であり,1年当たりの販売手数料額は1億6504万6506円である。
原告は,平成20年11月1日以降,原告を通さずに被告商品を自ら直
接販売している被告の債務不履行行為により,逸失利益として3年分の販
売手数料である4億9513万9518円の損害を被った。
イシステム不具合による損害
原告の経理システムにつき,被告が独自の経理システムを組んだため,
被告の上記債務不履行により,平成20年11月1日以降,原告は経理シ
ステムを有効に利用することができなくなり,経理システムの再構築の費
用として1652万9100円(①コクミンに関するシステムの再構築費
用182万9100円及び②販売管理機能追加に関するシステムの再構築
費用1470万円)の損害を被った。
〔被告の主張〕
本件覚書の有効期間中,被告が原告に対し,原告を通して問屋等の取引先
に販売した被告商品の販売価格の14%相当額(ただし,輸出用商品につい
ては5%相当額)を販売手数料として支払う義務を負っていたこと,原告を
通した被告商品の販売価格(販売手数料控除後の金額)の合計が平成19年
11月から平成20年10月までの1年間で10億1385万7112円で
あったことは認めるが,その余の原告の主張は否認ないし争う。
原告の経理システムについて被告が独自の経理システムを組んだという事
実はなく,原告が主張するシステム不具合はいずれも被告の行為に基づくも
のではない。
(4)争点4(商標権侵害の成否)について
〔原告の主張〕
ア被告が化粧品,化粧雑貨等の商品に被告標章を付して販売する行為は,
以下のとおり商標法37条1号に該当し,本件商標権を侵害する。
(ア)本件商標と被告標章の類否につき
本件商標は片仮名の標準文字をもって「ナーナニーナ」と一連に左か
ら右へ横書きしてなるものであり,「ナーナニーナ」の称呼が生じるも
のである。
これに対して,被告標章は,別紙被告標章目録記載のとおり,アルフ
ァベット文字の活字体の小文字よりなる「na」,「nani」及び「n
a」の3つの部分を若干の間隔を空けて左から右へ横方向に並べてなる
ものであり,第1の部分「na」と第2の部分「nani」との間に,
ハートの図形を横転させてなる流れるように湾曲した横長の図形を配し,
また,第2の部分「nani」と第3の部分「na」との間に,同様に
ハートの図形を横転させてなる流れるように湾曲した更に横長の図形を
「i」の文字の頂部の点の辺りから右向きに配してなるとともに,この
横長のハートの図形の右下において小さなハートの図形を左下から右上
にかけて斜めに配してなるものである。
上記の2つの横転したハートの図形はそれぞれ左右の2つの文字によ
り挟まれるとともに,横長に流れるように延びていることから,看者を
して長音記号「ー」を想起させるものであって,被告標章は,全体とし
て,あたかも「naーnaniーna」と左から右へ横書きしてなるか
のように認識されるものである。
したがって,被告標章は,「naーnaniーna」の構成に相応し
て「ナーナニーナ」の称呼を生じるとみるのが自然であり,被告自身の
みならず需要者・取引者からも広く「ナーナニーナ」と呼称されてきた。
以上のとおり,本件商標と被告標章は「ナーナニーナ」の称呼を共通
にするものであるから,被告標章は本件商標に類似するといえる。非類
似であると評価すべき特殊な取引の実情は存在しない。仮に被告標章が
「ナナニナ」の称呼を生じるものであったとしても,本件商標の「ナー
ナニーナ」の称呼に類似するものといえる。
(イ)被告商品と本件商標権の指定商品との類否につき
被告商品1,2は二重まぶた形成用ファイバーであり,被告商品3は
二重まぶた形成用ファイバーを接着するための下地材であり,被告商品
4は二重まぶた形成用接着剤であって,被告商品はいずれも二重まぶた
を形成するための化粧用具である。
被告商品と,本件商標権の指定商品である「つけまつ毛」及び「つけ
まつ毛用接着剤」は,目元を装飾する化粧用具である点で用途が同一で
あり,若い女性が使用するものである点で需要者の範囲が同一であり,
同一店舗の同一又は近接した場所で販売されている点で販売部門が同一
である。
被告商品1,2は,まぶた部分に貼着することにより一重まぶたを二
重まぶたに見せかけるものであり,他方,本件商標権の指定商品である
「つけまつ毛」は,まぶた部分に貼着して短いまつ毛を長いまつ毛に見
せかけるものであって,まぶた部分に貼着して目元の装飾効果を高める
化粧用具である点において共通する。したがって,被告商品1,2は,
本件商標権の指定商品である「つけまつ毛」に類似する商品である。
また,被告商品3,4は,いずれも皮膚に塗布する液状のものであっ
て,被告商品3は,二重まぶた形成用ファイバーである被告商品1,2
を接着する際に,接着力を高めるためにまぶた部分に塗布し二重まぶた
形成の効果を高めるものであり,被告商品4は,まぶた部分に塗布して
皮膚同士を接着することにより二重まぶたを形成するものである。他方,
本件商標権の指定商品である「つけまつ毛用接着剤」は,つけまつ毛を
まぶた部分に接着するためにまぶた部分に塗布する液状のものであって,
まぶた部分に塗布して接着作用を有する又は接着力を高める液状のもの
である点において被告商品3,4と共通する。したがって,被告商品3,
4は,本件商標権の指定商品である「つけまつ毛用接着剤」に類似する
商品である。
(ウ)被告標章の商標としての使用につき
被告は,被告商品においては商品の出所を示すものとして「メザイク」
ないし「MEZAIK」の表示が使用されてきたと主張するが,被告商
品の包装の正面部分には被告標章が表示されており,被告が主張するよ
うに小さく目立たない態様で表示されているとは到底いえないものであ
る。
そして,商品に複数の標章が表示されることは一般的であり,当該標
章が自己の商品と他人の商品との識別標章として機能する場合には,そ
れぞれの標章が出所表示機能を果たす商標として使用されているという
べきである。したがって,被告標章が「メザイク」ないし「MEZAI
K」とともに使用されていたとしても,被告標章による被告商品の出所
表示機能が消失するものではない。
また,被告標章と「MEZAIK」とにおいて,たとえ表示の大きさ
に大小の差があるとしても,被告標章が視覚的に明確に識別できるので
あれば,被告標章が単独で被告商品を識別する標章として出所表示機能
を果たしていることは明らかである。「メザイク」ないし「MEZAI
K」が被告商品の出所表示として需要者や取引者の間で広く知られてい
るとしても,被告標章も単独で被告商品を識別する標章として出所表示
機能を果たしていることに変わりはない。
したがって,被告標章は商標として使用されていないとの被告の主張
は失当である。
イ権利の濫用につき
被告商品は,被告が本件覚書につき解除の意思表示をして原告を通さず
に直接販売を開始するまでは原告が販売しており,当該商品には,原告が
製造,販売会社として表示されていると共に本件商標及びこれに類似する
被告標章が付されていた。
被告が原告を通さずに直接販売を開始した後は,被告商品は被告単独の
商品となり,当該商品からは当然に原告の表示が消去されるとともに,原
告が商標権を有する本件商標及びこれに類似する標章も消去されるのが道
理である。過去に本件商標及び被告標章が付されていたからといって,本
件商標が原告の出所を表示するものである以上,被告による直接販売開始
後の被告の単独商品について,本件商標及びこれに類似する被告標章を被
告が継続して使用する権利は,商標権者である原告の許諾なくしては存在
しない。
したがって,原告が被告に対して本件商標権を行使するのは正当な権利
行使であって権利の濫用となるものではない。
〔被告の主張〕
ア(ア)被告標章の商標としての使用につき
以下に述べるとおり,被告は,被告標章を商標として使用していない
から,本件商標との類否にかかわらず,被告標章を付した被告商品の販
売が本件商標権を侵害することはない。
a被告は,二重まぶた形成材商品及びその関連商品を自ら開発し,こ
れを「MEZAIK」と名付け,平成13年3月以来,一貫して「M
EZAIK」の商品名の下に製造,販売してきており,被告商品の商
品名は全て「MEZAIK」(ないし「メザイク」)を冠したものと
なっている。
b後記(イ)bのとおり,被告商品のパッケージには,「MEZAIK」
が大きく目立つ態様で表示されているのに対し,被告標章は小さく目
立たない態様で表示されていたにすぎない。
被告の製造する二重まぶた形成材商品及びその関連商品は,需要者,
取引者の間では,一貫して「MEZAIK」商品として認識されてお
り,「MEZAIK」は被告商品の出所を示すものとして,需要者,
取引者の間で周知となっている。
cこのように,被告の製造に係る商品は,「MEZAIK」ないし「メ
ザイク」の商標をもって取引されているため,終始一貫して被告のみ
が商品の出所として需要者,取引者に認識されている。このため,被
告標章は,被告の製造に係る商品に使用されたとしても,常に「ME
ZAIK」ないし「メザイク」と共に使用されており,独立して商品
の出所を識別する機能や,商品の品質を保証する機能を果たしている
とは到底認められない。
したがって,被告商品において,商品の出所を示すものとして使用
されているのは専ら「MEZAIK」ないし「メザイク」であって被
告標章ではないため,被告標章は商標として使用されているものとは
いえず,本件商標権を侵害することはない。
(イ)本件商標と被告標章の類否につき
仮に被告標章が商標として使用されていたとしても,以下のとおり,
被告標章は本件商標に類似しないため,被告標章を付した被告商品の販
売が本件商標権を侵害することはない。
a本件商標の外観及び称呼が原告主張のとおりであることは認める。
しかしながら,本件商標は,片仮名で「ナーナニーナ」と一連に表
記され,辞書等に掲載されていない造語商標であり,その称呼は「ナ
ーナニーナ」であって,特定の観念を有しないものである。
これに対し,別紙被告標章目録記載のとおり,被告標章は,アルフ
ァベットの「na」,「nan」(又は「nani」),「na」の
間にハート形の図形を組み合わせて構成した文字と図形の結合商標で
あり,その称呼は「ナナンナ」又は「ナナニナ」であって,特定の観
念を有しない。被告標章は被告の社内において特別な称呼はなく,「ナ
ーナニーナ」とは呼びならされていない。
したがって,本件商標と被告標章は,外観,観念,称呼のいずれに
おいても相違しており,被告標章は本件商標に類似していない。
b商標の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品につ
き出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず,そのう
ち一つにおいて類似しても他の2点において著しく相違することその
他取引の実情等によって,何ら商品の出所に誤認混同を来すおそれが
認められない場合は類似商標と解すべきではない。
被告標章は,上記aのとおり,外観,観念,称呼のいずれにおいて
も本件商標と類似していないが,仮に被告標章と本件商標の称呼が同
一であったとしても,以下の事情を考慮すれば,何ら商品の出所に誤
認混同を来すおそれがないため,類似商標と解すべきではない。
(a)原告は,株式会社D・L・Cの商号で平成15年2月に設立され,
同年12月に現在の商号に変更した後,平成16年5月に被告が発
行済株式の50%を譲り受けることにより,被告商品及びディアロ
ーラの商品を統一ブランドの下で販売することを目的とする会社と
なったのであって,自ら商品の製造を行ったことはない上,ディア
ローラも統一ブランド向けの商品を原告に供給しなかったため,所
期の目的であった統一ブランドによる商品の販売としては被告商品
のみを販売していた。
(b)被告は,二重まぶた形成材商品及びその関連商品を自ら開発し,
これを「MEZAIK」と名付け,平成13年3月以来,一貫して
「MEZAIK」の商品名の下に製造,販売してきた。
(c)被告が製造して原告に供給し原告において販売していた商品のパ
ッケージには,表面の左側(黒い部分)に大きく目立つようにピン
ク色で「MEZAIK○○」と商品名が表示されていたのに対し,
被告標章は商品本体が入っている透明の箱の下部に小さく表示され
ていたにすぎなかった。
(d)原告を通さず被告が直接販売する被告商品のパッケージには,全
て表面の左側(黒い部分)に大きく目立つようにピンク色で「ME
ZAIK○○」と商品名が表示されているのに対し,被告標章は
パッケージ下部に小さく表示されていたにすぎない。また,被告商
品の容器についても同様に,「MEZAIK」を冠した商品名が大
きく目立つように表示されていたのに対し,被告標章は容器下部に
小さく表示されていたにすぎない。
(e)このため,被告が製造する二重まぶた形成材商品及びその関連商
品は,被告を出所とする「MEZAIK」商品として,需要者,取
引者に認識されてきており,「ナーナニーナ」商品としては認識さ
れていない。
(f)同種同機能の商品が多数存在する化粧用具業界においては,商品
のパッケージ・広告宣伝等により差別化を図っているのが実情であ
り,商品の外観が化粧用具関係の商品の取引に当たっては重要な要
素を占めるものである。
(g)よって,原告が販売していた商品であれ,被告が原告を通さずに
直接販売する被告商品であれ,被告が製造する二重まぶた形成材商
品及びその関連商品は,常に,被告を出所とする「MEZAIK」
商品として需要者,取引者の間で取引されてきたのであって,商品
の出所は常に被告であるため何ら出所の混同は生じていない。
(ウ)被告商品と本件商標権の指定商品との類否につき
特許庁の類似商品・役務審査基準(国際分類第9版)によれば,「つ
けまつ毛」は類似群コード21F01に分類されるところ,他に同コー
ドに該当する商品としては,「つけづめ,ひげそり用具入れ,ペディキ
ュアセット,まつ毛カール器,マニキュアセット,耳かき,携帯用化粧
道具入れ,化粧用具(「電気式歯ブラシ」をのぞく。),つけあごひげ,
つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」が挙げられてお
り,「つけまつ毛,つけづめ,つけあごひげ,つけ口ひげ」は,いわゆ
る化粧用具等と同じ群に分類されている。そして,「つけまつ毛」は身
体の一部を模した擬似的な物体を身体に付着させるものであるところ,
被告商品1,2は,それ自体が擬似的な(二重)まぶたであるわけでは
なく,まぶたに付着させることによりまぶた自身が二重を形成する効果
が得られるものである。したがって,被告商品1,2は,「つけまつ毛」
と性質を異にし「つけまつ毛」に類似しない。
また,同審査基準によれば,「つけまつ毛用接着剤」は類似群コード
01A02に分類されるところ,他に同コードに該当する商品としては,
「のり及び接着剤(事務用または家庭用のものを除く。),かつら装着
用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,事務用または家庭用のの
り及び接着剤」が挙げられており,いわゆる接着剤と洗濯のりが含まれ
ている。この点,被告商品3は被告商品1,2とセットで使用する補助
下地剤であって単品では接着効果はない(洗濯用のりでもない)ため,
「つけまつ毛用接着剤」とは性質を異にし,「つけまつ毛用接着剤」に
類似しない。
被告商品4には,皮膚と皮膚を付着させるという意味での接着効果は
あるものの,「つけまつ毛用接着剤」がつけまつ毛を皮膚に接着させる
ことを目的とするのに対して,被告商品4は皮膚と皮膚を付着させるこ
と自体が目的なのではなく,それにより二重まぶたの形成を助けること
が目的であり,被告商品4は「つけまつ毛用接着剤」とは性質を異にし,
「つけまつ毛用接着剤」に類似しない。
イ権利の濫用につき
仮に被告標章が原告の商標権を侵害しているとしても,以下のように,
原告の被告に対する商標権の行使は権利の濫用であって,商標権侵害に基
づく原告の請求に理由はない。
すなわち,そもそも原告は,株式会社D・L・Cの商号で平成15年2
月に設立され,同年12月に現在の商号に変更した後,平成16年5月に
被告が発行済株式の50%を譲り受けることにより,被告商品及びディア
ローラの商品を統一ブランドの下で販売することを目的とする会社となっ
たのであり,本件商標は,被告の代表取締役であるAが共通のブランディ
ングにより商品を販売していくに当たり原告に利用させるため考案した商
標であり,商標登録が可能か否かの事前調査やロゴデザインの開発等の費
用は被告が負担したものである。被告としては,本件商標を自ら登録する
ことも可能であったが,ディアローラとの共同事業が発展することを願い,
原告が販売会社であることを考慮して,原告の名義で登録させたものであ
る。また,原告は被告商品の販売会社であったのであって,被告標章が付
された商品としては被告の製造する商品しか販売していなかったものであ
る。
したがって,本件商標は,このような共同事業に資するためにのみ使用
されるべき商標であって,被告とディアローラとの共同事業が破綻した時
点で原告は本件商標を使用する固有の利益を失っており,本件商標権が原
告の名義で登録されていることを奇貨として,被告に対して本件商標権を
行使するのは権利の濫用である。
(5)争点5(商標権侵害による不当利得額)について
〔原告の主張〕
被告は,上記商標権侵害行為に基づき,平成20年11月から平成21年
5月までの間,被告商品を月額平均8000万円分販売し,粗利益として販
売価格の66%である5280万円相当の利得を法律上の原因なく得ていた。
上記の商標権侵害行為により被告が不当に得た利得は,少なくとも3億6
960万円(平成20年11月から平成21年5月までの7か月分の利得の
総額)に上り,原告は同額の損失を被った。
〔被告の主張〕
原告の主張は否認ないし争う。
第3当裁判所の判断
1争点1(相殺の可否)について
(1)被告は,本件送金1~3につき,被告の取締役であるCと原告代表取
締役であるAとの間で,当該各金員を被告から原告へ期限の定めなく貸
し付ける旨の合意がされ,原告被告間で返還合意があったと主張する。
(2)本件送金1~3は,原告従業員の特別退職金及び本件労働事件に係る
弁護士費用の支払のために被告名義の銀行口座から原告名義の銀行口座
へ振込送金されたものであるが(甲36,37,乙13の1及び2,1
4の1及び2,15の1及び2,62の7,75),いずれも被告とデ
ィアローラとの間の業務提携の解消に伴う原告従業員の雇用問題に関連
するものである(弁論の全趣旨)。
業務提携の解消に係る問題についての交渉過程において,被告が,原
告,被告及びディアローラの3者間の株式等を含む債権債務関係を清算
するために作成し,B及びDへ送付した「株式譲渡等契約書」(乙10
の1,2)には,原告が被告へ請求する被告商品の返品に係る不当利得
金(精算金)の処理について記載する条項がある一方,本件送金1~3
に係る被告の原告に対する貸金債権の処理を明示した条項はない。また,
本件送金1~3に係る金銭消費貸借契約書等の書面は作成されておらず,
本件送金1~3の当時の原告の財務状況につき,被告から借り入れをし
なければ従業員の特別退職金や本件弁護士費用の支払いが困難な状況で
あったとは認められない上(甲36~38,乙15の2,61の3の2,
62の7,75),本件訴訟において相殺の抗弁を主張するまで,被告
が本件送金1~3に係る貸金の返還を原告へ請求した事実も認められな
い(弁論の全趣旨)。そして,証人Cの証言によれば,Cは,本件送金
1~3に係る被告とディアローラの負担割合について,業務提携の解消
に係る問題の全体的な解決の中でディアローラと交渉し,原告への出資
割合に基づき精算し,最終的な負担割合を決定すべきと考えていたこと
が認められる。
(3)以上の事実からすると,被告が原告名義の口座に振込送金した本件送
金1~3に係る金員については,最終的に被告とディアローラとの間の
交渉により原告に対する出資割合等に基づき精算し,両者が一定の割合
ずつ負担することが想定されていたものと認められるが,その負担割合
について合意が成立したものと認めることはできず,また,送金に当た
って原告被告間において当該金員の返還についての合意がされたものと
認めることもできない。
本件送金1~3について,原告の取引明細書において短期借入金とし
て会計処理されているが(甲26),当該会計処理は,原告の経理担当
者が,当該金員を貸し付けたと主張する被告の取締役で,かつ,原告の
経理担当取締役であったCから短期借入金として処理するよう指示され
たことによるものであって(乙26の1),契約書等の客観的な証拠に
基づいて処理されたものではないから,上記取引明細書の記載を根拠に
当該金員を借入金と認定することはできず,上記認定を左右するものと
はいえない。
(4)したがって,被告主張の相殺は理由がなく,原告の被告に対する第1
事件の請求は,全て認容すべきである。
2争点2(本件覚書の解除の可否)について
(1)証拠(甲1~4,7,8,15の1~15の6,18~20,40,
43,44,56,乙1~4,17の1~18の3の2,20の1~2
5の4,36の1~36の5,38の1~41,53の1~55,59,
60,65,67,82,証人C,原告代表者B,被告代表者,弁論の
全趣旨)によれば,以下の事実が認められる。
アアイメイク関係商品を主力とする化粧品等の製造,販売を主な業務
とする被告とネイル関係商品を主力とする化粧品等の製造,販売を主な
業務とするディアローラは,平成15年夏頃,共通の製造下請会社を介
して知り合い業務提携交渉を開始し,同年末頃にはほぼ基本的な合意に
至った。そこで,両社は,同年12月1日,ディアローラの関連会社で
ある株式会社D・L・Cの商号を「株式会社ブルーアンドピンク」(原
告)に変更するとともに,平成16年1月12日及び2月1日,被告と
ディアローラが共同出資による新会社として原告を設立したことを業
界紙である「週刊粧業」及び「東京化粧品商報」において発表した(乙
17の1及び2)。
被告とディアローラの業務提携は,両社が折半して原告に出資し,
両社の商品を原告を通して販売することを内容とする包括的なもので
あり,具体的には,平成16年5月20日にBの保有していた原告の株
式を両社に半分ずつ譲渡して原告を被告とディアローラの共同出資会
社とした上で,平成17年4月1日,ディアローラの販売に係る営業の
全てを原告に譲渡し,当該営業に従事するディアローラの社員を原告に
転籍させ,原告を被告とディアローラの共通の販売会社として受注業務
や出荷発送業務等を統一し,物流センターを建設するなどして,下記イ
の目的や事業戦略に基づき同月から実施された(以下,被告とディアロ
ーラとの間のこの業務提携を「本件業務提携」という。)。
本件業務提携に関する契約書類(甲1~3,乙21)は,それぞれ
平成15年11月30日付け(甲1),平成17年3月1日付け(甲2),
平成17年3月31日付け(甲3,乙21)とされているが,実際には,
いずれも平成18年7月頃に作成された。
イ被告及びディアローラは,平成16年5月から,本件業務提携の目
的,原告の事業戦略等についての検討を開始し,同年7月3日の原告取
締役会において,Aが提出した「ブルー&ピンク企業化の指針(中期計
画ビジョン)」(乙36の2)に基づき協議がされた。この書面の主な
記載は以下のとおりである。
(ア)目的と課題
○開発会社の二元化と相互協力による開発力の強化
○販売会社の新設による営業力の強化と流通(代理店)の再編強化
○ブランディングの統一によるマーケットの再整理と販売力の強化
○スケールメリットと分社化による利益構造の構築
(イ)独立採算制と利益構造の創出
○企業としての自己責任を果たす為には,まず「絶対に倒産しない
企業」を前提とした健全企業の建設を目標とし,3社関係の独立経
営と安全経営,独立利益の追求を目指すものとする。
○キャッシュフローの確保で無借金経営を目指す。そのためには,
自己資本(=資本金+内部留保)比率を高めること(利益を上げ税
金を払い,税引後利益で内部留保を増やしていくのが基本である)
に努力する。また,総資本をできるだけ小さくし相対的に自己資本
比率を高くするために,①在庫減らしの努力と売掛金の早期回収に
努める。②支払手形ゼロ=現金支払で高収益体質を確立する。③受
取手形については,現金化を原則に進める。
(ウ)企業ブランド,製品ブランドについて
○被告,ディアローラのブランドマーケットを結集し,原告の企業
ブランドを戦略ブランドとして位置付ける。
○基本ルートセールス(従前問屋卸し)品については「ピンクパッ
ケージ」と「ブルーパッケージ」の2つのブランド群を用意し両社
のブランドをこの中に再編成する。
さらに,平成16年12月22日の原告取締役会において,Aが提
出した「ブランディングにおける基本方針(案)」(乙36の4)に基
づき協議がされた。この書面の主な記載は以下のとおりである。
(ア)ブランディングの統一
原告を販売会社とし,被告,ディアローラの各商品ブランドをB
&Pブランドとして傘下に継承して再構築する。被告,ディアローラ
の各社は原告のオーナー会社であり,製造・企画開発会社として原告
のブランディング方針に従い協力する。
(イ)Shopzone(マーケット)の住み分け(標準ブランドの構築)
当該マーケット,当該ショップへの商品の適材化を目指し,ブル
ーzone(バラエティーショップ,専門店,百貨店等),ピンクzone
(ドラッグストア,総合スーパー等)の各ショップターゲットに照準
を合わせた標準ブランドをそれぞれ構築する。
ピンクzoneのスタンダードブランド「Na~nani~na」
ブルーzoneのスタンダードブランド「Samasama~na」
(ウ)ファッションコンセプトによるポジショニング
ファッショントレンドをリーディングし,提案テーマごとに再分
割した各デザインコンセプトをファッションシリーズ名(Pa,エター
ナル,紋,マンティス等)として構築する。当面は既存のブランドデ
ザインを継承し,原告のマーク等をルール化して用いるものとする。
このように,取締役会において原告企業グループの統一ブランド構想
について検討した結果,原告は,平成16年12月22日,「ナーナニ
ーナ」(本件商標)と「サマサマーナ」につき,商標登録出願をした。
もっとも,ディアローラは,この統一ブランド構想に従って自社商品
を「サマサマーナ」,「ナーナニーナ」のブランドとして販売すること
はなく,被告がその商品を同ブランドとして販売したのみであった。
ウ被告及びディアローラの商品が本件業務提携に基づき原告を通じて
販売されるようになった平成17年4月当初から,被告及びディアロー
ラの原告に対する売掛金はディアローラが優先的に回収できるよう,原
告が現金支払を受けた場合はまずディアローラへの支払に充て,原告が
問屋などから取得した受取手形は被告に裏書譲渡して被告において満
期日となるようにした。その結果,ディアローラは1か月を待たずに売
掛金の回収ができるようになり,資金繰りが改善されることになったが,
被告の売掛金の回収については平均すると約2か月を要することとな
った。
また,被告とディアローラは,本件覚書(甲3)に基づき,各商品に
つき原告の取引先への販売価格の14%相当額を販売手数料として原
告に支払ってきた。これは,本件業務提携前と比較すると,少量かつ多
種類の商品を積極的な営業活動によって大量に販売するディアローラ
にとっては経費負担を軽減するものであったが,販売する商品の種類が
少なく主力商品が特許製品であるため,多くの販売経費を必要としなか
った被告にとっては経費負担を増大させるものであった。実際にも,原
告における業務の多くはディアローラの商品のためのものであったた
め,実質的にディアローラの経費の相当部分を被告において負担するこ
ととなった。
その結果,平成18年7月頃には,それまで常態化していた支払手形
の振出しが不要となり,ディアローラの財務内容は改善された。
エディアローラは,平成19年秋頃,商品の製造委託先の経営状態に
問題があったため,金融機関からの借入れにより自社工場を建設するこ
とを決め,これを被告へ伝えた。被告は,本件業務提携は3社の財務体
質の強化も目的としたものであったことから,金融機関からの借入れに
よる自社工場の建設はディアローラの財務体質の脆弱化をもたらすも
のであるとして強く反対し,ディアローラの承諾なくディアローラの商
品の製造を委託した場合の見積もりをし,その見積書をディアローラに
交付するなどして説得したが,ディアローラは自社工場の建設を実行し
た。
このディアローラの自社工場建設をきっかけに,ディアローラと被
告間の本件業務提携に基づく事業展開に対する考え方の相違が明らか
となり,被告は,平成20年3月17日,ディアローラに対し,「提案
書」(乙1)を交付し,原告,被告及びディアローラがそれぞれ自立性
を強め,自立経営の地盤を確立するために,本件業務提携の再編(被告
及びディアローラ出身者以外の原告役員への登用,ブランド戦略の見直
し,販売手数料率の変更等)を提案した。
これに対し,Bは,同月25日,原告の役員専用電子掲示板(以下
「本件掲示板」という。)に,ディアローラ側の役員(B及びD)は原
告から退陣し原告の経営は被告に委ねる考えであることを投稿し(乙2
3の1[362]),これを受けて,Aは,同年4月16日,本件掲示板
において,被告の立場から,原告を物流会社に特化して本件業務提携を
再編すること(ディアローラ及び被告は得意先と直接取引を行う),販
売手数料ではなく物流手数料に転換することを提案した(乙23の1
[364])。同月25日,Bは,前日に行われたB,A及びCの協議を
踏まえ,本件掲示板にディアローラは原告企業グループからの離脱を決
意した旨を投稿したものの,同年5月15日に行われたB,A及びCの
協議において,原告を解散するしかない,被告には解散後に原告の社員
を雇用する場もないとAが発言したこと等を受け,同月26日,本件掲
示板において,原告の解散を回避するためディアローラが主体となって
原告を支えていく,被告は,道義上,原告の存続に不可欠な補償をすべ
きであるとして,被告に対し具体的なシミュレーションを依頼した(乙
23の2[370])。この依頼を受け,Cは,同年6月13日,被告が
原告を物流会社として活用して物流手数料を支払う場合をシミュレー
ションして,物流手数料の試算(乙24)及び被告とディアローラの電
算業務量の集計表(乙25の1~4)をディアローラに送信し,検討を
依頼したところ(乙23の2[371]),同日,Bは,本件掲示板にお
いて,被告が正当な理由なく本件業務提携から離脱するのであれば,人
道的・道義的に原告に対しどのような支援をするのかを検討して欲しい
旨回答した(乙23の2[372])。
その後も,C及びBは,本件掲示板において本件業務提携の再編の
必要性,ディアローラの経営改善の必要性,原告社員の雇用問題等につ
いて議論を重ねたが,解決の目処が立たないまま膠着状態となった。
オ被告とディアローラとの間において本件業務提携の再編について上
記エの協議がされていた平成20年4月25日,Dは,原告の取締役会
の承認を得ることなく,原告の取締役であるB,A及びCに対し,「本
日付で物流部部長を辞任させて戴き度く,その儀,宜しくお願いしま
す。」と記載した電子メール(乙38の1)を送信し,同年5月2日,
原告の従業員に対し,一身上の都合により4月末日付けで原告物流部の
部長を辞任した旨の電子メール(乙38の2)を送信した。しかし,D
は,辞任表明を受けても被告が原告の物流部長の補充等の措置を講じな
いことを確認すると,実際には辞任することなく原告の物流部長として
の執務を継続した。
カ被告とディアローラとの間において本件業務提携の再編について上
記エの協議がされていた平成20年5月26日以降,Bは,「【参考】
役員掲示板ラリー」などの表題を付して,上記エの本件掲示板への投稿
内容をそのまま原告の一部従業員へ電子メールで送信した(乙39の1
~4)。本件掲示板は,役員会を補助するものとして開設された原告役
員専用のものであって,B,D,A及びCのみがパスワードを入力する
ことにより利用することが予定されており,掲載内容の公開は予定され
ていなかった。
原告の従業員は,上記のBによる本件掲示板への投稿内容のメール
送信により,原告が危機的状況にあると認識し非常に不安な状態となり,
被告に対して意見書を送付し,早期解決による決定事項の開示,従業員
に対する説明会の開催等を要望した。
キ被告とディアローラとの間において本件業務提携の再編について上
記エの協議がされていた平成20年5月30日から6月2日にかけて,
原告企業グループの慰安旅行が実施され,ディアローラと原告の従業員
等が参加した。Bは,同年5月31日の夕食時に,旅行参加者に対し,
本件業務提携の再編問題について,原告営業部の社員はディアローラに
戻すが,管理部,物流部の社員は原告に残ることになるなどと説明した。
ク被告は,本件業務提携の再編問題について話合いによる解決は困難
であると判断し,平成20年7月25日付け「申入書」(乙2)をディ
アローラへ送付し,原告の解散を申し入れた。この申入書には,「D取
締役の物流部部長の辞任が,ブルーアンドピンク取締役会での承認を踏
まずに執行され,また,役員掲示板の内容がほぼそのまま一部社員にメ
ールで流されたり,慰安旅行時においては一方的な発表がされたりする
など,会社組織としての体をなしていない運営,親会社同士の守秘義務
に反する情報流出という残念な事態に瀕しております。御社との間でこ
の再編問題の結論が出ていない段階での,社内不安をもたらすような情
報流出はとりわけ問題であると考えます。重要な経営判断に係わる事項
を親会社同士で協議している最中であり,その内容がそのまま子会社の
社員にも漏れ出てしまうということは,両社における今後の信頼関係を
前提とする誠実な協議は不可能であると言わざるを得ません。」,「ブ
ルーアンドピンクを今後どう運営していくかについてもはや御社と協
力関係を持てない状況に立ち至ったとここに判断し,『円満かつ効率的
な販売及び安定した物流』の遂行は困難であるとの認識を致しました。」
との記載がある。
その後,被告は,平成20年8月29日付け「通知書」(乙3)を
原告へ送付し,本件業務提携に係る本件覚書(甲3)を解除する意思表
示をし,同年10月31日をもって被告の商品の原告への出荷を終了し,
同年11月1日以降,各得意先との直接取引を開始することを通知した。
この通知を受け,ディアローラは,被告に対し,原告への出荷停止
に伴う原告社員の雇用問題等に対して人道上,道義上の責任を果たすよ
う申し入れたため,被告は,同年9月2日,ディアローラに対し,原告
社員の被告又はディアローラへの転籍,希望退職者への特別退職金の支
給等を内容とする雇用問題解決案を提示するとともに(乙23の4[3
90]),同月10日,同内容の雇用問題解決案を原告の社員に対して
電子メールで送信した(乙4)。
(2)上記(1)認定のとおり,被告とディアローラは,原告をそれぞれの商品
の販売会社とすることを中核とし,相互協力により商品開発力,営業力
を強化し,それぞれの商品のブランドを統一すること等により,商品流
通におけるメーカーの影響力を高めること,原告,被告及びディアロー
ラ3社が自己資本比率を高め無借金経営を目指し,それぞれ独立して健
全な経営を維持することなどを目的とする包括的かつ継続的な本件業務
提携に基づき,原告を通して各商品を販売していたが,平成19年秋頃
にディアローラが金融機関からの借入れにより自社工場を建設すること
を決定したことを端緒として,本件業務提携に基づく事業展開に対する
考え方の相違が明確となり,平成20年3月17日以降,被告とディア
ローラとの間で,本件業務提携をどのように再編すべきかが問題となっ
た。
この本件業務提携の再編につき,A及びCが被告の立場から,Bがデ
ィアローラの立場から,実際に会談したり本件掲示板に投稿したりして,
協議,検討していたところ,原告代表者兼ディアローラ代表者であるB
は,平成20年5月26日以降,本件業務提携の再編に関してA,C及
びBが本件掲示板に投稿した内容を,原告代表者兼被告代表者であるA,
原告取締役兼被告取締役であるCの承諾を得ることなく原告の一部従業
員へ電子メールで送信した。本件掲示板は,原告の役員会を補助するた
めに開設された原告役員専用の電子掲示板であって,B,D,A及びC
のみがパスワードを入力することにより利用することができるものであ
り,利用者は掲載内容が上記4名以外の者に公開されることは全く想定
していなかった上に,原告の一部従業員へ公開された内容は,本件業務
提携の再編という原告企業グループの経営判断に関わる重要な問題に関
するもので,しかも結論が出ていない段階での協議中の具体的な意見や
提案のやり取りがそのまま公開されたため,原告社内に混乱を招き,従
業員の不安を掻き立てることとなったことからすると,Bの上記行為に
より,本件業務提携の再編問題の解決はより一層困難なものとなり,そ
の結果,本件業務提携における被告とディアローラとの間の信頼関係は
破壊されるに至ったものということができる。
さらに,上記(1)で認定したように,①原告代表者兼ディアローラ代表
者であるBが,平成20年5月31日,慰安旅行に参加したディアロー
ラ及び原告の従業員に対し,被告及びディアローラ間で協議中で結論の
出ていない本件業務提携の再編問題につき,原告営業部の社員はディア
ローラに戻すが管理部,物流部の社員は原告に残ることになるなどと説
明したこと,②同年4月25日,原告取締役兼ディアローラ取締役であ
るDが,被告が人員補充等の措置を講ずるか否かを確かめるため,辞任
する意思がないにもかかわらず原告の物流部長を辞任する旨の電子メー
ルを被告の取締役であるA及びCへ送信し,かつ,同内容の電子メール
を原告の従業員へ送付したことも,原告社内に混乱を招き,従業員の不
安を掻き立てることとなったのであるから,本件業務提携の再編問題の
解決をより困難なものとし,被告とディアローラとの間の信頼関係の破
壊に影響を与えたものといえる。
本件業務提携は包括的かつ継続的な性質を有するものであり当事者間
の信頼関係の破壊は本件業務提携に係る契約の正当な解除事由になると
解すべきである。そして,上記のとおり,遅くとも平成20年8月29
日までには,本件業務提携に係る被告とディアローラとの間の信頼関係
は破壊されていたと認めることができ,同日付け通知書(乙3)による
本件業務提携に係る本件覚書(甲3)の解除には,正当な解除事由があ
るから,これにより本件覚書に基づく原告,被告及びディアローラ間の
本件業務提携は終了したものと認めることができる。
以上に説示したところによれば,本件覚書に基づく本件業務提携は,
平成20年8月29日付け通知書による解除により終了し,以降,被告
は本件覚書第1条に基づく原告を通して被告商品を販売する契約上の義
務を負わないから,同年11月1日以降原告を通さずに被告商品を自ら
直接販売している被告の行為が,債務不履行を構成するということはで
きない。
したがって,本件覚書の債務不履行に基づく原告の請求(第2事件①
の請求)は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
3争点4(商標権侵害の成否)について
(1)商標法37条1号の「指定商品…についての登録商標に類似する商標
の使用」に該当するか否かの判断において,商標の類否は,同一又は類
似の商品に使用された商標が外観,観念,称呼等によって取引者,需要
者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,
かつ,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引
状況に基づいて判断すべきものであるが,商標の外観,観念又は称呼の
類似は,その商標を使用した商品につき出所を誤認混同するおそれを推
測させる一応の基準にすぎず,上記3点のうち類似する点があるとして
も,他の点において著しく相違するか,又は取引の実情等によって,出
所を混同するおそれが認められないものについては,これを「類似する
商標」と認めることはできない。
(2)本件商標は,片仮名の標準文字で「ナーナニーナ」と左から右へ横書
きにしてなるものであって,「ナーナニーナ」の称呼を生じ,特定の観
念を生じない造語と認められる(乙59,被告代表者)。
(3)被告標章は,別紙被告標章目録記載のとおり,小文字のアルファベットか
らなる「na」,「nan」及び「na」の3つの部分を左から右へ横書き
にしてなるものであり,第1の部分「na」と第2の部分「nan」との間
には,左方向に横転し右方向へ払うように湾曲した横長のハート形の図形(以
下「本件図形1」という。)が配されており,また,第2の部分「nan」
と第3の部分「na」との間には,左方向に横転し右方向に払うように湾曲
した本件図形1より更に横長のハート形の図形(以下「本件図形2」という。)
が上部に配され,本件図形2の左下に,本件図形2に接する縦棒状の図形(以
下「本件縦棒図形」という。)が,本件図形2の右下に,左斜め下方向を向
き右斜め上方向に払うように湾曲した本件図形1よりも小さなハートの図形
(以下「本件図形3」という。)がそれぞれ配されている。
そして,本件棒状図形は,その左右に配された「n」の縦のラインと同様
の書体,太さで表現されていることから,需要者において,アルファベット
の一部を表したものと理解されるものと認められる。また,本件図形2は本
件棒状図形の上部から右方向へ流れるように配されており,本件棒状図形が
アルファベットの一部を表したものと理解されることに鑑みると,需要者は,
本件図形2につき,アルファベットの一部をハート形の図形をもって表現し
たものと理解するものと認めるのが相当であり,需要者は,本件棒状図形と
本件図形2を併せて,小文字のアルファベットの「i」をデザイン化して表
したものと認識するものといえる。
したがって,被告標章は,「na」,本件図形1,「nani」,本件図
形3,「na」を左から右へ表したものということができる。そして,「n
a」「nani」「na」をローマ字読みすれば,「ナ」「ナニ」「ナ」,
すなわち「ナナニナ」の称呼を生じるが,ローマ字において長音記号「ー」
は用いられないこと,本件図形1及び本件図形3は,多少変形したものでは
あるがいずれもハート形の図形であることからすると,需要者は,装飾的な
ものとしてハート形の図形が用いられているものと認識し,原告が主張する
ように,これらの図形を需要者が長音記号「ー」として認識すると認めるこ
とはできず,被告標章から「ナーナニーナ」の称呼を生じると認めることは
できない。
そうすると,被告標章の称呼は「ナナニナ」であり,アルファベットと図
形を組み合わせて作成された造語であって特定の観念は生じないものといえ
る。
(4)原告は,被告標章は被告のみならず需要者からも広く「ナーナニーナ」と
称呼されてきたと主張するが,以下のように,被告又は需要者が被告標章を
「ナーナニーナ」と称呼することを認めるに足りる証拠はない。
ア被告商品のパッケージ,容器,リーフレットには被告標章が付されてい
るが(甲6,9,12の1~6),振り仮名等は記載されておらず,被告
標章がどのような称呼を生じるのかについての記載は全くない。
イ被告商品を紹介する雑誌記事において被告標章が小さく記載されている
が,その称呼については全く記載がない(甲13)。
ウ被告のホームページにおける被告商品を紹介するページには被告標章が
掲載されており,当該画面をプリントアウトした場合にはそのヘッダー部
分の一部に「ナーナニーナ」と記載されることが認められるが(甲5,3
1),被告標章が表示された画面上には被告標章がどのような称呼を生じ
るのかについての記載は全くない。また,ヘッダー部分の記載は当該ペー
ジの画面自体には表示されておらず当該ページをプリントアウトして初め
て需要者に認識されるものと認められる上,被告標章と「ナーナニーナ」
の記載の間には他の記載が存在しており両者を結びつけるような記載は認
められない。
エ甲32及び33によれば,被告の従業員が被告商品を「ナーナ商品」,
「ナーナニーナMEZAIKミルキーダブラー」などと呼んでいたことが
認められるが,上記2,(1)イで認定したように,本件業務提携においては,
被告とディアローラの各商品のブランドを統一し,ドラッグストア等のピ
ンクゾーンにおける標準ブランドとして「ナーナニーナ」を採用し,これ
を前提に原告が本件商標につき商標登録の出願手続を行い,実際に被告は
「ナーナニーナ」ブランドとして被告商品を製造販売していたのであるか
ら,被告の従業員は,本件業務提携における標準ブランドとしての「ナー
ナニーナ」を指して上記のように呼んでいたものと認めるのが相当であり,
他方,被告の従業員が被告標章を指して「ナーナニーナ」と呼んでいたこ
とを認めるに足りる的確な証拠はない。
オ被告商品のリーフレット(甲34の1)には,被告商品4につき「ナー
ナニーナブランドとして,装いも新たにシリーズラインアップです。」と
記載されているが,これは,被告商品4を上記エで述べた本件業務提携に
おける標準ブランドである「ナーナニーナ」ブランドとして発売すること
を意味すると認めるのが相当であり,上記記載を理由に被告標章から「ナ
ーナニーナ」の称呼が生じるとは認められない。
カ被告が取引先に送付した文書(甲10)には「ナーナニーナ」の記載が
数箇所認められるが,いずれの記載も,上記エで述べた本件業務提携にお
ける標準ブランドとしての「ナーナニーナ」を意味するものと認めるのが
相当であり,同記載を理由に被告標章から「ナーナニーナ」の称呼が生じ
るとは認められない。
また,被告が取引先に送付した文書(甲46)に記載された「ナーナニ
ーナ」ついても,同様というべきである。
キインターネットの検索サイトにおいて「ナーナニーナ」で検索すると,
検索結果として被告商品に関する多数のサイトが表示されることが認めら
れるが(甲45の添付資料,乙47の1及び2),これらの結果は,上記
エで述べたように,被告が被告商品を本件業務提携における標準ブランド
である「ナーナニーナ」ブランドとして製造販売していたことによるもの
と推認され,被告標章の称呼が「ナーナニーナ」であることを示すものと
認めることはできない。
(5)以上によれば,本件商標と被告標章は,①外観においては全く異なり,②
どちらも特定の観念を生じないから観念において類似するということはでき
ず,③称呼においては,本件商標の称呼は「ナーナニーナ」であり,被告標
章の称呼は「ナナニナ」であり,前者が2つの長音を含む点において相違す
るものの,類似する印象を与えること自体は否定し難いものと認められる。
そうすると,本件商標と被告標章は,称呼において類似する印象を与える
こと自体は否定し難いものの,長音の有無において相違しており,外観にお
いては全く異なり,観念においても類似するということはできないから,上
記2(1)で認定した取引の実情を考慮しても,両者が全体として類似するとま
では認められない。
被告商品1,2は二重まぶた形成用ファイバーであり,被告商品3は二重
まぶた形成用ファイバーを接着するための下地材であり,被告商品4は二重
まぶた形成用接着剤であって,被告商品はいずれも二重まぶたを形成するた
めの化粧用具であるから,被告商品と,本件商標権の指定商品である「つけ
まつ毛」及び「つけまつ毛用接着剤」は,目元を装飾する化粧用具である点
で用途が同一であり,若い女性が使用するものである点で需要者の範囲も同
一であるから,被告商品は本件商標権の指定商品と類似する商品であると認
めることができる。
しかしながら,被告標章が本件商標と類似すると認めることはできないか
ら,被告が被告商品に被告標章を付して販売する行為が商標法37条1号に
該当するということはできず,本件商標権を侵害するということはできない。
したがって,本件商標権の侵害に基づく原告の請求(第2事件②の請
求)は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
4結論
よって,原告の請求は,本件返還合意による返還金支払請求権に基づく返還
金899万2270円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成21年7
月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を
求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないからいずれも棄却す
ることとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官
岡本岳
裁判官
坂本康博
裁判官
寺田利彦
(別紙)被告標章目録
(別紙)返品金額一覧表
(別紙)被告商品目録
1商品名メザイクストレッチファイバー120
商品番号MENN2201
2商品名メザイクストレッチファイバー60
商品番号MENN1202
3商品名メザイクフィッター
商品番号MENN0661
4商品名メザイクミルキーダブラー
商品番号MENN0853

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