弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主     文
被告人を懲役1年6月に処する。
この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。
被告人から金50万円を追徴する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理     由
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成7年4月1日から同年10月31日までの間,a省b課課長補佐
(調査調整班担当),同年11月1日から平成8年3月31日までの間,c課課長
補佐(調査調整班担当)として,いずれも,財団法人ふるさと情報センターが地域
産品等の情報提供等のためa省の補助事業として実施する中山間・都市交流拠点
(ふるさとプラザ)整備事業の指導監督及び助成に関する事務等を行う職務に従事
し,その後同年4月1日から平成10年3月31日までの間,同部d課課長補佐
(地域対策班担当)の職にあったものであるが,e農業組合代表理事組合長f及び
同農業協同組合が出資するg専務理事hから,財団法人ふるさと情報センターが設
置,運営する「ふるさとプラザ東京」に同農業協同組合が出店するについて有利か
つ便宜な取り計らいを受
けたことなどの謝礼の趣旨の下に供与されるものであることを知りながら,平成9
年2月19日,東京都千代田区霞が関a省北別館5階のa省d課事務室において,
現金50万円の供与を受け,もって自己の前記職務に関し,賄賂を収受したもので
ある。
(事実認定の補足説明)
1 弁護人は,被告人の職務権限は争わないが,f及びhから判示の現金50万円
の供与を受けたことはなく,eの出店について有利便宜な取り計らいをしたことも
ないから無罪である旨主張し,被告人も公判廷においてこれに沿う供述をする。
2・ そこで,まず被告人が現金供与を受けたことがあるか否かについて検討する
と,関係各証拠によれば,本件の前提として,被告人とeやf,hらとの関係につ
いて以下の事実が認められる。
  ・ eは,昭和40年4月,7つの農業協同組合を合併して発足し,平成5年
4月,fが代表理事組合長に就任した。同農協は,管内農家の経営を効率化し,地
域農業全体の長期的安定を図るため,生産から加工・販売までの過程の一体化を企
図してコンビナートを建設するとともに,昭和45年7月,同施設内に,50パー
セント以上を同農協が出資し,食品の製造,加工,販売を主目的とする株式会社i
を設立したほか,昭和50年8月には,約36パーセントの出資をして,コンビナ
ートの施設全体や各企業の施設の管理運営等を目的とするjを設立し,i等もその
組合員となった。そして,hは,設立当初の事務局長となり,平成8年5月に,専
務理事に就任している。
 ところで,iは,平成元年ころから約1年間かけて冷凍讃岐うどんを開発
し,f,h,iの専務取締役kらが出資して販売部門を担当する会社を設立し,販
売を開始したが,当初の見込みよりも売上げは伸びず,平成5年1月ころには新た
な販売先としてl株式会社を確保したものの,状況を打開できないでいた。
  ・ 一方,被告人は,m局d課課長補佐を務めていた平成5年ころ,コンビナ
ートの視察などを通じてf及びhと知り合い,以後fらのゴルフコンペに参加する
ようになった。
 その後被告人は,平成6年1月にn局d課に異動となったが,同年10月
開催のa省が後援するイベントについて出店者募集を担当した際,hに連絡してe
の参加を誘ったところ,冷凍讃岐うどんの販路拡大の好機と考えた同人らもこれに
応じることとなって,千葉,東京,大阪で開かれたイベントに出店した。そして,
その後,平成7年4月に被告人がa省d局農政部b課に異動した後も,同様のイベ
ント参加等を通じて,hらe関係者との接触・交際が続いていた。
 また,lは,平成8年から,eが参加する上記イベントにおいて,実演販
売を担当することになり,同社代表取締役であるoや販売を担当する業務企画担当
部長pも,会食や懇親ゴルフなどを通じて被告人と交流していた。
 ・ 次に,現金50万円の出金及びその後の経理処理については,以下の各事実
が客観的証拠により認められる。
  ・ 平成9年2月19日,lはpに対し,「eコンビナート立替金」との名目
で仮払金50万円を出金した。
  ・ lは,同日付けでiに対し販売促進協賛金名目に50万円を請求し,これ
を受けて,3月10日,iから販売促進費用に対する支払い等の名目で56万78
50円がlの銀行口座に振り込まれ,lは,うち50万円を上記仮払金に対する支
払いに充てる経理処理を行った。
   このような事実に照らせば,pに対し,iの営業等に関する支払い方として
現金50万円が託され,その履行がされたことが強く推認される。そして,pら
は,この50万円の使途先等について,当公判廷において次のように証言する。
 ・・ まず,pは,大要,①2月16日・f,h,k,o,pらで千葉でゴルフ
をしたが,その晩,銀座の三井アーバンホテルにおいて,oから,二,三日中に現
金50万円を被告人に届け,iに対し市場販売促進費の援助依頼の名目で請求する
よう指示された,②2月18日,被告人に「h専務の方からのお預かり物をいつ届
けたらよろしいでしょうか。」と聞いたところ,翌日午後3時過ぎなら構わない旨
返答を受けた,③翌19日,出金伝票を起案した後,経理担当から現金50万円を
受領した上で,これをlの社用封筒に入れて,JRで新橋駅に,そこからはタクシ
ーに乗ってa省に向かい,午後4時ころ同省d課事務室で被告人に対し交付した,
④翌20日,oに現金交付を報告するとともに,iに対する請求書を起案した旨供
述する。
    次に,oは,大要,①2月15日,原宿で香川県物産展を下見した際,h
から,被告人に対して50万円を渡したいが出先なので持ち合わせがない,ついて
は,lで立て替え,その費用についてはiに対して販売促進援助費の名目で請求し
てほしい旨頼まれた,②2月16日,ゴルフを終えて新橋で夕食をとり,三井アー
バンホテルに被告人を送って行った後,pに対し,被告人に50万円を届けること
及び経理処理の方法を指示した,③2月20日,pから現金交付の報告を受けたの
で,iへの請求書を送付するよう指示した旨供述する。
    また,hは,大要,①2月15日,香川県物産展視察の際,oに対して,
被告人に渡す50万円を立て替えてほしいと頼み,その了承を得た,②翌16日,
ゴルフ場で,oから50万円の件について再度話をした上で,経理処理の方法とし
ては販売促進費名目で請求書を書いて送ってもらうよう伝えた,③2月20日まで
の間に,kから,50万円が被告人に渡った旨の報告を受けた,④その後,lから
iに請求書が送付されたが,kから資金をすぐには用意できないので一時立て替え
てほしいと頼まれ,43万円を立て替えた旨供述する。
  ・ 以上の各供述の信用性について検討すると,いずれの供述も,hが,oに
対して,50万円を立て替えた上で被告人に交付するよう依頼し,これを受けたo
が,pに対し,50万円の交付を指示したこと,その後,この立替払について,l
からiに対し,50万円の支払いが請求されたことを具体的に供述するものであ
る。そして,いずれも被告人と親しい間柄にあった各証人が,一致してこの点につ
いてことさら虚偽の供述をしなければならない事情は,本件で取り調べた関係証拠
を検討しても,全く見出すことができない(ちなみに,弁護人からも,この点に関
する指摘はない。)。そうすると,本件現金は被告人に交付すべきものとしてpに
渡されたことを合理的に認定することができる。
    次に,指示どおりpが現金を渡したかどうかについても,同人の供述の信
用性に特段の疑いを差し挟む事情が全く窺われないことに加えて,lにおいて,社
外で勤務した場合に活動記録や小払いの精算結果を報告するために記入等がされる
活動費精算綴り(甲47)中には,p作成の営業活動旬報の2月19日の欄に「訪
問先a省」との記載が見出せるほか,新橋駅からa省までのタクシー料金に相当す
る金額が記載された同日付けのタクシー領収書も添付されているのであって,a省
に赴いたことについて同人の証言を裏付ける証拠が存在するということができる。
加えて,19日の後も被告人が頻繁にe関係者と接触する機会があったことが肯認
され,pも当然それを予想し得る立場にあったのであるから,指示された交付方が
履行されたかどうか
がいつでも容易に確認され得る状況下で,pがoに対してあえて虚偽の報告をした
とは考え難い。
  ・ これに対して,弁護人は,例えば,①o,pは,2月16日に三井アーバ
ンホテルで現金交付の指示がされたのは,pが被告人らを同ホテルに送った後であ
る旨供述するが,pは被告人がチェックインする前に同ホテルから出庫しており,
客観的証拠に反する,②2月19日に農水省を訪れたとする前記営業活動旬報の記
載は,被告人が韓国に赴いた2月21日の欄に「a省大川打合せ」の記載がされて
いることなどに照らしても信用できない,③pが記載した振替伝票の名目は「eコ
ンビナート立替金」と記載されており,pがoから指示されたとする名目とは異な
るから,pへの出金はoの前記指示によるものではないなどと主張し,各証言は信
用できないという。
弁護人の主張は,pらが一致して被告人に不利な虚偽事実を述べなければ
ならない事情があり得るかという点に全く触れないままに,関係証言を一方的に論
難している点で,そもそも説得力に著しく欠けるというほかないが,念のため上記
に摘示した各点について付言する。
まず,①の点について,関係証拠によれば,2月16日に被告人がチェッ
クインした時刻は午後9時10分であることは所論指摘のとおりと認められるが,
p車の駐車料金の領収書の記載は出庫時刻が午後8時40分であることを示してい
るものとは認められず,所論は前提において失当である。なお,公判廷において被
告人は,当夜pは途中で被告人らより先に帰った旨供述し,この日ゴルフに参加し
たq(当時a省勤務)も,これに沿う証言をするが,この日のゴルフ等についてl
は被告人らを接待する立場であったことに疑いの余地はなく,この点に照らして
も,被告人がチェックインする30分前にpが一人先に帰宅したという供述は信用
できない。
・の点については,pは,日々の営業活動について,自分の電子手帳に記
録したメモに基づき,後日まとめて前記営業活動旬報に記入していたものであり,
2月19日について虚偽の記載がされた可能性は窺われない。なお,2月21日の
分について所論のような記載があることは肯認されるが,pは,同日被告人が訪韓
していることを知らずにa省に赴き帰ってきたという記憶がある旨証言しており,
同日の行動に関する記載が19日の記載の信用性を動揺させるに足りるものとは解
されない。
・の点についても,なるほど,pが記載した名目はoの指示とは必ずしも
一致しないものの,e,j,iの一体的な関係や,hがjの専務理事であることに
加え,前記のとおり,結局は,iに対する販売促進費用関連名目の請求がされてい
ることにも鑑みれば,pらの供述の信用性を左右するような事情とは目されない。
 なお,このほか弁護人は,千葉におけるイベント等の費用として,これに
参加したn局の有志代表たる被告人にpから50万円が支払われたことがあるとこ
ろ,捜査官の誘導下にあったh,o,pは,その支払いをiからlに販売促進費と
して支払われた50万円と結び付けて述べたことから,本件公訴事実が組み立てら
れたなどとも主張する。
 しかし,公判においてもpは,所論のイベント費用はlの負担において被
告人に支払ったものであり,その際には,財団法人農林漁業体験協会名義の領収証
を被告人から受領しており,立替えとして交付した本件50万円はそれらとは別個
の金である旨を断言しているのであって,両者の事柄の間で同人の記憶の混同等が
生じている可能性は皆無である。
 ・ さらに,被告人は,公判廷において,2月19日にpから現金50万円を受
け取ったことはもとより,会ったことすらない,同日は午後2時から総務庁(現在
の総務省)との会議が予定されており,打合せは午後5時ころまで続くと予想され
ていたのであるから,その前日の段階で,pに対して午後3時過ぎであれば構わな
いなどと返答することはあり得ない旨供述する。
しかし,同じ打合せに出席した総務庁参事官補(当時)の手帳においては,
午後2時にa省との打合せの予定が記載されているほか,午後4時にも別件の予定
が入れられており,被告人らとの打合せが午後5時ころまで続くと予想していなか
ったことは明白であって,上記打合せの存在がp証言を動揺させる意義を有すると
は到底いえない。
 ・ 後述するとおり,関係証拠によれば,hらが被告人に対して賄賂を供与した
ことについては相応の事情の存在が肯定できるが,以上の検討結果によれば,その
点を待つまでもなく,被告人が,2月19日にpから現金50万円を受け取ったこ
とは優にこれを肯認することができる。
3 次に,被告人に現金が交付されるに至った理由について検討することにする。
 ・ 関係各証拠によれば,次の事実が動かし難いものとして認められる。
  ・ まず,被告人は,平成7年4月1日,a省b課課長補佐(調査調整班担
当)に転任となった。所掌事務について定めた内規によれば,中山間・都市交流拠
点整備事業の指導助成に関する事務は,事業指導班の所掌であり,本来,被告人の
担当する調査調整班の事務ではなかったが,調査調整班及び事業指導班の所掌事務
を統括整理する中山間地域活性化推進室室長の指示により,被告人が同事業の指導
助成を担当することになった。その後,平成7年11月1日,d局内部の組織変更
に伴い,被告人はc課課長補佐(調査調整班担当)に配置換えとなったが,この時
期に規程が新たに設けられ,調査調整班の内部組織として新設されたふるさと情報
係が中山間・都市交流拠点整備事業の指導助成に関する事務を所管することにな
り,それ以降,被告人が
同事業の指導助成を担当することが分掌上も明確になった。
・ 被告人がその指導助成を担当した中山間・都市交流拠点整備事業とは,ウ
ルグァイ・ラウンド農業合意の実施に対応した中山間地域の活性化を支援するため
の措置として,地域産品等の情報の発信及び中山間地域と都市との交流の拠点(ふ
るさとプラザ)を主要大都市に整備するものをいい,同事業は,a省の外郭団体で
ある財団法人ふるさと情報センター(以下「ふるさと情報センター」という。)が
実施主体となり,具体的には,ふるさとプラザの設置,その管理・運営等を行って
いた。
・ 平成7年11月18日,東京都渋谷区神宮前ラフォーレ原宿Ⅱにふるさと
プラザ東京がオープンしたが,被告人は,hに対し,平成8年4月から同所にテナ
ントとして出店することを誘い,同人は,同年1月下旬ころ,ふるさと情報センタ
ーに出店の希望を伝えた。
被告人は,hの出店申込みに先立ち,同月24日ころ,出店場所の調整を
行っていたふるさと情報センターのrに対し「JA四国大川が,4月から3か月出
店を希望しているので,黒木町が使っていたブース(15番ブースの意味)に入れ
てくれ。」などと述べ,rはこの意見に従ってブース配置案を作成した。
a省が作成した出店者案は,2月8日に,決定権を有する中央運営委員会
の承諾を得たことから,eの出店が決定したが,その翌日出店者の一つが参加を取
り止めたところ,被告人は,hに対しもう1ブース使用しないかを問い合わせ,同
人がこれを了承したため,部下を介してrに対しeに2ブースの使用を認める内容
の内定通知書の作成を指示し,その後eにその旨通知された。
また,3月14日,被告人は,ふるさとプラザ東京で行われるテナント出
店以外の個別事業活動の企画立案等を受注した株式会社sのtに対し,「eが「讃
岐うどん祭り」をやる時は,人出の多い土曜と日曜にできるようにしてくれない
か。」などと伝え,その意向に沿った企画が立てられることとなった。
このようにして,平成8年4月から6月までの間,eは,ふるさとプラザ
東京に出店を果たしたほか,6月下旬の土曜及び日曜には「讃岐うどん祭り」を実
施した。そして,平成9年2月13日に,500万円の補助金交付決定が通知され
た(なお,eは出店経費として552万2601円を請求している。)。
 ・ 前記のとおり,被告人が強く否認している現金50万円の交付が証拠上肯認
できるところ,上記のような経緯を併せて考えれば,2月19日に交付されたこの
現金がふるさとプラザ東京に関する被告人の職務に関連したものであることが強く
疑われる状況にあるといえる。そして,h,o及びpの3名は,次のとおり,50
万円が賄賂として供与されたことを肯定している。
  ・ まず,hは,大要,①平成7年5月ころ,被告人からふるさとプラザ東京
への出店を誘われ,7月20日過ぎ,被告人らと赤坂で会食した際,ふるさとプラ
ザの事業内容や,経費の補助金交付を受けるための方法等について,資料を示され
て説明を受け,さらに,平成8年1月20日,ふるさとプラザ東京を視察した際に
は,fが,被告人に対し,入場者の流れからみて目に付きやすい場所である15番
ブースを使いたい旨伝えたところ,同ブースがeに割り当てられることとなり,そ
の後,ブースの数を2つに増やすことも提案してもらった,その他,個別事業の日
程についても被告人に任せていたところ人出の多い土日に開くことの段取りをつけ
てくれたり,申請書類の書式が入っているフロッピーを渡してもらうなど,さまざ
まな便宜を受けた,
②平成9年2月13日に,ふるさとプラザ東京への出店費について補助金の交付決
定の通知を受け,出店へのお礼等の趣旨で,現金50万円を交付することと決め
た,③現金交付の話は,2月15日にk,fと上京した際に,空港からホテルに向
かうタクシーの中で3人で相談し,21日には被告人の韓国旅行が予定されていた
ので,何かと経費もかかると思い,同日以前に現金を渡した方がよいということで
話がまとまったが,手持ちの現金がなかったため,oに立替払を頼むことにした旨
供述する。
    また,oは,立替払を頼まれた際,hから「ふるさとプラザの件で上甲さ
んにお世話になったので,農協も含めてお礼をしたい。」と言われたと供述し,p
も,oから「h専務理事からeとして上甲さんにお礼がしたい。」と言われたと供
述する。
  ・ hら3名の供述は,前記のとおりの客観的な事実関係と整合する上,hが
lに立替払を依頼するに至った理由や前記のとおりの経理処理がされた理由につい
てもこれを合理的に説明する内容となっている。そして,上記供述内容は,捜査及
び当公判廷を通じて一貫したものであることが窺われることに加え,各証人につい
て虚偽を述べる理由が見出せないことは前述したとおりであり,ことに,oにおい
ては,被告人に50万円の賄賂を渡したことの責任をとるためにlを退職した旨述
べているのであって,同人らの供述の信用性は高いというべきである。
  ・ この点,弁護人は,①fは,2月15日にタクシーの中でh,kと被告人
に現金を交付する話をしたことを否定する証言をしている,②賄賂を交付するとい
うことの重大性に照らせば,その話をタクシー内やふるさとプラザ東京で交わした
というのは不自然であり,賄賂金の交付についてoに立替払を頼んだという点,交
付日時等についてoにほとんど任せ特段の配慮を行っておらず,被告人にも意向確
認をしていない点等も不自然である,③公訴事実では贈賄者はeのfやjのhとさ
れているが,本件50万円は,eやjではなく,iが負担している,④平成8年1
月20日,ふるさとプラザ東京でe用のブースについて選定がされたという点につ
いては,q証人はこれを否定しており,その他,出店や個別事業に関して,被告人
がeに特に便宜供与
をしたこともないなどと主張し,hらの証言は信用できないという。
そこで,検討するに,①の点について,fは,「話を持ちかけられたかも
分かりませんけれども,今,私の記憶にはございません。」と証言するのにとどま
っているのであるから,弁護人の立論は証言内容を正解しないでされているという
ほかない上,fは,事件の核心部分に関する尋問に対して,「思い出せない。」
「覚えていない。」などという発言を繰り返しており,本件現金の賄賂性を否定す
る供述の信用性は乏しい。②の点については,hらが被告人と親密な交際をしてい
たことやhらとlとの関係を前提とすると,特段その行動に不自然な点は見出せ
ず,③の点についても,hは,eに関連する接待費の出金をどこが負担するかは,
h,f及びkの間の話し合いで決められていた,今回の50万円についてはiが負
担する旨kの了承を得てい
たなどと述べ,e及びjがiの負担の下で本件現金を交付した経緯について説明し
ているところ,前述したi,e,jの間の資本関係等に照らせば,その信用性につ
いて疑いを入れる余地はない。さらに,④の点については,そもそもqは,1月2
0日にブースの選定がされなかったとは明言しておらず,この点をめぐる弁護人の
主張は前提において失当である(ちなみに,現金の賄賂性を否定しているf証言に
おいても,当日被告人らとふるさとプラザ東京への視察がされたことは肯定されて
いる。)。なお,個別事業について,eが他の希望者に優先して曜日の割り当てを
受けたとの証拠はないが,ブースの選定について有利な扱いを受けたことは明らか
であるほか,被告人は,他の地域の者については,出店や個別事業について,特段
の情報提供,勧誘等
を個人的に行ってはいないのであって,eに関する被告人の行動を全体としてみた
場合,同農協に対して有利・便宜な扱いがされたことは明らかであり,そうした便
宜等について被告人に感謝の念を抱いたことを,hらはもとより,・fにおいても
認める証言をしているのである。
したがって,弁護人の所論は,いずれも理由がない。
・ よって,本件の現金50万円は,eがふるさとプラザ東京に出店するに際
し,被告人が有利かつ便宜な取り計らいを行い,これに対する謝礼の趣旨として交
付されたことが認められる。
4 以上の次第で,被告人については収賄罪の成立を肯認できる(なお,上記のと
おり,本件は,被告人の捜査段階の供述を検討するまでもなく,公訴事実を認定で
きる事案であると解されるが,逮捕直後に弁護人を選任しその助言を受けている状
況等に照らせば,本件について自白をした被告人の検察官,警察官調書について
も,その信用性を優に肯定することができる。)。
(量刑の理由)
 本件は,a省課長補佐の地位にあった被告人が,同省の指導監督下にある財団法
人が運営するアンテナショップへの出店に関して有利かつ便宜な取り計らいを受け
たことに対する謝礼として,農業協同組合代表理事らから現金50万円の賄賂を収
受したという事案である。
 このアンテナショップは,中山間地域の活性化を支援するため,国の助成を得て
実施されることとなった事業であり,監督官庁であるa省は,交付される補助金の
運用も含め,全国的な見地に立って事業の適正かつ円滑な推進に指導・監督の責任
を負っているところ,被告人は,所管課の課長補佐の地位にありながら,その地位
を利用して,特定の地域の農業協同組合からの出店等について便宜を供与した上,
その対価として現金を受領したものであって,その額も50万円と決して少額とは
いえず,職務の公正に対する国民の信頼を少なからず損なうものといわなければな
らない。
 さらに,被告人は,本件の前後を通じ,贈賄側の関係者と極めて親密な交際を続
けており,国家公務員として保持すべき倫理意識を著しく鈍麻させていたというほ
かない。事実,本件現金供与に際して被告人が受領を躊躇した形跡は全く窺われな
いのであって,このような点をも踏まえるとき,被告人の本件行為は厳しい非難を
免れない。
 加えて,被告人は,公判廷において本件犯行を全面的に否認し,不自然かつ不合
理な弁解に終始しているのであって,真摯な反省の態度を窺うことができない。
 以上によれば,被告人の刑事責任を軽視することは許されない。
 しかしながら,他方,被告人は,本件の発覚がきっかけとなって失職するに至っ
ていること,前科前歴がないことなど被告人のために酌むべき事情も認められる。
 そこで,以上の諸事情を総合考慮し,被告人に対しては主文の刑に処した上,そ
の刑の執行を猶予するのを相当と判断した。
(求刑 懲役1年6月,追徴)
平成14年3月14日
東京地方裁判所刑事第16部
裁判長裁判官 大谷直人
裁判官 早川幸男
裁判官 吉田智宏

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