弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役14年に処する。
未決勾留日数中180日をその刑に算入する。
押収してあるサバイバルナイフ1本(平成15年押第138号の1)を没
収する。
理由
(犯罪事実)
被告人は,
第1 平成15年7月15日午前2時50分ころ,兵庫県明石市a町bc番地のd
所在のレンタルビデオ店「Ae店」において,顔見知りのB(当時24歳)から,
「何笑っとんねん。」「どんな口きいとんねん。」などと言われて詰め寄られたこ
となどから恐怖にかられ,とっさに殺意をもって,所携のサバイバルナイフ(刃体
の長さ約20センチメートル,平成15年押第138号の1)で同人の右前胸部を
1回突き刺し,よって,そのころ,同所において,同人を心臓及び肝臓刺創により
失血死させて殺害し,
第2 上記日時場所において,上記Bと一緒にいたC(当時24歳)に対し,とっ
さに殺意をもって,上記サバイバルナイフで,同人の右腹部を1回突き刺したが,
同人に加療約10日間を要する右腹部刺創等の傷害を負わせたにとどまり,殺害す
るに至らず,
第3 業務その他正当な理由による場合でないのに,上記日時場所において,上記
サバイバルナイフ1本を携帯した。
(証拠)
省略
(事実認定の補足説明)
第1 本件の争点
弁護人は,判示第1及び第2の事実について,①被告人には,B及びCに対
する殺意は認められないから,殺人罪及び殺人未遂罪は成立せず,また,②被告人
の行為は,いずれもそれぞれ,BやCによる急迫不正の侵害行為に対し自己の身体
を守るために行ったものであり,正当防衛が成立する,③仮に急迫不正の侵害行為
がなかったとしても,誤想防衛が成立し,故意が阻却される旨主張し,被告人もお
おむねこれに沿う供述をする。  
また,弁護人は,事件後被告人が警察署に出頭した行為は,自首に該当する
旨主張する。
そこで,以下,当裁判所の判断を補足して説明する。
第2 犯行に至る経緯及び犯行状況
関係証拠によると以下のような事実が認められる。
1 犯行に至る経緯
(1) 被告人は,平成15年7月15日午前2時30分ころ,知人のD,E及び
F(以下それぞれ「D」「E」「F」という。)とともに,ビデオを借りるため,
被告人の運転する普通乗用自動車で,兵庫県明石市a町所在のレンタルビデオ店
「Ae店」に赴き,店内でビデオを探すなどしていたところ,B,C及びGが,被
告人らより数分遅れて,上記レンタルビデオ店に来店した。
(2) B,C及びGは,店内に被告人とDがいるのを認め,互いに顔見知りであ
ったことから,Bらは,Dと店内正面入り口付近であいさつを交わしたり雑談をす
るなどしていたが,Bは,被告人に対しても,「久しぶりやのう。」などと声をか
け,被告人は,愛想笑いを浮かべて頭を下げた。
(3) 被告人は,Bらと関わり合いになりたくなかったことから,いったん店外
に出ていたが,まだ店内にいるDらを置いて帰ることはできないと思い,店内に戻
ることにし,その際,被告人は,もしBらとの間で何かあったら困ると思い,念の
ため,路上に停めておいた自車に戻り,運転席と助手席の間付近にさやを付けた状
態で置いていたサバイバルナイフ1本(平成15年押第138号の1)を取り出
し,刃の部分を下にして自己のズボンの右側ポケットに入れ,ズボンの上部からは
み出した持ち手の部分には上着をかぶせて隠した。
(4) 店内に戻った被告人は,D,E及びFと合流し,レジカウンター前付近に
いたところ,B,C及びGが近づいてきて,被告人やDらと向かいあった。
(5) この時,Bは,レジカウンターの入り口側前付近に立ち,Bの左側にC,
右手やや後方にGがいた。他方,被告人らの位置は,レジカウンターの店内奥側の
前付近であり,被告人は,Dの右手後方にやや隠れるようにして立っていた。
(6) Bは,Dに対し,「被告人は,D君の若い衆なんか。」などとと聞いたと
ころ,Dは「そうや。」と答えたことから,Bは,被告人に「おうい。」と呼びか
け,Dの後ろからややBの方に歩み出た被告人に対し,「おまえ,若い衆なん
か。」と尋ねたが,「若い衆」という言葉の意味を分かりかねた被告人は,「若い
衆っていったって。」「若い衆って若い衆なんかな。」などとあいまいな答えを返
し,愛想笑いをした。それに対し,Bは,「何笑っとんねん。」と言い,被告人
は,「笑ってない。」などと言ったが,かえってBらから「どんな口きいとんね
ん。」と言われた。
(7) 被告人は,隣にいたDに「D君。」と呼びかけ,取りなしを求めたが,D
は黙ったままであった。
2 被害者Bに対する犯行状況(判示第1について)
(1) Bは,ゆっくり被告人の方に近づき,それに応じるように被告人は,Bの
方を向いたまま,後ろに下がった。
(2) 被告人は,Bが1,2歩近づいたところで,ズボンの右ポケットに隠して
いたサバイバルナイフの持ち手を利き手である左手でつかんで取り出し,右手でさ
やを抜いた。
(3) 被告人がサバイバルナイフを取り出したことに気づいたBは,速度を上げ
て,後ろに下がる被告人を追いかけ,被告人は,そのまま後ろに下がり,後方にあ
った販売用のテープ等が置かれた棚に背中をぶつけ,近づいてきたBと一瞬もみ合
いになったが,すぐに両者は少しの距離を置いて離れた。
(4) その瞬間,被告人は,曲げた左腕をやや後ろに引き,そのまま左手に持っ
ていたサバイバルナイフを前に突きだし,すぐにこれを引き抜いたが,サバイバル
ナイフは,被告人と向き合っていたBの前胸部に刺さり,Bは,体をくの字にし
て,床にしゃがみ込み,そのままの姿勢で横倒しに倒れた。
3 被害者Cに対する犯行状況(判示第2について)
(1) Bが床にしゃがみ込んだ際,被告人やBを追いかけてその側まで移動して
いたDは,近くにいたCが片手を上げ,Dを殴るような気配を示そうとしたことか
ら,先にCを殴りつけた。
(2) Cは,前のめりになり,すぐに体勢を整えたものの,またDから数回殴ら
れ,Dと向き合ったままの状態で,徐々に入り口付近まで後退した。
(3) 被告人は,DとCを追って,入り口付近に駆け寄り,Cと向き合っている
Dの左後方(Cの右前方)から,左手に持ったサバイバルナイフを,Cめがけて振
り回した。
(4) Cは,防御しようと,右腕を出したが,右腕に2か所の切創と右側腹部に
1か所の刺創を負わされた。
第3 判示第1の事実について
1 殺意の有無
(1) まず,Bに対する殺意の有無について検討する。関係証拠によれば,本件
犯行に使用された凶器は,刃体の長さ約20センチメートルのサバイバルナイフと
称される鋭利な刃物であって,高い殺傷能力を有していること,被告人は,平成1
5年6月ころにサバイバルナイフを購入して以降,外出時にズボンのポケットに入
れたり,車に載せておいたりなどしてサバイバルナイフを持ち歩いており,また,
ビニール袋で試し切りするなどしていたことから,サバイバルナイフの上記形状,
能力を十分に認識していたこと,被告人は,犯行当時,サバイバルナイフを利き手
である左手で持ち,その際持ち手についた穴等にも指を入れるなどして,しっかり
と握り,Bと相対し,被告人の方に向かって来たBに対し,腕をやや後ろに引いた
上,サバイバルナイフを前に突きだしたこと,このようなBと被告人の位置関係で
サバイバルナイフを上記のように動かせば,サバイバルナイフがBの前胸部又は前
腹部等の身体の枢要部に刺さる蓋然性が極めて高いこと,現にBは被告人の刺突行
為によって,刺創管の深さ約13ないし15センチメートルに及ぶ肋軟骨切断,肝
臓及び心臓刺創を伴う右前胸部刺創の傷害を負っていることなどが認められ,この
ような凶器の形状,性能,これらに対する被告人の認識,凶器の用法,Bの創傷の
部位,程度等にかんがみれば,被告人が,サバイバルナイフを突き出す時点で,B
に対する殺意を有していたことは,優に認められる。
(2) これに対し,弁護人は,被告人が,本件以前に,Bに対して殺意又はそれ
に近い感情を抱くような事情が一切存在せず,また,Bの傷の深さが,サバイバル
ナイフの刃体の長さより短いことからすると被告人が強い力でサバイバルナイフを
突きだしたとは認められないなどとして,被告人には,殺意がないと主張し,被告
人も,向かってくるBを脅すつもりでサバイバルナイフを取り出したが,Bがさら
に掛かってきたため,わき腹を刺してひるませようと思ったので,深く刺すつもり
はなかったのであり,Bを殺すつもりはなかったなどと供述している。
しかしながら,本件では,(1)で検討した諸点から,被告人にBに対する殺
意,すなわち,Bを死亡させることについての認識・認容があったことが優に認め
られのであり,上記第2で詳述したことからすると,被告人は犯行現場で恐怖にか
られとっさにBに対し殺意をもったものと認められるから,被告人が,本件以前
に,Bに対して殺意を抱くような事情がなかったことは,上記の殺意の認定を左右
するものとはいえないし,Bの傷の深さが,サバイバルナイフの刃体の長さより短
いことも,それでもその傷の深さ自体が約13ないし15センチメートルと相当深
いものであって,被告人が刺突行為の際,Bの生命に対し格別の配慮をした形跡も
みられないことからすると,上記の殺意の認定を左右するものではない。
 2 正当防衛の成否(「急迫不正の侵害」の有無)
(1) 弁護人は,被告人は,サバイバルナイフを取り出した時点で,粗暴性等で
地域で名を馳せ格闘技を習得していたBから,突然因縁をつけられており,被告人
には,Bからつかみかかられ暴行等の危害を加えられる現実的危険性が生じてい
た,また,被告人は,サバイバルナイフを取り出して以降についても,Bから激し
く迫られ,さらに,被告人がその勢いに押されて背中を後ろの棚にぶつけてからも
なお,Bにつかみかかられようとしていたのであって,被告人には身体に対する現
実的危険性が生じていたなどとして,被告人に「急迫不正の侵害」があった旨主張
する。
(2) しかしながら,上記第2の認定によれば,被告人が,サバイバルナイフを
取り出した時点では,Bは,被告人に対し,「何笑っとんねん。」などと言って,
ゆっくり1,2歩近づいたにすぎないのであって,それ以上に,Bにおいて,被告
人に対し,具体的に暴行を加えたり,手を振り上げるといったような危害を加える
ことを示す言動をしていないのであるから,たとえ被告人がBに対し,恐怖感を抱
いたとしても,この時点において,被告人に「急迫不正の侵害」があったものとは
認められない。
そして,さらに,その後,Bが,サバイバルナイフを取り出した被告人に
対し,急速に詰め寄り素手でつかみかかろうとしていることは認められるものの,
本件サバイバルナイフが刃体の長さだけでも約20センチメートル,全長約38セ
ンチメートルもあるかなり大きなものであること,被告人は向かい合ったBの目の
前でサバイバルナイフをズボンのポケットから取り出し,自身の体の前方で両手で
さやを抜く動作をしていることなどからすると,Bは,先にサバイバルナイフを出
した被告人に対し,素手で対抗しようとしたものと認められるのであって,この時
点では,むしろ被告人がサバイバルナイフを先に出した行為こそがBに対する急迫
不正の侵害といえるから,Bが被告人に対し攻撃したことをもって,被告人に「急
迫不正の侵害」があったものとは認められない。
(3) そうすると,被告人が,サバイバルナイフを出した時点はもとより,それ
以後被告人がBをサバイバルナイフで刺突した時点においても,被告人に「急迫不
正の侵害」はなかったと認められるから,本件では正当防衛は成立しない。
3 誤想防衛の成否
弁護人は,被告人は,事前に知っていたBの情報から,Bの凶器による攻撃
をも予想しており,またそのような被告人の認識には,合理性があることから,現
実に急迫不正の侵害行為がなかったとしても,誤想防衛が成立すると主張する。
しかしながら,上記認定のとおり,Bは,被告人がサバイバルナイフを出す
までの時点で,ただ1,2歩近づいてきただけであり,また,右手にはビデオ様の
ものを持ったままであったこと,Bは,サバイバルナイフに気づいた後も,素手で
被告人につかみ掛かっていること,被告人自身も,Bがナイフを持っていると思っ
たのは,事前に聞いていたBについてのうわさなどの影響であり,当日Bがナイフ
を持っているのではないかと思わせるような事情は特になかったと供述しているこ
となどの事情に照らすと,上記Bの凶器による攻撃というのは,被告人が具体的な
事実を誤って認識したというものではなく,被告人の内心においてそのような危惧
があったというものに過ぎないから,これをもって誤想防衛ということはできな
い。
第4 判示第2の事実について
1 殺意の有無 
(1) 次に,被告人のCに対する殺意の有無を検討する。関係証拠によれば,被
告人は,上記のとおり,サバイバルナイフの形状及び性能を認識した上,Dから殴
りかかられているCを追いかけていき,Cの右斜め前方に立ち,利き手である左手
に持ったサバイバルナイフをCの体にめがけて振り回していること,このようなC
と被告人の位置関係でサバイバルナイフを上記のように動かせば,サバイバルナイ
フがCの右脇腹や右背部等身体の枢要部に刺さる蓋然性が極めて高いこと,現にC
は被告人の振り回したサバイバルナイフによって,深さ約15センチメートル程度
に達する右腹部刺創の傷害を負っており,このような腹部の刺創は,少し場所がず
れていれば死亡の危険性が高かったことなどが認められ,これらの事情からする
と,被告人が犯行当時,Cに対する殺意を有していたことは,優に認められる。
(2) これに対し,弁護人は,被告人には,本件以前に,Cに対して殺意又はそ
れに近い感情を抱くような事情が一切存在しないことや,被告人がCを殺そうと思
っていれば,被告人は,Cの胸部や頸部を狙うはずであること,Cに向けサバイバ
ルナイフを振り回したのは1回だけであることなどから,被告人には殺意がない旨
主張し,被告人も,Cを追い払おうとサバイバルナイフを振り回したのであり,殺
すつもりはなかったと供述している。
しかしながら,本件では,(1)で検討した諸点から,被告人にCに対する殺
意,すなわち,Cを死亡させることの認識・認容があったと優に認められるのであ
って,上記第2で詳述したことからすると,被告人は犯行現場において,Bの仲間
であったCに対し,とっさに殺意をもったとしても不自然ではなく,被告人が,本
件以前に,Cに対して殺意を抱くような事情がなかったことは,上記の殺意の認定
を左右するものとはいえないし,被告人の本件の刺突行為によって,Cの右脇腹や
右背部等の身体の枢要部に相当深い傷を負わせる蓋然性は極めて高かったことから
すると,被告人が複数回Cを刺そうとしていないことや,Cの胸部や頸部を狙って
いないことも,上記の殺意の認定を左右するものではない。
2 正当防衛の成否(「急迫不正の侵害」の有無)
上記第2の認定によれば,Cは,Dに一方的に殴られ逃げている途中で,被
告人からサバイバルナイフで刺されているのであるから,「急迫不正の侵害」があ
ったとは到底認められず,正当防衛が成立する余地はない。
3 誤想防衛の成否
弁護人は,Cに対する関係でも,被告人が,Cによる被告人への攻撃が差し
迫ったものであると考えてもやむを得ないとし,現実に急迫不正の侵害がなかった
としても,誤想防衛が成立すると主張する。
しかしながら,上記認定のとおり,CはDから一方的に殴られ逃げていたの
であり,また,被告人自身も,公判廷で,「C君も,絶対僕の邪魔しとうと思っ
た。」「逃げへんかったら,別に当たってもええみたいな感じでおったんです。」
などと述べているにとどまり,何ら具体的侵害について供述していないのであるか
ら,これも,被告人が,具体的な事実を誤って認識したというものではなく,被告
人の内心においてそのような危惧があったというものにすぎないから,これをもっ
て誤想防衛ということはできない。
第5 自首の成否
なお,弁護人は,事件後,被告人がH署に出頭した行為は,自首に該当する
旨主張する。
しかしながら,関係証拠によれば,Gは,Bが被告人に刺され,DがCを殴
っている状況を見て,そのまま店外に出て,直ちに携帯電話でH署に電話をかけ,
目撃状況を説明したというのであり,Gは被告人と以前から面識があったことから
すれば,この時点で,当然,被告人が犯人であることが捜査機関に発覚していたも
のと考えられる。
他方,関係証拠に照らすと,被告人は,本件犯行後,D,E及びFの3名を
自己の車両に乗車させ,いったん,自宅前まで戻り,上記3名を降車させ,それか
ら,H署に赴いたことからすると,被告人がH署に出頭した時点では,Gの通報に
よって,捜査機関に被告人が犯人であることが既に発覚していたと推認される。
したがって,被告人のH署への出頭は,捜査機関に発覚する前になされたも
のとは認められず,自首は成立しない。
(法令の適用)
被告人の判示第1の行為は刑法199条に,判示第2の行為は同法203条,1
99条に,判示第3の行為は銃砲刀剣類所持等取締法32条4号,22条にそれぞ
れ該当するところ,判示第1及び第2の罪について,所定刑中いずれも有期懲役刑
を,判示第3の罪について,所定刑中懲役刑をそれぞれ選択し,以上は,刑法45
条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により,刑及び犯情の最も重
い判示第1の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告
人を懲役14年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中180日をその刑に
算入し,押収してあるサバイバルナイフ1本(平成15年押第138号の1)は,
判示第1の殺人の用に供した物で被告人以外の者に属しないから,同法19条1項
2号,2項本文を適用してこれを没収し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項た
だし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
本件は,被告人が,深夜のレンタルビデオ店において,顔見知りであった被害者
Bを所持していたサバイバルナイフで刺して死亡させ(判示第1),引き続き,側
にいたBの連れである被害者Cを上記サバイバルナイフで刺し,判示の傷害を負わ
せたが,殺害するには至らず(判示第2),また,その際上記サバイバルナイフを
所持していた(判示第3)という,殺人,殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反
の各事実からなる事案である。
被告人は,刃体の長さ約20センチメートルの殺傷能力の高いサバイバルナイフ
を,突然ズボンのポケットから取り出し,BやCの身体の枢要部に刺しており,犯
行態様は極めて危険かつ悪質である。被告人は,上記サバイバルナイフを護身用と
して購入し,携帯していたというが,上記サバイバルナイフの形状からは,使用方
法によっては,容易に他人の身体に重大な傷害を与えてしまうことは明らかであっ
て,このような危険性の高いナイフを日ごろから漫然と携帯していたこと自体が非
常に危険な行為である。加えて,被告人は,倒れ込んで動かなくなったBの頭部・
顔面を数回にわたり蹴りつけており,その行為は非情というほかない。
また,本件各犯行により,1人が死亡し,1人が重傷を負っており,生じた結果
は誠に重大である。特に,Bは,本件当時24歳とまだ若く,一瞬にしてその命を
奪われた無念さは,想像に難くなく,遺族の悲しみも大変深い。また,Cも,腹部
に深さ約15センチメートル程度の傷害を負うなど,一歩間違えれば,命を落とし
かねなかったのであり,同人の味わった苦痛・恐怖感は相当なものであったと思わ
れる。
それにもかかわらず,Bの遺族やCには,何ら慰藉の措置はとられていないばか
りか,被告人は,犯行の外形的事実はおおむね認めるに至ったものの,いまだ自己
の行為と真しに向き合おうとする姿勢に欠けており,その責任の重さから目を背け
ようとする態度さえ見られる。
これらの事情に照らすと,被告人の刑事責任は重大である。
他方,本件は,被害者であるBらが,わざわざ被告人らに近づき,「おまえ,若
い衆なんか。」など,因縁を付けるかのように被告人を突然問いただし,被告人に
詰め寄る姿勢を示したことに端を発しているのであり,被害者側の言動が本件犯行
を誘発する一因になった面があることは否定できない上,被告人は,Bらにやられ
るかもしれないという恐怖感から,とっさに判示第1及び第2の行為に及んでお
り,全くの偶発的な犯行であること,BやCを殺してやろうという積極的意欲まで
はなかったこと,また,被告人は犯行後自ら警察署に出頭していること,被告人は
若年で,前科がないこと,家庭に恵まれず不遇な少年時代を過ごしてきたことな
ど,被告人のために酌むべき情状も認められる。
そこで,以上の諸事情を総合考慮した上,主文の刑を量定した。
(求刑 懲役20年 サバイバルナイフ1本の没収)
    平成16年4月19日
神戸地方裁判所第4刑事部
裁判長裁判官  笹野明義
裁判官  浦島高広
裁判官  小山裕子

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