弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人向江璋悦、同坂本恭一の上告趣意第一点ならびに弁護人馬屋原成男の上告
趣意第三点の一について。
 論旨は、憲法違反をいう点もあるが、実質は児童福祉法三四条一項九号の解釈、
適用に関する原判決の誤りを主張するものであつて、単なる法令違反の主張に帰し、
適法な上告理由にあたらない(なお、本件各雇傭契約は、いずれも各児童の親権者
の同意を得ていないものである以上、児童福祉法の右条項にいう「正当な雇用関係
に基くもの」ではないとした原判決の判断は相当である。)。
 向江、坂本両弁護人の上告趣意第二点ならびに馬屋原弁護人の上告趣意第一点の
一について。
 論旨は、判例違反をいうが、所論引用の各判例はいずれも事案を異にし本件に適
切ではないから、前提を欠き、適法な上告理由にあたらない。
 向江、坂本両弁護人の上告趣意第三点の一ならびに馬屋原弁護人の上告趣意第三
点の二について。
 論旨は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由にあたらな
い(なお、原判決認定の事実関係のもとにおいて、被告人らに、児童であるミスト
ルコらを自己の支配下に置く行為があつたものと認めた原判決の判断は相当である。)。
 向江、坂本両弁護人の上告趣意第三点の二について。
 論旨中違憲の主張は原審で主張判断を経ず適法な上告理由とならない(当裁判所
昭和三九年一一月一八日大法廷決定、刑事判例集一八巻九号五九七頁参照)。論旨
のその余の部分は、事実誤認、単なる法令違反の主張であり、適法な上告理由とな
らない。
 向江、坂本両弁護人の上告趣意第三点の三について。
 論旨は、事実誤認の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。
 馬屋原弁護人の上告趣意第一点の二について。
 論旨の(一)は、第一審判決における量刑の情状に関する判示をとらえ、その判
例違反をいうものであり、右は原審で主張判断を経ていないものであるから、適法
な上告理由にあたらない。論旨の(二)は、判例違反をいうが、実質は、原判決に
おける量刑の情状に関する判示が証拠に基づかないものであるというのであつて、
事実誤認、単なる法令違反の主張に帰し、適法な上告理由にあたらない。論旨の(
三)は、判例違反をいうが、記録によれば、原審弁護人は、所論の就業規則を、情
状証拠としてではなく、本件児童福祉法違反の事実を争う証拠として提出している
ものであることが明らかであるから、論旨は前提を欠き適法な上告理由にあたらな
い。
 馬屋原弁護人の上告趣意第二点について。
 論旨の一は、憲法違反をいうが、その内容は既に同弁護人の上告趣意第一点にお
いて各判例違反として主張されたものと同一であり前示判断の如く、右各判例違反
の主張は、あるいは論旨の前提を欠きあるいは実質において事実誤認、法令違反の
主張に帰するなど、いずれも適法な判例違反の主張となり得ないものであり、憲法
違反の主張としても適法な上告理由たり得ない。次に論旨の二は、憲法違反をいう
が、その内容は、原判決の量刑の情状に関する判示文言の一部をとらえ、独自の見
解によりその不当をいうものであつて、適法な上告理由にあたらない。また論旨の
三は、憲法違反をいうが、その実質は、原審が弁護人の再開申請を容れなかつたこ
との不当をいうものであり、単なる法令違反の主張に帰し、適法な上告理由となら
ない。
 馬屋原弁護人の上告趣意第三点の三について。
 論旨は、単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由にあたらない(なお、
原審認定の本件ミストルコらの行為を精神面、情操面の発育未成熟な児童の心身に
有害な影響を与える行為とした原判決の判断に違法はない。)。
 馬屋原弁護人の上告趣意第四点および第五点について。
 論旨は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であつて、適法な上告理由
とならない。
 また、記録を検討しても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて、同四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文
のとおり決定する。
  昭和四二年一二月二日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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