弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人牧野彊の上告趣意第一点について。
 原審第一回公判調書(記録九三七丁裏)に依れば裁判長は証拠調を為す旨を告げ
被告人に対する司法警察官、検察官事務取扱裁判官の各訊問調書云々について証拠
調したことが認められる。そうして右被告人に対する裁判官の訊問調書とあるは所
論原判決引用の強制処分における被告人に対する判事代理の訊問調書をも指称する
こと明らかであるからこれについて適法な証拠調をしなかつとの非難は当らない。
論旨は理由がない。
 同第二点について。
 原判決が証拠に採用した被告人に対する司法警察官の聴取書は昭和二三年一〇月
一五日附判示殺人事実についての第一回聴取書であつて、被告人は同日以降同月一
八日の第四回聴取書作成当時迄右殺人事実を否認し同日第五回聴取書作成の際はじ
めて司法警察官に対し右事実について自白するに至つたこと記録上明らかである。
そうして、被告人は原審公判廷において右自白をなすに至つた事情として所論のよ
うな司法警察官の被告人に対する強制拷問若しくは脅迫の事実を主張しているので
あつて、右自白以前の司法警察官に対する供述までがこのような事実によるもので
あることはその主張しないところである。しかも右自白以前の司法警察官に対する
供述がその強制、拷問若しくは脅迫によるものとは本件記録上とうてい認められな
いのである。しからば被告人の司法警察官に対する自白が所論の事情に基くもので
あるかどうかは格別としてその事実の有無が原判決に影響を及ぼさないこと明らか
であるから論旨は理由がない。所論後段は証拠の判断に関する原審の専権事項を攻
撃するもので採用に値しない。
 被告人の上告趣意について。
 論旨の中事実誤認及び当裁判所に対し寛大な処分を願いたいとある部分は適法な
上告理由とならない。
 次に被告人に対する司法警察官の拷問の事実に関する論旨については前記牧野弁
護人上告論旨第二点について説明したとおりである。
 その余の論旨は司法警察官の所論各関係人に対する取調べが誘導訊問に基くもの
であると主張するのであるがそれは結局証拠の採否に対する原審の判断を攻撃する
に帰し採用に値しない。論旨はすべて理由がない。
 よつて刑訴施行法二条旧刑訴法四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は全裁判官一致の意見である。
 検察官 田中已代治関与
  昭和二五年一二月八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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