弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人弁護士高野篤信の上告理由第二点について。
 原判決は、「ここに附加すべきは、被控訴人Bが換地上のどの部分に何坪につい
て借地権を有するかの点である。同被控訴人は、旧地上の建物敷地約二五坪につい
て新所有権者に対抗し得る賃借権を有していたところ、前認定のごとく同人は自己
の賃借地の一部が残存している換地予定地上(旧借地と換地予定地とは重なり合う
部分がある)にそのまま建物を移動し、現在換地予定地上約一七坪を占拠するもの
であつて、旧借地と比較して格別の異動がなく、換地予定地全般から見ても場所的、
坪数において旧借地当時より特別の利益を得たとも見られないから、同場所に賃借
権を認めても差支がないばかりでなく、第一審原告代理人は同被控訴人が現在換地
予定地上に占拠する場所並びに坪数について争わない以上、同被控訴人は現在換地
予定地上に建物を所有して占拠している約一七坪について借地権を有すると認める
を妥当とする」旨判示して、旧地約二五坪に借地権を有していた被上告人は、換地
予定地上約一七坪について当然借地権を有していると判断したことは、所論のとお
りである。しかし、所論土地区劃整理法九八条によれば(本件の土地区画整理は、
特別都市計画法に基いて施行されたものであるが、土地区画整理法施行後は、同法
施行法五条により、新法三条四項の土地区画整理事業となつたものと認められる)、
施行者は、仮換地指定の場合において、従前の宅地について賃借権その他の宅地を
使用する権利を有する者があるときは、その仮換地について仮にその権利の目的と
なるべき宅地又はその部分を指定しなければならないものであつて、同法八五条に
よれば、権利者は、区画整理施行期間中は、施行規定で特に受理しないことと定め
られている期間を除き、何時でも施行者に対し権利の申告をなしうるものであるか
ら、本件のように従前の宅地の一部について賃借権を有するに過ぎないような場合
には、仮換地について先ず施行者の指定がない限り、権利者は当然には仮換地につ
いて権利を有するものではないと解するを相当とする。されば、原判決は爾余の点
について判断するまでもなく、すでにこの点において違法であつて、この違法は、
原判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、論旨は、その理由があつて、原判決
は、破棄を免れない。
 よつて、爾余の論点について、判断を省略し、民訴四〇七条に従い、裁判官全員
一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫

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