弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人Aの負担とする。
         理    由
 被告人Bの弁護人田中廉吾の上告趣意第一点について。
 論旨引用の大審院判例は所謂営業犯の罪数に関するものである。然るに本件は密
輸出入に関する事件であつて営業犯ではないから右判例は本件には適切でない。従
つて判例違反の主張は採るを得ない。
 同第二点について。
 所論は量刑不当の主張に過ぎないものであつて上告適法の理由にあたらない。
 被告人Cの弁護人夏秋武樹の上告趣意について。
 しかし論旨引用の判例は数個の犯罪事実に関する証拠説示の方法についてのもの
であるから、一個の犯罪事実に関する証拠説示の方法が問題となる本件には適切で
ない。そして第一審判決のした原価の認定が所論の如く違法であるとしても、その
認定価額は右判決に証拠として引用している大蔵事務官作成の犯則物件鑑定書の価
額より遥かに下廻つており、被告人にとつては有利な認定があること原判決の説示
するとおりであるから、その瑕疵は刑訴四一一条にいわゆる「判決を破棄しなけれ
ば著しく正義に反する」場合に該当しない。従つて論旨は採用することができない。
 被告人Aの弁護人塚本重頼の上告趣意第一点について。
 所論は憲法三一条違反を主張するが、その実賀は訴訟法違反の主張に帰し上告適
法の理由にあたらないのみならず、仮りに所論の如き訴訟法違反があつたとしても
刑訴四一一条を適用すべきものと認められないことは夏秋弁護人の上告趣意につい
て述べたとおりである。
 同第二点について。
 所論は法令違反の主張であるから刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(関税法
八三条三項に関する原判決の解釈は正当であり、従つて第一審判決の追徴方法は失
当たるを免れないがその措置は結果において被告人等の利益に帰しているのである
からこの点に関する原判決には違法はない。又関税法八三条三項の追徴は原則とし
て犯則当時の貨物の所有者から徴収すべきものであるから第一審判決が本件貨物の
所有者を被告人A及びCの二名と認定している以上、この両名から追徴したことは
正当であり何等所論の如き違法はない)
 なお記録を精査するも本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められな
い。
 よつて刑訴四一四条、三八六条一項三号、一八一条により主文のとおり決定する。
 この決定は裁判官全員一致の意見である。
  昭和二八年七月二一日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤 田     八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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