弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人が昭和二八年二月二三日付でした原判決
別紙物件目録記載の土地に対する申請人をA。相手方(借受人)Bなる耕作権移転
許可処分はこれを取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」と
の判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の主張及び証拠関係は左記のほか原判決事実摘示のとおりで
あるから、ここにこれを引用する。
 一、 控訴人の主張の訂正及び補足
 (一) 本件行政処分(控訴人が本訴において取消を求める耕作権移転許可処
分)がなされたのは昭和二八年二月二三日である。
 (二) Cが死亡したのは昭和二四年一一月七日である(よつて、原判決二枚目
表六行目に「昭和二九年一一月九日」とあるのを「昭和二四年一一月七日」と訂正
する。)。
 (三) 原判決二枚目裏一、二行目に「訴外A、D、並びに原告らおよび訴外B
の申請に基づき」とあるのを、「訴外Aの申請に基づき」と訂正する。
 (四) 控訴人は昭和三九年二月一二日本件処分を知り、被控訴人に対し同年一
〇月一五日付で審査請求書と題する書面(甲第一四号証)を提出したが、これは行
政不服審査法に基づく不服申立ではなく、農業委員会等に関する法律第三三条にあ
る農業委員会の取消を求めたものである。右については被控訴人より同年一一月二
〇日付、同月二二日控訴人に到達の書面で本件処分には手続上の不備はない旨の回
答を受けた。ところが、被控訴人より昭和四〇年一月二六日付書面で「審査請求が
できる」旨の教示があつたので、控訴人は昭和四〇年二月八日行政不服審査法によ
る審査請求をしたのである。かかる事情の下でなされた右審査請求には同法第一四
条所定の期間を遵守しなかつたことにつき同条第三項の正当な理由があるものであ
る。
 二、 証拠関係
 控訴人は、原審において提出した甲第二九号証を同号証の一と訂正し、あらたに
同号証の二、甲第三〇号証の一ないし三、第三一ないし三八号証、第三九号証の一
ないし四、第四〇号証の一、二、第四一、四二号証、第四三号証の一、二、第四四
ないし四七号証、第四八号証の一、二、第四九号証、第五〇号証の一、二、第五一
号証の一ないし六、第五二号証の一、二、第五四号証、第五五号証の一ないし四、
第五六号証の一ないし五、第五七号証の一、二、第五八号証の一ないし三、第五九
ないし六一号証を提出した。
 被控訴代理人は、甲第四九号証、第五二、五三号証の各一の成立はいずれも不
知、同第五八号証の一ないし三はそれが農地賃貸借契約証の写真であることは認め
る。その余の当審で提出された甲号各証の成立は認めると述べた。
         理    由
 被控訴人の本案前の抗弁に対し、当裁判所の判断するところは、左記のほか、原
判決理由欄記載のとおりであるから、これを引用する。
 一、 原判決九枚目裏七、八行目に「A、D、原告らおよびBの申請に基づき」
とあるのを削除する。
 二、 原判決一〇枚目裏二行目から五行目にかけて「原告が、右審査請求により
約四ケ月前である昭和三九年一〇月一五日被告宛に審査請求書を提出した日をもつ
て、本件処分につき審査請求があつたものとみなされること」とあるのを削除す
る。
 三、 原判決一一枚目裏一一行目末尾の後に、次のとおり附加する。
 「また、前掲および後掲各証拠によれば、Bは昭和二九年一月本件土地を競落に
より取得したところ、その後DやAらより競落価額が低廉に失するとの口実を設け
て執拗に出金を迫られたため昭和三二年九月止むなくDに金七万円を交付したが、
その間控訴人及びその余の選定者はBの本件土地使用、本件土地所有権取得につき
BやD・Aに対し異議を述べることなく推移し、昭和三八年三月二九日に至り控訴
人及びその余の選定者らは屋代簡易裁判所に対しBを被告として土地持分権確認お
よび登記更正手続請求事件を提起し、次いで昭和三九年二月以後後記のとおり被控
訴人や長野県知事に対し本件処分につき不服申立をなす等の所為に及んだてとを認
めることができる。」
 四、 原判決一二枚目表五行目に「一一年余りの」とあるのを削除する。
 五、 原判決一二枚目表一〇行目冒頭以下を削除し、同九行目の次に、左のよう
に附加する。
 「ところで、控訴人は、被控訴人が昭和四〇年一月二六日控訴人に対し同年二月
一〇日ごろまでに審査請求ができる旨教示したところ、仮りに右教示が法定の期間
を誤つてなされたものであるとしても、行政不服審査法第一九条により、右教示に
かかる期間内になされた控訴人ら(控訴人及びその余の選定者らを指す。以下同
じ)の同年二月八日の審査請求は法定の期間内になされたものとみなされる。そう
でないとしても、右の教示に従つてなされた控訴人らの右審査請求は同法第一四条
三項但書にいわゆる正当の理由がある場合に当ると主張する。成立に争いのない甲
第一号証によれば、被控訴人は控訴人に対し昭和四〇年一月二六日付書面を送付し
たが、同書面には「一一月二〇日付にて回答の審査請求書の件ですがその後検討の
結果請求が出来る事になりましたので二月一〇日頃までに県知事宛………再提出し
て下さい。」と記載されていたことを認めることができる。
 そこで、右書面が控訴人に送付されるに至つた経緯についてみると、成立に争い
のない甲第一四ないし一九号証、第三六号証、第三八号証、乙第二、第三号証、第
四号証の一ないし三、原審における証人Eの証言、同控訴人本人の尋問の結果を総
合すれば、
 控訴人は昭和三九年二月被控訴人事務局において本件処分に関する農業委員会議
事録等を閲覧、調査したが、そのころ被控訴人から本件処分についてはAが控訴人
らの同意を得て申請に及んだことが認められる旨の回答に接するに及び、同年三月
一四日被控訴人に対し、控訴人らがAに右同意を与えたことはないとの理由で、農
業委員会等に関する法律第三三条による取消決議をして欲しい旨の書状(甲第一八
号証)を発し、次いで同年一〇月一五日控訴人らの総代名義でF町農業委員会委員
長に宛て、同条に基づく取消を求める旨の「審査請求書」と題する書面(甲第一四
号証)を提出した。これに対し被控訴人は、同年一一月二〇日「右の一〇月一五日
付書面について審議の結果本件処分に手続上の不備の点はないと認めた」旨一応回
答したが、そのころ長野県に対しても右「審査請求書」の取扱いについて相談した
ところ、県側より、控訴人らの申立は被控訴人ではなく被控訴人の上級行政庁であ
る長野県知事において裁決するのが相当である旨の見解が示されたので、昭和四〇
年一月二六日付の前記書面を控訴人に送付したのである。このように認められ、右
認定に反する証拠はない。
 <要旨>右事実に本件弁論の全趣旨を併せれば、控訴人は、本件処分について行政
不服審査法に基づく審査請求は最早許されず、処分庁である被控訴人の職権
による取消を求める外はないとして、右職権の発動を促すべく、前記各書面を被控
訴人に宛て提出したのであるが、これに対し、被控訴人は一応右取消をしない旨回
答したものの、控訴人らの申立が行政不服審査法の審査請求に当ると解する余地も
あることを慮つて、長野県知事に宛て審査請求をするよろに促したのが前記昭和四
〇年一月二六日付の書面であつたと認めることができる。そして、叙上の経緯に照
らせば、控訴人は被控訴人に対し本件処分についての行政不服審査法における不服
申立期間に関し教示を求めたものではなく、また被控訴人においても同法上の不服
申立期間を控訴人らに教示する必要があつたものとはいい難い。してみれば、右書
面は、控訴人らの申立を単に被控訴人による職権取消の請求としてではなく、上級
行政庁である長野県知事に対する審査請求として取扱らことができることを表明し
たにとどまり、また同書面に「………二月一〇日頃までに提出ありたい」とあるの
も、単に事務処理上提出の望ましい期限を示したに過ぎないものと解するのが相当
であつて、右の趣旨を越えて、同書面が、本件処分に対する行政不服審査法上の審
査請求期間を教示したものと認めることはできない。
 結局、右昭和四〇年一月二六日付書面をもつて、行政不服審査法第一九条の教示
にあたるものということはできないから、同年二月八日付でなされた控訴人らの審
査請求につき同条の適用があるとの控訴人の主張は採用できない。また、昭和三九
年三月控訴人らが被控訴人に対し本件処分の取消を求める以前において、控訴人ら
は既に本件処分に対する法定の審査請求期間徒過につき正当の理由を有しなかつた
こと前説示のとおりであるから、右のような趣旨、経緯による昭和四〇年一月二六
日付書面の送付があつたからといつて、既に法定の不服申立権を失つた控訴人が、
それにより爾後の審査請求につき審査請求期間徒過の正当理由を具有するに至ると
は到底解することができない。
 してみれば、控訴人らの本件処分に対する昭和四〇年二月八日付審査請求は、法
定の審査請求期間内になされたものということはできず、また右期間徒過につき正
当理由のあるものでもないから、その点において法定の要件を欠く不適法なもので
ある。」
 よつて、本訴も不適法たるを免れず、これを却下した原判決は相当であつて、本
件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、民訴法三八四条、八九条を適用
して、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 岡部行男 裁判官 坂井芳雄 裁判官 大石忠生)

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