弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中被告人甲、同乙に関する部分を破棄する。
     被告人甲、同乙は孰れも無罪。
         理    由
 本件控訴の趣意は、末尾添附の別紙(被告人甲の弁護人牧瀬幸、被告人乙の弁護
人石川勲蔵、同高橋諦各作成名義の控訴趣意書と題する参通の書面)記載のとおり
であるが、これに対し当裁判所は、原判決がその示すところの各事実の順序に従い
各弁護人所論の争点につき左のとおり判断をする。
 原判示第三の事実について。
 被告人等の謀議に基づき、原判示日時頃、肥料配給公団令に認められた政府職員
の給与及び公団役職員としての手当以外の特例の給与として違法に貸金等の名目を
もつて被告人等を含む原判示公団役職員全部に対し、原判示公団資金を分配支出し
たことは、原判決挙示の証拠によつてこれを認め得るに充分であるが、記録及び当
審事実取調の結果に徴し、各般の事情を綜合考察するときはその支出分配は、真に
止むを得ざるに出でた犯罪責任なき所為と言わざるを得ない。すなわち、敗戦の結
果重要な我国食糧の補給源をなしていた朝鮮、台湾等の領土を失うに至つた我国八
千万国民を養うべき食糧の確保としてのその増産は、敗戦後における我国の最も重
要喫緊な課題に属し、肥料配給公団はこれに必要欠くべからざる肥料の配給業務を
一手に担当し、適時適正にして迅速なこれが完全配給は、右公団業務目的の本質を
為していたのであるが、元来民間出身者をもつて占めていた肥料配給公団の職員達
は、公務員たるの身分を有するに至つて、前職より遥かに減少した処遇に不満を感
じていたのみならず、公団は一両年にして当然解散さるべき運命にあつて、退職金
給与の確固たる見透しもなく、徒らに解散退職後の生活不安に襲われ、而もインフ
レ昂進による賃金と生活費との不均衡による生活困難のさなかに在つて、広汎な地
域に亘る全国六百二十万農家の各門戸まで運搬しての看貫配給、GHQ当局からの
再三に亘る厳達による二十四時間内に限つた緊急配給業務及びこれらに随伴する幾
多業務の困難にも拘らず、GHQ当局の指示によりその増員を期待し得べくもない
程度に不足した人員をもつて、公団の業務本来の目的使命を自覚して、当時長時間
乃至は徹夜に亘る労務に及ぶ限りの忍従をもつて献身していたものの、当時の過激
な思想情勢とも絡み合い、昭和二十三年六月の肥料配給公団丙支部における労働組
合のストライキ態勢の突入は、全国に亘る労組員の鬱積せる不満爆発の契機とな
り、給与ベース改訂、退職金確保、生活補給金、寒冷地手当、越冬資金等の要求を
掲げた公団における労働攻勢は次第に熾烈を加え、同年九月には、政令違反をも敢
て辞さない真剣な要求貫徹を期した札幌における職員の職場放棄、(現にそのため
犯罪者まで出した)同二十四年十二月のハンガーストライキ等当時全国に跨がる公
団労組員の同盟罷業、サボタージュ、公団本部への送金拒否等の強硬手段に訴えま
じき気勢は、実にその実現の寸前にあつて、これが要求に応じないときは、ストラ
イキ突入による前示重大使命を担う公団業務の阻害は計り知るべからざるものある
の危機に直面するの頻度は遂に座視するを忍び得ざるに至つた。その間被告人等公
団幹部は、予算に拘束されて真実の超過勤務手当の支給すら僅かにその数十分の一
を支給されるにすぎなかつた等寧ろ不当な労働条件下に忍従献身している前説示の
如き憫諒すべき実情に照らし、その要求の洵に妥当なもののあるに思いを致し、農
林省その他の関係当局に特例給与の認可を要請したが、その実質的な必要を認めら
れてい乍ら、占領軍管理下にあつた当時の客観情勢は、遂にこれを容るるところと
ならず、それかといつて、逼迫せる再三の前示緊急の状態をそのまま放任するに忍
びず、真に止むを得ざるの措置として、その支出操作において敢て不当なものある
を顧みず、貸付金等の名目をもつて原判示公団資金を公団の全職員に分配給与する
の所為に出でたものであることが窺い得られる。而して、労組職員の労働において
過激であつたことに相応し、業態の改善、目的の完遂等公団における各般の業務に
率先推輓、日夜その労を惜しまなかつたことの窺われる被告人等においても、勿論
残業乃至は超過勤務手当の支給を受けたこともなかつたのであつて、その本来一般
職員に対する給与たるの性質上<要旨>勢い本件金員の分配にあづかるに至つたこと
もまた洵にその故なしとしない。これを要するに、本件公団資金を擅に分配
給与した所為において違法たるものあるを免かれないにしても、その所為は、寧ろ
公団業務の円滑な運営上真に止むを得ざるに出でたものに係かり、当時同じくその
衝に当る他の通常人においても、これが違法な所為を避け、他に適法な所為に出づ
べきことは到底期待し得ざりし事情にあつたものと言うべく、従つて社会一般の道
義の上において非難のできない真に止むを得ざるに出でた犯罪責任なき所為であつ
て法律上罪とならないものと言わざるを得ない。されば、原審が、この点を看過
し、敢て本件所為につき、刑法第二百五十三条所定の業務上横領の罪をもつて問擬
したことは、究極において法令の適用を誤まりたるに帰し、その誤が原判決に影響
を及ぼすべきことも又自づから明らかであるから原判決はこの点においてもその破
棄を免かれない。本件各所論中右と同趣旨に出てた主張は、理由がある。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 小中公毅 判事 鈴木勇 判事 河原徳治)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛