弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を豊岡簡易裁判所に差し戻す。
         理    由
 本件控訴の理由は末尾添付の検察官提出の控訴趣意書記載の通りである。
 本件公訴事実は「被告人は法定の除外事由なく昭和二十四年七月二十七日頃から
昭和二十五年十月三日頃までの間肩書居宅で前後七回にわたりA外六名に対し金十
二万六千三百円を利息月八分ないし一割の約定で貸付け以て貸金業を営んだもので
ある」と云うのであるが、原判決は被告人は元来質屋営業を営む者であるから、被
告人が金貸業をする事は質屋営業の範囲に属し質屋営業法に従うものであつて、貸
金業等の取締に関する法律第二条第一項但書第二号後段にいわゆる「その他その業
を行うにつき他の法律に特別の規定のある者の行うもの」に該当するという理由の
下に無罪の言渡をしていることは所論の通りである。換言すると、原判決は質屋の
する金銭貸付行為は質物を担保にとると否とを問わずいかような方法でしても、そ
れはすべて質屋営業の範囲に属するから、貸金業等の取締に関する法律第二条第一
項但書第二号後段の適用上同法律の取締の<要旨>対象とならないと断定しているの
である。しかし質屋営業法第一条によれは質屋とは、質屋営業を営む者で同
法第二条第一項の規定による許可を受けたものを云い、質屋営業とは、物品(有価
証券を含む。以下同じ。)を質に取り流質期限までに当該質物で担保される債権の
弁済を受けないときは、当該質物をもつてその弁済に充てる約款を附して、金銭を
貸し付ける営業をいうと規定されている。それゆえに、質屋が物品を質に取らない
でする金銭貸付行為は質屋営業法の関するところではないのであつて、質屋営業の
範囲に属しないことは自明の理である。そして、同法にいう「物品」とは同法第一
条に物品(有価証券を含む)と規定し、古物営業法においては物品(鑑賞的美術品
を含む)と規定されているし、両法律全体の規定の建前から見ても、動産に限り不
動産を含まないものと解すべきである。すなわち、質屋営業とは、需要者から動産
を質に取り流質約款を附して金銭を貸し付ける営業をいい、無担保又は不動産を担
保とする金銭貸付行為は、その営業の範囲に属しないのであるからこの場合は貸金
業等の取締に関する法律第二条第一項但書第二号後段にいわゆる「他の法律に特別
の規定のある者の行うもの」に該当しないのである。結局原判決は実体法の解釈を
誤つた結果被告人の金銭貸付行為がいかような態様でなされたかを審理判断しない
で、たやすく質屋営業の範囲に属するから同法律の取締の対象とならないと断定し
無罪を言渡しているのであつて破棄を免れない。論旨は理由がある。
 よつて、刑事訴訟法第三百九十七条第四百条に従い主文の通り判決する。
 (裁判長判事 斎藤朔郎 判事 松本圭三 判事 網田覺一)

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