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平成18年3月31日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成15年(ワ)第29709号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日平成18年1月20日
判決
当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり
主文
1原告A関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告Aに対し,金152万5559
円及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告Aに対し,金108万383()
5円及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告Aに対し,金179万9702()
円及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告Aに対し,金165万8925円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告Aに対し,金200万2515()
円及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告Aに対し,金197万0746円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告Aのその余の請求をいずれも棄却する。
,,(8)訴訟費用は原告Aと被告青葉出版株式会社との間においては
これを10分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを20分し,同原告と被告株式会社光文書院との間におい
ては,これを10分し,同原告と被告株式会社新学社との間におい
ては,これを10分し,同原告と被告株式会社日本標準との間にお
いては,これを10分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間にお
いては,これを10分し,それぞれその1を各被告の負担とし,そ
の余を同原告の負担とする。
(9)この判決1項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
2原告B関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告Bに対し,金14万7840円及
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告Bに対し,金5万6422円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告Bに対し,金7万3305円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告Bに対し,金16万5981円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告Bに対し,金24万0015円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告Bに対し,金9万2850円及び別()
紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告Bのその余の請求をいずれも棄却する。
(8)訴訟費用は,原告Bと被告青葉出版株式会社との間においては,
これを40分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを100分し,同原告と被告株式会社光文書院との間にお
いては,これを90分し,同原告と被告株式会社新学社との間にお
いては,これを40分し,同原告と被告株式会社日本標準との間に
おいては,これを30分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間に
おいては,これを80分し,それぞれその1を各被告の負担とし,
その余を同原告の負担とする。
(9)この判決2項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
3原告D関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告Dに対し,金14万2893円及
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告Dに対し,金15万8572円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告Dに対し,金16万8701円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告Dに対し,金15万6758円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告Dに対し,金20万2755円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告Dに対し,金18万3024円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告Dのその余の請求をいずれも棄却する。
(8)訴訟費用は,原告Dと被告青葉出版株式会社との間においては,
これを20分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを20分し,同原告と被告株式会社光文書院との間におい
ては,これを20分し,同原告と被告株式会社新学社との間におい
ては,これを20分し,同原告と被告株式会社日本標準との間にお
いては,これを20分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間にお
いては,これを20分し,それぞれその1を各被告の負担とし,そ
の余を同原告の負担とする。
(9)この判決3項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
4原告E関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告Eに対し,金12万6173円及
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告Eに対し,金2万0679円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告Eに対し,金13万4239円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告Eに対し,金1万5888円及び別()
紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告Eに対し,金16万5353円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告Eに対し,金16万6909円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告Eのその余の請求をいずれも棄却する。
(8)訴訟費用は,原告Eと被告青葉出版株式会社との間においては,
これを10分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを70分し,同原告と被告株式会社光文書院との間におい
ては,これを10分し,同原告と被告株式会社新学社との間におい
ては,これを90分し,同原告と被告株式会社日本標準との間にお
いては,これを10分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間にお
いては,これを10分し,それぞれその1を各被告の負担とし,そ
の余を同原告の負担とする。
(9)この判決4項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
5原告F関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告Fに対し,金15万7558円及
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告Fに対し,金15万3964円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告Fに対し,金34万5828円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告Fに対し,金14万9837円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告Fに対し,金43万4203円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告Fに対し,金21万3809円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告Fのその余の請求をいずれも棄却する。
(8)訴訟費用は,原告Fと被告青葉出版株式会社との間においては,
これを30分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを30分し,同原告と被告株式会社光文書院との間におい
ては,これを10分し,同原告と被告株式会社新学社との間におい
ては,これを30分し,同原告と被告株式会社日本標準との間にお
いては,これを10分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間にお
いては,これを20分し,それぞれその1を各被告の負担とし,そ
の余を同原告の負担とする。
(9)この判決5項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
6原告G関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告Gに対し,金11万1070円及
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告Gに対し,金11万0811円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告Gに対し,金1605円及び別紙()
1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告Gに対し,金11万0931円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告Gに対し,金11万3508円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告Gに対し,金11万1082円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告Gのその余の請求をいずれも棄却する。
(8)訴訟費用は,原告Gと被告青葉出版株式会社との間においては,
これを10分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを10分し,同原告と被告株式会社光文書院との間におい
ては,これを800分し,同原告と被告株式会社新学社との間にお
いては,これを10分し,同原告と被告株式会社日本標準との間に
おいては,これを10分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間に
おいては,これを10分し,それぞれその1を各被告の負担とし,
その余を同原告の負担とする。
(9)この判決6項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
7亡訴訟承継人原告H関係I
(1)被告青葉出版株式会社は,原告Hに対し,金35万9086円及
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告Hに対し,金6万6717円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告Hに対し,金17万6435円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告Hに対し,金13万9888円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告Hに対し,金19万4541円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告Hに対し,金22万1649円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告Hのその余の請求をいずれも棄却する。
(8)訴訟費用は,原告Hと被告青葉出版株式会社との間においては,
これを20分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを100分し,同原告と被告株式会社光文書院との間にお
いては,これを40分し,同原告と被告株式会社新学社との間にお
いては,これを50分し,同原告と被告株式会社日本標準との間に
おいては,これを30分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間に
おいては,これを30分し,それぞれその1を各被告の負担とし,
その余を同原告の負担とする。
(9)この判決7項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
8亡K訴訟承継人原告J関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告Jに対し,金2173円及び別紙
1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告Jに対し,金11万2809円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告Jに対し,金11万2971円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告Jに対し,金11万1568円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告Jに対し,金11万5571円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告Jに対し,金11万2900円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告Jのその余の請求をいずれも棄却する。
(8)訴訟費用は,原告Jと被告青葉出版株式会社との間においては,
これを2600分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間にお
いては,これを50分し,同原告と被告株式会社光文書院との間に
おいては,これを50分し,同原告と被告株式会社新学社との間に
おいては,これを50分し,同原告と被告株式会社日本標準との間
においては,これを50分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間
,,,においてはこれを50分しそれぞれその1を各被告の負担とし
その余を同原告の負担とする。
(9)この判決8項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
9原告L関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告Lに対し,金14万5445円及
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告Lに対し,金16万8301円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告Lに対し,金20万8726円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告Lに対し,金16万9752円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告Lに対し,金28万3753円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告Lに対し,金20万5618円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告Lのその余の請求をいずれも棄却する。
(8)訴訟費用は,原告Lと被告青葉出版株式会社との間においては,
これを40分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを40分し,同原告と被告株式会社光文書院との間におい
ては,これを40分し,同原告と被告株式会社新学社との間におい
ては,これを40分し,同原告と被告株式会社日本標準との間にお
いては,これを30分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間にお
いては,これを40分し,それぞれその1を各被告の負担とし,そ
の余を同原告の負担とする。
(9)この判決9項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
10原告N関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告Nに対し,金1万2743円及び
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告Nに対し,金5万8427円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告Nに対し,金12万0945円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告Nに対し,金6万1325円及び別()
紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告Nに対し,金8900円及び別紙()
1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告Nに対し,金4万9354円及び別()
紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告Nのその余の請求をいずれも棄却する。
(8)訴訟費用は,原告Nと被告青葉出版株式会社との間においては,
これを100分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間におい
ては,これを20分し,同原告と被告株式会社光文書院との間にお
いては,これを10分し,同原告と被告株式会社新学社との間にお
いては,これを20分し,同原告と被告株式会社日本標準との間に
おいては,これを200分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間
,,,においてはこれを30分しそれぞれその1を各被告の負担とし
その余を同原告の負担とする。
(9)この判決10項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
11原告O関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告Oに対し,金14万6417円及
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告Oに対し,金18万7464円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告Oに対し,金14万1951円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告Oに対し,金35万7528円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告Oに対し,金6万5728円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告Oに対し,金16万1730円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告Oのその余の請求をいずれも棄却する。
(8)訴訟費用は,原告Oと被告青葉出版株式会社との間においては,
これを40分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを30分し,同原告と被告株式会社光文書院との間におい
ては,これを40分し,同原告と被告株式会社新学社との間におい
ては,これを20分し,同原告と被告株式会社日本標準との間にお
いては,これを90分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間にお
いては,これを30分し,それぞれその1を各被告の負担とし,そ
の余を同原告の負担とする。
(9)この判決11項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
12原告P関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告Pに対し,金3万9732円及び
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告Pに対し,金3万3014円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告Pに対し,金13万4818円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告Pに対し,金12万3054円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告Pに対し,金6万3000円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告Pに対し,金15万6332円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告Pのその余の請求をいずれも棄却する。
(8)訴訟費用は,原告Pと被告青葉出版株式会社との間においては,
これを100分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間におい
ては,これを100分し,同原告と被告株式会社光文書院との間に
おいては,これを30分し,同原告と被告株式会社新学社との間に
おいては,これを30分し,同原告と被告株式会社日本標準との間
においては,これを70分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間
,,,においてはこれを30分しそれぞれその1を各被告の負担とし
その余を同原告の負担とする。
(9)この判決12項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
13原告Q関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告Qに対し,金16万7705円及
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告Qに対し,金13万9024円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告Qに対し,金30万5014円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告Qに対し,金20万0759円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告Qに対し,金52万2192円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告Qに対し,金54万2288円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告Qのその余の請求をいずれも棄却する。
(8)訴訟費用は,原告Qと被告青葉出版株式会社との間においては,
これを20分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを20分し,同原告と被告株式会社光文書院との間におい
ては,これを10分し,同原告と被告株式会社新学社との間におい
ては,これを10分し,同原告と被告株式会社日本標準との間にお
いては,これを10分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間にお
いては,これを10分し,それぞれその1を各被告の負担とし,そ
の余を同原告の負担とする。
(9)この判決13項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
14原告T関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告Tに対し,金8万9201円及び
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告Tに対し,金1万5744円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告Tに対し,金2万4284円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告Tに対し,金1万8696円及び別()
紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告Tに対し,金45万5236円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告Tに対し,金55万3446円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告Tのその余の請求をいずれも棄却する。
(8)訴訟費用は,原告Tと被告青葉出版株式会社との間においては,
これを70分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを400分し,同原告と被告株式会社光文書院との間にお
いては,これを200分し,同原告と被告株式会社新学社との間に
おいては,これを300分し,同原告と被告株式会社日本標準との
間においては,これを10分し,同原告と被告株式会社文溪堂との
間においては,これを10分し,それぞれその1を各被告の負担と
し,その余を同原告の負担とする。
(9)この判決14項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
15原告V関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告Vに対し,金29万3838円及
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告Vに対し,金23万3726円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告Vに対し,金32万0863円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告Vに対し,金31万1401円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告Vに対し,金35万9887円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告Vに対し,金46万1599円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告Vのその余の請求をいずれも棄却する。
(8)訴訟費用は,原告Vと被告青葉出版株式会社との間においては,
これを30分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを40分し,同原告と被告株式会社光文書院との間におい
ては,これを30分し,同原告と被告株式会社新学社との間におい
ては,これを30分し,同原告と被告株式会社日本標準との間にお
いては,これを30分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間にお
いては,これを20分し,それぞれその1を各被告の負担とし,そ
の余を同原告の負担とする。
(9)この判決15項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
16原告W関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告Wに対し,金14万8869円及
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告Wに対し,金30万2420円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告Wに対し,金11万7405円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告Wに対し,金2万3114円及び別()
紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告Wに対し,金17万5395円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告Wに対し,金49万7620円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告Wのその余の請求をいずれも棄却する。
(8)訴訟費用は,原告Wと被告青葉出版株式会社との間においては,
これを40分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを200分し,同原告と被告株式会社光文書院との間にお
いては,これを50分し,同原告と被告株式会社新学社との間にお
いては,これを300分し,同原告と被告株式会社日本標準との間
においては,これを40分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間
,,,においてはこれを10分しそれぞれその1を各被告の負担とし
その余を同原告の負担とする。
(9)この判決16項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
17原告関係X
(1)被告青葉出版株式会社は,原告に対し,金57万2242円X
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告に対し,金25万9231円()X
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告に対し,金48万4683円及()X
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告に対し,金56万7910円及び()X
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告に対し,金49万6546円及()X
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告に対し,金81万2882円及び()X
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告のその余の請求をいずれも棄却する。X
,,(8)訴訟費用は原告と被告青葉出版株式会社との間においてはX
これを30分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを60分し,同原告と被告株式会社光文書院との間におい
ては,これを30分し,同原告と被告株式会社新学社との間におい
ては,これを30分し,同原告と被告株式会社日本標準との間にお
いては,これを30分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間にお
いては,これを20分し,それぞれその1を各被告の負担とし,そ
の余を同原告の負担とする。
(9)この判決17項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
18原告Y関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告Yに対し,金12万3899円及
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告Yに対し,金19万7746円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告Yに対し,金1万7998円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告Yに対し,金15万5908円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告Yに対し,金3万7185円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告Yに対し,金13万2845円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告Yのその余の請求をいずれも棄却する。
(8)訴訟費用は,原告Yと被告青葉出版株式会社との間においては,
これを40分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを30分し,同原告と被告株式会社光文書院との間におい
ては,これを300分し,同原告と被告株式会社新学社との間にお
いては,これを40分し,同原告と被告株式会社日本標準との間に
おいては,これを100分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間
,,,においてはこれを40分しそれぞれその1を各被告の負担とし
その余を同原告の負担とする。
(9)この判決18項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
19原告関係Z
(1)被告青葉出版株式会社は,原告に対し,金9万7219円及Z
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告に対し,金17万4286円()Z
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告に対し,金15万7837円及()Z
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告に対し,金14万6610円及び()Z
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告に対し,金29万4917円及()Z
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告に対し,金29万5350円及び()Z
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告のその余の請求をいずれも棄却する。Z
,,(8)訴訟費用は原告と被告青葉出版株式会社との間においてはZ
これを30分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを20分し,同原告と被告株式会社光文書院との間におい
ては,これを20分し,同原告と被告株式会社新学社との間におい
ては,これを20分し,同原告と被告株式会社日本標準との間にお
いては,これを10分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間にお
いては,これを10分し,それぞれその1を各被告の負担とし,そ
の余を同原告の負担とする。
(9)この判決19項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
20原告AA関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告AAに対し,金24万9924円
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告AAに対し,金15万8986()
円及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告AAに対し,金27万4009円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告AAに対し,金26万1300円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告AAに対し,金21万7628円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告AAに対し,金18万1400円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告AAのその余の請求をいずれも棄却する。
,,(8)訴訟費用は原告AAと被告青葉出版株式会社との間においては
これを20分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを40分し,同原告と被告株式会社光文書院との間におい
ては,これを20分し,同原告と被告株式会社新学社との間におい
ては,これを20分し,同原告と被告株式会社日本標準との間にお
いては,これを30分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間にお
いては,これを40分し,それぞれその1を各被告の負担とし,そ
の余を同原告の負担とする。
(9)この判決20項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
21原告BB関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告BBに対し,金16万6595円
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告BBに対し,金15万8533()
円及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告BBに対し,金35万1880円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告BBに対し,金14万9205円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告BBに対し,金81万2157円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告BBに対し,金40万3680円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告BBのその余の請求をいずれも棄却する。
,,(8)訴訟費用は原告BBと被告青葉出版株式会社との間においては
これを20分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを30分し,同原告と被告株式会社光文書院との間におい
ては,これを10分し,同原告と被告株式会社新学社との間におい
ては,これを30分し,同原告と被告株式会社日本標準との間にお
いては,これを10分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間にお
いては,これを10分し,それぞれその1を各被告の負担とし,そ
の余を同原告の負担とする。
(9)この判決21項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
22原告CC関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告CCに対し,金71万4120円
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告CCに対し,金41万9912()
円及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告CCに対し,金28万3967円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告CCに対し,金20万1907円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告CCに対し,金29万6102円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告CCに対し,金48万6407円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告CCのその余の請求をいずれも棄却する。
,,(8)訴訟費用は原告CCと被告青葉出版株式会社との間においては
これを10分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを20分し,同原告と被告株式会社光文書院との間におい
ては,これを20分し,同原告と被告株式会社新学社との間におい
ては,これを30分し,同原告と被告株式会社日本標準との間にお
いては,これを30分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間にお
いては,これを20分し,それぞれその1を各被告の負担とし,そ
の余を同原告の負担とする。
(9)この判決22項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
23原告DD関係
(1)被告青葉出版株式会社は,原告DDに対し,金9万6300円及
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
2被告株式会社教育同人社は,原告DDに対し,金8万3004円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
3被告株式会社光文書院は,原告DDに対し,金14万7089円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
4被告株式会社新学社は,原告DDに対し,金6万5611円及び()
別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
5被告株式会社日本標準は,原告DDに対し,金24万9081円()
及び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
6被告株式会社文溪堂は,原告DDに対し,金14万8732円及()
び別紙1(付帯金目録)記載の金員を支払え。
(7)原告DDのその余の請求をいずれも棄却する。
,,(8)訴訟費用は原告DDと被告青葉出版株式会社との間においては
これを20分し,同原告と被告株式会社教育同人社との間において
は,これを30分し,同原告と被告株式会社光文書院との間におい
ては,これを20分し,同原告と被告株式会社新学社との間におい
ては,これを30分し,同原告と被告株式会社日本標準との間にお
いては,これを10分し,同原告と被告株式会社文溪堂との間にお
いては,これを20分し,それぞれその1を各被告の負担とし,そ
の余を同原告の負担とする。
(9)この判決23項(1)ないし(6)は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1原告A(以下「原告A」という)関係。
1被告青葉出版株式会社(以下「被告青葉出版」という)は,原告Aに対()。
し,金1708万0850円及びこれに対する別紙2(損害金請求目録)記
載の金員(予備的に金352万8847円及びこれに対する別紙3(利息金
請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告株式会社教育同人社(以下「被告教育同人社」という)は,原告A()。
,()に対し金1774万8655円及びこれに対する別紙2損害金請求目録
記載の金員(予備的に金433万6652円及びこれに対する別紙3(利息
金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告株式会社光文書院(以下「被告光文書院」という)は,原告Aに対()。
し,金2032万7271円及びこれに対する別紙2(損害金請求目録)記
載の金員(予備的に金568万3334円及びこれに対する別紙3(利息金
請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告株式会社新学社(以下「被告新学社」という)は,原告Aに対し,()。
金1655万3484円及びこれに対する別紙2(損害金請求目録)記載の
金員(予備的に金370万9081円及びこれに対する別紙3(利息金請求
目録)記載の金員)を支払え。
5被告株式会社日本標準(以下「被告日本標準」という)は,原告Aに対()。
し,金2704万5420円及びこれに対する別紙2(損害金請求目録)記
載の金員(予備的に金817万4551円及びこれに対する別紙3(利息金
請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告株式会社文溪堂(以下「被告文溪堂」という)は,原告Aに対し,()。
金2197万7296円及びこれに対する別紙2(損害金請求目録)記載の
金員(予備的に金664万1766円及びこれに対する別紙3(利息金請求
目録)記載の金員)を支払え。
2原告B(以下「原告B」という)関係。
1被告青葉出版は,原告Bに対し,金625万4678円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金28万3595円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告Bに対し,金672万7528円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金47万5850円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告Bに対し,金681万2925円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金59万3570円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告Bに対し,金638万8705円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金40万5421円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告Bに対し,金778万6916円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金98万7060円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告Bに対し,金721万4238円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金79万6363円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3原告D(以下「原告D」という)関係。
1被告青葉出版は,原告Dに対し,金292万0523円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金25万2687円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告Dに対し,金308万7441円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金40万1963円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告Dに対し,金316万5965円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金47万8029円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告Dに対し,金301万5526円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金34万4357円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告Dに対し,金350万4106円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金69万4345円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告Dに対し,金333万6236円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金62万1914円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4Eこと原告E(以下「原告E」という)関係。
1被告青葉出版は,原告Eに対し,金141万7121円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金9万7172円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告Eに対し,金145万1812円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金13万1812円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告Eに対し,金145万8590円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金13万8590円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告Eに対し,金141万4466円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金9万4466円及びこれ
に対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告Eに対し,金164万4835円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金32万4835円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告Eに対し,金165万3879円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金33万3879円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5原告F(以下「原告F」という)関係。
1被告青葉出版は,原告Fに対し,金387万0789円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金110万1398円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告Fに対し,金410万5401円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金136万3084円
及びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告Fに対し,金468万5926円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金184万7932円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告Fに対し,金383万8683円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金105万5523円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告Fに対し,金562万6586円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金241万0554円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告Fに対し,金479万3485円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金192万7791円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6原告G(以下「原告G」という)関係。
1被告青葉出版は,原告Gに対し,金132万9972円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金9972円及びこれに
対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告Gに対し,金132万8979円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金8979円及びこれ
に対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告Gに対し,金134万0453円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金2万0453円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告Gに対し,金132万6775円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金6775円及びこれに対
する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告Gに対し,金136万1985円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金4万1985円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載)を支払え。
6被告文溪堂は,原告Gに対し,金133万7213円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金1万7213円及びこれ
に対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
7亡訴訟承継人原告H(以下「原告H」という)関係I。
1被告青葉出版は,原告Hに対し,金673万6243円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金84万2868円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告Hに対し,金647万9637円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金61万9015円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告Hに対し,金638万2600円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金53万9300円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告Hに対し,金671万0017円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金85万5851円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告Hに対し,金670万8704円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金67万4340円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告Hに対し,金687万8846円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金94万3873円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
8亡K訴訟承継人原告J(以下「原告J」という)関係。
1被告青葉出版は,原告Jに対し,金568万8133円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金2万8813円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告Jに対し,金569万5699円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金4万4513円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告Jに対し,金570万5781円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金3万7972円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告Jに対し,金566万9867円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金2万0377円及びこれ
に対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告Jに対し,金580万7401円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金9万0996円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告Jに対し,金574万6261円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金4万5600円及びこれ
に対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
9原告L(以下「原告L」という)関係。
1被告青葉出版は,原告Lに対し,金624万9558円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金26万7765円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告Lに対し,金678万0466円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金49万1064円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告Lに対し,金684万2551円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金55万8066円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告Lに対し,金656万5007円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金46万0999円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告Lに対し,金912万1472円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金122万6573円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告Lに対し,金733万3675円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金85万6451円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
10原告N(以下「原告N」という)関係。
1被告青葉出版は,原告Nに対し,金146万0297円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金14万0297円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告Nに対し,金133万7288円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金1万7288円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告Nに対し,金144万0754円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金12万0754円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告Nに対し,金135万1901円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金3万1901円及びこれ
に対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告Nに対し,金141万8471円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金9万8741円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告Nに対し,金156万7778円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金24万7778円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
11原告O(以下「原告O」という)関係。
1被告青葉出版は,原告Oに対し,金516万1295円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金26万6423円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告Oに対し,金502万9993円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金15万4778円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告Oに対し,金514万1216円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金28万0986円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告Oに対し,金663万0524円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金155万6042円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告Oに対し,金570万2205円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金49万7639円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告Oに対し,金542万9662円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金42万9020円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
12原告P(以下「原告P」という)関係。
1被告青葉出版は,原告Pに対し,金408万8670円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金24万7332円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告Pに対し,金409万3769円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金26万3054円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告Pに対し,金400万5568円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金17万9286円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告Pに対し,金390万4607円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金9万9707円及びこれ
に対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告Pに対し,金428万3951円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金39万3776円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告Pに対し,金416万3886円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金31万1161円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
13原告Q(以下「原告Q」という)関係。
1被告青葉出版は,原告Qに対し,金304万5165円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金91万8372円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告Qに対し,金259万6126円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金81万0240円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告Qに対し,金406万3520円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金167万3069円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告Qに対し,金287万2226円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金113万9900円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告Qに対し,金685万9937円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金292万3529円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告Qに対し,金599万4577円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金298万4726円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員を支払え。
14原告T(以下「原告T」という)関係。
1被告青葉出版は,原告Tに対し,金638万9066円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金48万7071円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告Tに対し,金569万6832円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金9万8803円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告Tに対し,金573万0550円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金13万2348円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告Tに対し,金569万4706円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金10万1709円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告Tに対し,金603万2669円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金23万0526円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告Tに対し,金618万6030円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金13万4877円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
15原告V(以下「原告V」という)関係。
1被告青葉出版は,原告Vに対し,金927万8221円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金100万4273円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告Vに対し,金1008万1517円及びこれに()
対する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金141万5223
円及びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告Vに対し,金929万1303円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金115万7822円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告Vに対し,金923万1855円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金112万1915円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告Vに対し,金1150万8914円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金207万0292円
及びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告Vに対し,金1095万3029円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金204万8561円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
16原告W(以下「原告W」という)関係。
1被告青葉出版は,原告Wに対し,金622万6489円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金28万6802円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告Wに対し,金594万7172円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金16万6409円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告Wに対し,金584万7126円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金13万2128円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告Wに対し,金587万7227円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金13万2320円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告Wに対し,金675万8411円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金50万6392円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告Wに対し,金619万3250円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金29万0033円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
17こと原告(以下「原告」という)関係XXX。
1被告青葉出版は,原告に対し,金1455万1883円及びこれに対()X
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金72万3217円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員を支払え。
2被告教育同人社は,原告に対し,金1540万9580円及びこれに()X
対する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金88万7922円
及びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告に対し,金1456万2957円及びこれに対()X
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金88万8917円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告に対し,金1411万0476円及びこれに対す()X
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金71万3722円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告に対し,金1675万0856円及びこれに対()X
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金157万6984円
及びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告に対し,金1690万6972円及びこれに対す()X
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金147万2459円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
18原告Y(以下「原告Y」という)関係。
1被告青葉出版は,原告Yに対し,金468万9712円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金2万8011円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告Yに対し,金526万8561円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金46万1730円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告Yに対し,金471万1939円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金5万3003円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告Yに対し,金565万7531円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金2万3876円及びこれ
に対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告Yに対し,金483万2875円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金11万2876円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告Yに対し,金473万6448円及びこれに対する()
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金5万6222円及びこれ
に対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
19原告(以下「原告」という)関係ZZ。
1被告青葉出版は,原告に対し,金257万0311円及びこれに対す()Z
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金12万4325円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告に対し,金277万7496円及びこれに対()Z
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金18万4179円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告に対し,金270万3279円及びこれに対す()Z
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金17万9586円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告に対し,金269万4990円及びこれに対する()Z
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金20万0247円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告に対し,金306万2257円及びこれに対す()Z
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金31万3478円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告に対し,金306万0909円及びこれに対する()Z
別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金31万1974円及びこ
れに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
20原告AA(以下「原告AA」という)関係。
1被告青葉出版は,原告AAに対し,金607万0790円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金16万2945円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告AAに対し,金639万4154円及びこれに()
対する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金26万7196円
及びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告AAに対し,金642万5791円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金29万4722円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告AAに対し,金621万1820円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金22万4767円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告AAに対し,金731万2343円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金59万0163円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告AAに対し,金675万5570円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金38万9514円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
21原告BB(以下「原告BB」という)関係。
1被告青葉出版は,原告BBに対し,金399万6357円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金120万9299円
及びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告BBに対し,金410万4384円及びこれに()
対する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金127万1261
円及びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告BBに対し,金398万8201円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金124万8425円
及びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告BBに対し,金395万5090円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金121万2268円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告BBに対し,金551万5293円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金238万4643円
及びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告BBに対し,金497万3663円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金210万2176円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
22原告CC(以下「原告CC」という)関係。
1被告青葉出版は,原告CCに対し,金788万0233円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金120万2079円
及びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告CCに対し,金766万6279円及びこれに()
対する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金115万0136
円及びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告CCに対し,金677万2872円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金26万4424円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告CCに対し,金654万3813円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金20万8493円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告CCに対し,金749万8632円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金47万2038円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告CCに対し,金1090万7826円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金364万9708円
及びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
23原告DD(以下「原告DD」という)関係。
1被告青葉出版は,原告DDに対し,金219万9719円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金87万9719円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
2被告教育同人社は,原告DDに対し,金247万1104円及びこれに()
対する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金115万1104
円及びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
3被告光文書院は,原告DDに対し,金266万2893円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金134万2893円
及びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
4被告新学社は,原告DDに対し,金203万6429円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金71万6429円及び
これに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
5被告日本標準は,原告DDに対し,金292万1222円及びこれに対()
する別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金160万1222円
及びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
6被告文溪堂は,原告DDに対し,金339万4436円及びこれに対す()
る別紙2(損害金請求目録)記載の金員(予備的に金207万4436円及
びこれに対する別紙3(利息金請求目録)記載の金員)を支払え。
第2事案の概要
1本件事案
,,本件は小学生用国語教科書に掲載された著作物の著作権者である原告らが
上記著作物を掲載した国語テストを製作販売した被告らに対し,同国語テスト
を製作販売する行為は,原告らの上記著作物に対する複製権及び著作者人格権
(同一性保持権,氏名表示権)を侵害すると主張して,被告らに対し,それぞ
れ,主位的に,複製権及び著作者人格権(同一性保持権,氏名表示権)侵害を
理由とする不法行為に基づく損害賠償を求め,同請求権が時効消滅した場合に
,,,は予備的に法律上の原因なくして使用料相当額の支払を免れたと主張して
不当利得の返還を求める事案である。
2争いのない事実等(証拠を掲げていない事実は当事者間に争いがない)。
(1)当事者
原告らは,いずれも著名な詩人,作家,学者等又はその承継人である(弁
論の全趣旨。)
被告らは,いずれも小学生用の大手副教材製作販売会社である。
2原告らの権利()
原告ら又はその被相続人は,次のとおり,別紙4(著作物目録)記載の各
著作物(以下,これらの各著作物を併せて「本件各著作物」という)につ。
いて,著作権を取得した。
ア原告Aは,児童文学者であり,別紙4(著作物目録)中,同人欄の「著
作物名」欄記載の著作物(本件著作物1-1ないし11)を,各「創作年
度」欄記載の年にそれぞれ著述したことにより,これらの各著作物につい
て,著作権を取得した。
イCこと亡C以下亡Cというは児童文学者であり別紙4著(「」。),,(
),「」(),作物目録中同人欄の著作物名欄記載の著作物本件著作物2を
同「創作年度」欄記載の年に著述したことにより,同著作物について,著
作権を取得した。
亡Cは,平成14年1月16日に死亡した。原告Bは,同日,遺贈によ
り,上記著作物に係る権利侵害を理由とする損害賠償請求権及び不当利得
返還請求権を取得した(甲310の1及び2。)
ウ原告Dは,多摩美術大学教授であり,別紙4(著作物目録)中,同人欄
の「著作物名」欄記載の著作物(本件著作物3)を,同「創作年度」欄記
載の年に著述したことにより,同著作物について,著作権を取得した。
エ原告Eは,児童文学者であり,別紙4(著作物目録)中,同人欄の「著
作物名」欄記載の著作物(本件著作物4)を,同「創作年度」欄記載の年
に著述したことにより,同著作物について,著作権を取得した。
オ原告Fは,東京農業大学教授であり,別紙4(著作物目録)中,同人欄
の「著作物名」欄記載の著作物(本件著作物5)を,同「創作年度」欄記
載の年に著述したことにより,同著作物について,著作権を取得した。
カ原告Gは,児童文学者であり,別紙4(著作物目録)中,同人欄の「著
作物名」欄記載の著作物(本件著作物6)を,同「創作年度」欄記載の年
に著述したことにより,同著作物について,著作権を取得した。
キ承継前原告亡(以下「亡I」という)は,詩人ないし児童文学者でI。
あり,別紙4(著作物目録)中,同人欄の「著作物名」欄記載の各著作物
(本件著作物7-1ないし6)を,各「創作年度」欄記載の年にそれぞれ
著述したことにより,これらの各著作物について,著作権を取得した。
亡Iは,平成16年10月21日に死亡した。原告Hは,同人の妻であ
るところ,平成18年1月15日,亡Iのその余の共同相続人との間で,
被告らに対する同著作物に係る権利侵害を理由とする損害賠償請求権及び
不当利得返還請求権を同原告が取得する旨の合意をした(甲311の1な
いし3。)
クKこと承継前原告亡K(以下「亡K」という)は,詩人ないし翻訳家。
であり,別紙4(著作物目録)中,同人欄の「著作物名」欄記載の著作物
(本件著作物8)を,同「創作年度」欄記載の年に翻訳したことにより,
同著作物の翻訳について,著作権を取得した。
亡Kは,平成16年8月14日に死亡した。原告Jは,平成18年1月
15日,亡Kのその余の共同相続人との間で,被告らに対する同著作物に
係る権利侵害を理由とする損害賠償請求権及び不当利得返還請求権を同原
告が取得する旨の合意した(甲312の1ないし3。)
ケ亡M(以下「亡M」という)は,児童文学者であるが,別紙4(著作。
物目録)中,同人欄の「著作物名」欄記載の著作物(本件著作物9)を,
同「創作年度」欄記載の年に著述したことにより,同著作物について,著
作権を取得した。
亡Mは,平成13年6月6日死亡した。原告Lは,同人の妻であるとこ
ろ,平成18年1月15日,亡Mのその余の共同相続人との間で,被告ら
に対する同著作物に係る権利侵害を理由とする損害賠償請求権及び不当利
得返還請求権を同原告が取得する旨の合意をした(甲313の1ないし
3。)
コ原告Nは,翻訳家であるが,別紙4(著作物目録)中,同人欄の「著作
物名」欄記載の著作物(本件著作物10)を,同「創作年度」欄記載の年
に翻訳したことにより,同著作物の翻訳について,著作権を取得した。
サ原告Oは,ジャーナリストであるが,別紙4(著作物目録)中,同人欄
の「著作物名」欄記載の各著作物(本件著作物11-1ないし3)を,各
「創作年度」欄記載の年にそれぞれ著述したことにより,これらの各著作
物について,著作権を取得した。
シ原告Pは児童文学者であるが別紙4著作物目録中同人欄の著,,(),「
作物名」欄記載の各著作物(本件著作物12-1及び2)を,各「創作年
度」欄記載の年にそれぞれ著述したことにより,これらの各著作物につい
て,著作権を取得した。
ス亡R(以下「亡R」という)は,文学者であるが,別紙4(著作物目。
録)中,同人欄の「著作物名」欄記載の各著作物(本件著作物13-1な
いし3)を,各「創作年度」欄記載の年にそれぞれ著述したことにより,
これらの各著作物について,著作権を取得した。
亡Rは,昭和42年6月23日に死亡した。原告Qは,同人の養女であ
る亡Sの子であるところ,上記各著作物に係る権利の持分を平成18年1
月16日までに相続及び死因贈与等により取得した。また,原告Qは,亡
Rの共同相続人及びその承継人との間で,被告らに対する同著作物に係る
権利侵害を理由とする損害賠償請求権及び不当利得返還請求権を同原告が
取得する旨の合意をした(甲314の1ないし9。)
(「」。),,()セ亡U以下亡Uというは詩人であるが別紙4著作物目録
中,同人欄の「著作物名」欄記載の各著作物(本件著作物14-1ないし
7)を,各「創作年度」欄記載の年にそれぞれ著述したことにより,これ
らの各著作物について,著作権を取得した。
,。,,亡Uは平成7年9月7日死亡した原告Tは同人の妻であるところ
遺産分割により上記各著作物に係る著作権を取得した。また,原告Tは,
平成18年1月20日,亡Uのその余の共同相続人との間で,被告らに対
する各著作物に係る権利侵害を理由とする損害賠償請求権及び不当利得返
還請求権を同原告が取得する旨の合意をした(甲15,弁論の全趣旨。)
ソ原告Vは児童文学者であるが別紙4著作物目録中同人欄の著,,(),「
作物名」欄記載の各著作物(本件著作物15-1及び2)を,各「創作年
度」欄記載の年にそれぞれ著述したことにより,これらの各著作物につい
て,著作権を取得した。
タ原告Wは,作家であるが,別紙4(著作物目録)中,同人欄の「著作物
名」欄記載の著作物(本件著作物16)を,同「創作年度」欄記載の年に
著述したことにより,同著作物について,著作権を取得した。
チ原告は,児童文学者であるが,別紙4(著作物目録)中,同人欄のX
「著作物名」欄記載の各著作物(本件著作物17-1ないし10)を,各
「創作年度」欄記載の年にそれぞれ著述したことにより,これらの各著作
物について,著作権を取得した。
ツ原告Yは,学者であるが,別紙4(著作物目録)中,同人欄の「著作物
名」欄記載の各著作物(本件著作物18-1及び2)を,各「創作年度」
欄記載の年に著述したことにより,これらの各著作物について,著作権を
取得した。
テ原告は,作家であるが,別紙4(著作物目録)中,同人欄の「著作Z
物名」欄記載の著作物(本件著作物19)を,同「創作年度」欄記載の年
に著述したことにより,同著作物について,著作権を取得した。
ト原告AAは,児童文学者であるが,別紙4(著作物目録)中,同人欄の
著作物名欄記載の各著作物本件著作物20-1ないし4を各創「」(),「
作年度」欄記載の年にそれぞれ著述したことにより,これらの各著作物に
ついて,著作権を取得した。
ナ原告BBは,児童文学者であるが,別紙4(著作物目録)中,同人欄の
著作物名欄記載の各著作物本件著作物21-1ないし6を各創「」(),「
作年度」欄記載の年にそれぞれ著述したことにより,これらの各著作物に
ついて,著作権を取得した。
ニ原告CCは,ぐんま昆虫の森園長であるが,別紙4(著作物目録)中,
同人欄の「著作物名」欄記載の各著作物(本件著作物22-1ないし3)
を,各「創作年度」欄記載の年にそれぞれ著述したことにより,これらの
各著作物について,著作権を取得した。
ヌ原告DDは小児科医であるが別紙4著作物目録中同人欄の著,,(),「
作物名」欄記載の著作物(本件著作物23)を,同「創作年度」欄記載の
年に著述したことにより,同著作物について,著作権を取得した。
3本件各著作物の国語科検定教科書への掲載()
別紙5-1及び2(年度別部数等一覧表)の「著作者名」欄及び「著作物
名」欄の本件各著作物は,同「使用年度」欄の年度に,同「掲載学年」欄の
学年において,同「教科書会社名」欄の,光村図書,東京書籍,学校図書,
教育出版,日本書籍及び大阪書籍の6種類の小学生用国語科検定教科書(以
下「本件各教科書」という)に掲載された。。
すなわち,昭和58年度改訂の本件各教科書は同年度ないし同60年度に
おいて使用され,昭和61年度改訂の本件各教科書は同年度ないし同63年
度において使用され,平成元年度改訂の本件各教科書は同年度ないし同3年
度において使用され,平成4年度改訂の本件各教科書は同年度ないし同7年
度において使用され,平成8年度改訂の本件各教科書は同年度ないし同11
年度において使用された。改訂年度に教科書に掲載された原告らの本件各著
,。作物は次回の本件各教科書改訂年度の前年度まで教科書に掲載され続けた
なお,原告Aの「なまえをみてちょうだい(本件著作物1-8)は「名」
前をみてちょうだい」に,亡Iの「ワニのおじいさんのたからもの(本件」
著作物7-1)は「わにのおじいさんのたから物」に,原告BBの「ブラン
コ(本件著作物21-4)は「ぶらんこ」に「みずたま(本件著作物2」,」
1-5)は「水玉」に,それぞれ題名が変更されて本件各教科書に掲載され
た。
4被告らの行為()
被告らは,少なくとも昭和58年度ないし平成11年度にかけて,全国の
小学生向けに,本件各教科書に準拠した副教材として小学生用国語テスト等
を,各教科書ごと,各学年の各学期ごとに,長年にわたり,製作販売してき
た。別紙5-1及び2(年度別部数等一覧表)の「著作物名」欄に記載され
た本件各著作物は,同一覧表の「備考」欄に「×」又は「△」を記載したも
のを除き,それに対応する各「教材名」欄の国語テスト(以下,別紙5-1
及び2(年度別部数等一覧表)の「教材名」に「国語テスト」と記載されて
いるものを「本件国語テスト」という)に,著作権者の直接の許諾なく,,。
使用されたか使用されたものと推認される。
5本件国語テストにおける本件各著作物の取扱い()
ア本件国語テストにおける本件各著作物の使用態様は,表裏各1枚のテス
ト用紙の表面の上段に本件各教科書に掲載された本件各著作物の全部又は
一部が複製されて掲載されているというものである(甲1ないし289の
各1。)
イ本件国語テストにおいては,別紙6-1ないし6(変更内容一覧表)記
「」,「」載の各著作物名欄記載の本件各著作物がそれに対応する変更箇所
欄記載のとおりに,表現が変更されている。
(,,,,,ウ平成11年度分の本件国語テスト甲第2545545664
75,76,85,88,125,261,263及び271号証の各1を
除く)には,著作者名の表示が存在しない。。
3本件の争点
1国語テスト以外の教材に関する訴えの追加的変更が許されるか()
(2)被告らが本件各著作物を本件国語テストに掲載したことが,著作権法3
6条1項の「試験又は検定の問題」としての複製に当たるか
(3)著作者人格権侵害の有無
ア同一性保持権侵害の有無
イ氏名表示権侵害の有無
4故意又は過失の有無()
5消滅時効の成否()
ア民法724条の「損害及び加害者を知りたる時」はいつか
イ時効中断・時効援用権の喪失の成否
6権利濫用の成否()
7損害の発生及びその額(主位的請求)()
8利得と損失の発生及びその額(予備的請求)()
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(訴えの追加的変更の許否)について()
〔被告らの主張〕
原告は,別紙5-2(年度別部数等一覧表)では,本件訴訟の対象となって
いる国語テスト以外のもの,すなわち「国語ドリル「国語の達成「国語の確,」,」,
認「国語プリント「マイペア「国語形成プリント「国語Vドリル」及び」,」,」,」,
「サマー16(同一覧表の「備考」欄に「△」を記載したもの)を掲載して,そ」
れに基づく損害賠償をも請求する旨の訴えの変更を行った。上記訴えの追加的変
更は,口頭弁論終結直前の平成18年1月13日に,同日付けの訴え変更申立書
において突然行われたものである。しかし,同訴えの追加的変更は,請求の基礎
に変更があり,これにより著しく訴訟手続を遅滞させるものである。上記国語ド
リル等は,本件国語テストのような1枚の用紙ではなく冊子であるものも相当程
,,度含まれておりそもそも本件各著作物が引用されているかどうかも不明であり
その体裁,形式について本件国語テストとは質的に大きな差があり,もし,これ
が審理の対象となるのであれば,複製権侵害があったか否かばかりでなく,著作
権法36条の適否,時効消滅の成否などについて,最初から主張をやり直さなけ
ればならなくなる。よって,そのような主張立証の必要な訴えの追加的変更を口
頭弁論終結間際にすることは許されないというべきである。
〔原告らの主張〕
争う。
2争点(2)(著作権法36条1項該当性)について
〔被告らの主張〕
(1)本件国語テストは,公表された本件各著作物を,人の学識技能に関する試験
の目的上必要と認められる限度において,当該試験の問題として複製したもの
であり,当該複製は,著作権法36条によって行われたものとして適法である
から,被告らは,原告らに対し損害賠償義務を負わない。その理由は次のとお
りである。
ア小学校においては,児童の教育に関して,指導要録が作成される。指導要
録とは「児童等の学習及び健康の状況を記録した書類の原本」をいい,校長,
は,その学校に在学する児童等の指導要録を作成しなければならず(学校教
育法施行規則12条の3第1項,また,児童等が進学又は転学した場合にお)
いては,指導要録の写し等を進学先・転学先の校長に送付しなければならな
い(同条2項,3項。指導要録のうち,各教科の学習の記録は「Ⅰ観点),
」,「」「」。別学習状況Ⅱ評定及びⅢ所見の3つの欄から成り立っている
このうち「Ⅰ観点別学習状況」は,小学校学習指導要領に示す各教科の目,
標に照らして,その実現の状況を観点ごとに評価し,A,B及びCの3段階
で記入する。
このように小学校教育においては,児童ごとの学習指導の過程や成果を評
価して記載する指導要録を作成する必要があり,そのために「観点別学習状,
況の評価を基本」として,学習指導要領に示す目標に照らしてその実現状況
を見る評価規準や評価方法の客観性・信頼性を高めるように努力をしなくて
はならない。本件国語テストは,以上のような指導要録に記載すべき「観点
別学習状況の評価」を的確に行うために,評価規準や評価方法等の研究を行
って,その客観性・信頼性を高めるために開発されたテスト教材であり,現
に全国の小学校において,その目的のために使用されている。本件国語テス
トは,単に問題を掲載した「ドリル」や自習教材とは用途及び態様を全く異
にしており,テスト教材としての特徴である「配点」の記載のほか,教師用
のものには,実際にテストを実施する時間である「実施時間」の記載「正答,
率「平均点」の記載,教師が採点において迷わないようにするための「採点」
の基準「正答とすることの)許容例」の記載等がある。」(
イまた,本件国語テストの体裁,被告らによる納品の形態及び小学校にお
ける実施の状況は,次のとおりである。
ア本件国語テストは,冊子やプリント集の体裁のものではなく,入試問()
題や模擬試験等と同様に,大きさが概ねB4版横,縦書きの1枚のテスト
用紙であり,ほとんどの場合,問題が表と裏に印刷されており,表裏とも
中央の罫線によって上下二段に分けられた体裁である。
イ本件国語テストは,各回の実施分ごとに,児童数に余部1,2部を加()
えた部数がまとめられ,学期の初めに,その学期に実施される分が各教師
に届けられる。すなわち,本件国語テストは,教師(学校)によって採択
が決定されると,教師用が1クラス分について1冊(これには解答,採点
基準,標準実施時間,平均点,正答率等の記載及び得点集計表等を含む)。
と,児童の数に応じたテスト用紙とが被告らから学校に届けられる。児童
の数に応じたテスト用紙は,児童1人分が1冊の冊子になっているのでは
なく,各回分のテスト用紙を児童の数に応じた枚数分だけひとやまとし,
このひとやまがテスト回数分だけ届けられる。解答及び採点基準等を記載
した教師用は,教師の分が1冊あるだけである。児童の数に応じて存在し
ているのは,テスト用紙そのものだけであり,児童に配布される解答やヒ
ント等を記載したものは存在していない。
ウ本件国語テストを用いたテストは,学習の進捗状況等に従い,通常は()
国語教科書の各単元を終了する際に,当該単元に係る分が実施される(学
期末,学年末に実施されることもある。教師は,各学級の授業時間内に。)
おいて本件国語テストを各児童に配布し「はじめ」の合図・号令によって,
解答を開始させ「終わり」の合図・号令によって解答を停止させて回収す,
るという方法により,実施時間を測定してテストを実施する。
エ教師は,実施前の本件国語テストを児童の目に触れないよう厳重に保()
管し,学校によっては,実施前の本件国語テストを金庫に入れて保管して
いるところもある。そして,本件国語テストを利用する教師の多くは,被
告らが作成してセットにした上記「得点集計表」やソフトウェアを用いる
などして各児童の得点集計を行い,これを基に指導要録における児童ごと
の「観点別学習状況の評価」を行っている。このように,指導要録に記載
すべき学習状況の評価に用いるものであるからこそ,児童の父母の経済的
負担の下で,本件国語テストが学校で採択されているのである。
ウ以上によれば,本件国語テストは,人の学識技能に関する試験であり,そ
の目的上必要と認められる限度において,当該「試験又は検定」の問題とし
て,公表された著作物である本件各著作物を複製したものであることは明ら
かである。
(2)原告らの主張に対する反論
,「」,,ア原告らは著作権法36条の試験又は検定とは公正な実施のために
試験又は検定の問題として利用する著作物が何であるかということ自体を秘
密にする必要性があり,それゆえに,当該著作物の複製につき,あらかじめ
著作権者の許諾を受けることが困難であるようなものをいう旨主張する。
しかしながら,著作権法は「試験又は検定」に公表された著作物を利用す,
ることを認めているのであり,文言上,上記のように限定して解釈する条文
上の根拠がない。
イ確かに,著作権法36条の立法理由の1つとして「事前に著作権者の許諾,
を得ることが実際上困難であり社会的実情に適合しないこと」が挙げられる
が,それは必ずしも「秘密性のゆえに」あらかじめ著作権者の許諾を受ける
ことが困難な場合だけに限定することにはならない。また,同条は「試験問,
題としての利用が著作物の通常の利用と衝突しないこと」も,その立法理由
の1つとしており,この理由を単に消極的な根拠にすぎないものとすること
はできない。
「試験又は検定」の中には,秘密性が強く求められる資格試験や入学試験
のみならず,そうではない校内試験や模擬試験も含まれることは,条文の文
言からだけでなく,立法担当官の解説からも明らかであり,立法者意思であ
るといえる。
そして,期末試験などの校内試験では,教科書に掲載されている著作物が
利用されるのは当然のこととして予測でき,当該試験について,いかなる著
作物を利用するかということについての秘密性はなく,その点で本件国語テ
ストと同じである。また,模擬テスト業者が行う模擬試験は,あくまで「模
擬」であって,その結果がよかったからといって社会生活上の資格や能力が
公的に証明されるわけではないし,そもそも本試験の準備のために受験する
模擬試験において,あえて出題を事前に察知しようという者がいるはずもな
いから,模擬試験において,公正な実施のために,試験又は検定の問題とし
て利用する著作物が何であるかということ自体を秘密にする必要性があり,
そのゆえに,該著作物の複製につき,あらかじめ著作権者の許諾を受けるこ
とが困難であるという事情は全くない。したがって,校内試験や模擬試験が
著作権法36条の「試験又は検定」に含まれる以上,本件国語テストを,秘
密性がないという理由で,同条の「試験又は検定」から排除することはでき
ない。
ウ秘密性ゆえに事前の許諾取得が必ずしも困難とはいえない場合でも①試,「
験又は検定」は,教育上の評価の目的や,能力ある人を適正に選抜するとい
う社会生活上の目的を適切に実現するために必要不可欠であり,試験又は検
定の題材として,公表された他人の著作物を必要な範囲で自由に利用するこ
とを認めるべき公益上の理由があり,②本件国語テストの場合がまさにそう
であるように,当該試験又は検定の目的から,ある特定の著作物を利用する
ことが必要不可欠であって他に選択肢がなく,その利用なくしては試験問題
として不完全なものとなって,ひいては,教育上の評価や能力の評価を的確
に行うことができなくなる場合があり,③一般に試験問題等として公表され
,()た著作物の一部が利用されても当該著作物の通常の利用単行本の発売等
に悪影響を与えないどころか,かえって単行本等の売上げの増進にもなるこ
とがある。著作権法36条は,このようなことから,必ずしも秘密性ゆえに
著作権の事前許諾を得ることが困難な場合に限定することなく「試験又は検,
定」には,その目的上必要と認められる限度において,公表された著作物を
試験等の問題として複製することを認めたものと解することができる。した
がって,教育上の評価等を的確に行うのに特定著作物を利用しなければなら
ない合理的な必要性があり,しかも著作物の通常の利用と衝突しない態様で
の著作物の利用を,条文の文言に反してまで著作権法36条の適用対象から
あえて除外すべき実質的・合理的な理由はない。
本件国語テストにおいては,次のとおり,教育上の評価等を的確に行うの
に本件各著作物を利用しなければならない合理的な必要性があり,しかも,
その利用は本件各著作物の通常の利用と衝突しない態様のものである。した
がって,本件国語テストを著作権法36条の「試験又は検定」に含まれると
解することは,文言に適合するのみならず,実質的観点からも支持されるの
,。でありこれを著作権法36条の適用対象から排除する実質的な根拠はない
ア我が国の小学校教育は教科書中心主義をとっているが,その中でも国()
語教育においては,児童の学習到達度を測定する手段として,教科書掲載
著作物を対象としたテストを行う教育上の強い必要がある。そこで,小学
校における国語テスト教材を発行するには,教科書掲載著作物を利用せざ
,。,,るを得ず発行事業者である被告らに選択の自由はないまた教科書は
その教育目的から,多数の著作者の著作物を編集して掲載しており,いき
おい本件国語テストも,教科書に著作物が掲載された多数の著作者の著作
物を利用せざるを得ないこととなる。したがって,教科書に掲載された個
々の著作物の著作者が本件国語テストへの掲載について許諾権を有するこ
とになると,大部分の著作者がそれを許諾している場合であっても,一部
の著作者が許諾しないために,本件国語テストの発行が困難になることが
想定される。教科書掲載著作物を教科書準拠の国語テスト教材に有効に利
用できないとすれば,被告ら教材出版社にとって不本意であるばかりでな
く,教師,児童,保護者にとっても極めて不幸なことである。
イ本件国語テストに本件各著作物を掲載することは,原告らの著作物の()
通常の利用を何ら妨げることがない。すなわち,①教科書には本件国語テ
ストに掲載された分量よりも多い分量で本件各著作物が掲載されており,
本件国語テストに接する者は例外なく教科書を手元に持ち,既に教科書に
おいて本件各著作物を熟読玩味していること,②本件国語テストは,まさ
に国語テストを行うために作成・購入・使用されるものであり,詩などご
く短い著作物を除いては,テスト問題作成に必要な範囲で本件各著作物の
一部を掲載しているにすぎず,その掲載部分は教科書自体よりもはるかに
少ないのであり,このような本件国語テストの用途・性質及び著作物の利
用態様に照らせば,本件国語テストが単行本等の代替品になるとは考えら
,,,れないこと③本件国語テストは小学校に直接納入されるものであるが
単行本は一般の書店等で販売されるものであること,これらによれば,本
件国語テストに本件各著作物を掲載することは,単行本の発行等による原
告らの著作物の通常の利用を妨げるものでないことが明らかである。
ウ著作権法36条2項の補償金支払義務を負う者の典型的な例は,受験()
料をとって行う模擬テスト業者であるが,自分で試験を行わなくても,他
人の行う試験の問題を作ることを営業として行えば,同項により,補償金
の支払が必要になる。すなわち,他人の行う模擬テストの試験の問題を作
ることを営業として行うことは著作権者の許諾を得なくともできるが,著
作権法は,その事業者に補償金支払義務を負わせることにより,当該テス
ト問題作成事業者と著作権者との間の利害の調整を図っている。
そして,上述のとおり,①本件国語テストには教科書掲載著作物を利用
せざるを得ず,他に適切な代替手段のないこと,②本件国語テストには教
科書に掲載された多数の著作物を掲載する必要があり,大部分の著作者か
,「」らは同意を得ているが本件国語テストでの著作物利用に著作者の許諾
が必要であるとすると,一部の著作者からその許諾を得られないことによ
り本件国語テストを不本意な形でしか発行できなくなってしまうこと,③
本件国語テストは,小学校の教育現場において極めて有意義なものである
こと,④本件国語テストを発行しなくとも本件各著作物は担任の教師によ
って複製されることになり,複製の総量は異ならないところ,担任の教師
が複製する場合には,原告らは補償金すら得られないこと,⑤本件国語テ
ストに本件各著作物を掲載することは,同著作物の通常の利用を何ら妨げ
ないことを考慮すると,著作権法36条1項及び2項の適用ないし類推適
用により,既に教科書に掲載された本件各著作物を本件国語テストにおい
て試験問題として複製することについては,著作権者の個々の許諾を不要
としつつ,著作者に対する補償金の支払義務を負わせることにより著作者
の経済的利益を確保することが,最も適切な解決方法であり,著作権法1
条の定める目的にも合致するのである。
よって,本件国語テストに著作権法36条の適用を認めることは社会的に
必要かつ合理的であり,そのように同条を解釈すべきである。
〔原告らの主張〕
(1)著作権法36条1項によって,著作権者の許諾を要せずに,問題として
著作物の複製をすることができる「試験又は検定」とは,公正な実施のため
に,試験又は検定の問題として利用する著作物が何であるかということ自体
を秘密にする必要性があり,それゆえに当該著作物の複製について,あらか
じめ著作権者の許諾を受けることが困難であるような試験又は検定をいうも
のであって,そのような困難性のないものについては,複製につき著作権者
の許諾を不要とする根拠を欠き,同条1項にいう「試験又は検定」に当たら
ない。
本件国語テストは,児童の学習の進捗状況に応じた適宜の段階において,
教師が,各児童ごとにその学力の到達度を把握するものとして利用し,本件
国語テストの結果(得点)が,教師の児童に対する評価の参考となり得るも
のである。しかしながら,教科書に掲載されている本件各著作物が本件国語
テストに利用されることは,当然のこととして予測されるものであるから,
本件国語テストについて,いかなる著作物を利用するかということについて
の秘密性は存在せず,そうすると,そのような秘密性のゆえに,著作物の複
製について,あらかじめ著作権者の許諾を受けることが困難であるような事
情が存在するということもできない。
2被告らの主張に対する反論()
被告らは,本件国語テストに著作権法36条1項を適用すべきであると主
張するが,予備校等の行う模擬試験や学校内での中間試験,期末試験等に同
「」,,,条の試験に当たるものがあるとしてもそれは同条の趣旨からすると
前記のような秘密性を有するものに限られるというべきであるから,予備校
等の行う模擬試験や学校内での中間試験,期末試験等に同条の「試験」に当
たるものがあることは,何ら同条を適用する上で,秘密性を有しないと解釈
する根拠とならない。また,本件国語テストの利用は,著作物の通常の利用
と衝突せず,そのような利用を行う教育上の必要が高いとしても,前記の同
条の趣旨からすると,上記のような秘密性を有しないものについて同条の適
用を認めることはできない。
3争点3(著作者人格権侵害)について()
〔原告らの主張〕
1同一性保持権侵害について()
ア被告らは,本件各教科書に掲載された本件各著作物を,平成11年度の
本件国語テストに複製する際に,著作者の意思に反し,別紙6-1ないし
6(変更内容一覧表)記載のとおりに改変し,これにより原告らの同一性
。(,()「」保持権を侵害したなお別紙6-5変更内容一覧表の原告番号
欄21の「甲号証」欄91(以下,変更内容部分の特定については,別紙
6-1ないし6(変更内容一覧表)の「原告番号」欄「甲号証」欄の番,
号に従い「別紙6-5-21-91」などという)については,著作物。
中の「みえた」をブランクに改変している。その改変の態様には,以。。)
下のような類型がある。なお,その余の改変は主張しない。
①原作にある単語文節ないし文章を削除しているもの以下順に類,(,「
型①」などという)。
②原作にない単語,文節ないし文章を加筆しているもの(類型②)
③原作にある単語,文節ないし文章を削除し,その代わりに,原作にな
い単語,文節ないし文章を加筆しているもの(類型③)
④原作の単語を全く別の単語に置き換えているもの(類型④)
⑤原作にはない,非常に雑で漫画のような奇妙な挿絵が付加されている
もの(類型⑤)
⑥原作の単語ないし文章を,空欄に置き換えているもの(類型⑥)
被告らの前記①ないし⑥の無断改変行為により,本件各著作物の持つ,
人物,心情,情景ないし風景等の表現の印象,感覚及び雰囲気等は全く違
,,,,,,ったものになってしまいまた本件各著作物の持つ語感質感体温
リズム及びイメージ等も大きく変わってしまい,本件各著作物は全く別の
ものに改変されている。そもそも,著作行為とは,どのような言葉を用い
るか,どのような表記にするか,1文にするか2文にするか,句点・読点
を打つか打たないか等を含めて,著作者が自らの存在をかけて,すべて自
分の意思で決定するものであり,その決定を一人でするところに著作行為
の特徴がある。どのような文章を作るかは,著作者が一人で決定すること
であり,何人たりともその決定には関与できないものである。著作者は,
絶対的な孤独の中で,心血を注いで,表現を取捨選択する苦痛を乗り越え
て,作品を世に生み出すのである。ところが,被告らは,原告らの意思に
反して,本件各著作物を前記のとおり無断で改変したもので,上記の改変
,()。はすべて原告らの著作者人格権同一性保持権を侵害するものである
また,同じ教科書及び同じ教科書準拠副教材を使用している平成8年度
ないし同10年度においても,同一性保持権侵害を主張するすべての原被
告間で,同一性保持権侵害が存在したことは明らかである。
さらに,被告らは,上記のとおり,平成8年度ないし同11年度におい
て,本件国語テストを製作する際に,いずれの著作者からも同意を得るこ
となく,著作者らの意に反して本件各著作物の改変を行っているものであ
るから,それより前の年度である昭和58年度ないし平成7年度において
も,すべての著作者との関係において著作者らの意に反して改変している
蓋然性が高いものである。
イ被告らの主張に対する反論
被告らは,別紙6-1ないし6(変更内容一覧表)記載の表現の変更が
「改変」に該当するとしても,著作権法20条2項4号により,同一性保
持権侵害にはならないと主張する。
しかしながら,本件国語テストは教科書ではないので,被告らの行為が
同項1号により適法となる余地はないから,被告らの改変が同項4号に定
める「やむを得ないと認められる改変」に該当する余地もないというべき
である。
2氏名表示権侵害について()
ア被告らは,本件各著作物を本件国語テストに複製する際に,著作者らの
(。,,氏名を表示しなかった甲1ないし289ただし亡Uに関する甲25
75及び125は対象としない。。)
平成11年度において,大半の教材において,氏名表示権侵害があるこ
とから,同じ教科書及び同じ教科書準拠副教材を使用している平成8年度
ないし同10年度においても,氏名表示権侵害を主張するすべての原被告
間で,氏名表示権侵害が存在したことは明らかである。
さらに,昭和58年度ないし平成7年度においても,氏名表示権侵害を
主張するすべての原被告間で,氏名表示権侵害が存在したことは明らかで
ある。
イ被告らの主張に対する反論
被告らは,本件国語テストのうち,平成11年度分につき,氏名が表示
されているものがあると主張する。しかし,被告らが氏名を表示したと主
張する甲第49及び94号証においては氏名は表示されていない。また,
被告らが氏名を表示したと主張する甲第45,54,56,64,76,
85,88,261,263及び271号証においては,氏名の表示が小
さすぎ,一般人ではその氏名を認識できないので,氏名を表示していると
はいえない。なお,甲第25,75及び125号証については,著作者は
亡Uであり,平成8年度以降の著作者人格権侵害については,原告Tは何
らの主張をしていない。
〔被告らの主張〕
1同一性保持権侵害について()
ア平成11年度分に関し,別紙6-1ないし6(変更内容一覧表)記載の
表現の変更があったことについては,別紙6-5の次の3箇所を除き,認
める。その余の年度については,否認する。
ア別紙6-5-1-55符号aないしC()
,,。これらはいずれも本件各教科書に記載されたとおりの内容である
イ別紙6-5-21-95()
国語テスト1行目「同じ組」の前に「校門の前」と加筆されている,
のは,本件各教科書の記載のとおりである。
ウ別紙6-5-21-91()
単にブランクを加えたにとどまり,言葉をブランクに置き換えたもの
ではない。
イ被告らは,本件各著作物を掲載するに当たり,掲載部分の前後とのつなが
りを児童が把握しやすいようにするなどの教育上の配慮から,その必要があ
る場合に限り軽微な修正を加えた。
原告らの主張する「改変」の類型は,以下のとおり,いずれも「改変」
には当たらない。
ア単語,文節ないし文章の削除(類型①)について()
テスト問題を作成するにあたり,解答に直接必要な箇所ではなく,かつ
問題用紙の紙面に限度がある場合に,同部分を掲載の対象から外したにす
ぎない。よって,被告らの行為は「削除して改変」する行為ではない。
イ単語,文節ないし文章の加筆(類型②)について()
被告は,掲載部分をテストの解答に直接必要な部分に限定したため,掲
。載部分の中の教科書の掲載外の部分における説明を付記する必要があった
すなわち,付記の目的は,掲載部分中の記載を教科書に即して生徒に思い
起こさせるためにすぎず,被告らの行為は「加筆して改変」する行為では
ない。
ウ単語,文節ないし文章の削除及び加筆(類型③)について()
原告らが指摘する箇所は,被告らが本件国語テストを作成する必要上,
同部分を教科書上の表記に従い掲載したにすぎない。よって,被告らの行
為は「削除及び加筆し,改変」する行為ではない。
エ単語の置き換え(類型④)について()
被告らは,原告らが指摘する箇所について,市販本ではなく教科書の表
。,「」記に従ったにすぎないよって被告らの行為は単語に置き換えて改変
する行為ではない。
オ挿絵の付加(類型⑤)について()
確かに,本件国語テストの中には,市販本にも本件各教科書にも作家の
異なる挿絵がそれぞれ挿入されている。しかし,だからこそ,被告らは,
これらの挿絵の著作権を侵害しないよう留意しつつ,新たな挿絵を付加し
たにすぎない。よって,被告らの行為は「付加して改変」する行為ではな
い。
カ空欄(類型⑥)について()
本件国語テストにおいては設問化し,文章構成の読解力を問う形式を採
用している。原告らが指摘する箇所が空欄になっているのは,テスト問題
の作成上,必要不可欠だからであり,本件各著作物の意味内容を何ら変更
するものではない。
,()ウ原告らが主張する類型以外にも別紙6-1ないし6変更内容一覧表
,,,の変更部分については以下のとおりの類型があるが以下の理由により
いずれも「改変」に当たらない。
(ア)傍線又は波線の付加(類型⑦)
例えば別紙6-5-15-76では上段の教科書からの転載文のあ,,「
っというま」の個所に傍線が引かれている。これは,本件国語テスト
作成者の被告日本標準が,下段の問題文「あっというま』に,みんな『
はどうなっていましたか」が上段のどの部分に関するものかを,解答しよ
うとする生徒に明示するために視覚的な付加を行ったものである。ところ
で,同一性保持権とは,著作物に具現された著作者の「思想・感情の表現
の完全性」を保つためのものであるが,本件各教科書に掲載された本件各
著作物は,原告らの思想・感情を創作的に言語表現するものであって,何
ら創作的な視覚表現を伴うものではない。したがって,被告日本標準が転
,「」載文に視覚的な傍線を付加したことは本件各著作物の言語表現の改変
に該当しない。
この一例からも明らかなように,原告ら主張の「傍線又は波線の付加」
の全事例は「改変」に該当するものではない。仮に,このような類型の行,
為が「改変」に該当するとしても,被告らの行為は,被告らの著作物の評
価教材(国語テスト)としての性質,並びに問題文が上段の教科書からの
転載文のどの部分に関するものかを明らかにするという利用の目的及び態
様に照らし,やむを得ないと認められるから,原告らの同一性保持権を侵
害するものではない。
イその他(類型⑧)()
a別紙6-1-21-40の「符号」欄aの事例では,上段の教科書か
らの転載文の「いいもの見つけた」中の「いいもの」が太字となってい
るこれは本件国語テスト作成者の被告青葉出版が下段の問題文つ。,,「
ぎのとき,タンゴは,ふろしきをどのようにつかいましたか・いいも。『
の』を見つけたとき」が転載文のどの部分に関するものかを,解答しよ
うとする生徒に明示するために視覚的な付加を行ったものである。
したがって,上記アと同様の理由により,原告ら主張の「普通の字()
体から太字への変更」の全事例は「改変」に該当するものではなく,仮,
に「改変」に該当するとしても,原告らの同一性保持権を侵害するもの,
ではない。
B例えば,別紙6-2-11-160の事例では,上段の教科書からの
転載文に①ないし③の番号が付加されている。これは,本件国語テスト
作成者の被告教育同人社が,下段の問題文が上段のどのまとまりに関す
るものかを,解答しようとする生徒に明示するために付加したものであ
る。①ないし③の番号自体は言語の一種であるとしても,上段の文章が
3段落に分かれていることを示すために用いられているにすぎず,上述
の視覚的な傍線の付加と異なるものではなく,また,その付加によって
原告らの言語表現が改変されるものではない。
したがって原告ら主張の段落の上部に番号を付加の全事例は改,「」,「
変」に該当するものではなく,仮に「改変」に該当するとしても,原告,
らの同一性保持権を侵害するものではない。
C別紙6-2-21-178の事例は,原告らが主張するように,1枚
のテストの上段部分に,原告らの著作物が掲載されているという形態の
ものではなく,教科書掲載文の一部を複数の「ひらがな」として取り出
して,その書き順などを練習させようとするものである。すなわち,こ
こでは,原告らが同一性保持権侵害の前提とする転載文が存在しないか
ら,原告らの主張はその前提を欠き,失当である。仮に,被告教育同人
社が原告BBの著作物の一部を本件国語テスト中に転載したものである
としても,同被告は「四角いマス」という視覚的要素を付加したものに,
,。,すぎずこれによって同原告の言語表現は何ら改変されていない仮に
「改変」に該当するとしても,上述と同様に,同原告の同一性保持権を
侵害するものではない。
d別紙6-4-21-135の事例では,被告新学社が「始筆点。ここ,
から書き始めましょう」との文章を原告BBの著作物と一体化させる目。
的で付加したのではなく「注意書」として著作物外に表示したものであ,
ることは一目瞭然であり,これによって同原告の言語表現は何ら改変さ
れていない。仮に「改変」に該当するとしても,上述と同様に,同原告,
の同一性保持権を侵害するものではない。
エ仮に,上記表現の変更が「改変」に該当するとしても,これらの「改変」
は,評価教材としての本件国語テストの性質並びにその利用の目的及び態様
に照らしやむを得ないと認められる改変であり,著作権法20条2項4号に
より,原告らの同一性保持権を侵害するものではない。
2氏名表示権侵害について()
,,,,,ア本件国語テストのうち平成11年度分につき甲第254549
54,56,64,75,76,85,88,94,125,261,26
3及び271号証の各1以外の国語テストに著作者の氏名が表示されていな
いことは認める。上記年度以外については,争う。
イ氏名表示権について,著作者名の表示は,著作物の利用の目的及び態様に
照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認
められるときは,公正な慣行に反しない限り,省略することができるところ
(著作権法19条3項,本件国語テストは教科書に準拠したものであり,こ)
れに接する者は必ず準拠対象教科書に掲載されている本件各著作物を既に熟
読している者に限られ,しかも教科書には著作者の氏名の表示があることか
ら,本件国語テストにおいて重ねて著作者の氏名を掲載しない場合があった
としても,著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれは全く
ない。したがって,本件国語テストにおいて原告らの氏名を表示しない場合
があったとしても,氏名表示権の侵害とはならない。
4争点(4)(故意又は過失の有無)について
〔原告らの主張〕
被告らは,少なくとも30年間にわたり,小学生の国語教科書に掲載された
著作物を,著作権者の許諾を得ることなく,教科書準拠副教材に掲載し続け,
,,,原告らの複製権同一性保持権及び氏名表示権を侵害したのであり被告らに
上記不法行為について故意又は少なくとも過失が存在することは明らかであ
る。
〔被告らの主張〕
否認ないし争う。
,,。被告らに複製権同一性保持権及び氏名表示権侵害はなく故意・過失もない
5争点(5)ア(損害を知りたる時)について
〔被告らの主張〕
1原告らは,遅くとも本件訴訟提起の3年前である平成12年12月25()
日よりも前に,既に損害及び加害者を知っていたから,原告らの被告らに対
する損害賠償請求権について民法724条所定の消滅時効が完成している。
すなわち,民法724条の「損害及び加害者を知りたる時」とは,被害者
において,加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な
程度にこれらを知った時を意味し,また「損害」を知るとは,損害発生の,
事実を知ることであるところ,本件においては,後記2に具体的に示すと()
おり,原告らはいずれも,遅くとも平成12年12月25日よりも前に,原
告らの本件各著作物が教科書に掲載されたこと及び被告らが本件各著作物を
利用して教科書に準拠した本件国語テストを過去20年にわたり発行してき
たことを知っており,原告らが本件において不法行為及び損害発生の事実と
して主張しているのと同じ事由を同程度に特定して訴訟を提起するなどによ
り,被告らに対する賠償請求をすることができたから,既にその時点で,原
告らは被告らに対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度
に損害発生の事実及び加害者を知っていたということができる。
したがって,本件では,訴訟提起前に,原告らが本件訴訟において主張す
る不法行為の損害賠償及び加害者を知ってから,既に3年が経過した。
よって,被告らは,民法724条所定の消滅時効を援用する。
2消滅時効完成の具体的な事情()
アア被告ら及び被告らの加盟する社団法人日本図書教材協会(以下「日図()
協」という)は,教科書掲載著作物を本件国語テスト等の教材に利用して。
いることについて,教科書掲載著作物の著作者との話合いを開始すべく,
平成10年8月,社団法人日本児童文学者協会(以下「日本児童文学者協
会」という)に対し,同年9月,社団法人日本児童文藝家協会(以下「日。
本児童文藝家協会」という)に協議の申入れを行った。その結果,平成1。
1年1月に,上記両協会に,そのいずれにも属さない著作者有志29名を
加えて「小学校国語教科書著作者の会(以下,単に「著作者の会」と,」
いう)が発足し,この会によって,本件国語テスト等の教材への教科書。
掲載著作物の利用に関する被告らとの交渉が進められた。
著作者の会と被告らとの間で,平成11年9月30日に「小学校国語教
科書準拠教材における作品使用についての協定書(乙22の1。以下「本」
件協定」という)及び「小学校国語教科書著作者の会と(社)日本図書教。
材協会との協定を結ぶに当たっての確認書(乙22の2)が締結された。」
これらに基づき,被告らは,将来の著作物利用について教材採択価格の5
%の使用料を各著作者に支払い,また,2年分(平成10年度及び同11
年度)を各著作者に支払うこととされた。
イ平成11年10月,著作者の会は,平成8年度版及び同12年度版()
の教科書に著作物が掲載されている全著作者及び相続人(原告を除Z
く原告全員を含む)に対し,本件国語テストが長年にわたって被告ら。
によって発行されてきたこと,それらには教科書掲載著作物が利用され
てきたこと,被告ら側からの申入れにより話合いが行われて協議の成立
に至ったことなどを本件国語テストの実例を添付して知らせる内容の書
面を送付した。また,同年11月,著作者の会は「著作者の会通信,
第5号99.11」を発行して,原告らに送付し,本件協定の運用等
に関する補足説明を行った。
ウ日図協は,平成11年10月22日付けで,平成8年度版及び同1()
Z2年度版の教科書に著作物が掲載されている著作者及び相続人(原告
及び同を除く原告全員)に対して「小学校国語教科書準拠教材にX,『
おける作品使用についての協定』締結のご報告と運用へのご協力のお願
いについて」と題する文書(乙5)を送付した。この文書は,教科書準
拠の国語テストが全国で広く活用されてきたこと,昭和40年の裁判等
の結果により従来は教科書会社に謝金を支払ってきたこと,しかし,昨
今の著作権に関する考え方からすれば掲載著作物の著作者に対する配慮
が足りなかったことを,従前より本件国語テストを発行していた被告ら
の会社名を具体的に列記して原告らに通知したものである。
イ使用許諾申請文書等の送付
ア被告らと他1社は,平成11年11月2日又は同月19日付けで,()
連名で,原告ら(原告O,同,同を除く)に対し,本件各著作物XZ。
の本件国語テストにおける使用の許諾を申請する文書(乙6。以下「本
件許諾申請文書」という)を送付した。。
上記文書は,原告らに対して,将来における著作物使用の許諾を依頼
するとともに,平成10年度及び同11年度分の使用料を,被告ら各社
ごとに具体的な金額を特定して支払う旨通知するものであり,上記文書
には,被告ら各社宛の「著作物使用許諾書」用紙と返信用封筒が同封さ
れ,許諾書への押印と使用料振込先の銀行口座の指定を原告らに依頼す
るものであった。
,,,,,,,,()()イ上記アに対し亡C原告D同F同G亡I原告J同L
同P,同Y,同BB,同CC及び同DDは,平成11年11月から同年
12月にかけて,本件許諾申請文書に添付された「著作物使用許諾書」
に押印し,使用料払込口座を指定して,被告らに送付した。
ウまた原告Wについては同原告の著作権は株式会社福音館書店た(),,(
だし,当時は有限会社)が原告Wから委託を受けて管理している旨の連
絡があったので,同社を経由して,原告W個人の振込先銀行口座の指定
がされた。
エ原告Eについては,平成12年2月ころ,被告らに「著作物使用許()
諾書」の用紙が返送されてきたが,そこには「許可致しかねます」な,
どと記載されていた。
,,,,,,また亡I原告N同Q同T及び同Vから使用許諾については
日本ビジュアル著作権協会(以下「JVCA」という)に一任してい。
,,る旨の回答があったことから同原告らが本件許諾申請文書を受け取り
実際に読んでいることは明らかである。
なお,亡Iからは,平成12年2月8日付けで,被告らを含む教材出
版会社に対して,教材への著作物使用を許諾する旨の「著作物使用許諾
書」が届けられた。
オ原告Oについては,被告らが,別途,平成10年度分及び同11年()
度分の使用料を,その具体的金額を特定して支払う旨を通知していたと
ころ,被告らに対して,その使用料相当額の振込先銀行口座を指定する
文書の交付があった。
被告らと他1社は,原告に対し,平成11年11月19日,連名()カX
で,本件許諾申請文書とは異なる別の文書を送付した。
これに対し,原告は,平成12年2月20日,被告らに対し,JX
VCAに管理委託をしている旨の回答をした。
ウ別件訴訟の提起とその報道
アEE(以下「EE」という)ほか8名から管理委託を受けたと称()。
するJVCAが,平成11年3月9日,被告らを相手として,教科書掲
載著作物を国語テストに利用してきたことが著作権侵害に当たるとし
て,東京地方裁判所に出版差止めの仮処分命令(以下「別件仮処分」と
いう)を申し立て,同月18日,その本案訴訟(以下「別件訴訟1」。
という)を提起したが,この事件は,NHKニュースや全国紙各紙に。
より一斉に報道された。
イ亡Kは「ピーターのいす(本件著作物8)の翻訳者であるが,同(),」
著作物の原著作権者エズラ・ジャック・キーツ財団法人(以下「エズラ
財団」という)は,平成11年3月4日,JVCAの後方支援を受け。
て,別件訴訟1と並行して,被告らに対し,上記著作物の国語テストへ
の無断複製を理由に損害賠償請求訴訟を提起した。その際,亡Kは,J
VCAの会長であるFF(以下「FF」という)から同著作物が「本。
件国語テストに掲載されていること」の報告を受けていた。
,,,()ウその後EEほか8名が直接原告となって平成11年6月24日
被告らに対し,別件訴訟1と同内容の本案訴訟(以下「別件訴訟2」と
いう)を提起し,同月25日,同内容の仮処分命令を申し立てた。同。
申立てに関し東京地方裁判所は申立てを却下したものの,平成12年9
月11日,東京高等裁判所は,第1審の却下決定を取り消して,国語テ
ストの発行を差し止める決定をした。この決定は,翌日の全国紙各紙に
おいて大々的に報道された。このように,本件訴訟と同じ内容の訴訟が
提起され,また,仮処分命令申立てが,国語教科書に自己の著作物が掲
載されている他の著作者によって行われ,その事実が大々的に報道され
たのであるから,平成11年3月ころには,教科書に自己の著作物が掲
載されている著作者にとって大きな関心事になっていた。
()Xエ平成12年8月15日,原告A,亡I,原告N,同T,同V,同
及び同AAの7名が,教科書に掲載された著作物を利用して,書店販売
用・塾用の国語教材を発行していた被告ら以外の3社を被告として,出
版差止め等の本案訴訟を提起した(以下「別件訴訟3」という。こ。)
の訴訟は,EEらが提起した別件訴訟2との連携の下で,EEらにおい
ては学校で採択される国語テストを対象とし,原告Aらの別件訴訟3に
おいては,書店販売用及び塾用の国語教材を対象とするという,いわば
役割分担の下で提起されたものである。したがって,遅くともこの訴訟
提起時には,上記7名の原告は,自らの著作物が被告らの発行する国語
テストに長年にわたり,利用されてきたことを熟知していた。
エア原告A,亡I,原告N,同T,同V,同及び同AAの7名は,平()X
成12年9月,EE等の著作者と連名で,国語教科書に著作物が掲載さ
れている他の作家に対して,訴訟の経過の報告と安易な妥協を戒める内
容の文書(乙18)を送付した。
また,上記原告ら7名は,平成12年12月12日,全国都道府県教
育委員会等宛に,訴訟,仮処分事件の経過と上記原告ら7名が被告らに
,(),対して著作物の使用許諾を出していない旨の文書乙19を送付し
被告ら各社の具体的な社名を特定した上で,被告らが国語テストに教科
書に掲載された著作物を無許諾で利用してきたことの不当性を呼びかけ
たものである。そのような呼びかけを自ら行っている当の本人たる上記
原告7名が,本件訴訟において主張する不法行為の損害及び加害者を知
っていたことは明らかである。
イ原告A,同E,亡I,原告N,同T,同V,同及び同AAの8名()X
は,遅くとも平成10年度中に,FFから,それぞれ,同協会の会員で
被告らに著作権を侵害されている疑いのある作家として,著作物を特定
()。した上で調査を行っている旨の報告を受けていた乙2の2ないし4
ウ以上の事実により,JVCAの会員であることが明らかな原告A外()
7名はもとより,JVCAと何らかの連携関係にあるその余の原告15
名が,被告らに対する損害賠償請求が事実上可能な状況の下において,
その可能な程度にこれらを知った時とは,JVCAが後方支援役として
調査活動を開始し,これを会員に報告した平成10年中,遅くともJV
CAの調査結果に基づいて別件訴訟2が提起された平成11年6月であ
る。
オその他,上記アないしエの諸事情を総合すれば,本件訴訟の提起前に,
原告らが本件訴訟において主張する不法行為の損害賠償及び加害者を知っ
てから3年間が経過していることは明らかである。
3原告らの主張に対する反論()
ア本件では,当事者及び本件各著作物さえ特定できれば,あとは本件各著
作物と本件国語テストとの基本関係,本件国語テストの形態,本件各著作
物の利用形態等の公知化した一般的知識によって最小限の請求原因による
訴状を作成し,訴訟を提起することが可能なのであり,現に,原告らも,
このような手法によって単純かつ概括的な請求原因事実により本件訴訟を
提起したものである。本件においては,原告らは,その特定の著作物が教
科書に掲載されたこと自体は当然に知っているから,原告らにとって,被
告らに対する損害賠償請求が事実上可能な状況の下において,その可能な
程度にこれらを知った時とは,本件各著作物と本件国語テストとの基本的
な関係,本件国語テストの形態及び本件各著作物の利用形態等に関する一
般的事実を知った時にほかならない。したがって,被告らにおいて,本件
各教科書に掲載された本件各著作物のうちどれを,本件国語テストにどの
程度複製し,同国語テストがどの程度製作販売されているかなどの事実を
原告らが知らなければ,本件訴訟が提起できないかのような原告らの主張
は,本件訴訟の請求原因事実との関係において,失当である。
イ原告らの主張する不法行為は,被告らが教科書に準拠した国語テストを
製作発行するという,平穏・公然かつ安定的に行われてきた継続的事業で
あり,それによって製作された国語テストは,全国の小学校で継続的に利
用されてきた。本件国語テストの発行は,決して単年度の事業の繰り返し
ではなく,安定かつ継続した事業として,一連のものとして長期間にわた
り行われてきたものである。したがって,このような一連の行為の中での
,,教科書に掲載された著作物の利用が仮に著作権侵害に該当するとしても
その利用行為を原告らの主張するような「4452個」に分断して観察す
ることは,社会的実体に合致しないものであって,失当である。
〔原告らの主張〕
1本件において,民法724条所定の消滅時効期間はいまだ経過していな()
い。その理由は次のとおりである。
ア本件において,原告らが,被告らに対する損害賠償請求が事実上可能な
状況下にその可能な程度に損害及び加害者を知ったというためには本,,「
件各教科書に掲載された本件各著作物のすべてが被告らの本件国語テスト
に掲載されていること」を認識する必要がある。その認識がなければ,前
記主張に基づき,損害賠償を請求するのは不可能である。すなわち,本件
,,において原告らが被告らに対して損害賠償請求訴訟を提起するためには
以下の①ないし⑨を認識する必要がある。
①本件各著作物のどの部分が,本件各教科書の各年度(昭和58年度な
いし平成11年度,各学年版(小学1年生から6年生まで)のどこに)
引用されたか
②各年度における各学年版の本件各教科書の発行部数
③被告らの存在及び名称
④被告らが,各年度における各学年版の本件各教科書に掲載された本件
各著作物のうち,どの著作物を複製して,教科書準拠副教材を作成して
いるか
⑤被告らが,各年度における各学年版の本件各教科書に掲載された本件
各著作物の一部のうち,どの部分を複製して,本件国語テストを作成し
ているか
⑥被告らの作成する本件国語テストが有料であること
⑦被告らの作成する本件国語テストの価額
⑧被告らの作成する本件国語テストの枚数,形式等の概要
⑨被告らの作成する本件国語テストの発行部数
イ本件においては,被告らの原告らに対する不法行為は,原告ら各人の著
作物ごと,使用された年度ごと,さらに,被告ごとにそれぞれ別個の不法
行為を形成する。したがって,昭和58年度から平成11年度までの不法
行為は,それぞれ,次のようになる。
ア原告Aについては,被告ら6社合計で864個()
イ原告Bについては,被告ら6社合計で270個()
ウ原告Dについて,被告ら6社合計で48個()
エ原告Eについて,被告ら6社合計で24個()
オ原告Fについて,被告ら6社合計で48個()
カ原告Gについて,被告ら6社合計で24個()
キ原告Hについて,被告ら6社合計で570個()
ク原告Jについて,被告ら6社合計で144個()
ケ原告Lについて,被告ら6社合計で102個()
コ原告Nについて,被告ら6社合計で24個()
サ原告Oについて,被告ら6社合計で150個()
シ原告Pについて,被告ら6社合計で66個()
ス原告Qについて,被告ら6社合計で156個()
セ原告Tについて,被告ら6社合計で360個()
ソ原告Vについて,被告ら6社合計で162個()
タ原告Wについて,被告ら6社合計で102個()
チ原告について,被告ら6社合計で666個()X
ツ原告Yについて,被告ら6社合計で84個()
テ原告について,被告ら6社合計で42個()Z
ト原告AAについて,被告ら6社合計で216個()
ナ原告BBについて,被告ら6社合計で168個()
ニ原告CCについて,被告ら6社合計で138個()
ヌ原告DDについて,被告ら6社合計で24個()
以上,本件では,複製権侵害として合計4452個の不法行為がある。
また,著作者人格権についても,同様の計算方法により,原告Q分,原
告Tにつき亡Uの死後の分を除いた原告22名について,4200個の著
作者人格権侵害がある。
したがって,本件においては,被告らの4452個の別個の著作権侵害
の不法行為及び4200個の別個の著作者人格権侵害の不法行為につい
て,そのそれぞれについて,各原告が上記①ないし⑨のすべての事実を現
。実に認識した時が,各不法行為の消滅時効の起算点というべきである
ウ本件では,教科書に準拠した副教材である本件国語テストは,小学校で
販売されるのみであり,一般の書店では販売されるものではなく,一般人
が入手することは極めて困難なものである。したがって,原告らが上記①
。,ないし⑨の事実のすべてを認識する可能性は存在しなかった以上により
原告らが,上記①ないし⑨の事実のすべてを認識して損害が発生したこと
,,を現実に認識し被告らに対する損害賠償請求が事実上可能な状況の下に
その可能な程度に,本件著作権侵害行為の損害及び加害者を知ったのは,
本件訴訟の訴訟委任状を作成した時,すなわち平成15年10月以降のこ
とである。また,被告らが本件各教科書に準拠した本件各著作物すべてを
本件国語テストに掲載したことを原告らが認識したのは,その旨を被告ら
が認めた準備書面が提出された平成16年6月10日のことである。そし
て,被告らが本件国語テストを何部製作し,販売したかはいまだ不明であ
,。,り原告らはその損害についての認識をいまだ有していないしたがって
原告らは,平成15年10月より前には,被告らに対する損害賠償請求が
事実上可能な状況の下に,その可能な程度に,著作権等の侵害行為の損害
及び加害者を知ることはなかった。
2被告らの主張に対する反論()
ア前記〔被告らの主張〕2アについて()
著作者の会による乙第3号証及び著作者の会通信(乙4)並びに日図協
の乙第5号証の送付は,被告らの4452個の著作権侵害及び4200個
の著作者人格権侵害の各不法行為について,具体的に明らかにしたもので
はなく,原告らは,上記各不法行為について,現実の認識を有することは
なかった。
イ前記〔被告らの主張〕2イについて()
ア本件許諾申請文書(乙6の1及び2)の送付は,被告らの4452()
個の著作権侵害及び4200個の著作者人格権侵害の各不法行為につい
て,平成9年度(平成9年4月1日から平成10年3月31日)までの
ものについて,具体的に明らかにしたものではなく,原告らは,昭和5
8年度から平成9年度までの各不法行為について,現実の認識を有して
いなかった。また,以下のとおり,平成10年度及び同11年度の著作
者人格権侵害の各不法行為については,本件許諾申請文書にはその明確
な記載はないのであるから,原告らは現実の認識を有することはなかっ
た。
少なくとも,原告A及び同AAは,同文書を受け取ったことも読んだ
記憶もない。
イ原告B,同D,同F,同G,亡K,亡M,原告P,同Y,同BB,()
同CC及び同DDは,本件許諾申請文書を受け取って,中身をよく読ま
ずに,著作権使用許諾書なる書面に必要事項を記載して郵送したにすぎ
ない(乙7の1ないし11。また,平成10年度及び同11年度の著)
作者人格権侵害の各不法行為については,本件許諾申請文書にはその明
確な記載はないから,原告らは現実の認識を有することはなかった。
ウ原告Wも,本件許諾申請文書を受領した記憶がない。原告Wは,福()
音館書店の確認書及び使用料振込先(乙9の1及び2)の作成に関与し
ておらず,その存在を知らなかった。
エ原告E,同N,同,同及び同Vは,本件許諾申請文書を受け取()QT
ったものの,中身を読まずに,JVCAに郵送した(乙10ないし11
の5。)
オ原告Oは,本件許諾申請文書を受け取ったものの,中身をよく読ま()
ずに,自らの振込先を指定して郵送した。したがって,平成10年度及
び同11年度の各不法行為については,同原告は現実に認識していなか
った。
カ原告は,本件許諾申請文書を受け取ったものの,中身をよく読ま()X
ずに,JVCAが用意した書面を郵送した(乙13。)
ウ前記〔被告らの主張〕2ウについて()
ア別件訴訟1に関する平成11年3月以降の一連の報道(乙14ない()
し17の3)は,被告らの4452個の著作権侵害及び4200個の著
作者人格権侵害の各不法行為について,具体的に明らかにしたものでは
なく,原告らは,上記各不法行為について,現実の認識を有することは
なかった。
イ原告Jが,平成11年ころまでには,FFから本件国語テストに掲()
載されていることの報告を受けていたことはない。
ウ別件訴訟3は,本件とは被告を異にする損害賠償請求訴訟であり,()
,,しかも同訴訟における被告らの副教材は書籍形式で市販されておらず
その不法行為の態様は全く異なるものであった。したがって,別件行為
についての不法行為を認識することが,本件訴訟の不法行為を認識する
,,ことにはならないから原告らが本件で主張している不法行為について
現実の認識を有することはなかった。
エ前記〔被告らの主張〕2エについて()
原告ら7名が送付した乙第18号証は,被告らの4452個の著作権侵
害及び4200個の著作者人格権侵害の各不法行為について,具体的に明
らかにしたものではなく,原告らは,上記各不法行為について,現実の認
識を有することはなかった。また,教育委員会宛の乙第19号証も,被告
らの4452個の著作権侵害及び4200個の著作者人格権侵害の各不法
行為について,具体的に明らかにしたものではなく,原告らは,本件各不
法行為について,現実の認識を有することはなかった。
また,氏名表示権については,甲第1号証ないし289号証(枝番を含
む)を見たことがない本件著作権者らは,被告らによる,氏名表示権侵。
害の事実を知らなかったのであり,被告らに対する損害賠償請求権につい
て,消滅時効が成立していないことは明らかである。
6争点5イ(時効中断・時効援用権の喪失の成否)について()
〔原告らの主張〕
仮に,原告らの被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求権につき時効
期間が経過しているとしても,次のとおり,被告らは,原告らの一部に対する
請求権につき,債務の承認により消滅時効が中断しているか,若しくは時効援
用権を喪失している。
1原告ら7名に対する時効中断()
ア債務の承認その1
,,,,,,,被告らは平成13年5月30日原告A亡I原告N同同VT
同及び同AAの7名を相手方として,文化庁長官に対して,著作権紛X
争解決あっせんの申請をした(甲290の1ないし7。被告らは,上記)
あっせん申請書において,上記相手方の原告ら7名に対して,同原告らの
著作物を無断で複製したことについて,損害賠償義務を負うことを認めて
いた。そして,同申請書は,平成13年6月7日ころ,同原告らに到達し
た。
以上のように,被告らは,上記原告ら7名に対して,債務の承認をして
いたから,上記原告ら7名の被告らに対する損害賠償請求権について,消
滅時効は中断している。
イ債務の承認その2
被告らの代理人は,平成13年8月31日付け回答書(甲291の1及
び2)において,上記あっせんの相手方である原告ら7名の代理人に対し
て,同原告らの著作物を無断で複製したことについて,損害賠償義務を負
うことを認めており,同回答書は,平成13年8月31日ころ,上記原告
ら7名の代理人に到達した。
以上のように,被告らは,上記原告ら7名に対して,債務の承認をした
から,上記原告ら7名の被告らに対する損害賠償請求権について,消滅時
効は中断している。
ウ時効援用権の喪失
被告らの代理人は,平成13年12月26日付け回答書(甲292の1
),,及び2において上記あっせんの相手方の原告ら7名の代理人に対して
「消滅時効・除斥期間の問題は,本和解協議の中で柔軟に対応したいと考
」,,,。えていると述べ同回答書は同日ころ上記7名の代理人に到達した
したがって,被告らは,上記原告ら7名及びその相続人に対して,消滅時
効の援用権を信義則上喪失している。
2原告ら10名に対する時効中断(債務の承認その3)()
被告らは,平成14年8月28日,原告Q,亡K,原告O,同P,同W,
,,,,,同Y同同BB同CC及び同DDの10名に対して日図協を通じてZ
「」教科書掲載御作品の教材への使用に関する過去分補償のお支払いについて
なる文書(甲293の1ないし10)を送付した。同文書には,被告らが,
本件各教科書に掲載された上記原告Qら10名の著作物を無断で複製したこ
とについて,補償額が明示されており,教科書掲載の教材への使用に関する
過去分補償の支払がされる旨が明示されている。すなわち,被告らは,同文
書において,上記原告ら10名に対して,同人らの著作物を無断で複製した
,,,,ことについて損害賠償義務を負うことを認めており同文書はそのころ
上記原告ら10名に到達した。
以上のように,被告らは,上記原告ら10名に対して,債務の承認をして
いたから,上記原告ら10名の被告らに対する損害賠償請求権について,消
滅時効は中断している。
〔被告らの主張〕
1時機に後れた攻撃防御方法()
本件においては,裁判所から,原被告双方に消滅時効に関する主張を出し尽
くしてもらった上で,裁判所として消滅時効の論点について判断したいとの訴
訟指揮があり,このような裁判所の意向に従って,双方が平成17年2月まで
に消滅時効についての主張をひととおり行った。そして,その後の弁論準備期
日は消滅時効についてのこれまでの双方の主張を踏まえた上で,裁判所から原
告らに対して不当利得の主張について補充するよう指示があり,原告らの不当
利得の主張に関する準備書面は同年5月10日までに提出されることとされ,
その後,被告らがこれに対する反論を準備する予定であった。しかしながら,
同年5月10日に原告らが提出したのは,上記〔原告らの主張〕に記載の債務
の承認及び時効援用権の喪失を含む消滅時効に関する主張を新たに追加した原
告準備書面7であった。したがって,上記原告らの主張は時機に後れた攻撃防()
御方法というべきものである。
2前記〔原告らの主張〕1ア(債務の承認その1)について()()
被告らがしたあっせんの申請は,債務の承認ではない。著作権紛争解決あっ
せんは,著作権法105条以下の規定に基づく文化庁の著作権紛争解決あっせ
ん委員による手続であるが,それよりも厳格な司法上の手続である民事調停に
ついては,債務者が債務額を確定するために調停を申し立てることは,その調
,,。停が不調に終わった場合には判例上債務の承認に当たらないとされている
したがって,調停とあっせんの違いはあるが,本件のように,被告らがあっせ
んを申請したにもかかわらず,相手方である原告ら7名があっせんの申請を全
く無視してこれに応じなかったため,結果的にあっせん手続が開始されず,ま
た,被告らと上記原告ら7名との間での主張が合わず,被告らから一切の支払
がされていなかったという場合においては,債務の承認があったと認められる
ことはあり得ない。さらに,調停が司法上の手続であるのに対し,著作権紛争
解決あっせんは文化庁による行政上の手続であるが,かかる行政上の手続に関
しては,特に時効についての規定が設けられていない限り,当該行政上の手続
を採ることが,時効の中断等に及ぼす影響は基本的にない。したがって,上記
あっせんの申請が債務の承認として時効中断事由になることはない。
また,あっせん手続の構造から,あっせん申請書における意思表示が債務の
承認に当たらないことは明らかである。著作権紛争解決あっせんをはじめとす
るあっせん手続は,当事者間の紛争につき,あっせん委員が当事者の間に立っ
。,て双方の主張を確かめて紛争解決のための仲介役を務めるものであるそして
そのあっせんの申請は紛争の概要をあっせん委員に対して知らせてその解決の
仲介を求めるものであるから,このような申請があったことが結果的に相手方
に通知されるとしても,これは相手方に対する意思表示ではなく,あっせん委
員に対する意思表示である。したがって,被告らのあっせんの申請も文化庁長
官に対する意思表示であって,相手方である原告ら7名に対する意思表示では
ない。
3前記〔原告らの主張〕1イ(債務の承認その2)について()()
,被告らの代理人が原告Aら7名の代理人に対して送付した回答書においては
被告らが,紛争の解決のために誠実に話し合いたい旨述べているにすぎず,債
務を承認しているものではない。また,同回答書を送ったのみで結局何らの合
意や支払に至ったわけではない本件において,債務の承認があったとは認めら
れない。
4前記〔原告らの主張〕1ウ(時効援用権の喪失)について()()
被告らの代理人が原告Aら7名の代理人に対して送付した回答書において,
「,」被告らが消滅時効・除斥期間の問題は本和解協議の中で柔軟に対応したい
と述べたのは,上記原告ら7名が被告らが消滅時効・除斥期間の援用をあらか
じめ放棄することが協議の前提条件であると主張したのに対し,その問題は協
議の前提条件ではなく協議すべき事項の1つであると回答したにすぎない。ま
た「柔軟に対応したい」というのは,消滅時効や除斥期間の援用を放棄すると,
いうことではなく,むしろ逆に消滅時効や除斥期間の主張についての権利は留
保しつつ,協議の進展によって事案の望ましい解決が期待できる場合には,全
面的な援用を控えることもあり得ると述べているにすぎない。上記回答書にお
けるこのような記載により消滅時効の援用権が信義則上失われるようなことは
あり得ない。
5前記〔原告らの主張〕2(債務の承認その3)について()()
日図協が平成14年8月付けで原告Qら10名に対し送付した文書は,日図
協から送付された文書であって,被告ら自身の意思表示ではない。また,仮に
同文書が被告らからの支払の申出であると解釈されるとしても,このような申
出は,上記原告ら10名と被告らとの間における被告らによる同原告らの著作
物の国語テスト等への掲載をめぐる紛争において,国語テスト等への掲載につ
いての将来の許諾を望む被告らが,上記原告ら10名との紛争を円満に解決す
るために申し出たものであって,同原告らと被告らとの間における交渉は,結
局,お互いの主張が合わず,被告らから上記原告ら10名に対しては一切の支
払がされていないことにかんがみれば,本件訴訟において原告らが主張する損
害賠償債務について被告らの承認があったとはいえない。
仮に,債務の承認があったと解釈されるとしても,それは上記文書において
支払う旨の記載があった額の限度で承認したものであって,同文書に記載され
た額以上の金額を支払う必要がないと考えている旨が明示されているものであ
る。したがって,もし,仮に同文書によって,被告らが,上記原告ら10名に
対する損害賠償債務を承認したものであるとしても,当該承認は,同文書に記
載された金額の限度でされたものであって,当該各金額を超える金額について
は時効中断しておらず,消滅時効が完成しているものである。
7争点(6)(権利濫用の成否)について
〔被告らの主張〕
被告らは,日本児童文藝家協会等の著作者団体と話合いを行い,本件国語テス
トにおける教科書掲載著作物の将来の利用許諾及び過去の使用料の支払について
合意し,原告らにもその合意内容とかけ離れない範囲での円満な合意を成立させ
るための協議を再三にわたり申し入れてきた。しかし,原告らは,将来の許諾と
いう被告らにとって緊急かつ切実な問題について具体的な提案をせず,原告ら代
理人弁護士を通じて,原告らが著作権管理を委託したというJVCAに被告ら教
材出版者側の立場を兼ねさせ,被告らに対し,被告らから権利処理を請け負うと
いう利益相反的な提案をして,被告らの「年間総売上額」の一部を支払うよう要
求するなどした。このような経緯に照らすと,原告らの本件請求は,教科書準拠
図書教材の特殊性から原告らの著作物を使用することが必要不可欠であるという
被告らの状況(窮状)に乗じて,JVCAの期待どおり,通常では考えられない
利益を実現しようとするものにほかならず,権利濫用となるものである。
〔原告らの主張〕
原告らの本件請求は,原告らが提起しているものであり,JVCAによって
円満な業界秩序を妨げる目的で提起されたものではないし,本件各著作物を使
用することが必要不可欠であるという被告らの状況に乗じて,JVCAの期待
どおり,通常では考えられない利益を実現しようとするものではない。本件請
求は,被告らに著作権等を侵害された著作権者らである原告らが,被告らに対
し,損害賠償請求をしているだけのことである。よって,原告らの本件請求は
権利濫用に当たらない。
8争点(7)(損害の発生及びその額)について
〔原告らの主張〕
1複製権侵害()
被告らの複製権侵害による原告らの損害は下記の計算式により算出され
る。
複製権侵害による損害=販売価格×印刷部数×使用料率×使用率
ア販売価格
販売価格とは被告らの本件国語テストの各小学校に対する販売価格消,(
費税込み)である。販売価格については,被告ら各社とも,1学期分の1
セットで,昭和58年度及び同59年度は160円,昭和60年度及び同
61年度は170円,昭和62年度及び同63年度は180円,消費税が
導入された平成元年度は200円(消費税込み。以下同じ)であった。。
その後は,原則として,平成2年度は200円,平成3年度は220円,
平成4年度は240円,平成5年度,同6年度及び同7年度は250円,
平成8年度は260円,平成9年度,同10年度及び同11年度は270
円であった(ただし,例外的にこれらの原則的な価格とは異なる価格で販
売された本件国語テストが存在する。。)
販売価格については,消費税を含めた金額を,損害額算定の基礎として
使用すべきである。
本件各著作物に対応した販売価格は,別紙5-1及び2(年度別部数等
一覧表)の「学校納入定価」欄記載のとおりである。
イ印刷部数
印刷部数とは,被告らが本件国語テストを印刷した部数である。被告ら
は,本件国語テストについて,平成2年度から同11年度までの採択部数
,,,を開示し印刷部数を開示していないが印刷されても配布されないもの
,,配布されても使用されないものが無数にあることからすると印刷部数は
少なくとも採択部数の1.2倍と推定される。なお,被告らが本件国語テ
ストの採択部数を開示していない昭和58年度ないし平成元年度について
は,同一教科書及び同一著作物を使用しているその後の年度における採択
部数のうち,最も多いもので代用した。その後に同一教科書及び同一著作
物が使用されなかったものについては,採択部数を,光村出版の教科書に
ついては20万部,教育出版及び東京書籍の教科書については10万部,
それ以外の教科書については3万部として,採択部数を推定し,印刷部数
はその1.2倍として,損害額を算出した。
本件各著作物に対応した採択部数は,別紙5-1及び2(年度別部数等
一覧表)の「採択部数」欄記載のとおりであり,印刷部数は,同表の「推
定印刷部数」欄記載のとおりである。
ウ使用率
使用率とは,被告らの本件国語テストのうち,原告らの著作物が掲載さ
れている割合のことである。教科書準拠副教材の頁数がNの場合,原告ら
の著作物は,教科書に掲載された場合,1学年の1ないし3学期のうちの
いずれか1学期のN頁の副教材のうち1頁に掲載されているので,使用率
は,1/Nとすることができる。
,(),,そしてこの数字Nは平成2年度から同11年度までについては
被告らの開示した資料に基づいて算出した。また,昭和58年度ないし平
成元年度については,その後の年度における資料から推定した。なお,1
,。頁のうち使用された面積をもとに使用率を算出する方法は合理的でない
本件各著作物に対応した使用率は,別紙5-1及び2(年度別部数等一覧
表)の「総頁数」欄記載の数字で1を除したものである。
エ使用料率
使用料率とは,教材会社が,販売価格のうち,著作権者に支払うべき使
用料の割合である。文芸作品の単行本の印税率は,通常10%とされてい
,,。,ること等から使用料率は10%として算定すべきであるしたがって
本件各著作物に対応した使用料率は,別紙5-1及び2(年度別部数等一
覧表)の「使用料率」欄記載のとおりである。
オ以上の数式及び数字を前提に,昭和58年度ないし平成11年度におい
て,著作者,著作物及び教科書ごとに,被告らの複製権侵害による損害額
は,別紙5-1及び2(年度別部数等一覧表)の「使用料」欄記載のとお
りである。
2著作者人格権侵害()
ア被告らは,本件国語テストに本件各著作物を掲載するに当たり,前記の
,,,。,とおり著作者名を記載せずまた内容を無断で改変したこれにより
本件各著作物を,原作とは似ても似つかぬものに変えられた著作者は,い
いようのない喪失感,無力感及び屈辱感等を味わっており,原告らの蒙っ
た精神的な苦痛は筆舌に尽くし難いものがある。
イ原告ら(原告A及び同を除く)が被った精神的苦痛による無形損害X
は,被告1社当たりかつ1年度ごとに,少なくとも30万円を下らない。
原告A及び同については,著作物数が多いため,同原告らが被ったX
精神的苦痛による無形損害は,被告1社当たりかつ1年度ごとに,少なく
とも50万円は下らない。
ウ被告らが,原告らに対し,各年度ごとに負うべき慰謝料の額は,別紙7
(不法行為請求額一覧表)の「慰謝料」欄記載のとおりである。
3弁護士費用()
ア原告らは,本訴の提起及びその他関連手続の追行等を原告訴訟代理人ら
に委任した。
イ原告らの負担する弁護士費用のうち,原告らには,被告ら各6社の昭和
58年度ないし平成11年度の各年度における複製権侵害及び著作者人格
権侵害の不法行為について,各年度ごとに個別の損害が生じているが,そ
の合計金額の10%について,被告らの不法行為と相当因果関係が認めら
れる。
その額は,別紙7(不法行為請求額一覧表)の「弁護士費用」欄記載の
とおりである。
4遅延損害金()
ア被告らの不法行為は,当該年度の4月1日から翌年の3月31日までの
年度単位で算定される。したがって,被告らは,原告らの各自に対して,
当該年度の不法行為について,翌年の3月31日から支払済みまで,年5
分の割合による遅延損害金を付して支払う義務を負う。
イ原告らの本件各著作物の各年度ごとに発生する遅延損害金の始期及び基
準となる損害額は,別紙2(損害金請求目録)記載のとおりである。
〔被告らの主張〕
1複製権侵害について()
(),「」「」別紙5-1年度別部数等一覧表のうち同一覧表の備考欄に×
を付したものを除き「著作者名「著作物名「教科書会社名」の著作物が,」」
それに対応する「教材名「使用年度「掲載学年「学期」の本件国語テス」」」
トに掲載されていたこと並びに同一覧表の網掛け部分を除いた「学校納入価
格」及び「総頁数」の記載は認める。上記同一覧表の「備考」欄に「×」を
付した各著作物は教科書にも掲載されていない。また,大阪書籍発行の教科
書に関しては,教育現場でほとんど採択されていなかったため,平成3年以前
には,被告らは同教科書準拠の本件国語テストを発行していなかったのに,原
告らはそれらが発行されていたという事実に反する仮定をして,使用料相当額
を計算している。
別紙5-2(年度別部数等一覧表)のうち,同一覧表の著作物に「△」を
付したものを除き「著作者名「著作物名「教科書会社名」の著作物が,,」」
「教材名」欄の「国語テスト」について「使用年度「掲載学年「学期」,」」
における本件国語テストに掲載されていたことは認める。
仮に,複製権侵害を理由として不法行為に基づく損害賠償請求が認められ
,,。るとしてもその使用料相当額は次の算定式により算定されるべきである
本体価格×採択部数×使用率(2分の1頁/総頁数)×使用料率(5%。た
だし,翻訳著作物の翻訳者である場合は2.5%)
ア本体価格について
本体価格に関し,別紙5-1(年度別部数等一覧表)のうち,少なくと
も「学校納入定価」の網掛け部分については,誤りである。,
しかし,仮に使用料相当額の支払を要するとしても,その計算は,消費税
抜きの価格(本体価格)を基礎として行われるべきである。消費税部分は,
被告らがこれを購入者(学校)から預かり,国等に納税すべきものであり,
その性質は「預かり金」であって,本件国語テストの対価ではないからであ
る。
イ採択部数について
使用料相当額の計算においては,販売された部数(採択部数)によるべ
きであり,印刷部数によるべきではない。被告らにとって,本件国語テス
トの対価を得るのは採択部数についてであって,印刷部数ではない。
印刷部数と採択部数との差が生じるのは,①採択部数は児童数で計算され
るが,実際には教師用,破損・損傷等及び転校生があった場合等のための予
備用部数が印刷されること,②見本品及び製造過程での剰余部数が発生する
こと,にある。上記①について,本件国語テストは,1部1部がばら売りさ
れるものではなく,1学級分が1組となって学校に納入される。そして「1,
学級分」には教師用,破損・損傷等及び転入生等のための予備用部数と児童
分がセットとなっている。この「1学級分」が「本体価格」×児童数という,
価格で販売されるのである。つまり,本体価格とは,印刷された1部1部に
付けられている定価なのではなく,これが書店で販売される一般書籍とは異
なる点である。それは「1学級分」の価格を計算する際に,児童数を掛け合,
わせるべき数字である。そして「本体価格」×「児童数」で販売される「1,
」,,。学級分には児童数分だけでなく教師用及び予備用部数が含まれている
つまり「本体価格」×「児童数」で算定される価格は,教師用及び予備用部,
数を含んだ価格である。そうすると「本体価格」×印刷部数(児童数+教師,
用+予備用+その他)×使用料率で使用料相当額を計算すると,教師用及び
予備用部数が,二重にカウントされることになる。
また,見本品及び製造過程剰余部数について,見本品は本体の販売促進の
ために用意されるものであって,それ自体が本体の販売促進のために無料配
布されるものであって,そこでの使用料額の算定に当たって,商品の価格で
ある本体価格を基準にすることはできない。むしろ,販売促進物は,本体の
促進のために存在し,そのためにのみ存在するものにすぎないから,販売促
進物における著作物利用の対価は,本体価格×採択部数(児童数)×使用料
率の中で評価され尽くしている。
さらに,製造過程で生じる余剰部数についても,一般書籍とは異なり,そ
の余剰部数が,1学級分のセットとして販売される以外に利用されることは
ない。その余剰部数が本体価格で販売されることはあり得ないし,仮に余剰
部数が販売されるとすると,それは「1学級分」のセットの中に含まれるこ,
とになるから,予備用部数と同様,余剰部数を含めて使用料相当額を計算す
ると,その部分について二重カウントが生じることになる。
原告らは,昭和58年度ないし平成元年度について,同一教科書及び同一
著作物を使用しているその後の年度における採択部数のうち最も多いもので
代用すべきであると主張するが,根拠のない主張である。
原告らは,平成2年度以降に同一教科書及び同一著作物が使用されなかっ
たものの採択部数は3万部ないし20万部などとしているが,そのような推
定に合理的な根拠は全くない。
ウ使用率について
本件国語テストにおいて,本件各著作物は,1頁(表面)の上段部分(2
分の1頁)に引用・掲載されているのみであり,それ以外に本件各著作物の
著作権侵害となり得る部分はないから,著作物の使用率は,当該2分の1頁
が全体に占める割合を超えることはない。
そして,本件国語テストの中で,本件各著作物が掲載されている2分の1
頁が占める割合は,全体の頁数(N頁)において,1/2Nになるというべ
きである。この点,著作者の会や日本児童文藝家協会と日図協との間の運用
細則においても,使用頁が1頁に満たない場合は,2分の1頁とすることが
合意されているし,日本児童文藝家協会使用料規程においても,1頁の2分
の1に著作物が掲載されているときは,2分の1頁と計算される旨規定され
ている。
エ使用料率について
本件国語テストにおいて本件各著作物を使用することに使用料の支払を要
するとしても,次のとおり,その使用料率としては,本体価格の5%(翻訳
者である原告J及び同Nについては2.5%)が相当である。
ア児童文学に関する一般的な印税率()
児童文学に関する一般書籍の印税率は10%よりもはるかに低い。
(イ)著作権者との合意の成立及び代表的な著作権管理事業者の定める使用
料率
著作者の会と日図協との間で締結された協定(乙22の1ないし3,日)
本児童文藝家協会と日図協との間で平成13年3月27日に締結された小「
学校,中学校及び高等学校用図書教材等における文芸著作物使用について
の協定(乙23の1及び2,日本児童文藝家協会が定めて文化庁長官に」)
届け出ている使用料規程(乙45)等によれば,使用料を本体価格の5%
と定めている。
(ウ)教科書掲載における補償金との比較
著作権法33条2項により文化庁長官が毎年教科書の掲載についての補
償金の額を定めているが,この補償金の金額を印税率に置き換えると,実
質3.60%となる(乙46。)
(エ)原告らの本来の利用方法を害さない態様であること
本件国語テストにおける著作物の一部の掲載は,本件各著作物の単行本
の売上げ等,その顕在的及び潜在的需要に対して悪影響を与えることがな
い。また,本件国語テストが教育上不可欠な存在であり,それには教科書
掲載著作物を利用しないわけにはいかない。したがって,本件国語テスト
,,への教科書掲載著作物の利用はすぐれて教育目的のためのものであって
そのことから使用料率も教科書掲載の際の補償金に近いものとなる。
(オ)挿絵及び写真の存在
本件国語テストでは1頁の上段2分の1頁に本件各著作物の一部が掲載
されているが,当該部分には,本件各著作物だけではなく,挿絵や写真が
含まれることが普通である。その挿絵や写真ももちろん著作物であり,原
告らはその著作権者ではないから,この点を考慮する必要がある。
2著作者人格権侵害について()
否認ないし争う。
9争点8(利得と損失の発生及びその額)について()
〔原告らの主張〕
(1)不当利得返還請求の成否
原告らは,被告らに対して,予備的に,平成5年度ないし同11年度の被
告らの無断複製について,不当利得返還請求権に基づき,一部請求として,
請求の趣旨記載のとおりの支払を求める。被告らは,平成5年度ないし同1
1年度の間,法律上の原因なくして,本件各著作物を本件国語テストに複製
し,販売して収益を上げており,これにより,原告らは,ロイヤリティ相当
額の損失を被り,被告らは,ロイヤリティ相当額の利得を受けた。したがっ
て,被告らは,被告らの受けた利得を原告らに返還しなければならない。
2利得額()
ア被告らは,原告らに対して,平成5年度から同11年度までの間に,著
作権者の同意を得ることなく,本件各著作物を本件国語テストに掲載し続
けたことによって,原告らに対して本来支払うべきであったライセンス料
相当額について,不当利得返還義務を負う。
そして,被告らが,原告らに対して支払うべきライセンス料相当額は,
少なくとも,前記8〔原告らの主張〕1アの複製権侵害による損害(販()
売価格×印刷部数×使用料率×使用率)を下らない。
イ上記の複製権侵害による損害は,被告らが本件各著作物を無断で複製し
,。,,ていたことについて原告らの受けるべき利益であるそして原告らは
ライセンス料相当額として,当然に受け取るべき同金額を受け取っていな
かったのであるから,原告らには同金額の損失が生じている。
ウまた,同金額について,被告らはライセンス料の支払を免れたのである
から,被告らには利得が発生している。
エそして,被告らの利得と原告らの損失との間には因果関係があり,被告
らの利得には法律上の原因がない。
オしたがって,被告らは,それぞれ,原告らに対して,ライセンス料相当
額の最低額である複製権侵害による損害額について,不当利得返還義務を
負う。
カ以上の数式及び数字を前提に,平成5年度ないし同11年度において,
著作者,著作物及び教科書ごとに,被告らの複製権侵害により生じた不当
利得の返還請求額は,別紙8(不当利得請求額一覧表)の「利得額」欄記
載のとおりである。
3弁護士費用()
ア原告らは,本訴の提起及びその他関連手続の追行等を原告訴訟代理人ら
に委任した。
イ被告らの不当利得返還義務は,実質的には,原告らに対する複製権侵害
という不法行為によって生じたものであるから,被告らは原告に対し,弁
護士費用も返還すべきである。
ウ原告らの負担する弁護士費用のうち,原告らには,被告ら各社の平成5
年度ないし同11年度の各年度における複製権侵害による不当利得につい
て,各年度ごとに個別の損失が生じているから,その合計金額の10%に
ついて,被告らの不当利得と相当因果関係がある。
エその額は,別紙8(不当利得請求額一覧表)の「弁護士費用」欄記載の
とおりである。
4悪意の受益者に対する利息金請求()
ア被告らは,原告らが著作権を有する著作物を原告らに無断で複製したこ
とについて,原告らの許諾を得ていないことを認識していたので「悪意,
の受益者」である。
したがって,被告らは,本件各著作物を原告らに無断で複製した際に,
「悪意の受益者」であったのであるから,前記ライセンス料相当額に利得
の時からの利息を付けて返還する義務を負う。
イその利息の利率は,利得者が商人であり,利得物を営業のために利用し
収益をあげているので,商事法定利率の年6分によるべきである。
仮に商事法定利率が認められない場合でも,被告らは,原告らの各自に
対して,民法所定の年5分の割合による利息を付して支払う義務を負う。
ウ被告らの不当利得は,当該年度の4月1日から翌年の3月31日までの
年度単位で算定される。したがって,被告らは,原告らの各自に対して,
当該年度の不当利得返還義務について,翌年の3月31日の翌日である4
月1日から支払済みまで,年6分の割合による利息を付して支払う義務を
負う。
エ原告らの本件各著作物の各年度ごとに発生する利息の始期及び基準とな
る損害額は,別紙3(利息金請求目録)記載のとおりである。
〔被告らの主張〕
1利得額について()
仮に,原告らにおいて「損失」が生じており,被告らにおいて「利得」が生
じているとすれば,その「損失」及び「利得」は,純粋な意味においての許諾
料相当額であるから,その算定において,著作権法114条3項を適用する余
地はない。
したがって,本件において,本件各著作物を本件国語テストに複製すること
について原告らの許諾が必要であることを前提としても,著作権法114条の
適用の対象ではない不当利得返還請求においては,過去の不当利得の計算にあ
たって「通常の」将来の許諾の場合に適用される使用料率が用いられるべきで,
あり,不法行為における使用料相当損害金の使用率と同率ではあり得ない。そ
して,著作者の会と被告らが加盟する日図協との間で平成11年9月30日に
締結された協定による使用料は,頁割により5%として算定するものと定めら
れていること,日本児童文藝家協会と日図協との間では,平成13年3月27
日に「小学校,中学校及び高等学校用図書教材等における文芸著作物使用につ
いての協定」及び同運用細則が締結され,それによると,作品の使用料は,頁
割により5%とし,作品の翻訳物は2.5%とすると定められていること,ま
た日本文芸著作権保護同盟及び日本児童文藝家協会使用料規程においては,図
書教材等に著作物を利用する場合の利用料率は販売価格の5%に発行部数を乗
じた額を上限とすると定められていることからすれば,不当利得返還請求にお
ける損失及び利得の算定においては,使用料率は5%(翻訳物については2.
5%)と認定すべきである。
2不当利得返還請求において,弁護士費用を請求する法的な根拠は存在し()
ない。
3利息金請求について()
ア本件国語テストに教科書掲載著作物である本件各著作物を試験目的により
部分的に引用することは,著作権法36条で許された試験目的での複製に当
,,,たると考えるべきであり仮にそのように判断されないとしても被告らは
本件国語テストにおける本件各著作物の利用について原告らの許諾が必要で
あるとは認識していなかったし,その認識がないのももっともなことであっ
た。
イ東京地方裁判所は,教科書準拠の学習書に教科書掲載著作物が引用されて
いることが学習書としての性質上必要と認められる正当な範囲内であり,専
ら,教科書の学習に資するため必要な範囲で,その一部を引用したにすぎな
いものと認めることができると説示し,その後,被告らを含む図書教材会社
20社は,昭和43年12月13日付けで,教科書会社27社との間で,図
書教材会社は教科書会社の許諾を要することなく教科書(編集著作物)に準
拠して教材用テスト等を製作,出版することができること等を内容とする和
解を成立させた。この和解の趣旨に従い,教科書会社の業界団体である教学
図書協会と被告らを含む教材図書出版の業界団体である日図協は,昭和44
年度においても,上記和解内容と同内容の謝礼金支払に関する基本契約を締
結し,この契約は更新されてきた。
他方,教科書掲載著作物の教科書会社以外の著作者からは,教科書会社と
は別個に権利主張がされることは一切なく,被告らは,教科書会社に対して
謝金を支払うことにより,安んじて教科書掲載著作物を利用した国語テスト
の発行を継続してきたのである。
以上によれば,被告らは,本件国語テストにおける教科書掲載著作物の利
用について原告らの許諾が必要であるとは認識していなかったし,その認識
がないのももっともなことであった。
,,ウ以上の事実関係によれば仮に被告らに不当利得返還義務があるとしても
被告らは「悪意」の受益者ではない。
4被告らは,原告ら又は著作者の承継人のうち,原告B,同D,同F,同G,()
亡I,亡K,原告L,同O,同P,同W,同Y,同BB,同CC及び同DDに
,()「」「」対しては別紙9使用料支払一覧表の各著作者名又は著作権継承者
欄に対応した各「支払金額」欄記載のとおり,平成10年度及び同11年度の
本件国語テストにおける使用料を,平成12年1月ころから3月ころまでの間
に支払った。
第4争点に対する判断
1争点1(訴えの追加的変更の許否)について()
,,,,原告らは平成15年12月26日本件訴訟を提起し本件訴状において
被告らが製作販売する教科書準拠副教材に原告らの本件各著作物を複製し改変
したことが著作権ないし著作者人格権侵害に当たり,その副教材は1学期につ
いて6枚のものであり,そのうちの1枚に本件各著作物が掲載され,その掲載
割合は1/6である旨主張し,平成16年3月19日付け準備書面1におい()
()ても同様の主張をした他方被告らは平成16年3月10日付け準備書面1。,,
において,本件国語テストは「ドリル」や自習教材とは用途及び態様を全く,
異にするもので,冊子やプリント集の体裁のものではないなどとして,前記第
3の2〔被告らの主張〕1イのとおり主張し,原告らも,平成16年6月1()
4日付け準備書面2において,被告らの主張する本件国語テストの納品形態()
や実施方法等を認める旨主張した。原告らは,その後,平成17年5月17日
付け訴え変更申立書において,被告らの教科書準拠副教材は,1学期について
約8頁のものであり,そのうちの1頁に本件各著作物が掲載され,その掲載割
合は1/8である旨主張した。被告らは,平成17年7月8日付け準備書面1(
0において,原告の「8頁」という主張は「8枚」の誤記であり,本件国語テ)
ストは,6枚ないし8枚(12頁ないし16頁)である旨主張し,原告らはこ
れに反論しなかった。被告らは,同年12月8日付け準備書面12において,()
原告らの要求に応じ,本件国語テストの教材名,使用年度,掲載学年,学期,
学校納入定価,本体価格,採択部数,使用頁数,総頁数を任意に開示した。し
かるに,原告らは,平成18年1月13日付け訴え変更申立書において,別紙
5-2(年度別部数等一覧表)の「教材名」欄記載のとおり「国語テスト」と,
は異なる「国語ドリル「国語の達成「国語の確認「国語プリント「マイ」,」,」,」,
ペア「国語形成プリント「国語Vドリル」及び「サマー16」を掲載し,こ」,」,
れらに基づく損害賠償を追加的に請求するに至ったものである。
しかしながら,別紙5-2(年度別部数等一覧表)によれば,上記「国語ドリ
ル」等は,40頁前後のものであり,原告らがもともと対象としていた6枚(1
2頁)又は8枚(16頁)の教科書準拠副教材とは少なくともその体裁が全く異
なるものであると推認される。著作権侵害訴訟において,侵害された原告らの著
作物と侵害したとされる被告らの物件の対比が重要であり,本件においても,主
要な争点が被告らの複製権侵害及び著作者人格権侵害の有無や著作権法36条の
。,該当性及び損害額の算定にあることは前記第2の3記載のとおりであるそして
原告ら及び被告らともに,6枚(12頁)又は8枚(16頁)の教科書準拠副教
,。,材を対象として上記争点について主張立証を行ってきたものである被告らは
上記「国語ドリル」等は本件国語テストと形態・用途が異なると主張しており,
上記「国語ドリル」等が,どのような形態のものであり,どのような用途を有す
るのか,あるいはどのような形式で本件各著作物が掲載されているのか等,上記
争点を判断したり,損害額を算定する基礎となる数値を算定するのに必要な事実
関係は不明である。よって,侵害物件を追加する上記訴えの変更を認めると,そ
れらの点について,相当な期間をかけてさらに審理をし直す必要が生じることは
明らかであって,上記訴えの追加的変更の申立ては,これにより著しく訴訟手続
を遅滞させることとなる。したがって,上記「国語ドリル」等に関する訴えの追
加的変更は,民事訴訟法143条1項ただし書により,許されない。
なお,上記「国語ドリル」等の存在は,平成17年2月3日の第8回弁論準備
手続において被告らから提出された乙第29号証,第31号証,第33号証,第
35号証,第37号証及び第39号証(各枝番を含む)の各証拠により既に明ら。
かになっていたものである。しかも,上記各証拠は,いずれも,平成11年11
月ころ,被告らが原告らに宛てて送付した書面であった。それにもかかわらず,
原告らは,訴状はもとより,その後の原告らの主張にも一切現れていなかった上
記「国語ドリル」等を追加する上記訴えの追加的変更を,提訴から2年以上経過
した口頭弁論終結の直前の時期に,何らの事前の予告なく突然申し立てたもので
ある。上記訴えの追加的変更申立てを攻撃方法の提出とみても,少なくとも原告
らの重大な過失により,時機に後れてされたものといわざるを得ず,訴訟の完結
を遅延させることとなることは明らかである。
2本件国語テストにおける本件各著作物の複製態様等について
前記争いのない事実及び証拠(甲1ないし289の各1,乙47)に弁論の
全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。
1本件国語テストについて()
本件国語テストは,光村図書,東京書籍,学校図書,教育出版,日本書籍
及び大阪書籍の6種類の小学生用国語科検定教科書(本件各教科書)に準拠
した小学生用国語テストである。
本件各教科書は,約3年ごとに改訂され,昭和58年度改訂の教科書は同
年度ないし同60年度において使用され,昭和61年度改訂の教科書は同年
度ないし同63年度において使用され,平成元年度改訂の教科書は同年度な
いし同3年度において使用され,平成4年度改訂の教科書は同年度ないし同
7年度において使用され,平成8年度改訂の教科書は同年度ないし同11年
度において使用された。
被告らは,別紙5-1及び2(年度別部数等一覧表)記載のとおり(同一
覧表の「備考」欄に「×」又は「△」を記載したものを除く,少なくと。)
も昭和58年度ないし平成11年度にかけて,全国の小学生向けに,本件国
語テストを製作販売してきた。本件国語テストは,本件各教科書に対応した
もので,各学年の各学期分が製作されている。
本件国語テストは,学校用の副教材であり,市販されていない。本件国語
テストが,国語教科書の各単元に対応して1回分が製作され,各学期に6な
いし8回,これを用いたテストが実施されるものであり,各回ごとに児童数
に余部1,2部を加えた部数がまとめられ,学期の初めに,その学期に実施
される分が被告らから直接に各学校に納入されるものである。すなわち,本
件国語テストは,学校によって採択が決定されると,教師用が1クラス分につ
いて1冊(解答,採点基準,標準実施時間,平均点及び正答率等の記載並びに
得点集計表等を含む)と,児童の数に応じたテスト用紙とが被告らから学校に。
納入される。なお,児童の数に応じたテスト用紙は,児童1人分が1冊の冊子
になっているのではなく,各回分のテスト用紙を児童の数に応じた枚数分だけ
ひとやまとし,このひとやまがテスト回数分だけ納入される。
本件国語テストを用いたテストは,学習の進捗状況等に従い,通常は国語教
科書の各単元を終了する際に,当該単元に係る分が実施される(学期末,学年
末に実施されることもある。教師は,各学級の授業時間内において本件国語。)
テストを各児童に配布しはじめの合図・号令によって解答を開始させ終,「」,「
わり」の合図・号令によって解答を停止させて回収するという方法により,実
施時間を測定してテストを実施する。
本件国語テストと共に教師に配布される被告ら作成の「得点集計表」等の
名称が付された一覧表は,児童ごとに,特定の回の国語テストの得点(又は
そのうちのある部分の設問に対する得点)を集計することにより,その合計
点数によって「表現の能力「理解の能力「言語についての知識・理解,」,」,
・技能」の各観点の評価ができる仕組みとなっている。
2本件国語テストにおける本件各著作物の取扱い()
ア本件国語テストにおいては,表裏各1枚のテスト用紙の表面が上下2段
に分けられ,その上段に本件各教科書に掲載された本件各著作物の全部又
は一部が複製されて掲載されているという態様で本件各著作物が使用され
ている。そして,本件国語テストにおいては,本件各著作物が,表面上段
のほぼ全面に罫線によって四角に囲まれた中に挿絵又は写真とともに掲載
され,下段の半面又はほぼ全面に,上段に掲載された本件各著作物に対応
(,した選択式又は記述式の設問が設けられている甲1ないし289の各1
乙47。)
イ本件国語テストにおいては,別紙6-1ないし6(変更内容一覧表)記
「」,「」載の各著作物名欄記載の本件各著作物がそれに対応する変更箇所
欄記載のとおりに,表現が変更されている。
ウ平成11年度の本件国語テスト(甲第25,45,54,56,64,
75,76,85,88,125,261,263及び271号証の各1を
除く)には,著作者名の表示は存在しない。。
エ本件国語テストにおける本件各著作物の上記取扱いについて,原告らの
許諾はない。
3争点(2)(著作権法36条1項該当性)について
(1)著作権法36条1項所定の「試験又は検定の問題」の意義
公表された著作物は,入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定
の目的上必要と認められる限度において,当該試験又は検定の問題として複
製することができ(著作権法36条1項,また,営利を目的として前記複)
製を行う者は,通常の使用料の額に相当する額の補償金を著作権者に支払わ
なければならない(同条2項。これらの規定は,入学試験等の人の学識技)
能に関する試験又は検定にあっては,それを公正に実施するために,問題の
内容等の事前の漏洩を防ぐ必要性があるため,あらかじめ著作権者の許諾を
受けることは困難であること,そして,著作物を上記のような試験又は検定
の問題として利用したとしても,一般にその利用は著作物の通常の利用と競
合しないと考えられることから,試験又は検定の目的上必要と認められる限
度で,かつ,著作物を試験又は検定の問題として複製するについては,一律
に著作権者の許諾を要しないものとするとともに,その複製がこれを行う者
の営利の目的による場合には,著作権者に対する補償を要するものとして,
利益の均衡を図る趣旨であると解される。
そうすると,試験又は検定の公正な実施のために,その問題としていかな
る著作物を利用するかということ自体を秘密にする必要性があり,そのため
に当該著作物の複製についてあらかじめ著作権者から許諾を受けることが困
難である試験又は検定の問題でない限り,著作権法36条1項所定の「試験
又は検定の問題」としての複製に当たるものということはできないと解され
る。
(2)本件国語テストの著作権法36条1項所定の「試験又は検定の問題」該
当性
前記21及び2で認定した本件国語テストの性質及び本件国語テストに()()
おける本件各著作物の取扱いの状況からすれば,本件各教科書に掲載されて
いる本件各著作物が本件国語テストに利用されることは,当然のこととして
予測されるものであるから,本件国語テストについて,いかなる著作物を利
用するかということについての秘密性は存在せず,そうすると,そのような
秘密性のために,著作物の複製について,あらかじめ著作権者の許諾を受け
ることが困難であるような事情が存在するということはできない。
よって,被告らが,本件各著作物を本件国語テストに複製することは,著
作権法36条1項所定の「試験又は検定の問題」としての複製に当たるもの
ではない。
3被告らの主張について()
被告らは,著作権法36条1項所定の「試験又は検定の問題」は厳格な秘
密性が求められない校内試験や予備校等が行う模擬テスト等を想定してお
り,入学試験に類するものに限られないと主張する。学校内での中間試験,
期末試験や予備校等が行う模擬試験等に同項所定の「試験又は検定の問題」
に当たるものがあるとしても,それは,上記認定の同条の趣旨からすると,
試験又は検定の公正な実施のために,その問題としていかなる著作物を利用
するかということ自体を秘密にする必要性があり,そのために当該著作物の
複製についてあらかじめ著作権者から許諾を受けることが困難であるものに
限られるというべきであるから,本件国語テストについての上記判断を覆す
に足りない。
また,被告らは,国語教育においては,児童の学習到達度を測定する手段
として,教科書掲載著作物を対象としたテストを行う教育上の強い必要性が
あり,本件国語テストの利用は,著作物の通常の利用と競合しないなどと主
張する。しかしながら,著作権法36条1項の趣旨が上記のとおりである以
上,被告ら主張の事情があったとしても,本件国語テストが許諾を必要とし
「」。ない試験又は検定の問題に含まれると解釈する根拠となるものではない
被告らは,さらに,既に教科書に掲載された本件各著作物を本件国語テスト
において試験問題として複製することについては,著作権者の個々の許諾を不
要としつつ,著作者に対する補償金の支払義務を負わせることによる解決が適
切である旨主張する。立法論としてはともかく,現行著作権法36条の下にお
いて,著作権者の許諾を不要とする根拠は見出し難い。
(4)複製権侵害の成否
別紙5-1及び2(年度別部数等一覧表)記載のとおり(同一覧表の「備
考」欄に「×」又は「△」を記載したものを除く,被告らが,本件各著。)
作物を原告らの許諾を得ることなく本件国語テストに複製したものであるこ
とは,前記2のとおりである。上記のとおり,著作権法36条1項の「試験
又は検定の問題」に当たらない以上,被告らの上記行為は,原告らの複製権
を侵害するものである。
4争点(3)ア(同一性保持権侵害)について
,,()1著作権法20条1項は著作者が著作物の同一性を保持する権利を有し
その意に反して改変を受けないことを規定するところ,著作物は,思想又は
感情を創作的に表現したものであるから(著作権法2条1項1号参照,著)
作者の意に反して思想又は感情の創作的表現に同一性を損なわせる改変が加
えられた場合に同一性保持権が侵害されたというべきである。原告らの本件
各著作物は,いずれも児童文学作品等であり,文字によって思想又は感情が
表現された言語の著作物であるから,本件国語テストによる別紙6-1ない
し6(変更内容一覧表)の「変更箇所」欄記載の本件各著作物の変更が,同
法20条1項所定の同一性保持権の侵害に当たるか否かは,原告らの意に反
して本件各著作物の思想又は感情の創作的表現に同一性を損なわせる改変が
加えられたか否か,すなわち,文字によって表された思想又は感情の創作的
表現の同一性を損なわせたか否かによって判断すべきである。
そして,同一性保持権は,著作者の精神的・人格的利益を保護する趣旨で
規定された権利であり,侵害者が無断で著作物に手を入れたことに対する著
作者の名誉感情を法的に守る権利であるから,著作物の表現の変更が著作者
の精神的・人格的利益を害しない程度のものであるとき,すなわち,通常の
著作者であれば,特に名誉感情を害されることがないと認められる程度のも
のであるときは,意に反する改変とはいえず,同一性保持権の侵害に当たら
ないものと解される。
2原告らは,平成11年度の本件国語テストは,別紙6-1ないし6(変()
更内容一覧表)の「変更箇所」欄記載のとおり,本件各著作物を変更したも
のである旨主張し,被告らは,以下の3箇所を除き,これを認めた。
,,()なお別紙6-5-1-55については本件著作物1-5甲55の2
と本件国語テスト(甲55の1)とを対比すると,別紙6-5の該当欄記載
のとおりに変更されていることが認められる。別紙6-5-21-95につ
,()()いては本件著作物21-2甲95の2と本件国語テスト甲95の1
とを対比すると,別紙6-5の該当欄記載のとおりに変更されていることが
認められる。また,別紙6-5-21-91について,原告らは,著作物中
の「みえた」をブランク(空欄)に変更した旨主張するが,本件著作物21
-4(甲91の2)と本件国語テスト(甲91の1)とを対比すると,本文
中の表現を削除することなく,文字の練習用に「みえた」の横にブランク,
(空欄)を設けたものであることが認められる。
そこで,以下,原告らの主張する変更内容につき,同一性保持権の侵害に
当たるか否かを判断する。
ア別紙6-1ないし6(変更内容一覧表)の「類型」欄①②③④⑥につい

アこれらの変更は,本件各著作物にある単語,文節ないし文章を削除()
し,本件各著作物にない単語,文節ないし文章を加筆し,本件各著作物
の単語を全く別の単語に置き換え,又は本件各著作物にある単語を空欄
にするなどしたものである。このような変更は,いずれも,文字による
表現自体を変更するものであるから,本件各著作物における文字によっ
て表された思想又は感情の創作的表現の同一性を損ない,原告らの人格
的利益を害しない程度のものとはいえないから,著作権法20条1項所
定の同一性保持権の侵害に当たるというべきである。
イ被告らは,本件国語テストの変更箇所には,本件各教科書の表記に()
従い,同教科書に記載されているとおりの変更をしたものがあり,それ
らは改変に当たらない旨主張する。
しかしながら,教科用図書に本件各著作物を掲載するに当たり,学校
教育の目的上やむを得ないと認められる用字又は用語の変更その他の改
変は,著作権法20条2項1号により,同一性保持権の保護が適用され
ないが,本件国語テストは,教科用図書ではないから,これと同一に論
じることができない。そして,教科用図書への掲載に際して改変するこ
とと,本件国語テストにおいて改変することとは,全く別個の行為であ
,,って前者の改変が同一性保持権侵害に当たらない場合があるとしても
後者の改変が当然に同一性保持権侵害に当たらないことにはならない。
改変に当たるか否かを判断する際に対比すべきは,本件各著作物と本件
国語テストであり,その両者の対比において変更箇所があって,その改
変に当たるというべきである。
もっとも,著作者自身が教科書掲載に当たり著作物の表現を変更し,
本件国語テストにおいて教科書の表現どおりにそのまま著作物の表現を
変更した場合には,意に反する改変ということはできない。すなわち,
当該国語テストが著作者自身において表現を変更した教科書の表現と同
一のものである限り,著作者の意に反する改変とはいえない。しかしな
がら,本件において,学校図書及び光村図書の「白いぼうし」について
は,著作者である原告A自身が教科書掲載に当たり本件著作物1-5を
改稿したものであるが(乙42の1及び2,光村図書の教科書に準拠)
した本件国語テストに関する別紙6-1-1-2,6-1-1-3,6
-3-1-187,6-4-1-100,6-4-1-101及び6-
6-1-243においては,上記教科書の表現と同一ではなく,これを
更に変更したものであるから(甲2,3,100,101,187及び
),。,,243の各1ないし3同一性保持権侵害を免れないまた同様に
日本書籍の「沢田さんのほくろ」についても,著作者である原告AA自
身が教科書掲載に当たり本件著作物20-1を書き改めたものであるが
(乙42の4,日本書籍の教科書に準拠した本件国語テストに関する)
別紙6-1-20-34,6-3-20-228,6-3-20-22
9,6-4-20-133及び6-5-20-87においては,上記教
科書の表現と同一ではなく,これを更に変更したものであるから(甲3
4,87,133,228及び229の各1ないし3,同一性保持権)
侵害を免れない。
ウ被告らは,上記の変更は,テスト問題を作成するにあたり,解答に直()
接必要な箇所のみを掲載するために,直接必要でない部分を掲載の対象か
ら外したり,教科書の掲載外の部分における説明を付記したにすぎず,こ
れらの改変は,教科用教材としての本件国語テストの性質並びにその利用
の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変であり,著作権法
20条2項4号により,原告らの同一性保持権を侵害するものではないと
も主張する。
しかしながら,著作権法20条2項4号は,同一性保持権による著作者
の人格的利益の保護を例外的に制限する規定であり,かつ,同じく改変が
許される例外的場合として同項1号ないし3号の規定が存在することから
すると,同項4号にいう「やむを得ないと認められる改変」に該当すると
いうためには,著作物の性質,利用の目的及び態様に照らし,当該著作物
の改変につき,同項1号ないし3号に掲げられた例外的場合と同程度の必
要性が存在することを要するものと解される。本件国語テストは,学年別
学期別に編集された教科書準拠副教材であって,教科用図書に準じるとい
う一定の必要性は認められるものの,教科用図書とは異なるものであるか
ら,同項1号に定める場合に当たらないことは明らかである。また,上記
改変について,同項1号ないし3号に定める場合と同程度の必要性が存在
するとまではいえないし,その他被告らが主張する事情をもってしても,
人格的要素が反映された文芸作品であるという本件各著作物の性質に照ら
し,本件国語テストの発行に当たり上記各著作物に改変を加えるにつき,
上記のような必要性が存在するということはできない。したがって,著作
権法20条2項4号が定める「やむを得ないと認められる改変」に該当す
るということはできず,被告らの上記主張は理由がない。
イ別紙6-1ないし6(変更内容一覧表)の「類型」欄⑤について
これらの変更は,本件各著作物にはない挿絵や写真が付加されているも
のである。そもそも,言語の著作物である本件各著作物と挿絵や写真は,
それぞれ別個の著作物であるから,挿絵や写真がなければ著作者の文字に
よる思想又は感情の表現が不完全になるとか,著作者が文字による表現を
視覚的表現によって補う意図で自ら挿絵や写真を挿入するなど,文字によ
る表現と挿絵や写真とが不可分一体で分離できない場合に,挿絵や写真を
変更することにより,文字によって表された思想又は感情の創作的表現の
同一性を損なわせるなどの特段の事情のない限り,同一性保持権の侵害に
は当たらないというべきである。
,,,別紙6-5-12-736-5-18-866-4-18-132
6-4-23-140,6-2-4-152,6-2-7-156,6-
2-11-160,6-6-5-257,6-6-22-288及び6-
6-23-289は,いずれも,挿絵又は写真が差し替えられたものであ
るところ(甲73,86,132,140,152,156,160,2
57,288,289,文字による表現と挿絵や写真とが不可分一体で)
分離できない場合に当たらず,挿絵や写真を変更することにより,言語の
著作物の文字によって表された思想又は感情の創作的表現の同一性を損な
わせるとはいえない。また,これらの挿絵や写真の付加は,通常の著作者
であれば,特に名誉感情を害されることがないと認められる程度のもので
あり,著作者の精神的・人格的利益を害しない程度のものと認められるか
ら,意に反する改変とはいえず,同一性保持権の侵害には当たらないもの
と解される。
ウ別紙6-1ないし6(変更内容一覧表)の「類型」欄⑦について
これらの変更は,本件各著作物に傍線や波線を付加したものである。こ
のような変更は,いずれも,本件各著作物の文字による表現自体の変更で
はなく,傍線や波線等を付加したからといって,文字によって表された思
。,想又は感情の創作的表現の同一性を損なわせるとはいえないしたがって
これらの変更は,そもそも改変には当たらない。
エ別紙6-1ないし6(変更内容一覧表)の「類型」欄⑧について
ア別紙6-1-21-40の符号aは,字体を太字に変更したもので()
ある。また,別紙6-4-1-105の符号bは,分かち書きにしたも
のである。別紙6-2-11-160の符号a及び別紙6-6-5-2
57の符号aは,段落の上部に番号を付加したものである。このような
,,,変更はいずれも本件各著作物の文字による表現自体の変更ではなく
文字によって表された思想又は感情の創作的表現の同一性を損なわせる
とはいえない。したがって,これらの変更は,そもそも改変には当たら
ない。
イ別紙6-4-21-135は,教師用の注意書を加筆したものであ()
るが,ここにおける文章等の加筆は,注意書として本件著作物21-4
の欄外に表示されたものであることが表現形式上明らかであり,本件著
作物自体を変更したものとはいえない。よって,このような変更は,文
字によって表された思想又は感情の創作的表現の同一性を損なわせると
はいえない。したがって,この変更は,そもそも改変には当たらない。
ウ別紙6-1-21-36,6-2-21-178,6-3-21-()
232,6-5-21-91及び6-6-21-283の変更は,1年
1学期の本件各教科書中の一節「あおいうみがみえた。しろいふ
ねもみえた」の一部を取り出して,ひらがなを四角いマスの中に書。
いて練習させるものである。そして,これらの本件国語テストにおける
わずか「あおいうみがみえた。しろいふねもみえた」の記載。
から,本件著作物21-4の表現上の本質的特徴を感得することは困難
であるから,そもそもこれが本件著作物21-4を改変したものという
ことはできない。
また,これらの本件国語テストにおいては,左脇又は空欄としたマス
,,,の中に練習すべき文字が別途記載されているからこのような変更は
いずれも,同著作物の文字による表現自体の変更ではなく,文字によっ
て表された思想又は感情の創作的表現の同一性を損なわせるとはいえな
。,,。いしたがってこれらの変更は同一性保持権の侵害には当たらない
オ小括
以上の理由により,平成11年度の本件国語テストについては,別紙6
-1ないし6(変更内容一覧表)の「類型」欄①②③④⑥,すなわち「侵
害の成否」欄に「○」と記載されたものにつき,被告らが,原告らの本件
各著作物に対する同一性保持権を侵害したものと認められる。
3平成10年度以前の本件国語テストについて()
原告らは,平成10年度以前の本件国語テストについても同様の同一性保
持権侵害があったはずであるとして,被告1社当たりかつ1年度ごとに,3
0万円ないし50万円の損害を請求する。
平成10年度以前の本件国語テストについては,本件国語テストそのもの
,,の証拠が存在しないため同国語テストに複製された本件各著作物について
いかなる改変があったかは明らかではない。平成10年度以前についても,
継続的に同一の改変行為が行われた可能性はあるが,後記102のとおり,()
そもそも,同一性保持権を侵害されたことによる慰謝料は,改変という行為
によって生じるものであり,年度ごとに毎年別個の損害が発生するという性
質のものとはいえないから,改変という行為が同一である以上,同一の改変
行為として損害を算定すべきものである。
5争点(3)イ(氏名表示権侵害)について
1平成11年度の本件国語テストについて()
甲第25,45,54,56,64,75,76,85,88,125,2
61,263及び271号証の各1を除き,平成11年度分の本件国語テス
トにつき,著作者の氏名が表示されていないことは当事者間に争いがない。
それ以外のうち,まず,甲第25,75及び125号証の各1の国語テス
トについては,原告Tが氏名表示権侵害の対象として主張していない。
次に,被告らは,甲第49,94号証の各1についても著作者名が表示さ
れている旨主張するが,著作者の氏名が表示されていないことは証拠上明ら
かである。
被告らは,それ以外の上記当事者間に争いのない本件国語テストも,著作
者名の表示が小さすぎて一般人にはその氏名を認識できないから著作者名を
表示しているとはいえないと主張する。しかし,上記甲第45,54及び5
6号証の各1においては原告Aの,甲第64号証の1においては原告Fの,
X甲第76号証の1においては原告Vの,甲第85号証の1においては原告
の,甲第88号証の1においては原告AAの,甲第261号証の1において
は亡Kの,甲第263号証の1においては原告Nの,甲第271号証の1に
おいては原告Wの,各氏名又はペンネームがテスト用紙の表の上段の著作物
の引用部分の末尾に,教科書出版社名,教科書名及び頁数とともに記載され
ており,小さな活字ではあるが十分認識可能であり,著作者名が表示されて
いるものと認められる(甲45,54,56,64,76,85,88,2
61,263及び271の各1。)
したがって,平成11年度分については,甲45,54,56,64,7
6,85,88,261,263及び271号証の各1以外の本件国語テスト
(甲25,75及び125の各1を除く)に係る原告らの氏名表示権が侵害。
されたものである。
2なお,被告らは,本件国語テストは,著作権法19条3項により著作者()
名の表示を省略することができる場合に該当すると主張する。
,「」,しかしながら同項にいう著作物の利用の目的及び態様に照らしとは
著作物の利用の性質から著作者名表示の必要性がないか著作者名の表示が極
めて不適切な場合を指すものと解される。本件各教科書に本件各著作物の著
作者名が掲載されるからといって,それとは別個の印刷物である本件国語テ
ストに著作者名表示の必要性がないということはできない。また,現に,本
件国語テストには,その一部に著作者名の表示がされていることは前記認定
のとおりであり,容易に著作者名を表示することができるから,著作者名の
表示が極めて不適切な場合ということもできない。したがって,本件国語テ
ストが著作権法19条3項所定の著作者名の表示を省略できる場合に該当す
るということはできない。
3平成10年度以前の本件国語テストについて()
原告らは,平成10年度以前の本件国語テストについても同様の氏名表示
権侵害があったはずであるとして,被告1社当たりかつ1年度ごとに,30
万円ないし50万円の損害を請求する。
平成10年度以前の本件国語テストについては,本件国語テストそのもの
,,の証拠が存在しないため同国語テストに複製された本件各著作物について
著作者名の表示の有無は明らかではない。平成10年度以前についても,複
製の事実に争いがなく,特段の反証がない以上,平成11年度の本件国語テ
ストと同じく著作者名の表示がされていない可能性はあるが,後記102の()
とおり,そもそも,氏名表示権を侵害されたことによる慰謝料は,著作者名
を表示しないで著作物を公衆に提供するという行為によって生じるものであ
る。よって,年度ごとに毎年別個の行為が行われ別個の損害が発生するとい
う性質のものとはいえず,損害額の算定に際し,上記事情を斟酌するにとど
める。
6争点(4)(故意又は過失の有無)について
前記第2の24のとおり,被告らは,長年にわたり,本件各教科書に掲載()
された本件各著作物を,原告らの許諾を得ることなく本件国語テストに複製し
てきたものである。
他人の著作物を許諾なく利用するに当たっては,著作権を侵害することがな
いか否か,すなわちそれが著作権法その他の法令により著作権が制限され,著
作権者の許諾を得ない利用が許される場合に該当するか否かについて十分に調
査する義務を負うというべきであり,そのような調査義務を尽くさず安易に著
作権者の許諾を得なくても著作権侵害が生じないと信じたものとしても,著作
権侵害につき過失責任を免れず,著作者人格権侵害についても同様である。
7争点(5)ア(損害を知りたる時)について
1証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。()
ア被告ら及び被告らの加盟する社団法人日本図書教材協会(日図協)は,国
,語教科書掲載著作物を本件国語テスト等の教材に利用していることについて
国語教科書掲載著作物の著作者との話合いを開始すべく,平成10年8月に
社団法人日本児童文学者協会及び社団法人日本児童文藝家協会に対し,協議
。,の申入れを行った被告ら及び日図協から上記申入れを受けた上記2団体は
同年12月,両団体の連名で,国語教科書掲載著作物の各著作者に対し,交
渉への参加を文書によって呼びかけたところ,平成11年1月,上記2団体
に,両団体のいずれにも属さない著作者有志29名を加えた小学校国語教科
書著作者の会(著作者の会)が発足し,同団体によって,本件国語テスト等
の教材への国語教科書掲載著作物の利用に関する被告ら教材会社側との交渉
が進められた。著作者の会と被告らとは,平成11年3月2日を第1回とし
て,7回にわたって交渉を行った(乙3,5,20。)
イ詩人であるEE外8名から管理委託を受けたと称する日本ビジュアル著
作権協会(JVCA)は,平成11年3月,被告らを相手方として,国語
教科書掲載著作物を国語テストに利用してきたことが著作権侵害等に当た
()るとして東京地方裁判所に出版差止めの仮処分命令当庁平成11年ヨ,(
第22079号出版禁止等仮処分申立事件。乙2の2。別件仮処分)を申
し立て,さらに,その本案訴訟(別件訴訟1)を提起した。別件仮処分の
申立てに先立ち,同月7日には,この事件について,全国紙各紙が一斉に
取り上げ,被告ら6社が,EEら9名の詩人,児童文学者等の国語教科書
掲載著作物を国語テスト等の教科書準拠副教材に無断使用し,それには著
作者名の表示もなく,無断使用は少なくとも20年近くにわたっているな
どの事実が,広く報道された(乙2の2,乙14,15,21。)
なお,別件訴訟1において,JVCAの理事長であるFFは,平成11
年11月12日付け陳述書(乙2の2)の中で,原告A,同E,亡I,原
告N,亡R,亡U,原告V,同及び同AAに係る本件各著作物についX
て,被告ら6社の国語テストを含む教科書準拠副教材に無断掲載されてい
る疑いがある旨陳述した。また,上記陳述書の中で教科書準拠副教材の無
断掲載を指摘されている原告は,平成10年7月ころ,FFから,教X
科書に掲載されている同原告の著作物が,無断で国語テスト等の副教材に
掲載されている証拠を見せられたと陳述している(乙2の3。そして,)
そのころまでに,JVCAは,過去から教科書に掲載されてきた作家や作
品リスト等をコンピュータに入力し,教科書に準拠した教材も大量に収集
保管するなど,本件著作権侵害に関する証拠を収集し,教科書掲載著作物
の著作権者への説明会を主催するなどしたものである(乙2の3。)
ウ本件著作物8の原著作権者エズラ・ジャック・キーツ財団法人(エズラ
財団)は,平成11年3月4日,被告らに対し,同著作物の国語テストへ
の無断複製を理由に,損害賠償請求訴訟を提起した。
エ平成11年6月24日,EE外8名が,被告らに対し,別件訴訟1と同
()内容の別件訴訟2当庁平成11年ワ第13691号出版差止請求事件()
を提起し,同月25日,同内容の仮処分命令(当庁平成11年ヨ第22()
149号出版禁止仮処分申立事件)を申し立てた(乙1,乙2の2,乙2
1。)
オ平成11年9月30日,著作者の会と被告ら及び日図協の間で「小学校国,
語教科書準拠教材における作品使用についての協定書(乙22の1。本件協」
定)及び「小学校国語教科書著作者の会と(社)日本図書教材協会との協定
を結ぶに当たっての確認書(乙22の2)が締結され,その付属文書である」
「小学校国語教科書準拠教材における作品使用についての協定』運用細則」『
(乙22の3)が作成された。それによれば,平成12年度から,教科書掲
載著作物を国語テスト等の教科書準拠副教材で使用する場合には,使用前に
著作者の許諾を得て,その著作者に著作権料を支払うこと,その使用料の計
算は,販売価格を掲載頁数で割った金額の5%とすることなどが合意された
(乙17の1ないし3,乙20,乙22の1ないし3。)
カ著作者の会は,平成11年10月18日,平成8年度版及び同12年度
版の教科書に著作物が掲載されている全著作者(著作者が死亡している場
合はその相続人。原告を除く原告らを含む)に対し「小学校国語教Z。,
科書準拠のテスト教材における今後の作品使用について,指針となる『協
定』が,教材会社と『著作者の会』との間で結ばれました-現行および来
年度から使用される国語教科書の著作者の皆さんに-」と題する文書(乙
3)を送付した。同文書には,本件国語テストが長年にわたって被告らに
よって発行されてきたこと,それには教科書掲載著作物が利用されてきた
こと,被告ら側からの申入れにより話合いが行われて協議の成立に至った
ことなどを本件国語テストの実例を添付して知らせる内容が記載されてお
り,資料として,国語テストのサンプル2通,本件協定書,確認書及び運
用細則が添付されていた。なお,サンプルとして添付された国語テストに
は,教科書掲載著作物が複製されていたが,いずれにも著作者名が表示さ
れていなかった(乙3,弁論の全趣旨。)
キ日図協は,平成11年10月22日付けで,平成8年度版及び同12年
度版の教科書に著作物が掲載されている著作者(著作者が死亡している場
合はその相続人。原告及び同を除く原告らを含む)に対して「小XZ。,『
学校国語教科書準拠教材における作品使用についての協定』締結のご報告
と運用へのご協力のお願いについて」と題する文書(乙5)を送付した。
この文書は,従前から本件国語テストを発行していた被告らの会社名を具
体的に列記した上,教科書準拠の国語テストは教科書掲載著作物を利用せ
ざるを得ないこと,このような教科書準拠の国語テストが全国で広く活用
されてきたこと,昭和40年の裁判等の結果により従来は教科書会社に謝
金を支払ってきたこと,しかし,昨今の著作権に関する考え方からすれば
掲載作品の著作者に対する配慮が足りなかったことなどを説明するもので
あった(乙5,弁論の全趣旨。)
ク被告らに正進社を加えた小学生用国語教材会社7社は,平成11年11
月2日又は同月19日付けで,原告O,同及び同を除く原告らに対XZ
し本件各著作物の本件国語テストにおける使用の許諾を申請する文書乙,(
6の1及び2。本件許諾申請文書)を送付した。
上記文書は,著作者の会と被告ら及び日図協との間に本件協定が締結さ
れたことを前提として,原告らに対して,これまで,著作物使用について
のルールがない中で,原告らの教科書掲載著作物を使用してきたことを暗
に謝罪し,平成12年度以降に掲載予定の著作物使用の許諾を依頼するも
のであった。そして,平成12年度以降の教材に使用する範囲や設問の細
部は決定していないので,その参考に供するために,現行の同学年の国語
テストを添付し,既に平成10年度及び同11年度に使用している著作者
に対しては同年度の使用料を支払うこと等を通知するものである。上記文
書には,被告ら各社ごとに,各著作者あての「使用許諾申請書,被告ら」
各社あての「著作物使用許諾書」及び返信用封筒が同封されている。上記
「使用許諾申請書」には,被告らごとに若干様式は異なるものの,それぞ
れ,個別具体的な著作物名とその掲載教科書が特定列挙された上,許諾を
申請する使用年度,使用料の計算式,支払予定日及び特記事項が記載され
ている。そして,平成10年度及び同11年度の著作物使用に関する使用
教材や発行部数,使用料の支払条件等が具体的に記載され,さらに,平成
12年度及び同13年度の使用教材及び使用条件が記載された使用教材一
覧表が添付されているものであった。
上記原告ら各自につき上記使用許諾申請書に記載された本件各著作物
は,別紙10(使用許諾申請書一覧表)の「被告名」に数字の入った欄に
対応する「著作物名」欄記載のものである(乙6の1及び2,乙7の1な
いし11,乙29の1ないし22,乙31の1ないし19,乙33の1な
いし21,乙35の1ないし22,乙37の1ないし21,乙39の1な
いし19。)
ケ本件許諾申請文書に対し,亡C,原告D,同F,同G,亡I,亡K,亡
M,原告P,同Y,同BB,同CC及び同DDは,平成11年11月から
同年12月にかけて,上記文書に添付された「著作物使用許諾書」に押印
,,()。し使用料払込口座を指定して被告らに送付した乙7の1ないし11
コ原告Wについては,同原告の著作権の許諾に関わる業務は株式会社福音
館書店(ただし,当時は有限会社)が同原告から委託を受けて管理してい
るところ,平成12年1月24日,同社を経由して,同原告の使用料振込
先である銀行口座の指定があった(乙9の1及び2。)
サ原告Eについては,著作物使用許諾書の用紙が返送されてきたが,そこ
には「この件については只今裁判中であり,日本ビジュアル著作権協会,
(JVCA)に一任してありますので,許可致しかねます」と記載され,
同原告の記名押印があった(乙10。)
シまた,亡I,原告N,同,同及び同Vからは,平成11年12月QT
ころ,前記使用許諾申請書に対し「私の作品に関する使用許諾につきま,
しては,その扱いを日本ビジュアル著作権協会に一任しております。つき
ましては,私からその使用の許諾をお出しすることについては遠慮申し上
げます」という文書による回答があった(乙11の1ないし5。。)
なお,亡Iからは,それとは別に,平成12年2月8日付けで,被告ら
を含む教材出版会社に対して,教材への著作物使用を許諾する旨の著作物
使用許諾書が返送された(乙11の6。)
ス原告Oについては,被告青葉出版は平成12年1月31日,被告光文書
院及び同新学社は平成11年11月18日,被告日本標準は同月20日,
被告文溪堂は同月19日に,それぞれ,上記使用許諾申請書等が添付され
た送付書を送り,平成10年度分及び同11年度分の使用料を,その具体
的金額を特定して支払う旨を通知した。上記被告5社の使用許諾申請書に
記載された原告Oの著作物は,本件著作物11-1及び2である。
これに対し,原告Oは,そのころ,被告らに対して,その使用料相当額
の振込先銀行口座を指定する文書を交付した(乙8,乙29の11,乙3
3の8,乙35の11,乙37の10,乙39の10。)
セ原告については,被告らに正進社を加えた7社は,同原告に対し,X
平成11年11月19日ころ,連名で「教科書に掲載された文学作品の,
教材への使用許諾問題について」と題する文書(乙12)を送付した。同
X文書は,本件許諾申請文書と同様,従前の経過を説明した上で,原告
の著作物について平成12年度以降の使用許諾を求めるものであった。被
告らが,平成11年11月1日から同月24日ころにかけて,原告にX
送付した使用許諾申請書には,その余の原告に対する使用許諾申請書と同
様,個別具体的な著作物名とその掲載教科書が特定列挙された上,許諾を
申請する使用年度,使用料の計算式,支払予定日及び特記事項として,平
成10年度及び同11年度の著作物使用に関する使用教材や発行部数,使
用料の支払条件等が記載され,さらに,平成12年度及び同13年度の使
用教材及び使用条件が記載された使用教材一覧表が添付され,本件著作物
17-1ないし5が記載されていた。
,,,,これに対し原告は平成12年2月20日付けで被告らに対しX
「,,私の当該作品は既に日本ビジュアル著作権協会に管理委託をしており
同管理契約も済ませてありますので,……当該作品については日本ビジュ
アル著作権協会に対してお申し出下さいますようお願い申し上げます。ま
た,過去分についての使用料の支払いのお申し出については,現在9人の
作家によって東京地裁及び高裁にて係属中であることから,同裁判にて基
準ができるまでご猶予をお願いしたくお願い申し上げます」との回答(乙
13)をした(乙12,乙13,乙29の17,乙31の14,乙33の
18,乙35の17,乙37の16,乙39の14。)
ソ原告A,亡I,原告N,同T,同V,同及び同AAの7名は,平成X
12年9月6日,EEら別件訴訟2の原告らと連名で,国語教科書に著作
物が掲載されている他の作家に対して,訴訟の経過の報告と安易な妥協を
戒める内容の文書(乙18)を送付した。また,上記原告ら7名は,同年
12月12日,全国都道府県教育委員会等あてに,訴訟,仮処分事件の経
過と上記原告ら7名が被告らに対して,著作物の使用許諾を出していない
旨の文書(乙19)を送付し,被告らの具体的な社名を特定した上で,被
告らが国語テストに教科書に掲載された著作物を無許諾で利用してきたこ
との不当性を呼びかけた。
タEE外8名が申し立てた仮処分に関しては,東京地方裁判所は申立てを
却下したものの,平成12年9月11日,東京高等裁判所は,第1審の却
下決定を取り消して,国語テストの発行を差し止める決定をした。この決
定は,翌日の全国紙各紙において大々的に報道された(乙16の1ないし
5。)
2「損害及び加害者を知りたる時」の意義()
ア民法724条は,不法行為に基づく法律関係が,未知の当事者間に,予
期しない事情に基づいて発生することがあることにかんがみ,被害者によ
る損害賠償請求権の行使を念頭において,消滅時効の起算点に関して特則
を設けたものであるから,同条にいう「損害及び加害者を知りたる時」と
,,,は被害者において加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に
その可能な程度にこれらを知ったときを意味するものと解され(最高裁昭
和45年オ第628号同48年11月16日第二小法廷判決・民集27()
巻10号1374頁参照,このうち,同条にいう被害者が「損害を知り)
たる」時とは,被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうものと解さ
れる(最高裁平成8年(オ)第2607号同14年1月29日第三小法廷
判決・民集56巻1号218頁参照。なお,被害者が不法行為に基づく)
損害の発生を知った以上,その損害と牽連一体をなす損害であって当時に
おいてその損害を予見することが可能であったものについては,すべて被
害者においてその認識があったものとして,民法724条所定の時効は前
記損害の発生を知った時から進行を始めるものと解すべきである(最高裁
昭和40年オ第1232号同42年7月18日第三小法廷判決・民集2()
1巻6号1559頁参照。)
本件は,著作権侵害に基づく請求についていえば,教科書掲載著作物の
著作権者である原告らが,教科書に準拠した国語テストを製作販売する教
材会社である被告らに対し,原告らの著作物が国語テストに無断で複製さ
れたとして,原告らの複製権が侵害されたことを理由として不法行為に基
。,,づく損害賠償を請求するものであるこのような事案において被害者が
加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度に損
害及び加害者を知り,損害の発生を現実に認識したといえるためには,原
,,,則として教科書掲載著作物の著作権者においてある特定の教材会社が
同人の特定の著作物を国語テストに掲載していたことを認識する必要があ
り,かつそれをもって足りると解すべきである。
他方,特定の著作物が特定の教材会社の製作販売する国語テストに掲載
されたことを認識したとしても,それ以外の教材会社との関係では損害を
知ったことにならないし,それ以外の著作物についても当然に損害を知っ
たとはいえない。
なお,ある教材会社が教科書掲載著作物をその著作権者に無断で長年に
わたって広範囲に国語テストに複製して販売してきたという一般的事実が
存在し,以前から教科書に掲載されている著作物に係る著作権者が上記事
実を認識していたという事実関係の下において,当該著作権者が,教科書
に掲載された自己の著作物がある特定の教材会社との関係で同社の製作販
売する国語テストに複製されたことを認識した時は,それ以前における複
,,製権侵害による損害についても継続的かつ牽連一体をなす損害であって
その時点で著作権者においてその認識があったものと解される。それは,
著作権者が前記一般的事実を認識していたという事実関係の下において
は,著作物が教科書に掲載される場合は著作者にその旨通知され著作権者
に補償金が支払われるのであるから(著作権法33条2項,当該著作権)
者は,自己の著作物が教科書に掲載されていることをも認識しており,あ
る教材会社が教科書に掲載された自己の著作物を国語テストに複製したこ
とを認識した時点において,経験則上,教科書に掲載されていた期間,そ
れ以前にも継続的に複製権侵害があったことを認識できるものと解される
からである。
イ原告らの主張について
この点,原告らは,上記に加えて,本件各著作物のどの部分が,本件各
教科書の各年度,各学年版のどこに引用されたか及び各年度における各学
年版の本件各教科書の発行部数の認識が必要である旨主張する。しかしな
がら,原告らの主張する上記各事項は,侵害された著作物とも侵害物件と
も異なる教科書に関するものであって,損害の発生の認識とは無関係であ
り,これらの点についての認識がなくても,特定の著作物が特定の教材会
社の国語テストに掲載されていることの事実が判明すれば,特定の被告ら
に対して,不法行為を理由に賠償請求をすることが事実上,十分に可能で
ある。
また,原告らは,被告らの作成する本件国語テストが有料であること,
本件国語テストの価額,枚数,形式等の概要及び発行部数の認識が必要で
ある旨主張する。しかしながら,上記各事項は,損害の数額に関するもの
であるところ,具体的な損害の数額の認識まではなくても,被告らに対す
る賠償請求は事実上可能である(大審院大正9年3月10日判決・民録2
6輯280頁参照。)
さらに,原告らは,本件各著作物のどの部分を複製して本件国語テスト
を作成したかの認識も必要である旨主張する。しかしながら,本件におい
ては国語教科書に掲載された著作物の全部又は一部が教科書に準拠した本
件国語テストに複製されているのであるから,1個の著作物のいかなる部
分が複製されたかという損害の範囲についての認識はなくても,損害自体
の認識はある以上,被告らに対する賠償請求は事実上可能である。
現に,原告らは,本件訴状において,上記の諸点について特定すること
なく被告らに対する賠償請求をしたものであり,原告らの上記主張は,い
ずれも理由がない。
3以上を前提として,原告らの被告らに対する複製権侵害を理由とする損()
害賠償請求権の消滅時効の成否について,各原告ごとに検討すると,次のと
おりである。
ア原告Aについて
前記1のとおり,被告ら6社は,原告Aに対し,平成11年11月2()
日又は同月19日に,本件著作物1-1ないし9について,本件許諾申請
文書を送付した。同月19日付けの送付文書の返送期限は12月3日であ
るから(乙6の2,原告Aは,遅くとも,その日以前に上記文書を受領)
したものである。本件許諾申請文書には,使用教材一覧表が添付されてお
り「平成10年度,11年度使用教材の発行部数及び使用料」として,,
本件著作物1-1ないし9が被告ら各社の本件国語テストに掲載された内
訳が記載されている(乙29の1,乙31の1,乙33の21,乙35の
1,乙37の1,乙39の1。それに加えて,前記1イ,カ,キ認定の)()
とおり,それ以前の平成11年3月7日,別件仮処分の申立てに関し,詩
人,児童文学者などの国語教科書掲載著作物を国語テスト等の教科書準拠
副教材に無断使用し,無断使用は少なくとも20年近くにわたっているな
どの事実が広く報道されており,原告Aは,平成11年10月に,著作者
の会及び日図協から,被告らが長年にわたり教科書掲載著作物を著作者に
無断で国語テスト等の教科書準拠副教材に使用してきたことなどの事実を
知らせる乙第3号証及び乙第5号証を受領していた。
上記著作物は,それ以前にも継続的に本件各教科書に掲載されていたも
のであり,原告Aは,本件許諾申請文書の受領により,平成10年度及び
同11年度に被告ら6社の本件国語テストに上記著作物が複製され,損害
が発生したことを認識したのみならず,それ以前における複製権侵害によ
る損害についても認識したものと推認される。
,,,,さらに前記1イのとおり原告AはJVCAの会員であるところ()
JVCAの理事長であるFFが,原告Aの本件著作物1-1ないし11の
すべてについて,被告ら6社の教科書準拠副教材に無断掲載されている疑
いがある旨陳述しており(乙2の2,それと同様に上記陳述書の中で教)
科書準拠副教材の無断掲載を指摘されている原告は,平成11年7月X
21日付けの陳述書(乙2の3)において「1年ほど前に日本ビジュア,
ル著作権協会の理事長であるFFさんから,教科書に掲載されている私の
作品が,私が全く知らないテスト,ドリル等の副教材に掲載されている証
拠を見せられ大変驚きました。その後ビジュアル著作権協会が主催する説
明会等に出席し,同協会の事務所等を拝見させてもらいましたところ,過
去から教科書に掲載されてきた作家や作品リスト等がコンピューターに入
力されていたり,教科書に準拠した教材も大量に収集保管されていまし
た」と述べている。よって,原告Aも,そのころ,同様に,本件著作物。
1-1ないし11のすべてについて被告ら6社の教科書準拠副教材に無断
掲載されていることを把握していたJVCAのFFから,その旨の報告を
受けていると推認される。
以上の事実によれば,原告Aは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領し
た平成11年12月3日の時点には,上記文書に記載された著作物のみな
らず,本件著作物1-1ないし11のすべてについて,被告ら6社に対す
る賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこれらを知って
いたものと認められる。そして,その3年後である平成14年12月3日
は既に経過しているから,原告Aによる本件著作物1-1ないし11の著
作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権は,すべて,時効
により消滅したものと認められる。
イ原告Bについて
前記1のとおり,被告ら6社は,亡Cに対し,平成11年11月2日()
,,。又は同月19日に本件著作物2について本件許諾申請文書を送付した
亡Cは,同年12月1日付けで,上記文書に添付されていた著作物使用許
諾書に署名押印の上,被告らに送付しているから(乙7の1,亡Cは,)
遅くとも,同日までに本件許諾申請文書を受領したものである。上記文書
には,使用教材一覧表が添付されており「平成10年度,11年度使用,
教材の発行部数及び使用料」として,本件著作物2が被告ら各社の本件国
語テストに掲載された内訳が記載されている(乙29の2,乙31の2,
乙33の1,乙35の2,乙37の2,乙39の2。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,亡Cは,本件許諾申
請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に被告ら6社の本件国
語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識したのみな
らず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識したものと
推認される。
以上の事実によれば,亡Cは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領した
平成11年12月1日の時点には,本件著作物2について,被告ら6社に
対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこれらを知
っていたものと認められる。そして,その3年後である平成14年12月
1日は既に経過しているから,亡Cから本件著作物2に係る権利の遺贈を
受けた原告Bによる本件著作物2の著作権侵害を理由とする不法行為に基
づく損害賠償請求権は,すべて,時効により消滅したものと認められる。
ウ原告Dについて
前記1のとおり,被告ら6社は,原告Dに対し,平成11年11月2()
日に,本件著作物3について,本件許諾申請文書を送付した。原告Dは,
同月5日付けで,上記文書に添付されていた著作物使用許諾書に署名押印
の上,被告らに送付しているから(乙7の2,原告Dは,遅くとも,同)
日までに本件許諾申請文書を受領したものである。上記文書には,使用教
材一覧表が添付されており「平成10年度,11年度使用教材の発行部,
数及び使用料」として,本件著作物3が被告ら各社の本件国語テストに掲
載された内訳が記載されている(乙29の3,乙31の3,乙33の2,
乙35の3,乙37の3,乙39の3。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,原告Dは,本件許諾
申請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に被告ら6社の本件
国語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識したのみ
ならず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識したもの
と推認される。
以上の事実によれば,原告Dは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領し
た平成11年11月5日の時点には,本件著作物3について,被告ら6社
すべてに対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこ
れらを知っていたものと認められる。そして,その3年後である平成14
年11月5日は既に経過しているから,原告Dによる本件著作物3の著作
権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権は,すべて,時効に
より消滅したものと認められる。
エ原告Eについて
前記1のとおり,被告ら6社は,原告Eに対し,平成11年11月2()
日又は同月19日に,本件著作物4について,本件許諾申請文書を送付し
た。同月19日付けの送付文書の返送期限は12月3日であり(乙6の
2,同原告は著作物使用許諾書の用紙を返送しているから(乙10,))
,,。原告Eは遅くとも同日までに本件許諾申請文書を受領したものである
上記文書には,使用教材一覧表が添付されており「平成10年度,11,
年度使用教材の発行部数及び使用料」として,本件著作物4が被告ら各社
の本件国語テストに掲載された内訳が記載されている(乙29の4,乙3
1の4,乙33の20,乙35の4,乙37の4,乙39の4。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,原告Eは,本件許諾
申請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に被告ら6社の本件
国語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識したのみ
ならず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識したもの
と推認される。
以上の事実によれば,原告Eは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領し
た平成11年12月3日の時点には,本件著作物4について,被告ら6社
すべてに対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこ
れらを知っていたものと認められる。そして,その3年後である平成14
年12月3日は既に経過しているから,原告Eによる本件著作物4の著作
権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権は,すべて,時効に
より消滅したものと認められる。
オ原告Fについて
前記1のとおり,被告ら6社は,原告Fに対し,平成11年11月2()
日に,本件著作物5について,本件許諾申請文書を送付した。原告Fは,
同月6日付けで,本件許諾申請文書に添付されていた著作物使用許諾書に
署名押印の上,被告らに送付しているから(乙7の3,原告Fは,遅く)
,。,とも同日までに本件許諾申請文書を受領したものである上記文書には
使用教材一覧表が添付されており「平成10年度,11年度使用教材の,
発行部数及び使用料」として,本件著作物5が被告ら各社の本件国語テス
トに掲載された内訳が記載されている(乙29の5,乙31の5,乙33
の3,乙35の5,乙37の5,乙39の5。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,原告Fは,本件許諾
申請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に被告ら6社の本件
国語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識したのみ
ならず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識したもの
と推認される。
以上の事実によれば,原告Fは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領し
た平成11年11月6日の時点には,本件著作物5について,被告ら6社
すべてに対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこ
れらを知っていたものと認められる。そして,その3年後である平成14
年11月6日は既に経過しているから,原告Fによる本件著作物5の著作
権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権は,すべて,時効に
より消滅したものと認められる。
カ原告Gについて
前記1のとおり,被告ら6社は,原告Gに対し,平成11年11月2()
日に,本件著作物6について,本件許諾申請文書を送付した。原告Gは,
同月19日付けで,本件許諾申請文書に添付されていた著作物使用許諾書
,(),,に署名押印の上被告らに送付しているから乙7の4の1原告Fは
遅くとも,同日までに本件許諾申請文書を受領したものである。上記文書
には,使用教材一覧表が添付されており「平成10年度,11年度使用,
教材の発行部数及び使用料」として,本件著作物6が被告ら各社の本件国
語テストに掲載された内訳が記載されている(乙29の6,乙31の6,
乙33の4,乙35の6,乙37の6,乙39の6。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,原告Gは,本件許諾
申請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に被告ら6社の本件
国語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識したのみ
ならず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識したもの
と推認される。
以上の事実によれば,原告Gは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領し
た平成11年11月19日の時点には,本件著作物6について,被告ら6
社すべてに対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度に
これらを知っていたものと認められる。そして,その3年後である平成1
4年11月19日は既に経過しているから,原告Gによる本件著作物6の
著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権は,すべて,時
効により消滅したものと認められる。
キ原告Hについて
前記1のとおり,被告ら6社は,亡Iに対し,平成11年11月2日()
又は同月19日に,本件著作物7-1(被告教育同人社については本件著
作物7-2及び3を,被告文溪堂については本件著作物7-2を含む)。
について,本件許諾申請文書を送付した。亡Iは,同年12月10日付け
で,本件許諾申請文書に添付されていた著作物使用許諾書による許諾を拒
否する旨の文書を,被告らに対し送付しているから(乙11の1,亡I)
は,遅くとも,同日までに本件許諾申請文書を受領したものである。上記
文書には,使用教材一覧表が添付されており「平成10年度,11年度,
使用教材の発行部数及び使用料」として,本件著作物7-1等が被告ら各
社の本件国語テストに掲載された内訳が記載されている(乙29の7,乙
31の7,乙33の5,乙35の7,乙37の7,乙39の7。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,亡Iは,本件許諾申
請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に被告ら6社の本件国
語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識したのみな
らず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識したものと
推認される。
さらに,亡Iは,JVCAの会員であるところ,JVCAの理事長であ
るFFが,亡Iの本件著作物7-1ないし6のすべてについて,被告ら6
社の教科書準拠副教材に無断掲載されている疑いがあると説明しており
(乙2の2,亡Iも,上記アの原告Aと同様に,FFからその旨の報告)
を受けていると推認される。
以上の事実によれば,亡Iは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領した
平成11年12月10日の時点には,上記文書に記載された著作物のみな
らず,本件著作物7-1ないし6のすべてについて,被告ら6社に対する
賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこれらを知ってい
たものと認められる。そして,その3年後である平成14年12月10日
は既に経過しているから,亡Iの訴訟承継人である原告Hによる本件著作
物7-1ないし6の著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請
求権は,すべて,時効により消滅したものと認められる。
ク原告Jについて
前記1のとおり,被告ら6社は,亡Kに対し,平成11年11月2日()
に,本件著作物8について,本件許諾申請文書を送付した。亡Kは,同月
16日付けで,本件許諾申請文書に添付されていた著作物使用許諾書に署
,(),,,名押印の上被告らに送付しているから乙7の5亡Kは遅くとも
同日までに本件許諾申請文書を受領したものである。上記文書には,使用
教材一覧表が添付されており「平成10年度,11年度使用教材の発行,
部数及び使用料」として,本件著作物8が被告ら各社の本件国語テストに
(,,,掲載された内訳が記載されている乙29の8乙31の8乙33の6
乙35の8,乙37の8,乙39の8。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,亡Kは,本件許諾申
請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に被告ら6社の本件国
語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識したのみな
らず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識したものと
推認される。
以上の事実によれば,亡Kは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領した
平成11年11月16日の時点には,本件著作物8について,被告ら6社
すべてに対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこ
れらを知っていたものと認められる。そして,その3年後である平成14
年11月16日は既に経過しているから,亡Kの訴訟承継人である原告J
による本件著作物8の著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償
請求権は,すべて,時効により消滅したものと認められる。
ケ原告Lについて
前記1のとおり,被告ら6社は,亡Mに対し,平成11年11月2日()
に,本件著作物9について,本件許諾申請文書を送付した。亡Mは,同月
4日付けで,本件許諾申請文書に添付されていた著作物使用許諾書に署名
押印の上,被告らに送付しているから(乙7の6,は,遅くとも,同)M
日までに本件許諾申請文書を受領したものである。上記文書には,使用教
材一覧表が添付されており「平成10年度,11年度使用教材の発行部,
数及び使用料」として,本件著作物9が被告ら各社の本件国語テストに掲
載された内訳が記載されている(乙29の9,乙31の9,乙33の7,
乙35の9,乙37の9,乙39の9。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,亡Mは,本件許諾申
請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に被告ら6社の本件国
語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識したのみな
らず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識したものと
推認される。
以上の事実によれば,亡Mは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領した
平成11年11月4日の時点には,本件著作物9について,被告ら6社す
べてに対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこれ
らを知っていたものと認められる。そして,その3年後である平成14年
11月4日は既に経過しているから,亡Mの相続人である原告Lによる本
件著作物9の著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権
は,すべて,時効により消滅したものと認められる。
コ原告Nについて
前記1のとおり,被告青葉出版,同光文書院及び同日本標準は,原告()
Nに対し,平成11年11月2日又は同月19日に,本件著作物10につ
,。,,いて本件許諾申請文書を送付した原告Nは同年12月14日付けで
許諾申請文書に添付されていた著作物使用許諾書による許諾を拒否する旨
,(),,の文書を上記被告らに対し送付しているから乙11の2原告Nは
遅くとも,同日までに本件許諾申請文書を受領したものである。上記文書
には,使用教材一覧表が添付されており「平成10年度,11年度使用,
教材の発行部数及び使用料」として,本件著作物10が上記被告ら各社の
本件国語テストに掲載された内訳が記載されている(乙29の10,乙3
3の15,乙35の10。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,原告Nは,本件許諾
申請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に上記被告ら3社の
本件国語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識した
のみならず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識した
ものと推認される。
以上の事実によれば,原告Nは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領し
た平成11年12月14日の時点には,本件著作物10について,被告青
葉出版,同光文書院及び同日本標準に対する賠償請求が事実上可能な状況
,。,の下にその可能な程度にこれらを知っていたものと認められるそして
その3年後である平成14年12月14日は既に経過しているから,原告
Nによる本件著作物10の著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害
賠償請求権のうち,被告青葉出版,同光文書院及び同日本標準に対するも
のは,時効により消滅したものと認められる。
サ原告Oについて
,,,前記1のとおり被告教育同人社を除く被告ら5社は原告Oに対し()
被告青葉出版は平成12年1月31日,被告光文書院及び同新学社は平成
11年11月18日,被告日本標準は同月20日,被告文溪堂は同月19
日に,本件著作物11-1及び2について,許諾申請書等が添付された文
書を送付した。原告Oは,そのころ,上記被告らに対し,振込先銀行口座
を指定する文書を交付したから(乙8,原告Oは,遅くとも,平成12)
年2月1日ころまでには上記許諾申請書等の文書を受領したものである。
上記文書には,使用教材一覧表が添付されており「平成10年度,11,
年度使用教材の発行部数及び使用料」として,本件著作物11-1及び2
が上記被告ら各社の本件国語テストに掲載された内訳が記載されている
(乙29の11,乙33の8,乙35の11,乙37の10,乙39の1
0。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,原告Oは,本件許諾
申請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に上記被告ら5社の
本件国語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識した
のみならず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識した
ものと推認される。
以上の事実によれば,原告Oは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領し
た平成12年2月1日ころには,本件著作物11-1及び2について,被
告教育同人社を除く被告ら5社に対する賠償請求が事実上可能な状況の下
に,その可能な程度にこれらを知っていたものと認められる。そして,そ
の3年後である平成15年2月1日は既に経過しているから,原告Oによ
る本件著作物11-1及び2の著作権侵害を理由とする不法行為に基づく
損害賠償請求権のうち,上記被告ら5社に対するものは,時効により消滅
したものと認められる。
シ原告Pについて
前記1のとおり,被告ら6社は,原告Pに対し,平成11年11月2()
日又は同月19日に,本件著作物12-1について,本件許諾申請文書を
送付した。原告Pは,同月22日付けで,本件許諾申請文書に添付されて
いた著作物使用許諾書に署名押印の上,被告らに送付しているから(乙7
の7,原告Pは,遅くとも,同日までに本件許諾申請文書を受領したも)
のである。上記文書には,使用教材一覧表が添付されており「平成10,
年度,11年度使用教材の発行部数及び使用料」として,本件著作物6が
被告ら各社の本件国語テストに掲載された内訳が記載されている(乙29
の12,乙31の10,乙33の9,乙35の12,乙37の11,乙3
9の11。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,原告Pは,本件許諾
申請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に被告ら6社の本件
国語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識したのみ
ならず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識したもの
と推認される。
以上の事実によれば,原告Pは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領し
た平成11年11月22日の時点には,本件著作物12-1について,被
告ら6社すべてに対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な
程度にこれらを知っていたものと認められる。そして,その3年後である
平成14年11月22日は既に経過しているから,原告Pによる本件著作
物12-1の著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権
は,時効により消滅したものと認められる。
ス原告Qについて
前記1のとおり,被告ら6社は,原告Qに対し,平成11年11月2()
日又は同月19日に,本件著作物13-1について,本件許諾申請文書を
送付した。原告Qは,同年12月12日付けで,上記許諾申請文書に添付
されていた著作物使用許諾書による許諾を拒否する旨の文書を,被告らに
対し送付しているから(乙11の3,原告Qは,遅くとも,同日までに)
本件許諾申請文書を受領したものである。上記文書には,使用教材一覧表
が添付されており「平成10年度,11年度使用教材の発行部数及び使,
用料」として,本件著作物13-1が被告ら各社の本件国語テストに掲載
された内訳が記載されている(乙29の13,乙31の11,乙33の1
6,乙35の13,乙37の12,乙39の12。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,原告Qは,本件許諾
申請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に被告ら6社の本件
国語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識したのみ
ならず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識したもの
と推認される。
さらに,原告Qは,JVCAの会員であるところ,JVCAの理事長で
あるFFが,亡Rの本件著作物13-1ないし3のすべてについて,被告
ら6社の教科書準拠副教材に無断掲載されている疑いがあると説明してお
り(乙2の2,原告Qも,上記アの原告Aと同様に,FFからその旨の)
報告を受けていると推認される。
以上の事実によれば,原告Qは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領し
た平成11年12月12日の時点には,上記文書に記載された著作物のみ
ならず,本件著作物13-1ないし3のすべてについて,被告ら6社に対
する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこれらを知っ
ていたものと認められる。そして,その3年後である平成14年12月1
2日は既に経過しているから,原告Qによる本件著作物13-1ないし3
の著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権は,すべて,
時効により消滅したものと認められる。
セ原告Tについて
前記1のとおり,被告日本標準及び同文溪堂を除く被告ら4社は,原()
,,告Tに対し被告青葉出版においては本件著作物14-1及び4について
同教育同人社においては本件著作物14-1,2及び4について,同光文
書院においては本件著作物14-1及び2について,同新学社においては
本件著作物14-1,2及び4について,それぞれ,平成11年11月2
日又は同月19日に,本件許諾申請文書を送付した。原告は,同年12月
16日付けで,上記許諾申請文書に添付されていた著作物使用許諾書によ
る許諾を拒否する旨の文書を,上記被告らに対し送付しているから(乙1
1の4,原告Tは,遅くとも,同日までに本件許諾申請文書を受領した)
ものである。上記文書には,使用教材一覧表が添付されており「平成1,
0年度,11年度使用教材の発行部数及び使用料」として,上記各著作物
が被告ら各社の本件国語テストに掲載された内訳が記載されている(乙2
9の14,乙31の12,乙35の14,乙37の13。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,原告Tは,本件許諾
申請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に上記被告ら4社の
本件国語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識した
のみならず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識した
ものと推認される。
さらに,原告Tは,JVCAの会員であるところ,JVCAの理事長で
あるFFが,亡Uの本件著作物14-1ないし7のすべてについて,上記
被告ら4社の教科書準拠副教材に無断掲載されている疑いがあると説明し
ており(乙2の2,原告Tも,上記アの原告Aと同様に,FFからその)
旨の報告を受けていると推認される。
以上の事実によれば,原告Tは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領し
た平成11年12月16日の時点には,上記文書に記載された著作物のみ
ならず,本件著作物14-1ないし7のすべてについて,上記被告ら4社
に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこれらを
知っていたものと認められる。そして,その3年後である平成14年12
月16日は既に経過しているから,原告Tによる本件著作物14-7ない
し7の著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権のうち,
上記被告ら4社に対するものは,時効により消滅したものと認められる。
ソ原告Vについて
前記1のとおり,被告6社は,原告Vに対し,平成11年11月2日()
又は同月19日に,本件著作物15-1について,本件許諾申請文書を送
付した。原告Vは,同年12月10日付けで,本件許諾申請文書に添付さ
れていた著作物使用許諾書による許諾を拒否する旨の文書を,被告らに対
し送付しているから(乙11の5,原告Vは,遅くとも,同日までに本)
件許諾申請文書を受領したものである。上記文書には,使用教材一覧表が
添付されており「平成10年度,11年度使用教材の発行部数及び使用,
料」として,本件著作物15-1が上記被告ら各社の本件国語テストに掲
載された内訳が記載されている(乙29の15,乙31の13,乙33の
17,乙35の15,乙37の14,乙39の13。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,原告Vは,本件許諾
申請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に被告ら6社の本件
国語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識したのみ
ならず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識したもの
と推認される。
さらに,原告Vは,JVCAの会員であるところ,JVCAの理事長で
あるFFが,本件著作物15-1及び2のすべてについて,被告ら6社の
教科書準拠副教材に無断掲載されている疑いがあると説明しており(乙2
の2,原告Vも,上記アの原告Aと同様に,FFからその旨の報告を受)
けていると推認される。
以上の事実によれば,原告Vは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領し
た平成11年12月10日の時点には,上記文書に記載された著作物のみ
ならず,本件著作物15-1及び2のすべてについて,被告ら6社に対す
る賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこれらを知って
いたものと認められる。そして,その3年後である平成14年12月10
日は既に経過しているから,原告Vによる本件著作物15-1及び2の著
作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権は,すべて,時効
により消滅したものと認められる。
タ原告Wについて
前記1のとおり,被告青葉出版,同光文書院,同新学社及び同日本標()
準の4社は,原告Wに対し,平成11年11月2日又は同月19日に,本
件著作物16について,本件許諾申請文書を送付した。原告Wは,平成1
2年1月24日,株式会社福音館書店を経由して,振込先銀行口座の指定
をしたから(乙9の1及び2,原告Wは,遅くとも,同日までに本件許)
諾申請文書を受領したものである。上記文書には,使用教材一覧表が添付
されており「平成10年度,11年度使用教材の発行部数及び使用料」,
として,本件著作物16が上記被告ら4社の本件国語テストに掲載された
内訳が記載されている(乙29の16,乙33の10,乙35の16,乙
37の15。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,原告Wは,本件許諾
申請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に上記被告ら4社の
本件国語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識した
のみならず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識した
ものと推認される。
以上の事実によれば,原告Wは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領し
た平成12年1月24日の時点には,本件著作物16について,上記被告
ら4社に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこ
れらを知っていたものと認められる。そして,その3年後である平成15
年1月24日は既に経過しているから,原告Wによる本件著作物6の著作
権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権は,すべて,時効に
より消滅したものと認められる。
チ原告についてX
前記1のとおり,被告ら6社は,原告に対し,平成11年11月1()X
日から同月24日にかけて,本件著作物17-1ないし5について,本件
。,許諾申請文書と同様に使用許諾を求める乙第12号証を送付したそして
原告は,平成12年2月20日付けで,被告らに対し,著作物使用許X
諾書による許諾を拒否する旨の回答をしているから,原告は,遅くとX
も,同日までに上記文書を受領したものである。上記文書には,使用教材
一覧表が添付されており「平成10年度,11年度使用教材の発行部数,
及び使用料」として,上記各著作物が被告ら各社の本件国語テストに掲載
された内訳が記載されている(乙29の17,乙31の14,乙33の1
8,乙35の17,乙35の16,乙37の14。)
前記1イ,カ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続的に()
本件各教科書に掲載されていたことからすれば,原告は,本件許諾申X
請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に被告ら6社の本件国
語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識したのみな
らず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識したものと
推認される。
さらに,原告は,JVCAの会員であるところ,JVCAの理事長X
であるFFが,原告の本件著作物17-1ないし10のすべてについX
て,被告ら6社の教科書準拠副教材に無断掲載されている疑いがあると説
明しており(乙2の2,原告自身が,FFから,教科書に掲載されて)X
いる著作物が,全く知らないテスト,ドリル等の副教材に掲載されている
証拠を見せられたなどと陳述していること(乙2の3)からすれば,同原
告は,遅くとも平成11年7月ころまでに,本件著作物17-1ないし1
0のすべてについて被告ら6社の教科書準拠副教材に無断掲載されている
旨の報告を受けたものである。
以上の事実によれば,原告は,本訴提起の3年以上前には,上記文X
書に記載された著作物のみならず,本件著作物17-1ないし10のすべ
てについて,被告ら6社すべてに対する賠償請求が事実上可能な状況の下
に,その可能な程度にこれらを知っていたものと認められる。よって,原
告による本件著作物17-1ないし10の著作権侵害を理由とする不X
法行為に基づく損害賠償請求権は,すべて,時効により消滅したものと認
められる。
ツ原告Yについて
前記1のとおり,被告ら6社は,原告Yに対し,平成11年11月2()
日に,本件著作物18-1について,本件許諾申請文書を送付した。原告
Yは,同月5日付けで,本件許諾申請文書に添付されていた著作物使用許
,(),,諾書に署名押印の上被告らに送付しているから乙7の8原告Yは
遅くとも,同日までに本件許諾申請文書を受領したものである。上記文書
には,使用教材一覧表が添付されており「平成10年度,11年度使用,
教材の発行部数及び使用料」として,本件著作物18-1が被告ら各社の
本件国語テストに掲載された内訳が記載されている(乙29の18,乙3
,,,,)。1の15乙33の11乙35の18乙37の17乙39の15
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,原告Yは,本件許諾
申請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に被告ら6社の本件
国語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識したのみ
ならず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識したもの
と推認される。
以上の事実によれば,原告Yは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領し
た平成11年11月5日の時点には,本件著作物18-1について,被告
ら6社すべてに対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程
度にこれらを知っていたものと認められる。そして,その3年後である平
成14年11月5日は既に経過しているから,原告Yによる本件著作物1
2-1の著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権は,時
効により消滅したものと認められる。
テ原告AAについて
前記1のとおり,被告ら6社は,原告AAに対し,平成11年11月()
2日又は同月19日に,本件著作物20-1及び2について,本件許諾申
請文書を送付した。同月19日付けの送付文書の返送期限は12月3日で
あるから(乙6の2,原告AAは,遅くとも,同日までに本件許諾申請)
文書を受領したものである。上記文書には,使用教材一覧表が添付されて
,「,」,おり平成10年度11年度使用教材の発行部数及び使用料として
本件著作物20-1及び2が被告ら各社の本件国語テストに掲載された内
訳が記載されている(乙29の19,乙31の16,乙33の19,乙3
5の19,乙37の18,乙39の16。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,原告AAは,本件許
諾申請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に被告ら6社の本
件国語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識したの
みならず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識したも
のと推認される。
さらに,原告AAは,JVCAの会員であるところ,JVCAの理事長
であるFFが,本件著作物20-1ないし4のすべてについて,被告ら6
社の教科書準拠副教材に無断掲載されている疑いがあると説明しており
(乙2の2,原告AAもそのころ,上記アの原告Aと同様に,FFから)
その旨の報告を受けていると推認される。
以上の事実によれば,原告AAは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領
した平成11年12月3日の時点には,上記文書に記載された著作物のみ
ならず,本件著作物20-1ないし4のすべてについて,被告ら6社に対
する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこれらを知っ
ていたものと認められる。そして,その3年後である平成14年12月3
日は既に経過しているから,原告AAによる本件著作物20-1ないし4
の著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権は,すべて,
時効により消滅したものと認められる。
ト原告BBについて
前記1のとおり,被告ら6社は,原告BBに対し,平成11年11月()
2日に,本件著作物21-1ないし5(被告青葉出版及び同新学社につい
ては本件著作物21-6も含む)について,本件許諾申請文書を送付し。
た。原告BBは,同月5日付けで,本件許諾申請文書に添付されていた著
,(),作物使用許諾書に署名押印の上被告らに送付しているから乙7の9
原告BBは,遅くとも,同日までに本件許諾申請文書を受領したものであ
る。上記文書には,使用教材一覧表が添付されており「平成10年度,,
11年度使用教材の発行部数及び使用料」として,上記各著作物が被告ら
(,各社の本件国語テストに掲載された内訳が記載されている乙29の20
乙31の17,乙33の12,乙35の20,乙37の19,乙39の1
7。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,原告BBは,本件許
諾申請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に被告ら6社の本
件国語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識したの
みならず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識したも
のと推認される。
以上の事実によれば,原告BBは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領
した平成11年11月5日の時点には,本件著作物21-1ないし5(被
告青葉出版及び同新学社については本件著作物21-6も含む)につい。
て,被告らに対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度
にこれらを知っていたものと認められる。そして,平成11年11月5日
の3年後である平成14年11月5日は既に経過しているから,原告BB
による本件著作物21-1ないし5(被告青葉出版及び同新学社について
は本件著作物21-6も含む)の著作権侵害を理由とする不法行為に基。
づく損害賠償請求権は,時効により消滅したものと認められる。
ナ原告CCについて
前記1のとおり,被告ら6社は,原告CCに対し,平成11年11月()
2日に,本件著作物22-1(被告文溪堂については22-2も含む)。
について,本件許諾申請文書を送付した。原告CCは,同月8日付けで,
上記許諾申請文書に添付されていた著作物使用許諾書に署名押印の上,被
告らに送付しているから(乙7の10,原告CCは,遅くとも,同日ま)
でに本件許諾申請文書を受領したものである。上記文書には,使用教材一
覧表が添付されており「平成10年度,11年度使用教材の発行部数及,
び使用料」として,本件著作物22-1(被告文溪堂については22-2
も含む)が被告ら各社の本件国語テストに掲載された内訳が記載されて。
いる(乙29の21,乙31の18,乙33の13,乙35の21,乙3
7の20,乙39の18。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,原告CCは,本件許
諾申請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に被告ら6社の本
件国語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識したの
みならず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識したも
のと推認される。
以上の事実によれば,原告CCは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領
した平成11年11月8日の時点には,本件著作物22-1(被告文溪堂
については22-2も含む)について,被告ら6社すべてに対する賠償。
請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこれらを知っていたも
のと認められる。そして,その3年後である平成14年11月8日は既に
経過しているから,原告CCによる本件著作物22-1(被告文溪堂につ
いては22-2も含む)の著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損。
害賠償請求権は,すべて,時効により消滅したものと認められる。
ニ原告DDについて
前記1のとおり,被告ら6社は,原告DDに対し,平成11年11月()
2日に,本件著作物23について,本件許諾申請文書を添付した文書等を
送付した。原告DDは,同月4日付けで,上記許諾申請文書に添付されて
いた著作物使用許諾書に署名押印の上,被告らに送付しているから(乙7
の11,原告DDは,遅くとも,同日までに本件許諾申請文書を受領し)
たものである。上記文書には,使用教材一覧表が添付されており「平成,
10年度,11年度使用教材の発行部数及び使用料」として,本件著作物
23が被告ら各社の本件国語テストに掲載された内訳が記載されている
(乙29の22,乙31の19,乙33の14,乙35の22,乙37の
21,乙39の19。)
前記1イ,カ,キ認定の事実関係及び上記著作物がそれ以前にも継続()
的に本件各教科書に掲載されていたことからすれば,原告DDは,本件許
諾申請文書の受領により,平成10年度及び同11年度に被告ら6社の本
件国語テストに上記著作物が複製され,損害が発生したことを認識したの
みならず,それ以前における複製権侵害による損害についても認識したも
のと推認される。
以上の事実によれば,原告DDは,遅くとも,本件許諾申請文書を受領
した平成11年11月4日の時点には,本件著作物23について,被告ら
6社すべてに対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度
にこれらを知っていたものと認められる。そして,その3年後である平成
14年11月4日は既に経過しているから,原告DDによる本件著作物2
,,3の著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権はすべて
時効により消滅したものと認められる。
ヌまとめ
以上によれば,原告らの被告らに対する複製権侵害を理由とする損害賠
償請求権のうち,原告A,同B,同D,同E,同F,同G,同H,同J,
同L,同Q,同V,同,同AA及び同DDの被告ら6社に対する損害賠X
償請求権は,すべて時効により消滅しているものである。また,原告Nの
被告青葉出版,同光文書院及び同日本標準に対する損害賠償請求権,原告
Oの本件著作物11-1及び2に関する教育同人社を除く被告ら5社に対
する損害賠償請求権,原告Pの本件著作物12-1に関する被告ら6社に
対する損害賠償請求権,原告Tの被告日本標準及び同文溪堂を除く被告ら
4社に対する損害賠償請求権,原告Wの被告教育同人社及び同文溪堂を除
く被告ら4社に対する損害賠償請求権,原告Yの本件著作物18-1に関
する被告ら6社に対する損害賠償請求権,原告BBの本件著作物21-1
ないし5に関する被告ら6社に対する損害賠償請求権及び本件著作物21
-6に関する被告青葉出版と同新学社に対する損害賠償請求権並びに原告
CCの本件著作物22-1に関する被告ら6社に対する損害賠償請求権及
び本件著作物22-2に関する被告文溪堂に対する損害賠償請求権につい
ても,消滅時効が完成しているものと認められる(なお,時効により消滅
,()していない損害賠償請求権については別紙10使用許諾申請書一覧表
の該当欄に「○」を付した。。)
4著作者人格権侵害に基づく慰謝料請求権の消滅時効について()
ア氏名表示権侵害について
ア氏名表示権侵害が認められる範囲は,前記第4の5において認定し()
たとおりである。
原告らの被告らに対する本件各著作物の複製権侵害を理由とする損害
賠償請求権の一部について消滅時効が完成したことは,上記3のとお()
りである。
本件国語テストの大多数には著作者名が表示されていなかったもので
あるところ,前記1カ及びク認定のとおり,原告を除く原告らが受()Z
領していた著作者の会が送付した乙第3号証には,被告らが教科書掲載
著作物を無断使用した本件国語テストの実例2通が添付されていたが,
Zそれらの国語テストには著作者名が表示されておらず,また,原告
を除く原告らに送付された本件許諾申請文書には,サンプルとして「現
行の同学年の使用例」が添付されていた(乙6の1及び2)ことから,
原告を除く原告らは,それらを見れば,本件国語テストに使用されZ
ているのは,教科書掲載著作物の全部又は一部であること,使用される
際に著作者名が表示されていないことを認識することができる。
よって,複製権侵害に基づく損害賠償請求につき,被害者である著作
者が,加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な
程度に損害の発生を現実に認識したのと同時に,氏名表示権侵害につい
ても,これと牽連一体をなす損害として同様の認識をしたと認めるのが
相当である。
したがって,原告らの被告らに対する本件各著作物の氏名表示権侵害
に基づく慰謝料請求権のうち,前記3において複製権侵害に基づく損()
害賠償請求権の消滅時効が完成しているものについては,すべて,前記
3と同様に,時効により消滅したものである。()
イ原告らは,著作者人格権についても,原告Q分,原告Tにつき亡U()
の死後の分を除いた原告22名について,4200個の著作者人格権侵
害があるとして,消滅時効については,それぞれについて,各原告が前
記第3の5〔原告らの主張〕1アの①ないし⑨のすべての事実を現実()
に認識しない限り,消滅時効は完成しない旨主張する。
しかしながら,氏名表示権侵害に基づく慰謝料請求権についても,上
記認定のように,本件国語テストの大多数には,著作者名が表示されて
おらず,かつ,その事実が報道されており(乙14,著作者の会が送)
付した乙第3号証又は本件許諾申請文書に添付されたサンプルをみれ
ば,原告らの著作物が国語テストに掲載される際には,著作者名が表示
されていないことを容易に認識できるのであるから,ある特定の著作物
が本件国語テストに掲載されていたことを知っていれば,それらには,
著作者名が表示されていないことを認識したものと解するのが相当であ
る。現に,原告らは,被告らから一部の本件国語テストに著作者名の表
示がある旨の指摘を受けるまで,複製された著作物にはすべて著作者名
の表示がない旨主張して,被告らに対する賠償請求をしていたものであ
る。したがって,この点に関する原告らの主張は理由がない。
イ同一性保持権侵害について
同一性保持権侵害が認められる範囲は,前記第4の4認定のとおりであ
る。
同一性保持権侵害に基づく損害については,前記アの氏名表示権とは異
なり,原告らの著作物が本件国語テストに掲載された際に,どのような形
式及び態様で改変されたかを実際に確認しない限り,被害者である著作者
が加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度に
損害及び加害者を知り,損害の発生を現実に認識したとはいえないもので
ある。本件では,本訴提起の3年以上前に,原告らが,自己の著作物が改
変されて掲載されている本件国語テストを実際に確認したことを認めるに
足りる証拠はないから,上記認定の同一性保持権侵害が認められる範囲に
ついて,それに基づく慰謝料請求権が時効により消滅したということはで
きない。
8争点(5)イ(時効中断・時効援用権の喪失の成否)について
1時機に後れた攻撃防御方法について()
被告らは,原告らによる債務の承認及び時効援用権の喪失を含む時効中断に
関する新たな主張の追加は,時機に後れた攻撃防御方法として,却下されるべ
きである旨主張する。
本件においては,弁論準備手続における争点の整理中,被告らが消滅時効の
抗弁を主張し,実質的に,本件における最大の争点となったため,当裁判所と
しては,その成否の見通しをつけることがその後の訴訟進行に大きな影響を与
えるとの判断から,まず,当事者双方が消滅時効に関する主張に絞って主張立
証を尽くし,その上で,裁判所において消滅時効の成否について優先して検討
して,今後の訴訟進行の方向性を定める旨の訴訟指揮を行った。そして,当事
者双方は,裁判所の訴訟指揮に従って,消滅時効の成否に関する主張立証を集
中して行い,平成17年3月22日の第9回弁論準備手続期日までに消滅時効
についての主張立証を完了する旨合意した。原告ら及び被告らは,その後約1
年間にわたって前記第3の5のとおり,主張を尽くし,それを裏付ける証拠を
提出するなどの訴訟活動を行い,平成17年3月22日の第9回弁論準備手続
期日において,当事者双方は,不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効に
ついては,他に主張立証はない旨陳述した(第9回弁論準備手続調書。当裁判)
所は,消滅時効に関する当事者双方の主張立証を検討した上で,損害賠償請求
権の一部が時効により消滅したことを前提に,原告らに対して不当利得につい
ての主張をするか否か確認し,原告らの不当利得の主張に関する準備書面は平
成17年5月10日までに提出されることとされ,その後,被告らがこれに対
する反論を準備する旨合意した。しかるに,その後,原告らは,平成17年5
月10日付けの原告準備書面7において,上記債務の承認及び時効援用権の喪()
失を含む消滅時効に関する主張を新たに追加し,甲第290号証ないし第29
3号証(枝番を含む)を提出した。以上の経緯は,当裁判所に顕著である。。
以上認定の審理の経過からすれば,上記原告らの主張の追加は,時機に後れ
て提出されたものとの評価を免れない。
しかしながら,当事者双方が消滅時効に関する主張に絞って主張立証を尽く
した上で,裁判所において消滅時効の成否について優先して検討するという当
裁判所の訴訟指揮の趣旨は,それによってその後の訴訟進行の方向性を定める
ことが目的であること,当事者が消滅時効についての主張立証を集中的に行っ
た結果,その後,訴訟進行の方向性が定まり,口頭弁論終結に向けての当事者
の主張立証の準備が促進されたこと,原告らが債務の承認及び時効援用権の喪
失を含む消滅時効に関する主張を新たに追加したため,被告らが上記主張に対
する認否反論を準備する必要が生じたが,原告らにおける立証方法が書証(甲
290ないし293。枝番を含む)に限られており,証拠調べに要する時間が。
さらにかかったわけではないこと,以上の事実を総合考慮すると,上記原告ら
の新たな主張の追加は,訴訟の完結を遅延させるものとまでは認められない。
このような経緯をふまえ,当裁判所は,上記原告らの新たな主張の追加を時
機に後れた攻撃防御方法として却下しないこととした。
2あっせんの申請について()
原告らは,あっせんの申請により,被告らが,原告Aら7名の著作物を無
断で複製したことについて,損害賠償義務を負うことを認めた旨主張する。
ア当事者間に争いのない事実並びに証拠(甲290の1ないし7)及び弁論
の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア被告らは,平成13年5月30日,連名で,原告A,亡I,原告N,()
同T,同V,同及び同AAを相手方として,文化庁長官に対して,X
著作権紛争解決あっせんの申請をした(甲290の1ないし7。。)
イ上記あっせんの申請は,原告Aに対しては本件著作物1-1ないし9()
について,亡Iに対しては本件著作物7-1を含む4著作物について,原
告Nに対しては本件著作物10について,亡Uに対しては本件著作物14
-1,2及び4を含む4著作物について,原告Vに対しては本件著作物1
5-1を含む2著作物について,原告に対しては本件著作物17-1なX
いし4を含む5著作物について,原告AAに対しては本件著作物20-1
及び2について,それらを被告らの国語テスト等の図書教材に複製して
利用したことに関し,上記原告ら7名に支払うべき著作物使用料の金額
に関する紛争等の解決につき,著作権法105条に基づくあっせんを求
めるものである。そして,同あっせん申請書には「申請出版社は,平,
成12年度(3学期を除く)の小学校国語教科書に掲載された相手方作
家の文学作品(別紙作品目録1)の全部又は一部を国語テストなどの図
書教材に複製して使用したことについて(可能であれば,平成11年度
以前の利用についても,相手方作家に著作物使用料をお支払いしたい)
と考えております。また,相手方作家もこれ(相手方作家のお立場から
は損害金)を請求されようとしていますが,その金額については合意の
成立には至らず,この点について著作権法の規定する権利に関する紛争
が存在します」と記載されている。。
ウ文化庁長官は,平成13年6月7日付けで,上記あっせんの申請に()
ついてあっせん申請書を添付した上で,上記原告ら7名に対し,著作権
法施行令60条1項に基づき,それぞれ通知し,同通知書はそのころ,
上記7名に到達した。
,,,()エしかし上記原告ら7名はあっせんの申請に同意しなかったため
あっせんに付されることなく,終了した。
イ著作権法105条に規定する著作権紛争解決あっせんの申請は,文化庁
長官に対する申請であるから,被告らがあっせんの申請をしたとしても,
そのことをもって,直ちに上記原告ら7名に対する意思表示又は観念の通
知となるものではない。すなわち,文化庁長官は一方の当事者からあっせ
んの申請があった場合において他の当事者がこれに同意したときは,委員
によるあっせんに付するものとされており(著作権法108条1項,ま)
た,文化庁長官は,当事者の一方からあっせんの申請があったときは,他
の当事者に対し,その旨通知するとともに,相当の期間を指定して,当該
申請に係る事件をあっせんに付することに同意するかどうかを書面をもっ
て回答すべきことを求めることとされており(著作権法施行令60条1
項,それらの規定に基づき,上記通知がされたものであるから,上記通)
知は,あくまで,文化庁長官の上記原告ら7名に対する通知にすぎず,被
告らの上記7名に対する意思表示ないし観念の通知を含むものでないこと
は明らかである。
また,文化庁長官は,上記原告ら7名に対し,上記あっせんの申請に関
,,しあっせん申請書を添付した上で通知書を送付したが上記認定のとおり
同あっせん申請書には,被告らが上記原告ら7名に対し,複製権又は著作
者人格権侵害に基づく損害賠償請求債務を認める趣旨の記載は存在しな
い。
この点につき,原告らは,同あっせん申請書において,被告らは,上記
原告ら7名の著作物を無断で複製したことについて,損害賠償義務を負う
ことを認めた旨主張するが,上記認定のとおり,あっせん申請書には「相
手方作家もこれ(相手方作家のお立場からは損害金)を請求されようとし
ていますが,その金額については合意の成立には至らず,この点について
著作権法の規定する権利に関する紛争が存在します」と記載され,被告。
らが申し出ている著作物使用料は損害金ではないことが明記されているか
ら,この点に関する原告らの主張は失当である。
ウ以上により,上記あっせんの申請をもって,債務の承認ということはで
きない。
3平成13年8月31日付け回答書について()
原告らは,平成13年8月31日付け回答書(甲291の1及び2)は,
,,上記原告ら7名に対して同原告らの著作物を無断で複製したことについて
損害賠償義務を負うことを認めるものであると主張する。
ア被告らの代理人は,平成13年8月31日付け回答書(甲291の1)
において,原告A,亡I,原告N,同T,同V,同及び同AAの代理X
人に対して,前記あっせんの申請について「出版各社から通知人各位に,
対して,平成9年度から平成12年度までの間の各学期の小学校国語教科
書に掲載された作品を,出版各社が製作・発行する国語テストその他の国
語教材の中で利用したことについて,出版各社からお支払いすべき著作物
使用料の金額他に関する合意の成立を求めるものであった」旨説明し,上
記回答書には「出版各社が,一貫して,貴通知書記載の諸問題を誠実な,
話し合いにより解決したいと望んでいることには変わりない」と記載され
ている。
イしかし,前記2イにおいて認定したとおり,そもそも,上記あっせん()
の申請の申請書においては,被告らが申し出ている著作物使用料は損害金
ではないことが明記されているのであるから,同回答書の上記記載も,著
作物使用料を損害金と認めるものでないことを前提として,紛争の解決の
ために誠実に話し合いたい旨を述べているにすぎないものと認められる。
したがって,上記回答書の記載は,被告らが上記原告ら7名に対し,複製
権又は著作者人格権侵害に基づく損害賠償請求債務を認める趣旨であると
はいえない。
ウよって,被告らの代理人が,上記回答書を上記7名の代理人に対して送
付したことは,上記7名の被告らに対する複製権又は著作者人格権侵害に
基づく損害賠償請求の債務の承認とはいえない。
4平成13年12月26日付け回答書について()
原告らは,平成13年12月26日付け回答書(甲292の1)の記載が
時効援用権の喪失に当たる旨主張する。
ア証拠(甲292の1)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
上記原告ら7名は,被告らに対し,平成13年10月31日,消滅時効及
び除斥期間を考慮せず,適正な賠償額の算定をしたい旨の提案をした。被告
らの代理人は,上記原告ら7名の代理人に対し,平成13年12月26日付
け回答書(甲292の1)において,上記提案に対し,同代理人が提示した
,。消滅時効・除斥期間の問題は和解協議の中で柔軟に対応したい旨回答した
しかし,結局,和解協議は不調に終わった。
イ以上の事実によれば,上記回答書に記載された「和解協議の中で柔軟に対
応したい」とあるのは,消滅時効及び除斥期間を考慮せず,適正な賠償額の
算定を行いたいという提案に対して,消滅時効や除斥期間の援用を放棄する
という意味ではなく,むしろ逆に消滅時効や除斥期間の主張についての権利
は留保しつつ,和解協議が調うのであれば,条件次第では放棄又は一部放棄
もあり得るという程度の意味であると認めるのが相当である。そして,上記
和解協議は結局不調に終わったのであるから,被告らが,その後に消滅時効
や除斥期間を主張することは,何ら信義則に反するものではないというべき
である。
5「過去分補償のお支払いについて」と題する書面について()
原告らは「過去分補償のお支払いについて」と題する書面(甲293の,
1ないし10)の送付により,債務の承認があった旨主張する。
ア当事者間に争いのない事実並びに証拠(甲293の1ないし10,乙2
0)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア日図協は,昭和30年8月に,小学校及び中学校で使用される教科()
書以外の図書教材の質の向上と公正な採択を進めることを目的とする任
意団体として発足し,昭和33年8月に文部大臣の認可を受け,社団法
人として設立された団体である。日図協の目的は,図書教材類に関する
調査研究をし,その質的向上及び出版倫理の高揚を図るとともに,会員
相互の連絡研修を行い,もって学校教育の振興に寄与することである。
日図協は,上記目的に従い,①図書教材類の質向上に関する調査研究,
②図書教材の出版倫理の維持高揚,③図書教材類に関する知識の啓発普
及,④会員相互の連絡研修に関する研究会及び講習会等の開催,⑤関係
官庁及び関係業界との連絡協調,⑥図書教材類出版事業の改善合理化に
関する調査研究,⑦機関誌の刊行,⑧その他この法人の目的を達成する
ために必要な事業を行っている(乙20。)
イ日図協は,現在,小学校,中学校及び高校で使用される図書教材等()
を発行する図書教材出版社をもって正会員とし,平成14年11月の段
,()。階で被告ら6社を含む20社が正会員として加盟していた乙20
ウ平成11年に締結された本件協定に基づく過去分の支払について,()
著作者の会と日図協とで協議を重ねた結果,平成14年3月,日図協が
著作者の会に対して,過去分の補償問題に関する協議を提案した。その
提案の骨子は,①過去分の補償の範囲は平成2年から同11年までの1
0年間とする,②精算の基準は,本件協定に基づく計算方式とするとい
うものであった。この提案に対し,平成14年4月,著作者の会から,
日図協の提案をそのまま著作者の会の提案という形で会員に通知する旨
の回答があった。日図協は,この回答を受け,加盟各社及び加盟各社以
外の関係各社にも呼びかけたところ33社が参加することになった乙,(
20。)
エそこで,日図協は,平成14年8月28日,亡K,原告O,同P,()
同Q,同W,同Y,同,同BB,同CC及び同DDの10名に対し,Z
「教科書掲載御作品の教材への使用に関する過去分補償のお支払いにつ
いて」と題する文書(甲293の3,4及び7)を送付し,同文書はそ
のころ,上記原告ら10名に到達した。
オ同文書は,上記ウの趣旨に基づき,国語教科書掲載著作物の関連()()
教材への作品使用に関する過去分の補償の件につき,平成2年度にさか
のぼって行われた使用状況の調査及び使用料の算定に基づいて,亡Kら
上記10名の著作権者に対し,個別に教科書掲載著作物名と支払提示額
「」,の合計額を記載した過去分補償額一覧と題する書面を添付した上で
各著作権者から添付の「振り込み口座連絡用紙」の返送があれば,平成
14年9月内に提示額を振り込む旨を通知するものである。その補償の
対象となる教科書掲載著作物として,亡Kについては本件著作物8を含
む2著作物が,原告Oについては本件著作物11-1及び2が,原告P
については本件著作物12-1が,原告Qについては本件著作物13-
1が,原告Wについては本件著作物16が,原告Yについては本件著作
物18-1及び2が,原告については本件著作物19が,原告BBZ
については本件著作物21-1ないし6が,原告CCについては本件著
作物22-1及び2が,原告DDについては本件著作物23が,それぞ
れ記載され,過去分補償額明細には,各教材会社ごとに「教材名「作,」
品名「教科書会社名「教科書掲載学年「各年度使用料「お支払い」」」」
額」等が記載されている(甲293の1ないし10。)
なお,同文書は,上記ウのとおり,亡Kら上記10名のみを対象と()
するものではなく,教科書掲載著作物を国語テストで使用されている多
くの著作者に対し,著作者の会,日本児童文藝家協会の了解の下に過去
10年分の使用料相当額を過去分の補償として支払う旨の提案の一環と
して送付されたものである(乙20。)
カしかし,結局,亡Kら上記10名は,いずれも日図協の提示には応()
じなかったため,補償額の支払は一切されていない。
イ以上認定のとおり「教科書掲載御作品の教材への使用に関する過去分,
補償のお支払いについて」と題する文書(甲293の1ないし10)は,
日図協から亡Kら上記10名に対して送付された文書である。承認とは,
時効の利益を受ける当事者が,時効によって権利を失う者に対して,その
権利の存在を知っていることを表示することであり,当事者ごとに相対的
なものであるところ,本件全証拠によっても,上記文書が被告らの上記1
0名に対する債務の承認と認めるに足りない。すなわち,各被告らは,日
図協に参加した33社のうちの1つにすぎないこと,上記文書は,日図協
と著作者の会や日本児童文藝家協会等の著作者団体とのさまざまな交渉や
協定の成立を前提として,教科書掲載著作物の国語テストへの使用につい
て将来の許諾を望む被告らをとりまとめようとした日図協が,これまでの
紛争を円満に解決し,将来の許諾を得るための1つの手段として,過去分
の補償金の支払を申し出たものにすぎないものと認められ,そのような文
書の性格を考慮すれば,同文書の送付をもって,直ちに被告ら自身が過去
の損害賠償債務を承認したものと認めることはできないというべきであ
る。
6小括()
以上によれば,原告らが主張する時効中断事由及び時効援用権の喪失の主
張はいずれも失当である。なお,後記112キの被告らの弁済が時効の中断()
事由であるとしても,弁済の時点である平成12年1月ないし3月から,既
に3年以上が経過しているから,この事実を斟酌しても,結論を左右するに
足りない。
したがって,前記73及び4において認定した範囲内で,原告らの被告()()
らに対する複製権侵害及び氏名表示権侵害に基づく損害賠償請求権は,時効
により消滅したと解するのが相当である。
9争点(6)(権利濫用の成否)について
被告らは,本件各著作物を原告らの許諾を得ることなく本件国語テストに掲
載してきたものであり,これが原告らの本件各著作物に係る複製権又は著作者
人格権を侵害するものであることは前記のとおりである。したがって,原告ら
は,被告らに対して,著作権侵害等を理由とする請求権を有するものである。
この点,被告らは,原告らが,教科書準拠図書教材の特殊性から原告らの著
作物を使用することが必要不可欠であるという被告らの状況(窮状)に乗じて,
JVCAの期待どおり,通常では考えられない利益を実現しようとするものであ
る旨主張するが,それを認めるに足りる証拠はない。被告らが本件国語テストを
製作するについては教科書に掲載されている本件各著作物を利用する必要があ
ることは首肯できるが,それは被告らの業務上の都合であるにすぎず,原告ら
が上記著作権侵害を主張することを権利濫用とする根拠となるものではない。
以上により,被告らの権利濫用の主張は理由がない。
10争点(7)(損害の発生及びその額)について
(1)複製権侵害による損害について
ア被告らが,別紙5-1及び2(年度別部数等一覧表)記載のとおり(同
一覧表の「備考」欄に「×」又は「△」を記載したものを除く,本件。)
,。,各著作物を本件国語テストに複製したことは複製権侵害に当たるなお
上記一覧表の「備考」欄に「×」を記載したものについて,本件各著作物
が複製されたことを認めるに足りる証拠はない。
そして,原告らのうち,不法行為に基づく損害賠償請求権の一部又は全
,,,,,,,,部が時効消滅していない原告N同O同P同T同W同Y同Z
同BB及び同CCの複製権侵害は,別紙11-1及び2(複製権侵害損害
額算定一覧表の著作者名著作物名被告名教科書会社名教)「」「」「」「」「
材名」記載のとおりである。そこで,以下,上記複製権侵害による損害額
について検討する。
イ著作権法114条3項による損害の額の算定方法
ア著作権法114条3項は,著作権者等は,故意又は過失によりその()
著作権等を侵害した者に対し,その著作権等の行使につき受けるべき金
銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として,その賠償を請求す
ることができる旨規定している。
イ前記のとおり,本件国語テストは,国語教科書に準拠してその各単()
元に対応して1回分(表裏1枚)が製作され,各学期に6ないし8回,
これを用いたテストが実施されるものであり,本件国語テストにおいて
は,本件各著作物が,表面の上段のほぼ全面に罫線によって四角に囲ま
れた中に挿絵又は写真とともに掲載され,下段の半面又はほぼ全面に,
上段に掲載された本件各著作物に対応した選択式又は記述式の設問が設
けられている。
ウ証拠(乙22の1ないし3,乙23の1及び2,乙45)及び弁論()
の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
a日本児童文藝家協会が定めて著作権等管理事業法に基づき文化庁長官
に届け出ている著作物使用料規程(乙45)6条では,著作物を書籍と
して複製し,公衆に譲渡する場合の使用料は,本体価格の15%に発
行部数を乗じた額を上限とされている。その8条で「著作物を入試問,
題集・一般教養問題集・学習参考書・学校用図書教材等に複製し,公衆
に譲渡する場合の使用料」を「本体価格の5%に発行部数を乗じた額を
本文総ページで割り,使用ページ割合を乗じた額もしくは2000円の
いずれかの高い額」と定めている。
B著作者の会,日本児童文学者協会及び日本児童文藝家協会と被告ら
及び日図協との間で平成11年9月30日に締結された協定書(乙2
2の1)では,被告らは,教科書掲載著作物の原著作者に対して,平
成12年度の教材から,ページ割により5%の使用料を支払う旨定め
られている。本件協定の運用細則(乙22の3)には「本体価格×,
発行部数×印税率×使用割合(ページ割」で算出し「ページ割と),
は,教材出版物の全ページ(広告ページなどは除く)のうち,作品使
用の部分を算定の対象とする。例えば,現行のテスト教材の例でいう
と,概ね1ページの上段全部が作品部分にあたっており,この場合は
1/2となる」旨記載されている。。
C日本児童文藝家協会と日図協との間で平成13年3月27日に締結
された協定書(乙23の1)では,平成14年度以降に教科書に掲載
された文芸著作物を図書教材等に使用する場合の取扱いが定められて
いる。その運用細則(乙23の2)には,①使用料は,ページ割によ
り本体価格の5%(翻訳物については2.5%)であること,②「ペ
ージ割」とは,教材出版物の全ページ数(広告ページなどは除く)の
うち,作品が使用されているページ数の割合をいい,教材出版物中に
作品が使用されている部分が1ページに満たない場合には,各ページ
ごとの作品使用の割合をもって算定するものとし,1/2ページ,1
/3ページのように分子を1とし,分母を整数とする分数によって定
めること,③1教材当たりの年間の使用料が2000円に達しない場
合は,その使用料を2000円(最低補償)とすること等が定められ
ている。
dなお,音楽著作物に関し,社団法人日本音楽著作権協会が文化庁長
官に届け出ている著作物使用料規程では,包括的使用許諾契約を結ぶ
場合にそれ以外の場合より使用料の額を低額に設定している(弁論の
全趣旨。)
エこのような本件国語テストへの本件各著作物の掲載による著作権の()
侵害に関して,原告らが著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当
する額は下記計算式のとおり,本件各著作物を掲載した本件国語テスト
の単価に複製された部数を乗じた額を基礎とし,これに原告らの本件各
著作物が本件国語テストに占める割合(以下「使用率」という)及び。
上記本件各著作物の掲載につき受けるべき金銭の割合(以下「料率」と
いう)を乗じて算定されるべきである。そして,上記各算定の基礎と。
なる数値を求める際には,本件国語テストへの本件各著作物の利用の目
的,態様,販売方法等が考慮に入れられなければならない。
(計算式)単価×部数×使用率×料率
ウ単価について
ア本件国語テストの単価は,被告らが本件国語テストを各小学校に対()
()。して販売する際の価格消費税導入後は本体価格と解するべきである
イ原告らは,本件国語テストの価格は消費税分を含むべきであると主()
張するが,消費税を含むか含まないかは,結局は使用料率の割合と関係
するのであって,前記イウ認定の事実にも照らし,著作権の行使につ()
き受けるべき金銭の額に相当する額を算定する基礎となる価格として,
消費税相当額を控除する方法を用いることが不合理であるとはいえな
い。
ウ弁論の全趣旨によれば,本件国語テストの価格(消費税導入後は本()
体価格は別紙11-1及び2複製権侵害損害額算定一覧表の単),()「
価」欄記載のとおりであると認められる。
エ部数について
ア原告らは,本件各著作物の複製権の侵害を理由に損害賠償を求めて()
いるのであり,著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を
算定するに当たっては,本件各著作物が掲載された本件国語テストが複
製された数量,すなわち,その印刷部数を基礎とすべきである。
イ被告らは,上記印刷部数には,①教師用,破損・損傷等及び転校生が()
あった場合等のための予備,②見本品及び製造過程での剰余部数が含まれ
るとし,これらは対価を得て販売するものではないから,使用料相当額
の算定に当たっては,印刷部数ではなく,本件各著作物が掲載された本
件国語テストが実際に各小学校において採用され,その購入の対象とな
った部数(採択部数)を基礎とすべき旨主張する。しかし,上記①及び
②記載の本件国語テストも,本件各著作物を複製したものであることに
は変わりがなく,本件各著作物に係る著作権の侵害が生じているという
べきであるから,被告らの主張は採用することができない。
他方,原告らは,被告らが印刷部数を明らかにしないので,採択部数
の1.2倍を印刷部数と推定すべきであると主張する。しかし,印刷部
.,数を採択部数の12倍にする合理的な根拠は何ら示されていないから
原告らの主張を直ちに採用することはできず,結局,印刷部数が明らか
でない本件においては,原告らがその立証責任を負担していることに照
らし,少なくとも採択部数分の印刷がされたものとして算定するほかな
い。
ウ弁論の全趣旨によれば,平成2年度から同11年度までの本件国語()
テストが複製された部数は,少なくとも別紙11-2(複製権侵害損害
額算定一覧表)の「採択部数」欄記載のとおりであると認められる。平
成元年以前に複製された部数については,原告らの主張を認めるに足り
る証拠はない。時期的に最も近接した平成2年度において複製された部
数,すなわち,別紙5-2(年度別部数等一覧表)の該当する「出版社
名「教科書会社名「教材名「使用年度(平成2年」における最小」」」)
の「採択部数」を採用すると(採用したものには,別紙5-2(年度別
部数等一覧表)の「備考」欄に「※」を付した,別紙11-1(複。)
製権侵害損害額算定一覧表)の「部数」欄記載のとおりとなる。
オ使用率について
ア本件各著作物の複製がされている部分は,前記1のとおり,本件国()()
語テストの上段の部分に限られるから,使用頁数は,本件各著作物が掲
載されている頁の概ね2分の1と認められる。したがって,著作権の行
使につき受けるべき金銭の額に相当する額の算定に当たっては,使用率
として,上記のような意味での使用頁(2分の1頁)を本件国語テスト
の総頁数で除した数字を用いるのが相当である。
イ原告らは,1頁のうち,使用された面積をもとに使用率を算出する()
方法は合理的でないと主張する。
本件国語テストの設問部分は,本件各著作物の著作物としての創作性
を度外視してはあり得ないものであるが,前記第4の21のとおり,()
本件国語テストは,児童の学習の進捗状況に応じた適宜の段階で,教師
が,各児童ごとにその学力の到達度を把握するものである。証拠(甲1
ないし289の各1)及び弁論の全趣旨によれば,本件国語テストの設
問は,上記の目的に沿うよう創意工夫が凝らされていることが認められ
るのであって,上記設問部分はそれ自体創作性を有し,本件国語テスト
において欠くべからざる位置を占めていることも否定できない。以上の
事情をも考慮すれば,実質的にみても,本件国語テストにおける本件各
著作物の使用率は上記のとおり認定するのが相当である。
ウ昭和58年度から平成元年度までの使用頁数を除すべき本件国語テ()
ストの総頁数は,別紙5-1(年度別部数等一覧表)の「総頁数」欄の
網かけ部分を除き,同欄記載のとおりであることは,当事者間に争いが
ない。平成2年度から同11年度までの総頁数についても,弁論の全趣
旨により,別紙5-2(年度別部数等一覧表)の「総頁数」欄のとおり
であると認められる上記網かけ部分に該当するもの別紙11-1複。((
)),製権侵害損害額算定一覧表の原告Pの番号1ないし18については
弁論の全趣旨により,16頁であったものと認められる。よって,使用
率は,2分の1頁を,別紙11-1及び2(複製権侵害損害額算定一覧
表)の「総頁数」欄記載の頁数で除した数字となる。
カ料率について
平成12年法律第56号による改正前の著作権法114条2項には著,「
作権者又は著作隣接権者は,故意又は過失によりその著作権又は著作隣接
権を侵害した者に対し,その著作権又は著作隣接権の行使につき通常受け
るべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として,その賠償を
求めることができる」と規定されていた。同項の規定は,権利者に最低。
限の損害賠償額を保証する趣旨のものと解されるところ,平成12年改正
により,上記「通常」の語が削除されたのは,侵害者が当初から許諾を得
て利用していた者と同等の負担をすれば済むとすれば,誠実に許諾を受け
た者と同額を賠償すればよいことになり,侵害し得の状況が生じるおそれ
が指摘されていたところから,当該事件の具体的事情を考慮した相当な損
害額の認定ができることとするためである。
上記のような現行著作権法114条3項の趣旨に照らし,前記イウ認()
,,,定の事実に本件で問題となっているのは将来における使用料ではなく
過去の著作権侵害に対する損害額を算定するための受けるべき金銭の額で
あること,本件国語テストにとって教科書掲載著作物を掲載する必要性は
極めて高いこと,その反面,その著作権者としては,本件国語テストが小
学校の副教材としての性質上その単価が低額に抑えられている上に,上記
国語テストに掲載される分は2分の1頁程度であるため,その見返りとし
て得られる使用料額が少額にとどまるものと推測されることを総合すれ
ば,損害額を算定するための基礎となる料率は,本件各著作物のうち次の
翻訳を除く分に関して,10%とするのが相当である。
また,外国作品の翻訳物の利用については,原則として原著作者と翻訳
者の双方の許諾を得た上,その双方に使用料を支払う必要があることが容
易に推認されるところ,その使用料は一般の著作物の場合の2分の1程度
,,と低くなるのが通常であると解されるから上記翻訳に係る分に関しては
翻訳以外の分に係る上記料率の2分の1である5%とするのが相当であ
る。
キ小括
以上により,原告らが本件各著作物の著作権侵害を理由に被告らに対し
て請求することができる損害額は,単価×部数×使用率(使用頁数÷総頁
数)×料率(10%又は5%)により算定した額とするのが相当である。
原告らのうち,不法行為に基づく損害賠償請求権の一部又は全部が時効
消滅していない,原告N,同O,同P,同T,同W,同Y,同,同BBZ
及び同CCの複製権侵害による損害額は,別紙11-1及び2(複製権侵
害損害額算定一覧表)のとおりである(円未満切捨て。)
2著作者人格権侵害による慰謝料額について()
ア同一性保持権について
前記第4の4認定のとおり,本件各著作物のうち,別紙6-1ないし6
(変更内容一覧表)の「侵害の成否」欄に○印が記載されたものは,原告
らの同一性保持権が侵害されたものであり,弁論の全趣旨によると,上記
原告らは,これにより精神的苦痛を被ったものと認められる。
,,,そして前記第4の4認定の改変の態様からすると改変された箇所は
いずれも,文章の意味内容を直接変更するものではないこと,教科書の掲
載態様に合わせて改変した箇所もあること,上記変更はいずれも国語テス
トの設問と解答に必要な問題文を作成するためにされたものであること,
他方,被告らは,改変した本件国語テストを相当部数発行してきたことそ
の他本件に現れた事情を考慮すると,同一性保持権侵害行為に対する慰謝
料として,特定の著作者の1つの著作物に対応する同一被告の国語テスト
(ただし,改変の態様が異なる国語テストについては,別個に損害を算定
。)。,したについてそれぞれ10万円と認めるのが相当であるそうすると
原告らの損害は,別紙6-1ないし6(変更内容一覧表)の「損害額」欄
記載のとおりであり,これを集計すると,別紙13(認容額集計一覧表)
の「同一性保持権侵害慰謝料」欄記載のとおりとなる。
イ氏名表示権侵害について
ア前記第4の5認定のとおりの範囲で,原告らの氏名表示権が侵害さ()
れたものと認められ,弁論の全趣旨によると,上記原告らは,これによ
り精神的苦痛を被ったものと認められる。
そして,本件国語テストは,教科書準拠副教材であり,教科書から引
用されたことが明記されているから,本件国語テスト自体には著作者名
が表示されていないとしても,上記原告らの氏名は教科書を見ることに
よって認識することができること,他方,被告らは,著作者名を表示し
ない本件国語テストを相当部数発行してきたことその他前記5に認定し
た事情を考慮すると,氏名表示権侵害行為に対する慰謝料として,特定
の著作者の1つの著作物に対応する同一被告の国語テストについてそれ
ぞれ5万円と認めるのが相当である。
前記第4の74イのとおり,一部については消滅時効が完成したも()
,,,,,,のであるから時効消滅していない原告N同O同P亡U原告W
同Y,同,同BB及び同CCについて,以下検討する。Z
イ原告Nについては,被告教育同人社,同新学社及び同文溪堂に対す()
る請求権が問題となるところ,被告文溪堂の本件国語テスト(甲263
の1)には著作者名が表示されている。被告教育同人社の本件国語テス
ト(甲159の1)及び同新学社の本件国語テスト(甲120及び12
1の各1)には著作者名の表示がない。よって,同原告の氏名表示権侵
,。害による慰謝料は被告教育同人社及び同新学社に対し各5万円となる
ウ原告Oについては,まず,本件著作物11-1及び2に関し,被告()
教育同人社に対する請求権が問題となるところ,本件国語テスト(甲1
60の1)に著作者名の表示がない。よって,同原告の氏名表示権侵害
による慰謝料は,被告教育同人社に対し5万円となる。また,本件著作
物11-3は,本件国語テストに使用された際に著作者名の表示がされ
ていないことを証する証拠がない。
エ原告Pについては,そもそも,被告ら6社に対する関係で時効消滅()
していない本件著作物12-2に関しては,本件国語テストに使用され
た際に著作者名の表示がされていないことを証する証拠がない。
オ亡Uについては,被告日本標準及び同文溪堂に対する平成7年度以()
前の請求権が問題となるところ,本件国語テストに使用された際に著作
者名の表示がされていないことを証する証拠がない。
カ原告Wについては,被告教育同人社及び同文溪堂に対する請求権が()
問題となるところ,被告教育同人社の本件国語テスト(甲165の1)
及び同文溪堂の本件国語テスト(甲270の1)に著作者名の表示がな
い。よって,同原告の氏名表示権侵害による慰謝料は,被告教育同人社
及び同文溪堂に対し各5万円となる。
キ原告Yについては,そもそも,被告ら6社に対する関係で時効消滅()
していない本件著作物18-2に関しては,本件国語テストに使用され
た際に著作者名の表示がされていないことを証する証拠がない。
ク原告については,そもそも,被告ら6社に対する関係で時効消滅()Z
していない本件著作物19に関しては,本件国語テストに使用された際
に著作者名の表示がされていないことを証する証拠がない。
ケ原告BBについては,そもそも,被告教育同人社,同光文書院,同()
日本標準及び同文溪堂に対する関係で時効消滅していない本件著作物2
1-6に関しては,本件国語テストに使用された際に著作者名の表示が
されていないことを証する証拠がない。
コ原告CCについては,そもそも,被告文溪堂を除く被告ら5社に対()
する関係で時効消滅していない本件著作物22-2及び被告ら6社に対
する関係で時効消滅していない本件著作物22-3に関しては,本件国
語テストに使用された際に著作者名が表示がされていないことを証する
証拠がない。
サそうすると,別紙13(認容額集計一覧表)の「氏名表示権侵害慰()
謝料」欄記載のとおりとなる。
ウなお,原告らは,被告1社当たりかつ1年度ごとに,30万円ないし5
0万円の損害が発生していると主張する。しかしながら,原告らは,著作
,,者人格権侵害の立証として平成11年度の本件国語テストのみを提出し
それ以前の年度においても同様の侵害があったはずであると主張している
ところ,同一性保持権を侵害されたことによる慰謝料は改変という行為に
よって生じるものであり,氏名表示権を侵害されたことによる慰謝料も,
著作者名を表示しないで著作物を公衆に提供又は提示するという行為によ
って生じるものであって,年度ごとに毎年発生するという性質のものとは
いえない。なお,著作権法113条1項2号は著作者人格権を侵害する行
為によって作成された物を情を知って頒布する行為を著作者人格権を侵害
する行為とみなしているが,本件において,被告らの行為が,平成11年
度までの時点で,著作者人格権の侵害であることが公権的判断としてされ
,。てはいなかったから被告らが情を知って頒布したということはできない
3弁護士費用()
原告らが,本件訴訟の提起,遂行のために訴訟代理人を選任したことは,
当裁判所に顕著であるところ,本件訴訟の事案の性質,内容,審理の経過,
認容額等の諸事情を考慮すると,被告らの著作権及び著作者人格権侵害行為
と相当因果関係のある弁護士費用の額としては,上記1及び2認定の損害()()
額の10%が相当であり上記原告らそれぞれの弁護士費用は別紙13認,,(
容額集計一覧表)の「弁護士費用」欄記載のとおりである。
4遅延損害金の起算日について()
不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金の起算点は不法行為時である
ところ(最高裁昭和34年オ第117号同37年9月4日第三小法廷判決()
・民集16巻9号1834頁,最高裁昭和55年オ第1113号同58年()
9月6日第三小法廷判決・民集37巻7号901頁,著作権侵害に基づく)
損害については,本件国語テストの各発行年度の損害額につき,遅くとも当
該年度の末日に遅滞に陥り,著作者人格権侵害に基づく損害については,遅
くとも平成11年度の末日までに損害が発生し,同日遅滞に陥るものと解さ
れる。
損害金については,別紙1(付帯金目録)の左欄記載のとおりである。
11争点(8)(利得と損失の発生及びその額)について
1前記のとおり,被告らは,少なくとも,原告らが予備的請求として主張()
している平成5年から同11年までの間,原告の許諾を受けることなく本件
各著作物を複製し,本件国語テストを製作販売して収益を上げていた。した
がって,被告らは,この間,本来著作者である原告らの許諾を得て相当な使
用許諾料を支払わなければならないところ,法律上の原因がないにもかかわ
らず,これを支払わずに収益を上げていたのであるから,その支払うべき使
用許諾料に相当する利得を得ており,一方,これにより,原告らは,本来被
告らに本件各著作物の使用を許諾していれば得られたであろう使用許諾料相
当額の損失を被っていると認められる。
したがって,被告らは,損害賠償請求権が時効により消滅した原告らに対
し,上記使用料相当額を不当利得として返還する義務がある。
前記7認定のとおり,複製権侵害を理由とする損害賠償請求権が時効によ
り消滅した原告A,同B,同D,同E,同F,同G,同H,同J,同L,同
Q,同V,同,同AA及び同DDの被告ら6社に対する請求権のすべて並X
びに原告Nの被告青葉出版,同光文書院及び同日本標準に対する請求権,原
告Oの本件著作物11-1及び2に関する被告教育同人社を除く被告ら5社
に対する請求権,原告Pの本件著作物12-1に関する被告ら6社に対する
請求権,原告Tの被告青葉出版,同教育同人社,同光文書院及び同新学社に
対する請求権,原告Wの被告青葉出版,同光文書院,同新学社及び同日本標
準に対する請求権,原告Yの本件著作物18-1に関する被告ら6社に対す
る請求権,原告BBの本件著作物21-1ないし5に関する被告ら6社に対
,,する請求権及び同21-6に関する被告青葉出版同新学社に対する請求権
原告CCの本件著作物22-1に関する被告ら6社に対する請求権及び本件
著作物22-2に関する被告文溪堂に対する請求権について,以下,不当利
得返還請求権に係る利得額を検討する。
2返還されるべき利得額について()
ア前記1認定のとおり,原告らの損失と因果関係のある被告らの利得は()
使用料相当額であるから,その算定は,前記101に準じて,本件各著作()
物を掲載した本件国語テストの単価に部数を乗じた額を基礎とし,これに
使用率及び使用料率を乗じて算定されるべきである。なお,この場合,損
失であって損害ではないから,著作権法114条3項が適用される損害賠
償請求と異なり,取引において用いられるべき通常の使用料相当額をもっ
て算定すべきである。
イ単価について
この点は,前記101ウと同様,本体価格を基礎とすべきである。()
平成5年度から同11年度までの本件国語テストの本体価格は,弁論の
全趣旨により,別紙5-2(年度別部数等一覧表)の「本体価格」欄記載
のとおりであると認められる。
ウ部数について
利得を算定する前提となる部数は,前記101イウによれば,発行部数()()
を基礎とすべきである。
上記原告らの本件各著作物に対応する本件国語テストの平成5年度から
同11年度までの発行部数は,弁論の全趣旨により,少なくとも別紙5-
2(年度別部数等一覧表)の各年度における対応する「採択部数」欄のと
おりであると認められる。
エ使用率について
各頁の2分の1を使用頁数とすること,使用率として,使用頁数を本件
国語テストの総頁数で除した数字を用いるのが相当であることについて
は,前記101オと同様である。()
平成5年度から同11年度までの使用頁数を除すべき本件国語テストの
総頁数は,別紙5-2(年度別部数等一覧表)の「総頁数」欄記載のとお
りであると認められることは前記のとおりである。
オ使用料率について
,,,上記アのとおり不当利得返還請求においては損害賠償請求と異なり
取引において用いられるべき通常の使用料相当額をもって算定すべきであ
るところ,前記101イウのとおり,著作者の会と日図協との間で締結さ()()
れた本件協定によれば,著作物の使用料は,ページ割により使用料率を5%
として算定するものと定められていること,日本児童文藝家協会と日図協と
の間で平成13年3月27日に締結された協定書の運用細則によると,作品
の使用料は頁割により5%とし,作品の翻訳物は2.5%とするとされてい
ること,同協会が定めて文化庁長官に届け出ている使用料規程で使用料を本
体価格の5%と定めていることが認められるから,不当利得返還請求におけ
,(.)る利得額の算定の基礎とすべき使用料率は5%翻訳については25%
が相当である。
カ小括
以上により,原告らが本件各著作物に関し,被告らに対して返還請求で
きる利得額は,単価×部数×使用率×使用料率(5%又は2.5%)によ
り算定した額(円未満切捨て)とするのが相当である。
キ弁済について
,,,,,,被告らが原告ら又は著作者の承継人のうち原告B同D同F同G
亡I,亡K,原告L,同O,同P,同W,同Y,同BB,同CC及び同DD
に対しては,別紙9(使用料支払一覧表)の各「著作者」及び「著作権承継
者」欄に対応した各「支払金額」欄記載のとおり,平成10年度及び同11
年度の本件国語テストにおける使用料を,平成12年1月ころから3月ころ
までの間に支払ったことにつき,明らかに争わないから,原告らは,上記事
実を自白したものとみなす。そして,別紙9(使用料支払一覧表)の「乙号
証の番号」欄記載の各証拠によれば,上記各「支払金額」欄記載の金額の本
件国語テストに関する弁済の内訳は,別紙12(不当利得額算定一覧表)の
各「弁済額」欄に記載された額を下回らない。これにより支払われた分は,
原告らに損失がないことに帰する。
よって,利得額は,別紙12(不当利得額算定一覧表)記載のとおりで
ある(円未満切捨て。)
3弁護士費用について()
原告らは,不当利得返還請求である予備的請求においても,原告らの被告
らに対する各年度ごとの請求権に,弁護士費用を加算して請求しているが,
不当利得返還請求権は,弁護士費用が不法行為と相当因果関係のある損害と
して位置付けられる損害賠償請求の場合とは異なる。そして,不当利得返還
,,,請求においては弁護士費用につき被告らには何ら利得は存在しないから
仮に,原告らにとって弁護士費用が損失の一部に当たるとしても,損失に対
応する利得及び因果関係が存在するとはいえない。
したがって,予備的請求において弁護士費用を求める被告らの請求は理由
がない。
4悪意の受益者による利息金請求()
ア被告らは,原告らの本件各著作物を原告らに無断で複製したことについ
て,原告らの許諾を得ていないことを認識していたのであるから「悪意,
の受益者」である。したがって,被告らは,上記使用許諾料相当額に原告
らの請求する本件国語テストの各発行の年度末の翌日からの利息を付けて
返還する義務を負うというべきである。
イ被告らは,本件国語テストにおける本件各著作物の利用について原告らの
許諾が必要であるとは認識していなかったし,その認識がないのももっとも
なことであったと主張する。
アしかし,本件国語テストに著作権法36条の適用がないことは,前()
記3認定のとおりであり,被告らは,法の解釈を誤り,許諾の必要性に
ついて認識していなかったにすぎず,許諾がないことについては十分に
認識していたというべきであるから「悪意の受益者」といわざるを得,
ない。
イ弁論の全趣旨によれば,東京地方裁判所が,昭和40年7月23日,()
教科書会社7社を債権者,日本教育図書出版株式会社を債務者とする仮処
分命令申立事件において,債務者が発行する教科書準拠の学習書に教科書
掲載文が引用されていることが学習書としての性質上必要と認められる正
当な範囲内であり,専ら,教科書の学習に資するため必要な範囲で,その
一部を引用したにすぎないものと認めることができると説示して仮処分命
令申立てを却下したこと,その後,被告らを含む図書教材会社20社は,
昭和43年12月13日付けで,教科書会社27社との間で,図書教材会
社は教科書会社の許諾を要することなく教科書に準拠して教材用テスト等
を製作,出版することができること,上記図書教材会社は教材用テスト等
,,を出版するに当たり教材用テスト等の製作への協力に対する謝礼として
上記教科書会社に昭和39年度から同43年度までの5か年分につき合計
3500万円の謝金を支払うこと,昭和44年度以降の教材用テスト等の
出版の際の教科書利用の条件は別途協議して定めること等を内容とする和
解を成立させたこと,教科書会社の業界団体である教学図書協会と被告ら
を含む教材図書出版の業界団体である日図協は,この和解の趣旨に従い,
昭和44年度においても,上記和解内容と同内容の謝礼金支払に関する基
本契約を締結し,この契約は更新されてきたことが認められる。
しかしながら,上記和解は,あくまで教科書会社と図書教材出版社との
間で成立したものであり,教科書掲載著作物の著作者に対する関係は何ら
和解の対象とはなっていないこと,上記謝金に教科書掲載著作物の著作者
に対する使用料が含まれているという証拠はなく,また,謝金の一部が上
記著作者に支払われた証拠も存在しないこと,本件全証拠に照らしても,
謝金支払に関する交渉経過等において上記著作者に対する使用料が含まれ
,,ているかどうかが協議の対象となった事実を認めるに足りないことまた
被告らが,上記著作者に謝金の一部が支払われているかどうかを確認する
のは容易なことであったにもかかわらず,被告らが著作者に対し何らかの
確認をしたことを認めるに足りる証拠はないことからすれば,上記の事実
は,被告らが「悪意の受益者」であることを妨げる事情とは認められない
というべきである。
ウ利息の利率について
利息の利率は,民法所定の年5分によるべきである。
原告らは,利得者が商人であり,利得物を営業のために利用し収益を上
げていることを理由に商事法定利率によるべきであると主張するが,本件
の不当利得返還請求は,商行為によって生じたものではないから,商事法
定利率を適用する関係にない。
5以上により,不当利得返還請求につき,上記1の原告らの認容額は,別()()
紙12(不当利得額算定一覧表)記載のとおりである。また,利息金につい
ては,別紙1(付帯金目録)の右欄記載のとおりである。
12結論
前記第4の10で認定した損害額と前記4の11で認定した不当利得額を合計す
ると,別紙13(認容額集計一覧表)記載のとおりとなり,遅延損害金ないし
利息金は,別紙1(付帯金目録)記載のとおりとなる。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部
部眞規子裁判長裁判官高
東海林保裁判官
田邉実裁判官
当事者目録
原告A
原告B
原告D
原告E
原告F
原告G
亡I訴訟承継人
原告H
亡K訴訟承継人
原告J
原告L
原告N
原告O
原告P
原告Q
原告T
原告V
原告W
原告X
原告Y
原告Z
原告AA
原告BB
原告CC
原告DD
上記23名訴訟代理人弁護士本田俊雄
同金子悦司郎
同水成直也
同森哲也
同國吉歩
同土田慎太郎
同岡林俊夫
同訴訟復代理人弁護士山本雄祐
被告青葉出版株式会社
被告株式会社教育同人社
被告株式会社光文書院
被告株式会社新学社
被告株式会社日本標準
同訴訟代理人弁護士朝倉正幸
上記被告5名訴訟代理人弁護士岡邦俊
同近藤夏
同前田哲男
被告株式会社文溪堂
同訴訟代理人弁護士石田英遠
同青柳良則

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