弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を仙台高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 原判決は、上告組合は、その経済的基礎を確立するため昭和二三年八月頃林ごの
委託販売を営むことを計画し、林ご移出業者である被上告人B1外数名の者と協議
の上、上告組合は資金を調達して右林ご移出業者に貸し付け、その集荷した林ごの
販売委託を受け、手数料として所定の金員の支払をうける旨協定し、次いで上告組
合は右協定に基づき被上告人B1に対し、判示の期間内に数回にわたり右林ご買付
資金を貸し付けたところ、被上告人B1は右約旨を履行せず多額の貸越金を生じた
ので、上告組合は右貸越金について被上告人B2の保証の下に判示二口の準消費貸
借契約を締結したものであるとの事実を認定した上、乙第六号証(原判決に甲第六
号証とあるのは、乙第六号証の誤記と認められる。)の定款によつて認められるよ
うに、上告組合は農業生産力の増進及び組合員の経済的、社会的地位の向上を図る
ことを目的とし、右目的を達成するため(1)組合員の事業又は生活に必要なる資
金の貸付(2)組合員の貯金の受入―中略―その他右事業に附帯する事業を行うも
のであるが、右定款の条項と農業協同組合法一条、一〇条の規定とを対照してみる
に、上告組合の如き農業協同組合は、広く一般人に対し金銭の貸付を業とするもの
でなく、金銭の貸付はひとり組合員のみに対してなし得るものであること明白であ
り、非組合員に対する貸付を前記定款所定の附帯事業の中に包含するものと解する
こともできないのであつて、従つて本件貸付は無効のものたるを免れず、被上告人
B2の保証もまた無効に帰すべき筋合であると判示していることは、原判文上明ら
かである。しかしながら、右判示前段認定の事実関係の下においては、上告組合は、
その経済的基礎を確立するため、林ごの移出業者である被上告人B1外数名の者と
の間にそれぞれ林ごを集荷せしめ各その集荷にかかる林ごの委託販売をうけ、所定
の手数料を受くべき旨契約を締結し、それら林ご移出業者が林ごの集荷に要すべき
資金を貸し付けることとなつたものであつて、被上告人B1に対してもその資金と
して判示金銭を貸し付けたものであること、本件二口の貸金は右貸付金の帳尻を準
消費貸借に改めたものであることが明認し得られるのであるから、右は被上告人B
1が上告組合の組合員でなくとも、特段な事情の認められない限りは、少くとも右
にいわゆる上告組合の事業に附帯する事業の範囲内に属するものと認めるを相当と
する。
 しからば、原判決が右特段な事情につき何ら言及することなく、本件貸金が組合
員でないものに対して貸し付けられたものであり、又それが前記定款にいわゆる附
帯事業の内に包含されるものとも認め難いとして、これを無効であると判示したの
は、審理不尽ないしは理由不備のそしりを免れない。
 よつて、その余の論旨に対する判断を省略し、民訴四〇七条一項により、裁判官
全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫

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