弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士青柳孝、同青柳孝夫の上告理由第一の一(イ)について。
 所論は、昭和二五年政令二八八号二条一項本文中かつこ内の規定は、自創法(自
作農創設特別措置法の略称、以下これに準ずる。)で認めた保有制度を無視し、公
共の必要限度を不当に逸脱し、ことに政府がこれを所有しなければならない公共の
必要性がないから、憲法二九条に違反すると主張する。
 しかし、本件土地のように同政令二条一項三号に該当するものとして上告人(控
訴人、原告)より国に譲り渡すべき処分をしたような場合は、自創法で認めた保有
制度とは何ら関係のない別個の理由による譲渡であることはいうまでもないのであ
る。すなわち、自創法が、耕作者の地位を安定し、その労働の成果を公正に享受さ
せ、また、土地の農業上の利用を増進し、以て農業生産力の発展と農村における民
主的傾向の促進を図るには、農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当
であると認めて同法一六条により売渡をなした場合に、その売渡を受け所有するに
至つた者がその農地の耕作をやめたようなときは、その売渡の目的、換言すれば、
自作農創設の目的は失われるのであるから、これを自作農として農業に精進する見
込のある者に譲渡せしめこれをして該農地を所有耕作せしめようとするのである。
そして、右農地の耕作をやめたとき差し当りかかる農業に精進する見込のある者が
ない場合その他命令で定める場合には一時暫定的に政府が当該土地を譲り受け、さ
らに、適当な者があればこれに売り渡すものとしたのである。この場合は、自創法
一六条によつて売り渡された土地が売渡の目的にそわなくなつたためこれを買い戻
す性格を有するものであつて、かかる政府の先買権は、上告人が本件土地の売渡を
受けた当初から自創法二八条の規定により予定されたところとも云うべきである(
本件では原判決も判示しているとおり昭和二七年一〇月一日附で国が上告人から本
件土地を譲り受けたが同二九年七月一日さらに耕作者Bに売り渡しているのである)。
そして、所論規定は右自創法二八条と同趣旨に出たものであつて、結局前述の公共
の必要上設けられた規定であるから、何ら憲法二九条に反するところはない。
 同(ロ)について。
 所論は、本件譲渡の補償は、結局同政令三条三項 規定する算式によつて計算さ
れた額を同政令施行令一四条で定められた本来の補償の額から控除した金額である
から憲法二九条三項所定の正当な補償とはいえないというに帰する。
 しかし、本件のような政府に対する強制譲渡は、前論旨について述べたとおり自
創法一六条によつて売り渡された土地が売渡の目的にそわなくなつたためこれを買
い戻す性格を有するものであり、上告人は本件の土地を自創法一六条により売渡を
受けたものであつて、同法によれば売渡の後に売渡を受けた者について、本件のよ
うな事情を生じた場合には、政府は売渡地の先買権を有し、その価格は売渡の対価
と同額をもつて足りると解すべきであるから(同法二八条二項、同法六条三項、同
法一六条、同法施行規則七条の二の二)本件の土地はもともと右のような条件の下
に売渡された土地とも云うべきであつて、本件政令による政府に対する強制譲渡の
場合においてもこれが対価は、曩になされた売渡の対価を返還するを以て足りる筋
合であると解するを相当とする。そして、本件譲渡の対価は、同政令五条、同施行
令一四条の定める賃貸価格の二八〇倍の額であつて、その額が右自創法一六条によ
る売渡の対価(賃貸価格の四〇倍)を上廻るものであること算数上明らかであるか
ら、本件譲渡の対価をもつて憲法二九条三項違反なりということはできない。
 また、同政令三条三項の規定は、いわゆる強制譲渡の対価とは別個の理由による
政府に対する納付金の規定であつて、むしろ譲渡者の農地自作の年数に応じて譲渡
者に対しても土地の価格騰貴の利益(すなわち、前記政令五条、同施行令一四条に
よる強制譲渡の対価と自創法一六条による売渡の対価との差額は、当該土地の価格
騰貴による利益であつて、その利益は一〇年間自作農として農地の耕作に精進する
結果享受させる趣旨のものである)を保有せしめようとするものである。されば、
少くとも自創法一六条による売渡価格の返還を受けるほか、右価格騰貴の利益をも
受ける以上、同政令三条三項所定の金額を政府に支払うものとしても、憲法二九条
三項に反するものということはできない。
 同二について。
 論旨は、自創法による保有限度内においても政府売渡しの農地を他に賃貸等した
場合は本件政令の適用があり、右以外の農地であればその適用がないというのは、
憲法一四条に違反するというのである。
 しかし、本件のごとく自創法一六条により政府から農地の売渡を受けた者がその
農地の自作をやめたような特別の理由ある場合には自作農創設の目的が失われるか
ら公共の必要上本件政令によりいわゆる強制譲渡をするのである。かように特別の
理由ある場合には他の一般の場合と異る措置が執られたとしても平等の原則に反す
るとはいえないこというまでもない。それ故、所論も採ることができない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文
のとおり判決する。
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    横   田   喜 三 郎
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    高   木   常   七
            裁判官    石   坂   修   一
 裁判官小谷勝重は退官、同垂水克己は病気につき、署名押印することができない。
         裁判長裁判官    横   田   喜 三 郎

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