弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
被告人を懲役6年に処する。
未決勾留日数中480日をその刑に算入する。
名古屋地方検察庁で保管中の覚せい剤2袋(同庁平成26年領第1079
号符号1,2)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
第1被告人は,現金及び品物を窃取する目的で,平成25年3月16日午前7時
50分頃から同日午後7時10分頃までの間に,愛知県北名古屋市ab番地c
d号A方に,その南側掃き出し窓から侵入し,同所において,同人所有又は管
理の通帳等4点在中のショルダーバッグ1個及び腕時計1個(時価合計約2万
3000円相当)を窃取した。
第2被告人は,Bと共謀の上,現金及び品物を窃取する目的で,平成25年9月
12日,C商会代表者Dが看守する愛知県岡崎市e町fg番地h所在の同店事
務所に,その西側出入口から侵入し,同所において,同人所有又は管理の普通
乗用自動車の鍵等45点(時価合計約9900円相当)及びカーメンテナンス
用品18点(販売価格合計6万4785円)を窃取し,さらに,その頃,同店
敷地内において,同人管理の普通乗用自動車1台(販売価格335万6750
円)及びナンバープレート2枚(時価合計約1440円相当)を窃取した。
第3被告人は,B及び氏名不詳者と共謀の上,現金及び品物を窃取する目的で,
平成25年9月20日午後7時12分頃,名古屋市i区jk丁目l番地m号E
方に,その西側掃き出し窓及び東側玄関から侵入し,同所において,同人ほか
1名所有の現金約340万円及び指輪等39点(時価合計約33万円相当)を
窃取した。
第4被告人は,F,G及びHと共謀の上,品物を窃取する目的で,平成25年1
1月19日午前2時16分頃,株式会社IJ店店長Kが看守する愛知県長久手
市no番地p所在の同店に,その南側出入口ドアから侵入した上,同所におい
て,同人管理のカメラ等49点(販売価格合計499万4700円)及び引き
出し2個(時価合計約2000円相当)を窃取した。
第5被告人は,G及びLと共謀の上,金品窃取の目的で,平成26年1月25日
午前3時49分頃,株式会社MN店店長Oが看守する岐阜県各務原市q町r番
地所在の同店に,その北側腰高窓から侵入し,その頃,同所において,店内に
あった机の引出しを開けて物色したが,防犯装置が作動して煙が噴射されたた
め逃走し,その目的を遂げなかった。
第6被告人は,法定の除外事由がないのに,平成26年1月27日頃,名古屋市
s区tu丁目v番地名鉄協商パーキングwに駐車中の自動車内において,覚せ
い剤であるフエニルメチルアミノプロパンの塩類若干量を含有する水溶液を自
己の身体に注射し,もって覚せい剤を使用した。
第7被告人は,みだりに,平成26年1月27日,名古屋市x区yz丁目α番β
号γ西側駐車場に駐車中の前記第6の自動車内において,覚せい剤であるフエ
ニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する結晶約0.471グラムを所持し
た。
(弁護人の主張に対する判断)
第1弁護人の主張
弁護人は,判示第2,第3,第6及び第7の事実に関する証拠(①判示第3の事
実に関し,甲第6号証ないし第17号証,乙第1号証ないし第9号証(身上調書を
含む。),②判示第2の事実に関し,甲第21号証ないし第23号証,第26号証,
乙第16号証ないし第18号証,③判示第6及び第7の事実に関し,甲第27号証
ないし第48号証,乙第19号証ないし第25号証)は,違法収集証拠として排除
されるべきであり,これらを除く証拠によって前記各事実は認められないから被告
人は無罪であると主張する。
弁護人が前記各証拠を違法収集証拠であるとする理由は,次のとおりである。す
なわち,警察官は,被告人使用車両に無断でGPS端末を設置して,その位置情報
を取得する捜査を行い,被告人らが使用する駐車場を特定し,その後の各種捜査を
行い,被告人らと犯行を結びつける証拠収集が行われた。前記捜査は,プライバシ
ーを侵害する強制処分であるのに,警察官は,十分な時間がありながら,令状を取
得しようと検討すらせず,このような捜査をしたのであるから,令状主義の精神を
没却する重大な違法があり,かつ,将来の違法捜査抑制の観点からも前記各証拠を
排除するのが相当である,というのである。
第2前提事実
関係証拠等により認められる本件の経緯は,次のとおりである。
(以下では,判示第1ないし第7の事実に係る事件を「第1事件」から「第7事
件」のようにいう。)
1本件捜査の概要等
P警察本部捜査第Q課の警察官らは,平成25年6月上旬頃,匿名の人物か
ら,被告人が仲間とともに自動車盗・侵入盗等を行っているという情報を得て,捜
査を進めたところ,被告人が偽造ナンバープレートを装着した車(プリウス,以下
「本件プリウス」という。)を使用していることを把握し,被告人に対する嫌疑を
深め,その尾行等を一週間程度行った。しかし,被告人は本件プリウスを高速で運
転したり,ウィンカーを出さずに進路変更をして脇道に入ったりするなど尾行を警
戒するような運転をしていたため,警察官らは,本件プリウスを失尾することが続
いた。
そのため,警察官らは,他の手段で被告人使用車両の位置を把握しようと考
え,後記の運用要項で定められた手続を経て,平成25年6月13日頃,R株式会
社の提供する位置情報提供及び現場急行サービス用のGPS端末(以下「本件GP
S端末」という。)を被告人に無断で本件プリウスの底部に取り付け,位置情報提
供サービスを利用して,本件GPS端末の位置情報を断続的に取得しつつ尾行等の
捜査を実施した。なお,本件GPS端末は,P警察本部が平成24年6月21日付
けでRと契約を締結し,Rから貸与を受けていたものである。
このような捜査を続けるうち,警察官らは,平成25年7月中旬頃,本件GPS
端末の位置情報を利用し,被告人が本件プリウスを駐車していた愛知県春日井市δ
町εζ番η所在のθ駐車場(以下「本件駐車場」という。)を発見し,被告人の立
ち回り先として把握した。本件駐車場は,有料の露天駐車場であり,駐車場内の様
子を周辺から確認することが可能であった。
警察官らは,その後の張り込みの結果,同年8月下旬頃,被告人が本件プリウス
とは別の車(アイシス,以下「本件アイシス」という。)を使い始めたのを確認し,
同年9月2日,本件プリウスから取り外していた本件GPS端末を被告人に無断で
本件アイシスの底部に取り付けたが,同月29日に位置検索をしても位置情報が得
られなくなったため,本件GPS端末が落下したか被告人に発見されたものと判断
し,この時点で本件GPS端末を利用した捜査を終了する判断をした。なお,位置
情報が得られなくなったのは,被告人が本件GPS端末の存在に気付いて取り外す
などしたためでる。
本件GPS端末のバッテリーは,それほど長時間持つものではなく,本件GPS
端末が本件プリウス,本件アイシスにいったん取り付けられた後にも,警察官らに
よるバッテリー交換は行われていた。
(以下では,本件GPS端末を用いた上記捜査を「本件GPS捜査」という。)。
Rの提供する位置情報提供サービスは,契約者がインターネットに接続され
た携帯電話機等の機器でRのサーバーにアクセスして位置検索をすると,測位され
たGPS端末の所在位置の大まかな住所,測位誤差及び地図上の位置といった位置
情報を使用機器の画面上で得ることができるというものである。位置検索がされた
場合には,位置情報を含む検索結果はRにおいて保管される。
Rの保管する記録(弁護士法23条照会により得られたもの)によると,本件G
PS端末については,平成25年6月13日から最後に位置検索が成功した同年9
月29日午前7時34分までの間,複数の機器から合計1637回の位置検索が行
われ,大半の場合に位置検索が成功しており,その測位誤差は最小で24m,最大
で4096mであった。なお,その後も同月30日までにさらに16回の位置検索
が行われたが,いずれも測位は失敗に終わっている。
この間,位置検索が全くされない日も多くある一方で,多いときは1日に109
回の位置検索が行われていた(平成25年7月21日,本件プリウス関係)。また,
本件GPS捜査は,本件プリウスの失尾が続いたことなどを理由に開始されたもの
であり,捜査第Q課では,基本的に尾行捜査で失尾した際に位置検索を行うとする
建前であったが,本件GPS捜査においては,被告人使用車両に移動の形跡がなく,
車両を失尾したとは考えられない状況でも繰り返して位置検索がされていた(例え
ば,平成25年7月9日午後11時58分から同月14日午後6時0分までの間に
された合計113回の位置検索(本件プリウス関係)では,測位が失敗した1回を
除きすべて同じ愛知県小牧市内の住所が得られており,その測位誤差は最小で32
mであった。)。
なお,Rは,GPS端末の定期自動位置検索等の機能を有するGマネージャーサ
ービスを提供しており,P警察本部は,同サービスを利用する契約はしていたが,
本件GPS捜査では,定期自動位置検索機能は利用されず,上記の位置検索は,い
ずれも手動で行われたものである。
警察官らは,同年9月17日,本件駐車場に盗難被害品であるナンバープレ
ートを装着した車両(フォレスター,以下「本件フォレスター」という。)が駐車
されているのを確認したことから,同月18日,本件フォレスターと被告人との関
連性を捜査するため,本件駐車場を撮影するためのビデオカメラを設置して張り込
みを開始し,同月20日(第3事件の犯行当日)午後5時46分頃,被告人とBと
思われる人物が本件フォレスターに乗車して出発するなどの状況を確認し,この様
子をビデオカメラで撮影した。
S警察署警察官は,同年11月6日,①第3事件の現場マンションの防犯カ
メラで撮影された2名の人物が,その犯行当日に本件駐車場で撮影された前記2名
の人物と同一人か否か,②防犯カメラで撮影された前記2名の人物が,被告人ない
しBの被疑者写真と同一人であるか,③本件駐車場で撮影された前記2名の人物が
前記各被疑者写真と同一人であるか等を鑑定事項とする鑑定(以下「本件画像鑑
定」という。)の嘱託を行い,T大学教授Uによる鑑定が行われた。その鑑定結果
は,前記①について,2名とも同一人である可能性が極めて高い,前記②③につい
ては,いずれも1名とBの被疑者写真は同一人の可能性が極めて高く,もう1名と
被告人の被疑者写真は同一人である可能性が非常に高い,というものであった。
なお,S警察署には,本件GPS捜査を行ったP警察本部捜査第Q課の警察官が
派遣され,第3事件等の捜査に関与するなどしていた。
被告人は,平成26年1月27日,第3事件で通常逮捕され,同年2月17
日に勾留のまま起訴され,同年3月3日,第2事件で通常逮捕されて,同月20日,
勾留のまま起訴され,同月24日,第6,第7事件で通常逮捕され,同年4月4日,
勾留のまま起訴された。
2捜査機関におけるGPS端末を用いた捜査の取扱い等
警察内部には,位置情報を取得する装置(移動追跡装置)を用いた捜査を行
うための移動追跡装置運用要項(以下「運用要項」という。)が存在した。本件G
PS端末は,運用要項にいう移動追跡装置に該当する。
運用要項は,任意捜査として移動追跡装置を用いた捜査を行う場合の取り扱いを
定めたものであり,その実施の要件として,他の捜査では対象の追跡を行うことが
困難であるなど捜査上特に必要であることなどを挙げている。
任意捜査を行うに当たり移動追跡装置を用いる必要があるときは,警察本部捜査
主管課長に申請して事前承認を得なければならず,捜査主任官は,毎日,所属課長
に対して,所属課長は,1週間に1回以上は,主管課長に対して,運用状況を報告
する必要があること,移動追跡装置を使用した捜査の具体的な実施状況等について
は,文書管理等を含め保秘を徹底するものとすることなどが定められていた。
P警察本部の警察官らは,本件GPS捜査について,運用要項にいう任意捜
査に当たると判断しており,本件GPS端末の設置は,主管課長である捜査第Q課
長の承認を得て行われたものであった。同捜査第Q課のV警部補は,運用要項に従
い,所属長であるW警部に対し,毎日,口頭で本件GPS端末の運用状況について
報告を行い,W警部は,毎日,主管課長である捜査第Q課長に対し,GPS端末の
運用状況について報告し,継続使用の承認を受けていた。ただし,これらの運用状
況等に関する文書は作成されてない。
第3本件GPS捜査の強制処分該当性の判断
1本件GPS捜査について
本件GPS捜査は,捜査機関が,平成25年6月13日頃から同年9月29日ま
での間,自動車盗・侵入盗等への関与を疑った被告人について,捜査目的を達成す
るため,被告人の承諾なく,被告人使用車両2台の底部にGPS端末を順次取り付
けて多数回その位置検索を行い,その位置情報を取得したというものである。
そこで,本件GPS捜査が強制処分に該当するかを検討すると,①本件GPS捜
査は,捜査機関において,被告人使用車両が電波の伝わる範囲にあれば,携帯電話
機等の操作といった極めて容易な方法により,被告人使用車両の相当正確となり得
る位置情報をその場で取得することを可能にしたこと,②本件GPS捜査は,具体
的な終期を定めないまま開始されたものであり,本件GPS端末のバッテリー交換
を繰り返すことなどによって長期間にわたり位置検索を続けることが可能であった
こと,③前記①②に照らすと,捜査機関による位置情報の取得が限定の乏しいもの
に流れるおそれがあり,得られた位置情報によって,プライバシー保護の期待が強
い場所での被告人の行動等が把握されるおそれがあったこと,④実際に本件GPS
捜査は,被告人に本件GPS端末を発見されるという偶然の事情で終了するまで,
3か月以上の相当長期にわたって続き,その間,手動で極めて多くの位置検索が行
われ,多くの場合に位置検索が成功し,条件のよい場合には測位誤差数十m以下の
位置情報を得ることができていたことが認められる。
これらの諸点に照らすと,位置検索の結果を個別に見ていけば,その多くが他者
からの被告人使用車両の観察を受忍せざるを得ない場所を示すものであったとして
も,本件GPS捜査は,任意捜査として許容される尾行等とは質的に異なるもので
あり,対象車両の使用者である被告人のプライバシー等に対する大きな侵害を伴う
ものであったといわざるを得ない。本件GPS捜査において位置検索により得られ
た位置情報が捜査機関において蓄積記録されていなかったからといって,プライバ
シー等に対する侵害が小さなものであるなどとはいえない。なお,Rで保管される
本件GPS端末の位置検索結果の入手が捜査機関において可能だったことも明らか
である。
以上によれば,本件GPS捜査は,対象車両の使用者のプライバシー等を大きく
侵害するものであるから,強制処分にあたると認められる。そして,本件GPS捜
査は,携帯電話機等に表示される位置検索結果を目視によって認識するものである
から,少なくとも検証の性質を有するものと考えられる。
2検察官主張の検討
検察官は,論告において,本件GPS端末を利用した捜査は適法であると主張し,
その理由として検察官作成の平成26年10月29日付け意見書を援用する。同意
見書は,本件GPS捜査のうち平成25年9月2日から同月29日にかけて行われ
た本件アイシスに係る捜査につき,尾行の補助手段として実施されたものであって
当該捜査の必要性,緊急性,相当性が認められ適法な任意捜査に当たるとするもの
であり,先行した本件プリウスに係る捜査に何ら触れるものではないが,検察官は,
本件プリウスに係る捜査についても同様の結論を主張するものと解される。
しかしながら,尾行により,対象車両の様子を目視によって観察する場合には,
人的資源に自ずから限界があり,長期にわたって継続的に対象車両を観察すること
は困難であるが,本件GPS捜査にそのような障害はなく,長期間にわたり相当正
確となり得る位置情報を得ることが容易であったのであり,目視による尾行を続け
ることとは質的に異なるものであって,任意捜査として許容される尾行の補助手段
とみることはできない(本件プリウスに係る捜査についてみたように,1日に10
0回以上の位置検索をすることや車両の失尾が考えられない状況で数日間にわたり
位置検索を繰り返すことが,どのような状況で尾行の補助手段として必要となるの
かも証拠上判然としない。)。
前記意見書には,本件GPS端末を被告人使用車両に装着したのは店舗駐車場又
は公道上であり,その装着態様は相当であるとの主張もあるが,その装着態様がプ
ライバシー等に対する侵害の程度を左右するものではなく,装着態様は本件GPS
捜査の強制処分該当性を左右しない。
なお,検察官は,論告において,本件GPS端末の位置検索結果のうち,測位に
失敗した数等を挙げ,本件GPS捜査がプライバシーを制約する程度が大きいとは
いえないと主張するが,実際に精度の良い位置情報が数多く得られていることに目
を向けない議論であり,採ることができない。
3結論
したがって,検証許可状等を得ることなく行った本件GPS捜査は違法である。
第4違法収集証拠排除に関する判断
1甲第11号証,第12号証について
甲第11号証は,本件画像鑑定の鑑定嘱託書謄本であり,甲第12号証は,その
鑑定書である。本件画像鑑定に際しては,本件駐車場で本件フォレスターに乗り込
む被告人及びBらしき人物の映像が鑑定資料とされたところ,本件駐車場は,本件
GPS捜査により被告人の立ち回り先として把握されたものであるから,検察官も
認めるように,本件画像鑑定に係る前記各証拠は,その程度はともかくとして,本
件GPS捜査と関連性を有するといえる。
しかしながら,本件GPS捜査についてみると,①本件GPS捜査が開始された
時点で,被告人の犯罪の嫌疑はそれほど高いものであったとはいえないものの,被
告人使用車両の動静を把握するという捜査目的自体は正当であったといえること,
②本件GPS捜査が行われた当時,GPSを利用した捜査を強制処分とする司法判
断は出されておらず,警察内には任意捜査に当たり移動追跡装置(GPS端末)を
用いることを肯定する運用要項が存在し,警察官らは,これに基づき,毎日,GP
Sの運用状況を上官に口頭で報告するなどしていたほか,定期自動位置検索機能は
利用しないなど,GPSの使用方法についても一定の配慮をしていたことなどから
すれば,本件GPS捜査当時,捜査機関に令状主義を潜脱する意図があったとはい
えないこと(警察官らの当公判廷での本件GPS捜査に関する証言の信用性や本件
GPS捜査について令状取得が検討されていないことについて弁護人が論難するこ
とを踏まえてもこの判断は左右されない。)が指摘できる。加えて,③本件駐車場
は,誰もが利用できる有料の露天駐車場であって,ここでの行動を他者から観察さ
れることは,本件駐車場の使用者にとって受忍せざるを得ないものであること,④
本件GPS捜査によらない尾行等の捜査によっても,第3事件までに本件駐車場を
把握し,本件フォレスターに乗り込む人物らの映像を撮影できていた可能性もある
ことも認められる。さらに,⑤本件画像鑑定には,本件GPS捜査との関連性を有
しない第3事件の現場マンションの防犯カメラ映像と被告人らの被疑者写真も鑑定
資料に用いられ,それぞれの人物の同一性の鑑定も行われており,本件駐車場を撮
影した映像を用いなくとも概ね同様の結論は導けたといえることが認められる。
これらの諸事情にかんがみれば,甲第11号証及び甲第12号証の証拠収集過程
に重大な違法はなく,その証拠能力は否定されないと解するのが相当である。
なお,弁護人は,P警察本部(X課)とRの間の契約条項には,GPS端末設置
物(車両等)の使用者等の同意が得られていないことが明らかな場合に契約の申込
みを承諾しないものとする旨の定めがあるところ,同本部は,設置物の使用者等の
同意が得られないことが明らかであるのを秘して,契約を締結し,Rを誤信させて
本件GPS端末,あるいはその利用により位置情報を把握し得る地位を取得した,
したがって,本件におけるGPS捜査は,犯罪行為によって得た物あるいは地位を
利用した捜査にほかならず,このような物,地位を利用して捜査をした結果である
証拠を排除せず,有罪認定の基礎とすることは,司法の廉潔性の観点から容認でき
るものではないと主張する。
確かに,P警察本部とRの間の契約には弁護人指摘の条項が存在し,この定めと
は別にRがGPS端末を端末設置物の使用者等の同意なしに使用することを許諾し
ていたと認めるに足りる証拠もないが,本件GPS捜査がP警察本部とRとの間で
どのような問題を生じさせるかはともかく,この条項が同意なしにGPS端末が設
置される者を直接保護するためのものとは解されないから,弁護人指摘の点が甲第
11号証及び第12号証の証拠収集過程に重大な違法をもたらすものとはえいない。
2甲第6号証ないし第10号証,甲第21号証ないし第23号証について
これらの証拠は,第2,第3事件の現場状況等に関する証拠であり,各犯行当日
に被害申告がされている以上,本件GPS捜査がなくとも当然に収集されるもので
あって,本件GPS捜査との関連性を有しないから,本件GPS捜査の違法を理由
にその証拠能力が否定されることはない。
3甲第13号証ないし第17号証,乙第1号証ないし第9号証,甲第26号証
ないし第48号証,乙第16号証ないし第25号証について
これらの証拠は,①第3事件に関する平成26年1月24日付け及び同月27日
付けの各捜索差押許可状(本件フォレスターあるいは本件プリウスを捜索対象とす
るもの)に係る捜索差押調書(甲第16号証,第17号証),②被告人とBが第3
事件で逮捕勾留中に作成された各供述調書及び引き当て捜査に係る捜査報告書(甲
第13号証ないし第15号証,乙第1号証ないし第9号証),③被告人が第2事件
で逮捕勾留中に作成された被告人及びBの供述調書(甲第26号証,乙第16ない
し第18号証),④第3事件の逮捕当日に任意提出された被告人の尿の鑑定書,そ
の翌日に実施された本件プリウスに対する捜索の際に発見され,任意提出された覚
せい剤及びその鑑定書等の第3事件での逮捕以降に収集された第6,第7事件関係
の証拠(甲第27号証ないし第48号証),⑤第6,第7の事件で逮捕勾留中の被
告人の供述調書(乙第19ないし第25号証)である。
本件GPS捜査と前記各証拠の関連性をみると,第3事件についての前記捜索差
押許可状及び被告人らの逮捕状の発付に際しては,本件画像鑑定に係る鑑定書(甲
第12号証)等が疎明資料とされたものと考えられ,この限度では本件GPS捜査
と第3事件での逮捕勾留,捜索差押の関連性は認められるが,これらの疎明資料を
違法収集証拠として排除すべき事由は認められないから,同事件での逮捕勾留ある
いは捜索差押の違法は問題とならず,もとよりその後の第2事件,第6,第7事件
での逮捕勾留を違法とする余地もない(なお,Bは第3事件での逮捕以前に別件で
逮捕勾留されていた。)。
そうすると,第2事件,第3事件,第6,第7事件の捜査過程で収集された上記
各証拠について,その証拠収集過程の違法は問題とならず,その証拠能力は否定さ
れない。
4結論
以上のとおりであって,本件GPS捜査は違法であるが,弁護人が違法収集証拠
として排除を求める各証拠は,本件GPS捜査との関連性を有しないものであるか,
関連性を有するとしても,その証拠収集過程に違法はないか,重大な違法まではな
いものであって,いずれも違法収集証拠に当たらず,これらの証拠能力が否定され
ることはない。
なお,弁護人は,GPS端末を用いた捜査の特徴として,捜査の初期段階に被疑
者の行動パターン,拠点等の捜査を行い,その後の各種捜査を行うということがあ
り,おおよそすべての捜査,証拠収集とGPS端末は不可分の関係にあり,個別的
に検討して証拠の関連性を判断すべきではないと主張するが,独自の見解であり,
採用することができない。その他弁護人の主張を踏まえても,証拠能力に関する上
記判断は左右されない。
(求刑懲役8年,覚せい剤2袋の没収)
平成28年1月6日
名古屋地方裁判所刑事第5部
裁判長裁判官奥山豪
裁判官石井寛
裁判官金納達昭

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