弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
         理    由
 抗告人は、原決定を取消す旨の裁判を求め、その理由を別紙抗告理由書記載のと
おり主張した。
 審案するに、抗告人主張のとおり本件競売申立人たる債権者富士商事株式会社が
抗告人に対して有する債権と共にその担保である本件家屋についての抵当権を昭和
四十三年十一月十日Aに譲渡しその旨の登記を経たことは本件記録に徴し認められ
るが、債権者がその執行債権を他に譲渡したことは民事訴訟法第六百七十二条第一
号に該当しないから、原裁判所が、右債権譲渡の事実にかかわりなく競落許可決定
をしたのは、もとより正当であつて何等違法ではない。
 次に本件競売手続につき抗告人主張の停止決定のあつたことは、その提出にかか
る中野簡易裁判所昭和四四年(サ)第一一〇号不動産競売手続停止決定正本によつ
て明かである。しかしながら右停止決定は前記執行債権の支払等の調停事件(同裁
判所昭和四三年(ノ)第二〇二号)終了に至るまで一時の停止を命じているにすぎ
ないのであるから、右裁判の正本が競売裁判所に提出された場合においては同裁判
所は民事訴訟法第五百五十条二号第五百五十一条により本件競落許可決定の言渡が
なされた状態においてその後の手続を停止しておくことを以て足り抗告人主張の如
く、民事訴訟法第六百八十一条第二項第六百七十二条第一号に基づき競落許可決定
を取消すべき事由に該当しない。蓋し同法第六百七十二条第一号の強制執行を許す
べからざること、又は執行を続行すべからざることとは、競売申立の基本債権が弁
済ないしは和解等により消滅したとか、弁済期未到来の債権に基づき執行した場
合、或いは債務名義の執行力が排除された執行力ある裁判の正本が提出された場合
(執行停止の仮処分の本案に該当する裁判があつたとき)をいうもので、本件にお
けるが如く一時的な停止の場合を指称するものではないと解すべきものと考えられ
るからである。
 <要旨>なお、このように停止決定の正本が右許可決定の言渡後に原裁判所に提出
された場合、抗告裁判所は抗告の裁判をするまでに生じた事情を斟酌すべき
であるとして右許可決定を取消すべきである(競落許否の裁判はしないで)とする
見解もあるが、仮に右調停の結果執行債権が消滅した場合又は競売申立の取下がな
された場合には、右事由により更に抗告の申立(期間については本件即時抗告の申
立のときに遡ると解すべきである)をなすべく、一時停止の効力としては本件許可
決定をも取消すべきではない。
 よつて本件抗告は理由がないのでこれを棄却することにし、主文のとおり決定す
る。
 (裁判長裁判官 毛利野富治郎 裁判官 石田哲一 裁判官 加藤隆司)

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