弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被告人A1に関する無罪部分を除きその余の部分を破棄する。
     被告人A2を懲役六月に、被告人A3を懲役十月に、被告人A1を懲役
六月に、各処する。
     但し被告人A2、同A1に対しては本裁判確定の日から各三年間右刑の
執行を猶予する。
     原審の訴訟費用中証人B1、同B2、同B3、同B4、同B5、同B6
(第二回)、同B7、同B8、同B9、同B10(第二回)、同A1、同B11
(第二回)に支給した分は被告人A2の負担とし、同A2、同B12、同B13、
同B14、同B15、同B16、
     同B17、同B18、同B19、同B6(第一回)、同B20、同B2
1、同B22、同B10(第一回)に支給した分は被告人A3の負担とし、同B2
3、同B24、同B25、同B26、同B27、同B28、同B11(第一回)に
支給した分は被告人A3、同A1の負担とし、証人B29、同B30、同B31に
支給した分は被告人三名の負担とし、当審の訴訟費用は全部被告人A3の負担とす
る。
     本件公訴事実中被告人A3が昭和二七年一〇月一日施行の衆議院議員総
選挙において宮崎県第C区から立候補したDに当選を得しむる目的で都城市内の選
挙運動者に供与すべき運動報酬に充てるため同市a町所在の同候補者の選挙事務所

     被告人A2に(一)昭和二七年九月七日頃金五万円、(二)同月一〇日
頃金五万円、(三)同月二〇日頃金十万円を交付したとの点、被告人A2は被告人
A3が右の趣旨で交付するものであることの情を知り乍ら、同人から(一)同年九
月七日頃金五万円、(二)同月一〇日頃金五万円、(三)同月二〇日頃金十万円の
交付を受けたとの点
     については右被告人両名は何れも無罪。
         理    由
 被告人A3の主任弁護人佐々木曼の控訴趣意は同人名義と大野弁護人の同被告人
に関する部分の各控訴趣意書に、被告人A2、同A1の弁護人大野直数の控訴趣意
は同人名義の控訴趣意中右関係被告人に関する部分に記載したとおりであるから、
何れも引用する。
 佐々木弁護人の控訴趣意第一点(事実誤認)について、
 (一) 所論は、
 (イ) 原判示第一の被告人A2に対して三回に亘り合計金二十万円を交付した
のは被告人A1であつて被告人A3ではない。
 (ロ) 仮に被告人A3が交付したものであるとしても右は選挙運動者に対する
運動報酬として交付したものではなく車馬賃等実費支給の目的で授受したものであ
る。
 (ハ) しかも右金員を授受するに至つた経緯は被告人等三名共謀の結果に基き
被告人A3から被告人A2に手交せられたものであるから共謀者間相互の授受であ
つて別罪を構成するものではない。
 というにある。
 よつて原判決が原判示第一、第二の事実認定のために掲げた被告人A2、同A
3、同A1の各司法警察員、検察官に対する供述調書(一部謄本)の記載を綜合す
ると昭和二七年一〇月一日施行の衆議院議員選挙に際して宮崎県第C区から立候補
したDの選挙対策本部ではB29を選挙事務長として発足したものであるが同人は
老齢の為め事実上の運動に適せず実際は被告人A2を総参謀とし被告人A3、A1
がこれに参画し被告人三名が協議の上選挙対策を講じ右三名を以つていわゆる総括
主宰者たる合議体をかたちづくり運動に関する最高方針を定め同選挙区内各市町村
における地区運動責任者の選定、これに対する資金の配分計画をも協義決定したも
のであることが認められる。しかして右資金配分についても初盤、中盤、終盤と大
体三回に分け各地区町村責任者に一回約二万円宛として地区の実情により増減し、
これを交付するについては被告人等三名又は二名の相互承認を受けて被告人等直接
又は会計担当の被告人A1の手を通じ又は会計補助B11を介して為されていたも
のであること被告人等三名の分担区域として都城市南那珂郡を被告人A2が、北諸
県郡を被告人A3が東諸県郡を被告人A1が主として担当し殊に都城市内の下部責
任者の選定、資金の配分については被告人A2に主として委せられていたこと、同
選挙区における法定選挙費用は三十余万円でありその費用は別途に出納責任者であ
る被告人A1が候補者から預りその目的の為めに使用することとしたが当面の対立
候補者であるE候補は前議員であり有力候補であるためこれに勝つが為めには大が
かりの非合法運動を展開し多額の費用を投じて選挙運動者を積極的に活動させる必
要があり、前記配分計画による資金とは右の運動者の車馬賃等を含む実費並びに運
動報酬を一括して供与する趣旨であつたことが認められ、右の決定による配分計画
に基いて被告人A3と(仮に現実の手交者が所論のとおり被告人A1であつたとし
てもそれは右決定を基として為されたものでありしかも被告人A3も同席しこれを
諒承していたことも認められる)被告人A2との間で原判示第一のとおり三回に亘
り合計金二十万円の授受があつたことが認められる。従つて原判決が
 (イ) 右金二十万円の授受を被告人A3の行為と認定したことは事実を誤認し
たものではなく、
 (ロ) 都城市内の選挙運動者に供与すべき実費及び報酬を含めた金員が一括し
て授受されたものであるからこれを単に運動報酬に充てるためになされたものと認
定したことも必ずしも不当ではなく之を判決に影響を及ぼすべき事実の誤認がある
ということはできない。
 (ハ) 右金二十万円を授受するに至つた経緯は前に説明したとおり被告人等三
名において資金配分計画を協議しその結果に基き都城市内における所要の選挙運動
資金額を定めその運動員に対する配分実施の為めの責任者を被告人A2とすること
とし右協議決定の結果に基き該金二十万円の授受が為された実状が窺われる。従つ
て被告人A3は寧ろ被告人A2が後に現実に下部運動員に配分供与した罪につき共
犯者たる立場に在るものと認め<要旨>なければならない。しかして数人共謀して当
選を得又は得しむる目的で選挙運動者に運動報酬となる金員を供与する場合
には共謀者は全員一体となり共同の犯意を実現しようと謀るものであるから共謀者
中何人が該供与資金を出捐しても又該金員供与の実行行為をなすも同じく犯意実現
のためにする行為の分担であり極言すれば一心同体たるべき関係にある共謀者の一
人が他の一人をして共同の犯意ある自己の手足として利用したに過ぎず共謀者は共
に自分自身の行為としての等価値を有するのであるから共謀者内部における金銭供
与実行の為めにする準備的行為と解せられる右金員手交授受の行為には交付罪、受
交付罪の観念を容るる余地はないものといわねばならない。(従つて供与担当者が
供与したときは之と供与罪の共犯が成立するに止まり交付罪が供与罪に吸収せられ
るという関係も生じない)尤も共謀者中右供与資金を受領した者(本件において被
告人A2に該当する)がその金員の一部を未だ他の選挙運動者に供与せずこれを自
己の手許に保留しておる場合(本件において被告人A2は受領金員の一部のみを供
与し他の一部を保留した)には右保留額の限度で共謀者間に交付、受交付の罪の成
立を認むる説がないでもないが(仙台高裁昭和三〇年(う)第一九九号事件同年七
月五日判決参照)交付者と受交付者間に共謀関係の認められない場合は格別共謀者
間における供与資金授受の行為それ自体が交付罪を構成しないこと前説明のとおり
である以上供与資金受領者において未供与の分があつたとしても共謀者間に為され
た曩の金員授受行為の性質に変更を来すものでもなく従つて該保留部分についても
交付罪の観念を容るる余地は存しないものといわなければならない。(同旨大審院
昭和一二年(れ)第三〇二号事件同年七月九日判決、東京高裁昭和二六年(う)第
三六二五号事件同年一〇月三〇日判決、名古屋高裁昭和二九年(う)第自三七九至
三八一号事件同年九月一四日判決参照)そうであれば原判決が被告人A2に関する
原判示第二の二の事実につき共犯関係に在ると認められる被告人A3の原判示第一
の事実につき交付罪の成立を認めたことは事実を誤認し法令の解釈適用を誤つたも
のというの外なく右の誤認は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は
理由があり原判決中被告人A3に関する部分は破棄を免れない。
 (二) 所論は
 (イ) 被告人A3は原判示第三のとおりF外一七名に対し判示趣旨の金員を交
付したことはない。
 (ロ) 仮に金員授受の事実があつたとしても右は選挙運動実費を支給したもの
でその報酬として供与したものではない。
 というに在るが
 (イ) 原判決がこれを認めるために掲げた証拠を綜合すると右供与交付の事実
はこれを認めるに十分である。即ち被告人等が地区選挙運動者に対して、初盤、中
盤、終盤と分ち一地区に約二万円を基準として運動資金を流す基本方針を協議決定
したものであること、右運動資金とは選挙運動者に対する実費、報酬を含む金員で
あつたことは前説明のとおりであつて右基本方針に基き受供与者に対して被告人A
3が自らの手により、或は被告人A1をして、又はB11、B22等を介してそれ
ぞれ供与又は交付したことを優に認めることができる。原判決が採用したこれらの
証拠の内容につき仔細に検討し他の証拠と比較考証したが右採用証拠の信憑力を否
定すべき資料はなく原審の証拠の取捨判断に違法の点は存しない。記録上所論の点
に関する原審の認定した事実を左右するに足る証拠はない。所論は要するに原審の
採用しない証拠に基き独自の見解の下に原審の証拠の取捨、判断、事実の認定を論
難するものであつて論旨は理由がない。
 (ロ) 右供与、交付した金員は冒頭に説明したとおり法定費用内で当選を期す
ることは到底できないとの考慮の下に運動報酬、実費を含めた資金を地区運動責任
者に流すという基本方針に基いて為されたものであり前記証拠によると所論の各金
員授受はすべてその範疇に属し被告人等がこれを認識しながらその供与、交付をし
たことも容易に認められるところである。
 (三) 所論は
 (イ) 原判示第四の金員の供与は被告人A3の行為ではなく被告人A1の行為
である。
 (ロ) しかも右の金員は運動報酬として供与したものではなく運動実費として
支給したものである。
 というにあるが
 (イ) 原判決が右事実認定のために示した証拠の内容を調査し他の証拠を対照
してもその信憑力を否定するに足る証拠はなく従つてこれを事実認定の資料とした
ことは相当であり右の証拠により原判示第四の金員供与は被告人A3が被告人A1
と共謀の上なしたものであることを優に認め得られ、記録上右の認定を左右するに
足る証拠はない。
 (ロ) 前段(二)の(ロ)に説明したとおり原判示の趣旨で供与したことが認
められるから同説朋を引用する。
 (四) 所論は原審は本件の審理に当り関係人の司法警察員に対する一切の供述
調書を提出させる等真実究明のために必要な措置を講じなかつた為めに審理不尽に
陥り事実を誤認したものであるというにある。
 そこで記録について調査すると被告人A3は昭和二七年一〇月一〇日司法警察員
に対する供述調書(第四回)において同人がD候補を応援するに至つた経緯と同陣
営内の作戦計画を述べ、運動に要する資金は同人手持の金員から出資した旨供述し
ている。これに対して被告人A1は同年一〇月三日以降数回に亘る司法警察員並び
に検察官に対する供述中に金員供与の点について供述しているがその間右資金の出
所については何等触れることなく同年一〇月一〇日に至り検察官の取調に対して初
めて運動資金の出所が被告人A3であることを明らかにしており被告人A2の供述
も大体において同様の経過を辿つている。このように運動資金の出所について供述
しなかつた被告人等が一〇月一〇日に至り初めて被告人A3の私金であると供述し
たことからみると被告人等はその以前において資金源について殊更口を喊して語ら
ず一〇月一〇日に至り初めてA3において出資したもののように彼我通応して供述
を合せたかの感があり右資金源に関する限り被告人等の供述部分について真実性を
疑わしむる点がないでもないが凡そ供与罪の成否についてはその資金の出所如何は
何等の関係もなく要は公職選挙法第二二一条所定の要件を具備して金員を供与、受
供与すれば足るのであつて、供与の点に関して被告人A1は司法警察員及び検察官
に対して一〇月一〇日を境として供述を変更した事跡は見当らず前後を通じ一貫し
て被告人A3と共に或は同人の指示により金員を供与した旨供述しており、被告人
A2も同年一〇月二日の司法警察員に対する供述調書において被告人A1と同A3
が相談して各町村の運動責任者に二万円位宛の現金を供与したことを述べており所
論のように被告人A3が資金源を明らかにした後において供与に関する供述を変更
した事跡を発見しない。そして右資金源の点を除くその余の部分に関する被告人等
の供述の内容をつぶさに検討しこれに対応する受供与者の供述の内容と比照したが
右供与の点に関する被告人A3、同A1の供述部分、受供与者等関係人の受供与又
はその取次等に関する供述部分につき、ささいの点においてくいちがいが存すると
しても供与並に受供与の関係に関する限り右各供述の信憑力ないし証拠の証明力に
ついて疑を挾む余地はなく原審がこれらの証拠により金員供与、受供与等の事実を
認定するに足ると認めたことに違法の点はなく従つて原審が被告人等の司法警察員
に対するすべての供述調書の提出を命ずる等の措置をとらなかつたとしても原審に
おいて審理不尽の違法があるということはできない。論旨は理由がない。
 同第二点(採証法則違反)について
 所論は(イ)原判決が原判示第一、第三、第四の事実認定の為めの証拠として判
示受供与者その他関係人の検察官の面前における供述調書謄本を原本につき取調べ
ることなく且弁護人の同意もなく刑事訴訟法第三二一条第一項第二号の書面として
取調べたこと(ロ)B22は昭和二九年四月二三日原審公判廷において取調べられ
ており刑事訴訟法第三二一条第一項第三号に該当する事由がないのに拘らず同人の
司法警察員に対する供述調書を被告人、弁護人の同意なくして証拠調をし、これを
事実認定の証拠としたこと、は何れも採証の法則に違反したものであるというに在
る。
 (イ) よつて原審記録並びに右引用の名勝本を調査すると被告人並びに原審弁
護人は検察官の右書類の証拠調請求に対して謄本により証拠調べが行われることに
ついては何等の異議を述べていないからその点については被告人並びに弁護人は異
議なかりしものと認めなければならぬ。勿論この種の証拠調は原本により行われな
ければならぬことは建前ではあるが原本の使用が滅失その他の事由により不能若し
くは困難な場合もあるからかかる場合には供述者の署名押印の存する当該原本が存
在し原本に証拠能力があり且その謄本が原本を正確に写録したものであるときは謄
本又は抄本の使用を認めるのが相当である場合があるから当事者に異議がない限り
刑事訴訟法第三二一条第三二二条は必ずしも供述者の署名又は押印ある原本によら
なければならないとは解せられない。しかして本件においては被告人及び弁護人に
謄本による証拠調に異議なく且原本に供述者の署名押印があり且原本を正写したも
のと認められ且同法第三二一条第一項第二号所定の要件を具備するものと認められ
るから原判決には所論のような違法はない。(ロ)B22の司法警察員に対する供
述調書につき原審が刑事訴訟法第三二一条第一項第三号の書面として証拠調をなし
且これを事実認定の証拠とした措置については所論の事実が認められ右の措置は違
法たるを免れないがこれを証拠として認定した原判示第三別表第二、第三の各関連
事実は右の証拠を除いてもその余の挙示証拠により優にこれを認めることができる
から右の違法は判決に影響を及ぼすものということはできない。論旨は理由がな
い。
 弁護人大野直数の控訴趣意の各論旨について、
 第一、 被告人A2につき
 (一) (事実誤認)原判決が被告人A2が被告人A3から原判示第二(一)趣
旨の金員の交付を受けた旨認定したことは事実誤認で、これは被告人A2、同A1
間の授受である。
 (二) (理由不備)原判決は被告人三名が運動報酬を供与することにつき共謀
関係があると認定しながら被名人A3が被告人A2に対し運動報酬を供与させる目
的の金員を交付したと認めたことは理由のくいちがいである。
 右(一)(二)の各論旨については佐々木弁護人の同様の論旨につき説示したと
ころと同一であるからいずれも引用する。即ち所論中(一)の部分は理由がないが
(二)については理由があり原判決中被告人A2に関する部分は破棄せざるを得な
い。
 第二、 被告人A3につき
 一、 (一)(事実誤認)原判決が被告人A3が被告人A2に原判示第一の金員
を交付したと認めたことは誤認で右は被告人A1が交付したものであるとの論旨に
ついては前段説明のとおりであるからこれを引用する。
 (二) (事実誤認)原判示第三(別表第二記載の金員供与)の事実は誤認であ
るとの論旨につき次のとおり判断する。
 (1) B18に対する金員供与の点(別表第二22)
 しかしながら被告人三名が選挙運動者に対して実費を含む運動報酬を供与するこ
とを謀議しその供与額、方法等に関して具体的な最高方針を決定していたことは冒
頭に説明したとおりでありこのことはA2の司法警察員に対する第七回供述調書中
にも「私とA3とA1とは常に三人相談し合い乍ら選挙対策を立てたのであり運動
費用を各運動者に渡す場合は私が居る場合は私の承認を受け私が居ない場合はA3
の承認を受けて会計のA1かB11が渡したのである」との記載によるも確認する
ことができ、A3の検察官に対する第二回供述調書中に「日南市のB18にはA2
から同地方の運動が頼んであり同人が九月十四、五日頃事務所に来た際A2から紹
介されA2が情報を聞き私は南那珂を頼むと言つて五万円を同人に渡した」旨の記
載とB18の検察官に対する供述調書中これに照応する記載(但しA3なる氏名は
表現せられずA2とA1ともう一人の人とある)があり被告人A2の検察官に対す
る第六回供述調書中「B18に金五万円を渡した時にはA3もA1も同席してい
た」旨記載を綜合すると原判決の被告人A2とA3が共謀の上B18に対して原判
示第三趣旨の金五万円の供与をした事実は優に認め得られる。
 (2) Gに対する金二万円の供与の事実(別表第二の23)B26に対する金
一万円の供与の事実(同24)
 (3) Hに対する金一万円供与の事実(同9)
 (4) その他の受供与者に対する供与の事実
 被告人三名が各選挙運動者に対し運動資金(報酬を含む)を供与すべき旨共同謀
議したものであることは前説明のとおりであり右の事実と原判決が所論の判示事実
認定の為めに示した証拠の内容を検討綜合すると所論の原判示事実はすべてこれを
認定することができる。記録を調査しその余の証拠と比照考究しても右認定を変更
すべき資料を発見しない。
 (三) (事実誤認)原判示第四(別表第三)において被告人A3同A1の共謀
を認めたことは事実の誤認であり右の供与は被告人A1の単独犯行であるとの所論
につき記録を調査したが原判決が判示事実を認めるために示した証拠によると右金
員供与は被告人A1が直接授受の衡に当つた分も認められるけれども右はすべて被
告人A3の指示に基き為されたものであることが優に認められ記録上右認定に誤が
あると認むべき資料を発見することができない。
 二、 所論の被告人A3が被告人A2に対して合計金二〇万円を原判示第一、二
趣旨で交付した旨認定したことは判例違反である。
 即ち右被告人間に共謀事実を認め而も右両名間の金員授受を交付罪と認めたこと
は判例に違反するとの点については佐々木弁護人の同様の論旨に対する説示をここ
に引用する。
 第三、 被告人A1につき(量刑不当)
 本件犯罪の体様、回数、供与した金額並びにD選挙事務所における被告人の立
場、並びに被告人A2との刑の権衡その他記録上認められる諸般の情状を綜合する
と同被告人に対しては必ずしも懲役刑の実刑を科するの要なく相当期間刑の執行を
猶予して改過自粛の実をあげさせるのが相当と認められる。従つてこれに対して実
刑を以つて臨んだ原判決は科刑不当に重きに過ぎることとなり論旨部分は理由があ
り原判決中同被告人に関する有罪部分は破棄を免れない。
 以上説明のとおり被告人三名に対する原判決は(被告人A1に対する無罪部分を
除き)破棄せざるを得ないので両弁護人のその余の論旨に対する判断を省略し、刑
事訴訟法第三九七条第四〇〇条但書により原判決中被告人A1に対する無罪部分を
除きその余を破棄し、当裁判所において被告事件につき更に次のとおり判決する。
 当裁判所の認める罪となるべき事実及びこれを認めた証拠は原判決中被告人A3
に対する原判示第一、被告人A2に対する原判示第二の一の事実とこれを認めた証
拠を除く外すべて原判決と同一であるからここに引用する。
 法律の適用
 被告人A2につき原判示第二の二の事実について各公職選挙法第二二一条第一項
第一号罰金等臨時措置法第二条第一項(懲役刑選択)刑法第四五条前段第四七条第
一〇条(犯情の最も重いと認める原判決別表第一の17の事実につき定めた刑に法
たの加重をした刑期範囲内で懲役六月)
 被告人A3につき原判示第三、第四の各事実について各公職選挙法第二二一条第
一項第一号、第五号第四につき更に刑法第六〇条、罰金等臨時措置法第二多第一項
(懲役刑選択)刑法第四五条前段第四七条第一〇条(犯情の最も重いと認める原判
決別表第二の22の事実につき定めた刑に法定の加重をした刑期範囲内で懲役十
月)
 被告人A1につき原判示第四の事実について各公職選挙法第二二一条第一項第一
号刑法第六〇条罰金等臨時措置法第二条第一項(懲役刑選択)刑法第四五条前段第
四七条第一〇条(原判決別表第三の2の事実につき定めた刑に法定の加重をした刑
期範囲内で懲役六月)
 被告人A2、同A1の各刑の執行猶予につき各刑法第二五条第一項
 訴訟費用の負担につき刑事訴訟法第一八一条第一項本文、
 本件公訴事実中被告人A3が昭和二七午一〇月一日行われた衆議院議員総選挙に
おいて宮崎県第C区から立候補したDに当選を得しむる目的で都城市内の選挙運動
者に供与すべき運動報酬に充てるため同市a町所在の同候補者選挙事務所で被告人
A2に(一)昭和二七年九月七日頃金五万円、(二)同月一〇日頃金五万円、
(二)同月二〇日頃金十万円を交付したとの点、及び被告人A2が被名人A3から
右趣旨の金員を交付せらるるものであることの情を知り乍ら右三回に亘り合計金二
十万円の交付を受けたとの点は何れも罪とならないから刑事訴訟法第四〇四条第三
三六条前段によりそれぞれ無罪の言渡をする。
 よつて、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 筒井義彦 裁判官 二見虎雄 裁判官 長友文士)

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