弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 一 上告代理人小牧英夫、同高橋敬、同佐伯雄三、同田中秀雄、同深草徹、同筧
宗憲、同松山秀樹、同足立昌昭、同伊東香保、同上原邦彦、同浦井勲、同大搗幸男、
同小貫精一郎、同垣添誠雄、同河瀬長一、同川西譲、同堅正憲一郎、同木下元二、
同木村祐司郎、同木村治子、同小谷正道、同田中治、同田中唯文、同土井憲三、同
中川内良吉、同永田力三、同西村忠行、同野澤涓、同野田底吾、同羽柴修、同古本
英二、同福井茂夫、同藤本哲也、同藤原精吾、同本田卓禾、同前田修、同前田貢、
同山崎満幾美、同山内康雄、同渡辺勝之、同渡辺守、同渡部吉泰、同増田正幸、同
石橋一晃、同井上善雄、同大音師建三、同金子武嗣、同木村保男、同須田政勝、同
原田豊、同真鍋正一、同山崎昌穂、同峯田勝次、同樋渡俊一の上告理由第一点につ
いて
 所論は、要するに、一般国道四三号、兵庫県道高速神戸西宮線及び同大阪西宮線
(以下、これらを「本件道路」という。)の供用に伴い自動車から発せられる騒音、
排気ガス等により、その近隣に居住する上告人らが聴覚障害、呼吸器疾患等の身体
的被害を被っているのに、これを認めなかった原判決には、経験則違反、採証法則
違反、審理不尽、理由不備、理由齟齬の違法があるというものであるところ、所論
の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認
することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠
の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づき若しくは原判決を
正解しないでこれを論難するものにすぎず、採用することができない。
 二 同第二点について
 所論は、要するに、大気中に含まれる窒素酸化物について人の健康に影響を与え
る濃度を確定しないまま、本件道路からの排気ガスによる現状の大気汚染が沿道住
民の健康に影響を与えることを認めるに足りないとし、本件道路からの騒音、排気
ガス等によりその近隣に居住する上告人らが被っている被害が生活妨害にとどまる
ものであるとし、他方、本件道路を走行する自動車台数が増加していること、すな
わち需要があることをもって本件道路に公共性があるとし、また、上告人らが本件
道路の供用廃止を求めているわけではないのに、代替道路がないとし、これらを理
由として上告人らの差止請求を棄却した原判決には、差止請求における受忍限度の
判断につき、法令の解釈適用を誤った違法があり、採証法則違反、経験則違反、判
断遺脱、理由不備の違法があるというものである。
 原審は、その認定に係る騒音等がほぼ一日中沿道の生活空間に流入するという侵
害行為により、そこに居住する上告人らは、騒音により睡眠妨害、会話、電話によ
る通話、家族の団らん、テレビ・ラジオの聴取等に対する妨害及びこれらの悪循環
による精神的苦痛を受け、また、本件道路端から二〇メートル以内に居住する上告
人らは、排気ガス中の浮遊粒子状物質により洗濯物の汚れを始め有形無形の負荷を
受けているが、他方、本件道路が主として産業物資流通のための地域間交通に相当
の寄与をしており、自動車保有台数の増加と貨物及び旅客輸送における自動車輸送
の分担率の上昇に伴い、その寄与の程度は高まっているなどの事実を適法に確定し
た上、本件道路の近隣に居住する上告人らが現に受け、将来も受ける蓋然性の高い
被害の内容が日常生活における妨害にとどまるのに対し、本件道路がその沿道の住
民や企業に対してのみならず、地域間交通や産業経済活動に対してその内容及び量
においてかけがえのない多大な便益を提供しているなどの事情を考慮して、上告人
らの求める差止めを認容すべき違法性があるとはいえないと判断したものというこ
とができる。
 道路等の施設の周辺住民からその供用の差止めが求められた場合に差止請求を認
容すべき違法性があるかどうかを判断するにつき考慮すべき要素は、周辺住民から
損害の賠償が求められた場合に賠償請求を認容すべき違法性があるかどうかを判断
するにつき考慮すべき要素とほぼ共通するのであるが、施設の供用の差止めと金銭
による賠償という請求内容の相違に対応して、違法性の判断において各要素の重要
性をどの程度のものとして考慮するかにはおのずから相違があるから、右両場合の
違法性の有無の判断に差異が生じることがあっても不合理とはいえない。このよう
な見地に立ってみると、原審の右判断は、正当として是認することができ、その過
程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定
を非難するか、又は原判決を正解しないでこれを論難するものにすぎず、採用する
ことができない。
 三 同第三点について
 所論は、要するに、上告人A1、同A2、同A3、同A4が本件道路からの騒音
及び排気ガスによって受けている被害は、損害賠償請求を認容すべきものとされた
者の被害とその深刻さにおいて差がないのに、右上告人らの損害賠償請求を棄却す
べきものとした原判決には、法令の解釈適用を誤った違法があり、理由不備、採証
法則違反、経験則違反の違法があるというものであるところ、所論の点に関する原
審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、
その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実
の認定を非難するか、又は原判決を正解しないでこれを論難するものにすぎず、採
用することができない。
 四 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致
の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    河   合   伸   一
            裁判官    中   島   敏 次 郎
            裁判官    大   西   勝   也
            裁判官    根   岸   重   治

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