弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人向江璋悦の上告趣意は末尾に添附した別紙書面記載の通りである。
 弁護人向江璋悦上告趣意第一点について。
 しかし仮に本件勾留が所論の如き違法であるとしても、それは他の方法によつて
救済を求むべきものであつて、勾留手続に違法があつたとしても其為に第一審の訴
訟手続が全部違法であり且つ無効であるとはいえないばかりでなく、第一審とは別
個の訴訟手続である原審の手続までが違法無効となるべきいわれはない。加之原審
の手続は保釈中に行われたものであるから、被告人に対する勾留が所論の如き違法
があつたとしても原審判決に影響を及ぼさないことが明らかである従つて所論の如
き違憲違法はない。論旨は理由がない(昭和二三年(れ)第六五号同年七月一四日
大法廷判決参照)。
 同第二点について。
 論旨は少年法は少くとも旧少年法第三章刑事処分及び新少年法第四章少年の刑事
事件の部分に関する限り少年に対する特別の刑事訴訟法規であるから別段の規定の
ない以上判決当時の法律である新少年法第五二条によるべきものであると主張する。
しかし新少年法第五二条並に旧少年法第八条は何れも少年に対する刑を成年に対す
る刑と異つたものにしようとしているものであるから少年に対する特別法の性質を
有する実体規定であるといわなければならない。そして犯罪後の法律により刑の変
更があつた場合は、其軽きものを適用すべきことは刑法第六条によつて明らかであ
るが、新少年法第五二条と旧少年法第八条とは同趣旨であつて、刑の変更は無いか
ら、原判決において行為時法である旧少年法を適用したことは相当であつて所論の
如き違法はない。論旨は理由がない。
 同第三点について。
 しかし本件は強盗と窃盗であるから、刑法第一四条の制限内において併合罪の加
重をすると五年以上二〇年以下の懲役刑となるので、これを不定期刑として言渡す
としてもその短期は五年である。(旧少年法第八条一項本文新少年法第五二条第一
項本文)。 そこで言渡すべき不定期刑の短期を五年以下のものとするには勢い酌
量減軽を施さなければならない。原判決はかようなわけで酌量減軽をしたものと思
はれるが、酌量減軽をしたからとて言渡すべき不定期刑の短期を最低限の二年六ケ
月としなければならないという理由はなく、又その長期を強盗の法定刑の短期の五
年未満としなければならないという理由はない。論旨に引用した大審院判例は、定
期刑について酌量減軽をする場合に関するものであつて、不定期刑の言渡をする際
にその長期が、法定刑の短期未満のものでなければならないなどとはいうていない。
所論は右判例を誤解し独自の主張をするものであるから採用できない。
 よつて最高裁判所裁判事務処理規則第九条第二項及び旧刑事訴訟法第四四六条に
より主文の通り判決する。
 以上は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 竹原精太郎関与
  昭和二四年一一月二二日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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