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平成30年6月6日宣告大阪高等裁判所第4刑事部判決
平成291054号
主文
原判決を破棄する。
被告人は無罪。
理由
本件控訴の趣意は,弁護人遠山大輔(主任),同宮本恵伸及び同畑中宏夫
連名作成の控訴趣意書及び同訂正書に,これに対する答弁は,検察官佃美弥
子作成の答弁書及び答弁書補充書に各記載のとおりであるから,これらを引
用するが,控訴の趣意は原判決の事実誤認である。
論旨は,要するに,被告人には詐欺の故意も,共犯者とされるaとの共謀
もなかったのに,これらを認めて被告人に詐欺罪が成立するとした原判決に
は,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある,というのである。
そこで,原審記録を調査し,当審における事実取調べの結果を併せて検討
する。
原判決は,b協会が,被告人を含む「特定ラジオマイク」用として77
0MHzを超え806MHz以下に当たる周波数帯の電波の使用免許を有
する者(以下「既存免許人」という。)に対し,別の周波数帯への移行を
促し,その際,既存免許人が移行先の周波数帯で使用する無線設備等の購
入費用等をb協会が負担することなどを内容とする終了促進措置(以下
「本件終了促進措置」という。)を行うに当たっては,無線設備等の売主
とその買主であるb協会及びこれを無償で譲り受ける既存免許人三者間の
物品売買契約において,既存免許人が新たな無線設備等の納品を受領する
ことが,売買代金をb協会が負担して売主に支払うための条件となってい
ることから,上記物品売買契約時点において,その無線設備等の納品を受
領する意思が既存免許人にないのに,これがあるように装って納品書に受
領した旨記載して代金の支払いを請求する行為は詐欺罪にいう「人を欺」
く行為に当たるとして,本件において,無線設備等の売主である株式会社
c(以下「c社」という。)と既存免許人である被告人との物品売買契約
(以下「本件物品売買契約」という。)書作成時点における被告人の受領
意思の有無が被告人の詐欺の故意に直接的に関わってくるとした。
そして,原判決は,まず,共犯者とされるaについては(同人がc社を
設立し,同人以外の者がその業務に関与していないから,c社の認識につ
いてはaの認識を問題とすれば足りる。),平成26年11月25日に本
件物品売買契約書を作成した時点で同契約書記載の無線設備等を被告人に
納品する意思がなかったことは明らかで,かつ,c社がb協会から契約金
額の交付を受け,被告人に支払う金額との差額を利得する意図であったと
認め,詐欺罪の成立を肯定した上,被告人についてはc社が無線設備
等を納品しないことが本件物品売買契約書の明文に反し,許されないこと
などの契約内容を被告人が被告人が,無線設備等の納品
のための準備・調整すらなされていないのに,納品書に署名押印している,
本件物品売買契約が,被告人やc社に多大な金銭的利益をもたらす内容
で,同契約に関する被告人とa(c社)との合意が後にb協会との間で問
題が生じるおそれのある内容であり,そのようなことを被告人も認識して
aは,被告人に無線設備等を納品する意思がなく,c社に支払わ
れる契約金額と被告人に支払う金額の差額を自ら利得する目的であった,
被告人が,b協会からの事情聴取に対し,特に本件物品売買契約の経緯
に関してaの依頼や同人から交付された経緯書の内容に沿う虚偽の供述を
している,とそれぞれ認定,指摘し,これらを総合考慮して,被告人には,
遅くとも本件物品売買契約書に押印した時点において,c社が被告人に無
線設備等を納品する意思がないことの認識があり,かつ,この点について
被告人とaとの間で共謀があったとしか考えられない,として被告人につ
いても詐欺の故意とaとの共謀を認めた。そして,原判決は,被告人が,
c社はaの設立した会社であることを知らなかったことや,aがd社の無
線設備等を購入するつもりが当初からなかったことを被告人が知らなかっ
たことについては,被告人の故意やaとの共謀の認定を左右しないとして,
これらを踏まえた原審弁護人の主張を排斥した。
確かに,原判決が指摘する,及びの各事実の認定自体に誤りはな
い。しかしながら,それらの事実が意味するところは,aとb協会,aと
c社の関係,それらに対する被告人の認識如何によってその評価は大きく
異なるものであることは,後記のとおりである。同様の観点からすると,
について,被告人において,c社が,納品しないことが本件物品売買契
約書上に記載されている文言に反するものであることは理解していたこと
が認められるが,それが一切例外の許されないことであるとまで理解して
いたと認定することには後記のとおり疑問があり,についても,本件物
品売買契約がc社に多大な利益をもたらす内容であると被告人が認識して
いたと認定することにも後記のとおり疑問がある。原判決は,本件物品売
買契約書の明文と実際には異なる形態の取引を被告人に提案したaが,被
告人との交渉を担当していたb協会の従業員であったことなどを明らかに
軽視しており,是認することができない。
すなわち,原審で取り調べられた関係証拠によれば,次の事実が認めら
れる。
b協会は,当初,本件終了促進措置に関する業務をe株式会社(以下
「e社」という。)に委託し,同社の担当者が,既存免許人である被告人
と交渉していたが,被告人が,その信頼するメーカーから新帯域に対応す
る無線設備が販売されていなかったことや,税金に関する不満などから,
本件終了促進措置に関する基本合意(既存免許人が,手順を踏んで本件終
了促進措置の手続を進めることなどを承諾する内容)に応じていなかった。
b協会は,交渉が難航している既存免許人らとの交渉態勢を強化するため
に,その担当部署を設置し,aがその一員としてb協会の従業員に採用さ
れ,被告人との交渉担当者になった。aは,平成26年8月4日,e社の
担当者とともに初めて被告人を訪問し,b協会の担当者として被告人に紹
介され,被告人との交渉を始めた。
被告人は,aに対し,30年前の周波数帯移行の措置の経験を踏まえて,
移行先の周波数帯の無線設備等について,購入してもその作動状況に信頼
を措けるようになるまで調整・改良が必要で,実際に使うことができない
ことなどを説明していたところ,被告人を単独訪問するようになっていた
aは,同年10月頃に至り,特定ラジオマイクの中で最高級品を製造して
いるd社製の無線設備を選んでb協会に購入してもらうように被告人に勧
めるとともに,b協会が購入した同社の最高級無線設備(D9000シリ
ーズ)等(購入価格2億3000万円余り)を被告人が無償で譲り受けた後
はc社が8600万円で被告人から買い取り,そのお金で被告人が好きな
無線設備を好きな時期に購入することを提案した。被告人は,それで大丈
夫なのかと問い質し,aが問題ない旨答えるなどした結果,被告人はこの
提案を受け入れた。また,その後,aは,c社が被告人に無線設備等を納
品しても買い取って持ち帰ることになるのに,それらに費用がかかること
になるから納品を飛ばしてもよいかと被告人に提案し,被告人から了解を
得て,納品を省略して納品書に被告人の署名押印を得た。なお,本件物品
売買契約書の作成日付は平成26年11月25日,その納品書の作成日付
は同月27日であり,被告人は,同月30日までに納品書の受領確認欄に
署名押印した。
以上のような交渉担当者の交代とその経過は,被告人から見ると,これ
までb協会から委託を受けた会社が担当していたのが,b協会がその従業
員を使って直接,被告人との交渉をすることになったと理解したものと考
えられる。
そしてc社が無線
設備等を納品しないことが本件物品売買契約書の文言に反することを理解
しており,aからc社による買取提案も,本件終了促進措置が元々予定し
ていたものとは異なっていると理解していたからこそ,aに対して大丈夫
かと問い質したものと考えられるけれども,本件物品売買契約の当事者と
して最初に無線設備等の買主となるb協会の従業員で,自分との交渉を担
当していたaが提案し,被告人の確認に対しても問題がないと答えている
以上,これをb協会の了承を得た提案であると受け止めたとしても何ら不
思議ではないし,前記の経過中に,被告人が,この提案をaが独断でした
ものであることに気付くべき契機がなければ,むしろそれをb協会自身に
よる提案であると理解するのが通常であるとすらいえる。そして,納品を
省略することが本件物品売買契約書の文言には反しているとしても,契約
当事者間で,定型的な契約書面を取り交わしつつも,契約書面上の一部の
条項に従わない内容の別段の合意をしてその合意内容に従った取引が行わ
れることは,ままあることである(もとより,明示の条項には従わない旨
の合意が真になされたのであれば,意思の合致である契約は,様式性が強
く求められる特殊な場合を除き,明示の条項に従わない旨の合意に沿った
内容で成立したものといわざるを得ない。)から,被告人において,納品
の省略を書面外での合意事項とすることにつきb協会が了承していると理
解し,b協会の意思から離れたaの独断による提案であると気付かなかっ
たとしても,何ら不自然,不合理とはいえない。原判決は,本件終了促進
措置に関し,契約書面をことさら重視し,契約書面に明示された条項に反
する取引をすること自体がb協会を欺くものであるとみていると解される
が,明示された条項に反する形態の取引を提案してきたのが同契約上買主
として代金を支払うべき立場にあったb協会の交渉担当者であるにもかか
わらず,そのような提案がb協会の意思を離れたものであると被告人が認
識していたといえるだけの事情を何ら認定,説示していないし,当審にお
いて一件記録を精査しても,そのような事情を認定するに足りない。そう
すると,原判決は,納品を省略する等の提案をしてきたのがaというb協
会の交渉担当従業員であるという事実を看過ないし不当に軽視し,その結
果,不合理な事実認定に陥ったものと考えられる。aが,b協会の従業員
であったことは,被告人がc社による買取提案に応じる上で重要な意味が
あり,これを前提にすると,
おいて納品しないことが契約書面の条項に反することは理解していたにし
てもその条項と異なる取り決めをすることがb協会の意図に反したもので
あると理解していたとまで認定することはできない。
次に,が,c社がaの設立した会社で,同社の被
告人との交渉担当者であるとaから聞かされていたfなる人物が実在しな
いことを知っていたとすれば,原判決の説示は首肯可能である。しかしな
がら,被告人が,c社がaの設立した会社であり,fが実在しないことを
知らなかったことを否定することはできない。そうすると,被告人は,c
社が,本件物品売買契約に係る無線設備を実際に仕入れてb協会に売却し,
その代金を得ながら,さらにこれをb協会から入手した被告人から買い取
って中古市場で転売するなどして利益を得ようとしていると認識すること
ができた可能性が考えられるとはいえ,それ自体が不正常ないし違法な取
引であると被告人が考えてしかるべきであったというのは困難であるし,
c社の得る利益が被告人からの買取価格と中古市場での転売価格との差額
にとどまるから,これが多大なものになると被告人が認識しえたのか自体
も疑問である(念のため付言するに,被告人が,現実の納品がないにもか
かわらず,納品書に署名押印するからと言って,c社が本件物品売買契約
に係る無線設備等を実際には仕入れていないことを当然に認識することが
できるものではない。)。被告人が,c社がaの設立した会社であること
を知らなかったことは,aによる提案がb協会の意思を離れたものである
ことに気付く契機の存否に関わる重要な点であるのに,原判決が,この点
を被告人の故意や共謀の認定を左右するものでないと即断したのは誤りで
ある。
また,原審記録上は,被告人は約8600万円を受領したのに対して,
新帯域移行のための設備の購入費用として平成28年10月12日の時点
で,約2000万円しか費やしていなかったと認められるが,それ以降も
費用がさらにかかる可能性があることについては被告人が原審で供述して
おり,これを否定するに足りる事情も見当たらないことから,被告人が本
件一連の取引で多大な金銭的利益を得ていると即断することもできない。
さらに,前記のとおり,被告人が,c社による無線設備等の買取提案が,
b協会の了承の下に進められていると理解していたとみられることからす
ると,納品につき契約書面と齟齬する点があることから後にb協会との間
で問題が生じるおそれのある内容であると被告人が認識していたと認定す
ることもできない。
以上のような被告人の認識状況を踏まえてを
検討すると,原審記録によれば,被告人は,元々,本件物品売買契約書に
かかる無線設備等を自ら使用しようとする意図には乏しく,aの提案に従
ってその納入元であるc社に速やかに買い取ってもらう意図であったと認
められるから,現実に納品されることをさほど重要視していなかったと考
えられ,このような状況下で被告人が納品書に署名押印したのは,当時信
用していたaからその旨要請されて,一応契約書中の文言に形式を合わせ
ておくためであると理解したためと解することもでき,これをもって必ず
しもb協会を欺く意図を推認させる事情とは評価することはできない。ま
た,確かに,原判決が指摘するとおり,納品を省略すると,後にc社から
買取代金が支払われないのに,被告人において,既存無線局免許廃止手続
をとらなければならないというリスクを負う可能性はあるが,これは,b
協会の従業員であるaが無線設備等の納入,買取業者としてc社を推挙し
てきたことを信頼してそのようなリスクをさほど気にかけなかったと理解
することも可能であるし,これが,社会経済上の取引主体としてありえな
いような不合理な取引姿勢とみることはできない。
また,について,原判決は,それを前提として,a及びc社には無線
設備の取り扱い実績が全くなく,被告人にそれらを納品することは困難で
不都合しか生じないから,aは,納品する意思が全くなかったと考えられ
るところ,被告人が,aに納品の意思がないことを認識していなかったと
すると,被告人が納品を求め,aが応じなければそれをb協会に相談する
などしてaがc社を介して詐欺を行おうとしたことが発覚するおそれがあ
り,aがあらかじめ納品する意思がないことを被告人に伝えないことは考
いことを認識していたことやaと共謀していたことを強く推認させるとい
う。しかしながら,aは,被告人と頻繁に接触してその信頼を得ていると
考えていたとみられる上,被告人がd社の無線設備等を使用する気がない
ことも知悉していたのであるから,被告人がその納品にこだわると思って
いたとはにわかに考え難いのであって,被告人が納品を強く要求する可能
性があってそこから自分の犯行が発覚するおそれがあると実際にどれだけ
危惧していたかは疑問であり,aがあらかじめ納品意思がないことを被告
人に伝えないことが考えにくいとは必ずしもいえない。逆に,aにおいて
は,不正に加担したくないとして被告人に拒まれ,不当な利益を得る計画
がとん挫するのを避けるために,納品意思がないことをあえて被告人には
隠し,結果的に,被告人をも騙しとおして利用しようとした可能性も十分
あり得るといえるからは,aが,被告人に仕入れ
を含めた納品に関わる真意を告げず,被告人をも騙しとおして犯行を敢行
しようとした可能性を排斥することができず,この事実から被告人の故意
やaとの共謀を強く推認することができると原判決が判断したのは不合理
である。
さらに,ついては,なるほど,被告人が自己の認識していた事実と
は異なる説明をb協会にしたことは,aとの共謀を推認させる一事情とは
なりうるが,被告人が,aの説明を信じてb協会がc社による買取提案や
納品の省略を了承していると認識していたとすれば,aから被告人に説明
したことはきちっとb協会にも言っていたが,内部処理にかかる問題が事
後的に生じたと説明されるなどしたことから,事実と異なる点については
さほど重大な問題ではないと考えて,aの指示に従って,b協会の調査に
対して受け答えをしてしまったということも
には限界がある。
以上のとおり,aが本件の被害者とされるb協会の従業員で,被告人と
の交渉担当者でもあることや,被告人が,c社がaの設立した会社である
ことを知らなかったことを十分に踏まえ
が生じるのに,原判決は,それらを軽視ないし見落とした
謀が存しなかった
可能性があることを見落として,被告人を有罪と認めたものといわざるを
得ない。
この点,検察官は,c社による無線設備等の買取りというaの提案が,
それまでe社の担当者が進めてきた本件終了促進措置の内容と比較して極
めて特異な内容であり,両者の解離から,本件終了促進措置につき相当程
度の知識を有していた被告人が疑念を抱かなかったはずがない,また,a
にはこのような提案をする権限がなく,被告人もaの立場はe社の担当者
と同じと認識していたというのであるから,b協会がこの提案を了承して
いると信用したとは考え難い,という。
しかしながら,b協会の従業員である交渉担当者の提案は,b協会内部
での了承のもとになされたものと受け止めるのが通常であり,検察官の主
張は,交渉担当者の言うことは更にその真偽を確かめられなければ信用し
てはならないことになりかねず,経済取引活動の実態にそぐわないものと
いわなければならない。また,e社は,b協会から委託を受けたものであ
るから,その事務の内容はb協会との契約に拘束され,その範囲内で業務
を行えば足り,その範囲を逸脱することは許されないのに対し,b協会の
従業員には,そのような契約上の拘束はなく,対内的に委ねられた権限な
いし裁量の範囲がどの程度であれ,対外的にはb協会の意思決定に従って
行動する者と通常受け止められるから,業務委託を受けたe社の従業員と
b協会の従業員との差は有意である。検察官は,被告人がe社の従業員と
aの立場の違いを意識していなかったと指摘し,被告人もこれに沿うかの
ような供述をするが,被告人の供述の趣旨は,両者とも,被告人との交渉
を担当する組織の一員である点では異ならないと被告人が考えていたこと
を指していると理解でき,被告人が,aがe社の従業員と同様にb協会と
の契約の範囲内での業務しかできないとか新たな提案をすることができな
いなどと考えていたことを指すものと理解すべきではないから,検察官の
指摘は失当である。
また,検察官は,基本合意等の締結後,本件物品売買契約書作成前に,
被告人は,本件終了促進措置の対象となるATW-R920受信機をaか
ら複数台受け取っているところ,これは,対象機器を増やすことで,本件
物品売買契約の金額の増額を図ったものと考えられ,被告人もそのことを
知らなかったはずがない,という。確かに,ATW-R920受信機は,
本件終了促進措置の対象機器であるが,被告人は,aから,移行措置の対
象となっていない周波数であるB帯で利用できるという説明を受けて受け
取ったと説明しており,被告人が,捜査段階において,上記受信機が本件
終了促進措置の対象に登録されていたことを知らなかったと供述(原審乙
7号証)しているのが,あながち不自然,不合理であるとはいえず,これ
をもって,被告人も,aとの共謀に基づき詐欺目的で本件物品売買契約の
金額の増額を図ったということはできない。
さらに,検察官は,被告人には,d社の無線設備に乗り換える意思がな
かったから,d社のテスト機の借り入れの必要はなかったのに,その借り
入れを申し込んだのは,d社の無線設備を使用する予定であるとb協会を
誤信させる目的であったと推認させる要素である,という。確かに,その
ようにも理解しうるところであるが,c社による買取提案がb協会の承認
の下に進められていると信じていたならば,その手続きを進める一環とし
て形式上必要なものとしてaから求められれば,被告人においてこれに応
じることもあり得ることであり,この一事をもって詐欺の故意や共謀を認
めることはできない。
検察官は,被告人とaの共謀を推認させる事実として,平成27年2月
2日,c社から被告人経営のgの銀行口座に合計4645万0800円が
振込送金されているところ,aが,買取依頼書及び振込先を書いた被告人
の面前で自分のスマートフォンを操作して送金を行い,振込みが完了した
旨をその場で被告人に告げた際,被告人が「(振込が)もう終わったんで
すか」と発言した状況事実(aの原審供述参照)を指摘し,c社がaの会
社であることを被告人は容易に推測できたはずであるというが,被告人の
上記発言は,むしろc社からの振込がその場で完了したことが被告人の予
期しないことであり,被告人が,aとc社との密接な関係にそれまで気付
いていなかったことを示しているとも解されるし,これは,既に詐欺の実
行行為が完了した後のことにすぎない。そうすると,この事実は被告人の
詐欺の故意や共謀の事実を推認しうるような事実ではない。
以上検討したところによれば,被告人に詐欺の故意があったこと及びa
との共謀があったことを認めることには合理的な疑いが残るといわざるを
得ない。一件記録を精査しても,他に,被告人に詐欺の故意があり,aと
共謀したことを認定するに足る証拠は見当たらない。
したがって,被告人に詐欺の故意及びaとの共謀を認めて被告人を有罪
とした原判決には判決に影響を及ぼすべきことが明らかな事実誤認がある。
論旨は理由がある。
よって,刑訴法397条1項,382条により原判決を破棄し,同法40
0条ただし書により直ちに当裁判所において自判すべきものと認め,本件詐
欺の公訴事実について犯罪の証明がないから,同法336条により被告人に
対し無罪の言渡しをする。
平成30年6月6日
大阪高等裁判所第4刑事部
裁判長裁判官樋󠄀口裕晃
裁判官飯畑正一郎
裁判官佐藤洋幸

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