弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人上野開治の上告理由第一点について。
 土地改良法一条は、農地の集団化について規定しており、その目的として、農業
経営の合理化、農業生産力の発展をかかげ、もつて「食糧その他農産物の生産の維
持増産に寄与することを目的とする。」と規定し、また同法一〇一条一項は、「交
換分合計画は、耕作者の農業経営の合理化に資するように定めなければならない。」
と規定している。農業委員会が、同法九七条二項により農地の交換分合計画を定め
る場合においても、現実の耕作者の農地の集団化をはかるべきは当然であつて、た
めに自作していない農地が、所有者から見て分散されることがあつても止むを得な
いものといわなければならない。上告人は将来自作する場合を予想してその農地の
分散を来す本件交換分合計画の違法を主張するのであるが、将来実現するか否か不
確実な上告人の自作を理由として本件交換計画を違法ということはできない。論旨
は理由がない。
 同第二点について。
 原判決の引用する第一審判決は、本件交換分合計画は広範囲にわたる農地を対象
とし、その計画全体の関連において上告人の失地は訴外D及び同Eの自作地となつ
たものであり、単に耕作権のみの交換により同法の目的を達し得ないため農地所有
権の交換をも必要とするに至つたものである旨認定しているのであつて、右第一審
判決は、所論のように、所有権の交換分合を第一の手段とすべきものとしてはいな
いのである。論旨は原判示にそわない主張であつて採用できない。
 同第三点について。
 同法による権利の交換分合は、前述のように農業経営の合理化、農業生産力の発
展を目的とし、公共の福祉のために行われるのであるから、そのためには、必要に
応じ耕作権のみならず所有権の交換分合をも行い得るものであつて、同法を右のよ
うに解したからといつて、同法が憲法二九条三項に反するものということはできな
い。
 以上説明のとおり本件上告はすべて理由がないからこれを棄却することとし民訴
四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決す
る。
     最高裁判所大法廷
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    高   木   常   七
            裁判官    石   坂   修   一
 裁判長裁判官田中耕太郎は退官につき署名押印することができない。
            裁判官    小   谷   勝   重
 裁判官垂水克己は病気につき署名押印することができない。
            裁判官    小   谷   勝   重

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