弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人葛西千代治の上告理由第一点について。
 所論は、民法三九五条にいう同法六〇二条所定の期間は借地法の規定によつて変
更を受けたものでなく、この点については同趣旨の判例(大審院、大正一五年(オ)
第一一七一号、昭和二年一月三一日言渡、民集六巻一号六頁)も存するのに、原判
決は右と異る判断をなしたとして原判決を攻撃するものであるが、原判決を検討す
れば、原判決は何等論旨の如く判示していない。即ち原判決は民法三九五条にいう
同法六〇二条の制限は借地法の規定にかかわらず、なお存在理由があり、同法の規
定と牴触するものではないが、建物所有を目的とする土地の賃貸借に関する限り、
借地法の適用ある結果、民法六〇二条に定める期間を越えないいわゆる短期賃貸借
なるものは、同条にいう処分の能力または権限を有しない者のなす場合を除いては、
存在する余地なく、あらかじめ契約によつて賃貸借の存続期間を定めなかつたとき
は、借地法二条一項により堅固建物については六〇年、非堅固建物については三〇
年と存続期間が法定される結果、右民法六〇二条の期間を当然越え、従つて民法三
九五条は適用されないとの趣旨を判示しているのである。また前記判例も右原判示
と全く同趣旨の判決であつて、原判決には右判例違反の違法その他所論の違法は存
しない。
 また論旨は本件土地の賃貸借は存続期間につき期間の定めがなかつたのであるか
ら、右は民法六〇二条所定の期間を越えない賃貸借であるということを前提として、
本件賃貸借の対抗力について主張するけれども、これについては原判決は前記の如
く、本件賃貸借の存続期間は六〇年または少くとも三〇年である旨判示し、従つて
本件根抵当権設定登記後における対抗力の問題について論ずるまでもなく控訴人(
上告人)の抗弁は失当である旨判示しているのでありこの判断も肯認し得られる。
 論旨は原判決を正解しないでこれを攻撃するかまたは原審の認定と相容れない事
実を前提として原判決を非難するに帰し、採るを得ない。
 同第二点について。
 原判決の引用する一審判決が上告人の権利濫用の抗弁を排斥したことは、その認
定した事実関係からこれを肯認し得られる。
 所論は原判決の認定にそわない事実を前提とするか、または独自の見解に立つて
原判決を非難するものであつて採るを得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    横   田   正   俊

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