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平成16年(ワ)第1102号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成16年10月13日
           判       決
     原       告    X
     同訴訟代理人弁護士  長 野 哲 久
     被       告  株式会社カワクボ製作所
     同訴訟代理人弁護士  田 浦   清
     同補佐人弁理士    田 中 幹 人
 主       文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
           事実及び理由
第1 請求
 被告は,原告に対し,金1540万円及びこれに対する平成16年1月30日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,原告が,被告に対し,回転ブラシ付き選別コンベアを製造,販売する
被告の行為が,原告の有する特許権を侵害するとして,損害賠償を求めた事案であ
る。
1 争いのない事実等(証拠を掲げない事実は争いがない。)
  (1) 原告の有する特許権
    原告は,以下の特許権(以下順に「本件特許権1」,「本件特許権2」と
いい,これらを併せて「本件各特許権」という。また,本件特許権1の請求項1及
び4記載の各発明をそれぞれ「本件発明1-1」及び「本件発明1-2」と,本件
特許権2の請求項1及び2記載の各発明をそれぞれ「本件発明2-1」及び「本件
発明2-2」といい,これらを併せて「本件各発明」という。)を有している。
   ア 本件特許権1
     特許番号    第2918504号 
     発明の名称   回転ブラシと回転ブラシ付き選別コンベア
     出願日     平成8年11月14日
     登録日     平成11年4月23日
     特許請求の範囲 別紙「特許公報1」(以下「本件公報1」という。)
写しの該当欄記載のとおり(以下同公報掲載の明細書を「本件明細書1」とい
う。)
   イ 本件特許権2
     特許番号    第3073192号   
     発明の名称   食品の選別コンベア
     出願日     平成10年11月30日
     登録日     平成12年6月2日
     特許請求の範囲 別紙「特許公報2」写しの該当欄記載のとおり(以下
同公報掲載の明細書を「本件明細書2」という。)
 (2) 本件各発明の構成要件
   本件各発明は,それぞれ以下のとおりの構成要件に分説することができる
(以下,「構成要件A」,「構成要件B」などという。)。
  ア 本件特許権1
   (ア) 本件発明1-1
     A ボスに植設される刷毛を縦線と横線とで四角形の網目を形成した網
を主体として構成し,
     B その網の前記ボスに連結された根部と遊端との間に補剛材を添着し
てなる
     C 回転ブラシ。
    (イ) 本件発明1-2
     D コンベアベルトの表面を摺擦して付着物を掻き落とすための回転ブ
ラシを備え,
     E その回転ブラシのボスに縦線と横線とを有する四角形の網目の網を
取り付け,
     F その網のボスに連結される基端と遊端との間に補剛材を添着してな

     G 回転ブラシ付き選別コンベア。
   イ 本件特許権2
    (ア) 本件発明2-1
     A’ 駆動ローラと従動ローラとの間に合成樹脂の網からなるコンベア
ベルトを捲回し,
     B’ コンベアベルトの戻り側に位置して回転ブラシを設けると共に,
     C’ その回転ブラシを前記コンベアベルトを構成する合成樹脂の網と
略同じ太さの素線と略同じ大きさの網目を持つ網材によって構成してなる
     D’ 食品の選別コンベア。
    (イ) 本件発明2-2
     E’ 請求項1において,前記回転ブラシは回転軸の周りにコンベアベ
ルトと同じ材料で作られた網を放射状に植設してなる
     F’ 食品の選別コンベア。    
  (3) 本件各公報の記載
   ア 本件公報1の記載
 本件明細書1には以下の記載がある(甲1)。
(ア) 産業上の利用分野
 「【0001】・・・この発明は,主として,煮干しを製造する際に
原料に混入した小えびその他の挟雑物を排除する選別コンベア,および,選別コン
ベア用として好適な回転ブラシに関する。」
    (イ) 発明が解決しようとする課題
      「【0003】・・・しかしながら,そこで使用される前記回転ブラ
シ20Aは,支持軸22Aの回りに硬質の合成樹脂繊維を所定の厚さで幅方向に植
設してなる刷毛24Aを,円周上の数カ所に等配に取り付けた構成となっていたの
で,これでコンベアベルトの下面を擦過すると,掻き落とされたシラスなどの屑が
密植された前記刷毛24Aの繊維の間に挟み込まれてしまう不具合があり,さら
に,挟まったシラスなどは繊維の弾力で押圧されているので,これを除去する作業
が容易になく作業能率が低下した。
 【0004】また,コンベアベルトに付着した付着物を効率よく除去
するにはブラシで擦り落とす区間を長くする必要があり,回転ブラシを用いる場合
には回転ブラシとコンベアベルトを一層接近させて刷毛を強く接触する必要がある
ので,コンベアベルトや刷毛を早期に損耗させる不具合があった。」
    (ウ) 作用
      「【0006】・・・回転ブラシの刷毛は主体が網で作られており,
その一辺が支持軸に固定され,他辺が摺擦面となる。主体を網とすることで剛性が
上がり,さらに,刷毛の根部と端部との間に補剛材を添着することで摺擦面を押圧
する力を一定させ得る。回転ブラシをなす網状の刷毛の先端部は,支持軸と平行な
線の数本が取られて櫛状の部分が形成される。その櫛状の部分は曲げ剛性が低く,
摺擦面へ接触したとき,摺擦面にならって広い面積で摺擦する。」
    (エ) 実施例
     a 「【0010】回転ブラシ20は前記支持軸22上に固定した断面
正方形の角軸26に4枚の刷毛24を接線方向へ向けて植設してあり,先端部が前
記コンベアベルト17の弛緩側の下面に当接し付着物を掻き落とす。回転ブラシの
刷毛24は図3で示すように,直径が0.5mmの硬質のナイロンからなる縦線と
横線とで形成された一辺が1mm程度の四角形の網目を持つ網24aからなり,刷
毛24は網目の一の辺を角軸26の軸線と平行にして角軸26に取り付けられてい
る。すなわち,角軸26の外面と,カマボコ形の押え板29との間に挟持されボル
ト27で締着されて,刷毛24が使用によって損耗したときは,ボルト27を緩
め,押え板29を取り外すことによって交換される。」
     b 「【0011】刷毛24は前記したように根部が角軸26に挟持さ
れた上,先端部の横線が2~3本抜かれ長さ5~10mmに亘って縦線のみが存在
する,いわゆる櫛状の部分24bを形成しており,刷毛24の先端がコンベアベル
ト17に引っ掛からないようにしてある。そして,根部と先端部との間には厚さ2
mm程度に合成樹脂用の軟質の接着剤を塗布してあり,その合成を網単独の場合よ
り増強した厚肉部24cとされている。」
     c 「【0012】・・・回転ブラシ20が回転し,刷毛24の一がコ
ンベアベルト17に当接すると,刷毛24は図6で示すように変形する。まず,比
較的剛性の低い先端の櫛状の部分24bが摺擦面であるコンベアベルトの下面に当
たって湾曲しつゝ付着物を掻き落とす。回転が進み櫛状の部分24bが曲り切って
しまうと,次いで厚肉部24cが摺擦面に接近する。厚肉部24cは剛性が高く湾
曲しにくいから,刷毛24は根部の網の部分24aで回転方向後方へ湾曲し,その
結果,網の部分24aが前記押え板29のカマボコ形の外面に巻き込まれ,先端部
はインボリュート曲線を描いて実質的な長さを減じる。すなわち,根部から先端ま
での長さを実質的に短縮される。回転ブラシ20の回転がさらに進み前記櫛状の部
分24bがコンベアベルト17の下面から離れると,それまで撓んでいた刷毛24
の先端部が弾力で真っ直ぐな位置まで一気に復帰し,その際,前記櫛の部分24b
に付着した付着物を回転方向前方へ撥ね飛ばすと共に,直立した当初の形態へ復帰
する。」
    (オ) 発明の効果
      「【0013】・・・刷毛24は先端部の剛性が低く,根部の剛性を
やゝ高く,かつ,中間部の剛性を一番高く設定した。よって,刷毛24の摺擦面へ
の摺擦力を過度に増大させることなく先端部が摺擦する距離を増大させることがで
き,付着物の除去が効率よく行われる,などの効果がある。」
 本件公報1の図4ないし6には,本件発明1に係る回転ブラシが図示さ
れているが,同図において,角軸26と押え板29とにより挟持された刷毛24
は,角軸26側から順に,網24a,厚肉部24c,櫛状部分24bが形成されて
いる。
   イ 本件公報2の記載
     本件明細書2には以下の記載がある(甲2)。
(ア) 産業上の利用分野
 「【0001】・・・この発明は煮干しやその他の食品の選別コンベ
アに関するもので,特に,食品の中から夾雑物を取り除いたり,サイズ別に分別し
たりする用途に好適な選別コンベアに関するものである。」
(イ) 従来の技術
 「【0002】・・・また,そこでは,コンベアベルトに付着した被
選別食品を払い落とすため,選別コンベアの下面に回転するブラシ車を接触させ
て,コンベアベルトから払い落とすことが行われている」
(ウ) 発明が解決しようとする課題
      「【0003】・・・また,選別コンベアに付着した被選別食品を払
い落とすためのブラシの選定が難しく,被選別食品がコンベアベルトに挟まった状
態で再び選別位置へ移動するなど,選別精度を低下させる原因を作っていた。」
    (エ) 課題を解決するための手段
 「【0004】・・・上記した課題は,・・・その回転ブラシを前記
コンベアベルトを構成する合成樹脂の網と略同じ太さの素線と略同じ大きさの網目
を持つ網材によって構成することによって解決される。また,前記回転ブラシは回
転軸の周りにコンベアベルトと同じ材料で作られた網を放射状に植設させることが
好ましい。」
    (オ) 作用
      「【0005】・・・コンベアベルトをなす網と回転ブラシは略同一
の網で作られているので,コンベアベルトをなす網の目の間隔と回転ブラシをなす
払い落とし用の繊維の間隔とが略等しくなることから,払い落とし用の繊維として
使用される回転ブラシの素線がコンベアベルトの網目へ入り易くなる。」
    (カ) 発明の実施の形態
     a 「【0007】前記コンベアベルト15は合成樹脂(ポリエステ
ル)の網によって作られている。図7で示すように,コンベアベルト15は直径が
0.3mm程度の細い素線15aを縦横に組み合わせ,図8で示すように,それら
の交点を加熱圧縮して相互に粘着させ,素線の径よりやゝ大きい1.2mm程度の
網の目(400メッシュ/平方インチ)を作ってある。」
     b 「【0009】刷毛部材25は回転軸23へ2枚が対称に取り付け
られており,コンベアベルト15をなす合成樹脂の網と同一の網26が用いられて
いる。図5,6で示すように,刷毛部材25は前記網26を略長方形に切断し,図
中,上側の縁をなす横方向の素線26aから上方へ突出する縦方向の素線26bを
払い落とし用の繊維として作用させる。」
     c 「【0012】・・・前記被選別食品Fの一部は選別を受ける間
に,コンベアベルト15の網の目に入って詰まらせることがある。そのような被選
別食品Fの一部は,その部分がコンベアベルト15の戻り側に至ると,回転ブラシ
20によって擦られて排除される。」
     d 「【0013】すなわち,回転ブラシ20の刷毛部材25をなす縦
方向の素線26bが,コンベアベルト15の網目に入り,そこに挟まっている夾雑
物や被選別食品Fをコンベアベルト15の裏面へ押し出したり,手前側へ掻き出し
たりする。刷毛部材25にそのような作用を行わせるため,コンベアベルト15に
形成された網の目と縦方向の素線26bの間隔が大略一致すること,および,コン
ベアベルト15に形成された網の目が縦方向の素線26bより大きいことが,上記
した夾雑物の除去に有効である。」
    (キ) 発明の効果
      「【0014】・・・また,刷毛となる合成樹脂の網として素線の径
や網目の大きさなど,コンベアベルトと略同じ寸法のものを用いることにより,夾
雑物を効率よく除去できるようになる。」
(4) 被告製品
  被告は,平成14年7月23日から,回転ブラシ付き選別コンベアを製
造,販売している(以下,被告の製造販売する回転ブラシ付き選別コンベアを「被
告製品」という。なお,後記のとおり,被告製品の構成については,一部争いがあ
る。)。
(5) 被告製品の本件各発明の構成要件充足性
  被告製品は,本件発明1-1の構成要件A及びC,本件発明1-2の構成
要件D,E及びG,本件発明2-1の構成要件A’,B’及びD’並びに本件発明
2-2の構成要件F’を充足する(甲5,乙6ないし8,弁論の全趣旨)。
 2 争点
  (1) 被告製品の構成はどのようなものか。
  (2) 被告製品は,本件各発明の構成要件を充足するか。
   ア 被告製品は,本件発明1-1の構成要件B及び本件発明1-2の構成要
件Fを充足するか。
   イ 被告製品は,本件発明2-1の構成要件C’及び本件発明2-2の構成
要件E’を充足するか。
  (3) 原告の損害額はいくらか。
 3 争点に関する当事者の主張
  (1) 争点(1)(被告製品の構成)について
  (原告の主張)
    被告製品の構成は,別紙原告主張物件説明書イ号物件欄記載のとおりであ
る。
  (被告の反論)
    被告製品の構成は,別紙被告主張物件説明書記載のとおりである。 
  (2) 争点(2)ア(構成要件B及びFの充足性)について
  (原告の主張)
  ア 構成要件Bは「その網の前記ボスに連結された根部と遊端との間に補剛
材を添着してなる」と,また,構成要件Fは,「その網のボスに連結される基端と
遊端との間に補剛材を添着してなる」と,それぞれ記載されている。
 構成要件B及びFにおける「補剛材」とは,網の剛性を高める場合ばか
りでなく,弱める場合を含むと解すべきである。また,「添着」とは,付ける場合
ばかりでなく,切除する場合も含むというべきであり,網本体に別部材を付けるこ
とのみを指すのではなく,網本体と同じ素材であってもよいと解すべきである。
    また,「根部と遊端との間」ないし「基端と遊端との間」とは,網の
「ボスに接する部分」と「網の先端」の間のいかなる部分であっても差し支えない
と解すべきである。
  イ 被告製品は,網28の根部と遊端の間において,ボスに溶接されている
金属製ブラシ押え26及びブラシ取付け板27で,網28をはさみ,ボルト29と
ナット30を用いて,網28を固定させている。この金属製ブラシ押え26及びブ
ラシ取付け板27は,網の剛性を高めているから,構成要件B及びFの「補剛材」
に該当する。したがって,被告製品は,補剛材を具備する。
    仮に,金属製ブラシ押え26及びブラシ取付け板27が「補剛材」に該
当しないとしても,被告製品は,以下のとおり「補剛材」を具備する。すなわち,
被告製品の網の上部は,コーナーカットがされて,使用を継続することにより,網
の剛性が減少する。前記のとおり,「補剛材」とは,網の剛性を弱める場合を含む
と解すべきであるから,網の上部の剛性が弱まった部分が,構成要件B及びFの
「補剛材」に該当する。
  ウ したがって,被告製品は,構成要件B及びFを充足する。
 (被告の反論)
  ア 構成要件Bは「その網の・・・根部と遊端との間に補剛材を添着してな
る」と,構成要件Fは「その網の・・・基端と遊端との間に補剛材を添着してな
る」と,それぞれ記載されている。
 したがって,網に添着されると記載されていることに照らすならば,
「補剛材」とは,網本体とは別の部材が使用されたものに限ると解されるべきであ
る。また,「根部(基部)と遊端との間」とは,文言どおり,網の「根部(基部)
と遊端との中間部」に位置する場合に限ると解すべきである。
  イ 被告製品は,以下のとおり,「補剛材」を具備しない。
    被告製品の「ブラシ押え26及びブラシ取付け板27」は,構成要件B
及びFの「補剛材」に該当しないので,原告の主張は失当である。
 すなわち,被告製品における「ブラシ押え板26」は,丸棒でなるシャ
フト25に90度ずつ位置をずらして4か所に溶接手段によって固定されている。
また,被告製品における「ブラシ取付け板27」は,ブラシ押え板26との間に,
網28の基端部を挟み込んで,ボルト29とナット30を用いて,4枚の網28を
ブラシ押え板26に固着するためのものであり,ブラシ押え板26と一体にするも
のである。したがって,「ブラシ押え板26及びブラシ取付け板27」は,①補剛
作用を奏する効果はなく,また,②「根部又は基部と遊端との間に」位置するもの
ではないので,構成要件B及びFの「補剛材」に該当しない。
    また,原告は,被告製品において,網のコーナーが切除されている部分
が,「補剛材」に該当すると主張するが,技術的合理性に欠ける上,同部分は,
「根部と遊端との間」に位置していないし,網に「添着」されるものでもないの
で,「補剛材」に該当しない。
   ウ したがって,被告製品は,構成要件B及びFを充足しない。
  (3) 争点(2)イ(構成要件C’及びE’の充足性)について
  (原告の主張)
 構成要件C’の「略同じ」とは,回転ブラシの網とコンベアベルトを構成
する合成樹脂の網とを比較して,素線の太さと編目の両者とも「同一」である場合
に限らず,同一に近いものであれば足りると解釈すべきである。
 被告製品において,回転ブラシの網は,コンベアベルトの合成樹脂の網と
比較すると,やや細い素線とやや小さい網目の網材からなり,「略同じ」に含まれ
る。
    したがって,被告製品は,構成要件C’を充足する。また,構成要件E’
は,構成要件C’を引用しているので,被告製品は構成要件E’を充足する。
  (被告の主張)
    被告製品の回転ブラシ23の網目及び素材の線径は,別紙被告主張物件説
明書記載のとおりであり,いずれも,コンベアベルト24の網目及び素材の線径よ
りも小さい。
    したがって,被告製品は,構成要件C’及びE’を充足しない。
  (4) 争点(3)(損害額)について
  (原告の主張)
    原告の被った損害額は,以下のとおり,1540万円である。
   ア 被告が製造した被告製品の数量及び長さ
    (ア) 数量  56本
    (イ) 長さ  平均1.1メートル
   イ 本件特許権についての1メートル当たりの実施料は,25万円である。
   ウ 損害額 25万円×56本×1.1メートル=1540万円
  (被告の反論)
    争う。
第3 争点に対する判断
 1 争点(2)ア(構成要件B及びFの充足性の有無)について
  (1) 構成要件Bの「その網の前記ボスに連結された根部と遊端との間に補剛材
を添着してなる」の意義
    上記「争いのない事実等」(3)アの本件明細書1及び図面の記載によれば,
本件発明1-1は,従来の技術において,回転ブラシを用いる場合には回転ブラシ
とコンベアベルトを一層接近させて刷毛を強く接触する必要があり,このためコン
ベアベルトや刷毛を早期に損耗させる不具合が生じていたのに対して,構成要件B
の「網の前記ボスに連結された根部と遊端との間に補剛材を添着」することによっ
て,刷毛24の中間部の剛性を,根部及び先端部よりも高くして,摺擦面を押圧す
る力を一定にさせることができるようにした点に,技術的な特徴があるといえる。
 そうすると,構成要件Bの「補剛材」は,網本体の剛性を高めるために,
網とは別の材料が取り付けられることが必須であると解すべきである。また,同構
成要件の「根部と遊端との間」とは,文言どおり,網の「根部(基部)と遊端との
中間部」を指すと解すべきであって,網のいかなる部分であっても差し支えないと
解することはできない。
  (2) 被告製品の構成
    証拠(乙6ないし11)によれば,被告製品の回転ブラシは,以下のとお
りである。
   ア 被告製品の回転ブラシは,丸棒でなるシャフトに90度ずつ位置をずら
して4か所にブラシ押え板を固定し,このブラシ押え板とブラシ取付け板との間に
網の基端部を挟み込んだ上で,ボルトとナットを用いて固着されている。この網の
うち,ブラシ押え板及びブラシ取付け板より先の部分には,網本体以外のいかなる
部材も取り付けられていない。
   イ 被告製品における回転ブラシは,網の左右両端の先端部分が切除されて
いる。これは,被告製品において,コンベアベルトに使用された網の両端が,約2
センチメートルほど折り返して縫い合わされ,縫い合わされた部分が回転ブラシと
連続的に接触すると,縫い合わせ部分の両端がほつれて,食品が挟まることを防止
するためのものである。
  (3) 構成要件Bの充足性の有無
   ア 原告は,まず,被告製品の「ブラシ押え板26及びブラシ取付け板2
7」が,構成要件Bの「補剛材」に該当すると主張する。
 しかし,被告製品における,「ブラシ押え板26」は,丸棒でなるシャ
フト25に90度ずつ位置をずらして4か所に溶接手段によって固定されている。
また,被告製品における,「ブラシ取付け板27」は,ブラシ押え板26との間
に,網28の基端部を挟み込んで,ボルト29とナット30を用いて,4枚の網2
8をブラシ押え板26に固着するためのものであり,ブラシ押え板26と一体にす
るものである。したがって,「ブラシ押え板26及びブラシ取付け板27」は,①
「根部又は基部と遊端との間に」添着させたものではなく,また,②網の剛性を高
めて,摺擦面を押圧する力を一定にさせる効果を奏するものではないから,同構成
要件の「補剛材」に該当しない。これに対して,原告は,被告製品の「ブラシ押え
板26及び上記ブラシ取付け板27」は網の剛性を高めるものであるから,構成要
件Bの「補剛材」に該当する旨主張する。しかし,被告製品の回転ブラシにおい
て,「ブラシ押え板26及びブラシ取付け板27」によって網が挟み込まれた部分
は,「根部」そのものであり,網として機能することはないのであるから,原告の
主張を前提としても構成要件Bにいう「網の・・・根部と遊端との間に補
剛材を添着し」たことにはならない。したがって,原告の上記主張は,採
用できない。
イ また,原告は,構成要件Bにおける「補剛材」には,剛性を減じ
る場合も含まれるとの主張を前提として,被告製品における,網のコーナーが切除
されている部分が,「補剛材」に該当するとも主張する。しかし,原告の「補剛
材」に関する主張は主張自体失当であること,被告製品の同部分は,「根部と遊端
との間」に位置していないこと,同部分は網に「添着」されていないことこと等の
理由から,原告の主張は失当である。
  ウ したがって,被告製品は,「補剛材」を具備しないから,構成要件Bを
充足しない。
(4) 構成要件Fの充足性の有無
 本件発明1-2は,コンベアベルトの表面を摺擦して付着物を掻き落とす
ために,本件発明1-1の回転ブラシを備えた回転ブラシ付き選別コンベアの発明
である(甲1)から,構成要件Fの「その網のボスに連結される基端と遊端との間
に補剛材を添着してなる」の意義は,構成要件Bの「網の前記ボスに連結された根
部と遊端との間に補剛材を添着してなる」と同義である。
 したがって,前記(3)で判断したのと同様の理由により,被告製品の回転ブ
ラシは,構成要件Fの「基端と遊端との間に補剛材」が存在しないから,同構成要
件を充足しない。
  (5) 小括
    以上のとおりであるから,被告製品は,構成要件B及びFを充足しない。
よって,本件特許権1の侵害に基づく原告の請求は,その余の点を判断するまでも
なく理由がない。
 2 争点(2)イ(構成要件C’及びE’の充足性の有無)について
  (1) 構成要件C’の「略同じ」の意義
    上記「争いのない事実等」(3)イの本件明細書2及び図面の記載によれば,
本件発明2-1は,合成樹脂の網からなるコンベアベルトと,コンベアベルトに挟
まった夾雑物を払い落とすため,同じく網からなる回転ブラシとから構成される食
品の選別コンベアにおいて,「回転ブラシを前記コンベアベルトを構成する合成樹
脂の網と略同じ太さの素線と略同じ大きさの網目を持つ網材によって構成」(構成
要件C’)することにより,コンベアベルトをなす網目の間隔と,回転ブラシの払
い落とし用の繊維の間隔とが略等しくなり,その結果,払い落とし用の繊維(刷
毛)として使用される回転ブラシの縦方向の素線がコンベアベルトの網目に入り易
くなってコンベアベルトの夾雑物を効率よく除去できるという作用効果を奏するも
のである。したがって,構成要件C’の「略同じ」とは,「回転ブラシの素線の太
さ及び網目の大きさ」と「コンベアベルトを構成する合成樹脂の網のそれ」と比較
して,ほぼ同一であると評価できる範囲に限定されると解するのが相当である。
  (2) 被告製品の構成
    証拠(乙1ないし5,8,9)によれば,被告製品のコンベアベルト及び
回転ブラシの素線及び網目は,以下のとおりである。
   ア 被告製品のコンベアベルトに用いられている網は,以下の2つの網のう
ちいずれかであり,その素線の太さ及び網目の大きさは,以下のとおりである。
    (ア) F1110
     a 素線の太さ  0.6mm
 b 網目の大きさ 15メッシュ
    (イ) F1130
     a 素線の太さ  0.6mm
 b 網目の大きさ 13.4メッシュ
   イ 被告製品の回転ブラシに用いられている網(F1039)の素線の太さ
及び網目の大きさは,以下のとおりである。
    (ア) 素線の太さ  0.4mm
    (イ) 網目の大きさ 32.1メッシュ
  (3) 構成要件C’の充足性の有無
上記認定した事実によれば,「被告製品の回転ブラシを構成する網の素線
の太さ及び網目の大きさ」と「被告製品のコンベアベルトを構成する網のそれ」と
を比較すると,大きく相違し,本件発明2-1の特徴である,コンベアベルトの夾
雑物を効率よく除去できるという作用効果を奏する観点からみて,ほぼ同一である
と解することはできない。これに対し,原告は,被告製品において,回転ブラシの
網は,コンベアベルトの合成樹脂の網と比べて,やや細い素線とやや小さい網目の
網材によって構成されており,「略同じ」に含まれるものであると主張する。しか
し,上記のとおり,被告製品の回転ブラシの網目の大きさはコンベアベルトの網目
の大きさの2倍以上であり,両者は到底「略同じ」ということはできない。原告の
上記主張を採用することはできない。
    したがって,被告製品は,構成要件C’を充足しない。また,本件発明2
-2は,本件発明2-1について,さらに所定の限定を加えた発明であるから,被
告製品は,構成要件E’も充足しない。
  (4) 小括
    よって,本件特許権2の侵害に基づく原告の請求は,その余の点を判断す
るまでもなく理由がない。
3 結論
   以上によれば,原告の請求は理由がないからこれを棄却する。
    東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官   飯  村  敏  明
裁判官榎  戸  道  也
裁判官一  場  康  宏
(別紙)
原告主張物件説明書被告主張物件説明書イ号図面図1図2図3図4図5図6、図
7、図8

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