弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成一二年(ワ)第四五〇号 不正競争行為差止等請求事件
       判      決
         原       告    カメヤマ株式会社
         右代表者代表取締役    【A】
         右訴訟代理人弁護士   村   松    昭   夫
         同            坂   本        団
         被       告    東亜若松株式会社
         右代表者代表取締役    【B】
         右訴訟代理人弁護士    今   口    裕   行
         同            中   光        弘
       主      文
  一 原告の請求をいずれも棄却する。
  二 訴訟費用は原告の負担とする。
       事実及び理由
第一 請求
 一 被告は、別紙目録4記載の包装箱のローソクを譲渡してはならない。
 二 被告は、その占有する別紙目録4記載の包装箱及び同包装箱のローソクを廃
棄せよ。
 三 被告は、原告に対し、金一二〇〇万円及びこれに対する平成一一年八月二八
日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
 本件は、別紙目録1及び2記載の包装箱(以下、それぞれ「原告包装箱1」、
「原告包装箱2」といい、まとめていう場合には単に「原告包装箱」という。)に
ローソクを収納して販売している原告が、平成六年四月から同七年七月までは別紙
目録3記載の包装箱に、同年八月から現在までは同目録4記載の包装箱(以下、そ
れぞれ「被告包装箱3」、「被告包装箱4」といい、まとめていう場合には単に
「被告包装箱」という。)に、それぞれローソクを収納して販売してきている被告
に対し、原告包装箱は、原告の商品表示として周知、著名であるところ、被告包装
箱は、原告包装箱と類似し、被告の右販売行為は、原告の商品との誤認混同を生じ
させる行為であり、被告の右販売行為は、不正競争防止法二条一項一号又は同項二
号所定の不正競争に該当するとして、同法三条一項に基づき被告包装箱4の譲渡の
差止めと、同条二項に基づき被告包装箱4及び同包装箱のローソクの廃棄と、同法
四条に基づき被告が被告包装箱を販売したことによる損害賠償を求めている事案で
ある。
 以下、書証は、甲1などと略称し、その枝番のすべてを引用する場合には、枝番
の記載を省略する。
第三 争点
 一 周知性、著名性
  原告包装箱は、原告の商品表示として周知(不正競争防止法二条一項一号)又
は著名(同項二号)か。
 二 類似性、混同のおそれ
  被告包装箱は、原告包装箱と類似するか(同項二号)、又は類似し、被告によ
る被告包装箱3及び4の販売は原告の商品と混同を生じさせるか(同項一号)。
 三 差止め及び廃棄請求の必要性
 四 損害額
第四 争点に関する当事者の主張
 一 争点一(周知性、著名性)について
 【原告の主張】
  1 原告は、昭和四六年ころ以降、原告包装箱にローソクを収納して販売して
きた。原告の右包装箱の使用は、いずれも長期にわたり、日本全国において原告の
製造、販売するローソクの包装箱として継続的に使用され、全国的に宣伝広告もさ
れてきた。
    その結果、原告包装箱は、原告の商品の出所を示す表示として世間に広く
認知されるに至った。
    したがって、原告包装箱は、原告の商品表示として周知、著名である。
  2 被告は、原告包装箱の構成要素を個別に取り出して、それぞれについて個
別に評価し、いずれもありふれているから、周知性、著名性を有しているとはいえ
ないと主張する。
    しかし、原告包装箱の有する特徴を、他と切り離した形で個々に評価する
のは正しくない。原告包装箱の個々の構成要素は、他の構成要素と有機的に関連
し、一体となることによって、自他識別機能ないし出所表示機能を有しているから
である。
 【被告の主張】
  1 原告包装箱は、いずれも地色が紺で、箱に表示される文字等に使用される
色彩が、白・赤・黄であるが、それらの色は、原色であって何ら特殊な色ではない
し、日本人の好きな色の上位を占めるものである。特に地色の紺(青)は、ローソ
クの色が引き立ち、また仏事等に合うということで、ローソクの包装箱には洋の東
西を問わず広く用いられているものである(乙1ないし9)。
    しかも、色彩は古来存在するものであって、本来何人も自由に使用し得る
ものであり、紺、白、赤、黄というようなごくありふれた色彩について特定人に独
占的使用を認めるとすると、他の者は自己の商品に付する色彩の選択肢の範囲を狭
められ、極端にいえば最後発の業者は、商品に付する色彩がなくなってしまうとい
うような事態にもなりかねないから、複数の色彩の具体的な組み合わせであればと
もかく、地色が濃紺であるとか、抽象的に箱に表示される文字や図柄に使用される
色彩が白・赤・黄であるという点については、不正競争防止法二条一項一号、二号
による保護は認められないというべきである。
  2 原告包装箱は、いずれも六面が白い枠で囲まれているが、このように包装
箱の周囲を白い枠で囲むというのは古くは牛乳石けんの商品でも使用されており、
特段目新しいものではなくむしろありふれている。
  3 原告包装箱は、いずれも内容物が見える窓がついているが、それも日用雑
貨品ではありふれたものである。
  4 被告は、昭和三〇年ころから、「富士錨印」という商品名でローソクを販
売しているところ、その包装箱は地色が紺で、文字等には赤、白、黄が使用され、
六面が白い枠で囲まれており、昭和四〇年ころから販売された同商品の包装箱に
は、内容物が見える窓もついている。また、被告以外の同業他社も、同様の包装箱
にローソクを収納して販売している(乙3ないし9)。
  5 以上のことからすると、原告包装箱が、原告の商品表示として周知性、著
名性を有しているとはいえない。
 二 争点二(類似性、混同のおそれ)について
 【原告の主張】
  1 原告包装箱は、いずれも①箱の地色が濃紺であり、②箱のすべての面が白
枠で囲まれており、③箱に表示される文字や図柄に使用されている色彩は、白、
赤、黄、青であり、④箱の正面に釣り鐘型の窓が開いていて、中のローソクが見え
るようになっているという、特徴を有している。
    被告が同業他社製品を含むローソクの包装箱として引用するもののうち、
乙1ないし8は、いずれも原告包装箱を模倣したものであり、これらの存在によ
り、原告包装箱の右特徴が否定されるものではない。
    これに対し、被告包装箱は、いずれも原告包装箱の右特徴をすべて具備す
るものであり、特に「ローソク」の文字も原告包装箱と同様白色で、「煌」又は
「KIRAMEKI」の文字は、原告包装箱の「カメヤマ」の文字がそうであるよ
うに、黄色や赤色で表示され、平面及び底面に白色文字でローソクのサイズや本数
が記載されている。さらに、包装箱の形状・寸法もほぼ同一である。
    したがって、被告包装箱は、原告包装箱と極めて類似している。
  2 また、①両者が類似していること、②被告包装箱には被告会社名は包装箱
の背面に記載されているのみであり、ほとんどの需要者は購入時に被告会社名に気
づかないこと、③ローソクの主要な購買層は、比較的高齢の顧客であるため、被告
包装箱の正面に記載されている「KIRAMEKI」を「KAMEYAMA」が表
記されていると誤解するおそれがあること、④被告包装箱の正面に記載されている
「煌」は被告を表す固有名詞ではないため、その他の類似点から原告の新商品であ
ると誤解されてしまうことから、被告がローソクを被告包装箱に収納して販売する
行為は、原告の商品と混同を生じさせる行為である。
    現に、被告包装箱3に収納されて販売されているローソクを購入した需要
者が、これを原告の製品であると誤信して、その製品に対する苦情を原告宛に申し
入れてくる例がある。
 【被告の主張】
  1 原告包装箱と被告包装箱とを比較すれば、以下のとおりの違いがある。
   (一) 地色
    地色原告包装箱は濃紺であるが、被告包装箱はもっと色が薄くくすんだ青
色が基調になっており、しかも横に縞模様が入っている。
   (二) 窓
    原告包装箱は釣り鐘型の窓が開いているが、被告包装箱はもっと細長くて
いわばソーセージのような形である上、上下に分かれており、間に「KIRAME
KI」、「暑中保証最高級品」の文字が印刷されている。
   (三) 「煌」の文字
    被告包装箱には、黄色で大きく漢字の「煌」という文字が印刷されてい
る。
   (四) 山亀マーク及び三本燭台
    原告包装箱には赤字の山亀マークや三本燭台が印刷されているが、被告包
装箱にはそのようなものはない。
   (五) カメヤマの文字
    原告包装箱には正面及び側面に「カメヤマ」の文字が印刷されているが、
被告包装箱にはない。
    以上の両者の違いによれば、両者が一見して類似しないことは明らかであ
る。
    特に縞模様が入っていること等地色の違い、登録商標が表示されているか
どうか、及び「カメヤマ」の文字が記されているかどうかは類似性を判断する上で
大きな意義を有すると考えられるところ、これらが原告包装箱と異なる被告包装箱
は全体としてみても類似していない。
  2 原告が主張する原告包装箱の特徴点が、原告包装箱の要部になり得ないこ
とについては、前記一【被告の主張】のとおりである。
  3 被告が被告包装箱にローソクを収納して販売する行為が、原告の商品と混
同を生じさせる行為であるとの原告の主張は争う。
 三 争点三(差止、廃棄請求の必要性)について
 【被告の主張】
  原告の請求のうち、ローソクの譲渡やローソクの廃棄を求める部分は根拠を欠
き、理由がない。
 【原告の主張】
  争う。
 四 損害額
 【原告の主張】
  被告は、平成六年四月ころから平成七年七月ころまで被告包装箱3に、同年八
月ころから現在まで被告包装箱4に、ローソクを収納して販売してきており、それ
らの販売により、年平均で約三〇〇〇万円、合計約一億二〇〇〇万円を下らない売
上を上げており、少なくとも、その一〇パーセントに相当する金一二〇〇万円の利
益を得た。
  したがって、被告が被告包装箱3及び4にローソクを収納して販売したことに
より被った原告の損害額も金一二〇〇万円と推定される。
 【被告の主張】
  争う。
第五 争点に対する当裁判所の判断
 一 争点2(類似性、混同のおそれ)について
  1 原告包装箱の形態
  原告包装箱1及び2の形態は、別紙包装箱対比表「原告包装箱1」、「原告
包装箱2」欄記載のとおりである(検甲1、2)。
  2 被告包装箱3及び4が、原告包装箱1又は2と類似しているといえるかど
うかは、取引の実情の下において、需要者が両包装箱の外観、称呼又は観念に基づ
く印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがある
か否かを基準として判断するのが相当であるが、不正競争防止法二条一項一号及び
二号が、自他識別機能及び出所表示機能の点で優れている周知又は著名な商品表示
を保護するものであることからすれば、右おそれがあるか否かを検討するに当たっ
て、まず、原告包装箱1及び2のうち自他識別機能、出所表示機能が特に認められ
る部分(要部)はどこかを、需要者の観点から検討し、当該部分を被告包装箱3及
び4が具備しているかどうかを中心として、全体の類否を判断すべきである。
   (一) 被告包装箱3の販売が開始された平成六年四月当時におけるローソク
の包装箱の実情
    右当時、市場には、原告包装箱1及び2のほか、次のようなローソクの包
装箱が存在していたことが認められる(甲12ないし22、後掲各証拠、弁論の全趣
旨)。
    (1) 富士錨ローソク(製造元・被告、乙1)
     ア 箱の地色は濃紺である。
     イ 箱のすべての面は白枠で囲まれている。
     ウ 正面上部には、白色の「富士錨」の文字と赤色で白の縁取りがある
「ローソク」の文字が横一列に大きく書かれ、その上に「暑中保証」の文字が黄色
で横一列に小さく書かれ、正面下部に錨型のデザインが白い縁取りで施され、その
デザインの左右に、「商標」「登録」の文字が赤色で縦に小さく書かれ、その下に
「東亜若松株式会社」の文字が黄色で横一列に書かれている。
     エ 箱の正面中央部には富士山型の窓が開いていて(ただし山頂部分は
窓ではなくイラストとなっている。)、中のローソクが見えるようになっている
    (2) 金鳥印のローソク(製造元・被告、乙2)
     ア 箱の正面の地色は濃紺であり、その他の面の地色は白色である。
     イ 箱の正面は、白と水色の二重枠で囲まれている(白が外側)。
     ウ 箱の正面上部には、「暑中請合」、「金鳥錨印最高洋蝋燭」の文字
が白色で横に、かつ上側に凸に湾曲した列に書かれ、その下に錨型のデザインが水
色で描かれ、そのデザインの中央には地色が白色の丸があり、その中に赤と黄色で
鶏のイラストが描かれ、そのデザインの左右には「商標」「登録」の文字が黄色で
縦に書かれ、そのデザインの下には、「最高級品」の文字が青色で横一列に書かれ
ている。
     エ 箱の正面下部には、正方形の窓が開いていて、中のローソクが見え
るようになっている
    (3) TAKARAローソク(製造元・佐藤油脂工業株式会社、乙3)
     ア 箱の地色は紺である。
     イ 箱のすべての面は白枠で囲まれている。
     ウ 箱の正面上部には、「TAKARA」の文字が赤色で横一列に大き
く書かれ、その下に「ローソク」の文字が白色で横一列に大きく書かれ、その下に
ローソクの炎の明かりが広がる様をイメージした黄色の同心円が赤色の炎を中心に
描かれ、その下のローソク本体部の左右には、「保証」、「品質」の文字が水色で
縦に小さく書かれ、ローソク本体の下には、「S-4号20本入」、「225g」
の文字が白色で横2列に書かれている。
     エ 箱の正面にある右ローソク本体は、切り開かれた窓となっており、
中のローソクが見えるようになっている
    (4) コーヨーローソク(製造元・株式会社光陽社蝋燭工業所、乙4)
     ア 箱の地色は濃紺である。
     イ 箱のすべての面は白枠で囲まれている。
     ウ 箱の正面上部には、錨をモチーフとしたイラストが黄色を基調に描
かれ、そのイラストの左右には、「最高」、「級品」の文字が赤色で横に書かれ、
その文字の下に「登録」、「商標」の文字が白色で横に書かれ、イラストの下に
は、「コーヨー」の文字が白色で横一列に大きく書かれ、その下に「ローソク」の
文字が白色の縁取りがされた赤色で大きく書かれ、その下にローソクの炎をイメー
ジしたイラストが、その炎部分及び炎から明かりが広がる様をイメージした部分は
黄色、本体部分は白色で大きく描かれている。
     エ 箱の正面にある右ローソクの炎部分は、黄色の縁取りを残して切り
開かれた窓となっており、中のローソクが見えるようになっている
    (5) 六星ローソク(製造元・六星蝋燭株式会社、乙6)
     ア 箱の地色は青である。
     イ 箱のすべての面は白枠で囲まれている。
     ウ 箱の正面には、上部に「BEST CANDLE」の文字が白色の
縁取りがある赤色で横一列に書かれ、その下に六個の星を図案化したイラストが白
地に赤色で描かれ、その左右に、「暑中」、「保証」の文字が白色で縦に書かれ、
その下にローソクのイラストが描かれており、その炎部分は、明かりが広がる様を
イメージして、中心部分から、赤、橙、黄色、白、薄紫の順に炎のイラストが描か
れ、本体部分は黄色の縁取りがなされており、そのイラストの下には、「六星ロー
ソク」の文字が白色で横一列に大きく書かれている。
     エ 箱の正面にある右ローソクの本体部分は、黄色の縁取りを残して切
り開かれた窓となっており、中のローソクが見えるようになっている
    (6) 日之出富士ローソク(製造元・国光産業株式会社、乙7)
     ア 箱の地色は青である。
     イ 箱のすべての面は白枠で囲まれている。
     ウ 箱の正面には、上部に「最高級品」の文字が白色で横一列に書か
れ、その下に「日之出富士」の文字が赤色で横一列に大きく書かれ、その下に「ロ
ーソク」の文字が白色の縁取りをした水色で横一列に大きく書かれ、下部には、
「製造元」、「国光産業株式会社」の文字が白色で横一列に書かれている。
     エ 箱の正面中央には、縦長長方形(上部の角は隅丸になっている。)
の窓が開いていて、中のローソクが見えるようになっている。
    (7) 特撰3号ローソク(製造元・ニホンローソク株式会社、乙8)
     ア 箱の地色は青である。
     イ 箱のすべての面は白枠で囲まれている。
     ウ 箱の正面には、上部左に錨をモチーフにしたイラストが白色の縁取
りがある赤色で描かれ、その右に「特撰」の文字が黄色で横一列に書かれ、その下
中央に「ローソク」の文字が白色の縁取りがある赤色で横一列に大きく書かれ、下
部には、黄色の横帯が2本あり、その中に「心のあかりを」、「暮らしの中に」の
文字が赤色でそれぞれ横一列にかかれ、その下に「3号」等の文字が白色で書かれ
ている。
     エ 箱の正面には、縦長の略長方形(上部の角は隅丸になっている。)
の窓が開いていて、中のローソクが見えるようになっている。
   (二) 原告のローソク業界における地位について
    証拠(甲6、8、11、乙32ないし34、36ないし39、51ないし54、58ないし
75、77、122)によれば、原告は、昭和二年二月にローソクの製造販売を開始した個
人営業の亀山蝋燭製造所が昭和二一年一〇月二一日に法人化された会社であり、個
人営業時代を含めると七〇年以上にわたってローソクを製造、販売してきているも
のであって、国内における市場占有率はトップであり、昭和三八年以降は年間一千
数百万円から二千数百万円程度、昭和四九年以降は一億円以上の費用をかけて業界
紙、カタログ、雑誌及びテレビCM等により宣伝広告を行っていることが認められ
る。
      右事実からすると、原告の会社名は、ローソクの製造、販売元とし
て、需要者である一般消費者に広く認識されているものと認められる。
   (三) 以上の事実を前提に、原告包装箱1及び2の要部はどこかを検討する
に、まず、原告は、原告包装箱は、いずれも①箱の地色が濃紺であり、②箱のすべ
ての面が白枠で囲まれており、③箱に表示される文字や図柄に使用されている色彩
は、白、赤、黄、青であり、④箱の正面に釣り鐘型の窓が開いていて、中のローソ
クが見えるようになっているという、特徴を有していると主張する(以下「原告主
張特徴点」という。)。
      原告主張特徴点は、原告包装箱1及び2に共通するデザインではある
が、それら(特に①ないし③)は、原告包装箱の形態のうちでは抽象的なデザイン
に係る部分である上、需要者が、原告包装箱1又は2を見る場合、原告主張特徴点
のみを抽出して見るのではなく、原告主張特徴点とそれ以外の部分を一体のものと
して見ることになるのであるから、それらが、原告包装箱1と2の共通点であるこ
とから、直ちに、原告包装箱1及び2の要部であるということはできない。
      そして、原告包装箱の地色やそこに表示される文字や図柄に使用され
ている色は、ごくありふれた基本的な色彩であって、それ自体何ら特徴を有するも
のではなく(特に、原告包装箱の白、赤、黄色の色彩は、ローソクのイメージから
得られるありふれた色彩ということもできる。)、また、包装箱においては、各面
の周縁部を白色で縁取ったり、内容物が見えるようにするために窓を設けること自
体もありふれたものである(乙83、84、88ないし90、92ないし95、乙104の1、2、
4、乙106、乙108の1、3、4、乙109ないし113)。
      その上、前記(一)記載のとおり、被告によって、被告包装箱3が販売
され始めた平成六年四月の時点においては、①箱の地色が濃紺又は青色であり、②
箱のすべての面が白枠で囲まれており、③箱に表示される文字や図柄に使用されて
いる色彩は、白、赤、黄、青であり、④箱の正面に窓が開いていて、中のローソク
が見えるようになっているローソクの包装箱は、多数存在していたのであり、その
時点において、原告が、原告主張特徴点を具備したローソク包装箱の販売を独占的
に行ったとは認められない。
      また、原告が原告商品の宣伝広告において特に原告主張特徴点を強調
していたということを認めるに足る証拠もない。
      以上のことからすると、需要者が原告主張特徴点に強く印象づけら
れ、原告主張特徴点が原告商品を識別する際のポイント(要部)となっている状況
は認められない。
      なお、原告は、前記(一)で摘示した乙1ないし4及び乙6ないし8
は、原告包装箱を模倣したものであると主張するが、原告主張特徴点が原告包装箱
の要部になるかどうかは、市場において、原告主張特徴点に需要者の注目が集ま
り、原告の商品であることを識別するポイント(要部)になっているかどうかによ
って判断すべきであるから、原告主張特徴点を具備した他社製品が多数存在する以
上、原告主張特徴点は原告の商品であることを識別するポイント(要部)にならな
いというべきである。
   (四) 原告包装箱がローソクの包装箱であることからすると、需要者は、原
告包装箱に接する場合、特にその正面のデザインに注目するものと考えられる。
      そして、原告包装箱1の正面のデザインを、視覚的に見ると、中央部
分に上部が円弧状になった縦長長方形の大きな窓があり、窓の上部にアルファベッ
トの文字が白色で横一列に大きく記載され、窓の下部にカタカナの文字が黄色で横
一列に大きく記載され、全体として、どっしりとした安定感のある雰囲気を醸し出
している点に特徴があると認められる。さらに、前記(3)記載のとおり、原告の会社
名は、ローソクの製造、販売元として、広く需要者に認識されていると認められる
から、窓の上部の「KAMEYAMA」の文字(白色)、窓の下部の「カメヤマ」
の文字(黄色)、及びアルファベット「KAMEYAMA」と漢字「亀」を図案化
した「山亀マーク」と通称される原告登録商標(乙44、45)の記載(赤色)
は、「この商品はカメヤマの商品である」との観念を生じさせる意味的記載であっ
て、それらは正面に占める割合が大きいため、需要者の注目が強く集まるものと認
められる。
      したがって、原告包装箱1に接する需要者は、その正面に記載されて
いるデザイン的特徴と意味的記載部分から生じる観念とを不可分一体のものとして
認識し、その出所を識別するものと見るのが相当であり、それらが、原告包装箱1
の要部になるというべきである。
      また、原告包装箱2の正面のデザインを、視覚的に見ると、正面の中
央部分に上部が円弧状になった縦長長方形の大きな窓があり、その上部に青色の燭
台に立てられた3本のローーソクにいずれも赤い炎が燃え、その明かりが周囲に広
がっている図形が比較的小さく描かれ、窓の下部にカタカナの文字が黄色で横一列
に比較的大きく記載され、全体として、どっしりとした安定感のある雰囲気を醸し
出している点に特徴があると認められる。また、原告包装箱1と同様、窓の下部の
「カメヤマ」の文字(黄色)は、「この商品はカメヤマの商品である」との観念を
生じさせる意味的記載であって、看者の注目が集まるものと認められる。
      したがって、原告包装箱2に接する需要者は、その正面に記載されて
いるデザイン的特徴と意味的記載部分から生じる観念とを不可分一体のものとして
認識し、その出所を識別するものと見るのが相当であり、それらが、原告包装箱2
の要部になるというべきである。
  3 対比
   (一) 被告包装箱3及び4の形態は、別紙包装箱対比表「被告包装箱3」、
「被告包装箱4」欄記載のとおりである(検甲3、弁論の全趣旨)。
   (二) 原告包装箱1と被告包装箱との対比
      原告包装箱1と被告包装箱とを対比すると、需要者の注目が集まる正
面のデザインにおいて、被告包装箱には、いずれも、窓があるものの、原告包装箱
1のデザインが視覚的に全体としてどっしりとした安定感のあるデザイン的特徴を
有しているのに対し、被告包装箱のデザインは、正面左五分の三程度を占めて窓が
設けられ、他方、正面右五分の二程度を占めて漢字とカタカナの文字が縦一列に大
きく書かれていることから、全体としてすっきりとしたシャープな印象を与えるデ
ザイン的特徴を有している点で異なる。
      また、被告包装箱の正面には、原告包装箱とは異なり、「KAMEY
AMA」、「カメヤマ」の記載はなく、各窓の間に「KIRAMEKI」の文字
(赤色)が横一列に記載され、窓の右側に「煌」の文字(黄色)と「ローソク」の
文字(白色)が、縦一列に正面全体の五分の二程度を占める大きさで記載されてお
り、被告包装箱に接する需要者に、「この商品の商品名は煌(きらめき)ローソク
である。」との観念を生じさせる点で異なる。
      したがって、原告包装箱1の要部と、被告包装箱とは外観及び観念が
異なり、原告包装箱1と被告包装箱とを全体的に見ても、需要者が、両者の外観及
び観念に基づく印象、記憶、連想等からそれらを全体的に類似のものと受け取るお
それがあるとは認められず、類似していると見ることはできない。
   (三) 原告包装箱2と被告包装箱との対比
      原告包装箱2と被告包装箱とを対比すると、需要者の注目が集まる正
面のデザインにおいて、被告包装箱には、いずれも、窓があるものの、原告包装箱
2の窓の上部にあるような燭台とローソクの図形はない上、原告包装箱1のデザイ
ンが視覚的に全体としてどっしりとした安定感のあるデザイン的特徴を有している
のに対し、被告包装箱のデザインは、前記(二)のとおり、全体としてすっきりとし
たシャープな印象を与えるデザイン的特徴を有している点で異なる。
      また、前記(二)同様、被告包装箱の正面には、原告包装箱2とは異な
り、「カメヤマ」の記載がなく、その意味的記載から、被告包装箱に接する需要者
に、「この商品の商品名は煌(きらめき)ローソクである。」との観念を生じさせ
る点で異なると認められる。
      したがって、原告包装箱2の要部と、被告包装箱とは外観及び観念が
異なり、原告包装箱2と被告包装箱とを全体的に見ても、需要者が、両者の外観及
び観念に基づく印象、記憶、連想等からそれらを全体的に類似のものと受け取るお
それがあるとは認められず、類似していると見ることはできない。
 三 以上より、その余の争点について検討するまでもなく、原告の請求はいずれ
も理由がないから、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結日 平成一二年九月四日)
   大阪地方裁判所第二一民事部
            裁判長裁判官    小   松    一   雄
               裁判官    高   松    宏   之
               裁判官    安   永    武   央
目録1目録2目録3目録4
基本形状
正面
縦長長方形の上部が緩やかな円弧状になった窓が
中央に大きく設けられ(その窓から中に収納され
たローソクをみることができる)、その上部中央
に赤色の原告登録商標(山亀マーク)があり、さ
らに最上部に「KAMEYAMA」の文字が白色
で左右にパノラマ形に広がって記載され、窓の右
側に「最高」、左側に「級品」の文字が青色で縦
に書かれ、窓の下部(最下部)に「カメヤマ」の
文字が黄色で横一列に大きく書かれている。
縦長長方形の上部が緩やかな円弧状になった窓
が中央に大きく設けられ(その窓から中に収納
されたローソクを見ることができる)、その上
部中央に左右に脚部が開いた青色燭台(3基
用)があって3本の長くて太い白色ローソクが
立てられ、それぞれに赤い炎が燃え、その明か
りが広がる様をイメージした4個の同心円(中
央から順に黄色・白色・灰色・青色と色分けさ
れている)が炎を中心として描かれ、その燭台
を挟むように左右に分けて「最高」「級品」の
文字が青色で横一列に書かれている。また、窓
の下(最下部)には「カメヤマ」の文字が黄色
で大きく横一列に書かれ、その文字と窓との間
に「225G」「20本」等の文字が白色で記
載されている。
背面
中央部のほぼ半分を占めるように、左右に脚部が
開いた青色燭台(3基用)があって3本の長くて
太い白色ローソクが立てられ、それぞれに赤い炎
が燃え、その明かりが広がる様をイメージした4
個の同心円(中央から順に黄色・白色・灰色・青
色と色分けされている)が炎を中心として描か
れ、3本のローソクの間を跨ぐように「暑」
「中」「保」「証」の文字が青色で小さく記載さ
れている。また、右同心円の上部(最上部)中央
に赤色の原告登録商標があり、燭台の下部に白抜
きの長方形状の枠内に使用上の注意などの説明文
が記載され、その下に「カメヤマローソク」(末
尾に小さく2段に分けて「株式会社」)の文字が
黄色で書かれている。
右端の上下全体に白色の太いローソクが1本描
かれ、右ローソクの本体に説明文(「燃焼時間
約1時間40分 実物大」)が黒色で記載さ
れ、ローソクの左脇に全体の5分の3程を占め
る縦長長方形状の白枠が設けられ、その枠内に
使用上の注意等の説明文が記載され、その枠の
下(最下部)に「カメヤマ」(末尾に小さく2
段に分けて「株式会社」)の文字が黄色で比較
的小さく記載されている。
最上部から5分の2
ころに、「3号 2
ET225g」の文
横一列に記載され、
「1本の燃焼時間 
の文字が白色で横一
れている。その下に
2分の1程度の面積
うに白抜きの長方形
り、枠内には使用上
紺色で記載されてい
には、「東亜若松株
文字が紺色で横一列
ている。
左右側面
上面・底

それぞれ中央に赤色の原告登録商標があり、それ
を挟むように上部に「三号」「20本入」、下部
に「正味」「225G」の文字が白色で記載され
ている。
それぞれ上部に「大ロ-3号」の文字が白色
で、中央部に「225G20本」の文字が白色
でかつ白枠に囲まれて各記載され、下部に赤色
で「カメヤマ」・白色で「ローソク」の文字が
横に並べて書かれている。
包装箱対比表
縦長の長方形の上部
方形の下部が緩やか
を占めて上下対称に
ソクを見ることがで
KI」の文字が赤色
最高級品」の文字が
の2程度を占めて、
きく書かれており、
なっている(「煌」
横一列に小さく書か
間」の文字が白色で
地色が赤色の丸の中
に、丸の中には「約
かれている(「約」
され、「120」は
中央に大きく「煌」
(ただし「煌」は黄
「きらめき」の文字
AMEKI」の文字
上部には、「煌」「
く書かれ(ただし「
「煌」の文字の横に
列に書かれ、下部に
の文字が白色で横一
原告包装箱
正面・背面が縦長長方形、左右側面・上面・底面が横長長方形の扁平な直方体をなし、各面の地色
が紺色で白色の縁取りがされている。
正面・背面が縦長長
形の扁平な直方体を
色と薄い紺色の縞模
ている。
赤色の「カメヤマ」・白色の「ローソク」の各文字が真横に並んで書かれている。

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛