弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 申請人が被申請人の従業員としての地位を有することを仮に定める。
二 被申請人は申請人に対し、昭和四四年四月二六日より本案判決確定に至るまで
毎月二五日限り一ケ月金三万一、四九八円を仮に支払え。
三 申請費用は被申請人の負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一、申請人
主文第一、二項と同旨の判決。
二、被申請人
 「申請人の仮処分申請を却下する。申請費用は申請人の負担とする。」との判
決。
第二 申請人の主張
(申請の理由)
一、(一) 被申請人は、肩書地に本社、山口県下松井市<以下略>に工場を有
し、従業員二、一五〇名を擁して、主として錻力および鋼板ならびにその加工品の
製造販売を業とするものである。
(二) 申請人は、昭和三九年七月二九日財団法人電機通信共済会訓練所に入所
し、電話交換手としての訓練を受け、同年八月二六日同所を終業し、右交換手の資
格を得たものであり、同年九月二一日被申請人に電話交換手として雇用され、被申
請人研究所において電話交換手の業務に従事していたところ、昭和四二年一一月一
日受付係へ、同四三年四月一日購買係へそれぞれ配置転換(以下配転という)され
本件配転当時においても右購買業務を担当していたものである。
二、被申請人は産休明けの申請人に対し、昭和四四年四月二一日付をもつて横浜市
<以下略>地所在の本社総務部独身寮(以下「独身寮」という。)への勤務を命じ
(以下「本件配転」という。)、さらに同年六月一三日申請人が本件配転命令に応
じないことを理由として懲戒解雇する旨を通知し、その後申請人の就労を拒否して
いる。
三、しかしながら、右解雇の意思表示は後記のとおり無効であり、申請人は依然と
して被申請人の従業員であり、被申請人に対し賃金を請求する権利を有する。とこ
ろで申請人の賃金は毎月二一日から翌月二〇日までを一ケ月分として同月の二五日
に支払われる定めであり本件配転命令を受けた当時における平均賃金は月額金三万
一、四九八円であるのに被申請人は昭和四四年四月二六日以降賃金の支払いをしな
い。
四、申請人は当働者であつて資産がなく自己および同じく被申請人の従業員である
夫Aの賃金によつて生活しているものであるが、右夫の賃金は一ケ月約三万四、〇
〇〇円に過ぎず、夫のみの給料によつては親子三人が生活していくことは不可能で
あり、本案判決の確定を待つていては回復し難い損害を生ずることが明らかであ
る。
 よつて申請趣旨記載の命令を求める。
(抗弁に対する答弁)
一、抗弁一項の冒頭部分は争う。
 同項の1の事実のうち、被申請人が申請人に対しその主張の日時に配転命令を発
したこと、申請人が配転先である独身寮に出勤しなかつたことは認めるが、その余
は争う。
 同項の2の事実のうち、被申請人が配転先への就業命令を発したことおよび申請
人がこれに従わなかつたことを認めその余は否認する。申請人は本件配転が違法無
効であるとの判断のもとにその本来の職場である研究所に出勤したが被申請人はこ
れを拒否し実力をもつて申請人の就労を拒否した。申請人が管理者の義務を妨害し
たことはなく、また本件配転に従わなかつたことによつて配転先の独身寮の業務が
紊されたというような事実は全くない。
 同項の3の事実のうち、就業規則に主張の規定が存すること、申請人が本件配転
に応じなかつたことは認めその余を否認する。
二、同二項の1の事実は争う、後記のように、コンピユーター方式導入後も申請人
のなすべき購買補助業務は残つており、それは独身寮でなすべき事務量よりも多い
ものであつた。
 同項の2の事実は争う。
 同項の3の事実のうち、本社独身寮に従来寮事務を専任処理する事務職員がいな
いこと、独身寮に管理人一名、寮母二名がおり、寮費や食品購入の記帳を同人らが
行つていたこと、同人らが住込みで賄業務を行う断続労働であること、被申請人が
申請人に対し本件配転に際し勤務時間の延長や住込みの断続労働にする旨の申し入
れをしたことがないことはいずれも認めるが、その余の主張は争う。
三、同三項の事実は争う。被申請人が申請人に対し解雇前に充分に説得をしたよう
な事実はない。
四、同四項は争う。
(再抗弁)
一、本件配転命令は思想信条を理由とする差別待遇であり、憲法第一四条、第一九
条および労働基準法第三条に違反し無効である。
1 被申請人には組合員約一、七〇〇名を擁する東洋鋼鈑労働組合が存在し、申請
人はその組合員である。また申請人は横浜勤労者音楽協議会の会員であり、その活
発な活動家である。右協議会は通称労音と呼ばれ(以下「労音」という。)、「勤
労者の自主的な力を結集して、よい音楽を安く聞く一切の活動を行う。」ことを主
たる目的として、横浜市およびその周辺の勤労者を中心にこの目的に賛同するすべ
ての音楽愛好家によつて組織されている団体である。
2、ところが被申請人は、労音活動は左翼運動であり、労音会員は左翼思態の持主
であるとしてこれを嫌悪し、昭和四一年一一月頃より労音および同会員に対し露骨
な誹謗中傷、脱退の慫慂、差別待遇、嫌がらせ等を行つた。
 同年一一月一日同研究所長であり被申請人専務取締役であるBは、朝礼の席上労
音に対し全くいわれのない誹謗中傷を行つた。
 その後会社職制による労音および同会員に対する攻撃が開始された。即ち、翌一
一月二日溌発な労音活動家であり後に申請人と結婚した申請外立中Aは直接の上司
であるC室長に「君は共産党ではないか。組会活動はいいが共産党は困る。」など
といわれ、その他殆んどすべての労音会員およびサークル活動家は職制に吸び出さ
れ、「君は共産党か民青同盟員か。」「労音はアカだからやめろ。」等と言われ、
思想攻撃を受け、労音からの脱退を強要された。
 さらに所員が脱退慫慂に応じないとみるや会社主催の慰安旅行や忘年会にその者
を参加させず、また出向、配転、派遣等露骨な差別待遇を行つた。このような被申
請人の労音会員たる従業員に対する攻撃は熾烈をきわめ、例えば同会員である申請
外D、同E、同F、同G、同H等に対しては、所長を先頭に全職制を挙げて、攻撃
が系統的かつ執拗に加えられたのである。
3、右被申請人の一連の攻撃を申請人についてみるに、
(一) 申請人は入社以来電話交換手として勤務していた昭和四一年一二月頃I人
事課長から労音活動家であつた前記Dおよび同Jの電話内容をチエツクして伝える
ように、また同人等がいない時先方が電話を誰に廻してくれというか、その氏名も
チエツクするように命じられたがこれに応じなかつたところ、翌一六日申請人はK
総務課長に呼出され「労音は、外国の共産党から金が流れている。共産党や民青に
は気をつけるように、電話交換手は会社の情報センターの仕事だから労音は困
る。」等と言われた。さらに、昭和四二年八月一一日I人事課長は現在の夫である
立中Aと交際していた申請人を呼出し、「A君は労音の活動をしているし共産主義
者だということを知つているか。」「あなたが彼と結婚して会社をやめれば何とも
いわないが勤めを続けるとなると交換手として置いておく訳にはいかない。会社は
労音を共産党であり民青とみている。会社の嫌がることを続ける限り、親はもちろ
ん保証人にも手を打つ。」等と脅迫的言辞をもつて申請人の労音会員であることを
嫌悪し、その飜意を迫つた。
(二) 昭和四二年一一月一日被申請人はまつたく一方的に申請人を受付係に配転
した。右受付係の事務は郵便物の処理、文書の整理、来客の接待等であり、電話交
換とは全然職種が異る。右配転の表面的理由は会社が国際的になるので英語のでき
る者を交換手として採用するということであつたが、実際にはその必要はなくその
真の理由は申請人が労音会員であり立中Aと結婚を前提として交際していたところ
から同人を「情報センター」たる交換手から除外し、併せて労音会員たる申請人を
差別待遇することにあつたことは明白である。
(三) 申請人は、昭和四三年三月三一日立中Aと結婚したが、翌四月一日付をも
つて夫Aは一年間の期限付で京都大学へ派遣され、同時に申請人はまたもや購買係
へ配転された。右婚姻の数日前、K総務課長は申請人を呼出し、「結婚したら会社
をやめたらどうか。彼は京都へ派遣されることになつているから一緒に行つて家庭
を築いたらどうか。女性は家庭に入り主人に仕えるのが一番しあわせだ。」等と退
職を強要した。右購買係の責務は伝票の整理であつて仕事らしい仕事はなく全くの
閑職であり、申請人を配転させる必要は全然無く、その真意は自ら退職せしめるか
あるいは合理化を理由として同人を解雇する布石を敷くことにあつたものと考えら
れる。
 また夫Aに対する京大への派遣は、当時組合執行委員であり、活発な労音活動家
であつた同人に対する差別待遇であることが従来の経過から見て明らかである。
(四) 申請人は昭和四四年三月八日出産予定であつたので、同年一月二六日より
出産休暇に入つたのであるがその前日K総務課長は申請人に対し、「子供ができた
ら会社を退職してほしい。」と申し入れた。申請人が子供は親が面倒をみるので従
来どおり勤務できる。生活のこともあり自分も仕事がしたいので退職の意思はない
旨答えるや、同課長は、「女は育児に専念することが大切だ。産休明けには現職を
期待するな。」と述べた。
 同年三月一三日男児を出産し、その産休明けに本件配転命令を受けたものである
が、配転先たる独身寮は、後記3に記載のとおり、本社総務部に所属し、その指揮
命令系統および勤務場所が従来の職場と全然異るばかりでなくその職種が全く異質
のものである。
(五) さらに被申請人は同年三月立中Aに対する派遣期間を一年延長した。この
ように申請人夫妻は労音活動家であるということで、結婚直後から夫婦別居を強い
られ、長男出生後も派遣期間が延長されてさらに別居の継続を余儀なくされたうえ
申請人自身もかかる不当な配転を受けたのである。
 以上の諸事実によつて明らかなように、本件配転命令は申請人がその夫とともに
労音会員であり、かつその活発な活動家なるがゆえにこれを嫌悪し、ことさら差別
して取扱つたものであり、したがつてこのような配転命令は無効というべきであ
る。
二、本件配転命令は申請人を女性なるがゆえにことさら差別して取扱つたもであり
憲法第一四条、民法第九〇条に違反し無効である。
(一) 被申請人はかねて結婚した女子職員は退職させる方針をとつており、昭和
四三年ころから女子職員の入社に当りその旨の念書をとつていた。そのため結婚後
も在職している女子職員は稀であつて況んや出産後も勤務を続ける者は現業職を除
き皆無であつた。つまり被申請人においては女子は出産時をもつて退職するのが通
例であると考えられていたので申請人が産休に入る前から産休中にかけて数回も執
拗に退職を強要してきたのである。
(二) さらに被申請人は本件配転の理由として、申請人が妊産婦として産前産後
の休暇を取得し、かつ生後一ケ年未満の生児を育てる母親という条件では規律ある
勤労には不安定な要素があり責任ある業務分担を期待できないこと、一日二回以上
の育児時間等勤務上の空白が予想され、育児施設も考慮し、業務上支障の少い職
種、勤労場所へ配転する必要がある等を挙げているけれども、申請人は一貫して、
子供は同居中の夫の母親が世話を見ることを伝えてあり、育児時間を請求したこと
もない。育児時間の請求は権利であつて義務ではない。
 また就業規則第八八条の「妊産婦」とは労働基準法第六五条三項の「妊娠中の女
子」に相当する者を指すのであつて申請人のように出産後六週間を経過した者は含
まれないというべきである。
 被申請人は申請人に欠勤が予想されるとか、半人前であると勝手に推測し申請人
が結婚したこと、出産したことを嫌悪して、同人の望まない配転を一方的に押しつ
けたもので女性に対する不当な差別である。
三、本件配転命令は異種配転、即ち労働契約違反であつて無効である。
1、申請人は電気通信共済会訓練所において電話交換手としての訓練を受け、同所
を終業するに際して同所の紹介により被申請会社に入社したものであり、入社の際
には、前記研究所において電話交換の業務を行うべき旨職種を明示されている(川
島紡績株式会社在籍および同高等家政学校卒業の事実は口頭をもつて会社に申告し
ている。)。したがつて同人と会社との労働契約の内容のうちその職種は特定され
ていたというべきであるが、前記のとおり二回に亘る配転により、本件配転当時購
買係としてその事務に従事していたものであり、同人の会社に提供すべき労務の種
類内容は少くとも事務系労働の範囲において特定されていたというべきである。
 申請人の従来の職場における購買事務の具体的内容は、研究資材の請求書、購買
伝票の整理、集計、報告および研究費の項目別の分類・集計、報告等の事務系の作
業であつたものである。
2、しかし本件配転命令先の独身寮での仕事は従前のそれとは全く異る現場作業労
働たる右寮の炊事、掃除等の賄婦たる作業であり、また指揮命令系統も研究所の所
轄に属せず本社総務部直轄なのであるから、そと職種は異る。この様に職種を変更
するにあたつてはあらたな内容の労働契約を結ぶこと又は内容の変更の合意が必要
とされるのであつて会社の人事権の発動として一方的に配転命令を出しても申請人
はこのような配転命令に応ずる義務はない。
3、被申請人は配転先たる独身寮において申請人の従事すべき業務は申請人の従前
の仕事と同種の事務作業であり、それは寮の購買業務、会計関係の事務、伝票整理
等であると主張するが、申請人に対し配転にあたりかような事実を示したことはな
いし、また客観的にも寮には会社主張の如き事務作業が存在したとは考えられな
い。
(イ) 申請人は本件配転命令の出される前後から解雇されるに至るまで本件配転
に応じられない理由の一つとしてこれが職種の変更になることを終始一貫して被申
請人に対し訴え続けてきたのであるが、これに対し被申請人は配転が申請人に不利
益とならないこと、会社の業務運営上必要であることを強調するのみで、配転先の
作業内容が現在会社の主張するような事務系の作業であつて職種の変更にならない
旨の説明は文書によつても口頭によつても一言半句も言及していない。
(ロ) 本件配転当時独身寮には二二名の寮生が居住していたに過ぎずこれに対し
既に管理人夫妻およびその他に賄婦一名(いずれも嘱託)が勤務していたものであ
るから被申請人主張のような事務(デスクワーク)が存在していたとは到底考えら
れない。仮に事務的作業があるとしてもそれはそもそも独立した実態を有する「一
般事務職」における事務的労務ではなくその他の職種における「事務的労務」にす
ぎないものというべきである。
四、人事権ならびに解雇権の乱用
1、一般的に使用者が人事権を有することが承認されるとしてもこれが他方におい
て必然的に労働の自由ないし権利を制約する契機を含むものである以上その無制限
の行使が許されないことは当然である。これを本件配置転換についてみると、本件
配転により申請人は後記3のとおり労働上の不利益及び精神的苦痛を蒙つているの
であるから当該配転について企業運営上の客観的な合理性ないし業務上の必要性が
充分認められなければならない。
2、本件配転においては申請人を独身寮勤務へ配転しなければならない業務上の客
観的な合理性ないし必要性は存在しない。
(一) 先ず被申請人はコンピユーター方式の導入により購買担当の人員も減少に
向い、産休後の申請人の原職が消滅することになつたと主張するのであるが、かか
る主張は配転先の業務の内容と同様、本件訴訟において始めて現われたものであつ
て真の理由ではない。本件配転の前後より解雇に至るまで会社は本件配転の「業務
上の必要」として専ら「妊産婦として産前産後の休暇を取得し、かつ生後一ケ年未
満の幼児を育てる母親という条件では規律ある勤務には不安定な要素がある」こと
を理由にしていたのみであつて、コンピユーター導入等による原職消滅については
全く言及されていない。
 仮にコンピユーターの問題があるとしても研究所にコンピユーター方式が導入さ
れ実施されたのは八月一日よりであり、申請人の産休明けである四月二〇日当時か
ら七月末までは従来の方式とは異るが、いわゆる手計算による伝票整理、集計等申
請人が従来行つていたものに相当する業務は存在していた。
 従つて五月一日をもつて原職が消滅したということはない。更に被申請人によれ
ば、コンピユーターのシステム、コードナンバー等について一ケ月以上の教育が必
要であるというが、購買係たる申請人に本格的なコンピユーターシステムの知識な
ど必要なく、コードナンバーのチエツクに必要な知識は数日間の講習で足りるし、
コンピユーター方式移行後においても、キーパンチ等申請人の行い得る業務はなお
存在したのである。
(二) 次に被申請人は申請人の配転先として女子社員の就く業務は四、五種しか
なく当時いずれも欠員がなく、僅かに独身寮に事務員が一名必要であつたと主張す
るのであるが、研究所における女子従業員の職場は受付、文書、電話交換、経理、
人事、図書、タイプ、医務の八種類あり、このうち医務を除き申請人は右いずれに
も就労することが可能であつた。仮に申請人の産休明け当時に欠員がなかつたとし
ても、その時期は事前に確定していたものであり、かつ人事移動期の直後の時期で
あつたのであるから、このいずれかの係に配属することは充分可能であつた。当時
経理係のLは昭和四四年九月三〇日に、タイプ係のMは同月二日にそれぞれ結婚し
て退職したが、このことは既に当時会社に判明していたことであり、これを予定し
て人事配置を組むことができたはずである。
3、本件配転は申請人に著るしい労働上の不利益及び精神的苦痛を与えるものであ
る。
(一) 本件配転先は独身寮の賄業務を含むものである。独身寮はいうまでもなく
会社の支店或は営業所ではない。「一般事務職員」として入社した者は何人も、自
己が会社の独身寮で賄業務を担当して働かなければならないなどとは夢想だにしな
いであろう。
 しかも、数日間や、数ケ月間の応援ならともかく本件では無期限の配転であり、
申請人の身分をそこに固定化しようというのであるから本件配転は「嫌がらせ配
転」であるというべきである。
 如何に「仕事に貴賤がない」とはいえ寮管理人を上司としてその指揮命令のもと
に、独身寮へ勤務させるとは非常識というべきであつて申請人が働く意欲をなくす
ことは当然であり、精神的苦痛は大きい。
(二) 被申請人は賃金、労働時間が変らないことをもつて労働条件に変更なく、
不利にならないと云つているが、労働条件はこれに限られるわけではない。
 通勤時間も若干長くなり、スポーツ施設等の厚生施設がないこともさることなが
ら、労働環境に質的差異がある。
 寮は、寮生が寝泊りするところであつて、会社本来の職場(特に事務系職員とし
ての)ではない。申請人の出勤時間中には寮生は誰れもいず、一日中管理人や賄婦
の手伝いをしていなければならないのである。若し被申請人主張の事務のみをする
とすれば事務員が少く、勤務時間が余り、なすべき仕事もなく、時間を過さなけれ
ばならないこととなる。労働者は、単に賃金を貰つていればいいというものではな
い。労側環境はいまや主要な労働条件の一つである。このような箇所への配転は、
他意あるものであるか、そうでなければ、それ自体企業合理性を疑わしめるもので
あるばかりでなく、当該労働者にとつても精神的に不利益を与えるものである。
 また、狭義の労働条件(賃金等)についても、配転時はともかく、将来営業所に
おける事務職員との間に較差が生じてくることは見易い道理である。
4、以上のとおり本件配転には企業運営上の客観的合理性ないし必要性はなく、申
請人に労働上の不利益、精神的苦痛を与えるものであり、結局会社が以前から申請
人に対して度々退職を強要してきた経過から明らかなように、本件配転は「嫌がら
せ配転」であり「いびり出し配転」であつて配転命令権あるいは指示命令権の乱用
であり、本件配転命令は無効である。
五、本件解雇の無効
1、以上の諸理由により本件配転命令は、無効であり、申請人がこれに従う義務は
ない。
 したがつて、本件配転命令に従わないことを実質的理由とする本件懲戒解雇もま
た当然無効である。
2、仮に配転命令自体が無効でないとしても、叙上の如き諸事情のもとにおいて、
申請人がこの配転命令に従わなかつたのは尤もなことでなり、同人に法律上の責任
を追及することはできない。
 したがつて、配転命令を理由なく拒んだことを理由とする本件解雇は解雇権の乱
用として無効である。
3、個別的解雇理由について
(一) 「無断欠勤」
 申請人の就労請求にも拘らず、被申請人がこれを拒否していたものであつて、本
件配転が無効であり或はその拒否に正当な事由が存する以上問題とならない。
(二) 「就業命令違反」
 これも、配転が無効、あるいはその拒否に正当性が認められる限り問題はない。
第三 被申請人の主張
(申請の理由に対する答弁)
一、申請の理由中一項の(一)は認める。同一の(二)については、申請人を雇傭
したことは認めるが、申請人は被申請会社本社において一般従業員として雇用され
たものであつて電話交換手として雇用されたものではない。
二、同二項のうち申請人主張の如き配転命令を発したこと、懲戒解雇の通知をなし
たことは認める。
三、同三項のうち申請人の当時の平均賃金額および会社における賃金計算の方法、
申請人が主張の日以降賃金支払を受けていないことは認めるが、その余は争う。
四、同四項は争う。申請人の夫の賃金は一ケ月金四万六、三七八円である。
(抗弁)
一、本件懲戒解雇の意思表示とその理由
 被申請人は、申請人に次に述べるような懲戒事由に該当する行為があるため就業
規則第七四条一号、三号、八号、一一号の定めに基づき昭和四四年六月一三日付で
懲戒解雇する旨の意思表示をなしたから申請人との間の雇用契約関係は右日時限り
で終了したものである。
 懲戒解雇事由に該当する事実は次のとおりである。
1、被申請人は後記のとおり申請人に対し昭和四四年四月一一日付をもつて、同月
二六日以降本社総務部所属独身寮に配属する旨の配転命令を発したのに申請人は、
同日以降も勤務先たる独身寮に出勤せず、本件解雇時まで二〇余日間無断欠勤を連
続した。この間被申請人は同月二五日本社において配置先の業務内容の指示説明を
行わんとしたが、申請人はこれを受けることを拒み、就労の意思なき旨を述べるの
みであり被申請人は後記のようにさらに数回に亘り就業命令を具体的に発したが、
申請人はすべてこれを無視して欠勤し続けた。右行為は就業規則第七四条(懲戒解
雇)第一号「正当な理由なく無断欠勤引続き一四日以上におよぶとき」に該当す
る。
2、さらに申請人は、前記の配転命令を服さず新配属先に赴任しなかつた指示命令
違反、具体的に発せられた個々の就業命令(四月二六日、二八日、三〇日、五月二
日、二〇日、二二日、二六日等)をも無視して、四月二五日本社で行なつた業務上
の指示説明も拒否して受けなかつた指示命令違反があるのみならず、その間次のと
おり配転前の旧職場に押しかけて積極的に管理者の業務執行を妨害する挙に出た。
 例えば四月二六日、二八日には退去命令に従わず研究所に立入り、事務室長の執
務する机の前に長時間にわたり座りこみ、同室長の執務を妨害し、五月一二日、一
六日、二六日等数回にわたり、出勤時間に部外者一〇数名ないし数一〇名を伴つて
研究所の門附近に立塞り、出勤してくる所員の入門を実力をもつて阻止しその就業
を妨害した。またその他四月末から解雇時までの間多数回にわたり研究所の門にお
いて阻止を押しのけて実力で入門せんとし管理者多数の執務を妨害した。これらの
包括的および個別的指示命令への申請人の違反行為により、被申請人の人事管理秩
序が甚しく紊されるとともに、配転先職場の業務も紊され、さらに積極的妨害活動
によつて研究所の業務も紊された。
 申請人の右行為は就業規則第七四条第三号「職務上上長の指示命令に従がわず越
権専断の行為をなし職場の秩序を紊した」ときに該当する。
3、被申請人の研究所の就業規則中には従業員は所属上司の命に従い職場秩序を守
らねばならず(第四条職場規律)、勤務時間中は所定の業務に専念しなければなら
ない(第六条業務専念)ものと定められている。また配転等の異動を命じられたと
きは正当の理由のない限りこれを拒否することはできず、所定期間内に新配置に赴
任しなければならない(第五三条、五四条)と定められている。しかるに申請人は
前記のとおり配転命令によつて生じた職務内容の変動を無視して赴任せず、具体的
就業命令にも従がわずに無断欠勤を続け、従業員として守るべき就業規則の右条項
に対し極めて重大な違反をなした。これは就業規則第七三条八号「この規則又はこ
の規則に基づいて作成された諸規定に違反しその情状が重いとき」の加重条項たる
同第七四条(懲戒解雇)一一号「前条各号の一に該当しその情状が著しく重いと
き」に該当する。
二、本件配転とその事情
1、申請人は当時研究室購買事務補助の業務に従事していたが、申請人の産休明け
ころにはコンピユーター方式導入による事務作業合理化のため次の事情のとおり消
滅するに至つた。
(一) 被申請人の研究所事務室での購買事務処理の適正化については、昭和四三
年四月申請人を文書受付から購買に担当を変更した当時までは必要に応じて人員を
投入する方法によつて図つてきたが昭和四三年末ころに研究所全体として研究費管
理をコンピユーター(電子計算機)方式の導入により合理化する旨の基本方針を決
定し、翌四四年初頭より購買事務処理をコンピユーター方式によつて適正化する方
針が採用され、同四月より購買業務の中でのすべての集計々算および報告作成の業
務(これを申請人が担当していた)をコンピユーターで処理すべく試行に入り同年
七月より本格的コンピユーター化への移行が実施され今日に至つているのである。
(二) 申請人がもと購買事務補助として担当していた業務内容は、研究資材の請
求書の整理、集計、報告ならびに研究費の項目別の分類、集計、報告等であり、具
体的には研究所内各所から購買に集つてくる伝票の整理、集計が主たるものである
が、この伝票の整理集計という仕事をコンピユーターにやらせるためにはまず一定
の処理方式を確立しこれを電子計算機に記憶させなければならずまたそのプログラ
ムに合わせて伝票上の諸記載事項もこれを数字からなる一連の記号に置き換えて記
載することが必要となりそのため伝票の様式も改変されることになつた。研究所に
おいてはコンピユーターによる研究、管理方式の一環として購買等の事務処理も昭
和四四年四月一日から実施することを目標とし、そのため同年二、三月ころには購
買業務としても、前記のとおり伝票方式の改変その他コンピユーター方式導入に向
つて諸準備作業が行なわれたのである。同年四月以降は右準備作業の結果、購買補
助業務としての伝票の整理集計もコンピユーターによる処理方式に合わせた方法で
行なわれることになり、一般事務職従業員の手を離れて専門技術者(コンピユータ
ー要員)の処理するところとなり、同年五月一日以降もはや申請人が従来購買にお
いて処理していたような処理方法による購買関係の伝票の整理集計の補助業務とい
うものは消滅したのである。
(三) ところで、コンピユーター方式導入後も購買担当の職員Nは依然として従
来の購買業務を担当しているのであるが、前記のコンピユーター要員の処理すると
ころとなつた購買関係業務とは、申請人が担当していた購買補助業務が中心であつ
て、Nが担当していた購買の本体的業務(発注、検収、現品管理等)は業務の性質
上コンピユーターの機械処理に親しまないものであつて右Nにはその後も右業務を
担当する必要があつた。申請人が購買に移る前には、Nは購買本体の仕事の他、補
助業務まで一人で処理しきわめて多忙で、本体的業務を充分果すことができなかつ
たのであるが、申請人が購買に移つてからは補助業務は申請人が処理しNは主とし
て購買本体の業務に専念することができたのである。
(四) 申請人の原職である購買(補助)業務のコンピユーター化移行の時期
 従来、人手を以つて処理していた事務をコンピユーターにかけるためには、事務
内容をコンピユーターの読める用語(コード番号等の数字)に改める必要があり、
そのため移行の途中で事務処理の方法もコンピユーターシステム用の処理方法に改
めねばならない。研究所の購買業務の例でいえば、研究資材の請求書の整理、集
計、報告並びに研究費の項目別分類、集計、報告等具体的には、研究所内各所から
集つてくる伝票の整理、集計業務が、当初の計画より一ケ月遅れて、
(1) 昭和四四年四月末日まで(三月分の処理)は従来の方法
(2) 同年五月一日より七月末日まで(四月から六月分)は移行のための試行期
間としての手計算の方法
(3) 同年八月一日以降(七月分以降)はコンピユーターシステムという経過を
たどつている。従つて、申請人の担当した購買補助業務の人手による仕事が消滅し
た時期は四四年八月一日以降となるのであるが、申請人の処理してきた従来の方法
による事務処理は同年四月末日を以つて消滅している。すなわち、五月から七月ま
での購買補助業務はコンピユータシステムを前提とした従来と違つた処理方法であ
る上に、特にこの移行のための過渡的手計算を行う目的は、各所員が新システムに
理解不充分、不慣れなために起る書類の誤りを発見したり、処理システム自体実情
に合わぬ個所の修正をしたりすることにあるため、この時期における手計算の担当
者は一般職員より遥かに高度のシステムに対する理解と熟練が要求され、そのため
の特別の訓練を経てこの衝にあたつたものでなければならなかつた。一般職員はコ
ードシステムのうち自己の担当する部署ないしプロジエクトに関係ある部分のみを
知れば足りるため、これに対し数日の講習を行つたが、購買担当者は所内全員から
集る伝票を整理しなければならず、コードシステム全体系を頭に入れ、しかも複雑
な誤記の形態の処理をしなければならずコンピユーター要員から相当期間の教習を
受けた。
 ところが、申請人はたまたま、手計算の訓練期間中は出産休暇で出勤しておら
ず、手計算期間はわずか三ケ月程度の過渡的なものであつたため、出勤後改めて申
請人に教習を施す暇も必要もなかつたことから五月以降の手計算作業を担当させな
かつたものである。従つて申請人の処理すべき事務(従前の処理方法による購買補
助業務)が消滅する四月末日以降、同人の原職は消滅し購買においては冗員となつ
たのである。
2、研究所内において他に適職が存在しなかつた。
(一) 被申請人の事業場は関東地区では前記総合研究所および本社があるだけで
あり、またもともと被申請人の女子従業員は高等学校卒業以上(短大卒、大卒をふ
くむ。)が原則であつて申請人のように中学卒業者は極めて少なく従つてその配置
可能な職場は自ずから局限されざるを得ない。
(二) ところで、研究所における各部課の業務分担内容は研究部(部に相当する
もので、この中がさらに数個の研究室に分れている。研究部内で調査企画、業務班
などと呼ばれるものは分担業務の名称であつて職制機構としての名でない。)と事
務室(昭和四一年一〇月一日までは総務課。規模は部と課の中間にあたり、事務課
あるいは事務部に相当するものである。職制上この中に人事課をふくみそれ以外は
分担業務の種類が分かれているにすぎない。)の二つとなつているところ、右研究
所で女子従業員が就業していた業務は、研究部にももちろん存在し事務室所管でも
受付、人事、経理、交換、図書、タイプ、診療所および購買の他雑役(掃除婦)、
食堂炊事婦がある。しかしこれらのうち研究部は高度の学歴と技能をもつ専門家の
仕事であつて一般事務職員をもつて充て得ないし、図書、タイプ、診療所の業務も
それぞれ専門技能者資格者の職場である。雑役と食堂賄は用務員の業務であつてこ
れも一般事務職員の仕事でない。結局一般事務職員の就業する業務は受付、人事、
経理、電話交換、購買の五種類にすぎない。そのうち人事、経理は等しく一般事務
職の女子従業員といつてもその仕事の性質上比較的高い学歴、技能、経験ある者を
もつて充てざるを得ず、その点中卒の資格しかない申請人は適当でない。受付と交
換は既にかつて申請人が一旦担当したが後にこれから転出せしめられており、不適
当であることが実証されている。結局は残るは購買業務だけなのであるが前記のと
おりこれがコンピユーター導入により冗員となる以上もはや研究所には昭和四四年
四月末ころの申請人の産休明けには同人の担当すべき適当な業務は存在しなかつた
のであり、また申請人の学歴等の関係で本社においても同人を充てるべき適当な業
務がなかつた。
 もとより当時各部署に欠員ないしその予定も存在していなかつた。
3、本社独身寮への申請人の配置決定とその事情
(一) 申請人の配置先の本社における選定
 研究所から申請人に配置すべき適当な部署の依頼をうけた本社では、申請人の学
歴、経験、技能及び本人の当時置かれている生活、健康状態(出産直後で乳呑児を
抱えている)等を総合判断し、申請人の提供を期待しうる労働力の内容と各職場の
状況とを考え合せて、種々検討を行つた。
 被申請人の主要な事業場は、山口県の工場の他は東京の本社と横浜の研究所があ
るだけである。本社自体としても、当時は研究所と同様の高学歴化が見られ、女子
でも高卒以上が原則で中卒者は例外的となつており、配属しうる職場も限局されざ
るを得なかつたが、そうしたところにも欠員又は欠員予定者は見当らなかつた。こ
のように、会社の側からみて与えるに適当な仕事が見出し難い他に、出産直後で乳
呑子を抱えている当時の申請人の側にも、育児休憩や健康要保護者(就業規則八八
条)などの制約があつて、相当期間にわたり普通の従業員に期待される労働量(一
工数)は期待し難く本社、研究所に配置すると職場の同僚に不衡平の感じを抱かせ
るなど悪いえいきようがでるので一層職務の選択が困難となつたのである。
 斯様に種々検討の結果、諸制約の下で強いて求めるならば、本社独身寮の事務担
当者の職務であれば、学歴、経験、技能いずれの点よりするも申請人を充てて問題
がないばかりでなく、〇・五ー〇・七工数の労働量であるので、申請人に当時期待
しうる程度の労側力でも処理が可能であり、且独立した職務であるため、多少欠勤
や労働能率の低下があつても、他の同僚の作業に影響が殆んど無く、一日を争う内
容の仕事でもないなどから、当時考えられる唯一の適職であつたのみならず、独身
寮は和室、炊事場、洗濯場等も完備していて、申請人が乳呑子の保育上必要な便宜
も整つており、通勤距離、時間の面でも研究所の場合と殆んど全く変るところがな
く、労働条件も前と同様であるなど、申請人にとつて有利でこそあれ、不利になる
点は何一つ無い最適の職場と考えられたので、被申請人は三月下旬、申請人を本社
独身寮の事務職に勤務させることと決定したものである。
(二) 独身寮事務職への配置の意義
 申請人は本社独身寮の事務職を担当する者が、申請人に対する配置命令以前に居
なかつたしその後も居ない点をとらえて、元来寮の事務職という仕事は架空であり
存在しないと主張するが、本件の申請人の場合は、研究所に冗員となつた申請人
に、本社内に他に適当な職場がないといつても整理解雇するのでない以上、無理に
もどこかに職場を見出して与えなければならず、その結果寮事務職を命じたもので
ある。
 尤も申請人に職場を与える為に見出した寮事務職であるからといつて、ここに申
請人を配置することが被申請人にとつて、有効なものでないとはいえないのであ
る。
 即ち、従来から寮の事務を処理する専任の者がいないため、管理人、寮母等が本
来の寮管理業務の片手間に事務処理を行つている。その結果、管理人等が本来業務
に専念できず、管理業務が不充分におわつているほか、元来寮事務の一部に属す業
務を、管理人等では処理しきれないため寮生に処理を任せたり、本社総務部で処理
したりしている部分もあり、それでも尚寮事務の処理が不完全、不充分であつて、
備付けるべき諸帳簿類にしても未整理のままでおかれているのである。申請人が寮
事務に専念することになれば、右の如き事務処理の不備は逐次癒され、管理人等は
本来業務に専念できて、より充実した管理がなされるばかりでなく、状況によつて
は(管理人、寮母が本来業務に専念できることによつて、寮母の一人に若干の余裕
が生じるようになれば)、従前から親会社東洋製缶より要請されていた東缶寮への
応援に、寮母の一人を若干時間差し向けることも可能となることが予測された。
 寮事務の仕事は既掲の通り〇・五ー〇・七工数の仕事にすぎず、普通に働ける従
業員一人を配置する程の仕事量ではないから、(それだから従来管理人等によつて
曲りなりにも処理できている。)申請人以前に専任者がいないし、配転命令拒否の
後も誰も赴任していないのは当然のことであり、それだからといつて申請人のため
の寮事務が、存在しないということにはならない。
 なお申請人が専任処理すべき寮事務の具体的内容は管理費明細等の整理、集計、
報告等である。
三、本件配転命令および懲戒解雇手続の公正
 被申請人は配転命令拒否という事態の重大性に鑑み、申請人に対し解雇以前に充
分説得を行つたが、労働組合もその間何回も説得を重ねている。
1、組合は申請人が強硬に反対しているので、その意向を一応は被申請人に取次ぎ
ながらも、組合としては申請人の反対が究極に於て本件配転を拒否しうる正当理由
となり得るものではないという判断の下に、同時に申請人に対して、もしこの反対
を被申請人が受入れないときは配転命令に服し、ただ配転先の労働条件が低下しな
いようにその権利の保護をはかるというのが、この際の正しい態度であることを告
げて、その意味の説得も重ねている。然し申請人は終始絶対反対の態度を変えてい
ない。
2、四月二五日には被申請人から申請人に対し、配転命令を正式に伝達するととも
に併せて新職場での担当業務の内容を説明せんとしたのであるが、申請人は既にこ
れより数日前、文書で反対の意思表明をした通り、配転それ自体に反対である態度
を明示し、被申請人からの説明は全く受けようとしなかつた。被申請人は尚も種々
説得したが申請人は頑としてきかなかつた。
 更に当日申請人は研究所にもゆき、執務中のK室長の前に座込んだので、室長か
らも説得を行つている。
3、翌二六日から解雇に至るまで、申請人は連日研究所に押しかけて強行就労しよ
うと企てたので、研究所管理者は総出で之を押止めるとともに、その都度連日にわ
たり申請人に説得し、配転命令に従うよう話している。それでも申請人は執拗に同
じ行動を繰返していた。
4、五月二日には本社総務部長名で文書による説得を行つた。更に五月二六日に
も、申請人が本社に給料を受取りに来た際、総務部長以下が直接本人を説得してい
るが、本人の態度には変化がみられなかつた。
5、五月下旬に至り、会社は事態をそのまま放置するわけにはゆかず、申請人を懲
戒解雇する方針を決めて労組と協議に入つた。このあと六月一一日までの間にも労
働組合は、更に何回か申請人と接触し、重ねて本人に飜意して配転命令に従うよう
説得した。
 この当時組合の機関の討議に於ても、申請人の態度を正しいと判断する者は無か
つたものと見られる。懲戒解雇に関する団体交渉の段階に於てすらも尚、もし申請
人がこの時点で飜意すれば、若干の処分はしても解雇にはしない被申請人の考えで
あつた。
 申請人は組合の説得にも少しも耳をかす事なく、組合の機関決定にも従えない態
度を明言したので、遂に組合も説得をあきらめ、条件付ではあるが、懲戒解雇を諒
承した。
四、本件懲戒解雇の相当性
1、本来、他の就業規則違反と異り、配置転換命令の違反は特異な性格の問題であ
る。若し正当な配置転換命令が発せられたのに対して従わず反抗した者を、解雇以
外のより軽度の懲戒しか為し得ないものとすれば、被配転者は軽度の懲戒さえ忍ぶ
ならば、配転命令そのものには従わないでも済む結果となり、被申請人の配転命令
は実効を失い、従業員を有機的組織的に適材適所に配置することによつて最大効率
を発揮せんとする、人事管理秩序は崩壊に帰する結果となることが予想される。従
つて配置転換拒否行為には、解雇以外の懲戒は無意味であり、適用の余地がないも
のと解される。
 のみならず本件の場合、申請人は配転命令に対して、単に消極的に不服従である
に止らず、強行就労に出るなど積極的に命令と背反した態度・行動を実践し、その
上研究所の管理職の業務に対する積極的妨害活動を、長い期間、多数回にわたつて
実行したものであるから、その情状は誠に重いものがある。
2、本件配転発令自体も、労働協約上の協議条項に則り、労働組合との充分な事前
協議を行い、その承認を得て発令したものであるが、更に配転命令から解雇にいた
る約二カ月近い間、被申請人及び労働組合から申請人に対し、あらゆる手を尽して
度重なる執拗なまでの説得がなされたのである。申請人は最初に被申請人の説明を
きく前から既に拒否し反対の態度を示して以来、頑としてその態度を少しも変え
ず、独善的な見解を固執して終始反抗し続けた。之はその後懲戒処分に関する労使
協議に於て、組合も申請人の非を認め、懲戒解雇を承認する程の行為であつて、申
請人の態度がいかに従業員の通念に反するものであつたかが裏付けられている。
 之ら諸点からして、申請人の本件行為には、懲戒解雇を減軽すべきいかなる理由
も見出されないのであり、本件処分は正当である。
(再抗弁に対する答弁)
一、再抗弁一項の前文については争う。
二、同項の1の事実については、その主張のような労働組合があることは認めるが
その他はすべて争う。横浜労音およびそれと研究所、申請人との関係は不知。
三、同項の2の事実のうち、昭和四一年一一月一日研究所長のBが朝礼を行つたこ
とは認めるが、同人は中国と関係が深いので中華人民共和国の状況に話が及ぶこと
はあるが、申請人主張のような発言はしていない。その他はすべて争う。
四、同項の3(一)(二)の事実については、主張の日時に被申請人が申請人を事
務室内の文書収受(その業務内容は郵便物の処理、文書の整理、来客の接待等であ
る。)に分担業務を変更したことは認めるが受付係なる地位はなく配転ではない。
その余はすべて争う。
 なお、右分担業務変更の理由は、当時米国の技術提携先会社と研究員の交換交流
を行つており現実に同年八月ころから米国人研究員が派遣されて来ていて、国際電
話の応接もあり当時の交換手に国際電話受信上の過誤が生じたため、こうした現実
の必要に基づき英語のできる者を交換手にあてることになり、その結果申請人が事
務室で他の業務を分担することとなつたものである。
 同項の3の(三)の事実については申請人がその主張の日に立中Aと結婚したこ
と、同人が主張の日付をもつて京都大学へ派遣されたことは認めるが、その余はす
べて争う。
 なお、右Aの京大派遣は結婚の届出がある以前から決定していたものであり、右
結婚前に、K室長が申請人に対し、結婚後は退職するか否かを確かめたことはある
が、これは右Aの社宅を用意することの要否および申請人の後任補充の要否を調査
するために行つたもので退職を強要したことはない。
 同項の3の(四)の事実については申請人が主張のころ出産の予定であつたこ
と、主張のころ出産休暇に入つたこと、出産したこと、主張の日に文書で本件配転
命令が発せられたことは認める。
 また出産休暇願いの際、K事務室長が申請人に対し出産後退職するか否かを確か
めたことはあるがこれは人事所管者として当然の措置であつて、退職を強要したこ
とはない。その余はすべて争う。
 同項の3の(五)の事実のうち、立中Aの派遣を同人との合意に基づき延長した
ことは認める。その余はすべて争う。
五、同二項の女性なるがゆえの差別したとの主張はすべて争う。
六、同三項の事実は争う。申請人の独身寮への配置替の前後において職種に変更は
存しない。(独身寮勤務は当初の申請人と被申請会社の労働契約にふくまれてい
る。)。即ち、申請人は、入社当初から解雇時に至るまで終始一般事務職の従業員
であつて、入社の際も本社において採用され、研究所の事務室に配属されていた。
そして当初は一般事務職の資格であつても主として電話交換業務を担当していたと
ころ、その後昭和四二年一一月に電話交換から文書受付へと担当業務の変更があ
り、以後解雇時まで文書、購買等の一般事務職業務についていたものである。
 このように申請人は終始一般事務職の従業員であつたから、あえて購買業務に限
らず一般事務職の者の担当業務たるべき範囲内にすべて職種の変更とならないとい
うべきところ、本件配転当時、申請人は前記のとおりの内容の購買(補助)業務を
担当し、一方配転先の独身寮における事務(主として購買)は前記のとおりであつ
て、等しく購買といつても、配転前後の両者で購買の対象が異るために両者の業務
内容が完全に同じというわけではないが、いずれも職種でいえば事務(デスクワー
ク)であり、その主体は集計、計算、整理、報告等の業務である点で共通してい
る。
七、同四項の事実はすべて争う。
八、同五項の主張はすべて争う。
第四 証拠(省略)
       理   由
第一 (本件配転命令、本件懲戒解雇の存在)
 被申請人は、従業員二、一五〇名を擁し、主として鐇力および鋼板ならびにその
加工品の製造販売を業とする株式会社であり、申請人は昭和三九年九月被申請人に
雇用され、綜合研究所において電話交換手として勤務していたところ、昭和四二年
一一月一日同研究所の受付係へ、同四三年四月一日同購買係へと担当部署が変更さ
れ更に昭和四四年四月二一日付をもつて横浜市<以下略>地所在の本社総務部所轄
の独身寮へ配転命令(本件配転命令)を受けたが、右配転命令に応じなかつたた
め、被申請人から同年六月一三日付をもつて就業規則第七四条一、三、一一号各号
に該当するものとして懲戒解雇の処分(本件懲戒解雇)を受け、その後従業員とし
ての扱いを拒否されている。
 以上の事実は当事者間に争いがない。
第二 (本件配転命令の効力)
一、申請人が購買補助業務係(本件配転発令当時の業務)担当となるまでの経過
 その成立に争いない疎乙第四四号証、申請人本人尋問の結果およびこれによつて
成立を認めうる疎甲第一七、二五、二六号証、証人Oの証言および同証言によつて
成立を認めうる疎乙第四五号証の一、二、同第四九、五二号証、証人Pの証言およ
び同証言によつて成立を認めうる疎乙第五〇、五六、六一号証ならびに弁論の全趣
旨を総合すると次の事実を認めることができる。
1、申請人は被申請人に入社以来研究所において電話交換手として勤務していたの
であるが、昭和四二年ころ被申請人は、アメリカの技術提携会社との研究員の交換
交流がはじまり、研究員一名が研究所に派遣されて研究を行うことになり、研究所
においても国内国外との英語による電話の発受信が多くなり、当時電話交換を担当
していた申請人およびQは英会話がほとんど出来なかつたため、数回英語による通
話上のミスを生じた。そのため研究所では、電話交換担当者に英語のできる者を少
くとも一名あてる必要を感じ申請人らに英語のテストを試みたが右両名が辞退した
ため、両名にその能力がないものと判断し、当時英会話のできた会計担当の短大卒
のRをしてこれにあたらせ、前記両名のうち電話交換担当の経験の少い申請人を電
話交換からはずすこととした。
2、他方その頃、研究所事務室における購買業務はNが担当していたが、昭和四二
年ころから業務量が急激に増加し、同人の残業時間が増加し、購買本来の仕事であ
る発注、検収等が処理し切れなくなり、やむなく、その担当業務の一部を研究部に
代行してもらうなど右業務の補助者を必要とする状況にあつた。一方、前記Rの異
動によりその空白を至急補充する必要も生じたのでその補充を当時人事担当のLを
もつて埋め、右Lの後任を受付担当のSをもつてあてたため、右受付業務にも人員
の配置が早急に必要となつた。ところで被申請人会社においては受付業務は研究所
の窓口として重要であるとして、その方針として徒来から高卒以上の新入社員をあ
てる慣例があつたが、当時一一月ころは新卒者を採用することが難しかつたので、
翌年四月まで暫定的に正式高卒者でない申請人を配置することになつた。
3、翌昭和四三年四月高卒の新入社員としてTが本社において採用され研究所に配
属されたので、前記の慣例により右Tに受付業務を担当させることになり、申請人
に前記購買業務の補助をさせることを決定しその旨同人に対し三月末ころ通知し、
四月一日をもつて右業務に担当換えした。
 右配置替のころ、購買関係の事務量は研究所の拡大に伴いさらに増加し、前記N
の本来なすべき業務である発注、物品の入手、品質検査、業者の選定を充分行うた
めには伝票処理、集計等の補助事務を専任として担当する者が必要となつていたも
のである。
 以上の事実を認めることができ、前掲疎甲第一七、二五号証、疎乙第五二号証、
証人Hの証言によつて成立を認めうる甲第二二号証、弁論の全趣旨によつて成立を
認めうる甲第四〇号証、乙第六〇号証、申請人本人尋問の結果のうち、右認定に反
する部分は信用できない。
二、コンピユーター方式導入による申請人の購買補助業務の消滅について。
 弁論の全趣旨によつて成立を認めうる疎乙第七号証の一ないし三〇、同第一八、
一九、六八号証、証人Pの証言および同証言によつて成立を認めうる疎乙第一〇な
いし一七号証、同第二〇号証の一ないし四、同第五三、五九号証証人Oの証言同H
の証言前掲疎乙第四九、五〇、五二、五六号証ならびに弁論の全趣旨を総合すると
次の事実を認めることができる。
1、研究所事務室購買業務の内容は、
(イ) 研究資材購入業務
(ロ) 設備資産購入業務
(ハ) 研究費の項目別分類、集計、報告
(ニ) 研究費材価格調査
があり、申請人が担当していたのは右の(イ)の業務のうち、主として、請求書の
業者別、発注先別分類および金額集計、業者毎の会計宛支払伝票発行、(ハ)の業
務のうち、検収報告書の分類、金額集計、研究項目別の予算実績対比表作成、
(ニ)の業務のすべて、購入した研究資材の品種、業者別の価格比較書の作成のい
わゆる購買補助業務であり、それ以外の本来の購買業務である発注、現品の検収・
払出、照合等はNの担当であつた。
2、ところで、被申請人においては、前記の申請人の担当していた購買補助業務を
も含めて、研究費等の管理の強化と研究成果の評価の適正化を図るべくコンピユー
ター方式の導入が検討されていたが、昭和四三年一一月ころ研究所内において正式
に導入が決定され、同年末ころから翌年三月ころまで被申請人主張のような実施の
ための準備作業がなされた。
3、そして、右準備作業の結果ようやく同年五月一日からコンピユーターシステム
による事務処理を七月末日まで試験的に実施する運びとなつたので申請人の従来担
当していた方式による手作業による購買補助業務は五月一日を以つて消滅するに至
つた。もつとも右期間中研究所においては所員全体について各人の担当する研究項
目のコード番号の書き方について数日間の教育を行つたが、これに対し購買担当者
も所内全部から廻つてくる伝票のコード番号をチエツクする必要があり、特別に担
当期間コード番号体系に関する教育を行い、コード番号設定についてもコンピユー
ター要員とともに参画した。
 しかしこの様な状態であつたので、申請人が後記のとおり産休明けの状態で直ち
に、購買業務担当者として旧職場に復帰しても新しいコンピユーター方式による伝
票等の分類、集計を、その記載の誤りをチエツクしつつ遂行することは困難であ
り、申請人に対し相当期間の教育、訓練を施して右業務にあたらせることは、新た
な右手計算の過渡的な状態も七月末日で終了すること及び右作業が現にコンピユー
ター要員、L等の応援等によつて一応処理できていたことからその必要性が余りな
く、また人事管理上不経済と判断された。
4、右のコンピユーター方式による作業は八月一日から完全実施により一般従業員
の手を離れ専ら専門技術者たるコンピユーター要員の担当するところとなり、Nは
コンピユーター方式に親しまない発注、検収、現品管理の業務を継続して担当する
こととなつた。
 以上の事実を認めることができるので申請人の担当していた購買補助に関する各
種の業務は、コンピユーター方式導入により消滅したということができる。
三、本件配転先(独身寮)の職務内容について。
1、成立に争いのない疎乙第二三号証、官署作成部分については争いがなく、その
余については弁論の全趣旨により成立を認めうる疎乙第二四号証の一、二、前掲疎
乙第四八号証、証人Oの証言および弁論の全趣旨を総合すれば次の事実を認めるこ
とができる。
(一) 被申請人は、横浜市<以下略>地に約五〇名を収容できる四階建(各階一
六室、二階から四階までを寮生が使用。)の独身寮を有していたところ、昭和四四
年三月ころは寮生は二二、三名であり、右寮の管理、給食等は、嘱託である住み込
みの管理人夫婦、賄婦一名がこれを担当していた。なお右独身寮には従前東洋製缶
株式会社の社員も収容されていたが被申請人の要請により、右東洋製缶は自社の独
身寮を建設して同社の寮生を引き取つたのであるが、寮母の適任者が見当らず、暫
時被申請人の寮母一名の応援方を依頼したので、寮母一名が若干時間居なくなる可
能性があつた。
(二) また、右独身寮においては徒来より寮事務を専任処理する者がいないた
め、管理人、寮母等が本来の寮管理業務の片手間にこれを処理していたので、管理
人等が本来の管理業務が必らずしも充分に行き届かず、時には寮事務の一部を寮生
や本社総務部が代行して処理しており、事務関係帳簿も充分整備がなされていない
状況であつたので、新たに寮事務を担当する者があれば、寮母が東洋製缶の寮に容
易に応援に出るのを可能にし、また右の不都合を改善することができる状態ではあ
つた。
(三) しかしながら後述のとおり、右寮における事務は被申請人においても通常
一工数として処理されるべき事務の量、質をかなり下回ることが予想されており、
専任事務処理担当者が必要、不可欠の状態ではなかつた。(このことは申請人が独
身寮への配転を拒否した後、とくに専任の事務処理者を補充していないことからも
窺い知ることができる。)
(四) そこで、被申請人本社では、昭和四四年三月末ころ、後述のように、四月
二五日ころ産休明けが予想される申請人の新しい職務を前記のような内容の独身寮
の事務と決定し、併せて同人が附随的に現業である寮の賄いをすることも期待し
た。
2、申請人は、本件配転先の業務は専ら寮の賄い業務であり(後記のとおり)職種
変更であると主張するのであるが、前項掲記の疎明によれば申請人の担当すべき業
務の内容についていえば、先ず、申請人は午前九時から午後五時までの勤務であつ
て、管理人、寮母のように住み込みのいわゆる継続勤務でないことは明らかであ
り、その質、量こそ一工数に満たないものであるが、本来的事務(机上事務)も一
応存することが認められる。もつとも、被申請人は申請人を右業務にあて、併わせ
て同人の手の空いたときは賄いの手伝いをすることを事実上期待していたことは前
記認定のとおりであるが、証人Hの証言によれば本件配転当時寮生の食事の賄いは
管理人の妻の寮母と賄婦二名が、朝食(午前七時から八時)は交替で、夕食(午後
六時から八時)は右両名がこれを住み込みで担当していたのであり、また当時寮生
は寮の収容能力の半分以下である二二、三名であり、賄いの仕事は、当時は右二名
で一応足りていたことが窺われるのであるから申請人に賄いの手伝いが期待されて
いたとはいえ、実際に当つての、従前の労働と異る労働の量そのものは必らずしも
多くなく、被申請人が申請人に行なわせる実質業務はいわゆる寮事務を中心とした
業務であり、賄業務を専業とした業務ではないと認めるのが相当である。
四、本件配転は異種配転か。
1、前掲疎乙第二七ないし四二、四九号証、証人Oおよび同Hの各証言ならびに弁
論の全趣旨を総合すると申請人の担任すべき事務については、更に次の事実を認め
ることができる。
本件配転当時、独身寮においては管理人夫婦、賄婦ならびに寮生らのおこなつてい
た寮の事務は、
(1) 寮費徴収明細綴の記載、(2)寮費明細綴の記載、(3)金銭出納帳の記
帳、(4)食事および支払台帳の記帳、(5)物品購入控台帳の記載、右物品(什
器、備品、消耗品)の検収、保管、(6)電灯動力使用量調帳の記載、(7)水道
使用量帳の記載、(8)プロパン使用量調帳の記載、(9)備品台帳の記載、(1
0)電報電話料の記載、(11)市外電話料金帳の記載、(12)特殊郵便物授受
簿の記載、(13)速達便受簿、(14)日誌の記帳、(15)浴場日誌の記載、
(16)外来者名簿の記載、(17)各帳簿の整備、保管、(18)光熱費支払の
事務、(19)防火管理に関する補助事務、
であるが、右の各事務のうち、(14)および(15)は管理人の責任において記
入されるべきものであり、それを除きその余は可能な限り、本件配転後は申請人が
専任して処理する予定であつた。そして、そのうち(4)は毎日記帳されるもので
あり、(3)、(5)、(12)、(13)は随時必要に応じて記帳され、
(1)、(2)、(6)、(7)、(8)は毎月ないし二ケ月に一回記帳されるも
のであるから、他の支払、保管等の事務を併わせ考えると申請人の寮事務処理業務
は〇・三工数(管理人の担当していた仕事のうち寮事務はその約三割であり、さら
にそのうち申請人に移譲されるべき業務は約八割であるが、これに他の寮事務も加
わる。)を上回ることはなく、約〇・三工数弱である。
 以上の事実が認められ疎甲第二二、三八号証ならびに証人Hの証言中右認定に反
する部分は、これを措信しない。
2、ところで、異種配転か否かは、当該人の労働契約によつて判断すべきところ、
労働契約が締結される際、職種あるいは勤務場所が明示されていない場合は結局契
約内容は被用者の職歴、経歴、同時採用者等との比較におけるその従事する労働の
種類、態様、当該企業の慣行、就業規則、労働協約上の定め等を基準として当事者
の意思を確定すべきである。
 そこで、本件についてこれを検討するに、成立に争いのない疎乙第四四号証、証
人Oの証言および同証言によつてその成立を認めうる疎乙第四五号証の一、二、同
第四八、四九号証および弁論の全趣旨を総合すれば、
(一) 申請人は前記のとおり、昭和三九年四月二一日財団法人電気通信共済会訓
練所の約一ケ月間の訓練を経たものではあるが被申請人は同人を一般従業員として
本社採用し、研究所総務課に勤務することを命じ、右研究所内で電話交換の業務に
あたらしめた。申請人は、右採用決定当時有ひもの交換手としての資格を有してい
たが、被申請人の研究所交換機械に適合するのは無ひも資格であつて右採用時に電
話交換手の資格を取得することを条件とされたこともなく、更に担当すべき職種と
して電話交換手を、勤務場所として前記研究所にそれぞれ限定する旨明示されたこ
ともない。
(二) 被申請人における職種に関する慣例あるいは規程については、昭和二二年
頃それまでに存していた「職員」、「工員」の身分上の区別は撤廃され、その後は
職種ならびにそれに附随する賃金体系は存せず、就業規則にも職種に関する定めは
ない。もつとも被申請人の旧賃金規定に職務等級表なるものが添付されてはいる
が、右は作成当時職務給制を導入する動きがあつてその為に作成されたものである
が現実にはその一部が初任給の等級格付表として一時利用されたにすぎず、昭和四
三年四月に旧賃金規程の改正に伴い右附表もなくなつた。右附表のうち研究所に適
用となるべきものは、「研究員」、「技術員」、「事務員」の区分のみであつてそ
れ以上に具体的に職種を規定したものはない。
(三) 申請人が本件配転直前担当していた購買補助業務の内容は前記のとおりで
あるが、その前に担当していた受付業務の内容は文書の受発信、所内への文書の配
布等が主なものであつた。
以上の事実を認めることができる。
 そして、右認定の事実によると、申請人は「本社の一般従業員」として採用さ
れ、とくにそれ以上具体的な職種、勤務場所を限定して採用されたものでないこと
は明らかであるところ、被申請人の就業規則、協約、慣例および申請人の実際従事
した労働の種類、態様からみても、申請人の職種はいわゆる事務系労働という程度
の包括的なものにとどまり、より具体的な内容の限定はなかつたものと解するのが
相当である。
 そして、右のように労使の合意が「事務系労働」という包括的な職種限定である
限り、使用者は当該労働者を、その事務系労働の範囲内で、一方的に配転を命ずる
ことができるものと解すべきである。ところで申請人の本件配転先である独身寮に
おける「寮事務」は、職務体系として寮の規模、入寮者数等からみて、申請人主張
のように賄婦、管理人の現場作業労務に附随する事務として、賄現業務の一部とし
てこれに吸収してしまうことも全く不可能ではないのであるが、(被申請人は現
に、従来右のような体系下において運用していたものと認められる。)前述のとお
りその本来的事務を整理し関係事務を分離独立させることにより、現場作業労務と
切り離れた専任事務となり得るもであり、被申請人もまたその方針であつたことは
明らかであるから、寮の右事務も、実質は事務員のなす「事務系労働」の範囲内に
体系化された「事務系労働」であると考えるべきである。
 したがつて、本件配転をいわゆる異種配転とし、労働者の同意がなければ無効で
あるとする申請人の主張は採用できない。
五、本件配転命令は人事権の乱用か。
1、申請人の配転命令前の担任業務が研究所事務室に所属する資材等購買の補助事
務であることは前記認定のとおりである。ところで配転先の業務については、前記
判示のとおり、いわゆる寮業務中の机上事務であり、それ自体購買補助事務と異質
の事務とは認め難いけれども、被申請人において右地位への正社員の配転は初めて
であるところ、本来右事務は、その分量如何によれば、寮の現業たる賄業務の附随
業務として、現業従業員の担当業務として包含されても奇異でない事務であるこ
と、すなわち、現業従業員の担当すべき業務と解される余地が大いにある業務であ
り、現に右寮において現業従業員たる管理人、寮母が従来これを扱つていたもので
あること、そして右管理人、寮母はともに嘱託であり、申請人の如き正社員でない
こと、本件寮事務の分量は一工数に足らぬものであること、したがつて申請人の担
当すべき業務が規定上は机上事務のみと定められたとしても、実際上には職場全体
の雰囲気から申請人は賄業務の一部にも携わらなければならず、またそれが社内に
おいて当然と期待されており、実際の稼働上は事務職と現業職の区別がつけ難く、
従来の職務体系からは寧ろ、現業職(嘱託によつて担任されている職)への配転と
解されて当然である状況にあつたことは上段判示のとおりである。
 そうとすれば、本件配転は、給料、勤務時間等労働条件に実質的差異がないとし
ても社会通念としての勤務条件について変動があり、後記判示の経歴を有し、被申
請人の正社員たる研究員の妻である申請人にとり地位の評価上著しく不利益な配転
と解さざるを得ないところである。
2、被申請人は、申請人に対し前記のような不利益を伴う本件配転をなしたのは産
休明けの申請人には就くべき他に適当の職務はなかつたと主張するので、以下判断
する。
(一) 証人Pの証言ならびに同証人によつて成立を認めうる疎乙第二、六五号
証、証人Oの証言ならびに同証言によつて成立を認めうる疎乙第四八、五四号証前
掲疎乙第五〇号証ならびに弁論の全趣旨を総合すれば次の事実を認めることができ
る。
(1) 研究所における各部課の業務分担内容は、研究部と事務室に分れ、後者は
申請人の配属された当時総務課と称し、研究以外の事務一般を担当し、事務室は人
事課(人事、医務、炊事)および庶務(受付、文書、電話交換、庶務営繕、運転、
清掃)、経理、購買(補助業務をふくむ。)に分れ、研究部は研究室から成り、ま
た部内には図書管理、資料整備、タイプ等の業務がふくまれている。
(2) 昭和四四年四月ころ、右研究所の所員は約一二〇名そのうち女子従業員は
申請人をふくめて一一名であつた。
 昭和四四年四月一日当時、研究室において女子従業員の就業していた業務は、研
究部においては研究員(U)、和文タイプ(M)、資料整備(V)、図書管理欧文
タイプ(W)、事務室においては人事課(S)、経理(L)、受付(T)、医務
(X)、電話交換(Y、Z)であつた。しかし、被申請人は従来右各業務のうち、
図書、タイプ、医務はそれぞれ司書、タイピスト、看護婦の資格を有する専門技能
者をあてており、その余の一般事務業務のうち経理、人事はその仕事の性質上比較
的高い学歴、技能、経験を有する者を充てるようにしていた。
(二) 成立に争いない疎乙第四三号証、弁論の全趣旨によつて成立を認めうる疎
甲第三号証、申請人本人尋問の結果によると、申請人は昭和三四年四月新制中学校
を卒業後川島紡績株式会社に入社し、同会社に在職中同社経営の川島高等家政学校
で三年間の課程を修め、昭和三七年四月日本機械土木株式会社に転職し、その後昭
和三九年七月同社を退職して翌月財団法人電機通信共済会訓練所に入所して電話交
換手としての訓練を受け、同月同所を終了し電話交換手(有ひも式)の資格を得た
後、前記のとおり被申請人に入社したことが認められる。
 そこで、申請人が前項認定の各業務のうち、専門技能を必要とする図書、タイ
プ、医務に適しないことは当然だとしても、その余の業務のうち人事、経理、受付
についても全く不適だとする被申請人の主張には、にわかに肯首し難いところがあ
る。
 すなわち、人事、経理担当の従業員には比較的高度の技能、経験を要すると云つ
ても、事務補助の女子従業員においてはあくまで相対的なものであると理解される
ところ、既に認定のような申請人の学歴、職歴、被申請人に入社後の職務内容、年
令(当時二五才)等から考えると、申請人を右業務に就かせることが適当であるか
どうかはともかく能力上全く不適であるとは断言できないところである。また、受
付には高卒以上の新規採用者をもつてあてるのが被申請人の方針であつたとして
も、申請人は前記のとおり企業内特殊学校を卒業したものの、前掲疎甲第三号証に
よれば、その間に、学校教育法に定める高等学校におけるものとそれほど大差のな
い学・教科目を履修したことが認められ、申請人に入社した後も本件配転命令を受
けるまで、右学歴が格別障害になつたことが認められないのであるから(前記のと
おり英会話ができないことは高卒者でも同様であろう。)、申請人を高卒の学歴が
ないことのみをもつて受付に不適だとすることは合理性があるとはいえない(な
お、申請人は、被申請人が採用時に同人を高卒者として扱う旨約した旨主張する
が、これを認める疎明は十分でない。)。しかも、被申請人は昭和四四年四月当時
前記各業務に女子従業員の欠員は存在しなかつた旨主張するが前掲甲第二二号証、
証人Pの証言および弁論の全趣旨を総合すると前記女子従業員のうちM、Lが研究
所の技術員、本社の運転手とそれぞれ昭和四四年九月、一〇月に結婚して退職した
ことが認められるところ、研究室の人事課長Pは右両名が退職するであろうことは
少くとも本件配転命令当時すでに聞き及んでいたものと推認される。(証人Pの証
言中右認定に反する部分はこれを採用しない。)さらに、申請人の就くことのでき
る職務を被申請人の本社のそれに広げて考えれば、本件配転当時申請人を充てるべ
き業務が全く存しなかつたことを具体的に認めるだけの疎明はなく、かえつて成立
に争いのない疎甲第四二号証の一、二、同第四三号証の一、二、同第四五号証の
一、二、同第四六号証の一ないし三、弁論の全趣旨によりその成立を認めうる疎甲
第四四号証によれば、被申請人本社において本件配転命令が検討されていた当時数
名の女子従業員を新に採用していることが認められる。(右認定に反する証人Pの
証言はこれを採用しない。)
 以上の次第であるとすれば、申請人の従来担当していた購買補助業務は消滅した
のであつても同人の学歴、経験、技能の点からすれば同人を充てるべき職務が研究
所および本社全体をみても全く存しなかつたとはいえないし、まして同人が被申請
人にとつて整理解雇されてもやむをえない無用の従業員即ち冗員であつたとは到底
いうことができず(要健康保護者との関連については後述する。)、この点をもつ
て申請人の不利益配転の合理的理由と認めることはできない。
3、申請人は、右のような本件配転を受けたのは被申請人が申請人の思想信条や同
人が女性であること、とくに結婚をし出産までした女性であることを嫌悪した結
果、不当に差別待遇したものである旨主張するので、まず後者の点から検討する。
(一) 申請人が、昭和四三年三月三一日同じ研究所の研究員立中Aと職場結婚
し、翌四四年三月一三日出産したが、その前後の一月二六日から四月二四日まで出
産休暇(産休)をとつたことは、当事者間に争いがない。
(二) そして前掲疎甲第八、一七、二六号証、同疎乙第四八、四九、五一号証お
よび証人Pおよび同Oの各証言、申請人本人尋問の結果ならびに弁論の全趣旨を総
合すれば次の諸事実を認めることができる。
(1) 被申請人においては、かねてから結婚した女子従業員には退職してもらう
ことを希望する方針をとつており、昭和四三年ころより女子従業員の入社の際に結
婚退職の念書をとつていた。そして本件配転当時現に、既婚者の女子従業員はほと
んど退職しており、結婚して退職しない者でも、出産するに至つたときはすべて退
職していたので、被申請人において産休問題を生じた例は皆無ではなかつたものの
育児休憩の問題を生じた例はなく、被申請人の人事担当者は生後間のない子供を抱
えた女子従業員を使用した経験がなかつた。
(2) 申請人が前記のとおり昭和四三年三月結婚した際にも、K事務室長は、同
人に対し、女性は結婚したら退職して家庭に入るのが一番幸福である旨述べまた同
四四年一月申請人が産休をとる旨の届を提出した際にも前記Kは、同人に対し、
「子供ができたら育児に専念すべきであるから会社をやめて家庭に入つたらどう
か。」などと、暗に退職を勧めていた。(なお、被申請人は、右Kの言辞は人事担
当者として後任の補充との関係で、退職の意思の有無を確めたにすぎない旨主張
し、前掲疎乙第五〇、五六号証にはこれに副う疎明部分があるが、前認定の如き会
社の方針実情等と対比すれば、右Kが申請人に対し退職を強要したとはいえないま
でも、退職するよう強く希望していたであろうことは否定できない。)。
(3) ところが、右のような申請人の希望にもかかわらず、申請人はK室長の説
得に対し、その都度退職する意思のないことを示し、産休をとる前には育児休憩の
取得手続等をP人事課長に問いあわせたりしたため、被申請人は生後間もない子供
を抱えた女子労働者を使うという前例のない事態に直面した。
 以上の事実を認めることができ、疎乙第四八、四九、五一号証、証人Pの証言中
右認定に反する部分はこれを採用しない。
 以上の諸事実を総合して考えると、被申請人においては本件配転当時、女子従業
員は結婚したら退職するのが通例とされ、いわんや出産後も退職しないで就労した
者は皆無であつたために、前記のとおり職場結婚をし出産までしてなお退職しよう
としない申請人が強く敬遠される存在であつたことは容易に推認できるところであ
る。
4、もつとも、被申請人は、申請人を嫌悪したことはなく、本件配転が、出産直後
で乳呑児を抱えている、という申請人の置かれた生活、健康状態を考慮した、むし
ろ同人の利益を考えた配転である旨主張する。
 なるほど、成立に争いのない疎甲第八号証、疎乙第一号証によると、被申請人の
就業規則には「妊産婦」を健康要保護者として、就業制限、作業転換、治療その他
保健衛生上必要な措置をとることがあること(第八八条四号)、また、生後満一年
に達しない生児を育てる女子は通常の休憩時間の外予め申出て勤務時間中一日につ
いて二回、一回について少くとも三〇分の育児時間を受けることができること(第
一七条)が、それぞれ定められており、被申請人が申請人に対し説明した本件配転
理由の一つにも、申請人が乳呑児を抱えた妊産婦であつて、右就業規則上から勤務
上各種の制約があり、使用者として健康保護の配慮が必要であつた旨を掲げている
ことが認められる。
 そして、右のうち育児休憩の点は、たとえ申請人主張のように同人が請求してい
なくとも、就業規則、労基法上の労働者の権利であり、かつ使用者において事前に
放棄せしめることはできないのであるから、被申請人の人事担当者が将来、この請
求あることを考え、その際申請人の実質的労働能率が低下することを予想し、それ
に即応した措置をとることはむしろ当然であり、この点からみる限り、前記のよう
に申請人の原職が消滅し、産休明けに新しい職場を捜して与えねばならなかつた本
件においては、被申請人が本件配転にあたり申請人を他の従業員と区別して取扱う
ことは納得さるべきであり、さらに、また被申請人にとつて右の様な状態にある女
子従業員を使用した経験がなかつたことから、研究所、本社において右のように制
約がありまた無理のきかない申請人を組み入れることを、職場の他の同僚に余計な
負担をかけまた不衡平の感じを抱かせる等好ましくない影響を与えるであろうと判
断したものとすれば、これまた企業運営上あながち不当とはいえないところであつ
て、その結果、申請人が右の制約を伴う期間、その意に反し閑職に配転されたとし
ても、不合理といえないであろう。
 しかし、本件配転が被申請人の主張のように、真実申請人の健康保護の配慮から
なされたものとは認め難い事情がある。すなわち、前記就業規則上の「妊産婦」と
は出産後一年未満の婦女子というものと解すべきであるから育児休憩の点とならん
で、被申請人が申請人を前記のような制約のある労働者として配慮する必要がある
のは、結局出産後満一年間という暫定的な間に限つて考えるべきであり、その期間
経過後もなお、申請人を他の従業員と区別して取扱う合理的理由は見当らない。と
ころが、前掲疎甲第一四、一七号証、証人Pの証言によれば、申請人が本件配転命
令内示を受けた翌日である昭和四四年四月八日、P人事課長に電話して、独身寮へ
の配転は妊産婦等の制約のある間の一時的なものであるかどうかを問い合わせたと
ころ、同課長は、本件配転がそのような暫定的な措置ではない旨回答しているこ
と、また申請人の所属する東洋鋼鈑労働組合でも本件配転の可否が検討され、研究
所に欠員、増員のあつた場合は申請人を第一候補として考慮するよう要求すること
を決定し四月一九日の団体交渉で被申請人に対し、その旨申入れたが、被申請人か
らは研究所復帰の時期の約束はできない旨回答したことが認められるので、これら
の事実からすれば、本件配転は、申請人が出産に伴う労働制約を受ける間企業の効
率的運用の問題としてこれを一時的、暫定的に配転するというものではないことが
明らかである。
5、以上、判示各事実を綜合すれば、申請人には産休明けには同人の原職が消滅
し、配転を受ける業務上の必要性が生じ、その配転先についても妊産婦等の制約か
ら一時的に限定されてしまう事情があつたことは否定できないのであるが、被申請
人は右事情を利用し、女子従業員については従前から結婚退職を通例とし、少なく
とも出産後はすべて退職される方針でいたところ、申請人はこれに反し出産後も退
職しようとしないので、これを敬遠する余り、産休明けに、偶々原職が消滅したの
を奇貨として、就業規則上の保護に名をかりて、さして業務上の必要のないのに評
価上不利益な地位である新しい現業まがいの職場を創設して独身寮の寮事務係とし
て配転させ、結局は同人の労働意欲を喪失させることにより、退職の決意をさせよ
うとしたものと推認できるのであり、被申請人が本件配転をなした決定的動機もこ
こにあつたものと解さざるを得ない。
 そうだとすれば、本件配転は、女子従業員が結婚、出産したことをもつて、これ
を離職に至らしめようとする意図から発した不利益処分であり合理的配転でなく、
したがつて、人事権の乱用というべきで、無効と解すべきである。
第三 本件懲戒解雇の効力
 以上のことから明らかなように、本件配転は無効と断ずべきであるから右命令違
反を理由とする限り本件懲戒解雇は無効といわざるを得ず、被申請人主張のその余
の解雇事由も配転命令が無効である以上、これと切り離した独立の非違行為として
懲戒解雇の事由とすることは許されないものであるから、結局本件懲戒解雇は権利
濫用として無効である。
第四 賃金について
 申請人の解雇当時における給与額が一ケ月金三万一、四九八円であること、給与
支給日が毎月二一日より翌月二〇日までを一ケ月として毎月二五日に支払われてい
ること、申請人が昭和四四年四月二六日以降賃金の支払いを受けていないことは当
事者間に争いがない。
第五 保全の必要性
 弁論の全趣旨によると、申請人は同人と夫Aの得る賃金によつて、親子三人生活
していることが認められ、申請人が本案判決あるまで、被申請人から賃金の支払い
を拒まれるときは夫の賃金のみによつては生活に窮し回復し難い損害を蒙るおそれ
があると推認できる。
第六 結論
 よつて申請人の本件仮処分申請は理由があるから申請人に担保を供させないでこ
れを認容することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条を適用し
て、主文のとおり判決する。
(裁判官 小河八十次 佐藤歳二 桜井康夫)

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