弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は弁護人三木義久作成の控訴趣意書提出の件と題する書面記載の
通りであるからこれを引用し、これに対し当裁判所は次のように判断する。
 論旨第一点及び第二点について。
 原判決挙示の証拠の内容を検討し、これと原判示事実とを対照して見ると原判示
の抜歯及び入歯はAに対してなしたものであることが明らかである。
 而してこれを認めた証拠として原判決が挙示した証人Aの原審公判廷の供述によ
れば同人は被告人より上歯二本を抜いて顎つき入歯を造つて貰つたが、一本はぐら
ぐらしてほんの一寸ついていた程度で指で押したらすぐ抜けてしまい、他の一本は
金冠をかけて貰いたいといつたら歯がしつかりしておらないから駄目だといわれた
ので自分で取ろうと思つて始終手で動かしていたら肉が痛くてうまく取れなかつた
ため被告人の処に行つたところ、被告人は一寸といつてピンセットで押したら難な
く取れた。抜く時は痛み止めの注射はしないが血止めをしたので血は出なかつた。
その後五、六回通つて額つきの入歯を造って貰い口に合うようにして貰つて出来上
つた歯は被告人が口の中に入れてくれたが肉がはれて痛かつたので自分で入れた。
代金は二千円宛<要旨第一>三回に計六千円支払つたというのである。惟うに抜歯と
は慢性疾患によつて保存の見込のない歯牙を除去することをいい、その
方法は歯牙の周辺に薬品を注射して局所を麻痺させ知覚を喪失させてからメス様の
刃物でその歯牙を包む環状靱帯を剥離した上「カンシ」と称する機具を用いて歯牙
を抜きとりその後消毒するのを通例とするが、かかる医学的操作によつて歯牙を抜
きとる場合のみに限らず苟しくも人体より歯牙を人工的に離脱せしめる行為はすべ
てこれを抜歯として歯科医師法第十七条にいわゆる歯科医業の範囲に属するものと
解すべきであるから、被告人がAに対してなした二本の歯の処置のうち少くとも後
の一本についてはこれを抜歯と認めるのが相当である。次に入歯とは咀嚼機能を回
復するために義歯を入れることをいい、義歯を入れるとは不良歯を整理して直接患
者の口中より形をとり、適宜の操作により上下の歯の咬み合せ関係を見、これによ
つてできたものを患者の口腔に適合するや否やを試み、かくして調整完成した義歯
を患者の口腔に装着することをいうのであるが、右Aの証言は用語やや簡に過ぎそ
の意を十分尽さざるうらみあるもその趣旨は同人は不良歯二本を抜歯した後咀嚼機
能を回復するため被告人に顎つき義歯を造つて貰うことを頼み、被告人はAの口中
より形をとり上下の歯の咬み合せ関係を見、同人の口腔に適合するや否やを試みか
くしてでき上つた義歯を同人の口腔に入れたという趣旨なのでおるから、被告人の
右所為を以つて入歯と認定しこれを以つて歯科医師法第十七条にいわゆる歯科医業
と認定したのは正当である。(論旨は原判決はAの原審公判廷の供述の外同人に対
する検察官の供述調書の記載を証拠に採用して事実の認定をしておるとなし該調書
の記載を捉えて原判決を論難攻撃しておるが原判決はAに対する検察官の供述調書
を証拠として引用しておらないことは判文自体明らかであるからこの点に関する論
旨は理由がない)而して原判決挙示の証拠(但しBの原審公判廷の供述を除く)を
綜合すると被告人が原判示の如くAに対し抜歯及び入歯の行為をなして歯科医業を
なした事実は優にこれを認めることができ右証拠によつて右判示事実を認定するこ
とは何等経験則に反するものでなく固より虚無の証拠によつて認定した違法もな
い。記録を精査するも原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認が
あるとは認められないから論旨はいずれも理由がない。
 論旨第三点について。
 原判決挙示の証拠の内容を検討し、これと原判示事実とを対照して見ると原判示
の金冠篏装はBに<要旨第二>対してなしたものであることが明らかである。而して
これを認めた証拠として原判決が挙示した証人Bの原審公判廷の供述に
よると同人は以前Cという歯科医に入れて貰つた下歯の金冠が飴を食べたら抜けて
しまつたので被告人方に行つて診て貰つたらこれは金冠がうすくなつているから金
を足して造つてやるというので、その翌日行つたら出来上つていて被告人は金冠に
セメントをつめて自分の歯のところに持つてきて葉書のような紙を渡しこれをあて
て上歯でぐつと押しなさいといつたのでその通り押したら入ったというのである。
惟うに金冠簸装とは金冠を自然歯に合せて装着することをいうのであるから被告人
がBに対してなした右行為を原審が金冠篏装と認定したのは正当であつて(論旨は
原判決は証人Bの原審公判廷の供述の外同人に対する検察官の供述調書の記載を採
用して事実の認定をしておるとなし該調書の記載を捉えて原判決を論難攻撃してお
るが原判決はBに対する検察官の供述調書を証拠としておらないことは判文自体明
らかであるからこの点に関する論旨は理由がない)原判決挙示の証拠(但しAの原
審公判廷の供述を除く)を綜合すると被告人が原判示の如くBに対し金冠篏装の行
為をなして歯科医業をなした事実は優にこれを認めることができ、右証拠によつて
右判示事実を認定するヒとは何等経験則に反するものでなく固より虚無の証拠によ
つて認定した違法もない。記録を精査するも原判決には判決に影響を及ぼすことが
明らかな事実の誤認があるとは認められないから論旨は理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 小中公毅 判事 渡辺辰吉 判事 河原徳治)

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