弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成18年11月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成18年(ワ)第3563号意匠権侵害差止等請求事件
(口頭弁論終結の日平成18年10月17日)
判決
原告株式会社国元商会
訴訟代理人弁護士藤川義人
同清水良寛
被告A
訴訟代理人弁護士土井廣
補佐人弁理士森脇康博
主文
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,別紙イ号物件目録記載の物件を製造、販売、販売の申込み及び販売
のための展示をしてはならない。
2被告は、別紙イ号物件目録記載の物件を廃棄せよ。
3被告は、原告に対し,1230万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日
(平成18年4月16日)から支払済みまで,年5分の割合による金員を支払
え。
第2事案の概要
本件は,被告によるコンクリート型枠支持金具の製造販売行為が、原告の有
する意匠権を侵害することを理由とする差止め、廃棄及び損害賠償請求訴訟で
ある。
1基礎となる事実(証拠等によって認定した事実は末尾に証拠を掲げた。それ
以外は争いのない事実である。)
(1)原告の意匠権
原告は,次の意匠権(以下「本件意匠権」といい,その意匠を「本件意
匠」という。)を有する。
ア登録番号第1043396号
イ意匠に係る物品コンクリート型枠支持金具
ウ出願日平成9年7月28日(意願平9−63021)
エ登録日平成11年4月16日
オ登録意匠別紙意匠公報のとおり
(2)被告は,業として、別紙イ号物件目録記載の物件(以下「イ号物件」と
いい、その意匠を「イ号意匠」という。)を製造販売している。
(3)イ号物件は、コンクリート型枠を支持するのに使用される金属製品であ
る。(甲6の1)
(4)イ号意匠は、別紙「パネルレベラーダイワ産業」のとおりである。
2争点
(1)イ号意匠が本件意匠と類似するか。
(原告の主張)
ア本件意匠とイ号意匠は、アーム先端部からフック部第1屈曲部までの距
離(すなわち、アーム部上側辺と平板部上側辺の長さを合わせた距離)と、
他の箇所の長さとを比較した場合における比率が相違するが、いずれも目
視によっては判別がほぼ不可能なほどの微差というべき程度の相違であり、
また、両意匠全体の構成がほぼ同じであることを併せて考慮すると、看者
に異なった美感を与えるものではない。
イ本件意匠とイ号意匠には、本件意匠は、(a)平板部下側辺が傾斜してい
ないこと、(b)平板部下側辺がアーム部下側辺との間で段差をつけてつな
がっていること、(c)フック部下側辺も傾斜していないこと、(d)したがっ
て、平板部及びフック部における上下側辺間の長さ(高さ)が一定してい
ること、という構成であるのに対し、イ号意匠は、(a')平板部下側辺が傾
斜していること、(b')平板部下側辺がアーム部下側辺と直線的につながっ
ていること、(c')フック部下側辺も傾斜していること、(d')平板部及びフ
ック部における上下側辺間の長さ(高さ)は前者よりも後者の方が長い
(高い)こと、という構成であるという相違がある。しかし、イ号意匠の
平板部下側辺及びフック部下側辺は、その傾斜の有無によって物品の性質、
目的、用途及び使用態様に影響を与えることはほとんどなく、他の構成部
分に比べると相対的に看者に注目される程度が小さい。したがって、これ
らの相違は、看者に異なった美感を与えるものではない。
ウ上記ア、イ以外の点では、本件意匠とイ号意匠は共通する。
エよって、本件意匠とイ号意匠は、共通点が圧倒的に多いのに対して相違
点は僅かであり、しかもその相違点は微差であって、異なった美感を与え
るものではないので、両意匠は類似する。
(被告の主張)
ア本件意匠とイ号意匠は、①帯状金属板を屈曲形成してなるコンクリート
型枠支持金具(パネルレベラー)の基本形態と、②型枠支持部が平板部か
ら同一平面上に延出している点は共通するが、③帯状金属板の形、④平板
部の付け根に切欠き状の段差を付けた点、⑤フック部の巾と形状の点が異
なる。また、⑥型枠支持部の一側辺が先が細くなるように傾斜している点
も、本件意匠は平板部以外の部分では傾斜しているが、平板部では傾斜し
ていないのに対し、イ号意匠では、一側辺全長が傾斜している点でも異な
る。
イ①の点は周知に属する形状であるから要部ではない。本件意匠のうち、
②及び⑥の点に係る意匠は、実開昭57−196741号公報(以下「乙
第2号証刊行物」という。)に記載された意匠から容易に創作できたもの
であるから、実質的に本件意匠の要部になり得ない。本件意匠のうち、③
及び⑤の点に係る意匠は周知の形状であるから要部になり得ない。本件意
匠の要部は、④の点に係る意匠である。
ウ他方、イ号意匠の要部は、③、⑤及び⑥の点に係る意匠である。
エしたがって、イ号意匠は、本件意匠と混同することのない美感を異にす
る非類似の意匠である。
(2)本件意匠登録は、無効審判により無効とされるべきものか。
ア本件意匠は、本件意匠登録出願前に頒布された原告のカタログ「資材事
典’95年/’96年版」(以下「乙第9号証刊行物」という。)62
頁の「KSパネル浮かし」として「鉄筋を利用した浮かし型枠用受金具」
に記載された2種の意匠と同一ないし類似か。
イ本件意匠は、乙第2号証刊行物に記載された意匠から容易に創作できた
ものか。
(3)原告の損害
(原告の主張)
被告は、本件意匠の意匠登録後、イ号物件の製造販売によって少なくとも
1230万円の利益を得ている。したがって、同額が原告の損害である。
第3当裁判所の判断
1争点(2)について判断する。
証拠(乙9)によれば、乙第9号証刊行物は、原告の1995∼96年用の
製品カタログであること、同刊行物62頁には「KSパネル浮かし」「鉄筋を
利用した浮かし型枠用受金具」として、2種(品番♯100及び♯160)の
コンクリート型枠支持金具の意匠が記載されていること、このうち、♯100
の意匠は本件意匠と明確な相違点が識別できず、同一か、少なくとも類似する
ことが認められる。そして、乙第9号証刊行物は、1995∼96年用の製品
カタログであるから遅くとも本件意匠登録出願前である1995年(平成7
年)中には頒布されたものと推認される。
したがって、本件意匠は、意匠法3条1項2号又は3号に該当するから、そ
の意匠登録は、無効審判により無効とされるべきものであって、意匠権者が相
手方に対しその権利を行使することができないものである。
2以上の次第で,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとして,
主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官山田知司
裁判官高松宏之
裁判官村上誠子
イ号物件目録
下記商品名のコンクリート型枠支持金具
「パネルレベラー」
以上

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛