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裁判例


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主文
1原判決中,予備的請求に係る部分を取り消す。
2控訴人が平成18年7月3日付けでした農地法5条に基づく農地
転用許可申請について,処分行政庁が相当の期間内に何らの処分を
しないことが違法であることを確認する。
3控訴人のその余の控訴を棄却する。
4訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを2分し,その1を控訴人
の,その余を被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2(1)主位的請求
控訴人が平成18年7月3日付けでした農地法5条に基づく農地転用許可
申請について,処分行政庁が春日部市農業委員会を通じて同月31日付けで
その受理を拒否した処分を取り消す。
(2)予備的請求
主文第2項と同旨
第2事案の概要
1本件は,農地法(以下「法」という)5条,農地法施行令(以下「令」と。
いう1条の15第1項に基づき原判決添付物件目録記載の土地以下本。),(「
件土地」という)につき,春日部市農業委員会を経由して,処分行政庁に対。
し,農地転用許可申請(以下「本件申請」という)をした控訴人が,春日部。
市農業委員会が,本件申請を受理しなかったため(以下,この行為を「本件受
理拒否行為」という,①主位的には,本件受理拒否行為は,処分行政庁で。)
ある埼玉県知事による本件申請に対する拒否処分(却下処分)に当たると主張
して,その取消しを求め,②予備的には,処分行政庁は,本件申請に対する応
答義務を怠っていると主張して,処分行政庁の不作為の違法確認を求める事件
である。
原判決は,処分行政庁による本件申請に対する処分は存在せず,また,本件
申請に係る申請書が処分行政庁に送付されていない以上,処分行政庁には,本
件申請に対する作為義務は生じないとして,控訴人の主位的請求及び予備的請
求に係る訴えを,いずれも却下したため,これを不服とする控訴人が控訴をし
た。
2事案の概要の詳細は,当審における当事者の主張を踏まえ,3項のとおり当
事者の主張を補充するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2事案の概
要等」2ないし5に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判
決10頁5行目,13行目に「知事の処分」とあるのを「知事の行為」とそ,
,,「」。)。れぞれ改め原判決中埼玉県知事とあるのを処分行政庁と読み替える
3当審における当事者の主張
(1)控訴人
ア本件受理拒否行為は,処分行政庁による本件申請に対する拒否処分に当
たる。
都道府県知事と市町村が設置する農業委員会とが全く別個の機関であ
り,行政組織法上の指揮命令関係がないことには異論はない。しかし,法
,(),及び令が都道府県知事に農地転用許可の権限を認めつつ法5条1項
申請者に対し,農地転用許可に関する何らの権限も有しない農業委員会を
経由して同許可の申請書を提出することを義務付け(令1条の15第1
項,農業委員会に都道府県知事への進達義務を課す一方で(同施行令1)
条の15第2項,1条の2第2項,農業委員会が農地法施行規則(以下)
「規則」という)2条の3所定の期間内に都道府県知事に申請を進達し。
ない場合には,農業委員会を経由しないで,都道府県知事に申請書を提出
(,),することができることのみを定め令1条の15第2項1条の2第3項
その場合に,直接都道府県知事に申請することを義務付けたり,申請の却
下があったものとみなしたりする規定や,従前の申請の取扱いについての
規定は全く存しないのである。これらの規定からみれば,農地転用許可手
続に関する限りにおいては,農業委員会は,都道府県知事の一機構として
位置付けられていると解するのが相当である。そして,都道府県知事は,
自治事務の執行機関として,その担任事務である農地転用許可につき,条
例,規則という形での指揮命令権を有しているのであるから(地方自治法
14条,15条,都道府県知事と農業委員会との間に指揮命令関係が存)
しないということはできない。
なお「農地等転用関係事務処理要領の制定について(昭和46年4,」
月26日46農地B500農地局長通知)においても,また,実務の運用
においても,農地転用許可手続に関しては,農業委員会は都道府県知事の
一機構として捉えられているということができ,このことからも,上記解
釈が裏付けられる。
イ都道府県知事は,申請書が経由機関である農業委員会から送付されてい
ないことをもって,不作為の責めを免れることはできない。
すなわち,法令に基づく申請がされれば,行政庁はこれに対する応答義
務を負うのであって,行政手続法の解釈においても,許認可権を有する行
政庁は,経由機関の処理が遅滞していることを知ったときは,遅滞なく申
請書を送付させるなど必要な措置を執るべきものとされているのである。
そして,令1条の15第2項,1条の2第3項,規則2条の3によれば,
農業委員会に申請書が提出された日の翌日から起算して40日を経過すれ
ば,申請者は,直接都道府県知事に申請書を提出することが認められてい
るが,同条項は,当初の申請が却下され,又は当初の申請をもって,直接
都道府県知事に申請したものとみなすことを規定するものではなく,当初
の申請を維持するかどうかは,申請者の任意であり,申請者がこれを維持
する以上は,都道府県知事は,これに対する応答義務を免れることはでき
ず,応答しない不作為の違法状態は継続する。
(2)被控訴人
ア地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律の制定に伴
い,都道府県知事の市町村長に対する包括的指揮命令権を伴う機関委任事
務は廃止され,その関与の態様は,法的拘束力のない勧告,指示にとどま
ることとなった。このような都道府県と市町村との関係の下において,市
町村に設置される独立行政委員会である農業委員会を都道府県知事の一機
構とみることはできない。
イ農地転用許可に関する経由機関である農業委員会の申請の処理について
は,令1条の15第2項,1条の2第3項が,農業委員会が申請書を規則
,,2条の3所定の期間内に都道府県知事に送付しなかったときは申請者は
農業委員会を経由しないで,都道府県知事に申請書を提出することができ
ると定めている。このように,令は,経由機関における申請の処理につい
,,,て特別の定めを置くことによって申請者の保護を図っており申請者は
この規定に基づき,経由機関の不作為についての救済を求めれば足りるも
のというべきであり,殊更,都道府県知事の不作為を問題にする必要はな
い。
第3当裁判所の判断
当裁判所は,控訴人の主位的請求に係る訴えは,不適法であるから却下を免
れないが,予備的請求は理由があるから認容すべきものと判断する。その理由
は,以下のとおりである。
1主位的請求に係る訴えについて
(1)令1条の15第1項は,法5条1項の許可を受けようとする者は,申請
書を,農業委員会を経由して都道府県知事に提出しなければならない旨を定
めており,農業委員会は申請書の提出先とされているのであるが,それ以上
に,都道府県知事が,農業委員会に対し,上記許可に係る権限を委任し,又
は嘱託したものと解すべき根拠はない。農業委員会が,法5条1項の許可の
申請書の提出を受けながら,これを都道府県知事に進達せず,これを受理し
ないとの対応をした場合には,申請の当否に関する都道府県知事の審査は全
く行われておらず,その判断権が行使されたとみる余地はないのであって,
農業委員会の上記対応をもって,都道府県知事が,申請に対する拒否の処分
をしたものと解することはできない。
したがって,本件受理拒否行為が,処分行政庁の本件申請に対する拒否処
分(却下処分)に当たるとして,その取消しを求める主位的請求に係る訴え
は,取消しの対象となる処分が存在せず,不適法として却下を免れない。
(2)この点につき,控訴人は,法5条1項の許可の手続に関しては,農業委
員会は都道府県知事の一機構として位置付けられ,都道府県知事は,自治事
務に当たる上記許可の執行機関として,農業委員会に対する指揮命令権を有
しているから,本件受理拒否行為は,処分行政庁による本件申請に対する拒
否処分に当たると主張するが,上記主張は,申請書の提出を受けた処分行政
庁の補助機関が,処分権限がないにもかかわらず,独断で申請書を受理しな
いという対応をした場合は,処分行政庁によって申請に対する拒否処分がさ
れたものと解すべきであると主張するに帰着し,独自の見解といわざるを得
ず,これを採用することができない。
2予備的請求について
(1)上記のとおり,法5条1項の許可に係る申請書の提出先は農業委員会と
されているところ,農業委員会は,農業委員会等に関する法律に基づき設置
された市町村の行政機関であって(農業委員会等に関する法律3条,地方)
自治法に基づき設置された都道府県の行政機関である都道府県知事からは独
立した行政委員会である。このように,行政組織法上,処分行政庁からは独
立した行政機関を経由機関として,申請を受理する法制度の下においては,
,,,申請権を有する者が経由機関に申請書を提出した場合にはこれによって
処分行政庁の応答を得ようとする意思の表明があることは明らかであって,
処分行政庁は,申請に対し,相当の期間内に応答する義務を負うことになる
と解すべきである。そして,経由機関を経由して申請書を提出すべきことが
定められている場合にあっては,上記相当の期間は,経由機関から処分行政
庁に申請書を進達等するために要する相当の期間及び処分行政庁が申請に対
する処分をするために要する相当の期間を通じた期間をいうものと解され,
こうした相当の期間を経過しても,申請に対する応答がされない場合には,
処分行政庁は,申請に対する応答義務を怠るものとの評価を免れない。
これを本件についてみると,前記争いのない事実等によれば,控訴人は,
平成18年7月3日,令1条の15第1項所定の経由機関である春日部市農
,,業委員会に申請書を提出して処分行政庁に対する本件申請を行ったところ
令1条の15第2項,1条の2第2項,規則2条の3によれば,農業委員会
は,申請書の提出があった日の翌日から起算して40日以内に,当該申請書
に意見を付して,都道府県知事に送付しなければならないものとされている
にもかかわらず,春日部市農業委員会は,同月31日,控訴人に対し,本件
申請を受理できない旨通知した(本件受理拒否行為)というのであって,春
日部市農業委員会が,上記40日を経過しても,本件申請に係る申請書を処
分行政庁に送付せず,したがって,処分行政庁は,本件申請に対し,今もっ
て何らの応答もしていないことが明らかである。上記事実関係によれば,経
由機関である春日部市農業委員会に本件申請がされた時点において,処分行
政庁は,本件申請に対する応答義務を負うに至ったにもかかわらず,同農業
委員会が令1条の2第2項所定の事務を行うのに要する相当の期間及び処分
行政庁が本件申請に対する許否の応答をするのに要する相当の期間を経過し
ても,処分行政庁は,上記応答義務を怠っているものというほかはなく,そ
の不作為に合理的な理由があることは何ら主張立証されていないから,処分
行政庁が相当の期間を経過しても本件申請に対し,何らの処分もしないこと
は,違法というほかはない。
(2)上記判断に対し,被控訴人は,春日部市農業委員会から処分行政庁に対
する申請書の送付がされておらず,処分行政庁が申請書の内容を審査し,こ
れに応答することができる状況にはないのであり,また,都道府県知事と農
業委員会が別個独立の行政機関であり,都道府県知事の指揮監督権は農業委
員会に及ばないことから,農業委員会が令1条の15第2項,1条の2第2
項所定の進達義務を懈怠した場合には,令1条の15第2項,1条の2第3
項に基づき,申請者は,直接都道府県知事に申請書を提出することができる
と定められていることからすると,申請者が,上記各規定に基づき,直接都
道府県知事に申請書を提出して始めて,都道府県知事には申請に対する応答
義務が生ずる旨主張し,この申請につき応答を得ることによって,控訴人の
救済は図られる旨を主張する。
しかし,令1条の15第2項,1条の2第2項に基づく農業委員会から都
道府県知事に対する申請書の進達は,行政機関相互間の行為であって(最高
()),裁判所平成6年行ツ第104号同8年10月8日第三小法廷判決参照
法,令の定めに従って,申請者が,経由機関に申請書を提出し,処分行政庁
の応答を得ようとする意思を表明しているにもかかわらず,行政機関相互間
の事務の処理が滞っていることを理由として,処分行政庁が,これに対する
応答義務を負うことはないと解することはできない。農業委員会が,令1条
の15第2項,1条の2第2項により,規則2条の3所定の期間内に当初提
出された申請書を都道府県知事に対して進達しない場合には,申請者は,令
1条の15第2項,1条の2第3項に基づき,直接都道府県知事に申請書を
提出することが認められており,申請者が,改めて都道府県知事に申請書を
提出し,別途申請を行った場合に,都道府県知事が,この申請に対し,応答
義務を負うことはもとより明らかであるが,農業委員会が上記期間内に,当
初提出された申請書を都道府県知事に進達しなかった場合に,当初の申請に
対する都道府県知事の応答義務が消滅すると解すべき根拠はなく,この場合
に,申請者が,直接都道府県知事に申請書を提出することが可能であるから
といって,このことは,当初の申請がなお残っているにもかかわらず,処分
行政庁による応答がされていないことについての,法的救済が否定される理
。,,,由とはなり得ない令1条の15第2項1条の2第3項が上記のように
直接都道府県知事に申請書を提出することをを認めているのは,行政不服審
査,行政事件訴訟の手続による救済とは別に,新たに都道府県知事に申請書
を提出することによって,簡明に申請に対する応答を得る途を開いたにすぎ
ないものというべきである。
被控訴人の上記主張は,失当であり,採用の限りではない。
3以上によれば,主位的請求に係る訴えは不適法として却下を免れないが,予
備的請求は,理由があるからこれを認容すべきであって,原判決中,予備的請
求に係る訴えを却下した部分は失当であるからこれを取り消し,予備的請求を
認容し,その余の本件控訴は理由がないから,これを棄却する。
東京高等裁判所第5民事部
裁判長裁判官小林克巳
裁判官綿引万里子
裁判官中村愼

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