弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人三浦啓作、同奥田邦夫の上告理由第一点について
 原審の適法に確定するところによれば、(一) 上告人には従前労働組合はなかつ
たところ、昭和四九年一月六日に総評全国金属労働組合福岡地方本部博多a地域支
部D分会(以下「D分会」という。)が結成されたものであるが、D分会の要求項
目の大部分に対し上告人が団体交渉において回答を留保したので、D分会はこれを
不満として各種の組合活動を行い、その一環として、同年三月四日に分会長が分会
員の団結により要求の実現を目指すべきことを内容とする本件ビラを配布したもの
であつて、本件ビラの配布は組合活動として極めて重要なものであつた、(二) 本
件ビラの配布は、その態様及び目的並びにビラの内容に照らして、業務阻害その他
上告人の企業活動に特段の支障を生じさせるものではなかつた、(三) 上告人は、
本件ビラの配布に対し、即日、分会長に、本件ビラ配布は就業規則に違反する行為
であるから厳に慎しむよう注意するとともに後日責任を追及するのでその旨申し入
れるとの内容の警告書を交付した、(四) 上告人は、従業員がD分会を結成したこ
と、特に総評全国金属労働組合に加盟したことを嫌い、D分会結成直後から、管理
職をして、従業員に対しD分会への加入の有無を問いただしたり、分会員に対し総
評全国金属労働組合からの脱退を勧めるなどの行為をさせた、というのである。
 右事実関係のもとにおいては、分会長に対する本件警告行為が労働組合法七条三
号の不当労働行為にあたるとした原審の判断は、結論において正当として是認する
ことができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、原判決の結論に影響のない点を
捉えてこれを非難するか、又は独自の見解に基づいて原判決を論難するものであつ
て、採用することができない。
 同第二点について
 所論の点に関し原審が認定した事実は、(一) 上告人においては、従業員に対す
る夏季一時金等の賞与の金額は基本給に出勤率等を乗じて算出する計算式を用いて
おり、欠勤日数の増加に対応して出勤率を減少させる方法をとつていたが、右出勤
率を計算するに当たつては、年次有給休暇と特別休暇による休務日は出勤すべき日
数に含まないとされていた、(二) 右の計算式作成の際にはストライキの場合は全
く予想されておらず、その後も出勤率を計算する場合にストライキによる不就労を
欠勤と扱うべきか否かについて、労使間の合意や慣行は成立していなかつた、(三)
 D分会がはじめてストライキを実施したところ、上告人は、本件夏季一時金の算
定の基礎となる出勤率を計算するに際して、年次有給休暇や特別休暇の例にならわ
ず、右ストライキによる不就労を通常の欠勤と同一に取り扱つた、(四) 本件夏季
一時金についての上告人とD分会との間の団体交渉においては、基準支給額を基本
給の何箇月分とするかについては交渉が行われたが、ストライキによる不就労の取
扱いについては特段の議題とはならず、上告人が出勤率の計算に際してストライキ
による不就労を欠勤として扱つたことはD分会所属の各従業員の支給額が算出され
てはじめて判明したことであつた、(五) 上告人が右のように出勤率を計算するに
ついてストライキによる不就労を通常の欠勤と同一に取り扱つたのは、上告人が前
記のように従来従業員による組合結成を嫌忌し、組合員らに総評全国金属労働組合
からの脱退を勧告していた等の事実に徴し、ストライキに対する制裁として行つた
ものと認められる、というのであり、右認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、
是認することができないではない。
 そうすると、右認定の事実関係のもとにおいて、上告人が本件夏季一時金の算定
の基礎となる出勤率を計算するに当たりストライキによる不就労を欠勤として扱つ
た措置は労働組合法七条一号の不当労働行為にあたるとした原審の判断は、結論に
おいて正当というべきであり、原判決に所論の違法はなく、所論引用の判例は、事
案を異にし本件に適切でない。論旨は、ひつきよう、原判決の結論に影響のない点
を捉えてこれを非難するか、又は原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定
を非難するものであつて、採用することができない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、上告理
由第二点につき裁判官藤崎萬里の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、
主文のとおり判決する。
 上告理由第二点についての裁判官藤崎萬里の反対意見は、次のとおりである。
 原判決及びこれを是認する多数意見は、夏季一時金を算定するにあたりストライ
キによる不就労を通常の欠勤と同一に取り扱うことが事実関係のいかんによつては
不当労働行為にあたることもありうるとの前提に立つものであるが、私にはそのよ
うな前提が成り立つとは考えられない。その理由は、次のとおりである。
 (一) 一般にストライキによる不就労を通常の欠勤と同一に取り扱うことが労働
組合法七条にいう「不利益な取扱」にあたると解するとしても、通常の欠勤と同一
の取扱ということであれば、ストライキによる不就労であるが故に不利益性が加重
されていることはないわけであるから、同条にいう「労働組合の正当な行為をした
ことの故をもつて」する不利益取扱にはあたらないということになるであろう。こ
のような考え方からすれば、通常の欠勤と同じ取扱であれば不当労働行為にあたら
ないことがすでに客観的に明らかであるということになり、個々の場合について不
当労働行為にあたるか否かを判断するために、使用者の主観的意思その他の事実関
係のいかんを問題にする必要はないことになるであろう。以上は、労働者に対する
取扱一般についていえることであり、したがつて、給与・賃金のみならず、一時金
の算定等にも当然妥当することであると考える。
 (二) 原審の認定するところによれば、上告人においては従前から夏季一時金の
算定にあたり基本給に諸要素の係数を乗ずる方式を用いており、出勤率がその要素
の一つとされている。ところで、一般に一時金をいかなる性質のものとし、いかな
る計算方式により算定するかについては、実定法上も理論上もこうでなければなら
ないということはなにもないので、本件の夏季一時金の計算方式もそれ自体として
別に問題とされる理由はなく、また、現に問題にされているわけでもない。
 (三) 要するに、(イ) 使用者は一時金の算定にあたり出勤日数を考慮に入れ
ることを妨げられず、また、(ロ) 一般にストライキによる不就労を通常の欠勤
と同一に取り扱うことが不当労働行為にあたることはないという二つの点が認めら
れれば、本件の結論はおのずから明らかであろうというのが私の考え方である。こ
れに対して、多数意見の前提とするところには、一時金の算定にあたつて通常の欠
勤が減額の要素として計算に入れられている場合ストライキによる不就労を同じ取
扱にしていいとは限らないとか、あるいは、ストライキによる不就労の場合給与・
賃金についてはノーワーク・ノーペイの原則で割り切ることができるとしても、一
時金については通常の欠勤なみに扱つても不当労働行為として問題になる余地があ
る、というような考え方が含まれていると思われるが、これらは私の納得しえない
ところである。
 そうすると、上告理由第二点の論旨は、結局、理由があり、原判決中、本件命令
のうち夏季一時金についての部分の取消請求を棄却した部分は破棄を免れないとす
べきものと考える。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    和   田   誠   一
            裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    中   村   治   朗
            裁判官    谷   口   正   孝

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