弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人野尻昌次の上告趣意は判例違反を主張する点もあるが所論引用の大審院判
例は本件に適切でなく、又違憲をいう点もあるが、その実質は採証の法則違背、事
実誤認の主張であつて、適法な上告理由に当らない。弁護人比志島龍蔵、同岸星一
同萩沢清彦の上告趣意第一点は、判例違反をいうけれども、所論引用の最高裁判所
及び各高等裁判所の判例は、いずれも刑訴三二八条により証拠の証明力を争うため
に提出された証拠はこれを犯罪事実認定の資料とすることはできないという趣旨の
ものであるところ、所論Aの検察官に対する供述調書は、記録(第一一七丁)によ
れば刑訴三二一条一項二号の規定により検察官から証拠調の請求がなされたもので
あり、しかも被告人側においてこれを証拠とすることに同意していること明白であ
るから、所論引用の判例はいずれも本件に適切でない。同第二点は憲法二八条違反
及び判例違反を主張する。しかしながら、原判決の認定した事実の要旨は「被告人
は新B株式会社E工場の工員で同工場労働組合の執行委員統制部長であるが昭和二
八年一二月一八日午後九時二〇分頃…:同市々役所前を通りかかつた際、偶々同市
C労働組合長D外多数の組合員が越年資金要求のため同市役所内に押し掛け、市長
不在のためいわゆる坐込戦術に出て、右D等において総務課長Aに対し善処方交渉
中……応援のため直ちに同課長室に到り、……応答もなく沈黙のまま翌日開催の水
俣市議会に提出すべき書類の作成、閲覧等の公務を続行する同課長の態度に憤慨し、
矢庭に同課長から同人が閲覧中の右書類を奪い取りこれを以て同課長の右頬を一回
殴打し以て公務員の職務を執行するに当りこれに対し暴行を加えたものである」と
いうのであるから、被告人の右所為が公務執行妨害罪を構成すること、即ち公務員
の職務を執行するに当りこれに対して暴行を加えたものであること論なく、原判決
は何ら所論引用の判例に違反するところはないこと明らかであり、又かかる犯罪を
構成する行為はたとえ、それが憲法二八条にいわゆる勤労者の団体行動の際行われ
たとしてもこれを正当化するいわれはない(昭和二二年(れ)第三一九号同二四年
五月一八日大法廷判決、集三巻六号七七二頁参照)それ故所論は理由がない。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三二年四月一九日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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